(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012867
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240124BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20240124BHJP
C08K 9/02 20060101ALI20240124BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K7/06
C08K9/02
C08K3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114639
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】銭 肖伊
(72)【発明者】
【氏名】古木 雅嗣
(72)【発明者】
【氏名】森 勇気
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL012
4J002CL031
4J002CL032
4J002DA016
4J002FA046
4J002FB076
4J002FD016
4J002FD070
4J002FD160
4J002GR00
(57)【要約】
【課題】電磁波シールド特性に優れ、結晶性半芳香族ポリアミドの良好な機械特性を維持するポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)結晶性半芳香族ポリアミド(A―1成分)60~90重量部および脂肪族ポリアミド(A-2成分)10~40重量部からなる樹脂成分(A成分)100重量部に対し、(B)金属被覆炭素繊維(B成分)5~40重量部を含むことを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)結晶性半芳香族ポリアミド(A―1成分)60~90重量部および脂肪族ポリアミド(A-2成分)10~40重量部からなる樹脂成分(A成分)100重量部に対し、(B)金属被覆炭素繊維(B成分)5~40重量部を含むことを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
B成分の金属被覆成分がニッケルであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアミド樹脂組成物を射出成形して得られる成形体のB成分の金属被覆率が70%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
A―1成分がポリアミド10Tであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
A-2成分が融点が200℃以上の脂肪族ポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
A-2成分がポリアミド6およびポリアミド66からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項5に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物を射出成形して得られる電磁波シールド用ポリアミド樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド特性に優れ、結晶性半芳香族ポリアミドの良好な機械特性を維持するポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
Wi-FiおよびBiueToothなど多くの機器が無線で通信するようになり、電子機器や電化製品で満ち溢れているオフィスおよび家庭には、電磁波が飛び交っている。今後は遠隔操作が必要なロボットおよびドローンの普及により、必要な電磁波は受け入れて不要な電磁波はシールドするという電磁両立性(EMC対策)がますます重要になってくると考えられる。電磁シールドを必要とする電子装置はデジタル技術を応用した製品であり、例えばコンピュータ、電子ゲーム、TVゲーム、電子キャッシュレジスタ、スイッチング電源、デジタル時計、デジタル腕時計、電卓、ワードプロセッサなど広範囲のものを含んでおり、これらの製品から発生する電磁波は200MHz~1GHzの周波数帯のものである。
【0003】
近年、電子機器筐体のような成形品の小型化、薄肉化、軽量化に対する要求が高まっており、機械特性と電磁波遮蔽性の更なる向上が求められている。結晶性半芳香族ポリアミド樹脂は、優れた機械特性、熱特性などを有するため、繊維、各種容器、フィルム、電気・電子機器部品、自動車部品、機械部品など様々な成形品の材料として幅広く使用されている。機械的特性に加えて、意匠性を付与させたポリアミド樹脂組成物として、例えば、融点と降温結晶化ピーク温度との差が0℃以上50℃未満の半芳香族ポリアミド樹脂、融点と降温結晶化ピーク温度との差が50℃以上90℃未満であって融解熱量(ΔHm)が50J/g以下のポリアミド樹脂および炭素繊維からなる炭素繊維強化ポリアミド樹脂組成物が開示されている。(特許文献1参照)また、熱可塑性樹脂に炭素繊維および金属酸化物被覆マイカを含有させることで、電磁波シールド特性向上する組成物が開示されている。(特許文献2参照)また、熱可塑性樹脂と炭素繊維を含む熱可塑性樹脂組成物からなる電磁波遮蔽吸収性成形体で、59GHz~100GHzの周波数領域のいずれかの周波数における電磁波の遮蔽性が10dB以上である電磁波遮蔽吸収性成形体が開示されている。(特許文献3参照)しかしながら、機械特性および電磁波シールド特性を両立させる検討は行われていなかった。また200MHz~1GHzの低周波数領域の電磁波シールド特性も不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6759762号公報
【特許文献2】特許第6996351号公報
【特許文献3】特開2019-161208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は電磁波シールド特性に優れ、結晶性半芳香族ポリアミドの良好な機械特性を維持するポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成として鋭意研究を重ねた結果、結晶性半芳香族ポリアミドおよび脂肪族ポリアミドに金属被覆炭素繊維を配合することで、電磁波シールド特性に優れ、良好な機械特性を有するポリアミド樹脂組成物が得られることを見出し、上記課題を解決するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0007】
1.(A)結晶性半芳香族ポリアミド(A―1成分)60~90重量部および脂肪族ポリアミド(A-2成分)10~40重量部からなる樹脂成分(A成分)100重量部に対し、(B)金属被覆炭素繊維(B成分)5~40重量部を含むことを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
2.B成分の金属被覆成分がニッケルであることを特徴とする前項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
3.ポリアミド樹脂組成物を射出成形して得られる成形体中のB成分の金属被覆率が70%以上であることを特徴とする前項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
4.A―1成分がポリアミド10Tであることを特徴とする前項1~3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
5.A-2成分が融点が200℃以上の脂肪族ポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする前項1~4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
6.A-2成分がポリアミド6およびポリアミド66からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする前項5に記載のポリアミド樹脂組成物。
7.前項1~6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を射出成形して得られる電磁波シールド用ポリアミド樹脂成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は電磁波シールド特性に優れ、結晶性半芳香族ポリアミドの良好な機械特性を維持するポリアミド樹脂組成物であるため、本発明の樹脂組成物より得られる成形体は電気・電子機器部品および自動車部品等の電磁波遮蔽性が必要とされるパーツに有用であり、その奏する工業的効果は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例2、実施例3および比較例1の0~1GHzの電界におけるシールド効果の測定結果を示す図である。
【
図2】実施例2、実施例3および比較例1の0~1GHzの磁界におけるシールド効果の測定結果を示す図である。
【
図3】実施例2の射出成形体中の炭素繊維の金属表面被覆率の測定で使用したSEM画像である。
【
図4】実施例2の射出成形体中の炭素繊維の金属表面被覆率の測定で使用したNiのEDSマッピングである。
【
図5】実施例2の射出成形体中の炭素繊維の金属表面被覆率の測定で使用した炭素のEDSマッピングである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0011】
<A成分について>
本発明にA-1成分として使用される結晶性半芳香族ポリアミド樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジアミン成分とから構成される。結晶性半芳香族ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられ、中でも、テレフタル酸が好ましい。ジカルボン酸成分において、テレフタル酸の含有量は、80モル%以上とすることが好ましく、90モル%以上とすることがより好ましい。ジカルボン酸成分におけるテレフタル酸の含有量が高いほど耐熱性が高くなる傾向がある。ジカルボン酸成分は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。ジカルボン酸成分として、本発明の効果を損なわない限りで、芳香族ジカルボン酸以外の他のジカルボン酸を用いてもよい。他のジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸や、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。他のジカルボン酸の含有量は、ジカルボン酸成分において、5モル%以下であることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0012】
結晶性半芳香族ポリアミド樹脂を構成する脂肪族ジアミン成分としては、例えば、1,2-エタンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミンが挙げられる。中でも、汎用性が高いことから、1,6-ヘキサンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミンが好ましく、耐熱性や機械的強度が高いことから、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミンがより好ましい。これらは、それぞれ1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。ジアミン成分としては、本発明の効果を損なわない限り、脂肪族ジアミン以外の他のジアミンを用いてもよい。他のジアミンとしては、例えば、シクロヘキサンジアミン等の脂環式ジアミンや、キシリレンジアミン、ベンゼンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。他のジアミンの含有量は、ジアミン成分において、5モル%以下とすることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0013】
結晶性半芳香族ポリアミド樹脂としては、汎用性が高いことから、テレフタル酸と1,6-ヘキサンジアミンを主成分とするポリアミド6T、テレフタル酸と1,9-ノナンジアミンを主成分とするポリアミド9Tおよびテレフタル酸と1,10-デカンジアミンを主成分とするポリアミド10Tが好ましく、高い機械特性の観点から、ポリアミド10Tがより好ましい。
【0014】
本発明にA-2成分として使用される脂肪族ポリアミド樹脂は主鎖中に芳香族成分を含まない重合体である。融点は160℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、220℃以上であることがさらに好ましい。脂肪族ポリアミド樹脂として、ポリε-カプラミド(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリウンデカナミド(ポリアミド11)、ポリドデカナミド(ポリアミド12)およびこれらのうち少なくとも2種類の異なったポリアミド成分を含むポリアミド共重合体、あるいは、これらの混合物などがあげられる。中でもポリアミド6およびポリアミド66が配合する射出成形体中のB成分の金属被覆率を向上させる観点から特に好ましい。
【0015】
A-1成分の含有量は、A-1成分とA-2成分との合計100重量部中、60~90重量部であり、好ましくは65~85重量部、より好ましくは70~80重量部である。A-1成分の含有量が90重量部を超えると、十分な電磁波シールド特性が得られない。また、A-1成分の含有量が60重量部未満の場合、機械特性が低下する。
【0016】
<B成分について>
B成分の含有量はA成分100重量部に対して、5~40重量部であり、好ましくは10~35重量部、より好ましくは15~30重量部である。含有量が5重量部を満たさない場合、十分な電磁波シールド特性が得られない。また40重量部を超えると、加工性が悪くなり、組成物を得ることが困難になる。
【0017】
B成分である金属被覆炭素繊維に使用される炭素繊維は、一般的に炭素繊維と称されるものであればいかなる炭素繊維を用いてもよい。例えば、ポリアクリロニトリルを原料とするPAN系炭素繊維、石油タールや石油ピッチを原料とするピッチ系炭素繊維、炭化水素などを原料とする気相成長系炭素繊維、ビスコースレーヨンなどを原料とするセルロース系炭素繊維などが挙げられる。
【0018】
炭素繊維表面に形成する金属は、銀、銅、鉄、ニッケルおよびアルミニウムなどが挙げられ、ニッケルが金属層の耐腐食性の点から好ましい。金属コートの方法としては、メッキ法および蒸着法等の公知の方法が挙げられ、中でもメッキ法が好適に利用される。金属被覆層の厚みは好ましくは0.1~1μm、より好ましくは0.15~0.5μm、さらに好ましくは0.2~0.35μmである。
【0019】
本発明の組成物より得られた射出成形体中における炭素繊維の金属被覆率は70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。金属被覆率が70%未満の場合、十分な電磁波シールド特性が得られない場合がある。
【0020】
<その他の成分>
なお、本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨に反しない範囲で、酸化防止剤、離型剤等の各添加剤を含むことが出来る。
【0021】
<酸化防止剤>
本発明の樹脂組成物は酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物およびチオエーテル系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤を配合することにより、成形加工時の色相や流動性が安定するだけでなく、耐加水分解性の向上にも効果がある。
【0022】
ヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n-オクタデシル-β-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。上記化合物の中でも、テトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、および3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましく利用される。特にオクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これらはいずれも入手容易である。上記ヒンダードフェノール系化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
ホスファイト系化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。さらに他のホスファイト系化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、および2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。好適なホスファイト系化合物は、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイトである。
【0024】
また、例えば2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン〔「スミライザーGP」(住友化学株式会社製)として市販されている。〕、2,10-ジメチル-4,8-ジ-t-ブチル-6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[3-(3、5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,4,8,10-テトラ-t-ペンチル-6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-12-メチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10-ジメチル-4,8-ジ-t-ブチル-6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10-テトラ-t-ペンチル-6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-12-メチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,10-ジメチル-4,8-ジ-t-ブチル-6-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)-12-メチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10-ジメチル-4,8-ジ-t-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ]-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10-ジエチル-4,8-ジ-t-ブチル-6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[2,2-ジメチル-3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンなどを挙げることができる。これらはいずれも入手容易である。上記ホスファイト系化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
ホスホナイト系化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられる。テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト系化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト系化合物との併用可能であり好ましい。ホスホナイト系化合物としてはテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトが好ましく、該ホスホナイトを主成分とする安定剤は、Sandostab P-EPQ(商標、Clariant社製)およびIrgafos P-EPQ(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販されておりいずれも利用できる。上記ホスホナイト系化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
チオエーテル系化合物の具体例として、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられる。上記チオエーテル系化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
酸化防止剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0.01~2重量部が好ましく、より好ましくは0.03~1重量部、さらに好ましくは0.05~0.5重量部である。酸化防止剤の含有量が0.01重量部より少ない場合は酸化防止効果が不足し、成形加工時の色相や流動性が不安定になるだけでなく、耐加水分解性も悪化する場合がある。また、かかる含有量が2重量部よりも多い場合、酸化防止剤由来の反応成分などがかえって耐加水分解性を悪化させてしまう場合がある。
【0028】
また、前記ヒンダードフェノール系化合物とホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物、チオエーテル系化合物のいずれか2種類以上を組み合わせて使用することが好ましい。ヒンダードフェノール系化合物とホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物、チオエーテル系化合物のいずれか2種類以上を組み合わせて使用することで、安定剤としての相乗効果が発揮され、より成形加工時の色相、流動性の安定化、耐加水分解性の向上に効果がある。
【0029】
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は離型剤を含むことができる。離型剤として具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、パラフィン、低分子量のポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸部分鹸化エステル、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルおよび変性シリコーン等を挙げることができる。これらを配合することで機械特性、成形性、耐熱性に優れた成形品を得ることができる。
【0030】
脂肪酸としては炭素数6~40のものが好ましく、具体的には、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、パルミチン酸、モンタン酸およびこれらの混合物等が挙げられる。脂肪酸金属塩としては炭素数6~40の脂肪酸のアルカリ(土類)金属塩が好ましく、具体的にはステアリン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム等が挙げられる。
【0031】
オキシ脂肪酸としては1,2-オキシステリン酸等が挙げられる。パラフィンとしては炭素数18以上のものが好ましく、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等が挙げられる。
【0032】
低分子量のポリオレフィンとしては例えば分子量5000以下のものが好ましく、具体的にはポリエチレンワックス、マレイン酸変性ポリエチレンワックス、酸化タイプポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。
【0033】
脂肪酸アミドとしては炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。
【0034】
アルキレンビス脂肪酸アミドとしては炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0035】
脂肪族ケトンとしては炭素数6以上のものが好ましく、高級脂肪族ケトン等が挙げられる。
【0036】
脂肪酸部分鹸化エステルとしてはモンタン酸部分鹸化エステル等が挙げられる。脂肪酸低級アルコールエステルとしてはステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、アジピン酸エステル、ベヘン酸エステル、アラキドン酸エステル、モンタン酸エステル、イソステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0037】
脂肪酸多価アルコールエステルとしては、グリセロールトリステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールモノステアレート、ペンタエリスルトールテトラステアレート、ペンタエリスルトールトリステアレート、ペンタエリスルトールジミリステート、ペンタエリスルトールモノステアレート、ペンタエリスルトールアジペートステアレート、ソルビタンモノベヘネート等が挙げられる。脂肪酸ポリグリコールエステルとしてはポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリトリメチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0038】
変性シリコーンとしてはポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0039】
そのうち脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミドが好ましく、脂肪酸部分鹸化エステル、アルキレンビス脂肪酸アミドがより好ましい。なかでもモンタン酸エステル、モンタン酸部分鹸化エステル、ポリエチレンワックス、酸価ポリエチレンワックス、ソルビタン脂肪酸エステル、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましく、特にモンタン酸部分鹸化エステル、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
【0040】
離型剤は、1種類で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。離型剤の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.01~3重量部、より好ましくは0.03~2重量部である。
【0041】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば各成分、並びに任意に他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを挙げることができる。予備混合においては場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器などを挙げることができるが、ベント式ニ軸押出機が好ましい。他に、各成分、並びに任意に他の成分を予備混合することなく、それぞれ独立に二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法も取ることもできる。
【0042】
<成形体>
本発明の樹脂組成物から、成形体を作製することができ、その方法としては特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、この樹脂組成物のペレットを所定の金型を装備した射出成形機に投入し、射出成形することで作製することができる。
【実施例0043】
以下に、本開示を実施例に基づいて説明する。なお、本開示は、以下の実施例に限定されるものではなく、以下の実施例を本開示の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本開示の範囲から除外するものではない。
【0044】
(1)射出成形体中の炭素繊維の金属表面被覆率
下記の方法で得られた角板(サイズ:150mm×150mm×2mmt)を用い、中央部分を0.4g切り出し、40mlHFIPに溶かし、PTFEメンブレインフィルタを使用し濾過させた。濾過で通過しなかった炭素繊維を銀テープの土台に薄く貼りつけ、SEM(日本電子JEOL JSM-6100)にて200倍の画像を撮影した。撮影した画像同部位のEDSマッピングを行い、金属の面積と炭素の面積をそれぞれ求め、下記式により金属の表面被覆率を算出した。なお、一例として実施例2の測定で使用したSEM画像、NiのEDSマッピングおよび炭素のEDSマッピングを
図3~
図5に示す。
金属の表面被覆率(%)=[A1/(A1+A2)]×100
(式中、A1は金属の面積、A2は炭素の面積を表す。)
【0045】
(2)機械特性
(i)引張破断応力
下記の方法で得られたISO曲げ試験片を用いて、ISO527に従い、引張破断応力の測定を実施した。
(ii)曲げ弾性率
下記の方法で得られたISO曲げ試験片を用いて、ISO178に従い、曲げ弾性率の測定を実施した。
(iii)シャルピー衝撃強度
下記の方法で得られたISO曲げ試験片を用いて、ISO179に従い、ノッチ付きのシャルピー衝撃強度の測定を実施した。
(iv)荷重たわみ温度
下記の方法で得られたISO曲げ試験片を用いて、ISO75-1および2に準拠して、荷重1.80MPaにて測定した。
【0046】
(3)電磁波シールド特性
下記の方法で得られた角板(サイズ:150mm×150mm×2mmt)を用い、株式会社アドバンテスト製の評価装置を用いて、KEC法に準拠し、近傍電界及び磁界の0MHz~1GHzの領域において、シールド効果(dB)を測定し、200MHz~1GHzにおける最も低い電界シールド効果(dB)および磁界シールド効果(dB)を算出した。
一般的にシールド効果は表1のとおりである。電界シールド効果および磁界シールド効果は、200MHz~1GHzの範囲のすべての周波数において少なくとも携帯電話の電磁波を全て遮断するレベルである30dBが必要である。
【0047】
【0048】
なお、一例として、
図1に実施例2、実施例3および比較例1の0~1GHzの電界におけるシールド効果、
図2に実施例2、実施例3および比較例1の0~1GHzの磁界におけるシールド効果の測定結果を示す。
なお、本発明の実施例、比較例においては以下の材料を使用した。
【0049】
<A-1成分>
A-1:XecoTXP-500(ユニチカ(株)製)
<A-2 成分>
A-2a:UBE NYLON 1011FB(宇部興産(株)製)
A-2b:Leona 1402S(旭化成(株)製)
<B成分>
B-1:Tenax-J HT C923(帝人(株)製)
【0050】
(試験片の調製)
[実施例1、比較例1、5]
A-1成分およびA-2成分はそれぞれ第1供給口より供給し、B成分は第2供給口からサイドフィーダーを用いて供給し、溶融押出してペレット化した。ここで第1供給口とは根元の供給口のことであり、第2供給口とは押出機のダイスと第1供給口の間に位置する供給口である。溶融押出は、サイドスクリューを備えた径30mmφのベント式二軸押出機[(株)日本製鋼所製TEX30α-38.5BW-3V]を用い実施した。また、押出温度は、C1/C2/C3~C11/D=50℃/320℃/330℃/340℃とし、メインスクリュー回転数は200rpm、サイドスクリュー回転数は100rpm、吐出量は20kg/h、ベント減圧度は3kPaとした。該ペレットを熱風循環式乾燥機で130℃で、10時間乾燥し、射出成形機(東芝機械エンジニアリング(株)製 EC130SXII-4Y)を使用して、シリンダー温度320℃、金型温度130℃にて150mm×150mm×2mmtの角板およびISO試験片(ISO527、ISO179、ISO75-1および2)を作成した。
【0051】
[実施例2~6、比較例2~4]
押出温度をC1/C2~C11/D=50℃/310℃/320℃に変更した以外は実施例1と同様の方法でペレットを調製した。該ペレットをシリンダー温度を310℃とした以外は実施例1と同様の方法で150mm×150mm×2mmtの角板およびISO試験片(ISO527、ISO179、ISO75-1および2)を作成した。
各実施例、比較例について前述の機械特性および電磁波シールド特性の評価を行った。結果を表2に示す。なお、比較例3は押出性が悪く、ペレットが得られなかった。
【0052】
【0053】
<実施例1~6>
本発明の請求範囲内にあるA-2成分をA-1成分に併用することで、機械特性を維持しつつ、良好な電磁波シールド特性を示した。
<比較例1>
A-2成分を含有していないため、電磁波シールド特性が悪い。
<比較例2>
B成分の含有量が請求範囲より少ないため、電磁波シールド特性が悪い。
<比較例3>
B成分の含有量が請求範囲より多いため、押出性が悪く、評価できなかった。
<比較例4>
A-2成分の含有量が請求範囲より多いため、機械特性が低下した。
<比較例5>
A-2成分の含有量が請求範囲より少ないため、電磁波シールド特性が悪い。