(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128662
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】緩衝装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/023 20060101AFI20240913BHJP
F16F 13/00 20060101ALI20240913BHJP
F16F 9/10 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
F16F15/023 A
F16F13/00
F16F9/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037761
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】523331865
【氏名又は名称】株式会社スペースシーファイブ
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】萩原 一郎
(72)【発明者】
【氏名】趙 希禄
【テーマコード(参考)】
3J047
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3J047AA08
3J047AA13
3J047AB01
3J047CA02
3J048AA02
3J048AA06
3J048AC04
3J048BC02
3J048BE03
3J069AA39
3J069EE01
(57)【要約】
【課題】従来のダンパーに比べて、減衰可能範囲に対して設置スペースを小型化すること。
【解決手段】内部に流体を収容可能な中空筒状で伸縮可能に構成され、第2の物体(3)に一端部が支持され且つ第1の物体(2)と第2の物体(3)とを結ぶ直線方向に対して湾曲する第1の伸縮部(11)および第2の伸縮部(12)と、第1の伸縮部(11)および第2の伸縮部(12)の筒の軸線に交差する断面の面積よりも小さい断面積の孔部(13a)を有し、第1の物体(2)に支持され且つ第1の伸縮部(11)の他端部と第2の伸縮部(12)の他端部との間に配置され、孔部(13a)を通じて流体が移動可能な減衰部(13)と、を備えた緩衝装置(1)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の物体と第2の物体との間の緩衝をする緩衝装置であって、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第2の物体に一端部が支持され、且つ、第1の物体と第2の物体とを結ぶ直線方向に対して湾曲する第1の伸縮部と、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第2の物体に一端部が支持され、且つ、第1の物体と第2の物体とを結ぶ直線方向に対して湾曲する第2の伸縮部と、
前記第1の伸縮部および第2の伸縮部の筒の軸線に交差する断面の面積よりも小さい断面積の孔部を有し、前記第1の物体に支持され且つ前記第1の伸縮部の他端部と前記第2の伸縮部の他端部との間に配置され、前記孔部を通じて流体が移動可能な減衰部と、
を備えたことを特徴とする緩衝装置。
【請求項2】
第1の物体と第2の物体との間の緩衝をする緩衝装置であって、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第1の物体に一端部が支持された第1の伸縮部と、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第1の伸縮部の内部に収容された第2の伸縮部と、
前記第1の伸縮部の内部と前記第2の伸縮部の内部とを接続する流路を有し、前記第2の物体に支持され且つ前記第1の伸縮部の他端部と前記第2の伸縮部の他端部とが支持された減衰部と、
前記第1の伸縮部および第2の伸縮部の筒の軸線に交差する断面の面積よりも小さい断面積を有する前記流路と、
を備えたことを特徴とする緩衝装置。
【請求項3】
第1の物体と第2の物体との間の緩衝をする緩衝装置であって、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の第1の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第1の物体に一端部が支持された第1の伸縮部と、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の第2の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第2の物体に一端部が支持され且つ前記第1の軸線方向とは交差する方向に前記第2の軸線方向が延びるように配置された第2の伸縮部と、
前記第1の伸縮部の内部と前記第2の伸縮部の内部とを接続する流路を有し、前記第2の物体に支持され且つ前記第1の伸縮部の他端部と前記第2の伸縮部の他端部とが支持された減衰部と、
前記第1の伸縮部および第2の伸縮部の筒の軸線に交差する断面の面積よりも小さい断面積を有する前記流路と、
を備えたことを特徴とする緩衝装置。
【請求項4】
複数の前記第2の伸縮部と、
前記第1の伸縮部に接続される第1の流路部と、前記第1の流路部から分岐して各第2の伸縮部に延びる第2の流路部と、を有する前記流路と、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の緩衝装置。
【請求項5】
第1の物体と第2の物体との間の緩衝をする緩衝装置であって、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の第1の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第1の物体に一端部が支持された第1の伸縮部と、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の第2の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第1の物体に一端部が支持され且つ前記第1の軸線方向とは交差する方向に前記第2の軸線方向が延びるように配置された第2の伸縮部と、
前記第1の伸縮部の内部と前記第2の伸縮部の内部とを接続する流路を有し、前記第2の物体に支持され且つ前記第1の伸縮部の他端部と前記第2の伸縮部の他端部とが支持された減衰部と、
前記第1の伸縮部および第2の伸縮部の筒の軸線に交差する断面の面積よりも小さい断面積を有する前記流路であって、前記第1の物体の外面を囲んで形成された前記流路と、
を備えたことを特徴とする緩衝装置。
【請求項6】
前記第1の軸線方向に沿って前記第1の物体を挟んで前記第1の伸縮部に対向して配置され、弾性変形可能な第1の弾性部材と、
前記第2の軸線方向に沿って前記第1の物体を挟んで前記第2の伸縮部に対向して配置され、弾性変形可能な第2の弾性部材と、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の緩衝装置。
【請求項7】
前記筒の軸方向に沿って山折り線と谷折り線が交互に形成された蛇腹状の前記第1の伸縮部と、
前記筒の軸方向に沿って山折り線と谷折り線が交互に形成された蛇腹状の前記第2の伸縮部と、
外方から見た場合の前記山折り線の外周に沿って支持されて、前記第1の伸縮部および前記第2の伸縮部の外方への膨張を規制する規制部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の緩衝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の物体と第2の物体との間の緩衝を行う緩衝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機や鉄道、自動車等の車両における乗客の揺れの軽減や事故時の被害の軽減、貴重品等の運搬時の破損の抑制、あるいは、建造物等の地震時の揺れの軽減等のために、対象物の移動や移動速度を減衰させるダンパー(制振装置、緩衝装置、減衰装置)が知られている。
【0003】
図12は従来のダンパーの説明図である。
図12において、従来のダンパー01は、筒状のシリンダー02と、シリンダー02内を軸方向に移動可能なピストン03とを有する。ダンパー01では、ピストン03の先端部の円板03aに減衰孔03bが形成されている。ピストン03側に制振対象の対象物が接続され、シリンダー02側が固定される場合では、ピストン03がシリンダー02内で軸方向に移動すると、円板03aの下側から上側に流体が減衰孔03bを通じて移動し、その際の流体の移動抵抗で、ピストン03の移動が抑制され、対象物の緩衝、制振が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(従来技術の問題点)
従来技術のダンパー01では、制振可能な範囲(振動や移動を減衰させることが可能な範囲)が、ピストン03の移動可能範囲となる。したがって、ダンパー01を設置する際に必要な空間としてピストン03が最も伸びた状態が前提となる。この状態では、シリンダー02とピストン03の軸方向の長さは、ピストン03の移動可能範囲の約2倍となり、制振可能範囲(ピストン03の移動可能範囲)に対して、約2倍のスペースを確保する必要がある。したがって、ダンパー01の制振可能範囲に対して、広い設置スペースが必要となっており、ダンパー01を設置することが困難な場合がある。
また、ピストン03は、シリンダー02の軸方向に沿った直線的な1軸方向にしか移動できず、ダンパー01では、1軸方向の制振しかできない問題もあった。
【0005】
本発明は、従来のダンパーに比べて、減衰可能範囲に対して設置スペースを小型化することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の緩衝装置は、
第1の物体と第2の物体との間の緩衝をする緩衝装置であって、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第2の物体に一端部が支持され、且つ、第1の物体と第2の物体とを結ぶ直線方向に対して湾曲する第1の伸縮部と、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第2の物体に一端部が支持され、且つ、第1の物体と第2の物体とを結ぶ直線方向に対して湾曲する第2の伸縮部と、
前記第1の伸縮部および第2の伸縮部の筒の軸線に交差する断面の面積よりも小さい断面積の孔部を有し、前記第1の物体に支持され且つ前記第1の伸縮部の他端部と前記第2の伸縮部の他端部との間に配置され、前記孔部を通じて流体が移動可能な減衰部と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
前記技術的課題を解決するために、請求項2に記載の発明の緩衝装置は、
第1の物体と第2の物体との間の緩衝をする緩衝装置であって、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第1の物体に一端部が支持された第1の伸縮部と、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第1の伸縮部の内部に収容された第2の伸縮部と、
前記第1の伸縮部の内部と前記第2の伸縮部の内部とを接続する流路を有し、前記第2の物体に支持され且つ前記第1の伸縮部の他端部と前記第2の伸縮部の他端部とが支持された減衰部と、
前記第1の伸縮部および第2の伸縮部の筒の軸線に交差する断面の面積よりも小さい断面積を有する前記流路と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記技術的課題を解決するために、請求項3に記載の発明の緩衝装置は、
第1の物体と第2の物体との間の緩衝をする緩衝装置であって、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の第1の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第1の物体に一端部が支持された第1の伸縮部と、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の第2の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第2の物体に一端部が支持され且つ前記第1の軸線方向とは交差する方向に前記第2の軸線方向が延びるように配置された第2の伸縮部と、
前記第1の伸縮部の内部と前記第2の伸縮部の内部とを接続する流路を有し、前記第2の物体に支持され且つ前記第1の伸縮部の他端部と前記第2の伸縮部の他端部とが支持された減衰部と、
前記第1の伸縮部および第2の伸縮部の筒の軸線に交差する断面の面積よりも小さい断面積を有する前記流路と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の緩衝装置において、
複数の前記第2の伸縮部と、
前記第1の伸縮部に接続される第1の流路部と、前記第1の流路部から分岐して各第2の伸縮部に延びる第2の流路部と、を有する前記流路と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記技術的課題を解決するために、請求項5に記載の発明の緩衝装置は、
第1の物体と第2の物体との間の緩衝をする緩衝装置であって、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の第1の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第1の物体に一端部が支持された第1の伸縮部と、
内部に流体を収容可能な中空筒状に形成され且つ筒の第2の軸線方向に沿って伸縮可能に構成されると共に、前記第1の物体に一端部が支持され且つ前記第1の軸線方向とは交差する方向に前記第2の軸線方向が延びるように配置された第2の伸縮部と、
前記第1の伸縮部の内部と前記第2の伸縮部の内部とを接続する流路を有し、前記第2の物体に支持され且つ前記第1の伸縮部の他端部と前記第2の伸縮部の他端部とが支持された減衰部と、
前記第1の伸縮部および第2の伸縮部の筒の軸線に交差する断面の面積よりも小さい断面積を有する前記流路であって、前記第1の物体の外面を囲んで形成された前記流路と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の緩衝装置において、
前記第1の軸線方向に沿って前記第1の物体を挟んで前記第1の伸縮部に対向して配置され、弾性変形可能な第1の弾性部材と、
前記第2の軸線方向に沿って前記第1の物体を挟んで前記第2の伸縮部に対向して配置され、弾性変形可能な第2の弾性部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の緩衝装置において、
前記筒の軸方向に沿って山折り線と谷折り線が交互に形成された蛇腹状の前記第1の伸縮部と、
前記筒の軸方向に沿って山折り線と谷折り線が交互に形成された蛇腹状の前記第2の伸縮部と、
外方から見た場合の前記山折り線の外周に沿って支持されて、前記第1の伸縮部および前記第2の伸縮部の外方への膨張を規制する規制部材と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、減衰可能範囲に対して約2倍の設置スペースが必要な一軸方向の制振を行う従来のダンパーに比べて、湾曲する2つの伸縮部の伸縮で制振を行うことができると共に、減衰可能範囲に対して設置スペースを小型化することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、第2の伸縮部を第1の伸縮部の内部に収容された構成で移動を減衰させることができ、減衰可能範囲に対して約2倍の設置スペースが必要な一軸方向の制振を行う従来のダンパーに比べて、減衰可能範囲に対して設置スペースを小型化することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、第1の伸縮部の軸方向と第2の伸縮部の軸方向とが交差して配置されており、減衰可能範囲に対して約2倍の設置スペースが必要な一軸方向の制振を行う従来のダンパーに比べて、減衰可能範囲に対して設置スペースを小型化することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、第2の伸縮部が1つの場合に比べて、伸縮部間で流動可能な流体の許容量を拡大できる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、第1の伸縮部の軸方向と第2の伸縮部の軸方向とが交差して配置されており、減衰可能範囲に対して約2倍の設置スペースが必要な一軸方向の制振を行う従来のダンパーに比べて、減衰可能範囲に対して設置スペースを小型化することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、弾性部材を設けない場合に比べて、弾性力で物体の移動を減衰させることができ、減衰性能を向上させることができる。また、弾性部材の弾性力で、第1の物体を移動前の位置に復帰させることができる。
請求項7に記載の発明によれば、規制部材を有しない場合に比べて、伸縮部の膨張を抑制でき、減衰性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は本発明の緩衝装置の一例の全体説明図である。
【
図3】
図3は実施例1においてダンパーチューブにワイヤが設けられていない場合の作用説明図である。
【
図5】
図5は実施例3の緩衝装置の説明図であり、要部断面図である。
【
図6】
図6は実施例3の作用説明図であり、
図6Aは第1ダンパーチューブが伸びた状態の説明図、
図6Bは第1ダンパーチューブが縮んだ状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(以下、実施例と記載する)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例0021】
図1は本発明の緩衝装置の一例の全体説明図である。
図2は
図1の要部断面図である。
図1において、本発明の緩衝装置の一例としてのダンパー1は、第1の物体の一例としての被制振物2と、第2の物体の一例としての固定壁3との間に設置されている。実施例1の固定壁3は、二又形状に形成されている。なお、実施例1の被制振物2は、固定壁3に対して、支持体の一例としての連結プレート4を介して連結されている。連結プレート4は、一端部である固定端部4aで固定壁3の二又の分岐の根元部分に支持されており、他端部である自由端部4bに被制振物2が支持されている。したがって、実施例1の被制振物2は、固定壁3に対して固定端部4aを中心として弧状に振動するように移動可能である。
【0022】
図1、
図2において、実施例1のダンパー1は、第1の伸縮部の一例としての第1ダンパーチューブ11と、第2の伸縮部の一例としての第2ダンパーチューブ12と、第1ダンパーチューブ11と第2ダンパーチューブ12との間に配置された減衰部13とを有する。
第1ダンパーチューブ11は、中空の筒状に形成されている。また、第1ダンパーチューブ11は、筒の軸方向に沿って山折り線11aと谷折り線11bが交互に形成された蛇腹状に形成されている。さらに、実施例1の第1ダンパーチューブ11は、被制振物2の弧状の振動の方向に沿って、湾曲する形状に形成されている。したがって、第1ダンパーチューブ11は、被制振物2の振動の弧の方向(筒の軸方向)に沿って伸縮可能に構成されている。
【0023】
第1ダンパーチューブ11の内部には、流体の一例であって、液体の一例としての圧油が収容されている。
また、第1ダンパーチューブ11には、山折り線11aの部分の外周に沿って、規制部材の一例としてのワイヤ14が支持されている。ワイヤ14は第1ダンパーチューブ11の外周を囲む形で配置されており、内部の圧油の圧力が高くなって第1ダンパーチューブ11が外方に膨張しようとしても、ワイヤ14が第1ダンパーチューブ11の外方への膨張を規制する(膨張を抑制する)。
実施例1の第2ダンパーチューブ12は、第1ダンパーチューブ11と同様に構成されている。
【0024】
減衰部13は、被制振物2に固定されている。
図2において、減衰部13には、孔部の一例として、第1ダンパーチューブ11の内部と第2ダンパーチューブ12の内部とを接続する減衰孔13aが形成されている。減衰孔13aは、第1ダンパーチューブ11および第2ダンパーチューブ12の筒の軸線に交差する断面の断面積A1(山折り線11aよりも断面積の小さい谷折り線11bの部分の断面積)よりも小さい断面積A2を有する。
前記第1ダンパーチューブ11、第2ダンパーチューブ12、減衰部13、ワイヤ14等により、実施例1のダンパー1が構成されている。
【0025】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1のダンパー1では、被制振物2が、一例として、第1ダンパーチューブ11が伸びる方向に振動する場合、第1ダンパーチューブ11が伸び且つ第2ダンパーチューブ12が縮もうとする。したがって、第1ダンパーチューブ11の内部の容積が増加し、第2ダンパーチューブ12の内部の容積が減少する。これに伴って、圧油が第2ダンパーチューブ12から第1ダンパーチューブ11に移動しようとする。ここで、減衰孔13aの断面積A2がダンパーチューブ11,12の断面積A1よりも小さい。したがって、圧油の移動に対する抵抗が発生し、第1ダンパーチューブ11の伸びと第2ダンパーチューブ12の縮みが抑制され、被制振物2の移動も抑制される。したがって、外乱等で被制振物2が振動しようとした場合に、ダンパー1が制動することが可能であり、被制振物2の緩衝が可能である。
実施例1のダンパー1では、ダンパーチューブ11,12の伸縮範囲が制振可能範囲に対応し、従来のシリンダー02とピストン03とを有するダンパー01に比べて、全体として、設置スペースを小型化しやすい。
【0026】
特に、実施例1では、ダンパー1のダンパーチューブ11,12が被制振物2の移動方向である弧に沿って湾曲している。従来公知のダンパーは、ピストンの移動方向である直線方向に沿った移動しかできず、弧状の方向の制振の場合は、スライダのような追加部品が必要であったり、連結部分を長孔形状にする等の変更が必要であった。追加部品が必要になると、部品点数が増加して構成が複雑化することで故障しやすくなる問題があった。また、長孔形状にする場合、連結部分にあそびが発生し、挙動に遅れが出たり、作動時に異音が発生しやすい等の問題があった。これらに対して、実施例1では、弧状に湾曲するダンパーチューブ11,12を有しており、故障の発生や挙動の遅れ、異音等の発生が抑制される。
【0027】
図3は実施例1においてダンパーチューブにワイヤが設けられていない場合の作用説明図である。
また、実施例1では、ダンパーチューブ11,12にワイヤ14が支持されている。ワイヤ14が設けられていない場合、
図3に示すように、圧油が流入する際に、ダンパーチューブ11,12が軸方向に延びるのではなく、径方向に膨張する恐れがある。径方向に膨張すると、ダンパーチューブ11,12の伸縮が想定した伸縮とならず、制振能力が低下する恐れがある。これに対して、実施例1では、ワイヤ14が設けられており、ダンパーチューブ11,12の膨出が抑制される。よって、ダンパー1の制振能力の低下が抑制される。なお、ワイヤ14を山折り線11aの部分に設ける構成を例示したが、これに限定されず、谷折り線11bの部分に設けることも可能である。また、ダンパーチューブ11,12が、膨出しにくい剛性の高い材料を使用する場合にはワイヤ14を設けない構成とすることも可能である。