(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128615
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】放電装置及び電動コンプレッサ
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240913BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037680
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 和洋
(72)【発明者】
【氏名】八代 圭司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 優月
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA05
5H770DA03
5H770FA13
5H770GA20
5H770HA03W
5H770JA17W
5H770KA01W
(57)【要約】
【課題】放電回路の放電特性と損失抑制とを両立可能な放電装置及びそれを備える電動コンプレッサを提供する。
【解決手段】放電装置20は、コンデンサ22と、コンデンサ22に並列に接続される放電回路30,40と、コンパレータ26とを備える。放電回路30は、放電抵抗32を含む。放電回路40は、放電抵抗32よりも抵抗値の小さい放電抵抗42と、放電抵抗42に直列に接続されるスイッチ44とを含む。コンパレータ26は、電力線PL,NL間の電圧VHが所定電圧以上のとき、スイッチ44をオフにし、電圧VHが所定電圧を下回ると、スイッチ44をオンにする。コンパレータ26は、スイッチ44をオンにしてから所定時間後にスイッチ44をオフにするように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線対間に接続されるコンデンサと、
前記コンデンサに並列に接続される第1の放電回路と、
前記コンデンサに並列に接続される第2の放電回路とを備え、
前記第1の放電回路は、第1の放電抵抗を含み、
前記第2の放電回路は、
前記第1の放電抵抗よりも抵抗値の小さい第2の放電抵抗と、
前記第2の放電抵抗に直列に接続されるスイッチとを含み、さらに、
前記電力線対間の電圧が所定電圧以上のとき、前記スイッチをオフにし、前記電力線対間の電圧が前記所定電圧を下回ると、前記スイッチをオンにする駆動回路を備え、
前記駆動回路は、前記スイッチをオンにしてから所定時間後に前記スイッチをオフにするように構成される、放電装置。
【請求項2】
前記第1の放電抵抗は、前記コンデンサが前記第1の放電抵抗を通じて放電する場合に、前記電力線対間の電圧を前記所定電圧から規定電圧まで規定時間以下で低下させるように構成される、請求項1に記載の放電装置。
【請求項3】
前記駆動回路及び前記スイッチの作動電力を生成する電源回路をさらに備え、
前記駆動回路は、前記所定時間を計時するためのタイマを含み、
前記電源回路は、
前記第1の放電抵抗と前記電力線対の負極線との間に接続されるツェナーダイオードと、
前記第1の放電抵抗と前記ツェナーダイオードのカソードとの接続部に接続される電源ノードとを含み、
前記駆動回路及び前記スイッチは、前記電源ノードから前記作動電力を受ける、請求項1に記載の放電装置。
【請求項4】
冷媒圧縮部と、
前記冷媒圧縮部を駆動するモータと、
前記モータを駆動するインバータと、
バッテリから前記インバータへ電力を供給する電力線対に設けられる、請求項1から請求項3のいずれかに記載の放電装置とを備える電動コンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放電装置及びそれを備える電動コンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012-205428号公報(特許文献1)は、バッテリに並列に接続されるコンデンサと、コンデンサを放電可能な放電回路とを備えるインバータ装置を開示する。放電回路は、第1の抵抗と、第1の抵抗よりも抵抗値が小さい第2の抵抗とを含む。このインバータ装置では、コンデンサの電圧が、車両の走行に必要なバッテリ電圧値よりも低い所定の電圧値以下に低下すると、コンデンサの蓄電電荷を第2の抵抗に強制的に放電させる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のインバータ装置では、コンデンサの電圧が所定の電圧値よりも高いときは、第2の抵抗に電流は流れず、コンデンサの電圧が所定の電圧値以下になると、第2の抵抗を通じて電流が流れる。このような構成においては、第2の抵抗に電流が流れている状態でコンデンサの電圧が所定の電圧値付近で維持される場合に、第2の抵抗の発熱及び損失が最大となる。また、コンデンサの電圧が最大となる場合に、第1の抵抗の発熱及び損失が最大となる。
【0005】
第2の抵抗の抵抗値を小さくすることでコンデンサの放電を速めることができるが、第2の抵抗の発熱や許容損失等の制約により、第2の抵抗の抵抗値を小さくすることには限界がある。第2の抵抗の抵抗値を小さくできない場合、第1の抵抗の抵抗値を小さくすることでコンデンサの放電を速めることができるが、第1の抵抗の抵抗値を小さくすると、第1の抵抗の発熱及び損失が増大してしまう。このような問題に対して、特許文献1では特に検討されていない。
【0006】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、放電回路の放電特性と損失抑制とを両立可能な放電装置及びそれを備える電動コンプレッサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の放電装置は、電力線対間に接続されるコンデンサと、コンデンサに並列に接続される第1の放電回路と、コンデンサに並列に接続される第2の放電回路と、駆動回路とを備える。第1の放電回路は、第1の放電抵抗を含む。第2の放電回路は、第1の放電抵抗よりも抵抗値の小さい第2の放電抵抗と、第2の放電抵抗に直列に接続されるスイッチとを含む。駆動回路は、電力線対間の電圧が所定電圧以上のとき、スイッチをオフにし、電力線対間の電圧が所定電圧を下回ると、スイッチをオンにする。そして、駆動回路は、スイッチをオンにしてから所定時間後にスイッチをオフにするように構成される。
【0008】
この放電装置においては、電力線対間の電圧が所定電圧を下回ると、スイッチがオンされ、第1の放電抵抗よりも抵抗値の小さい第2の放電抵抗を通じて電流が流れる。これにより、放電特性が確保される一方で、第2の放電抵抗の発熱及び損失が懸念されるところ、この放電装置では、駆動回路が、スイッチをオンにしてから所定時間後にスイッチをオフにするように構成されるので、第2の放電抵抗の発熱及び損失を所定時間に限定することができる。したがって、この放電装置によれば、放電特性と損失抑制とを両立させることができる。
【0009】
第1の放電抵抗は、コンデンサが第1の放電抵抗を通じて放電する場合に、電力線対間の電圧を所定電圧から規定電圧まで規定時間以下で低下させるように構成されてもよい。
【0010】
このような構成により、スイッチがオンしてから所定時間後にオフになっても、第1の放電抵抗により、電力線対間の電圧を規定電圧まで規定時間以下で低下させることができる。
【0011】
放電装置は、駆動回路及びスイッチの作動電力を生成する電源回路をさらに備え、駆動回路は、所定時間を計時するためのタイマを含んでもよい。電源回路は、第1の放電抵抗と電力線対の負極線との間に接続されるツェナーダイオードと、第1の放電抵抗とツェナーダイオードのカソードとの接続部に接続される電源ノードとを含み、駆動回路及びスイッチは、電源ノードから作動電力を受けるようにしてもよい。
【0012】
このような構成により、補機電源系(低圧電源系)から給電を受けることなく、タイマを含む駆動回路及びスイッチを作動させることができるので、仮に補機電源系の給電が停止しても、駆動回路及びスイッチを作動させることができる。
【0013】
また、本開示の電動コンプレッサは、冷媒圧縮部と、冷媒圧縮部を駆動するモータと、モータを駆動するインバータと、バッテリからインバータへ電力を供給する電力線対に設けられる上記の放電装置とを備える。
【0014】
この電動コンプレッサによれば、上記の放電装置を備えるので、放電装置の放電特性と損失抑制とを両立させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、放電回路の放電特性と損失抑制とを両立可能な放電装置及びそれを備える電動コンプレッサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施の形態に従う放電装置が適用された電動コンプレッサの全体構成図である。
【
図2】コンデンサの電圧と放電装置による放電時間との関係を説明する図である。
【
図3】コンパレータにより実行される処理手順の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
図1は、本開示の実施の形態に従う放電装置が適用された電動コンプレッサの全体構成図である。
図1を参照して、電動コンプレッサ1は、インバータ50と、モータ60と、冷媒圧縮部70と、放電装置20とを備える。
【0019】
インバータ50は、高電圧(例えば最大800V超)のバッテリ10からシステムリレー12、フィルタ14及び電力線対PL,NLを通じて供給される直流電力を交流電力に変換してモータ60を駆動する。モータ60は、例えば三相交流モータであり、冷媒圧縮部70を駆動する。冷媒圧縮部70は、図示しない冷凍サイクル装置に用いられる冷媒を圧縮する。冷媒圧縮部70の構造は、種々のタイプのものを採用可能であり、例えば、スクロールタイプ、ロータリータイプ、スクリュータイプ等を採用し得る。この電動コンプレッサ1は、例えば、自動車のエアコンに用いられる冷凍サイクル装置のコンプレッサとして用いられる。
【0020】
放電装置20は、コンデンサ22と、電圧検出回路24と、コンパレータ26と、放電回路30,40と、電源ノード36とを含む。
【0021】
コンデンサ22は、電力線PL(正極線)と電力線NL(負極線)との間に接続され、電力線対PL,NLに生じる電圧変動(リップル)を抑制する。
【0022】
電圧検出回路24は、電力線対PL,NL間の電圧VHを検出するための回路である。電圧検出回路24は、例えば、電力線PLと電力線NLと間に直列接続される高抵抗の複数の分圧抵抗によって構成され、分圧抵抗によって分圧された電圧がコンパレータ26の端子T2(SENSE端子)に入力される。端子T2に入力される電圧は、電圧VHに比例するため、端子T2に入力される電圧を用いて電圧VHを検出することができる。
【0023】
コンパレータ26は、IC(集積回路)によって構成され、電源ノード36から端子T1(VDD端子)に供給される作動電力を受けて作動する。コンパレータ26は、端子T2から入力される電圧を基準電圧と比較することによって電圧VHを所定電圧と比較し、その比較結果に応じて信号レベル(H/L)が切り替わる信号を端子T3(OUT端子)から出力する。
【0024】
端子T3から出力される信号は、放電回路40のスイッチ44(後述)に出力され、コンパレータ26は、端子T3から出力される信号によってスイッチ44を駆動する。具体的には、コンパレータ26は、端子T3から出力される信号によって、電圧VHが所定電圧以上であるときはスイッチ44をオフにし、電圧VHが所定電圧を下回るとスイッチ44をオンにする。コンパレータ26は、「駆動回路」の一実施例に対応する。
【0025】
コンパレータ26は、タイマ28を内蔵している。タイマ28は、電圧VHが所定電圧を下回ると計時を開始し、電圧VHが所定電圧を下回っている状態が所定時間(例えば数秒程度)継続したかを検知するのに用いられる。そして、コンパレータ26は、電圧VHが所定電圧を下回ると、スイッチ44をオンにするとともにタイマ28による計時を開始し、計時を開始してから所定時間経過すると、スイッチ44をオフにする。上記の所定電圧、所定時間、及びコンパレータ26の動作については、後ほど詳しく説明する。
【0026】
放電回路30は、電力線PLと電力線NLとの間に接続され、放電抵抗32と、ツェナーダイオード34とを含む。放電回路30は、コンデンサ22に並列に接続されており、例えば、電動コンプレッサ1が搭載される車両の衝突時に、システムリレー12がオフされて電動コンプレッサ1がバッテリ10から切り離された後、コンデンサ22の残留電荷を放電させることができる。
【0027】
ツェナーダイオード34は、放電抵抗32と電力線NLとの間に接続され、アノードが電力線NLに接続され、カソードが放電抵抗32に接続される。ツェナーダイオード34は、ツェナー電圧がコンパレータ26及び放電回路40のスイッチ44(後述)の作動電圧となるように設計されており、例えば、ツェナー電圧が15Vとなるように設計されている。
【0028】
電源ノード36は、放電抵抗32とツェナーダイオード34のカソードとの接続部に接続されている。この電源ノード36には、バッテリ10から電力線PL及び放電抵抗32を通じて電力が供給され、ツェナーダイオード34のツェナー電圧に相当する電圧が発生する。そして、タイマ28を含むコンパレータ26及び放電回路40のスイッチ44は、この電源ノード36から作動電力の供給を受けて作動する。
【0029】
放電回路40も、電力線PLと電力線NLとの間に接続され、放電抵抗42と、スイッチ44とを含む。この放電回路40も、コンデンサ22に並列に接続されており、放電回路30と同様に、コンデンサ22の残留電荷を放電させることができる。放電回路40は、放電回路30の損失を抑えつつコンデンサ22を規定時間内に放電可能とするために設けられるものであり、放電抵抗42の抵抗値は、放電回路30の放電抵抗32の抵抗値よりも小さい。
【0030】
なお、規定時間は、安全性の観点から、コンデンサ22を最大電圧(電圧VHの最大値)から規定電圧(例えば60V)以下まで放電する際の放電時間を規定するものであり、例えば5秒である。
【0031】
スイッチ44は、放電抵抗42に直列に接続され、この例では、放電抵抗42と電力線NLとの間に接続されている。スイッチ44は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やバイポーラトランジスタ等のスイッチング素子によって構成される。スイッチ44は、電源ノード36から作動電力を受け、コンパレータ26の端子T3(OUT端子)から出力される信号によりオン/オフ駆動される。
【0032】
放電回路40は、スイッチ44がオフされているときは機能せず、スイッチ44がオンされているときに、放電抵抗42を通じてコンデンサ22の残留電荷を放電させることができる。
【0033】
この電動コンプレッサ1では、例えば、電動コンプレッサ1が搭載される車両の衝突時に、システムリレー12がオフされて電動コンプレッサ1がバッテリ10から切り離された後、放電装置20を用いてコンデンサ22の残留電荷が放電される。
【0034】
コンデンサ22には、バッテリ10の電圧に相当する電荷が蓄えられるため、電動コンプレッサ1には、安全性の観点から、最大電圧(バッテリ10の最大電圧に相当)から規定電圧(例えば60V)まで規定時間(例えば5秒)以下でコンデンサ22を放電可能とする放電装置を設けることが要求される。
【0035】
本実施の形態に従う放電装置20では、並列に接続される2つの放電回路30,40を用いて2段階でコンデンサ22を放電させることにより、規定時間を守りつつ放電装置20の損失抑制を図っている。具体的には、電圧VHが高く、放電抵抗での損失が大きくなり得る領域では、相対的に抵抗値の大きい放電抵抗32を有する放電回路30を用い、電圧VHがある程度低下した領域では、放電抵抗32よりも抵抗値の小さい放電抵抗42により高速に放電可能な放電回路40も用いることで、上記の規定時間を守りつつ損失の抑制を図っている。
【0036】
図2は、コンデンサ22の電圧VHと放電装置20による放電時間との関係を説明する図である。
図2において、縦軸は、コンデンサ22が接続される電力線対PL,NL間の電圧VHを示し、横軸は、電動コンプレッサ1がバッテリ10から切り離され(システムリレー12がオフされ)、放電装置20による放電が開始されてからの放電時間を示す。
【0037】
図2を参照して、電圧Vmaxは、電圧VHの最大値を示し、バッテリ10の最大電圧に相当する。すなわち、電圧Vmaxは、バッテリ10の満充電状態時の電圧に相当し、例えば800V超である。時刻t1及び電圧V1は、放電装置20に要求される放電特性の要求値であり、安全性の観点から、電圧Vmaxから規定電圧のV1(例えば60V)まで規定時間t1(例えば5秒)以下でコンデンサ22を放電させることを要求するものである。
【0038】
線L1,L2は、放電回路30,40によりコンデンサ22が放電されるときの電圧VHの変化を示す。なお、参考用に、線L3は、仮に1つの放電回路(放電抵抗)によりコンデンサ22を放電する場合の電圧VHの変化を示す。
【0039】
線L1は、相対的に抵抗値の大きい放電抵抗32を有する放電回路30によって放電が行われる場合の電圧VHの変化を示す。線L2は、放電抵抗32よりも抵抗値の小さい放電抵抗42を有する放電回路40も用いて放電が行われる場合の電圧VHの変化を示す。電圧Vth(所定電圧)は、線L1から線L2に切り替わるしきい電圧である。すなわち、電圧VHがしきい電圧Vth以上であるときは、放電回路30(放電抵抗32)によって放電が行われ、電圧VHがしきい電圧Vthを下回ると、放電回路40(放電抵抗42)も用いて放電が行われる。なお、しきい電圧Vthは、放電抵抗32,42における発熱や損失を考慮して事前評価により設定され、例えば400V~500V程度である。
【0040】
上記の切替は、コンパレータ26と、放電回路40のスイッチ44とにより実現される。すなわち、コンパレータ26により電圧VHとしきい電圧Vth(所定電圧)とが比較され、電圧VH≧しきい電圧Vthであると、コンパレータ26によりスイッチ44はオフされる。スイッチ44がオフのときは、放電回路40による放電は行われず、放電回路30のみを用いて放電が行われる(線L1)。
【0041】
他方、電圧Vth<しきい電圧Vthであると、コンパレータ26によりスイッチ44がオンされる。スイッチ44がオンのときは、放電回路40による放電が行われ、放電回路40を用いて放電が行われる(線L2)。
【0042】
このように放電回路30,40を用いて2段階で放電を行うことにより、線L3で示される、1つの放電回路(放電抵抗)で放電を行う場合よりも、高電圧の領域(電圧VH≧しきい電圧Vth)では、放電回路30(放電抵抗32)の抵抗値を大きくすることで損失を低減でき、電圧VHがしきい電圧Vthを下回ると、高速に放電可能な放電回路40(放電抵抗42)によって規定時間t1内に電圧VHを規定電圧V1まで低下させることができる。
【0043】
しかしながら、このような2段階の放電においても、以下のような問題が生じる。すなわち、放電回路40の放電抵抗42の抵抗値を小さくすることでコンデンサ22の放電を速めることができるけれども、放電抵抗42の発熱や許容損失等の制約により、放電抵抗42の抵抗値を小さくすることには限界がある。放電抵抗42の抵抗値を小さくできない場合、放電の規定時間を守るために放電回路30の放電抵抗32の抵抗値を小さくする必要がある。しかしながら、放電抵抗32の抵抗値を小さくすると、放電抵抗32の発熱及び損失が増大してしまう。
【0044】
そこで、本実施の形態に従う放電装置20では、電圧VHがしきい電圧Vthを下回ることにより放電回路40においてスイッチ44がオンされて放電抵抗42による放電が開始された後、所定時間が経過すると、放電回路40のスイッチ44をオフにする。詳しくは、コンパレータ26は、電圧VHがしきい電圧Vthを下回ると、放電回路40のスイッチ44をオンにするとともに、内蔵のタイマ28により計時を開始し、所定時間が経過すると、放電回路40のスイッチ44をオフにする。これにより、放電回路40の放電抵抗42の発熱及び損失を所定時間に限定することができ、放電抵抗42の抵抗値を大きくしたり、放電抵抗32の抵抗値を小さくしたりする必要がない。
【0045】
なお、最大電圧のVmaxから規定電圧V1まで規定時間t1以下でコンデンサ22を放電させるように放電抵抗32,42の抵抗値が設計されていることを考慮すると、スイッチ44がオンになってからオフにするまでの所定時間は、規定時間t1あれば十分であり、この例では、スイッチ44をオフにするまでの所定時間は、規定時間t1と同等(例えば5秒)に設定される。
【0046】
また、所定時間の経過によりスイッチ44がオフになった後も、規定電圧V1まで規定時間t1以下でコンデンサ22を放電可能とすることが要求されるため、放電回路30の放電抵抗32の抵抗値は、最も条件の厳しいしきい電圧Vthから規定電圧V1まで規定時間t1以下でコンデンサ22を放電可能な抵抗値以下の値に設定される。抵抗値は大きい方が発熱及び損失を小さくできることから、放電抵抗32の抵抗値は、例えば、しきい電圧Vthから規定電圧V1まで規定時間t1でコンデンサ22を放電可能な抵抗値に設定される。
【0047】
なお、所定時間の経過によりオフとなったスイッチ44は、電圧VHがしきい電圧Vth以上となり、その後電圧VHが再びしきい電圧Vthを下回ると、コンパレータ26によりオンされる。
【0048】
図3は、コンパレータ26により実行される処理手順の一例を説明するフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、所定の制御周期毎に、或いは所定の実行条件が成立する毎に、繰り返し実行される。
【0049】
図3を参照して、コンパレータ26は、端子T2(SENSE端子)に入力される電圧を基準電圧と比較することによって、電圧VHがしきい電圧Vth(所定電圧)よりも低いか否かを判定する(ステップS10)。電圧VHがしきい電圧Vth以上であるときは(ステップS10においてNO)、後述のステップS60へ処理が移行される。
【0050】
ステップS10において電圧VHがしきい電圧Vthよりも低いと判定されると(ステップS10においてYES)、コンパレータ26は、放電回路40のスイッチ44をオンにするとともに(ステップS20)、内蔵のタイマ28による計時を開始する(ステップS30)。
【0051】
コンパレータ26は、タイマ28による計時中も、電圧VHがしきい電圧Vthよりも低いか否かを監視する(ステップS40)。そして、電圧VHがしきい電圧Vth以上となったときは(ステップS40においてNO)、後述のステップS60へ処理が移行される。
【0052】
ステップS40において電圧VHがしきい電圧Vthよりも低いと判定されると(ステップS40においてYES)、コンパレータ26は、タイマ28により計時される時間が所定時間経過したか否かを判定する(ステップS50)。タイマ28による計時時間が所定時間経過していないときは(ステップS50においてNO)、ステップS40に処理が戻される。
【0053】
そして、ステップS50においてタイマ28による計時時間が所定時間経過したと判定されると(ステップS50においてYES)、コンパレータ26は、放電回路40のスイッチ44をオフにする(ステップS60)。なお、上述のように、ステップS10又はステップS40において電圧VHがしきい電圧Vth以上であると判定された場合も(ステップS10又はステップS40においてNO)、ステップS60において放電回路40のスイッチ44がオフにされる。その後、コンパレータ26は、タイマ28による計時をリセットする(ステップS70)。
【0054】
以上のように、この実施の形態においては、コンデンサ22を放電する放電装置20は、2つの放電回路30,40を含む。コンパレータ26は、電圧検出回路24により検出される電力線対PL,NL間の電圧VHをしきい電圧Vthと比較し、電圧VHがしきい電圧Vthを下回ると、放電回路40のスイッチ44をオンにする。これにより、放電装置20の放電特性が確保される一方で、放電回路40の放電抵抗42の発熱及び損失が懸念されるところ、この放電装置20では、コンパレータ26が、スイッチ44をオンにしてから所定時間後にスイッチ44をオフにするので、放電抵抗42の発熱及び損失を所定時間に限定することができる。したがって、この実施の形態によれば、放電装置20の放電特性と損失抑制とを両立させることができる。
【0055】
また、この実施の形態においては、放電回路30の放電抵抗32は、コンデンサ22が放電抵抗32を通じて放電する場合に、電圧VHをしきい電圧Vthから規定電圧V1まで規定時間t1以下で低下させるように構成される。したがって、放電回路40のスイッチ44がオンしてから所定時間後にオフになっても、放電抵抗32により、コンデンサ22を規定電圧V1まで規定時間t1以下で放電させることができる。
【0056】
また、この実施の形態においては、ツェナーダイオード34と、ツェナーダイオード34のカソードに接続される電源ノード36とによって電源回路が構成され、コンパレータ26及びスイッチ44は、電源ノード36から作動電力を受ける。これにより、補機電源系(低圧電源系)から給電を受けることなく、コンパレータ26及びスイッチ44を作動させることができるので、仮に補機電源系の給電が停止しても、コンパレータ26及びスイッチ44を作動させることができる。
【0057】
[付記]
上述した実施の形態は、以下の付記の具体例である。
【0058】
(付記1)
放電装置は、
電力線対間に接続されるコンデンサと、
前記コンデンサに並列に接続される第1の放電回路と、
前記コンデンサに並列に接続される第2の放電回路とを備え、
前記第1の放電回路は、第1の放電抵抗を含み、
前記第2の放電回路は、
前記第1の放電抵抗よりも抵抗値の小さい第2の放電抵抗と、
前記第2の放電抵抗に直列に接続されるスイッチとを含み、さらに、
前記電力線対間の電圧が所定電圧以上のとき、前記スイッチをオフにし、前記電力線対間の電圧が前記所定電圧を下回ると、前記スイッチをオンにする駆動回路を備え、
前記駆動回路は、前記スイッチをオンにしてから所定時間後に前記スイッチをオフにするように構成される。
【0059】
(付記2)
付記1に記載の放電装置において、
前記第1の放電抵抗は、前記コンデンサが前記第1の放電抵抗を通じて放電する場合に、前記電力線対間の電圧を前記所定電圧から規定電圧まで規定時間以下で低下させるように構成される。
【0060】
(付記3)
付記1又は付記2に記載の放電装置において、
放電装置は、前記駆動回路及び前記スイッチの作動電力を生成する電源回路をさらに備え、
前記駆動回路は、前記所定時間を計時するためのタイマを含み、
前記電源回路は、
前記第1の放電抵抗と前記電力線対の負極線との間に接続されるツェナーダイオードと、
前記第1の放電抵抗と前記ツェナーダイオードのカソードとの接続部に接続される電源ノードとを含み、
前記駆動回路及び前記スイッチは、前記電源ノードから前記作動電力を受ける。
【0061】
(付記4)
電動コンプレッサは、
冷媒圧縮部と、
前記冷媒圧縮部を駆動するモータと、
前記モータを駆動するインバータと、
バッテリから前記インバータへ電力を供給する電力線対に設けられる、付記1から付記3のいずれかに記載の放電装置とを備える。
【0062】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 電動コンプレッサ、10 バッテリ、12 システムリレー、14 フィルタ、20 放電装置、22 コンデンサ、24 電圧検出回路、26 コンパレータ、28 タイマ、30,40 放電回路、32,42 放電抵抗、34 ツェナーダイオード、36 電源ノード、44 スイッチ、50 インバータ、60 モータ、70 冷媒圧縮部、PL,NL 電力線。