(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128601
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60L 53/24 20190101AFI20240913BHJP
B60L 55/00 20190101ALI20240913BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240913BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B60L53/24
B60L55/00
H02M7/48 E
B60H1/22 671
B60H1/22 611Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037654
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 満孝
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和大
【テーマコード(参考)】
3L211
5H125
5H770
【Fターム(参考)】
3L211AA11
3L211BA32
3L211DA48
3L211DA99
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC23
5H125BB00
5H125BC19
5H125BC21
5H125BC24
5H125BE02
5H125CD06
5H125CD08
5H125CD09
5H125EE05
5H125EE12
5H125EE15
5H125EE51
5H770BA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770HA02W
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03W
5H770HA06W
5H770HA06X
5H770HA06Z
5H770HA07Z
5H770JA17Z
(57)【要約】
【課題】外部充電と外部給電とのうちの少なくとも一方をより適正に実行する。
【解決手段】駆動装置は、3相コイルを有するモータと、蓄電装置と、蓄電装置からの直流電力を3相交流電力に変換してモータに供給するインバータとを備える。駆動装置は、3相コイルが接続された中性点に外部電源装置から供給される電力をモータおよびインバータによる電圧変換を伴って蓄電装置に供給する外部充電と、蓄電装置からの電力をインバータおよびモータによる電圧変換を伴って中性点を介して駆動装置の外部に供給する外部給電と、のうちの少なくとも一方の際には、インバータの3相の全てを駆動する第1モード、または、インバータの3相のうち2相を駆動する第2モードを実行する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相コイルを有するモータと、蓄電装置と、前記蓄電装置からの直流電力を3相交流電力に変換して前記モータに供給するインバータと、を備える駆動装置であって、
前記駆動装置は、前記3相コイルが接続された中性点に外部電源装置から供給される電力を前記モータおよび前記インバータによる電圧変換を伴って前記蓄電装置に供給する外部充電と、前記蓄電装置からの電力を前記インバータおよび前記モータによる電圧変換を伴って前記中性点を介して前記駆動装置の外部に供給する外部給電と、のうちの少なくとも一方の際には、前記インバータの3相の全てを駆動する第1モード、または、前記インバータの前記3相のうち2相を駆動する第2モードを実行する、
駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の駆動装置であって、
前記駆動装置は、前記モータに関連する情報、前記インバータに関連する情報、前記蓄電装置に関連する情報、前記中性点に関連する情報、外部環境に関連する情報、のうちの少なくとも1つに基づいて、前記第1モードまたは前記第2モードを実行する、
駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の駆動装置であって、
前記駆動装置は、前記外部電源装置から前記中性点への電力または電流に関連する供給関連値が供給閾値以下であるときには、前記第2モードでインターリーブ駆動を実行し、前記供給関連値が前記供給閾値よりも大きいときには、前記第1モードで前記インターリーブ駆動を実行する、
駆動装置。
【請求項4】
請求項3記載の駆動装置であって、
前記モータと前記インバータと前記蓄電装置とに冷却媒体を循環させる冷却装置を更に備え、
前記駆動装置は、前記蓄電装置の昇温要求が行なわれている場合、前記供給関連値が前記供給閾値未満のときには、前記第1モードで前記インターリーブ駆動を実行し、前記供給関連値が前記供給閾値以上のときには、前記第2モードで前記インターリーブ駆動を実行する、
駆動装置。
【請求項5】
請求項3記載の駆動装置であって、
前記モータおよび前記インバータを熱源として車両の車室内の暖房を行なう暖房装置を更に備え、
前記駆動装置は、前記車室内の暖房要求が行なわれている場合、前記供給関連値が前記供給閾値未満のときには、前記第1モードで前記インターリーブ駆動を実行し、前記供給関連値が前記供給閾値以上のときには、前記第2モードで前記インターリーブ駆動を実行する、
駆動装置。
【請求項6】
請求項2ないし5のうちの何れか1つの請求項に記載の駆動装置であって、
前記駆動装置は、前記インバータの温度が第2温度閾値よりも高いときには、前記第1モードでインターリーブ駆動を実行する、
駆動装置。
【請求項7】
請求項2ないし5のうちの何れか1つの請求項に記載の駆動装置であって、
前記駆動装置は、前記モータの温度が第1温度閾値よりも高く且つ前記インバータの温度が第2温度閾値よりも高い場合、前記インバータが前記モータに比して熱的に厳しいときには、前記第1モードで前記インターリーブ駆動を実行する、
駆動装置。
【請求項8】
請求項2ないし5のうちの何れか1つの請求項に記載の駆動装置であって、
前記駆動装置は、前記モータの温度が第1温度閾値よりも高いときおよび/または前記インバータの温度が第2温度閾値よりも高いときには、前記モータの温度が前記第1温度閾値以下で且つ前記インバータの温度が前記第2温度閾値以下のときに比して、前記外部電源装置から前記中性点への電力または電流を制限するように、前記外部電源装置に指示する、
駆動装置。
【請求項9】
請求項1ないし5のうちの何れか1つの請求項に記載の駆動装置であって、
前記駆動装置は、前記第1モードまたは前記第2モードでインターリーブ駆動を実行し、
更に、前記駆動装置は、前記第2モードでは、前記3相のうちインダクタンス値のズレが最小となる前記2相を駆動2相として前記インターリーブ駆動を実行する、
駆動装置。
【請求項10】
請求項9記載の駆動装置であって、
前記モータと前記インバータと前記蓄電装置とに冷却媒体を循環させる冷却装置を更に備え、
前記駆動装置は、前記蓄電装置の昇温要求が行なわれている場合、前記第2モードでは、前記3相のうちインダクタンス値のズレが最大となる前記2相を前記駆動2相として前記インターリーブ駆動を実行する、
駆動装置。
【請求項11】
請求項9記載の駆動装置であって、
前記モータおよび前記インバータを熱源として車両の車室内の暖房を行なう暖房装置を更に備え、
前記駆動装置は、前記車室内の暖房要求が行なわれている場合、前記第2モードでは、前記3相のうちインダクタンス値のズレが最大となる前記2相を前記駆動2相として前記インターリーブ駆動を実行する、
駆動装置。
【請求項12】
請求項9記載の駆動装置であって、
前記駆動装置は、前記モータの回転子の回転位置に基づいて前記駆動2相を設定する、
駆動装置。
【請求項13】
請求項9記載の駆動装置であって、
前記駆動装置は、前記モータの各相に試験用電流が流れたときの前記各相の相電流の単位時間当たりの変化量に基づいて前記駆動2相を設定する、
駆動装置。
【請求項14】
請求項1ないし5のうちの何れか1つの請求項に記載の駆動装置であって、
前記駆動装置は、前記第1モードおよび前記第2モードの何れであるかに基づいて目標電圧比を設定し、前記外部電源装置から前記中性点に、前記蓄電装置の電圧と前記目標電圧比とに基づく目標電圧を印加するように、前記外部電源装置に指示する、
駆動装置。
【請求項15】
請求項14記載の駆動装置であって、
前記モータと前記インバータと前記蓄電装置とに冷却媒体を循環させる冷却装置を更に備え、
前記駆動装置は、前記第1モードおよび前記第2モードの何れであるかと前記蓄電装置の昇温要求が行なわれているか否かとに基づいて前記目標電圧比を設定する、
駆動装置。
【請求項16】
請求項14記載の駆動装置であって、
前記モータおよび前記インバータを熱源として車両の車室内の暖房を行なう暖房装置を更に備え、
前記駆動装置は、前記第1モードおよび前記第2モードの何れであるかと前記車室内の暖房要求が行なわれているか否かとに基づいて前記目標電圧比を設定する、
駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3相コイルを有するモータと、蓄電装置と、蓄電装置からの直流電力を3相交流電力に変換してモータに供給するインバータと、を備える駆動装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1の駆動装置は、3相コイルが接続された中性点に外部電源装置から供給される電力をモータおよびインバータによる電圧変換を伴って蓄電装置に供給する外部充電の際に、インバータのスイッチング素子のデューティ値を設定してインバータを制御する。また、特許文献2の駆動装置は、外部充電の際に、モータの回転子角に基づいてモータの3相電流の1つをゼロにし、モータのトルクをゼロにするための残りの2相電流を設定し、インバータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開2020/0177014号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開2020/0189409号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動装置は、外部充電と、蓄電装置からの電力をインバータおよびモータによる電圧変換を伴ってモータの中性点を介して駆動装置の外部に供給する外部給電と、のうちの少なくとも一方の際に、常時、特許文献1のように、インバータの3相の全てを駆動する第1モードを実行する場合、モータの発熱量が大きくなる傾向がある。一方、駆動装置は、外部充電と外部給電とのうちの少なくとも一方の際に、常時、特許文献2のように、インバータの3相のうち2相を駆動する第2モードを実行する場合、インバータの発熱量が大きくなる傾向がある。これらを踏まえて、外部充電と外部給電とのうちの少なくとも一方をより適正に実行することが求められている。
【0005】
本開示の駆動装置は、外部充電と外部給電とのうちの少なくとも一方をより適正に実行することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の駆動装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の駆動装置は、
3相コイルを有するモータと、蓄電装置と、前記蓄電装置からの直流電力を3相交流電力に変換して前記モータに供給するインバータと、を備える駆動装置であって、
前記駆動装置は、前記3相コイルが接続された中性点に外部電源装置から供給される電力を前記モータおよび前記インバータによる電圧変換を伴って前記蓄電装置に供給する外部充電と、前記蓄電装置からの電力を前記インバータおよび前記モータによる電圧変換を伴って前記中性点を介して前記駆動装置の外部に供給する外部給電と、のうちの少なくとも一方の際には、前記インバータの3相の全てを駆動する第1モード、または、前記インバータの前記3相のうち2相を駆動する第2モードを実行する、
ことを要旨とする。
【0008】
本開示の駆動装置は、3相コイルが接続された中性点に外部電源装置から供給される電力をモータおよびインバータによる電圧変換を伴って蓄電装置に供給する外部充電と、蓄電装置からの電力をインバータおよびモータによる電圧変換を伴って中性点を介して駆動装置の外部に供給する外部給電と、のうちの少なくとも一方の際には、インバータの3相の全てを駆動する第1モード、または、インバータの3相のうち2相を駆動する第2モードを実行する。これにより、駆動装置は、外部充電と外部給電とのうちの少なくとも一方をより適正に実行することができる。
【0009】
本開示の駆動装置において、前記駆動装置は、前記モータに関連する情報、前記インバータに関連する情報、前記蓄電装置に関連する情報、前記中性点に関連する情報、外部環境に関連する情報、のうちの少なくとも1つに基づいて、前記第1モードまたは前記第2モードを実行するものとしてもよい。こうすれば、駆動装置は、各種情報のうちの少なくとも1つに基づいて第1モードまたは第2モードを実行することができる。ここで、モータに関連する情報は、モータの温度を含む。インバータに関連する情報は、インバータの温度を含む。蓄電装置に関連する情報は、蓄電装置の温度を含む。中性点に関連する情報は、外部電源装置から中性点への電力および電流を含む。外部環境に関連する情報は、モータおよびインバータを熱源として車両の車室内の暖房を行なう暖房装置を駆動装置が備える場合、暖房要求の有無および車室内の温度を含む。
【0010】
各種情報のうちの少なくとも1つに基づいて第1モードまたは第2モードを実行する態様の本開示の駆動装置において、前記駆動装置は、前記外部電源装置から前記中性点への電力または電流に関連する供給関連値が供給閾値以下であるときには、前記第2モードでインターリーブ駆動を実行し、前記供給関連値が前記供給閾値よりも大きいときには、前記第1モードで前記インターリーブ駆動を実行するものとしてもよい。ここで、第1モードのインターリーブ駆動は、モータの3相の相電流の位相が互いに120度ずつズレるようにインバータが駆動される。例えば、第1モードのインターリーブ駆動は、インバータの3相のスイッチング素子のデューティ制御における各相のキャリア(例えば、三角波、ノコギリ波、逆ノコギリ波など)の位相を互いに120度ずつズラすことにより、モータの3相の相電流の位相を互いに120度ずつズラすものとしてもよい。第2モードのインターリーブ駆動は、モータの2相の相電流が互いに180度ズレるようにインバータが駆動される。例えば、第2モードのインターリーブ駆動は、インバータの2相のスイッチング素子のデューティ制御における各相のキャリアの位相を互いに180度ズラすことにより、モータの2相の相電流の位相を互いに180度ズラすものとしてもよい。発明者らは、実験や解析、機械学習などにより、以下のことを確認した。供給関連値が小さい場合、第1モードでインターリーブ駆動を実行するときに、第2モードでインターリーブ駆動を駆動するときに比して、モータおよびインバータを含む駆動部全体の発熱量が大きくなり、外部充電の効率が低くなる。一方、供給関連値が大きい場合、第2モードでインターリーブ駆動を実行するときに、第1モードでインターリーブ駆動を駆動するときに比して、駆動部全体の発熱量が大きくなり、外部充電の効率が低下する。これを踏まえて、駆動装置は、供給関連値が供給閾値以下であるときには、第2モードでインターリーブ駆動を実行し、供給関連値が供給閾値よりも大きいときには、第1モードでインターリーブ駆動を実行する。これにより、駆動装置は、駆動部全体の発熱量を抑制することができる。この結果、駆動装置は、外部充電を効率よく行なうことができる。
【0011】
供給関連値に基づいて第1モードまたは第2モードでインターリーブ駆動を実行する態様の本開示の駆動装置において、前記モータと前記インバータと前記蓄電装置とに冷却媒体を循環させる冷却装置を更に備え、前記駆動装置は、前記蓄電装置の昇温要求が行なわれている場合、前記供給関連値が前記供給閾値未満のときには、前記第1モードで前記インターリーブ駆動を実行し、前記供給関連値が前記供給閾値以上のときには、前記第2モードで前記インターリーブ駆動を実行するものとしてもよい。こうすれば、駆動装置は、駆動部全体の発熱量を大きくすることができる。この結果、駆動装置は、蓄電装置の昇温を促進することができる。
【0012】
供給関連値に基づいて第1モードまたは第2モードでインターリーブ駆動を実行する態様の本開示の駆動装置において、前記モータおよび前記インバータを熱源として車両の車室内の暖房を行なう暖房装置を更に備え、前記駆動装置は、前記車室内の暖房要求が行なわれている場合、前記供給関連値が前記供給閾値未満のときには、前記第1モードで前記インターリーブ駆動を実行し、前記供給関連値が前記供給閾値以上のときには、前記第2モードで前記インターリーブ駆動を実行するものとしてもよい。こうすれば、駆動装置は、駆動部全体の発熱量を大きくすることができる。この結果、駆動装置は、車室内の暖房をより十分に行なうことができる。
【0013】
各種情報のうちの少なくとも1つに基づいて第1モードまたは第2モードを実行する態様の本開示の駆動装置において、前記駆動装置は、前記インバータの温度が第2温度閾値よりも高いときには、前記第1モードでインターリーブ駆動を実行するものとしてもよい。こうすれば、駆動装置は、インバータの更なる温度上昇を抑制することができる。
【0014】
各種情報のうちの少なくとも1つに基づいて第1モードまたは第2モードを実行する態様の本開示の駆動装置において、前記駆動装置は、前記モータの温度が第1温度閾値よりも高く且つ前記インバータの温度が第2温度閾値よりも高い場合、前記インバータが前記モータに比して熱的に厳しいときには、前記第1モードで前記インターリーブ駆動を実行するものとしてもよい。こうすれば、駆動装置は、インバータがモータに比して熱的に厳しいときには、インバータの更なる温度上昇を抑制することができる。
【0015】
各種情報のうちの少なくとも1つに基づいて第1モードまたは第2モードを実行する態様の本開示の駆動装置において、前記駆動装置は、前記モータの温度が第1温度閾値よりも高いときおよび/または前記インバータの温度が第2温度閾値よりも高いときには、前記モータの温度が前記第1温度閾値以下で且つ前記インバータの温度が前記第2温度閾値以下のときに比して、前記外部電源装置から前記中性点への電力または電流を制限するように、前記外部電源装置に指示するものとしてもよい。こうすれば、駆動装置は、モータの温度が第1温度閾値よりも高いときおよび/またはインバータの温度が第2温度閾値よりも高いときに、モータおよびインバータの更なる温度上昇を抑制することができる。
【0016】
本開示の駆動装置において、前記駆動装置は、前記第1モードまたは前記第2モードでインターリーブ駆動を実行し、更に、前記駆動装置は、前記第2モードでは、前記3相のうちインダクタンス値のズレ(差分)が最小となる前記2相を駆動2相として前記インターリーブ駆動を実行するものとしてもよい。こうすれば、駆動装置は、第2モードでインターリーブ駆動を実行するときに、モータの発熱量を抑制することができる。この結果、駆動装置は、外部充電を効率よく行なうことができる。
【0017】
第2モードで駆動2相を用いてインターリーブ駆動を実行する態様の本開示の駆動装置において、前記モータと前記インバータと前記蓄電装置とに冷却媒体を循環させる冷却装置を更に備え、前記駆動装置は、前記蓄電装置の昇温要求が行なわれている場合、前記第2モードでは、前記3相のうちインダクタンス値のズレ(差分)が最大となる前記2相を前記駆動2相として前記インターリーブ駆動を実行するものとしてもよい。こうすれば、駆動装置は、第2モードでインターリーブ駆動を実行するときに、モータの発熱量を大きくすることができる。この結果、駆動装置は、蓄電装置の昇温を促進することができる。
【0018】
第2モードで駆動2相を用いてインターリーブ駆動を実行する態様の本開示の駆動装置において、前記モータおよび前記インバータを熱源として車両の車室内の暖房を行なう暖房装置を更に備え、前記駆動装置は、前記車室内の暖房要求が行なわれている場合、前記第2モードでは、前記3相のうちインダクタンス値のズレが最大となる前記2相を前記駆動2相として前記インターリーブ駆動を実行するものとしてもよい。こうすれば、駆動装置は、第2モードでインターリーブ駆動を実行するときに、モータの発熱量を大きくすることができる。この結果、駆動装置は、車室内の暖房をより十分に行なうことができる。
【0019】
第2モードで駆動2相を用いてインターリーブ駆動を実行する態様の本開示の駆動装置において、前記駆動装置は、前記モータの回転子の回転位置に基づいて前記駆動2相を設定するものとしてもよい。こうすれば、駆動装置は、駆動2相をより適正に設定することができる。
【0020】
第2モードで駆動2相を用いてインターリーブ駆動を実行する態様の本開示の駆動装置において、前記駆動装置は、前記モータの各相に試験用電流が流れたときの前記各相の相電流の単位時間当たりの変化量に基づいて前記駆動2相を設定するものとしてもよい。これうすれば、駆動装置は、駆動2相をより適正に設定することができる。
【0021】
本開示の駆動装置において、前記駆動装置は、前記第1モードおよび前記第2モードの何れであるかに基づいて目標電圧比を設定し、前記外部電源装置から前記中性点に、前記蓄電装置の電圧と前記目標電圧比とに基づく目標電圧を印加するように、前記外部電源装置に指示するものとしてもよい。こうすれば、駆動装置は、第1モードおよび第2モードの何れであるかに応じた電圧比での、モータおよびインバータによる電圧変換を伴って、外部充電を行なうことができる。ここで、電圧比は、中性点の電圧と蓄電装置の電圧との比として定義される。
【0022】
第1モードおよび第2モードの何れであるかに基づいて目標電圧比を設定する態様の本開示の駆動装置において、前記モータと前記インバータと前記蓄電装置とに冷却媒体を循環させる冷却装置を更に備え、前記駆動装置は、前記第1モードおよび前記第2モードの何れであるかと前記蓄電装置の昇温要求が行なわれているか否かとに基づいて前記目標電圧比を設定するものとしてもよい。こうすれば、駆動装置は、目標電圧比をより適正に設定することができる。
【0023】
第1モードおよび第2モードの何れであるかに基づいて目標電圧比を設定する態様の本開示の駆動装置において、前記モータおよび前記インバータを熱源として車両の車室内の暖房を行なう暖房装置を更に備え、前記駆動装置は、前記第1モードおよび前記第2モードの何れであるかと前記車室内の暖房要求が行なわれているか否かとに基づいて前記目標電圧比を設定するものとしてもよい。こうすれば、駆動装置は、目標電圧比をより適正に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】駆動装置と充電スタンドとの概略構成図である。
【
図2】駆動装置と充電スタンドとの概略構成図である。
【
図3】外部充電制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図4】モータの各相の相電流の様子の一例を示す説明図である。
【
図5】モータの電気角と各相のインダクタンス値との関係の一例を示す説明図である。
【
図6】第1サブ処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】第2サブ処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】昇圧コンバータの電圧比とモータの各相の相電流のリプルとの関係の一例を示す説明図である。
【
図9】外部充電制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図10】第3サブ処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】第3サブ処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1および
図2は、電気自動車10に搭載される本実施形態の駆動装置20と外部電源装置としての充電スタンド80との概略構成図である。
図1および
図2に示すように、駆動装置20は、モータ22と、インバータ24と、蓄電装置としてのバッテリ26と、装置側コネクタ30と、スイッチ36と、冷却装置40と、暖房装置50と、制御装置としての駆動用電子制御ユニット(以下、「駆動ECU」という)60とを備える。
【0026】
モータ22は、3相交流電動機として構成されており、回転子コアに永久磁石が埋め込まれた回転子と、固定子コアにU相、V相、W相のコイル22u,22v,22wがそれぞれ巻回された固定子とを備える。コイル22u,22v,22wの接続により中性点22nが形成されている。モータ22の回転子は、駆動輪12にデファレンシャルギヤ14を介して連結された駆動軸16に接続されている。
【0027】
インバータ24は、モータ22の駆動に用いられると共に電力ライン28の正極側ライン28aおよび負極側ライン28bを介してバッテリ26に接続されている。インバータ24は、6個のスイッチング素子としてのトランジスタT11~T16と、6個のダイオードD11~D16とを有する。トランジスタT11~T16は、それぞれ、正極側ライン28aと負極側ライン28bとに対してソース側とシンク側とになるように2個ずつペアで配置されている。トランジスタT11,T12の接続点、トランジスタT13,T14の接続点、トランジスタT15,T16の接続点は、それぞれ、モータ22のU相、V相、W相のコイル22u,22v,22wに接続されている。6個のダイオードD11~D16は、6個のトランジスタT11~T16のそれぞれに並列に接続されている。インバータ24は、バッテリ26からの直流電力をパルス幅変調制御(PWM制御)により3相交流電力に変換してモータ22に供給する。正極側ライン28aと負極側ライン28bとには、コンデンサ29が接続されている。
【0028】
バッテリ26は、複数の電池セルを有しており、複数の電池セルは、それぞれリチウムイオン二次電池として構成され且つ互いに直列に接続されている。バッテリ26は、上述したように、正極側ライン28aおよび負極側ライン28bを介してインバータ24に接続されている。
【0029】
装置側コネクタ30は、充電スタンド80のスタンド側コネクタ84と接続可能に構成されている。装置側コネクタ30は、電力ライン32の正極側ライン32aおよびスイッチ36を介してモータ22の中性点22nに接続されると共に、電力ライン32の負極側ライン32bを介して負極側ライン28bに接続されている。正極側ライン32aと負極側ライン32bとには、コンデンサ33が接続されている。スイッチ36は、オンオフにより、モータ22の中性点22nと正極側ライン32aとの接続および接続の解除を行なう。
【0030】
スイッチ36がオンのときには、電力ライン32の正極側ライン32aおよび負極側ライン32bと電力ライン28の正極側ライン28aおよび負極側ライン28bとの間に、モータ22およびインバータ24により多相昇圧コンバータ21が構成される。多相昇圧コンバータ21は、電力ライン32と電力ライン28とに対して互いに並列に接続された3相(U相、V相、W相)の電圧変換部21u,21v,21wを有する。U相の電圧変換部21uは、モータ22のU相のコイル22uとインバータ24のトランジスタT11,T14とを有する。V相の電圧変換部21vは、モータ22のV相のコイル22vとインバータ24のトランジスタT12,T15とを有する。W相の電圧変換部21wは、モータ22のW相のコイル22wとインバータ24のトランジスタT13,T16とを有する。
【0031】
冷却装置40は、循環流路42と、熱交換器44と、電動ポンプ46とを有する。循環流路42は、モータ22とインバータ24とバッテリ26と熱交換器44とにこの順に冷却水を循環させるための流路として構成されている。電動ポンプ46は、循環流路42の冷却水を循環させる。なお、循環流路42は、インバータ24、モータ22、バッテリ26、熱交換器44の順に冷却水が循環するように構成されてもよい。
【0032】
暖房装置50は、冷却装置40の冷却水(モータ22およびインバータ24により温められた冷却水)を熱源として車室内の暖房を行なう。暖房装置50は、熱交換器44との熱交換により暖められた空気を車室内に送風するブロワを有する。
【0033】
駆動ECU60は、マイクロコンピュータを備えており、マイクロコンピュータは、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有する。駆動ECU60は、各種センサからの信号を入力している。例えば、駆動ECU60は、回転位置センサ23aからのモータ22の回転子の回転位置θmや、電流センサ23u,23v,23wからのモータ22のU相、V相、W相の相電流Iu,Iv,Iw、温度センサ23tからのモータ22の温度αm、温度センサ25tからのインバータ24の温度αiを入力している。駆動ECU60は、電圧センサ27vからのバッテリ26の電圧Vbや、電流センサ27iからのバッテリ26の電流Ib、温度センサ27tからのバッテリ26の温度αbも入力している。駆動ECU60は、電圧センサ34からのコンデンサ33(電力ライン32)の電圧VLや、水温センサ48からの循環流路42の冷却水の温度である冷却水温αwも入力している。駆動ECU60は、室温センサ52からの車室内の温度である室温αcや、暖房スイッチ54からの、車室内の暖房要求の有無や車室内の設定温度αcsetも入力している。
【0034】
駆動ECU60は、各種制御信号を出力している。例えば、駆動ECU60は、インバータ24のトランジスタT11~T16への制御信号や、スイッチ36への制御信号、電動ポンプ46への制御信号、暖房装置50への制御信号を出力している。駆動ECU60は、モータ22の回転子の回転位置θmに基づいてモータ22の電気角θeや回転数Nmを演算している。駆動ECU60は、バッテリ26の電流Ibの積算値に基づいてバッテリ26の蓄電割合SOCを演算したり、バッテリ26の蓄電割合SOCとバッテリ26の温度αbとに基づいてバッテリ26の許容入力電力である入力制限Winを設定したりしている。駆動ECU60は、自宅や充電ステーションなどで、充電スタンド80の電子制御ユニット(以下、「スタンドECU」という)88と通信可能となっている。
【0035】
充電スタンド80は、自宅や充電ステーションなどに設けられている。充電スタンド80は、電力供給装置82と、スタンド側コネクタ84と、スタンドECU88とを備える。電力供給装置82は、電力ライン86の正極側ライン86aおよび負極側ライン86bを介してスタンド側コネクタ84に接続されている。電力供給装置82は、電力系統からの交流電力を直流電力に変換し且つ出力電圧や出力電力を調整して出力可能に構成されている。スタンド側コネクタ84は、駆動装置20の装置側コネクタ30と接続可能に構成されている。スタンド側コネクタ84と装置側コネクタ30とが接続されると、正極側ライン86aと正極側ライン32a、負極側ライン86bと負極側ライン32b、がそれぞれ接続される。
【0036】
スタンドECU88は、マイクロコンピュータを備えており、マイクロコンピュータは、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有する。スタンドECU88は、電圧センサ83vからの電力供給装置82の出力電圧Vsや、電流センサ83iからの電力供給装置82の出力電流Isを入力している。スタンドECU88は、電力供給装置82への制御信号を出力している。スタンドECU88は、出力電圧Vsおよび出力電流Isに基づいて出力電力Psを演算している。スタンドECU88は、駆動装置20の駆動ECU60と通信可能となっている。
【0037】
次に、駆動装置20の動作、特に、外部充電の際の動作について説明する。外部充電は、充電スタンド80の電力供給装置82からの電力を用いたバッテリ26の充電である。外部充電では、電力供給装置82からモータ22の中性点22nに供給される中性点電力が、多相昇圧コンバータ21(モータ22およびインバータ24)による電圧変換を伴ってバッテリ26に供給される。
図3は、駆動ECU60により実行される外部充電制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、駆動装置20の装置側コネクタ30と充電スタンド80のスタンド側コネクタ84とが接続され、且つ、充電開始条件が成立したときに実行される。充電開始条件は、例えば、ユーザによりバッテリ26の充電開始が指示された条件、ユーザにより設定されたバッテリ26の充電開始時刻に至った条件、などのオア条件が用いられる。
【0038】
図3の外部充電制御ルーチンが実行されると、駆動ECU60は、最初に、スイッチ36をオンとする(ステップS100)。これにより、モータ22の中性点22nと正極側ライン32aとが接続される。このため、上述したように、電力ライン32と電力ライン28との間に、モータ22およびインバータ24により多相昇圧コンバータ21(3相の電圧変換部21u,21v,21w)が構成される。
【0039】
続いて、駆動ECU60は、効率用、発熱用の駆動2相を設定する(ステップS110)。本実施形態では、外部充電の際に、駆動ECU60は、3相インターリーブ駆動または2相インターリーブ駆動を実行する。3相インターリーブ駆動は、モータ22のU相、V相、W相の相電流Iu,Iv,Iwの位相が互いに120度ずつズレるようにインバータ24のトランジスタT11~T16のスイッチング制御が行なわれる。例えば、3相インターリーブ駆動は、インバータ24のU相のトランジスタT11,T12、V相のトランジスタT13,T14、W相のトランジスタT15,T16のデューティ制御における各相のキャリア(例えば、三角波、ノコギリ波、逆ノコギリ波など)の位相を互いに120度ずつズラすことにより、モータ22のU相、V相、W相の相電流Iu,Iv,Iwの位相を互いに120度ずつズラすものとしてもよい。2相インターリーブ駆動は、モータ22の2相の相電流(例えば、V相、W相の相電流Iv,Iw)の位相が互いに180度ズレるようにインバータ24のトランジスタT11~T16のスイッチング制御が行なわれる。例えば、2相インターリーブ駆動は、インバータ24の2相のトランジスタのデューティ制御における各相のキャリアの位相を互いに180度ズラすことにより、モータ22の2相の相電流の位相を互いに180度ズラすものとしてもよい。3相インターリーブ駆動は、本開示の第1モードでのインターリーブ駆動に相当し、2相インターリーブ駆動は、本開示の第2モードでのインターリーブ駆動に相当する。駆動2相は、多相昇圧コンバータ21(3相の電圧変換部21u,21v,21w)のうち2相インターリーブ駆動で駆動すべき2相である。
【0040】
図4は、モータ22の各相の相電流Iu,Iv,Iwの様子の一例を示す説明図である。
図4(A)は、3相インターリーブ駆動を実行するときの様子の一例を示す。
図4(B)は、モータ22の各相のうちインダクタンス値のズレ(差分)が最大となる2相を駆動2相として、2相インターリーブ駆動を実行するときの様子の一例を示す。
図4(C)は、モータ22の各相のうちインダクタンス値のズレが最小となる2相を駆動2相として、2相インターリーブ駆動を実行するときの様子の一例を示す。
図4では、V相、W相のインダクタンス値Lv,Lwとのズレが最小となり且つU相、V相のインダクタンス値Lu,Lvのズレが最大となる場合について示した。各相の相電流のリプルは、インダクタンス値に依存する。
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)の例では、U相の相電流Iuのリプル(振幅)IruがV相、W相の相電流Iv,IwのリプルIrv,Irwに比してある程度大きくなっており、W相の相電流IwのリプルIrwがV相の相電流IvのリプルIrvに比して僅かに大きくなっている。このため、
図4(A)の相電流Iu,Iv,Iwの合計電流のリプルIra、
図4(B)の相電流Iu,Ivの合計電流のリプルIrb、
図4(C)の相電流Iv,Iwの合計電流のリプルIrcは、大きい側から順にリプルIra,Irb,Ircとなる。発明者らは、実験や解析、機械学習などにより、合計電流のリプルが小さいほどモータ22の渦電流損が抑制され、モータ22での発熱量が抑制されることを確認した。これらのことを踏まえて、ステップS110の処理において、駆動ECU60は、モータ22の各相のうちインダクタンス値のズレが最小となる2相を効率用の駆動2相に設定し、モータ22の各相のうちインダクタンス値のズレが最大となる2相を発熱用の駆動2相に設定する。
【0041】
ステップS110の処理は、例えば、駆動2相マップに電気角θeを適用して駆動2相を導出することにより行なわれる。駆動2相マップは、モータ22の電気角θeと効率用、発熱用の駆動2相との関係として、実験や解析、機械学習などにより予め定められている。
図5は、モータ22の電気角θeと各相のインダクタンス値Lu,Lv,Lwとの関係の一例を示す説明図である。図示するように、各相のインダクタンス値Lu,Lv,Lwは、電気角θeに依存する。駆動2相マップは、電気角θeとインダクタンス値Lu,Lv,Lwとの関係を考慮して定められる。
図5の例において、モータ22の電気角θeが59度の場合、V相、W相のインダクタンス値Lv,Lwのズレが最小となり、U相、V相のインダクタンス値Lu,Lvのズレが最大となる。この場合、駆動ECU60は、V相、W相を効率用の駆動2相に設定すると共にU相、V相を発熱用の駆動2相に設定する。
【0042】
続いて、駆動ECU60は、目標電力Ps*を設定する(ステップS120)。ここで、目標電力Ps*は、電力供給装置82からモータ22の中性点22nに供給すべき電力、即ち、中性点電力の目標値である。ステップS120の処理は、例えば、バッテリ26の入力制限Winの範囲内で目標電力Ps*を設定することにより行なわれる。
【0043】
そして、駆動ECU60は、バッテリ26の昇温要求が行なわれているか否かを判定すると共に(ステップS130)、車室内の暖房要求が行なわれているか否かを判定する(ステップS132)。ここで、バッテリ26の昇温要求が行なわれているか否かの判定処理は、バッテリ26の温度αbが比較的低い閾値Tbth以下であるか否かを判定することにより行なわれる。閾値Tbthは、例えば、-10℃~10℃程度が用いられる。車室内の暖房要求が行なわれているか否かの判定処理は、暖房条件が成立しているか否かを判定することにより行なわれる。暖房条件は、暖房スイッチ54がオンであり且つ室温αcが設定温度αc未満である条件が用いられる。
【0044】
駆動ECU60は、ステップS130でバッテリ26の昇温要求が行なわれていないと判定し、且つ、ステップS132で車室内の暖房要求が行なわれていないと判定したときには、
図6の第1サブ処理を実行する(ステップS140)。一方、駆動ECU60は、ステップS130でバッテリ26の昇温要求が行なわれていると判定したときや、ステップS132で車室内の暖房要求が行なわれていると判定したときには、
図7の第2サブ処理を実行する(ステップS150)。ここで、第1サブ処理および第2サブ処理は、3相インターリーブ駆動または2相インターリーブ駆動を実行したり、目標電力Ps*および目標電圧Vs*を充電スタンド80のスタンドECU88に送信したりする処理である。目標電圧Vs*は、電力供給装置82からモータ22の中性点22nに印加すべき電圧である。第1サブ処理および第2サブ処理の詳細については後述する。
【0045】
続いて、駆動ECU60は、充電停止条件が成立したか否かを判定する(ステップS160)。ここで、充電停止条件は、例えば、バッテリ26の蓄電割合SOCが閾値Sth以上に至った条件、ユーザによりバッテリ26の充電停止が指示された条件、などのオア条件が用いられる。駆動ECU60は、ステップS160で充電停止条件が成立していないと判定したときには、ステップS120に戻る。
【0046】
駆動ECU60は、ステップS160で充電停止条件が成立したと判定したときには、停止処理を実行して(ステップS170)、本ルーチンを終了する。ここで、停止処理では、駆動ECU60は、インバータ24を停止すると共に電力供給停止指令をスタンドECU88に送信する。スタンドECU88は、電力供給停止指令を受信すると、電力供給装置82を停止する。これにより、外部充電が終了する。
【0047】
次に、
図3の外部充電制御ルーチンのステップS140の処理、即ち、
図6の第1サブ処理について説明する。上述したように、第1サブ処理は、駆動ECU60がステップS130でバッテリ26の昇温要求が行なわれていないと判定し且つステップS132で車室内の暖房要求が行なわれていないと判定したときに実行される。
【0048】
第1サブ処理では、駆動ECU60は、最初に、目標電力Ps*が閾値Psref以下であるか否かを判定する(ステップS200)。発明者らは、実験や解析、機械学習などにより、以下のことを確認した。上述したように、2相インターリーブ駆動を実行するときには、3相インターリーブ駆動を実行するときに比して、モータ22の渦電流損が抑制され、渦電流損に起因するモータ22の発熱量(温度上昇)が抑制される。しかしながら、2相インターリーブ駆動を実行するときには、駆動2相に電流集中が生じ、3相インターリーブ駆動を実行するときに比して、インバータ24の発熱量とモータ22の銅損に起因するモータ22の発熱量とが大きくなる。なお、モータ22の発熱量は、銅損の影響よりも渦電流損の影響を十分に大きく受ける。中性点電力が比較的小さい場合、モータ22およびインバータ24を含む駆動部全体の発熱量(熱損失)は、インバータ24の発熱量の影響よりもモータ22の発熱量(特に、渦電流損に起因する発熱量)の影響を大きく受ける。このため、中性点電力が比較的小さい場合、3相インターリーブ駆動を実行するときに、2相インターリーブ駆動を実行するときに比して、駆動部全体の発熱量が大きくなり、外部充電の効率が低くなる。一方、中性点電力が比較的大きい場合、駆動部全体の発熱量は、モータ22の発熱量の影響よりもインバータ24の発熱量の影響を大きく受ける。このため、中性点電力が比較的大きい場合、2相インターリーブ駆動を実行するときには、3相インターリーブ駆動を実行するときに比して、駆動部全体の発熱量が大きくなり、外部充電の効率が低くなる。閾値Psrefは、3相インターリーブ駆動を実行する方が駆動部全体の発熱量が大きくなる領域と、2相インターリーブ駆動を実行する方が駆動部全体の発熱量が大きくなる領域と、の境界値として、モータ22およびインバータ24の仕様に基づいて実験や解析、機械学習により定められる。閾値Psrefは、例えば、数十kW程度が用いられる。
【0049】
駆動ECU60は、ステップS200で目標電力Ps*が閾値Psref以下であると判定したときには、駆動相数Npに値2を設定し(ステップS210)、多相昇圧コンバータ21の目標電圧比Rv*に所定値Rv1を設定する(ステップS212)。ここで、駆動相数Npは、多相昇圧コンバータ21(3相の電圧変換部21u,21v,21w)のうちインターリーブ駆動で駆動すべき相数(3相または2相)である。多相昇圧コンバータ21の目標電圧比Rv*は、電力ライン32の目標電圧(電力供給装置82の目標電圧)と電力ライン28の電圧(バッテリ26の電圧)との電圧比として定義される。一方、駆動ECU60は、ステップS200で目標電力Ps*が閾値Psrefよりも大きいと判定したときには、駆動相数Npに値3を設定し(ステップS220)、多相昇圧コンバータ21の目標電圧比Rv*に所定値Rv2を設定する(ステップS222)。これらより、駆動ECU60は、バッテリ26の昇温要求および車室内の暖房要求の何れも行なわれていないときには、3相インターリーブ駆動および2相インターリーブ駆動のうち駆動部全体の発熱量(熱損失)が小さい方を実行することになる。所定値Rv1,Rv2については後述する。
【0050】
続いて、駆動ECU60は、目標電圧Vs*を演算し(ステップS230)、目標電力Ps*および目標電圧Vs*を充電スタンド80のスタンドECU88に送信する(ステップS240)。ここで、目標電圧Vs*は、バッテリ26の電圧Vbと多相昇圧コンバータ21の目標電圧比Rv*との積として演算される。スタンドECU88は、目標電力Ps*および目標電圧Vs*を受信すると、出力電圧Vsが目標電圧Vs*になると共に出力電力Psが目標電力Ps*になるように電力供給装置82を制御する。
【0051】
そして、駆動ECU60は、駆動相数Npが値3であるか値2であるかを判定する(ステップS250)。駆動ECU60は、駆動相数Npが値3であると判定したときには、3相インターリーブ駆動を実行して(ステップS260)、第1サブ処理を終了する。一方、駆動ECU60は、駆動相数Npが値2であると判定したときには、ステップS110で設定した効率用の駆動2相を用いた2相インターリーブ駆動を実行して(ステップS270)、第1サブ処理を終了する。駆動ECU60は、バッテリ26の昇温要求および車室内の暖房要求の何れも行なわれていないときには、3相インターリーブ駆動および2相インターリーブ駆動のうち駆動部全体の発熱量(熱損失)が小さい方を実行する。これにより、駆動装置20は、外部充電を効率よく行なうことができる。また、駆動ECU60は、2相インターリーブ駆動を実行するときには、発熱用の駆動2相でなく、効率用の駆動2相を用いる。これにより、駆動装置20は、モータ22の渦電流損を抑制し、駆動部全体の発熱量をより抑制することができる。なお、3相インターリーブ駆動または2相インターリーブ駆動におけるトランジスタT11~T16のデューティは、多相昇圧コンバータ21の目標電圧比Rv*に基づいて設定される。
【0052】
次に、
図3の外部充電制御ルーチンのステップS150の処理、即ち、
図7の第2サブ処理について説明する。上述したように、第2サブ処理は、駆動ECU60がステップS130でバッテリ26の昇温要求が行なわれていないと判定したときやステップS132で車室内の暖房要求が行なわれていないと判定したときに実行される。
【0053】
第2サブ処理では、駆動ECU60は、最初に、目標電力Ps*が閾値Psref未満であるか否かを判定する(ステップS300)。駆動ECU60は、目標電力Ps*が閾値Psref未満であると判定したときには、駆動相数Npに値3を設定し(ステップS310)、多相昇圧コンバータ21の目標電圧比Rv*に所定値Rv3を設定する(ステップS312)。一方、駆動ECU60は、目標電力Ps*が閾値Psref以上であると判定したときには、駆動相数Npに値2を設定し(ステップS320)、多相昇圧コンバータ21の目標電圧比Rv*に所定値Rv4を設定する(ステップS322)。これらより、駆動ECU60は、バッテリ26の昇温要求および車室内の暖房要求のうちの少なくとも一方が行なわれているときには、3相インターリーブ駆動および2相インターリーブ駆動のうち駆動部全体の発熱量(熱損失)が大きい方を実行することになる。所定値Rv3,Rv4については後述する。
【0054】
続いて、駆動ECU60は、
図6の第1サブ処理のステップS230~S250と同様に、目標電圧Vs*を演算し(ステップS330)、目標電力Ps*および目標電圧Vs*をスタンドECU88に送信し(ステップS340)、駆動相数Npが値3であるか値2であるかを判定する(ステップS350)。駆動ECU60は、駆動相数Npが値3であると判定したときには、3相インターリーブ駆動を実行して(ステップS360)、第2サブ処理を終了する。一方、駆動ECU60は、駆動相数Npが値2であると判定したときには、ステップS110で設定した発熱用の駆動2相を用いた2相インターリーブ駆動を実行して(ステップS370)、第2サブ処理を終了する。駆動ECU60は、バッテリ26の昇温要求および車室内の暖房要求のうちの少なくとも一方が行なわれているときには、3相インターリーブ駆動および2相インターリーブ駆動のうち駆動部全体の発熱量(熱損失)が大きい方を実行する。これにより、駆動装置20は、モータ22およびインバータ24から冷却装置40の冷却水を介してバッテリ26により多くの熱を供給したり、冷却装置40の熱交換器44との熱交換により車室内に送風する空気をより暖めたりすることができる。この結果、駆動装置20は、バッテリ26の昇温を促進したり、車室内の暖房をより十分に行なったりすることができる。また、駆動ECU60は、2相インターリーブ駆動を実行するときには、効率用の駆動2相でなく、発熱用の駆動2相を用いる。これにより、駆動装置20は、駆動部全体の発熱量をより大きくすることができる。
【0055】
ここで、所定値Rv1~Rv4について説明する。
図8は、多相昇圧コンバータ21の電圧比Rvとモータ22の各相の相電流Iu,Iv,IwのリプルIru,Irv,Irwとの関係の一例を示す説明図である。多相昇圧コンバータ21の電圧比Rvは、電力ライン32の電圧(電力供給装置82の出力電圧)と電力ライン28の電圧(バッテリ26の電圧)との電圧比として定義される。
図8(A)は、3相インターリーブ駆動を実行するときの関係の一例を示す。
図8(B)は、2相インターリーブ駆動を実行するときの関係の一例を示す。
図8では、
図4と同様に、V相、W相のインダクタンス値Lv,Lwとのズレが最小となり且つU相、V相のインダクタンス値Lu,Lvのズレが最大となる場合について示した。また、
図8(B)では、効率用の駆動2相を用いて2相インターリーブ駆動を実行するときの関係の一例を図示した。発熱用の駆動2相を用いて2相インターリーブ駆動を実行するときも、同様に考えることができる。
【0056】
図8(A)に示すように、駆動ECU60が3相インターリーブ駆動を実行するときには、モータ22のU相、V相、W相の相電流Iu,Iv,IwのリプルIru,Irv,Irwは、何れも、多相昇圧コンバータ21の電圧比Rvが0.5のときに極大となると共に、多相昇圧コンバータ21の電圧比Rvが0.5から離間するほど小さくなる。また、
図8(B)に示すように、駆動ECU60が2相インターリーブ駆動を実行するときには、V相、W相の相電流Iv,IwのリプルIrv,Irwは、何れも、多相昇圧コンバータ21の電圧比Rvが0.5のときに極小となると共に、多相昇圧コンバータ21の電圧比Rvが0.3付近や0.7付近のときに極大となる。発明者らは、実験や解析、機械学習などにより、モータ22の各相の相電流のリプルが大きいほど駆動部全体の発熱量(熱損失)が大きくなることを確認した。
【0057】
これらのことを踏まえて、所定値Rv1は、例えば、0.5などが用いられ、所定値Rv2は、例えば、0.33や0.67などが用いられる。これらより、バッテリ26の昇温要求および車室内の暖房要求の何れも行なわれていないときには、駆動装置20は、3相インターリーブ駆動または2相インターリーブ駆動での駆動部全体の発熱量(熱損失)を抑制することができる。この結果、駆動装置20は、外部充電を効率よく行なうことができる。
【0058】
また、所定値Rv3は、例えば、0.5などが用いられ、所定値Rv4は、例えば、0.33や0.67などが用いられる。これらより、バッテリ26の昇温要求および車室内の暖房要求のうちの少なくとも一方が行なわれているときには、駆動装置20は、3相インターリーブ駆動または2相インターリーブ駆動での駆動部全体の発熱量(熱損失)を大きくすることができる。この結果、駆動装置20は、バッテリ26の昇温を促進したり、車室内の暖房をより十分に行なったりすることができる。
【0059】
以上説明した本実施形態の駆動装置20では、駆動ECU60は、充電スタンド80の電力供給装置82からモータ22の中性点22nに供給される電力を多相昇圧コンバータ21(モータ22およびインバータ24)による電圧変換を伴ってバッテリ26に供給する外部充電の際には、3相インターリーブ駆動(第1モードでのインバータ24の駆動)または2相インターリーブ駆動(第2モードでのインバータ24の駆動)を実行する。これにより、駆動装置20は、外部充電をより適正に実行することができる。
【0060】
具体的には、バッテリ26の昇温要求および車室内の暖房要求の何れも行なわれていない場合、駆動ECU60は、目標電力Ps*が閾値Psref以下のときには2相インターリーブ駆動を実行し、目標電力Ps*が閾値Psrefよりも大きいときには3相インターリーブ駆動を実行する。これにより、駆動ECU60は、3相インターリーブ駆動および2相インターリーブ駆動のうち駆動部全体の発熱量(熱損失)が小さい方を実行することができる。この結果、駆動装置20は、外部充電を効率よく行なうことができる。しかも、駆動ECU60は、バッテリ26の昇温要求および車室内の暖房要求の何れも行なわれていない場合に2相インターリーブ駆動を実行するときには、発熱用の駆動2相でなく、効率用の駆動2相を用いる。これにより、駆動装置20は、駆動部全体の発熱量をより抑制することができる。
【0061】
駆動ECU60は、バッテリ26の昇温要求および車室内の暖房要求のうちの少なくとも一方が行なわれている場合、駆動ECU60は、目標電力Ps*が閾値Psref未満のときには3相インターリーブ駆動を実行し、目標電力Ps*が閾値Psref以上のときには2相インターリーブ駆動を実行する。これにより、駆動ECU60は、3相インターリーブ駆動および2相インターリーブ駆動のうち駆動部全体の発熱量(熱損失)が大きい方を実行することができる。この結果、駆動装置20は、バッテリ26の昇温を促進したり、車室内の暖房をより十分に行なったりすることができる。しかも、駆動ECU60は、バッテリ26の昇温要求および車室内の暖房要求のうちの少なくとも一方が行なわれている場合に2相インターリーブ駆動を実行するときには、効率用の駆動2相でなく、発熱用の駆動2相を用いる。これにより、駆動装置20は、駆動部全体の発熱量をより大きくすることができる。
【0062】
また、本実施形態の駆動装置20では、駆動ECU60は、外部充電の際には、バッテリ26の昇温要求が行なわれているか否かと、車室内の暖房要求が行なわれているか否かと、インターリーブ駆動の駆動相数Npと、に基づいて多相昇圧コンバータ21の目標電圧比Rv*を設定し、バッテリ26の電圧Vbと目標電圧比Rv*とに基づく目標電圧Vs*をスタンドECU88に送信する。スタンドECU88は、出力電圧Vsが目標電圧Vs*となるように電力供給装置82を制御する。これにより、駆動装置20は、外部充電をより適正に実行することができる。
【0063】
具体的には、駆動ECU60は、バッテリ26の昇温要求および車室内の暖房要求の何れも行なわれていないときには、3相インターリーブ駆動および2相インターリーブ駆動でのモータ22の各相の相電流のリプルが小さくなるように多相昇圧コンバータ21の目標電圧比Rv*を設定する。これにより、駆動装置20は、駆動部全体の発熱量(熱損失)を抑制することができる。この結果、駆動装置20は、外部充電を効率よく行なうことができる。
【0064】
駆動ECU60は、バッテリ26の昇温要求および車室内の暖房要求のうちの少なくとも一方が行なわれているときには、3相インターリーブ駆動および2相インターリーブ駆動でのモータ22の各相の相電流のリプルが大きくなるように多相昇圧コンバータ21の目標電圧比Rv*を設定する。これにより、駆動装置20は、駆動部全体の発熱量を大きくすることができる。この結果、駆動装置20は、バッテリ26の昇温を促進したり、車室内の暖房をより十分に行なったりすることができる。
【0065】
上述した実施形態では、
図3の外部充電制御ルーチンにおいて、駆動ECU60は、モータ22の電気角θeに基づいて効率用、発熱用の駆動2相を設定するものとした。しかし、これに代えて、駆動ECU60は、以下のように効率用、発熱用の駆動2相を設定してもよい。駆動ECU60は、インバータ24のトランジスタT12,T14,T16をオンとして、試験用電圧指令をスタンドECU88に送信する。スタンドECU88は、試験用電圧(例えば、所定時間の一定電圧)をモータ22の中性点22nに印加するように電力供給装置82を制御する。これにより、モータ22の各相に相電流が流れる。そして、駆動ECU60は、モータ22の各相の相電流Iu,Iv,Iwの単位時間当たりの変化量である相電流変化率ΔIu,ΔIv,ΔIwを検出し、検出した相電流変化率ΔIu,ΔIv,ΔIwに基づいて効率用、発熱用の駆動2相を設定する。相電流変化率ΔIu,ΔIv,ΔIwは、各相のインダクタンス値Lu,Lv,Lwに依存する。したがって、駆動ECU60は、モータ22の各相のうち相電流変化率のズレが最小となる2相を効率用の駆動2相に設定し、相電流変化率のズレが最大となる2相を発熱用の駆動2相に設定する。なお、ここでは、駆動装置20および充電スタンド80は、モータ22の3相に同時に相電流を流して、各相の相電流変化率ΔIu,ΔIv,ΔIwを検出するものとした。これに代えて、駆動装置20および充電スタンド80は、モータ22の1相ずつ順に相電流を流して、各相の相電流変化率ΔIu,ΔIv,ΔIwを検出してもよい。
【0066】
上述した実施形態では、
図3の外部充電制御ルーチンにおいて、駆動ECU60は、バッテリ26の昇温要求が行なわれているか否かと、車室内の暖房要求が行なわれているか否かをと、に基づいて
図6の第1サブ処理または
図7の第2サブ処理を実行するものとした。しかし、駆動ECU60は、バッテリ26の昇温要求が行なわれているか否かと、車室内の暖房要求が行なわれているか否かをと、のうちの一方だけに基づいて第1サブ処理または第2サブ処理を実行してもよい。
【0067】
上述した実施形態では、
図3の外部充電制御ルーチン(
図6の第1サブ処理、
図7のサブ処理)において、駆動ECU60は、バッテリ26の昇温要求が行なわれているか否かと、車室内の暖房要求が行なわれているか否かと、目標電力Ps*と、に基づいてインターリーブ駆動の駆動相数Npを設定するものとした。しかし、駆動ECU60は、目標電力Ps*だけに基づいてインターリーブ駆動の駆動相数Npを設定してもよい。この場合、駆動ECU60は、目標電力Ps*が閾値Psref以下のときには、駆動相数Npに値2を設定し、目標電力Ps*が閾値Psrefよりも大きいときには、駆動相数Npに値3を設定してもよい。
【0068】
上述した実施形態では、
図3の外部充電制御ルーチン(
図6の第1サブ処理、
図7のサブ処理)において、駆動ECU60は、バッテリ26の昇温要求が行なわれているか否かと、車室内の暖房要求が行なわれているか否かをと、インターリーブ駆動の駆動相数Npと、に基づいて目標電圧比Rv*を設定するものとした。しかし、駆動ECU60は、インターリーブ駆動の駆動相数Npだけに基づいて目標電圧比Rv*を設定してもよい。この場合、例えば、駆動ECU60は、所定値Rv1または所定値Rv2を目標電圧比Rv*に設定してもよい。また、目標電圧比Rv*は、予め定められた一定値が用いられてもよい。
【0069】
上述した実施形態では、
図3の外部充電制御ルーチン(
図6の第1サブ処理、
図7のサブ処理)において、駆動ECU60は、バッテリ26の昇温要求が行なわれているか否かと、車室内の暖房要求が行なわれているか否かをと、に基づいて2相インターリーブ駆動で効率用または発熱用の駆動2相を用いるものとした。しかし、駆動ECU60は、常時、効率用の駆動2相、または、予め定められた駆動2相を用いてもよい。
【0070】
上述した実施形態では、駆動ECU60は、
図3の外部充電制御ルーチンを実行するものとした。しかし、これに代えて、駆動ECU60は、
図9の外部充電制御ルーチンを実行してもよい。
図9の外部充電制御ルーチンは、ステップS400~S430の処理が追加された点で、
図3の外部充電制御ルーチンとは異なる。
【0071】
図9の外部充電制御ルーチンでは、駆動ECU60は、ステップS120で目標電力Ps*を設定すると、モータ22およびインバータ24の熱余裕度Δαm,Δαiを演算する(ステップS400)。ここで、モータ22の熱余裕度Δαmは、所定温度αmrefからモータ22の温度αmを減じた値として演算される。インバータ24の熱余裕度Δαiは、所定温度αirefからインバータ24の温度αiを減じた値として演算される。所定温度αmrefは、モータ22の過熱温度よりもある程度低い温度として定められ、例えば、80℃~120℃程度が用いられる。所定温度αirefは、インバータ24の過熱温度よりもある程度低い温度として定められ、例えば、80℃~120℃程度が用いられる。モータ22およびインバータ24の熱余裕度Δαm,Δαiは、それぞれ、値が小さいほど熱的に厳しいことを意味する。
【0072】
続いて、駆動ECU60は、モータ22の熱余裕度Δαmが値0以上であるか否かを判定すると共に(ステップS410)、インバータ24の熱余裕度Δαiが値0以上であるか否かを判定する(ステップS420)。そして、駆動ECU60は、モータ22の熱余裕度Δαmが値0以上であると判定し、且つ、インバータ24の熱余裕度Δαiが値0以上であると判定したときには、ステップS130に移行する。一方、駆動ECU60は、モータ22の熱余裕度Δαmが値0未満であると判定したときや、インバータ24の熱余裕度Δαiが値0未満であると判定したときには、
図10の第3サブ処理を実行して(ステップS430)、ステップS160に移行する。
【0073】
次に、
図10の第3サブ処理について説明する。
図10の第3サブ処理は、ステップS500~S520の処理が追加された点で、
図6の第1サブ処理とは異なる。
【0074】
図10の第3サブ処理では、駆動ECU60は、最初に、モータ22の熱余裕度Δαmがインバータ24の熱余裕度Δαi以下であるか否かを判定する(ステップS500)。そして、モータ22の熱余裕度Δαmがインバータ24の熱余裕度Δαi以下であると判定したときには、目標電力Ps*を再設定して(ステップS510)、ステップS200に移行する。ステップS510の処理は、ステップS120で設定した目標電力Ps*から補正値ΔPs1を減じた値を新たな目標電力Ps*に設定することにより行なわれる。補正値ΔPs1は、一定値が用いられてもよいし、モータ22の熱余裕度Δαmが小さい(負の範囲内で絶対値が大きい)ほど大きくなる値が用いられてもよい。
【0075】
ステップS510の処理により、中性点電力が小さくなる。これにより、駆動装置20は、モータ22およびインバータ24の温度上昇を抑制することができる。また、バッテリ26の昇温要求および車室内の暖房要求の何れも行なわれていない場合と同様に、駆動ECU60が、目標電力Ps*が閾値Psref以下のときには2相インターリーブ駆動を実行し、目標電力Ps*が閾値Psrefよりも大きいときには3相インターリーブ駆動を実行する。これにより、目標電力Ps*が閾値Psref以下のときにはモータ22の渦電流損に起因するモータ22の発熱量を抑制し、目標電力Ps*が閾値Psrefよりも大きいときにはモータ22の銅損に起因するモータ22の発熱量を抑制することができる。さらに、バッテリ26の昇温要求および車室内の暖房要求の何れも行なわれていない場合と同様に、駆動ECU60が、効率用の駆動2相を用いたり、多相昇圧コンバータ21の目標電圧比Rv*に所定値Rv1を設定したりする。これにより、駆動部全体の発熱量(熱損失)をより抑制することができる。
【0076】
駆動ECU60は、ステップS500でモータ22の熱余裕度Δαmがインバータ24の熱余裕度Δαiよりも大きいと判定したときには、目標電力Ps*を再設定して(ステップS520)、ステップS220に移行する。ステップS520の処理は、ステップS120で設定した目標電力Ps*から補正値ΔPs2を減じた値を新たな目標電力Ps*に設定することにより行なわれる。補正値ΔPs2は、一定値(例えば、補正値ΔPs1と同一の値)が用いられてもよいし、インバータ24の熱余裕度Δαiが小さい(負の範囲内で絶対値が大きい)ほど大きくなる値が用いられてもよい。
【0077】
こうした処理により、中性点電力が小さくなる。これにより、駆動装置20は、モータ22およびインバータ24の温度上昇を抑制することができる。また、インバータ24がモータ22よりも熱的に厳しいときに、駆動装置20は、3相インターリーブ駆動を実行する。これにより、2相インターリーブ駆動を実行する場合に比して、インバータ24の更なる温度上昇を抑制することができる。さらに、バッテリ26の昇温要求および車室内の暖房要求の何れも行なわれていない場合と同様に、駆動ECU60が、効率用の駆動2相を用いたり、多相昇圧コンバータ21の目標電圧比Rv*に所定値Rv2を設定したりする。これにより、駆動部全体の発熱量(熱損失)をより抑制することができる。
【0078】
図9の外部充電制御ルーチンにおいて、駆動ECU60は、モータ22の熱余裕度Δαmが値0未満であると判定したときや、インバータ24の熱余裕度Δαiが値0未満であると判定したときには、
図10の第3サブ処理を実行するものとした。しかし、駆動ECU60は、モータ22の熱余裕度Δαmが値0未満であると判定したときにだけ、第3サブ処理のステップS510以降の処理を実行してもよい。また、駆動ECU60は、インバータ24の熱余裕度Δαiが値0未満であると判定したときにだけ、第3サブ処理のステップS520以降の処理を実行してもよい。
【0079】
図10のサブ処理において、駆動ECU60は、モータ22の熱余裕度Δαmがインバータ24の熱余裕度Δαi以下であると判定したとき、モータ22の熱余裕度Δαmがインバータ24の熱余裕度Δαiよりも大きいと判定したときに、それぞれ、目標電力Ps*を再設定するものとした。しかし、駆動ECU60は、モータ22の熱余裕度Δαmがインバータ24の熱余裕度Δαi以下であると判定したときにだけ、目標電力Ps*を再設定してもよい。また、駆動ECU60は、モータ22の熱余裕度Δαmがインバータ24の熱余裕度Δαiよりも大きいと判定したときにだけ、目標電力Ps*を再設定してもよい。さらに、駆動ECU60は、モータ22の熱余裕度Δαmがインバータ24の熱余裕度Δαi以下であると判定したときも、モータ22の熱余裕度Δαmがインバータ24の熱余裕度Δαiよりも大きいと判定したときも、目標電力Ps*を再設定しなくてもよい。
【0080】
図10の第3サブ処理は、
図11の第3サブ処理に置き換えられてもよい。
図11の第3サブ処理は、ステップS520の処理の後にステップS220でなくステップS200に移行する点で、
図10の第3サブ処理とは異なる。
【0081】
上述した実施形態では、駆動ECU60は、
図3や
図9の外部充電制御ルーチンのステップS120で目標電力Ps*を設定するものとした。また、駆動ECU60は、
図6の第1サブ処理のステップS200や、
図7の第2サブ処理のステップS300、
図11の第3サブ処理のステップS200で目標電力Ps*を判定に用いるものとした。さらに、駆動ECU60は、
図10や
図11のステップS510,S520で目標電力Ps*を再設定するものとした。しかし、目標電力Ps*は、目標電流Is*に置き換えられてもよい。目標電流Is*は、電力供給装置82からモータ22の中性点22nに供給すべき電流である。目標電流Is*を用いる場合、目標電力Ps*を用いる場合と同様に考えることができる。また、ステップS200,300について、目標電力Ps*または目標電流Is*でなく、電力供給装置82からモータ22の中性点22nに供給される中性点電力または中性点電流が用いられてもよい。中性点電力や中性点電流は、それぞれ、電力供給装置82の出力電力Psや出力電流Isを用いることができる。
【0082】
上述した実施形態では、駆動ECU60は、外部充電の際に、3相インターリーブ駆動または2相インターリーブ駆動を実行するものとした。しかし、これに加えてまたは代えて、駆動ECU60は、外部給電の際に、3相インターリーブ駆動または2相インターリーブ駆動を実行してもよい。外部給電は、バッテリ26からの電力を用いた駆動装置20(電気自動車10)の外部への給電である。外部給電では、駆動ECU60は、バッテリ26からの電力が、多相昇圧コンバータ21(モータ22およびインバータ24)による電圧変換を伴って駆動装置20の外部に給電される。3相インターリーブ駆動および2相インターリーブ駆動の何れを実行するかの判定は、外部充電の際と同様に考えることができる。
【0083】
上述した実施形態では、駆動ECU60は、外部充電の際には、3相インターリーブ駆動または2相インターリーブ駆動を実行するものとした。しかし、駆動ECU60は、外部充電の際には、インバータ24の3相の全てを駆動する第1モード、または、インバータ24の3相のうち2相を駆動する第2モードでインバータ24を制御するものであればよい。例えば、駆動ECU60は、第1モードまたは第2モードでモータ22の各相の相電流が同相となるようにインバータ24のトランジスタT11~T16をスイッチング制御してもよい。外部給電の際についても、外部充電の際と同様に考えることができる。
【0084】
上述した実施形態では、電気自動車10は、駆動装置20を備えるものとした。しかし、これに代えて、
図12に示すように、電気自動車10は、駆動装置20Bを備えてもよい。駆動装置20Bは、電力ライン38を更に備える点で、駆動装置20とは異なる。駆動装置20Bでは、バッテリ26は、第1バッテリ26aと第2バッテリ26bとが互いに直列に接続されて構成されている。第1バッテリ26aおよび第2バッテリ26bは、それぞれ、複数の電池セルが互いに直列に接続されて構成されている。電力ライン38は、モータ22の中性点22nと、第1バッテリ26aと第2バッテリ26bとの接続点26pと、に接続されている。この駆動装置20Bでは、外部充電を行なっていないときに、駆動ECU60がインバータ24を駆動することにより、第1バッテリ26aや第2バッテリ26bを昇温することができる。
【0085】
上述した実施形態では、駆動装置20のバッテリ26の各電池セルは、それぞれリチウムイオン二次電池として構成されるものとした。しかし、各電池セルは、それぞれニッケル水素二次電池として構成されてもよい。
【0086】
上述した実施形態では、蓄電装置として、バッテリ26が用いられるものとした。しかし、これに代えて、蓄電装置として、キャパシタが用いられてもよい。
【0087】
上述した実施形態では、駆動装置20の暖房装置50は、冷却装置40の冷却水(モータ22およびインバータ24により温められた冷却水)を熱源として車室内の暖房を行なうものとした。しかし、暖房装置50は、モータ22およびインバータ24を熱源として車室内の暖房を行なうものであれば、この構成に限定されない。
【0088】
上述した実施形態では、駆動装置20は、電気自動車10に搭載されるものとした。しかし、駆動装置20は、ハイブリッド車や燃料電池車に搭載されてもよいし、車両以外の移動体に搭載されてもよいし、移動しない建設設備などに搭載されてもよい。
【0089】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、モータ22が「モータ」に相当し、バッテリ26が「蓄電装置」に相当し、インバータ24が「インバータ」に相当し、駆動ECU60が「制御装置」に相当する。
【0090】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0091】
以上、本開示を実施するための実施形態について説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本開示は、駆動装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0093】
10 電気自動車、12 駆動輪、14 デファレンシャルギヤ、16 駆動軸、20,20B 駆動装置、21 多相昇圧コンバータ、21u,21v,21w 電圧変換部、22 モータ、22n 中性点、22u,22v,22w コイル、23a 回転位置センサ、23t 温度センサ、23u,23v,23w 電流センサ、24 インバータ、25t 温度センサ、26 バッテリ、27i 電流センサ、27t 温度センサ、27v 電圧センサ、28 電力ライン、28a 正極側ライン、28b 負極側ライン、29 コンデンサ、30 装置側コネクタ、32 電力ライン、32a 正極側ライン、32b 負極側ライン、33 コンデンサ、34 電圧センサ、36 スイッチ、38 電力ライン、40 冷却装置、42 循環流路、44 熱交換器、46 電動ポンプ、48 水温センサ、50 暖房装置、52 室温センサ、54 暖房スイッチ、60 駆動ECU、80 充電スタンド、82 電力供給装置、83i 電流センサ、83v 電圧センサ、84 スタンド側コネクタ、86 電力ライン、86a 正極側ライン、86b 負極側ライン、88 スタンドECU、D11~D16 ダイオード、T11~T16 トランジスタ。