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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128673
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】シャワーヘッド
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20240913BHJP
   B05B 1/18 20060101ALI20240913BHJP
   B05B 1/34 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A47K3/28
B05B1/18 101
B05B1/34 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037791
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(71)【出願人】
【識別番号】501483061
【氏名又は名称】株式会社 フクシマ化学
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 純也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直人
(72)【発明者】
【氏名】福島 康貴
【テーマコード(参考)】
2D132
4F033
【Fターム(参考)】
2D132FA03
2D132FC04
2D132FJ16
2D132FJ21
4F033AA11
4F033BA04
4F033DA05
4F033EA01
4F033KA02
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】効率良く旋回流を形成する。
【解決手段】シャワーヘッドは、散水孔(ミスト散水孔74)を有するシャワーフェイスと、流路形成部材85とを備える。シャワーヘッドは、シャワーフェイス、及び流路形成部材85が互いに当接することによって区画された散水用流路88を有しており、散水用流路88は、主流路88aと、主流路88aに連続する絞り流路88bと、絞り流路88bに連続するとともに散水孔に繋がる旋回流路88cとを有しており、絞り流路88bは、主流路88aの下流側の端部から流路幅が徐々に小さくなる絞り部88b1を有する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
散水孔を有するシャワーフェイスと、流路形成部材とを備えるシャワーヘッドであって、
前記シャワーヘッドは、前記シャワーフェイス、及び前記流路形成部材が互いに当接することによって区画された散水用流路を有しており、
前記散水用流路は、主流路と、当該主流路に連続する絞り流路と、当該絞り流路に連続するとともに前記散水孔に繋がる旋回流路とを有しており、
前記絞り流路は、前記主流路の下流側の端部から流路幅が徐々に小さくなる絞り部を有することを特徴とするシャワーヘッド。
【請求項2】
前記散水用流路は、前記シャワーフェイス、及び前記流路形成部材のいずれか一方の凹部と、前記シャワーフェイス、及び前記流路形成部材のいずれか他方の平坦部とによって構成されている請求項1に記載のシャワーヘッド。
【請求項3】
前記散水用流路は、前記流路形成部材の凹部と、前記シャワーフェイスの平坦部とによって構成されている請求項1に記載のシャワーヘッド。
【請求項4】
前記主流路の最大流路幅は、前記絞り流路の最小流路幅の2倍以上である請求項1に記載のシャワーヘッド。
【請求項5】
前記絞り部は、前記主流路の下流側の端部から前記旋回流路に向かうに連れて、流路幅の減少率が小さくなる請求項1~4のいずれか一項に記載のシャワーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シャワーヘッドの散水構造について記載している。
図18に示すように、シャワーヘッド90は、シャワーフェイスとしての面板部材91と、流路形成部材としてのリング部材92とを備える。また、シャワーヘッド90は、面板部材91が取り付けられるシャワーヘッド本体94を備える。リング部材92は、環状に延びる平坦部92aと、平坦部92aからリング部材92の厚さ方向に突出する複数の突出部92bと、平坦部92aを貫通する複数の湯水供給孔92cとを有している。面板部材91は、円形の外形を有しており、複数の散水孔91aと、面板部材91の背面側から面板部材91の厚さ方向に窪んだ凹部91bとを有している。
【0003】
図18、19に示すように、シャワーヘッド90は、面板部材91とリング部材92が互いに当接することによって区画された流路93を有する。この流路93は、面板部材91の凹部91bと、リング部材92の平坦部92aとによって構成されている。
【0004】
図19、20に示すように、シャワーヘッド90の流路93は、主流路93aと、主流路93aに連続する絞り流路93bと、絞り流路93bに連続する旋回流路93cとを有している。主流路93aは、図18に示すリング部材92の湯水供給孔92cに連通している。旋回流路93cの略中央に散水孔91aが位置している。
【0005】
図20の矢印Aで示すように、リング部材92の湯水供給孔92cを通じてシャワーヘッド本体94側から流路93に湯水が供給されると、供給された湯水は主流路93aに流入した後、絞り流路93bへと流通する。絞り流路93bの流路幅T2は主流路93aの流路幅T1の約半分であるため、絞り流路93bを通過する際に湯水は加速される。さらに、絞り流路93bを通過した湯水は、旋回流路93cへと流通する。旋回流路93cにおいて湯水は旋回されつつ散水孔91aから吐出される。湯水を加速させるとともに、旋回させながら吐出することによって、湯水をミスト状に吐出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-208527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図20に示すように、面板部材91において、絞り流路93bは、主流路93aの下流側の端部から略一定の流路幅で延びている。また、絞り流路93bの流路幅T2は、主流路93aの流路幅T1の約半分になっている。主流路93aと絞り流路93bの境界部分において流路幅が急激に減少しているため、絞り流路93bを流通する湯水の圧力損失が大きくなりやすい。圧力損失が大きくなると、絞り流路93b内の湯水を好適に加速させることが難しくなるため、効率良く旋回流を形成することが難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
態様1のシャワーヘッドは、散水孔を有するシャワーフェイスと、流路形成部材とを備えるシャワーヘッドであって、前記シャワーヘッドは、前記シャワーフェイス、及び前記流路形成部材が互いに当接することによって区画された散水用流路を有しており、前記散水用流路は、主流路と、当該主流路に連続する絞り流路と、当該絞り流路に連続するとともに前記散水孔に繋がる旋回流路とを有しており、前記絞り流路は、前記主流路の下流側の端部から流路幅が徐々に小さくなる絞り部を有することを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、絞り流路は、主流路の下流側の端部から流路幅が徐々に小さくなる絞り部を有することによって、主流路の流路幅に対して、絞り流路の流路幅が急激に減少することを抑制することができる。これにより、絞り流路を流通する湯水の圧力損失を相対的に小さくすることができる。絞り流路内の湯水を好適に加速することができるため、効率良く旋回流を形成することができる。
【0010】
態様2は、態様1のシャワーヘッドにおいて、前記散水用流路は、前記シャワーフェイス、及び前記流路形成部材のいずれか一方の凹部と、前記シャワーフェイス、及び前記流路形成部材のいずれか他方の平坦部とによって構成されている。この構成によれば、シャワーフェイスと流路形成部材の2つの部材を用いることによって、より簡単に散水用流路を形成することができる。
【0011】
態様3は、態様1又は2のシャワーヘッドにおいて、前記散水用流路は、前記流路形成部材の凹部と、前記シャワーフェイスの平坦部とによって構成されている。この構成によれば、散水孔を有するシャワーフェイスに比べて、流路形成部材の方が凹部を形成することが容易であるため、散水用流路をより簡単に形成することができる。
【0012】
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載のシャワーヘッドにおいて、前記主流路の最大流路幅は、前記絞り流路の最小流路幅の2倍以上である。この構成によれば、主流路と絞り流路の流路幅の差が相対的に大きくなるため、絞り流路において湯水をより加速させることができる。
【0013】
態様5は、態様1~4のいずれか一態様に記載のシャワーヘッドにおいて、前記絞り部は、前記主流路の下流側の端部から前記旋回流路に向かうに連れて、流路幅の減少率が小さくなる。この構成によれば、絞り部における旋回流路により近い箇所において、流路幅の減少がより小さくなるため、旋回流路に流入する湯水の流れをより安定させることができる。これにより、より効率良く旋回流を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシャワーヘッドによれば、効率良く旋回流を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は第1実施形態のシャワーヘッドの斜視図である。
図2図2は第1実施形態のシャワーヘッドの分解斜視図である。
図3図3(a)は第1実施形態のインナーカップ本体及びカバーの正面図、図3(b)はインナーカップの半断面図である。
図4図4は第1実施形態の吐出ユニットの分解斜視図である。
図5図5(a)は第1実施形態の操作部の正面図、図5(b)は同底面図、図5(c)は同側面図、図5(d)は断面図である。
図6図6(a)は第1実施形態のインナーカバーと操作部の位置関係を示す正面図、図6(b)は同半断面図、図6(c)は操作部を回動させた場合の正面図、図6(d)は同半断面図、図6(e)は操作部を回動させた場合の正面図、図6(f)は同半断面図である。
図7図7(a)は斜め前方から見た第1実施形態の切替部の分解斜視図、図7(b)は斜め後方から見た切替部の分解斜視図である。
図8図8は斜め前方から見た第1実施形態のシャワーフェイスと流路形成部材の斜視図である。
図9図9は斜め後方から見た第1実施形態のシャワーフェイスと流路形成部材の斜視図である。
図10図10は第1実施形態の流路形成部材の部分拡大正面図である。
図11図11は第1実施形態の流路形成部材のさらなる部分拡大正面図である。
図12図12(a)は第1実施形態の操作部がシャワー水位置の流路を示す断面図、図12(b)は操作部が噴霧水位置の流路を示す断面図、図12(c)は操作部が直流水位置の流路を示す断面図である。
図13図13は斜め前方から見た第2実施形態のシャワーフェイスと流路形成部材の斜視図である。
図14図14は斜め後方から見た第2実施形態のシャワーフェイスと流路形成部材の斜視図である。
図15図15は第2実施形態のシャワーヘッドにおける流路形成部材の部分拡大正面図である。
図16図16は第2実施形態のシャワーヘッドにおける流路形成部材のさらなる部分拡大正面図である。
図17図17は変更例の流路形成部材の部分拡大正面図である。
図18図18は従来技術のシャワーヘッドの分解斜視図である。
図19図19は従来技術のシャワーフェイスの背面図である。
図20図20は従来技術のシャワーフェイスの部分拡大背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
シャワーヘッドの第1実施形態を説明する。
図1に示すように、シャワーヘッド1は先端前面から湯水を吐出することができ、その吐出形態を直流水ともいうストレート水、シャワー水、及び噴霧水ともいうミスト水の3種から任意に選択することができる。なお、シャワーヘッド1の基端には図示しないホース及び水栓が接続されており、水栓にて温度及び流量が調整された湯水がホースを通ってシャワーヘッド1に送られてくる。
【0017】
図2に示すように、シャワーヘッド1は、その外殻をなすヘッドケース10と、通水部材としてのインナーカップ20とを有する。また、インナーカップ20からの湯水を異なる吐出形態に切り替えて吐出する切替部材としての吐出ユニット30を有する。なお、シャワーヘッド1及びこれを構成する各部材において、先端、基端、前方(前面)、後方(背面)とは、図1に矢印にて図示した方向をいう。
【0018】
以下、シャワーヘッド1を構成する各部材について説明する。
<ヘッドケース>
図2に示すように、ヘッドケース10は本体ケース11とこれに嵌合する前面ケース12とを有し、それぞれABS樹脂にて成形されて、その表面が金属メッキされている。本体ケース11は、側壁13及び底壁14を有し前面が開口した円筒状のヘッド部11Aと、このヘッド部11Aの基端に連通し、前面が開口した半円筒状の背面ハンドル部11Bを一体成形したものである。ヘッド部11Aの基端側の側壁13と背面ハンドル部11Bは前縁の高さ(前後方向の長さ)が低くなっており、ここに前面ケース12が装着される。ヘッド部11Aの底壁14には前方に突出するボス15が4箇所形成されており、ボス15の内側に雌ネジが形成されている。
【0019】
前面ケース12は背面が開口した半円筒状の前面ハンドル部12Aと、前面ハンドル部12Aの先端に一体成形された円弧状の枠部12Bを有し、正面視で略Y字状をなす。枠部12Bの前面はヘッド部11Aの側壁13に直交する面を有し、先端縁がヘッド部11Aの側壁13と同心円かつ側壁13よりも小径の円弧状に形成された係合片16を有する。この係合片16はヘッドケース10の第2係合部を構成する。係合片16は側壁13の前縁と同じ高さとなっており、側壁13の延長線(側壁13の正面視における円弧を基端に延長させた場合の軌跡)よりも径方向(吐出ユニット30の回動軸に直交する方向)内側に位置する。
【0020】
背面ハンドル部11Bと前面ハンドル部12Aを組み合わせることによって、筒状のハンドル部17が形成される。
<インナーカップ>
図1~3に示すように、通水部材としてのインナーカップ20は、ヘッドケース10に収容される。インナーカップ20はインナーカップ本体21と、インナーカップ本体21の前面に位置するカバー22とを有する。インナーカップ本体21は前面が開口した有底円筒状をなす円筒部23を有し、この円筒部23の基端に管状の接続部24が形成されている。接続部24の基端は径方向外側に延び、シャワーヘッド1のハンドル内に位置する配管(図2に2点鎖線で示す)に接続されており、インナーカップ20へと湯水を供給する。円筒部23内には同心円状に外側から案内溝25、円状流路26、嵌合部27が形成されている。案内溝25は基端を除く範囲に周方向(吐出ユニット30の回動方向)に形成された正面視(図3(a))でC字状の溝であり、後述する切替部50に形成された案内筒部515を回動可能に遊嵌している。案内溝25の内側には円筒状の仕切り壁251を挟んで円状流路26が形成されている。円状流路26の基端には接続部24の先端が連通して開口している。円状流路26の中央には円筒状の嵌合部27が位置し、嵌合部27の中心には内側に雌ネジを有するボス271が形成されている。このボス271に吐出ユニット30が回動可能に固定され、吐出ユニット30の回動軸はボス271を通る。
【0021】
図3(b)に示すように、インナーカップ本体21は、円筒部23の前端外周から鍔部28が形成されている。鍔部28は円筒部23の前端外縁から径方向外側に向かって延びる円板状をなし周方向において接続部24と重なる箇所を除いた範囲に形成されている。なお、図3等では接続部24と周方向に重なる箇所にも鍔部28が位置するように図示されているが、成型上、鍔部28の前面形状を接続部24の前面にも形成しているだけであり、この箇所には鍔部28は形成されていない。鍔部28には周方向の4箇所に本体ケース11の底壁14のボス15に対応したネジ孔281が形成されており、インナーカップ20はネジ29(図2参照)により本体ケース11に回動不能に固定されている。
【0022】
図3(b)に示すように、鍔部28の外周部分には背面側に形成された段差を介して薄肉の係合板282が形成されており、この係合板282はインナーカップ20の第1係合部を構成する。図3(a)に示すように係合板282は鍔部28のうち正面視で先端を12時とした場合の12時、3時、9時となる位置には形成されていない。すなわち、鍔部28のこれらの位置は係合板282の幅だけ径方向内側に凹んでいる。これは成形及び操作部40との組付けを考慮したものである。なお、鍔部28の一部である係合板282が円板部となる。
【0023】
カバー22は、図3(b)に断面図を示すように円状流路26の前面を覆うものである。カバー22は円形の板材であり、外周縁の2箇所には凸片221が形成されて円状流路26の仕切り壁251に形成された切り欠きにて位置決めされている。カバー22には中央の貫通孔222とこれを挟んで対向する2つで対をなす扇形の吐出口223が貫通形成されており、接続部24から円状流路26に送られてきた湯水は2つの吐出口223から湯水を前方に吐出可能となっている。
【0024】
<吐出ユニット>
図1、2に示すように、切替部材としての吐出ユニット30は、インナーカップ20に取り付けられて、インナーカップ20から吐出される湯水の流路を切り替える。
【0025】
図4に吐出ユニット30の分解斜視図を示す。同図に示すように吐出ユニット30は図中右から操作部40、切替部50、シャワーノズル60、流路形成部材85、シャワーフェイス70、整流器80を含んで構成される。なお、操作部40には後述する摺動リング49が装着されているが、摺動リング49は吐出ユニット30には含まれない。
【0026】
(操作部)
以下、操作部40について説明する。
図5(a)に操作部40の正面図、図5(b)に同底面図、図5(c)に同側面図、図5(d)に同断面図を示す。操作部40はABS樹脂で形成されている。操作部40は円環状の表面部41と表面部41から後方に円筒状に延びる外嵌筒部42とを有する。この外嵌筒部42がインナーカップ20の一部に外嵌した状態で係合し、インナーカップ20に対して回動可能となっている。表面部41の外径はヘッドケース10の側壁13と同径であり、表面部41の基端には前方に突出する摘み43が形成されていて使用者はこの摘み43を把持して操作部40を回動させることができる。なお、操作部40において基端及び先端とは、操作部40が回動中心にある位置(図1の位置)における先端(図中上)及び基端(図中下)をいう。外嵌筒部42の内周面には一定の高さ範囲に雌ネジ44が形成されている。この雌ネジ44は後述するシャワーフェイス70に螺合するものである。外嵌筒部42の内周面のうち雌ネジ44より後方には内周面から径方向内側に向かう一定幅の係合リブ45が円弧状に形成されており、これは操作部40の第1係合部を構成する。係合リブ45は外嵌筒部42の先端と基端とを結ぶ線に対称に形成されており、係合リブ45のうち最も離れて位置する部分間の角度範囲は約200度となっている。係合リブ45は周方向に連続して形成されてはおらず、例えば図5(a)にて先端を12時とした場合の12時、3時、9時の位置には形成されていない。これは成形上及びインナーカップ20との組付けを考慮したものである。外嵌筒部42の内周面において係合リブ45が形成されていない左右位置の前方には径方向内側に向かう位置決めリブ46がそれぞれ形成されており、正面視では各位置決めリブ46が左右の係合リブ45が形成されていない箇所に重なる。係合リブ45と位置決めリブ46との前後方向の間隔は、インナーカップ20の係合板282の厚みよりも長い。また、外嵌筒部42のうち係合リブ45と同じ高さであって係合リブ45が形成されていない周方向部分には外嵌筒部42も形成されておらず、同部分は図5(c)に示すように係合リブ45の高さ分だけ短く切り欠かれたような凹部47となっている。
【0027】
操作部40の表面部41の背面かつ外嵌筒部42の前端外周面には径方向外側に開口する第2係合部及び溝部としての係合溝48が全周に亘って形成されている。図8に示すように、この係合溝48には全体としてリング状をなし断面が径方向外側に開口するコ字状の摺動リング49が装着されている。摺動リング49は基端に切れ目を挟んで端部を有する略Ω状をなし、その両端部からそれぞれ径方向外側に延びる係止片49aを有する。係止片49aが前面ケース12に係止されて摺動リング49は前面ケース12に回動不能に固定されている。摺動リング49は断面コ字状において平行に延びる2片のうち前方(図8の上方)に位置する前片が後方に位置する後片よりも径方向外側に長く形成されている。摺動リング49を係合溝48に装着した状態では係合溝48の内面は摺動リング49に覆われる。そして、係合溝48及び摺動リング49内に前面ケース12の係合片16が挿入されて、ヘッドケース10及び摺動リング49に対して操作部40を回動可能に係合している。また、表面部41の背面は摺動リング49を介してヘッドケース10の側壁13前端に着座してヘッドケース10及び摺動リング49に対して操作部40を回動可能に係合している。摺動リング49はPOM樹脂にて成形されている。
【0028】
図6にインナーカップ20と操作部40とを係合した関係を示し、他の部材の図示は省略する。インナーカップ20は接続部24を除いた部分が操作部40に内嵌されて両者が相対回動可能に係合されている。図6(a)、図6(b)に示すように、操作部40の係合リブ45(図6(a)では破線で示す)はインナーカップ20の係合板282と正面視にて重なる関係にある。また、操作部40の係合リブ45とインナーカップ20の係合板282からなる第1係合部は、図6(b)、同(d)、同(f)に示すように接続部24と前後方向(高さ方向)において重なる位置に形成されている。インナーカップ20の係合板282が操作部40の係合リブ45の上(前方)に着座して操作部40の前方への移動を規制しつつ、両者は回動可能に係合されている。そして、操作部40はインナーカップ20に対して図6(a)の位置から図6(c)に示す時計回り方向、図6(e)に示す反時計回り方向に回動することができる。操作部40はインナーカップ20のボス271を中心として回動する。なお、操作部40の回動に伴い係合リブ45も回動するため、インナーカップ20の係合板282が操作部40の係合リブ45に着座する箇所は、図6(d)、図6(f)のように回動に伴い変化する。流路切り替えに必要な操作部40の回動可能な範囲は図6(a)を中心として左右にそれぞれ約60度である。そして、この回動範囲では操作部40に形成された係合リブ45はインナーカップ20の接続部24と回動方向において重ならない。すなわち、操作部40の係合リブ45とインナーカップ20の係合板282からなる第1係合部は、操作部40が回動する範囲を含めて、正面視では接続部24の位置を避けた環状に位置する。インナーカップ20の接続部24が位置する箇所は、操作部40の外嵌筒部42に凹部47が形成されているため、操作部40を回動しても接続部24が外嵌筒部42に干渉することはない。
【0029】
(切替部)
以下、切替部50について説明する。
図7(a)及び図7(b)に切替部50の分解斜視図を示す。切替部50はインナーカップ20の吐出口223から吐出された湯水の流路を切り替える部材であり、背面切替部51と前面切替部52とシャワー水板53とから構成される。背面切替部51は、操作部40の外嵌筒部42内に遊嵌される環状の円環部511を有する。円環部511の前面内周縁には前方に突出するスペーサ512が形成されている。また、円環部511の外周縁には弾性リング513が装着されており、その後方には位置決め凹部514が周方向に180度離間した2箇所に形成されている。この位置決め凹部514は操作部40の外嵌筒部42に形成された位置決めリブ46に嵌合し、背面切替部51を操作部40に対して相対回動不能に固定する。円環部511の内周縁からは半円筒状の案内筒部515が後方に突出しており、インナーカップ20に形成された案内溝25に嵌合している。
【0030】
図7(a)及び図7(b)に示すように、前面切替部52は円環状の案内板521と有底円筒状の弁体522とを有する。案内板521は背面切替部51の円環部511より小径であり、その背面には円環部511のスペーサ512に係止するスペーサ523が突出形成されている。背面切替部51の円環部511と前面切替部52の案内板521との間にはスペーサ512、523の高さに相当する隙間を前後方向に有した状態で両者は相対回動不能に固定されている。この隙間は噴霧水用の通水路、すなわち噴霧水流路となる。
【0031】
弁体522は背面切替部51の円環部511に水密状態で内嵌されている。弁体522は内部に内筒524を有する二重筒状となっている。弁体522内のうち、内筒524の内側は前面に開口しており直流水用の通水路、すなわち直流水流路を構成する。また、弁体522内のうち内筒524の外側は周方向に4つに分割されており、このうち対向する一対は前面に開口してシャワー水用の通水路、すなわちシャワー水流路を構成する。また、もう一対は前面が閉塞されているとともに弁体522の側面に内外を連通する流出孔525が2箇所形成されており噴霧水流路を構成する。
【0032】
弁体522の底は当接面526となっており、中央の固定孔527を中心として周方向にそれぞれ独立した6個の扇状をなす開口が形成されている。各開口は固定孔527を挟んで対向する2つが対をなしており、当接面526には第1開口528A、第2開口528B、第3開口528Cからなる合計3対の開口が形成されている。このうち、第1開口528Aは内筒524の外側の前面開口した部分に連通しておりシャワー水流路を構成する。また、第2開口528Bは弁体522に形成された流出孔525に連通しており噴霧水流路を構成する。さらに、第3開口528Cは内筒524の内側に連通しており直流水流路を構成する。
【0033】
言い換えれば、弁体522は、周方向に沿って互いに独立した複数種類の通水路を有している。また、噴霧水流路は、弁体522の底に設けられた開口部である第2開口528Bに連通するとともに、弁体522の前面が閉鎖されて、弁体522の側面から流出孔525を介して内外に連通している。
【0034】
当接面526の各開口には周囲を囲う弾性部材529が配されており、当接面526はインナーカップ20のカバー22に対向した状態で当接し弾性部材529をカバー22に押圧している。固定孔527にはワッシャ54を介してネジ55が挿通されてインナーカップ20のボス271に固定されており、背面切替部51と前面切替部52とをインナーカップ20の嵌合部27に嵌合してインナーカップ20に回動可能に固定している。シャワー水板53は円環状をなし周方向に一定間隔で小孔531が形成された板材であり、前面切替部52の内筒524の外側を塞ぐ形で配置されており、シャワー水流路を通った湯水を小孔531から前方に吐出する。背面切替部51は前面切替部52と相対回動不能に固定されており、また背面切替部51は操作部40と相対回動不能に固定されている。このため、切替部50と操作部40とは相対回動不能かつ一体回動可能となっている。
【0035】
(シャワーノズル)
以下、シャワーノズル60について説明する。
図4に示すシャワーノズル60は円環状のノズル部61を有し、弾性材料にて一体形成されている。ノズル部61の前面には前方に向けて突出する複数のシャワー水ニップル62が形成されており、内部に図示しないシャワー水孔が形成されている。
【0036】
(シャワーフェイス)
以下、シャワーフェイス70について説明する。
図8、9に示すように、シャワーフェイス70は、円環状のカバー部71と、カバー部71の外周端からカバー部71の後方に延びる円筒状の挿入筒部72と、カバー部71の内周端からカバー部71の後方に延びる内周筒部76とを有している。シャワーフェイス70は、ABS樹脂にて一体形成されている。また、シャワーフェイス70は、カバー部71の中央部に貫通孔71aを有しており、この貫通孔71aに、整流器80が挿入される。
【0037】
図9に示すように、シャワーフェイス70は、挿入筒部72の内周側において、カバー部71の背面から後方に延びる円筒状の周壁77を有する。挿入筒部72と周壁77は、一定の間隔W1をおいて延びている。この間隔W1は、後述する流路形成部材85の環状部分の幅W2と略等しくなっており、シャワーフェイス70に流路形成部材85を組み付けた際に、挿入筒部72と周壁77の間に流路形成部材85は収容される。
【0038】
挿入筒部72は、挿入筒部72の軸心を挟んで対応する2箇所に、内周側に突出する凸部72aを有している。この凸部72aは、挿入筒部72の前端部から後方に向かって延びている。シャワーフェイス70に流路形成部材85を組み付けた際に、この凸部72aと、後述する流路形成部材85の溝85aとが係合することによって、シャワーフェイス70に対する流路形成部材85の回転が規制される。
【0039】
図8に示すように、カバー部71には複数の挿通孔73が形成されており、シャワーノズル60のシャワー水ニップル62が挿通孔73を通り抜けてシャワーフェイス70の前方に突出するように構成されている。また、カバー部71は、挿通孔73よりも外周側に、複数の散水孔としてのミスト散水孔74を有する。ミスト散水孔74は、カバー部71の周方向に沿って配置されている。ミスト散水孔74から湯水は霧状(ミスト状)に噴出される。
【0040】
図9に示すように、ミスト散水孔74は、カバー部71における挿入筒部72と周壁77の間に位置する。カバー部71の背面において、ミスト散水孔74の周囲は、平坦に構成されている。この平坦な箇所を平坦部71bというものとする。挿入筒部72の外周面には雄ネジ75が形成されており、操作部40の雌ネジ44に螺合する。挿入筒部72の内周面は背面切替部51の円環部511外周の弾性リング513と当接する。
【0041】
(流路形成部材)
以下、流路形成部材85について説明する。
図8、9に示すように、ミストプレートともいう流路形成部材85は、円環状に構成されている。流路形成部材85は、円環の板状部分を厚さ方向に貫通する複数の湯水供給孔86を有する。流路形成部材85は、流路形成部材85の前面に、流路形成部材85の厚さ方向に沿って背面側に窪んだ凹部87を有する。この凹部87は、流路形成部材85の全周に亘って形成されており、湯水供給孔86と重なる位置にも湯水供給孔86と一体に形成されている。
【0042】
図8~11に示すように、流路形成部材85は、板状部分の外周面における流路形成部材85の軸心を挟んで対向する2箇所に、内周側に窪んだ溝85aを有する。この溝85aは、流路形成部材85の厚さ方向に沿って延びている。
【0043】
流路形成部材85は、板状部分の内周面における流路形成部材85の軸心を挟んで対向する2箇所に、内周側に突出した突起85bを有する。この突起85bは、流路形成部材85の厚さ方向に沿って延びている。
【0044】
シャワーフェイス70の挿入筒部72と周壁77の間に流路形成部材85を収容することによって、流路形成部材85はシャワーフェイス70に組み付けられる。この状態で、シャワーフェイス70の挿入筒部72の内周側の凸部72aと、流路形成部材85の外周側の溝85aとが係合する。また、流路形成部材85の内周側の突起85bが、シャワーフェイス70の周壁77に当接する。
【0045】
シャワーフェイス70のカバー部71における背面側の平坦部71bと、流路形成部材85の前面が当接することによって、シャワーフェイス70の平坦部71bと流路形成部材85の凹部87との間に空間が区画される。この空間は、シャワーフェイス70のミスト散水孔74と、流路形成部材85の湯水供給孔86の両方に連通しており、散水用流路88として機能する。
【0046】
図2、4、7に示すように、吐出ユニット30を構成する切替部50、シャワーノズル60、流路形成部材85、シャワーフェイス70、及び整流器80を組み付ける。すると、流路形成部材85の後端部に、切替部50の背面切替部51における外周側の前面が当接する。これにより、流路形成部材85の湯水供給孔86が、切替部50の噴霧水流路に連通した状態になる。切替部50から供給された湯水は、流路形成部材85の湯水供給孔86から散水用流路88に流入する。そして、シャワーフェイス70のミスト散水孔74からミスト状に噴出される。散水用流路88の詳細については後述する。
【0047】
(整流器)
以下、整流器80について説明する。
図4に示す整流器80は円筒状をなし内部に図示しない整流板が配置されており、内部を通過する湯水の水流を整えるものである。整流器80は前面切替部52の内筒524内に装着されており、直流水流路を構成する。
【0048】
<シャワーヘッド1の切替機構>
次に、図12(a)ないし(c)に基づいてシャワーヘッド1の切替機構について説明する。
【0049】
まず、吐出ユニット30の操作部40の摘み43が基端(図6(a)の位置)にある場合、インナーカップ20のカバー22に形成された一対の吐出口223は当接面526の第1開口528Aと対向する。図12(a)に破線で示すようにインナーカップ20から吐出された湯水は第1開口528Aから内筒524の外側にあるシャワー水流路及びシャワー水板53を通りシャワーノズル60の背面に流れる。そして、湯水はシャワーノズル60の吐水孔としてのシャワー水ニップル62からシャワー水として吐出される。
【0050】
次に、操作部40の摘み43を把持して時計回りに回動すると(図6(c)の位置)、操作部40の係合リブ45はインナーカップ20の係合板282に係合したまま回動する。また、操作部40の係合溝48は摺動リング49を介して前面ケース12の係合片16に係合したまま回動する。そして、吐出ユニット30全体も時計回りに回動し、インナーカップ20のカバー22に形成された一対の吐出口223は当接面526の第2開口528Bと対向する。図12(b)に破線で示すようにインナーカップ20から吐出された湯水は第2開口528Bから弁体522内を経て流出孔525から弁体522の外に出る。その後、湯水は、案内板521の背面側を通って径方向外側に拡がる。さらに、湯水は、流路形成部材85の湯水供給孔86から散水用流路88に流入して、シャワーフェイス70のミスト散水孔74から噴霧水(ミスト水)として吐出される。なお、シャワーヘッド1の基端側(図12(b)の左側)に位置する第2開口528Bは、弁体522の側面における流出孔525の位置に壁部530が形成されていることによって噴霧水流路として機能しない。壁部530は省略されていてもよい。
【0051】
一方、操作部40の摘み43を把持して反時計回りに回動すると(図6(e)の位置)、操作部40の係合リブ45はインナーカップ20の係合板282に係合したまま回動する。また、操作部40の係合溝48も摺動リング49を介して前面ケース12の係合片16に係合したまま回動する。そして、吐出ユニット30は反時計回りに回動し、インナーカップ20のカバー22に形成された一対の吐出口223は当接面526の第3開口528Cと対向する。図12(c)に破線で示すようにインナーカップ20から吐出された湯水は第3開口528Cから内筒524の内側にある吐水孔78内の整流器80を経て直流水(ストレート水)として吐出される。
【0052】
以上のように、吐出ユニット30の操作部40を回動操作して、弁体522の通水路、すなわち、シャワー水流路、噴霧水流路、及び直流水流路の位置を変更することによって、インナーカップ20から吐出される湯水の流路を切り換えることができる。
【0053】
以下、散水用流路88について説明する。
<散水用流路>
図8、9に示すように、散水用流路88は、シャワーフェイス70に流路形成部材85を組み付けて、シャワーフェイス70と流路形成部材85が互いに当接することによって区画される。具体的には、シャワーフェイス70の挿入筒部72と周壁77の間に流路形成部材85を収容して、シャワーフェイス70のカバー部71における背面側の平坦部71bと、流路形成部材85の前面とを当接させる。その際、シャワーフェイス70の平坦部71bと流路形成部材85の凹部87との間に形成される空間が、図10等に示す散水用流路88となる。
【0054】
図10、11に示すように、散水用流路88は、主流路88aと、主流路88aに連続する絞り流路88bと、絞り流路88bに連続するとともにミスト散水孔74に繋がる旋回流路88cとを有している。
【0055】
以下、主流路88a、絞り流路88b、及び旋回流路88cについて説明する。
(主流路)
図10、11に示すように、流路形成部材85において、湯水供給孔86は、流路形成部材85の周方向に所定の間隔をおいて複数形成されている。湯水供給孔86は、流路形成部材85の周方向に沿って長い略矩形状となっており、四隅が曲面状となるように面取りされている。
【0056】
流路形成部材85は、厚さ方向において湯水供給孔86に重なる位置であって湯水供給孔86よりも前面側に主流路88aを有する。すなわち、図10に示すように、流路形成部材85を正面から見た状態において、湯水供給孔86は、流路形成部材85の軸心方向に沿って延びている。そして、流路形成部材85の軸心方向において、湯水供給孔86の手前側で湯水供給孔86に重なる位置に主流路88aは形成されている。
【0057】
図10に示すように、個々の湯水供給孔86において、流路形成部材85の軸心方向に直交する断面積S1は、個々の主流路88aにおける流路形成部材85の軸心方向に直交する断面積に等しい。
【0058】
図11に示すように、流路形成部材85の径方向に沿う主流路88aの流路幅は、周方向の任意の位置で略一定になっている。この流路幅を、主流路88aの最大流路幅W3という。主流路88aは、湯水供給孔86から流入した湯水が、最初に流通する流路である。
【0059】
図11に破線の矢印で示すように、湯水供給孔86から主流路88aに流入した湯水は、周方向に流れて、絞り流路88bに流入する。
(絞り流路)
図10、11に示すように、流路形成部材85は、周方向に沿う主流路88aの両端部、言い換えれば主流路88aの下流側の両端部に、主流路88aに連続する絞り流路88bを有する。
【0060】
主流路88aの両端部に位置する絞り流路88bのうち、一方の絞り流路88bは、径方向のより外側の位置で主流路88aに連続しており、他方の絞り流路88bは、径方向のより内側の位置で主流路88aに連続している。
【0061】
図11に示すように、主流路88aから離間する方向において、絞り流路88bの流路幅は徐々に小さくなっている。絞り流路88bにおいて、主流路88aの下流側の端部から径方向側に傾斜しながら延びて流路幅が徐々に小さくなっている箇所を絞り部88b1という。また、絞り流路88bにおいて、絞り部88b1の下流側であって旋回流路88c側の端部は、流路幅が一定になっている。この絞り流路88bにおいて流路幅が一定になっている箇所を平行部88b2という。
【0062】
図11に示すように、流路形成部材85を正面から見た状態において、絞り部88b1は、R面取りされた形状、言い換えれば、R形状になっている。絞り部88b1は、単一のR形状を有している。絞り部88b1が単一のR形状を有していることによって、下流側の旋回流路88cにおいて、よりスムーズに旋回流を生じさせることができる。
【0063】
絞り部88b1は、主流路88aの下流側の端部から旋回流路88cに向かうに連れて、流路幅の減少率が小さくなっている。すなわち、絞り部88b1は、主流路88aの下流側の端部に近い位置において、流路幅がより大きく減少しており、旋回流路88c側に向かうにつれて流路幅の減少がより小さくなる。
【0064】
絞り流路88bが絞り部88b1を有することによって、主流路88aの流路幅に対して、絞り流路88bの流路幅が急激に減少することを抑制することができる。そのため、絞り流路88bを流通する湯水の圧力損失を相対的に小さくすることができる。
【0065】
また、絞り部88b1において、旋回流路88c側に向かうにつれて流路幅の減少がより小さくなることにより、旋回流路88cに流入する湯水の流れをより安定させることができる。絞り流路88bが平行部88b2を有することによっても、旋回流路88cに流入する湯水の流れをより安定させることができる。
【0066】
図11に示すように、絞り流路88bは、平行部88b2において流路幅が最も小さくなっている。平行部88b2の流路幅を絞り流路88bの最小流路幅W4という。絞り流路88bの最小流路幅W4は、主流路88aの最大流路幅W3の1/2以下であることが好ましい。言い換えれば、主流路88aの最大流路幅W3は、絞り流路88bの最小流路幅W4の2倍以上であることが好ましい。
【0067】
主流路88aの最大流路幅W3は、絞り流路88bの最小流路幅W4の2.5倍以上であることがより好ましい。また、主流路88aの最大流路幅W3は、絞り流路88bの最小流路幅W4の5倍以下であることが好ましい。
【0068】
なお、図11に示すように、第1実施形態では、絞り流路88bの最小流路幅W4は、主流路88aの最大流路幅W3の1/4になっている。
絞り流路88bの最小流路幅W4と主流路88aの最大流路幅W3の関係が上記数値範囲内であることによって、絞り流路88bを流通する湯水を好適に加速させることが可能になる。
【0069】
図11に破線の矢印で示すように、絞り流路88bにおいて加速された湯水は、絞り流路88bの下流側に位置する旋回流路88cに流入する。
(旋回流路)
図10、11に示すように、流路形成部材85は、絞り流路88bにおける主流路88a側の端部とは反対側の端部に旋回流路88cを有する。旋回流路88cは、湯水供給孔86と同数設けられている。
【0070】
図10に破線で示すように、流路形成部材85を正面視した際に、旋回流路88cは、略円形状になっている。旋回流路88cの略中央部の手前側にシャワーフェイス70のミスト散水孔74が位置している。
【0071】
旋回流路88cは、周方向に沿う旋回流路88cの両端部において、絞り流路88bに連続している。
旋回流路88cの両端部に位置する絞り流路88bのうち、一方の絞り流路88bは、径方向のより内側の位置で旋回流路88cに連続しており、他方の絞り流路88bは、径方向のより外側の位置で旋回流路88cに連続している。
【0072】
上記のように、旋回流路88cの両端部に絞り流路88bが連続していることによって、両方の絞り流路88bから旋回流路88cに湯水が流入すると、図11の破線の矢印で示すように、湯水に旋回流を生じさせることができる。絞り流路88bで加速させた湯水を旋回流路88cで旋回させることによって、ミスト散水孔74から湯水をミスト状に噴出することが可能になる。
【0073】
図10に示すように、旋回流路88cは、全周に亘ってR面取りされた形状、言い換えれば、全周に亘って単一のR形状を有している。旋回流路88cが全周に亘って単一のR形状を有していることによって、よりスムーズに旋回流を生じさせることができる。旋回流路88cのR形状における曲率半径は、絞り部88b1のR形状における曲率半径よりも大きいと、よりスムーズに旋回流を生じさせることができるため好ましい。
【0074】
図10に示すように、個々の旋回流路88cにおいて、流路形成部材85の軸心方向に直交する断面積S2は、個々の湯水供給孔86の断面積S1の1/2以下になっている。言い換えれば、一つの湯水供給孔86と一つの旋回流路88cを対として見た際に、湯水供給孔86の断面積S1は、旋回流路88cの断面積S2の2倍以上になっている。
【0075】
湯水供給孔86と旋回流路88cが同数設けられているとともに、湯水供給孔86の断面積S1が旋回流路88cの断面積S2の2倍以上であることによって、圧力損失を相対的に小さくしつつ、湯水をより好適に加速させることができる。
【0076】
<作用及び効果>
第1実施形態の作用について説明する。
図20に示すように、従来技術のシャワーヘッド90における面板部材91では、絞り流路93bの流路幅T2は、主流路93aの流路幅T1の約半分になっている。また、絞り流路93bは、主流路93aの下流側の端部から略一定の流路幅T2で延びている。主流路93aと絞り流路93bの境界部分において流路幅が急激に減少しているため、この境界部分を流通する際に湯水の流通抵抗が大きくなりやすい。湯水の流通抵抗が大きくなることによって、絞り流路93bを流通する湯水の圧力損失が大きくなりやすい。これに伴い、絞り流路93b内の湯水を好適に加速させることが難しくなるため、好適な旋回流を形成することが難しくなる。
【0077】
これに対し、図10、11に示すように、第1実施形態では、絞り流路88bは、主流路88aの下流側の端部から流路幅が徐々に小さくなる絞り部88b1を有する。これによって、主流路88aの流路幅に対して、絞り流路88bの流路幅が急激に減少することが抑制されている。絞り流路88bを流通する湯水の圧力損失を相対的に小さくすることができるため、絞り流路88b内の湯水を好適に加速させることができる。
【0078】
第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)旋回流を形成するための散水用流路88において、絞り流路88bは、主流路88aの下流側の端部から流路幅が徐々に小さくなる絞り部88b1を有する。
【0079】
絞り流路88bは、主流路88aの下流側の端部から流路幅が徐々に小さくなる絞り部88b1を有することによって、主流路88aの流路幅に対して、絞り流路88bの流路幅が急激に減少することを抑制することができる。これにより、絞り流路88bを流通する湯水の圧力損失を相対的に小さくすることができる。したがって、絞り流路88b内の湯水を好適に加速させることができるため、効率良く旋回流を形成することができる。また、ミスト散水を効率良く行うことが可能になる。
【0080】
(1-2)散水用流路88は、流路形成部材85の凹部87と、シャワーフェイス70の平坦部71bとによって構成されている。シャワーフェイス70と流路形成部材85の2つの部材を用いることによって、より簡単に散水用流路88を形成することができる。また、ミスト散水孔74等を有するシャワーフェイス70に比べて、流路形成部材85の方がより簡単な構造を有している。シャワーフェイス70に比べて流路形成部材85の方が凹部87を形成することが容易であるため、散水用流路88をより簡単に形成することができる。
【0081】
(1-3)主流路88aの最大流路幅W3は、絞り流路88bの最小流路幅W4の2倍以上である。主流路88aと絞り流路88bの流路幅の差が相対的に大きくなるため、絞り流路88bにおいて湯水をより加速させることができる。
【0082】
(1-4)絞り部88b1は、主流路88aの下流側の端部から旋回流路88cに向かうに連れて、流路幅の減少率が小さくなる。絞り部88b1における旋回流路88cにより近い箇所において、流路幅の減少がより小さくなるため、旋回流路88cに流入する湯水の流れをより安定させることができる。したがって、より効率良く旋回流を形成することができる。
【0083】
<第2実施形態>
シャワーヘッド1の第2実施形態を説明する。
以下では、第1実施形態と異なる箇所について主に説明し、第1実施形態と重複する箇所は説明を省略する。
【0084】
図13、14に示すように、第2実施形態のシャワーヘッド1において、シャワーフェイス70のカバー部71は、複数の挿通孔73よりも内周側に、複数の散水孔としてのミスト散水孔74を有する。ミスト散水孔74は、カバー部71の周方向に沿って配置されている。
【0085】
図13、14に示すように、ミスト散水孔74は、カバー部71における周壁77と内周筒部76の間に位置する。カバー部71の背面において、ミスト散水孔74の周囲が平坦部71bとなっている。シャワーフェイス70は、周壁77と内周筒部76との間に、径方向に延びる複数の区画壁79を有する。複数の区画壁79は、カバー部71の周方向に沿って略等間隔で配置されている。隣り合う区画壁79同士の間に1つのミスト散水孔74が位置している。
【0086】
周壁77と内周筒部76は、一定の間隔W5をおいて延びている。この間隔W5は、後述する流路形成部材85の幅、具体的には板状部85cの幅W6と略等しくなっている。そのため、シャワーフェイス70に流路形成部材85を組み付けた際に、周壁77と内周筒部76の間に流路形成部材85は収容される。
【0087】
図13、14に示すように、流路形成部材85は、円環状に構成されている。
流路形成部材85は、円環状の板状部85cと、板状部85cの外周端から板状部85cの厚さ方向に沿って後方に延びる外周壁85dと、板状部85cの内周端から板状部85cの厚さ方向に沿って後方に延びる内周壁85eとを有する。板状部85cは、第1実施形態と同様に、湯水供給孔86と、散水用流路88となる凹部87とを有する。
【0088】
図13~16に示すように、流路形成部材85は、板状部85cの周方向において、湯水供給孔86の略中央に重なる位置に切欠85fを有する。切欠85fは、板状部85cの径方向に沿って、流路形成部材85の前端部、すなわち板状部85cの前端部から後方に向かって延びており、外周壁85dと内周壁85eに跨って形成されている。
【0089】
第2実施形態では、シャワーフェイス70に流路形成部材85を組み付けた際に、シャワーフェイス70の周壁77と内周筒部76の間に流路形成部材85が収容される。また、シャワーフェイス70の区画壁79が、流路形成部材85の切欠85fに挿入された状態になる。
【0090】
図15、16に示すように、シャワーフェイス70の区画壁79が、流路形成部材85の切欠85fに挿入されることによって、散水用流路88の主流路88aが区画壁79によって区画される。具体的には、主流路88aは、シャワーフェイス70の周方向に沿って区画壁79よりも一方側の第1主流路88a1と、区画壁79よりも他方側の第2主流路88a2に区画される。
【0091】
図16の破線の矢印で示すように、湯水供給孔86から第1主流路88a1に流入した湯水は、第1主流路88a1に連続する絞り流路88bへと流通する。また、湯水供給孔86から第2主流路88a2に流入した湯水は、第2主流路88a2に連続する絞り流路88bへと流通する。区画壁79によって主流路88aが第1主流路88a1と第2主流路88a2に区画されていることによって、第1主流路88a1から各絞り流路88bへ流通する湯水のばらつきを小さくすることができる。言い換えれば、区画壁79で主流路88aを区画することによって、第1主流路88a1から絞り流路88bに流通する湯水の流量と、第2主流路88a2から絞り流路88bに流通する湯水の流量を略等しくすることができる。そのため、シャワーフェイス70全体として、複数のミスト散水孔74のそれぞれから噴出される湯水の流量をより一定にすることができる。
【0092】
また、シャワーフェイス70に流路形成部材85を組み付けた際に、シャワーフェイス70の区画壁79が流路形成部材85の切欠85fに挿入されることによって、シャワーフェイス70に対する流路形成部材85の回転が規制される。
【0093】
<作用及び効果>
第2実施形態の効果について説明する。
(2-1)第2実施形態のシャワーヘッド1は、シャワーフェイス70に流路形成部材85を組み付けた際に、シャワーフェイス70の周壁77と内周筒部76の間に流路形成部材85が収容される。また、シャワーフェイス70の区画壁79が、流路形成部材85の切欠85fに挿入された状態になる。
【0094】
区画壁79で主流路88aを区画することによって、第1主流路88a1から絞り流路88bに流通する湯水の流量と、第2主流路88a2から絞り流路88bに流通する湯水の流量を略等しくすることができる。したがって、シャワーフェイス70全体として、複数のミスト散水孔74のそれぞれから噴出される湯水の流量をより一定にすることができる。また、シャワーフェイス70に対する流路形成部材85の回転をより確実に規制することができる。
【0095】
<変更例>
第1、第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。第1、第2実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0096】
・第1、第2実施形態において、散水用流路88は、流路形成部材85の凹部87と、シャワーフェイス70の平坦部71bとによって構成されていたが、この態様に限定されない。散水用流路88は、シャワーフェイス70の凹部と、流路形成部材85の平坦部とによって構成されていてもよい。すなわち、シャワーフェイス70と流路形成部材85とにおいて、凹部と平坦部の関係が逆になっていてもよい。
【0097】
・散水用流路88において、主流路88aの最大流路幅W3は、絞り流路88bの最小流路幅W4の2倍未満であってもよい。
・散水用流路88の絞り流路88bにおける絞り部88b1は、主流路88aの下流側の端部から旋回流路88cに向かうに連れて、流路幅の減少率が小さくなる態様に限定されない。
【0098】
図17に示すように、例えば、絞り部88b1が直線状に延びており、主流路88aの下流側の端部から旋回流路88cに向かうに連れて、流路幅の減少率が一定であってもよい。また、絞り部88b1は、主流路88aの下流側の端部から旋回流路88cに向かうに連れて、流路幅の減少率が大きくなるように構成されていてもよい。
【0099】
・散水用流路88の絞り流路88bにおいて、平行部88b2は省略されていてもよい。すなわち、散水用流路88の絞り流路88bの全体が、絞り部88b1で構成されていてもよい。
【0100】
・散水用流路88の絞り流路88bにおいて、絞り部88b1は、単一のR形状を有した態様に限定されない。絞り部88b1は、異なるR形状を有する箇所が組み合わされていてもよい。
【0101】
・流路形成部材85において、湯水供給孔86の断面積S1は、旋回流路88cの断面積S2の2倍未満であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…シャワーヘッド、70…シャワーフェイス、85…流路形成部材、88…散水用流路、88a…主流路、88b…絞り流路、88b1…絞り部、88c…旋回流路。
図1
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図5
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