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特開2024-128629光学積層体および該光学積層体を用いた画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128629
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】光学積層体および該光学積層体を用いた画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240913BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALN20240913BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALN20240913BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/13363
G02F1/1335 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037709
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長原 一平
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 寛教
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB05
2H149BA02
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA33
2H149DA34
2H149EA02
2H149EA06
2H149EA12
2H149EA19
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA05Y
2H149FA26Y
2H149FD05
2H149FD07
2H291FA22X
2H291FA30X
2H291FA40X
2H291FA94X
2H291FA95X
2H291FB05
2H291FC05
2H291FC08
2H291LA25
2H291PA24
2H291PA25
2H291PA52
2H291PA54
2H291PA87
(57)【要約】
【課題】斜め方向から見たときに偏光子の吸収軸に対して所定角度の範囲において優れた反射防止特性を有する光学積層体を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による光学積層体は、偏光子を含む偏光板と、第1位相差層と、第2位相差層と、をこの順に有し;吸収軸方向輝度BAおよび透過軸方向輝度BTが下記の関係を満足する。
BT/BA≧2.0
ここで、吸収軸方向輝度BAは、偏光子側から光が入射したとき、偏光子側から見て極角60°、偏光子の吸収軸に対して方位角315°~45°および135°~225°における平均輝度をいい;透過軸方向輝度BTは、偏光子側から光が入射したとき、偏光子側から見て極角60°、偏光子の吸収軸に対して方位角45°~135°および225°~315°における平均輝度をいう。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子を含む偏光板と、第1位相差層と、第2位相差層と、をこの順に有し、
吸収軸方向輝度BAおよび透過軸方向輝度BTが下記の関係を満足する、光学積層体:
BT/BA≧2.0
ここで、吸収軸方向輝度BAは、偏光子側から光が入射したとき、偏光子側から見て極角60°、偏光子の吸収軸に対して方位角315°~45°および135°~225°における平均輝度をいい;透過軸方向輝度BTは、偏光子側から光が入射したとき、偏光子側から見て極角60°、偏光子の吸収軸に対して方位角45°~135°および225°~315°における平均輝度をいう。
【請求項2】
前記吸収軸方向輝度BAが、入射光の輝度に対して5%以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記第1位相差層のRe1(550)および前記第2位相差層のRe2(550)が、Re1(550)≧Re2(550)の関係を満足する、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記第1位相差層のRe1(550)が160nm~200nmであり、
前記第2位相差層のRe2(550)が、
{Re1(550)/2}-20≦Re2(550)≦{Re1(550)/2}+20
の関係を満たす、請求項3に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記第1位相差層のNz1が0.20~0.70であり、および、前記第2位相差層のNz2が1.10以上である、請求項1に記載の光学積層体:ここで、Nz1は第1位相差層のNz係数であり、Nz2は第2位相差層のNz係数である。
【請求項6】
前記第1位相差層が、1.05≦Re1(450)/Re1(550)≦1.20の関係を満たし、
前記第2位相差層が、0.95≦Re2(450)/Re2(550)≦1.05の関係を満たす、
請求項1に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記偏光子の吸収軸方向と前記第1位相差層の遅相軸方向とのなす角度θ1が10°~20°であり、
該偏光子の吸収軸方向と前記第2位相差層の遅相軸方向とのなす角度θ2が57°~67°である、
請求項1に記載の光学積層体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の光学積層体を備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体および該光学積層体を用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置には、多くの場合、位相差フィルムを含む光学積層体(例えば、偏光板と位相差フィルムとを一体化した反射防止フィルム)が用いられている。ここで、画像表示装置の普及に伴い、画像表示装置の大型化および/または屋外設置が広まっており、その結果、画像表示装置に従来とは異なる特性が求められる場合が生じている。例えば、商業ビルに設置されたデジタルサイネージにおいては、従来とは異なる視野角特性が求められる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-137939号公報
【特許文献2】特許第5745686号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、斜め方向から見たときに偏光子の吸収軸に対して所定角度の範囲において優れた反射防止特性を有する光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による光学積層体は、偏光子を含む偏光板と、第1位相差層と、第2位相差層と、をこの順に有し; 吸収軸方向輝度BAおよび透過軸方向輝度BTが下記の関係を満足する。
BT/BA≧2.0
ここで、吸収軸方向輝度BAは、偏光子側から光が入射したとき、偏光子側から見て極角60°、偏光子の吸収軸に対して方位角315°~45°および135°~225°における平均輝度をいい;透過軸方向輝度BTは、偏光子側から光が入射したとき、偏光子側から見て極角60°、偏光子の吸収軸に対して方位角45°~135°および225°~315°における平均輝度をいう。
[2]上記[1]において、上記吸収軸方向輝度BAは、入射光の輝度に対して5%以下である。
[3]上記[1]または[2]において、上記第1位相差層のRe1(550)および上記第2位相差層のRe2(550)は、Re1(550)≧Re2(550)の関係を満足する。
[4]上記[3]において、上記第1位相差層のRe1(550)は160nm~200nmであり、上記第2位相差層のRe2(550)は、
{Re1(550)/2}-20≦Re2(550)≦{Re1(550)/2}+20
の関係を満たす。
[5]上記[1]から[4]のいずれかにおいて、上記第1位相差層のNz1は0.20~0.70であり、および、上記第2位相差層のNz2は1.10以上である。ここで、Nz1は第1位相差層のNz係数であり、Nz2は第2位相差層のNz係数である。
[6]上記[1]から[5]のいずれかにおいて、上記第1位相差層は、1.05≦Re1(450)/Re1(550)≦1.20の関係を満たし;上記第2位相差層は、0.95≦Re2(450)/Re2(550)≦1.05の関係を満たす。
[7]上記[1]から[6]のいずれかにおいて、上記偏光子の吸収軸方向と上記第1位相差層の遅相軸方向とのなす角度θ1は10°~20°であり、該偏光子の吸収軸方向と上記第2位相差層の遅相軸方向とのなす角度θ2は57°~67°である。
[8]本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。当該画像表示装置は、上記[1]から[7]のいずれかの光学積層体を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、斜め方向から見たときに偏光子の吸収軸に対して所定角度の範囲において優れた反射防止特性を有する光学積層体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
(6)添え字
本明細書における添え字「1」は第1位相差層を意味し、「2」は第2位相差層を意味する。例えば、Nz1は第1位相差層のNz係数を意味し、Re2(550)は第2位相差層の面内位相差を意味する。
【0010】
A.光学積層体
図1は、本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。図示例の光学積層体100は、偏光板10と、第1位相差層21と、第2位相差層22と、を図面の上側からこの順に有する。図面の上側が視認側となり、図面の下側が画像表示パネル側となる。偏光板10は、偏光子11と、偏光子11の一方の側(図示例では視認側)に配置された保護層12と、を含む。図示例の偏光板は、いわゆる片保護偏光板である。目的に応じて、偏光子11の保護層12と反対側に別の保護層(内側保護層:図示せず)が配置されていてもよい。すなわち、偏光板は両保護偏光板であってもよい。光学積層体の薄型化の観点から、内側保護層は省略され得る。第1位相差層21と第2位相差層22とは、代表的には図示例のように、隣接して配置されている。本明細書において「隣接して配置」とは、第1位相差層21と第2位相差層22との間に他の光学機能層が介在しないことをいう。第1位相差層21と第2位相差層22とは、一方が他方に直接形成されていてもよく(例えば、一方が他方の表面に塗布形成されたコーティング層であってもよく)、任意の適切な接着層(例えば、接着剤層、粘着剤層)を介して積層されていてもよい。
【0011】
本発明の実施形態においては、吸収軸方向輝度BAおよび透過軸方向輝度BTが下記の関係を満足する。
BT/BA≧2.0
ここで、吸収軸方向輝度BAは、偏光子側から光が入射したとき、偏光子側から見て極角60°、全方位角について5°ごとに輝度を測定したときの偏光子の吸収軸に対して方位角315°~45°(-45°~+45°)および135°~225°における平均輝度をいい;透過軸方向輝度BTは、偏光子側から光が入射したとき、偏光子側から見て極角60°、全方位角について5°ごとに輝度を測定したときの偏光子の吸収軸に対して方位角45°~135°および225°~315°における平均輝度をいう。BT/BAは、例えば2.5以上であり、好ましくは3.0以上であり、より好ましくは3.5以上であり、さらに好ましくは4.0以上であり、特に好ましくは4.5以上であり、とりわけ好ましくは5.0以上である。BT/BAは、例えば7.5以下であり得、また例えば6.5以下であり得る。本発明の実施形態による光学積層体は、偏光子の吸収軸方向から所定範囲の角度において斜め方向から見たときの輝度が小さい(すなわち、斜め方向の光漏れが良好に抑制されている)。すなわち、当該光学積層体は、特定の視野角において斜め方向から見たときに優れた反射防止特性を有する。一方、当該光学積層体は、偏光子の吸収軸方向から上記範囲外の角度においては、斜め方向から見たときの輝度が大きい。本発明の実施形態によれば、偏光子の吸収軸方向から所定範囲外の角度における斜め方向の反射防止特性を犠牲にしても、偏光子の吸収軸方向から所定範囲の角度において斜め方向の光漏れを小さくすることにより、きわめて大型化された画像表示装置および屋外設置される画像表示装置に有用な光学積層体を実現することができる。例えば、商業ビルに設置されたデジタルサイネージにおいては、視認者はほとんどの場合、表示画像を下から見上げることとなる。このような場合に、デジタルサイネージに適用される光学積層体の偏光子の吸収軸方向を調整することにより、ほとんどが見上げて視認されるデジタルサイネージにおいて最も頻繁に視認される領域(視野角)に優れた反射防止特性を付与し、上記のような特定の状況下における表示画像の視認性を高めることができる。視野角特性は全方位角について特性を改善することが技術常識であるところ、本発明の実施形態は、特定の方位角における特性を犠牲にしても所望の方位角における特性(代表的には、斜め方向の反射防止特性)を良好にするものであり、業界の技術常識とは異なる技術的思想に基づくものである。
【0012】
吸収軸方向輝度BAは、入射光の輝度に対して、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下である。吸収軸方向輝度BAがこのような範囲であれば、上記所望のBT/BAの実現が容易になり得る。吸収軸方向輝度BAは小さいほど好ましく、その下限は、入射光の輝度に対して例えば0.5%であり得る。なお、本明細書において「入射光の輝度」とは、光源からの光を正面から光学積層体に入射させ、理想的に反射したと仮定した場合の正面輝度をシンテック社製「LCDMaster 1D」で算出したものを意味する。
【0013】
偏光子11の吸収軸方向と第1位相差層21の遅相軸方向とのなす角度θ1は、代表的には10°~20°であり、好ましくは12°~18°であり、より好ましくは14°~16°であり、さらに好ましくは約15°である。偏光子11の吸収軸方向と第2位相差層22の遅相軸方向とのなす角度θ2は、代表的には58°~68°であり、好ましくは59°~67°であり、より好ましくは62°~65°であり、さらに好ましくは約64°である。第1位相差層21の遅相軸方向と第2位相差層22の遅相軸方向とのなす角度は、代表的には40°~60°であり、好ましくは45°~55°であり、より好ましくは48°~52°であり、さらに好ましくは約49°である。偏光子の吸収軸方向、第1位相差層の遅相軸方向、および、第2位相差層の遅相軸方向がこのような関係であれば、上記のような特定の視野角特性(具体的には、上記所望のBT/BA)が実現され得る。
【0014】
以下、第1位相差層および第2位相差層の面内位相差、厚み方向位相差(結果として、Nz係数)、および波長分散特性、ならびにそれらの関係性についてより詳細に説明する。なお、第1位相差層および第2位相差層の構成については、それぞれC項およびD項で後述する。
【0015】
第1位相差層のRe1(550)および第2位相差層のRe2(550)は、代表的には、Re1(550)≧Re2(550)の関係を満足する。より詳細には、第1位相差層のRe1(550)は、例えば120nm~240nmであり、好ましくは160nm~200nmであり、より好ましくは165nm~195nmであり、さらに好ましくは170nm~190nmであり、特に好ましくは175nm~185nmであり、とりわけ好ましくは約180nmである。このように、第1位相差層は、代表的にはλ/2板としてもλ/4板としても機能しない特定の面内位相差を有する。第1位相差層がこのような特定の面内位相差を有する場合には、上記のような軸角度の構成において吸収軸方向輝度をより所望の範囲とすることができる。
【0016】
第2位相差層のRe2(550)は、第1位相差層のRe1(550)に対して、好ましくは以下の関係を満たす。
{Re1(550)/2}-20≦Re2(550)≦{Re1(550)/2}+20
具体的には、Re2(550)は、好ましくは60nm~120nmであり、より好ましくは70nm~110nmであり、さらに好ましくは80nm~100nmであり、特に好ましくは85nm~95nmであり、とりわけ好ましくは約90nmである。このように、第2位相差層も第1位相差層と同様に、λ/2板としてもλ/4板としても機能しない特定の面内位相差を有する。第2位相差層がこのような特定の面内位相差を有する場合には、上記のような軸角度の構成において吸収軸方向輝度をより所望の範囲とすることができる。
【0017】
Nz1は、例えば0.10~0.80であり、好ましくは0.20~0.70であり、より好ましくは0.25~0.65であり、さらに好ましくは0.30~0.60であり、特に好ましくは0.35~0.55であり、とりわけ好ましくは0.40~0.50である。すなわち、第1位相差層は、いわゆるZフィルムであり、nx>nz>nyの屈折率特性を示す。Nz2は、好ましくは1.10以上であり、より好ましくは1.11~1.25であり、さらに好ましくは1.12~1.20であり、特に好ましくは1.12~1.17であり、とりわけ好ましくは約1.12である。すなわち、第2位相差層はネガティブBプレートであり、nx>ny>nzの屈折率特性を示す。Nz1およびNz2がこのような範囲であれば、斜め方向の光抜けを抑制することができる。特に、視野角が大きい(すなわち、正面方向からの傾斜が大きい:例えば極角が50°以上である)場合に、効果が顕著なものとなり得る。
【0018】
第1位相差層は、代表的には、1.05≦Re1(450)/Re1(550)≦1.20の関係を満たす。すなわち、第1位相差層は、代表的には正の波長分散特性を有する。このような構成であれば、安価でかつ汎用性の高い材料を用いて上記所望のNz1を実現し得る。Re1(450)/Re1(550)は、好ましくは1.07~1.18であり、より好ましくは1.10~1.15である。
【0019】
第2位相差層は、代表的には、0.95≦Re2(450)/Re2(550)≦1.05の関係を満たす。すなわち、第2位相差層は、代表的にはフラットな波長分散特性を有する。このような構成であれば、比較的安価かつ工業的に汎用性のある材料を使用することができるという利点がある。Re2(450)/Re2(550)は、好ましくは0.98~1.03であり、より好ましくは1.00~1.02である。
【0020】
実用的には、光学積層体は、画像表示パネル側の最外層として粘着剤層(図示せず)を有し、画像表示パネルに貼り付け可能とされている。この場合、粘着剤層の表面には、光学積層体が使用に供されるまで、はく離ライナーが仮着されていることが好ましい。はく離ライナーを仮着することにより、粘着剤層を保護するとともに、光学積層体のロール形成が可能となる。
【0021】
以下、光学積層体の構成要素(偏光板、第1位相差層および第2位相差層)について上記以外の詳細を説明する。
【0022】
B.偏光板
B-1.偏光子
偏光子11としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。偏光子は、代表的には、二色性物質(例えば、ヨウ素)を含むポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムで構成されている。PVA系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体系部分ケン化物が挙げられる。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0023】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、PVA系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0024】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0025】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0026】
偏光子の厚みは、例えば12μm以下であり、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは1μm~8μmであり、さらに好ましくは3μm~7μmである。このような薄い偏光子と液晶配向固化層とを組み合わせることにより、光学積層体の顕著な薄型化が可能となる。また、偏光子の厚みが上記のような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0027】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、好ましくは41.0%~46.0%であり、より好ましくは42.0%~45.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。本発明の実施形態によれば、単体透過率が上記のような範囲であっても、偏光度をこのような範囲に維持することができる。
【0028】
B-2.保護層
保護層12および内側保護層(存在する場合)は、任意の適切な樹脂フィルムで構成される。樹脂フィルムを構成する材料としては、代表的には、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂の代表例としては、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2000-230016号公報、特開2001-151814号公報、特開2002-120326号公報、特開2002-254544号公報、特開2005-146084号公報に記載されている。これらの公報は、本明細書に参考として援用されている。異形加工の容易性等の観点から、セルロース系樹脂が好ましく、TACがより好ましい。透湿度が低く、耐久性に優れた偏光板が得られるという観点からは、シクロオレフィン系樹脂および(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0029】
光学積層体は、代表的には画像表示装置の視認側に配置され、保護層12は、代表的にはその視認側に配置される。したがって、保護層12には、必要に応じて、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理が挙げられる。さらに/あるいは、保護層12には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、光学積層体は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0030】
内側保護層(存在する場合)は、1つの実施形態においては、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。
【0031】
保護層12および内側保護層(存在する場合)の厚みは、それぞれ、好ましくは10μm~80μmであり、より好ましくは12μm~40μmであり、さらに好ましくは15μm~35μmである。なお、保護層12に表面処理が施されている場合、保護層12の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0032】
C.第1位相差層
第1位相差層は、樹脂フィルムで構成されていてもよく、液晶化合物の配向固化層(以下、液晶配向固化層)で構成されていてもよい。いずれの場合であっても、第1位相差層は、代表的には単一層である。このような構成であれば、積層体により位相差層を構成する場合に比べて、位相差層内の界面の急激な(不連続な)屈折率差を回避できるので、優れた外観を有する光学積層体が得られ得る。なお、本明細書において「単一層」とは、対象となる層が単一のフィルムまたは塗布膜等で構成されていることを意味する。言い換えれば、複数のフィルムおよび/または塗布膜等が積層されていないことを意味する。単一層は、例えば走査型電子顕微鏡で観察した断面において界面、隣接層との中間層(相溶層)等が認識されないことにより確認され得る。
【0033】
第1位相差層の厚みは、上記所望のRe1(550)が得られるように適切に設定され得る。第1位相差層が樹脂フィルムで構成されている場合、その厚みは、例えば20μm~60μmであり得;第1位相差層が液晶配向固化層で構成されている場合、その厚みは、例えば1μm~4μmであり得る。
【0034】
C-1.樹脂フィルム
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリアリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリビニルアルコール、ポリフマル酸エステル、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ノルボルネン樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂およびポリウレタンが挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。好ましくは、ポリアリレートまたはポリカーボネート樹脂であり、より好ましくは、ポリカーボネート樹脂または下記式(1)で表されるポリアリレートである。
【化1】
【0035】
式(1)において、AおよびBは、それぞれ、置換基を表し、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基であり、AおよびBは同一でも異なっていてもよい。aおよびbは、対応するAおよびBの置換数を表し、それぞれ、1~4の整数である。Dは、共有結合、CH基、C(CH基、C(CZ基(ここで、Zはハロゲン原子である)、CO基、O原子、S原子、SO基、Si(CHCH基、N(CH)基である。R1は、炭素原子数1~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基である。R2は、炭素原子数2~10の直鎖若しくは分岐のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基である。R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、R3、R4、R5およびR6は同一でも異なっていてもよい。p1は、0~3の整数であり、p2は、1~3の整数であり、nは、2以上の整数である。
【0036】
第1位相差層は、例えば、上記樹脂を任意の適切な溶媒に溶解または分散した塗布液を収縮性フィルムに塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を収縮させることにより形成され得る。代表的には、塗膜の収縮は、収縮性フィルムと塗膜との積層体を加熱して収縮性フィルムを収縮させ、このような収縮性フィルムの収縮により塗膜を収縮させる。塗膜の収縮率は、好ましくは0.50~0.99であり、より好ましくは0.60~0.98であり、さらに好ましくは、0.70~0.95である。加熱温度は、好ましくは130℃~170℃であり、より好ましくは150℃~160℃である。1つの実施形態においては、塗膜を収縮させる際に、当該収縮方向と直交する方向に積層体を延伸してもよい。この場合、積層体の延伸倍率は、好ましくは1.01倍~3.0倍であり、より好ましくは1.05倍~2.0倍であり、さらに好ましくは1.10倍~1.50倍である。収縮性フィルムを構成する材料の具体例としては、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアクリル、アセテート樹脂、ポリアリレート、ポリビニルアルコール、液晶ポリマーが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。収縮性フィルムは、好ましくは、これらの材料から形成される延伸フィルムである。
【0037】
C-2.液晶配向固化層
液晶配向固化層を形成する液晶性組成物は、代表的には、側鎖型サーモトロピック液晶ポリマーと光重合性のサーモトロピック液晶化合物(モノマー)とを含む。好ましくは、液晶性組成物は、光重合開始剤をさらに含む。
【0038】
C-2-1.側鎖型液晶ポリマー
側鎖型サーモトロピック液晶ポリマーとしては、代表的には、サーモトロピック液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニットと、非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニットとを有するコポリマーが用いられる。ポリマーが側鎖にサーモトロピック液晶性フラグメントを有することにより、液晶性組成物を所定温度に加熱した際に、側鎖型液晶ポリマーが配向し得る。また、側鎖型ポリマーが側鎖に非液晶性フラグメントを有することにより、非液晶性フラグメントが光重合性液晶モノマーと相互作用して、光重合性液晶モノマーをホメオトロピック配向させる作用が生じ得る。
【0039】
側鎖型サーモトロピック液晶ポリマーとしては、一般式(I)で表される液晶性モノマーユニットと、一般式(II)で表される非液晶性モノマーユニットとを有するコポリマーが好ましく用いられる。
【化2】
【化3】
【0040】
式(I)において、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは、シアノ基、フルオロ基、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、Xは-CO-または-OCO-である。aは1~6の整数であり、bおよびcは、それぞれ独立に1または2である。
【0041】
式(II)において、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数7~22のアルキル基、炭素数1~22のフルオロアルキル基、または下記一般式(III)で表される基である。
【化4】
【0042】
式(III)において、Rは炭素数1~5のアルキル基であり、dは1~6の整数である。
【0043】
側鎖型液晶モノマーにおける液晶性モノマーユニットと非液晶性モノマーユニットの比率は、目的に応じて適切に設定され得る。液晶性モノマーユニットと非液晶性モノマーユニットの合計に対する非液晶性モノマーの割合(モル比)は、好ましくは0.05~0.8であり、より好ましくは0.1~0.6であり、さらに好ましくは0.15~0.5である。このような構成であれば、所望の屈折率特性(Nz係数)を示す液晶配向固化層が得られ得る。
【0044】
C-2-2.光重合性サーモトロピック液晶モノマー
光重合性サーモトロピック液晶モノマーは、1分子中にメソゲン基と少なくとも1つの光重合性官能基とを有する。メソゲン基としては、任意の適切なメソゲン基が挙げられる。具体例としては、ビフェニル基、フェニルベンゾエート基が挙げられる。光重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、ビニルエーテル基が挙げられる。好ましくは、光重合性サーモトロピック液晶モノマーは、1分子中に2以上の光重合性官能基を有する。このようなモノマーの代表例としては、BASF社製「Paliocolor LC242」が挙げられる。
【0045】
C-2-3.組成
液晶性組成物中の光重合性液晶化合物と側鎖型液晶ポリマーの比率は、目的に応じて適切に設定され得る。側鎖型液晶ポリマーの含有量が多い場合は、Nz係数が小さくなる傾向があり;光重合性液晶化合物の含有量が多い場合は、Nz係数が小さくなる傾向がある。光重合性液晶化合物の含有量は、側鎖型液晶ポリマーの含有量に対して、好ましくは1.2倍~20倍であり、より好ましくは1.3倍~10倍であり、さらに好ましくは1.4倍~9倍であり、特に好ましくは1.5倍~8倍である。このような構成であれば、所望の屈折率特性(Nz係数)を示す液晶配向固化層が得られ得る。
【0046】
C-2-4.液晶配向固化層の形成方法
液晶配向固化層は、側鎖型サーモトロピック液晶ポリマーと光重合性サーモトロピック液晶モノマーと必要に応じて光重合開始剤とを任意の適切な溶媒に溶解した溶液を所定の基板に塗布し、加熱により液晶状態として液晶性分子を配向させた後、冷却により配向を固定化し、光照射により液晶モノマーを重合または架橋することにより形成され得る。
【0047】
基板としては、代表的には、配向膜が設けられていない延伸樹脂フィルムが用いられ得る。延伸樹脂フィルムを用いることにより、光重合性液晶化合物に対して、側鎖型液晶ポリマーとの相互作用によるホメオトロピック配向作用と、延伸樹脂フィルムを構成するポリマーの分子配向に起因するホモジニアス配向作用と、が働く。これらの配向作用をバランスさせることにより、液晶配向固化層の屈折率特性(Nz係数)を制御することができる。基板を構成する樹脂としては、液晶性組成物の溶媒に溶解せず、かつ液晶性組成物を配向させるための加熱時の耐熱性を有する限りにおいて、任意の適切な樹脂が用いられ得る。具体例としては、シクロオレフィン系樹脂(例えば、ノルボルネン系樹脂)が挙げられる。
【0048】
基板のRe(550)は、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは400nm以下である。基板のRe(550)は、例えば10nm以上であり得る。基板のRe(550)が過度に大きいと、基板を構成するポリマーの分子配向に起因するホモジニアス配向作用が大きくなり、Nz係数が大きくなる傾向がある。
【0049】
基板の液晶性組成物が塗布される表面は、算術平均粗さRaが、好ましくは3nm以下であり、より好ましくは2nm以下であり、さらに好ましくは1.5nm以下である。このような構成であれば、液晶配向固化層の配向欠陥が低減され得る。
【0050】
基板に形成された液晶性組成物層(塗布膜)を加熱して液晶相とすることにより、側鎖型液晶ポリマーはホメオトロピック配向し得る。その際、側鎖型液晶ポリマーの非液晶性フラグメントとの相互作用により、光重合性液晶化合物にはホメオトロピック配向作用が生じ得る。加熱温度が高いほど厚み方向の屈折率nzが小さくなる傾向にある。すなわち、加熱温度が低い場合は、液晶モノマーの非液晶フラグメントと光重合性液晶化合物との相互作用が強く、光重合性液晶化合物はホメオトロピック配向が優勢となるのに対して、加熱温度が高くなるにつれて、延伸フィルム基板の配向規制力の影響が強くなり、光重合性液晶化合物はホモジニアス配向が優勢になると考えられる。したがって、加熱温度を制御することにより、所望の屈折率特性(Nz係数)を示す液晶配向固化層が得られ得る。
【0051】
Zフィルムを構成し得る液晶配向固化層の詳細は、特許第6769921号に記載されている。当該特許の記載は本明細書に参考として援用される。
【0052】
D.第2位相差層
第2位相差層は、代表的には、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成され得る。第2位相差層は、第1位相差層と同様に、代表的には単一層である。このような構成であれば、積層体により位相差層を構成する場合に比べて、位相差層内の界面の急激な(不連続な)屈折率差を回避できるので、優れた外観を有する光学積層体が得られ得る。
【0053】
第2位相差層を構成する樹脂としては、上記所望のRe2(550)およびNz2を実現し得る任意の適切な樹脂が採用され得る。そのような樹脂の代表例としては、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。中でも、環状オレフィン系樹脂が好適に用いられ得る。第2位相差層は、例えば、上記樹脂から形成されたフィルムを延伸することにより得られる。延伸条件を調整することにより、上記所望のRe2(550)およびNz2を有する第2位相差層が得られ得る。延伸条件としては、例えば、延伸モード(例えば、固定端一軸延伸、自由端一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸)、延伸温度、延伸速度、延伸倍率が挙げられる。環状オレフィン系樹脂および樹脂フィルムの延伸方法(位相差層の形成方法)の詳細については、例えば、特開2015-210459号公報、特開2016-105166号公報に記載されている。これらの公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0054】
第2位相差層の厚みは、上記所望のRe2(550)が得られるように適切に設定され得る。具体的には、第2位相差層の厚みは、例えば10μm~150μmであり得る。
【0055】
E.画像表示装置
上記A項~D項に記載の光学積層体は、画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明の実施形態は、そのような光学積層体を用いた画像表示装置も包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機EL表示装置が挙げられる。本発明の実施形態による画像表示装置は、代表的には、その視認側に上記A項~D項に記載の光学積層体を備える。
【実施例0056】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における測定方法および評価方法は以下のとおりである。
【0057】
(1)面内位相差Re(550)、厚み方向位相差Rth(550)およびNz係数
Re(550)およびRth(550)は、AXOMETRICS社製の「AXO-Scan」を用いて測定した。Nz係数はRth/Reから算出した。
【0058】
(2)吸収軸方向輝度BAおよびBT/BA
実施例および比較例で得られた光学積層体と同等の構成について、シンテック社製「LCDMaster 1D」を用いて、全方位角について5°ごとに極角60°の黒表示の輝度をシミュレーションした。偏光子側から光を入射させたとき、偏光子側から見て極角60°、偏光子の吸収軸に対して方位角315°~45°および135°~225°における平均輝度を吸収軸方向輝度BAとし;偏光子側から光を入射させたとき、偏光子側から見て極角60°、偏光子の吸収軸に対して方位角45°~135°および225°~315°における平均輝度を透過軸方向輝度BTとし;これらからBT/BAを算出した。
さらに、吸収軸方向輝度BAの入射光の輝度に対する割合(%)を算出した。入射光の輝度は、光源からの光を正面から光学積層体に入射させ、理想的に反射したと仮定した場合の正面輝度をシンテック社製「LCDMaster 1D」で算出した。
【0059】
[実施例1]
1.偏光板の作製
1-1.偏光子の作製
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの偏光子を形成し、樹脂基材/偏光子の構成を有する偏光板を得た。偏光子の単体透過率Tsは43.3%であった。
【0060】
1-2.偏光板の作製
得られた偏光子の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、紫外線硬化型接着剤を介して、HC-TACフィルムを貼り合わせた。なお、HC-TACフィルムは、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み25μm)にHC層(厚み7μm)が形成されたフィルムであり、TACフィルムが偏光子側となるようにして貼り合わせた。次いで、樹脂基材を剥離してHC層/TACフィルム(保護層)/偏光子の構成を有する偏光板を得た。
【0061】
2.第1位相差層の作製
下記の化学式(n=0.35であり、便宜上ブロックポリマー体で示している)の重量平均分子量5000の側鎖型液晶ポリマーと、サーモトロピックネマチック液晶相を示す重合性液晶モノマー(BASF製「Paliocolor LC242」)とを合計100重量部、および光重合開始剤(BASF製「イルガキュア907」)5重量部を、シクロペンタノン400重量部に溶解して液晶性組成物を調製した。側鎖型液晶ポリマー/重合性液晶モノマーの重量比は10/6であった。二軸延伸ノルボルネン系フィルム(日本ゼオン製「ゼオノアフィルム」、厚み;52μm、Re(550);50nm、液晶性組成物塗布面のRa;1.2nm)の表面に、マイヤーバー(#4)を用いて上記の液晶性組成物を塗布し、100℃で2分間加熱して液晶を配向させた。その後、室温に冷却して配向を固定し、窒素雰囲気下で700mJ/cmの紫外線を照射して、液晶モノマーを光硬化させ、第1位相差層を作製した。第1位相差層の厚みは2.9μm、Re1(550)は180nm、Re1(450)/Re1(550)は1.12、Nz1は0.4であった。
【化5】
【0062】
3.第2位相差層の作製
ノルボルネン系フィルム(日本ゼオン製「ゼオノアフィルム」)を延伸処理して、第2位相差層(位相差フィルム)を作製した。第2位相差層の厚みは100μm、Re2(550)は90nm、Re2(450)/Re2(550)は1.01、Nz1は1.12であった。
【0063】
4.光学積層体の作製
上記で得られた偏光板の偏光子表面に、紫外線硬化型接着剤(厚み1μm)を介して第1位相差層を貼り合わせた後、基材を剥離した。次いで、第1位相差層表面に、紫外線硬化型接着剤(厚み1μm)を介して第2位相差層を貼り合わせた。第1位相差層は、その遅相軸方向が偏光子の吸収軸方向と15°(遅相軸角度θ1)となるよう貼り合わせ;第2位相差層は、その遅相軸方向が偏光子の吸収軸方向と64°(遅相軸角度θ2)となるよう貼り合わせた。このようにして、光学積層体を作製した。得られた光学積層体を上記「吸収軸方向輝度BAおよびBT/BA」の評価に供した。結果を表1に示す。なお、表中の「吸収軸方向輝度BA」は、吸収軸方向輝度BAの入射光の輝度に対する割合(%)を示す。
【0064】
[実施例2~5]
Re1(550)およびNz1を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を作製した。なお、Re1(550)は液晶性組成物の塗布厚みを変えて調整し、Nz1は、側鎖型液晶ポリマー/重合性液晶モノマーの重量比を変えて調整した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0065】
[比較例1]
遅相軸角度θ2が75°となるように第2位相差層を貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0066】
[比較例2]
1.偏光板の作製
実施例1と同様にして、HC層/TACフィルム(保護層)/偏光子の構成を有する偏光板を得た。
【0067】
2.第1位相差層の作製
サーモトロピックネマチック液晶相を示す重合性液晶化合物(BASF社製「LC242」)をシクロペンタノンに溶解して、固形分濃度20重量%の溶液を調製した。この溶液に、重合開始剤、レベリング剤および架橋剤を所定量添加して、第1位相差層形成用塗工液を調製した。一方、基材として延伸ノルボルネン系フィルム(厚み:23μm)を準備した。この基材上に、上記の第1位相差層形成用塗工液をスピンコーターにより塗布し、100℃で3分間加熱して液晶化合物を配向させた。室温に冷却した後、窒素雰囲気下で、積算光量600mJ/cmの紫外線を照射して光硬化を行い、液晶化合物の配向状態を固定した。このようにして、基材上に第1位相差層を形成した。第1位相差層の厚みは2.6μm、Re1(550)は260nm、Re1(450)/Re1(550)は1.12、Nz1は1.0(すなわち、屈折率特性はnx>ny=nz)であった。
【0068】
3.第2位相差層の作製
塗布厚みを変えたこと以外は第1位相差層の場合と同様にして、基材上に第2位相差層を形成した。第2位相差層の厚みは1.3μm、Re2(550)は130nm、Re1(450)/Re1(550)は1.12、Nz1は1.0であった。
【0069】
4.光学積層体の作製
上記で得られた偏光板の偏光子表面に、紫外線硬化型接着剤(厚み1μm)を介して第1位相差層を貼り合わせた後、基材を剥離した。次いで、第1位相差層表面に、紫外線硬化型接着剤(厚み1μm)を介して第2位相差層を貼り合わせた後、基材を剥離した。第1位相差層は、その遅相軸角度θ1が15°となるよう貼り合わせ;第2位相差層は、その遅相軸角度θ2が75°となるよう貼り合わせた。このようにして、光学積層体を作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0070】
[比較例3~4]
Nz1およびNz2を表1に示すように変更したこと以外は比較例2と同様にして、光学積層体を作製した。なお、Nz1およびNz2はそれぞれ、ネガティブAプレート(nz=nx>ny)を作成して調整した。ネガティブAプレートは、特開2014-214177号公報の<実施例1>に記載の方法に準じて作製した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例6~9]
Re1(550)、Re2(550)、およびNz1を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を作製した。なお、Re1(550)は液晶性組成物の塗布厚みを変えて調整し、Re2(550)はノルボルネン系フィルムの延伸条件を変えて調整し、Nz1は、側鎖型液晶ポリマー/重合性液晶モノマーの重量比を変えて調整した。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1から明らかなように、本発明の実施例は比較例に比べて良好な吸収軸方向輝度BAおよび良好なBT/BAを示しており、斜め方向から見たときに偏光子の吸収軸に対して所定角度の範囲において優れた反射防止特性を有する光学積層体が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の実施形態による光学積層体は、画像表示装置(代表的には、液晶表示装置、有機EL表示装置)に好適に用いられ得、きわめて大型化された画像表示装置および屋外設置される画像表示装置に特に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0075】
10 偏光板
11 偏光子
12 保護層
21 第1位相差層
22 第2位相差層
100 光学積層体
図1