(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012863
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】火格子
(51)【国際特許分類】
F23H 1/02 20060101AFI20240124BHJP
F23H 7/12 20060101ALI20240124BHJP
F23G 5/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
F23H1/02
F23H7/12
F23G5/00 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114633
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 充彦
(72)【発明者】
【氏名】上山 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】鹿野谷 成章
【テーマコード(参考)】
3K261
【Fターム(参考)】
3K261BA03
3K261BA06
3K261BA17
(57)【要約】
【課題】火格子が配列された火床から被焼却物に均等に燃焼用空気が供給され、局所的な異常燃焼の発生を抑制可能な火格子を提供する。
【解決手段】
基端側が支持されるとともに、先端側の下面が被焼却物の搬送方向の下流側の火格子の背面に当接し、背面に前記搬送方向の上流側の火格子の先端側の下面が当接するように配置され、搬送方向の上流側または下流側の火格子との間の相対移動により背面で被焼却物を受け止めて搬送するストーカ式焼却炉の炉床を形成する火格子であって、背面13に、相対移動の際に前記上流側の火格子の前記下面17との間で当接状態を維持する基準面13Rが形成されるとともに、基準面に、上流側の火格子の下面との間で燃焼用空気を供給する給気口Gを形成する凹部13Dが搬送方向に沿う方向に連続して形成され、凹部は、相対移動に伴って給気口の形成位置が搬送方向に交差する幅方向において変位する変位領域を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側が支持されるとともに、先端側の下面が被焼却物の搬送方向の下流側の火格子の背面に当接し、背面に前記搬送方向の上流側の火格子の先端側の下面が当接するように配置され、前記搬送方向の上流側または下流側の火格子との間の相対移動により前記背面で被焼却物を受け止めて搬送するストーカ式焼却炉の炉床を形成する火格子であって、
前記背面に、前記相対移動の際に前記上流側の火格子の前記下面との間で当接状態を維持する基準面が形成されるとともに、前記基準面に、前記上流側の火格子の前記下面との間で燃焼用空気を供給する給気口を形成する凹部が前記搬送方向に沿う方向に連続して形成され、
前記凹部は、前記相対移動に伴って前記給気口の形成位置が前記搬送方向に交差する幅方向において変位する変位領域を含む火格子。
【請求項2】
前記凹部は、前記変位領域を挟んで前記基端側で前記幅方向の両側部に形成されるとともに、前記先端側で前記幅方向の中央部に形成されている請求項1記載の火格子。
【請求項3】
前記凹部は、前記変位領域を挟んで前記基端側で前記幅方向の中央部に形成されるとともに、前記先端側で前記幅方向の両側部に形成されている請求項1記載の火格子。
【請求項4】
基端側が支持されるとともに、先端側の下面が被焼却物の搬送方向の下流側の火格子の背面に当接し、背面に前記搬送方向の上流側の火格子の先端側の下面が当接するように配置され、前記搬送方向の上流側または下流側の火格子との間の相対移動により前記背面で被焼却物を受け止めて搬送するストーカ式焼却炉の炉床を形成する火格子であって、
前記背面に、前記相対移動の際に前記上流側の火格子の前記下面との間で当接状態を維持する基準面が形成されるとともに、前記基準面に、前記上流側の火格子の前記下面との間で燃焼用空気を供給する給気口を形成する凹部が前記搬送方向に沿う方向に重複するように断続的に形成され、
前記凹部は、前記相対移動に伴って前記給気口の形成位置が前記搬送方向に交差する幅方向において不連続的に変位する変位領域を含み、
前記上流側の火格子の前記下面が前記搬送方向に沿う方向に所定長さ形成され、前記変位領域の前記搬送方向に沿う長さが前記所定長さよりも長く設定されている火格子。
【請求項5】
前記変位領域は、前記搬送方向の上流側の前記火格子の相対的な移動幅の中央部に形成されている請求項4記載の火格子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストーカ式焼却炉の炉床を形成する火格子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基端側が支持されるとともに、先端側の下部が被焼却物の搬送方向の下流側の火格子の背面に当接し、背面に前記搬送方向の上流側の火格子の先端側の下部が当接するように配置され、前記搬送方向の上流側または下流側の火格子との間の相対移動により前記背面で被焼却物を受け止めて搬送するストーカ式焼却炉の炉床を形成する火格子が提案されている。
【0003】
当該火格子は、前記背面と前記背面に当接する上流側の火格子の先端側の下部との間で当接しないことで形成される間隙から燃焼用空気が供給されるように構成され、前記相対移動により前記間隙の形成位置が変化するように構成されている。
【0004】
具体的に、前記背面に、凸部面及び/または凹部面で構成される領域が、前記搬送方向にわたって形成されるとともに、前記凸部面及び/または凹部面の前記搬送方向に交差する方向での形成位置が前記搬送方向に沿って変位するように形成され、前記領域が、基準面と前記基準面より上方に突出する凸面で構成される第1領域と、前記基準面より下方に窪む凹部面で構成される第2領域を含み、前記搬送方向に沿って前記第1領域と前記第2領域が切り替わるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された火格子は、その背面の基準面に被焼却物の搬送方向の上流側の火格子の先端側の下部が当接した状態で、搬送方向に沿って相対的に往復移動する場合には、基準面と上流側の火格子の先端側の下部とが当接した状態が維持されるのであるが、上流側の火格子の先端側の下部が基準面より高い凸部面に当接した状態で相対移動する場合には、上流側の火格子の基端側の支持位置に対する先端側の傾斜角度が、基準面と当接する場合よりも大きくなる。
【0007】
そのため、火格子の内側に形成されている放熱フィンが凸部面に当接して、上流側の火格子の先端側の下部が凸部面よりも浮き上がり、上流側の火格子の先端側で幅方向全域から燃焼用空気が漏れ出ることとなり、被焼却物に対して燃焼用空気を分散供給して、局所的な異常燃焼の発生を抑制するという所期の目的を達成できないという問題が生じていた。
【0008】
さらに、放熱フィンが凸部面との接触により凸部面に筋状の摩耗痕が生じ、火格子の寿命が短くなるという問題もあった。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来の問題点に鑑み、火格子が配列された火床から被焼却物に均等に燃焼用空気が供給され、局所的な異常燃焼の発生を抑制可能な火格子を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明による火格子の第一の特徴構成は、基端側が支持されるとともに、先端側の下面が被焼却物の搬送方向の下流側の火格子の背面に当接し、背面に前記搬送方向の上流側の火格子の先端側の下面が当接するように配置され、前記搬送方向の上流側または下流側の火格子との間の相対移動により前記背面で被焼却物を受け止めて搬送するストーカ式焼却炉の炉床を形成する火格子であって、前記背面に、前記相対移動の際に前記上流側の火格子の前記下面との間で当接状態を維持する基準面が形成されるとともに、前記基準面に、前記上流側の火格子の前記下面との間で燃焼用空気を供給する給気口を形成する凹部が前記搬送方向に沿う方向に連続して形成され、前記凹部は、前記相対移動に伴って前記給気口の形成位置が前記搬送方向に交差する幅方向において変位する変位領域を含む点にある。
【0011】
火格子の背面に形成した基準面に、上流側の火格子の先端側の下面の少なくとも一部が常時当接した状態で、被焼却物の搬送方向に沿って両火格子が相対移動する。このような状態で、上流側の火格子の先端側の下面と、当該基準面に搬送方向に沿って形成した凹部との間に形成される給気口から燃焼用空気が供給される。両火格子の相対移動に伴って上流側の火格子の先端側の下面が変位領域を通過する際に、給気口が搬送方向に交差する幅方向において連続的に変位する。それに伴って燃焼用空気の給気口の形成位置が幅方向に変化して、被焼却物に均等に燃焼用空気が供給されるようになり、局所的な異常燃焼の発生が効果的に抑制されるようになる。
【0012】
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記凹部は、前記変位領域を挟んで前記基端側で前記幅方向の両側部に形成されるとともに、前記先端側で前記幅方向の中央部に形成されている点にある。
【0013】
同第三の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記凹部は、前記変位領域を挟んで前記基端側で前記幅方向の中央部に形成されるとともに、前記先端側で前記幅方向の両側部に形成されている点にある。
【0014】
同第四の特徴構成は、基端側が支持されるとともに、先端側の下面が被焼却物の搬送方向の下流側の火格子の背面に当接し、背面に前記搬送方向の上流側の火格子の先端側の下面が当接するように配置され、前記搬送方向の上流側または下流側の火格子との間の相対移動により前記背面で被焼却物を受け止めて搬送するストーカ式焼却炉の炉床を形成する火格子であって、前記背面に、前記相対移動の際に前記上流側の火格子の前記下面との間で当接状態を維持する基準面が形成されるとともに、前記基準面に、前記上流側の火格子の前記下面との間で燃焼用空気を供給する給気口を形成する凹部が前記搬送方向に沿う方向に重複するように断続的に形成され、前記凹部は、前記相対移動に伴って前記給気口の形成位置が前記搬送方向に交差する幅方向において不連続的に変位する変位領域を含み、前記上流側の火格子の前記下面が前記搬送方向に沿う方向に所定長さ形成され、前記変位領域の前記搬送方向に沿う長さが前記所定長さよりも長く設定されている点にある。
【0015】
第一の特徴構成を同様に、火格子の背面に形成した基準面に、上流側の火格子の先端側の下面の少なくとも一部が常時当接した状態で、被焼却物の搬送方向に沿って両火格子が相対移動する。このような状態で、上流側の火格子の先端側の下面と、当該基準面に搬送方向に沿う方向に重複するように断続的に形成した凹部との間に形成される給気口から燃焼用空気が供給される。両火格子の相対移動に伴って上流側の火格子の先端側の下面が変位領域を通過する際に、給気口が搬送方向に交差する幅方向において不連続的に変位する。それに伴って燃焼用空気の給気口の形成位置が幅方向に変化して、被焼却物に均等に燃焼用空気が供給されるようになり、局所的な異常燃焼の発生が効果的に抑制されるようになる。
【0016】
そして、火格子の背面に沿って上流側の火格子の下面が相対移動する際に、搬送方向に沿う凹部の変位領域の長さが、所定長さよりも長く設定されていれば、凹部が断続的に形成されていたとしても、上流側の火格子の下面が変位領域を通過する際に、給気口が下面で閉塞されることが無く、確実に燃焼用空気を被焼却物に供給することができる。
【0017】
同第五の特徴構成は、上述した第四の特徴構成に加えて前記変位領域は、前記搬送方向の上流側の前記火格子の相対的な移動幅の中央部に形成されている点にある。
【0018】
火格子の移動幅の中央部に形成された変位領域を挟んで、上流側と下流側で給気口の形成位置を切り替えることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した通り、本発明によれば、火格子が配列された火床から被焼却物に均等に燃焼用空気が供給され、局所的な異常燃焼の発生を抑制可能な火格子を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ストーカ式のごみ焼却炉の燃焼室を示す一部切欠き斜視図
【
図2】(a)は火格子の背面を視た斜視図、(b)は同底面を見た斜視図
【
図3】(a)は火格子の正面図、(b)は同平面図、(c)は同底面図
【
図4】(a)は火格子の右側面図、(b)は同左側面図
【
図5】(a)は前後に隣接配置された火格子の相対移動の状態を示し、最も離隔した状態の説明図、(b)は中間位置に移動した状態の説明図、(c)は最も近接した状態の説明図
【
図6】(a)は火格子の背面で摺動する上流側火格子の前端底壁と背面に形成された凹部との間で形成される給気口の位置変化の説明図、(b)は炉幅方向に並設された火格子の一部を示す平面図
【
図7】(a)から(d)は、基準面に対して形成される凹部の種々の態様を示す説明図
【
図8】(a)は火格子の背面で摺動する上流側火格子の前端底壁と背面に形成された凹部との間で形成される給気口から燃焼用空気が供給困難となる態様の説明図、(b)は火格子の背面で摺動する上流側火格子の前端底壁と背面に形成された凹部との間で形成される給気口から燃焼用空気が供給可能となる態様の説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、ストーカ式焼却炉の炉床を形成する本発明による火格子の一例を、図面に基づいて説明する。
【0022】
図1には、ストーカ式焼却炉100の炉室の一例が示されている。炉室は耐火壁Wで覆われ、複数の火格子10を配設したストーカ機構で構成される炉床Bを備えている。炉床Bの下方に設置した風箱に押込み送風機から供給される燃焼用空気が火格子10を介して炉床B上の被焼却物であるごみに供給されるように構成されている。
【0023】
各火格子10は、固定フレームCに横架された円筒状の支持棒C1に基端部が揺動可能に支持された固定火格子群10Aと、固定フレームCに対してごみの搬送方向に沿って往復移動する可動フレームDに横架された円筒状の支持棒D1に基端部が揺動可能に支持された可動火格子群10Bが、ごみの搬送方向に沿って交互に配列されている。幅方向に並設された複数の火格子群10A,10Bは、炉室の両側部に配置された一対のサイドプレートで挟持され、当該サイドプレートは外側から中心方向に向けてバネで押圧されている。
【0024】
油圧機構Eによって可動フレームDが往復駆動されることにより、可動火格子群10Bと固定火格子群10Aとがごみの搬送方向に沿って相対移動し、炉床B上の被焼却物が攪拌されつつ下流側に搬送される。
【0025】
炉室の天井部には燃焼用バーナが設けられており、炉立上げ時の炉内昇温に用いられ、ごみ発熱量が低い場合には燃焼用バーナの熱により炉床B上の被焼却物が攪拌及び搬送されながら燃焼する。
【0026】
図1では、中央の炉床Bにより主にガス化燃焼される主燃焼ゾーンが構成され、上流側及び下流側に別途炉床が設けられている。上流側の炉床Buによって主に被焼却物を乾燥する乾燥ゾーンが構成され、下流側の炉床Bdによってガス化燃焼後の固形物を灰化する後燃焼ゾーンが構成されている。尚、上流側の炉床Buと中央の炉床Bが一体に構成されている場合もある。
【0027】
上述した各炉床Bu,B,Bdを構成する各火格子10は、
図2から
図4に示すように、底部が開放された略直方体形状の鋳物で構成され、左右の側壁11,12と、上壁13(以下の説明では上壁の上面を「背面13」とも記す。)と、前端壁14とを備えている。また、前端壁14とは反対方向の基端側には三つの弧状の係止爪15が形成されている。背面13の内側には、冷却フィンとしても機能する3本の補強リブ16が形成されている。
【0028】
背面13の先端側が所定の曲率で屈曲して前端壁14に連なり、前端壁14の下縁部は直線状に形成されている。前端壁14に連なる左右の側壁11,12は、下端側が僅かに内側に傾斜する傾斜壁に形成されている。底部の先端側には前端壁14の下端に連なる前端底壁17が形成されている(
図4(b)参照。)。前端底壁17が被焼却物の搬送方向の下流側の火格子10の背面13に当接する下面となる。
【0029】
図1では、各火格子10の先端部を包絡した面が水平姿勢となるような例を示しているが、包絡面が被焼却物の搬送方向に沿って傾斜するように構成されていてもよい、例えば、被焼却物の搬送方向に沿って下側に傾斜するように構成されていてもよい。
【0030】
また、左右の側壁11,12のうち火格子10の長手方向中央部を除く先端側及び基端側の上縁部に、幅方向外側に所定幅の平坦面が突出する張出部18が形成されている。さらに、左右の側壁11,12のうち、火格子10の長手方向に沿って先端側及び基端側から1/3程度の部位に、隣接配置される火格子10同士を連結する連結金具の挿通孔H,Hが形成されている。
【0031】
連結金具としてボルトとナットが好適に用いられる。隣接する火格子10の其々の挿通孔Hにボルトを挿通してナットで締付けた後に僅かに緩めた状態で、ボルトとナットを溶接固定することで、隣接する火格子10同士に僅かに遊びを持たせている。なお、幅方向に隣接する火格子のうち所定数(本実施形態では3本から4本)の火格子を一単位としてボルトとナットで互いに連結されている。
【0032】
このようにして、複数の火格子10が炉室の幅方向に隣接配置され、基端側の係止爪15が固定フレームCの支持棒C1または可動フレームDの支持棒D1(
図1参照)に揺動可能に係合することで、支持棒C1,D1周りに各火格子10が揺動自在に支持されている。支持棒C1に支持される火格子10が固定火格子となり、支持棒D1に支持される火格子10が可動火格子となる。
【0033】
図5(a)から(c)に示すように、被焼却物の搬送方向の下流側の火格子10Dの背面13に、被焼却物の搬送方向の上流側に位置する火格子10Uの先端側、つまり前端壁14の下端及び前端底壁17が当接するように配置されている。各火格子10U,10Dの相対移動に伴って、上流側の火格子10Uの前端底壁17が下流側の火格子10Dの背面13の上部を被焼却物の搬送方向に往復移動する。
図5(a)は上流側に位置する火格子10Uが後方に最も引退した状態、
図5(c)は上流側に位置する火格子10Uが前方に最も進出した状態、
図5(b)はその中間位置となる状態が示されている。
【0034】
図2(a),
図3(b),
図6(a)に示すように、各火格子10の背面13には、各火格子10が相対移動する際に上流側の火格子10の前端底壁17との間で当接状態を維持する基準面13Rが形成されるとともに、上流側の火格子10の前端底壁17との間で燃焼用空気を供給する給気口Gを形成する凹部13Dが被焼却物の搬送方向に沿う方向に連続して形成されている。
【0035】
凹部13Dは、基準面13Rよりも数mm凹んだ平坦面が形成された溝構造で、火格子10相対移動に伴って給気口Gの形成位置が搬送方向に交差する幅方向において連続的に変位する変位領域13Aを含む。
【0036】
両火格子10の相対移動に伴って上流側の火格子の先端側の下面である前端底壁17が変位領域13Aを通過する際に、給気口Gの形成位置が搬送方向に交差する幅方向において連続的に変位する。それに伴って全体として給気口Gから被焼却物に均等に燃焼用空気が供給されるようになり、局所的な異常燃焼の発生が効果的に抑制されるようになる。
【0037】
図6(a)に詳しく示されているように、上流側の火格子10Uの下面である前端底壁17(符号17で示す一点鎖線)が下流側の火格子10Dの基端側に位置する様子が上段左側の図に示され、前端底壁17が下流側の火格子10Dの中央部に位置する様子が中段左側の図に示され、前端底壁17が下流側の火格子10Dの先端側に位置する様子が下段左側の図に示されている。其々に対応して形成される給気口Gの位置が右側の図に示されている。
【0038】
本実施形態では、変位領域13Aは、搬送方向の上流側の火格子10の移動幅の中央部(
図3(b)に示す位置)に形成され、凹部13Dは、変位領域13Aを挟んで火格子10の基端側で幅方向の両側部に形成されるとともに、火格子10の先端側で幅方向の中央部に形成され、被焼却物の搬送方向に沿う方向に連続して形成されている。
【0039】
凹部13Dは、火格子10の相対移動に伴って形成される給気口Gの開口面積が幅方向に沿って常に一定になる断面形状に形成されていることが、給気口Gから供給される燃焼用空気の供給量が一定になる点で好ましい。
【0040】
図6(b)には、幅方向に3本の火格子10が並設された状態が示されている。隣接する火格子10の間で、
図2及び
図3で説明した張出部18同士が当接し、張出部18が形成されていない領域で細長形状の空隙Aが形成されている。当該空隙Aからも燃焼用空気が供給される。なお、上流側の火格子10が先端側に摺動することで当該空隙Aが上流側の火格子10で覆われる時期には、風箱からの燃焼用空気で冷却されるため、高温の燃焼熱で損耗する程度は抑制されるようになる。
【0041】
各火格子10の相対移動に伴って被焼却物が焼却処理される過程で、隣接する火格子10の隙間や空隙Aから灰等の異物が入り込む場合でも、左右の側壁11,12の下端側が僅かに内側に傾斜する傾斜壁に形成されているため、速やかに下方に落下する。従って、隣接する火格子10の隙間に挟まった異物により火格子10同士の姿勢変動により搬送面が凹凸に撓むようなことが極力回避されるようになる。
【0042】
図7(a)から(d)には、基準面13Rと、基準面13Rに形成される凹部13Dとして採用可能な様々な形状が示されている。
図7(a)には、既に説明した態様が示され、凹部13Dは、変位領域13Aを挟む基端側で幅方向の両側部に形成されるとともに、先端側で幅方向の中央部に形成されている。
【0043】
図7(a)は、火格子の背面13に、相対移動の際に上流側の火格子の下面との間で当接状態を維持する基準面13Rが形成されるとともに、基準面13Rに、上流側の火格子の下面との間で燃焼用空気を供給する給気口Gを形成する凹部13Dが搬送方向に沿う方向に連続して形成された例である。以下の例も「同様であるが、変位領域13Aは火格子10の長手方向中央部に形成される必要はなく、火格子10の相対移動に伴って火格子10の幅方向に給気口Gが形成される位置が変化し、全体として被焼却物に均等に燃焼用空気が供給されるような形状であればよい。
【0044】
この例では、上流側の火格子10Uの下面に向けて風箱から供給される燃焼用空気は、下流側の火格子10Dに形成された凹部13Dに流れ込み、当該凹部13Dと上流側の火格子10Uの下面である前端底壁17との間に形成される給気口Gから炉内に吹き込まれるようになる。
【0045】
図7(b)に示すように、火格子10の長手方向中央部に形成された略X字状の変位領域13Aを挟んで、火格子10の基端側及び先端側で幅方向両端部側に凹部13Dが形成されるとともに、変位領域13Aで幅方向中央部に凹部13Dが形成されていてもよい。
【0046】
図7(c)に示すように、凹部13Dが、変位領域13Aを挟む基端側で幅方向の中央部に形成されるとともに、先端側で幅方向の両側部に、互いに独立して断続的に形成されていてもよい。また、
図7(d)に示すように、火格子10の幅方向に傾斜する直線状の凹部13Dが火格子10の長手方向に複数本平行に互いに独立して断続的に形成されていてもよい。
【0047】
図7(c),(d)は、火格子の背面13に、相対移動の際に上流側の火格子の下面(前端底壁17)との間で当接状態を維持する基準面13Rが形成されるとともに、基準面13Rに、上流側の火格子の下面との間で燃焼用空気を供給する給気口を形成する凹部13Dが搬送方向に沿う方向に幅方向視で重複しつつ基準面13R挟んで断続的に形成される例である。
【0048】
図7(c)では、上述と同様に凹部13Dは、相対移動に伴って給気口の形成位置が搬送方向に交差する幅方向において不連続的に変位する変位領域13Aが火格子10の長手方向中央部に形成されている。
図7(d)では、相対移動に伴って給気口の形成位置が搬送方向に交差する幅方向において不連続的に変位する変位領域13Aが火格子10の長手方向に沿って繰返されるように形成されている。
【0049】
図8(a)に示すように、上流側の火格子10Dの前端底壁17との間で形成される給気口Gを形成する凹部13Dが搬送方向に沿う方向に断続的に形成されている場合に、上流側の火格子10の前端底壁17が搬送方向に沿う方向の長さL1が、変位領域13Aの搬送方向に沿う長さL2よりも長く形成されていると、搬送方向に沿って給気口Gの位置が切り替わるときに、燃焼用空気の通路となる凹部13Dが前端底壁17で閉鎖されて、ストーカ上に燃焼用空気が供給できないタイミングが生じる。
【0050】
図8(b)に示すように、そのような場合に備えて、火格子10Dの背面13に沿って上流側の火格子10Uの前端底壁17が相対移動する際に、搬送方向に沿う凹部13Dの変位領域13Aの長さが、所定幅L1よりも長い長さL2に設定されていれば、上流側の火格子10Uの前端底壁17が変位領域13Aを通過する際に、給気口Gが前端底壁17で閉塞されることが無く、常時確実に燃焼用空気を被焼却物に供給することができるようになる。
【0051】
以上説明した実施形態は本発明の一例に過ぎず、少なくとも相対移動の際に上流側の火格子の下面との間で当接状態を維持する基準面が形成されるとともに、上流側の火格子の下面との間で燃焼用空気を供給する給気口を形成する凹部が搬送方向に沿って形成され、凹部は、相対移動に伴って給気口の形成位置が前記搬送方向に交差する幅方向に次第に変位する変位領域を含むように構成されていればよい。
【0052】
尚、上述した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各部の具体的な構造、形状、材料、サイズ等を適宜変更設計できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
10:火格子
10A:固定火格子群
10B:可動火格子群
10U:上流側火格子
10D:下流側火格子
11,12:側壁
13:背面(上壁)
13D:凹部
13R:基準平坦面
13A:変位領域
14:前端壁
16:補強リブ
17:前端底壁(下面)
100:ストーカ式焼却炉
B:炉床(燃焼ゾーン)
Bu:炉床(乾燥ゾーン)
Bd:炉床(後燃焼ゾーン)
C:固定フレームC
C1:支持棒
D:可動フレーム
D1:支持棒
G:給気口
H:挿通孔