(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128676
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ハイブリッド型ADC
(51)【国際特許分類】
H03M 3/04 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
H03M3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037799
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】竹鼻 宏晃
【テーマコード(参考)】
5J064
【Fターム(参考)】
5J064BA03
5J064BA06
5J064BB07
5J064BB14
5J064BC06
5J064BC07
5J064BC08
5J064BC10
5J064BC16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】量子化の誤判定の影響を抑制可能で線形特性を改善したハイブリッド型ADCを提供する。
【解決手段】ハイブリッド型ADC100において、入力端子101に接続される第1スイッチ110Aと、第1スイッチの出力側に接続される遅延積分器130と、遅延積分器の出力側に接続される量子化器150と、量子化器の出力をアナログ変換するDAC160と、第1スイッチと遅延積分器の間に設けられ、第1スイッチに入力されるアナログ信号UとDACの出力の符号を反転した反転出力とを加算する第1加算器120と、を含み、第1ステップでは、第1スイッチをオンにして量子化器が2レベルで量子化を行い、第2ステップでは、第1スイッチをオフにして第1ステップにおける遅延積分器の出力に基づいて量子化器が3レベルで量子化を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号が入力される入力端子に接続される第1スイッチと、
前記第1スイッチの出力側に接続される遅延積分器と、
前記遅延積分器の出力側に接続される量子化器と、
前記量子化器の出力をアナログ変換するデジタルアナログ変換器と、
前記第1スイッチと前記遅延積分器の間に設けられ、前記第1スイッチに入力される前記アナログ信号と、前記デジタルアナログ変換器の出力の符号を反転した反転出力とを加算する第1加算器と
を含み、
第1ステップでは、前記第1スイッチをオンにして、前記量子化器が2レベルで量子化を行うとともに、前記デジタルアナログ変換器が2レベルでアナログ変換を行い、
第2ステップでは、前記第1スイッチをオフにして、前記第1ステップにおける前記遅延積分器の出力に基づいて、前記量子化器が3レベルで量子化を行うとともに、前記デジタルアナログ変換器が3レベルでアナログ変換を行う、ハイブリッド型ADC。
【請求項2】
前記量子化器の出力側に接続され、前記第1ステップにおける前記量子化器の第1出力に、前記第2ステップにおける前記量子化器の第2出力を加え、前記第1出力及び前記第2出力の合計の最下位ビットの値を切り捨てた合計出力を出力する出力演算部をさらに含む、請求項1に記載のハイブリッド型ADC。
【請求項3】
前記遅延積分器の出力を前記第1加算器に帰還する帰還ループと、
前記帰還ループに直列に挿入される第2スイッチと
をさらに含み、
前記第1ステップでは前記第2スイッチをオフにし、前記第2ステップでは前記第2スイッチをオンにし、
前記第1加算器は、前記第2ステップでは、前記デジタルアナログ変換器の前記反転出力と、前記帰還ループによって帰還される前記遅延積分器の出力とを加算する、請求項1又は2に記載のハイブリッド型ADC。
【請求項4】
前記第1スイッチと前記第1加算器の間から分岐する分岐線路と、
前記遅延積分器の出力側において前記帰還ループが分岐する分岐点と、前記量子化器の入力端子との間に設けられ、前記遅延積分器の出力と、前記分岐線路を介して入力される前記アナログ信号とを加算する第2加算器と
をさらに含む、請求項3に記載のハイブリッド型ADC。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド型ADCに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上位ビットから下位ビットに向かって順に比較演算を繰り返して、アナログ信号をデジタル信号に変換する巡回型A/D(アナログデジタル)変換器であって、各ビットに対応する演算サイクルが上位ビットから下位ビットに向かって順に小さくなるように、入力されるマスタクロックに基づいて演算クロックを発生する演算クロック発生手段と、前記演算クロック発生手段によって発生された演算クロックを用いて、上位ビットから下位ビットに向かって順に比較演算を繰り返すA/D変換手段とを備える、巡回型A/D変換器がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、デルタシグマ型ADC(Analog to Digital Converter)をOSR(Over Sampling Rate)毎にリセットするインクリメンタルADC(IADC)と、IADCの残差を入力とするサイクリック方式ADCのハイブリッド構成ADCにおいて、量子化器及びDACを3レベルにすると、熱雑音等による量子化の誤判定が生じる場合に補正が可能になる。
【0005】
しかしながら、量子化器及びDACが3レベルの場合、DACの非線形性が問題となる。
【0006】
そこで、量子化の誤判定の影響を抑制可能で線形特性を改善したハイブリッド型ADCを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態のハイブリッド型ADCは、アナログ信号が入力される入力端子に接続される第1スイッチと、前記第1スイッチの出力側に接続される遅延積分器と、前記遅延積分器の出力側に接続される量子化器と、前記量子化器の出力をアナログ変換するデジタルアナログ変換器と、前記第1スイッチと前記遅延積分器の間に設けられ、前記第1スイッチに入力される前記アナログ信号と、前記デジタルアナログ変換器の出力の符号を反転した反転出力とを加算する第1加算器とを含み、第1ステップでは、前記第1スイッチをオンにして、前記量子化器が2レベルで量子化を行うとともに、前記デジタルアナログ変換器が2レベルでアナログ変換を行い、前記第2ステップでは、前記第1スイッチをオフにして、前記第1ステップにおける前記遅延積分器の出力に基づいて、前記量子化器が3レベルで量子化を行うとともに、前記デジタルアナログ変換器が3レベルでアナログ変換を行う。
【発明の効果】
【0008】
量子化の誤判定の影響を抑制可能で線形特性を改善したハイブリッド型ADCを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1のハイブリッド型ADC100の構成の一例を示す図である。
【
図2A】第1ステップでの回路構成の一例を示す図である。
【
図2B】第2ステップでの回路構成の一例を示す図である。
【
図3A】第1ステップにおける積分部180Aの出力D1と、第2ステップにおける演算部180Cの出力Dとを示す図である。
【
図3B】一例としてハイブリッド型ADC100の16ビットの合計出力を2進数で示す図である。
【
図4】実施形態2のサイクリックADC200を示す図である。
【
図5】サイクリックADC200のサイクル1~Nにおけるデジタルコードと演算の重みの一例を示す図である。
【
図6A】一般的なサイクリックADCが正しい変換を行う場合の動作の一例を示す図である。
【
図6B】一般的なサイクリックADCが量子化で間違う場合の動作の一例を示す図である。
【
図7】サイクリックADC200が量子化の間違いを補正する動作の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のハイブリッド型ADCを適用した実施形態について説明する。
【0011】
<実施形態1>
図1は、実施形態1のハイブリッド型ADC100の構成の一例を示す図である。ハイブリッド型ADC100は、一例として、電池残量計やセンサ等の出力をデジタル変換するADCとして用いることができる。
【0012】
ハイブリッド型ADC100は、入力端子101、出力端子102、スイッチ110A、スイッチ110B、線路115A、線路115B、加算器120、遅延積分器130、加算器140、量子化器150、DAC(Digital to Analog Converter)160、DEMUX(デマルチプレクサ)170、積分部180A、シフト演算部180B、演算部180C、及び制御部190を含む。
【0013】
スイッチ110Aは、第1スイッチの一例である。スイッチ110Bは、第2スイッチの一例である。線路115Aは、分岐線路の一例である。線路115Bは、帰還ループの一例である。加算器120は、第1加算器の一例である。加算器140は、第2加算器の一例である。DAC160は、デジタルアナログ変換器の一例である。積分部180A、シフト演算部180B、及び演算部180Cは、出力演算部の一例である。
【0014】
入力端子101は、アナログ信号U(V/Vref)が入力される入力端子である。入力端子101の出力側には、スイッチ110Aが接続されている。一例として、ハイブリッド型ADC100が電池残量計やセンサ等に用いられる場合には、電池残量や、センサで検出された検出量を表すセンサ信号等が入力端子101に入力される。
【0015】
出力端子102は、演算部180Cの出力側に接続される。出力端子102は、入力端子101に入力されるアナログ信号U(V/Vref)をデジタル変換したデジタル信号(合計出力D)を出力する。
【0016】
スイッチ110Aは、入力端子101と加算器120との間に設けられる。スイッチ110Aは、制御部190によって開閉制御される。スイッチ110Aが開放した状態がオフの状態であり、スイッチ110Aが閉成した状態がオンの状態である。スイッチ110Aは、第1ステップではオンにされ、第2ステップでは、オフにされる。
【0017】
スイッチ110Bは、線路115Bに直列挿入される。スイッチ110Bは、制御部190によって開閉制御される。スイッチ110Bが開放した状態がオフの状態であり、スイッチ110Bが閉成した状態がオンの状態である。スイッチ110Bは、第1ステップではオフにされ、第2ステップでは、オンにされる。
【0018】
線路115Aは、スイッチ110Aの出力側と、加算器140の2つの入力端子のうちの一方とを接続する線路であり、スイッチ110Aに入力されるアナログ信号U(V/Vref)を加算器140に入力する。
【0019】
線路115Bは、遅延積分器130の出力側と、加算器120の3つの入力端子のうちの一方の+端子とを接続する帰還ループである。線路115Bにはスイッチ110Bが直列に挿入される。
【0020】
線路115Cは、遅延積分器130の出力側と、加算器120の3つの入力端子のうちの-端子とを接続する帰還ループである。線路115CにはDAC160が直列に挿入される。
【0021】
加算器120は、3つの入力端子と1つの出力端子とを有する。3つの入力端子のうちの2つは+端子であり、残りの1つは-端子である。+端子は、入力の符号を反転せずにそのまま入力し、-端子は入力の符号を反転させて入力する。
【0022】
加算器120は、3つの入力端子のうちの2つの+端子には、スイッチ110Aと線路115Bとが接続される。-端子には線路115Cを介してDAC160の出力端子が接続される。加算器120は、第1ステップでスイッチ110Aがオンでスイッチ110Bがオフのときには、スイッチ110Aに入力されるアナログ信号Uと、DAC160の出力の符号を反転させた反転出力とを加算する。すなわち、加算器120は、第1ステップでは、スイッチ110Aに入力されるアナログ信号Uから、DAC160の出力を減算する。また、加算器120は、第2ステップでスイッチ110Aがオフでスイッチ110Bがオンのときには、遅延積分器130の出力と、DAC160の出力の符号を反転させた反転出力とを加算する。すなわち、加算器120は、第2ステップでは、遅延積分器130の出力から、DAC160の出力を減算する。
【0023】
遅延積分器130は、加算器120と加算器140との間に設けられている。遅延積分器130は、加算器131と保持部132とを有する。保持部132は、1サイクル前の加算器131の出力を保持する。保持部132の出力端子は、遅延積分器130内の帰還ループによって加算器131の一方の入力端子に接続されるとともに、加算器140の他方の入力端子に接続されている。加算器131は、他方の入力端子が加算器120の出力端子に接続され、出力端子が保持部132の入力端子に接続されている。加算器131は、保持部132の出力と、加算器131の出力とを加算して保持部132に出力する。保持部132は、第1ステップ及び第2ステップにおける各サイクルの終了時に保持する値がリセットされ、各サイクルの終了時における加算器131の出力を保持する。このため、次のサイクルでは、保持部132は、1サイクル前の加算器131の出力を保持することになる。
【0024】
加算器140は、一方の入力端子がスイッチ110Aの出力側に接続され、他方の入力端子が遅延積分器130の保持部132の出力端子に接続され、出力端子が量子化器150の入力端子に接続されている。
【0025】
量子化器150は、入力端子が加算器140の出力端子に接続され、出力端子がDAC160の入力端子と、DEMUX170の入力端子とに接続されている。量子化器150は、加算器140から入力されるアナログ信号を量子化してデジタルコードを出力する。量子化器150は、2レベル又は3レベルでの量子化を行うことができる。この切り替えは、制御部190によって行われる。量子化器150は、第1ステップでは2レベルで量子化を行い、第2ステップでは、3レベルで量子化を行う。2レベルは、1と-1である。3レベルは、1、0、及び、-1である。
【0026】
DAC160は、量子化器150の出力側と加算器120の-端子とを接続する帰還ループである線路115Cに直列に挿入されている。DAC160は、量子化器150の出力(デジタルコード)をアナログ変換して出力する。DAC160は、2レベル又は3レベルでアナログ変換を行うことができる。この切り替えは、制御部190によって行われる。DAC160は、第1ステップでは2レベルでアナログ変換を行い、第2ステップでは、3レベルでアナログ変換を行う。2レベルは、+Vref(V)と-Vref(V)である。3レベルは、+Vref(V)、0(V)、及び、-Vref(V)である。
【0027】
DEMUX170は、量子化器150の出力端子に接続される入力端子と、積分部180Aとシフト演算部180Bとに接続される2つの出力端子とを有し、入力端子と、2つの出力端子のうちの一方との間を接続する。この切り替えは、制御部190によって行われる。DEMUX170は、第1ステップでは入力端子を積分部180Aに接続し、第2ステップでは、入力端子をシフト演算部180Bに接続する。
【0028】
積分部180Aは、第1ステップにおいて、DEMUX170を介して入力される量子化器150の出力(デジタルコード)を積分し、演算部180Cに出力する。
【0029】
シフト演算部180Bは、第2ステップにおいて、DEMUX170を介して入力される量子化器150の出力(デジタルコード)をシフト演算した出力(第2出力)を演算部180Cに出力する。
【0030】
演算部180Cは、第1ステップにおける積分部180Aの出力(第1出力)に、第2ステップにおけるシフト演算部180Bの出力(第2出力)を加え、第1出力及び第2出力の合計の最下位ビットの値を切り捨てた合計出力Dを出力する。
【0031】
制御部190は、デジタル回路(ASIC)で構成され、スイッチ110及び110Bのオン及びオフの切り替え、遅延積分器130の保持部132のリセット(reset)、量子化器150及びDAC160のレベル数の切り替え、及び、DEMUX170の切り替え等を行う。なお、制御部190は、マイクロコントローラ(MCU)で構成されてもよい。
【0032】
<第1ステップ及び第2ステップでの回路構成>
図2Aは、第1ステップでの回路構成の一例を示す図である。
図2Bは、第2ステップでの回路構成の一例を示す図である。
図2A及び
図2Bでは、DEMUX170、積分部180A、シフト演算部180B、演算部180C、及び制御部190を省略する。
【0033】
図2Aに示すように、第1ステップでは、スイッチ110Aがオンにされ、スイッチ110Bがオフにされ、量子化器150及びDAC160は2レベルに設定される。このため、ハイブリッド型ADC100は、第1ステップでは、入力端子101に入力されるアナログ信号U(V/Vref)と、遅延積分器130の出力(保持部132の出力)とを加算器140で加算し、量子化器150において2レベルで量子化し、DAC160で加算器120に帰還する。このようなサイクルを繰り返し行うことで、第1ステップでは、ハイブリッド型ADC100は、デルタシグマ型ADCとして動作する。第1ステップでの量子化器150の各サイクルでの出力は、積分部180Aで積分される。
【0034】
第1ステップにおいて繰り返し動作を行うを行うサイクル数をKとする。各サイクルは、ハイブリッド型ADC100のOSR(Over Sampling Rate)毎に行われる。この場合に、量子化器150が出力するデジタルコードは、Q1[1]、・・・、Q1[K]までのK個が得られる。このため、積分部180Aの出力D1は、次式(1)で表される。K=2Mであり、第1ステップではMビットの出力D1が得られる。
【0035】
【0036】
また、
図2Bに示すように、第2ステップでは、スイッチ110がオフにされ、スイッチ110Bがオンにされ、量子化器150及びDAC160は3レベルに設定される。このため、ハイブリッド型ADC100は、第2ステップでは、第1ステップのKサイクル目に遅延積分器130の保持部132に保持された値Xを量子化器150において3レベルで量子化し、量子化器150から出力されるデジタルコードをDAC160において3レベルでアナログ変換する。このようなサイクルをNサイクル繰り返すことで、ハイブリッド型ADC100は、サイクリックADCとして動作する。
【0037】
第2ステップにおいてサイクリック動作をNサイクル行うと、量子化器150が出力するデジタルコードは、Q2[1]、・・・、Q2[N]までのN個が得られる。このため、シフト演算部180Bの出力D2は、次式(2)で表される。サイクリック動作をNサイクル行うことで、N+1ビットの出力D2が得られる。
【0038】
【0039】
この結果、演算部180Cが出力する合計出力Dは、次式(3)で表される。
【0040】
【0041】
<ハイブリッド型ADC100の動作>
図3Aは、第1ステップにおける積分部180Aの出力D1と、第2ステップにおける演算部180Cの出力Dとを示す図である。
図3Aの上側に第1ステップにおける積分部180Aの出力D1を十進数で示し、
図3Aの下側に第2ステップにおける演算部180Cの合計出力Dを十進数で示す。なお、
図3Aの上側及び下側における横軸は、入力端子101に入力されるアナログ信号U(V/Vref)である。
【0042】
図3Aの上側に示すように、第1ステップでは、一例として、サイクル数が4の場合に、出力D1の値は、アナログ信号U(V/Vref)が-1~0.75で-4、アナログ信号U(V/Vref)が-0.75~-0.25で-2、アナログ信号U(V/Vref)が-0.25~0.25で0、アナログ信号U(V/Vref)が0.25~0.75で2、アナログ信号U(V/Vref)が0.75~1で4という離散的な値を取る。第1ステップでは、量子化器150及びDAC160が2レベルで動作する。
【0043】
また、
図3Aの下側に示すように、第2ステップでは、サイクル数が2の場合に、合計出力Dは、アナログ信号U(V/Vref)が-1~1まで変化すると、-16~16までの値を取り、分解能が上がるが、-12、-4、4、及び12が抜けている。すなわち、アナログ信号U(V/Vref)が-0.75、-0.25、0.25、及び0.75において合計出力Dにミスコードが生じている。ミスコードは、出力D1の値が切り替わるアナログ信号U(V/Vref)である-0.75、-0.25、0.25、及び0.75において生じている。ミスコードは、熱雑音による量子化の誤判定によって生じる。
【0044】
ハイブリッド型ADC100は、このようなミスコードの影響を次のようにして抑制する。
図3Bは、一例としてハイブリッド型ADC100の16ビットの合計出力を2進数で示す図である。一例として、第1ステップで10ビット(M=10)の出力D1が得られ、第2ステップで7ビット(N+1=7、Nは6)の出力が得られることとする。
【0045】
図3Bに示す最上位ビットの15を含む15~6の10個の値が第1ステップで得られる10ビットの出力D1であり、5~0と切捨ビットの7個の値が第2ステップで得られる7ビットの出力D2である。
【0046】
また、
図3Bには、ハイブリッド型ADC100の6~0の7ビットの値が0111110になる2種類のアナログ信号Uを入力した場合の2つの合計出力(第3組)を示す。2種類のアナログ信号Uの差は1LSBに相当する差である。また、
図3Bには、ハイブリッド型ADC100の6~0の7ビットの値が0111101になる2種類のアナログ信号Uを入力した場合の2つの合計出力(第4組)を示す。2種類のアナログ信号Uの差は1LSBに相当する差である。
【0047】
第1組~第4組のそれぞれにおいて、2つの合計出力Dの最下位ビット(切捨ビット)は1と0で互いに異なるが、15~0の16ビットの値は一致している。このため、仮にミスコードが発生しても、ハイブリッド型ADC100は、第2ステップにおいて、第2出力のビット数よりも1つ多いビット数の出力をシフト演算部180Bで演算し、演算部180Cが第1ステップの第1出力と第2ステップの第2出力との合計の最下位ビットの値を切り捨てることによって得る出力を合計出力として出力する。このようにすることで、ミスコードの影響を抑制することができる。
【0048】
このように、第1ステップの第1出力と第2ステップの第2出力との合計の最下位ビット(切捨ビット)を除くことで、ミスコードが発生しても、ミスコードの影響を抑制することができる。
【0049】
<効果>
ハイブリッド型ADC100は、アナログ信号が入力される入力端子に接続されるスイッチ110A(第1スイッチ)と、スイッチ110A(第1スイッチ)の出力側に接続される遅延積分器130と、遅延積分器130の出力側に接続される量子化器150と、量子化器150の出力をアナログ変換するDAC160と、スイッチ110A(第1スイッチ)と遅延積分器130の間に設けられ、スイッチ110A(第1スイッチ)に入力されるアナログ信号と、DAC160の出力の符号を反転した反転出力とを加算する加算器120(第1加算器)とを含み、第1ステップでは、スイッチ110A(第1スイッチ)をオンにして、量子化器150が2レベルで量子化を行うとともに、DAC160が2レベルでアナログ変換を行い、第2ステップでは、スイッチ110A(第1スイッチ)をオフにして、第1ステップにおける遅延積分器130の出力に基づいて、量子化器150が3レベルで量子化を行うとともに、DAC160が3レベルでアナログ変換を行う。第1ステップの量子化を2レベルで行うことで線形性を確保し、第2ステップを3レベルで行うことで、熱雑音による量子化の誤判定の影響を抑制できる。
【0050】
したがって、量子化の誤判定の影響を抑制可能で線形特性を改善したハイブリッド型ADC100を提供することができる。
【0051】
また、量子化器150の出力側に接続され、第1ステップにおける量子化器150の第1出力に、第2ステップにおける量子化器150の第2出力を加え、第1出力及び第2出力の合計の最下位ビットの値を切り捨てた合計出力を出力する出力演算部をさらに含んでもよい。演算部180Cが第1出力及び第2出力の合計の最下位ビットの値を切り捨てた合計出力を出力することで、より確実に量子化の誤判定の影響を抑制可能で線形特性を改善したハイブリッド型ADC100を提供することができる。
【0052】
また、遅延積分器130の出力を加算器120(第1加算器)に帰還する線路115B(線路115B(帰還ループ))と、線路115B(帰還ループ)に直列に挿入されるスイッチ110B(第2スイッチ)とをさらに含み、第1ステップではスイッチ110B(第2スイッチ)をオフにし、第2ステップではスイッチ110B(第2スイッチ)をオンにし、加算器120(第1加算器)は、第2ステップでは、DAC160の反転出力と、線路115B(帰還ループ)によって帰還される遅延積分器130の出力とを加算してもよい。第2ステップにおいて、遅延積分器130の出力からDAC160の出力を減算した値を遅延積分器130に入力することができる。第1ステップのIADCと第2ステップのサイクリック方式ADCとで遅延積分器130及び加算器140等の回路ブロックを共有でき、回路面積を削減できる。
【0053】
また、スイッチ110A(第1スイッチ)と加算器120(第1加算器)の間から分岐する線路115A(分岐線路)と、遅延積分器130の出力側において線路115B(帰還ループ)が分岐する分岐点と、量子化器150の入力端子との間に設けられ、遅延積分器130の出力と、線路115A(分岐線路)を介して入力されるアナログ信号とを加算する加算器140(第2加算器)とをさらに含んでもよい。第1ステップにおいては、アナログ入力Uに1サイクル前の量子化誤差を加算する効果(デルタシグマ型ADCの機能)を持ち、第2ステップにおいては、スイッチ110A(第1スイッチ)がオフにされるため、線路115Aは0Vの扱いとなり加算されず、遅延積分器130の出力がそのまま量子化器150に入力される。このため、線路115A(分岐線路)及び加算器140(第2加算器)を含むことで、第1ステップでデルタシグマ型ADCを構成することができる。
【0054】
<実施形態2>
図4は、実施形態2のサイクリックADC200を示す図である。サイクリックADC200は、入力端子201、出力端子202、MUX(マルチプレクサ)210、量子化器220、DAC230、アンプ240、及び加算器250を含む。
【0055】
入力端子201は、MUX210の一方の入力端子に接続されている。入力端子201は、アナログ信号が入力される入力端子である。一例として、サイクリックADC200が電池残量計やセンサ等に用いられる場合には、電池残量や、センサで検出された検出量を表すセンサ信号等が入力端子201に入力される。
【0056】
出力端子202は、量子化器220の出力部に接続されている。出力端子202には、実施形態1のハイブリッド型ADC100のシフト演算部180Bと同様のシフト演算部が接続される。出力端子202は、入力端子201に入力されるアナログ信号をデジタル変換したデジタル信号を出力する。
【0057】
MUX210は、一方の入力端子に接続される入力端子201と、他方の入力端子に接続される加算器250の出力端子とのいずれか一方と、出力端子とを接続する。MUX210は、1サイクル目で出力端子を入力端子201に接続し、2サイクル目以降では出力端子を加算器250の出力端子に接続する。MUX210の出力端子は、量子化器220の入力端子と、アンプ240の入力端子とに接続されている。
【0058】
量子化器220は、MUX210の出力を量子化してデジタルコードとして出力する。量子化器220は、2レベルで量子化を行う。量子化器220の出力は、1又は0である。量子化器220の出力端子は、出力端子202と、DAC230の入力端子とに接続されている。
【0059】
DAC230は、量子化器220の出力側から加算器250に帰還する帰還ループに直列に挿入されている。DAC230は、量子化器220の出力(デジタルコード)をアナログ変換して加算器250の-端子に出力する。DAC230は、2レベル(+Vref、0)でアナログ変換を行う。
【0060】
アンプ240は、MUX210の出力端子と加算器250の+端子との間に接続されている。一例として、アンプ240のゲインは2倍(×2)である。アンプ240は、MUX210の出力を2倍して加算器250の+端子に出力する。
【0061】
加算器250は、アンプ240の出力端子に接続される+端子と、DAC230の出力端子に接続される-端子と、MUX210の他方の入力端子に接続される出力端子とを有する。加算器250は、アンプ240の出力からDAC230の出力を減算した信号をMUX210の他方の入力端子に出力する。
【0062】
サイクリックADC200は、1サイクル目で入力端子201に入力されるアナログ信号を量子化器220で量子化し、2サイクル目以降では加算器250の出力を量子化器220で量子化するサイクリック動作を行う。
【0063】
図5は、サイクリックADC200のサイクル1~Nにおけるデジタルコードと演算の重みの一例を示す図である。演算の重みは、サイクルを繰り返す度に加算器250の出力がアンプ240で2倍されることによる重みであり、最下位ビットに対する重みを表す。
【0064】
図5に示すように、サイクリックADC200は、Nビットのデジタルコードを得るために、N+1サイクルのサイクリック動作を行う。このため、デジタルコードは、1サイクル目の1(MSB)から、Nサイクル目の1(LSB)の次のN+1サイクル目の1まで存在する。また、演算の重みは、1サイクル目では
2N-1であり、以下、1サイクル毎にべき乗の数が1つずつ減って、Nサイクル目では2
0である。Nサイクル目の1(LSB)の次のN+1サイクル目においても、Nサイクル目と同一の2
0に便宜的に設定する。
【0065】
<一般的なサイクリックADCの動作>
図6Aは、一般的なサイクリックADCが正しい変換を行う場合の動作の一例を示す図である。ここでは、0V~4Vの範囲で3ビットの出力を得る場合について説明する。
図6Aにおいて、左から右にかけて3つのビットの変換を示す。一番左がMSBを得るための変換(量子化)で、一番右がLSBを得るための変換(量子化)である。
【0066】
アナログ信号が2.1Vである場合に、MSBを求めるための量子化において、サイクリックADCは、0V~4Vの範囲の中央値である2Vを基準値として量子化を行い、アナログ信号の2.1Vが基準値の2Vよりも大きいため、デジタルコードの1を出力する。
【0067】
次に、デジタルコードの1を出力したサイクリックADCは、0V~4Vの範囲の上半分の2V~4Vの中央値である3Vを基準値として量子化を行い、アナログ信号の2.1Vが基準値の3Vよりも小さいため、デジタルコードの0を出力する。
【0068】
次に、デジタルコードの0を出力したサイクリックADCは、LSBを求めるための量子化において、2V~4Vの範囲の下半分の2V~3Vの中央値である2.5Vを基準値として量子化を行い、アナログ信号の2.1Vが基準値の2.5Vよりも小さいため、デジタルコードの0を出力する。
【0069】
以上のようにして、アナログ信号の2.1Vが入力された場合に、サイクリックADCは、3ビットの出力100bを出力する。なお、上記は変換の全体イメージであり、実際は、量子化器220では加算器250でアナログ信号を入力したアンプ240の出力とDAC230の出力を演算することにより、0V~4Vの範囲に相当するアナログ入力値及び基準電圧2Vに変換して演算動作を行っている。
【0070】
図6Bは、一般的なサイクリックADCが量子化で間違う場合の動作の一例を示す図である。ここでは、0V~4Vの範囲で3ビットの出力を得る場合について説明する。
図6Aと同様に、
図6Bには左から右にかけて3つのビットの変換を示す。一番左がMSBを得るための変換(量子化)で、一番右がLSBを得るための変換(量子化)である。
【0071】
アナログ信号が2.1Vである場合に、MSBを求めるための量子化において、サイクリックADCは、0V~4Vの範囲の中央値である2Vを基準値として量子化を行うが、量子化で間違うことで、デジタルコードの0を出力する。
【0072】
次に、デジタルコードの0を出力したサイクリックADCは、0V~4Vの範囲の下半分の0V~2Vの中央値である1Vを基準値として量子化を行い、アナログ信号の2.1Vが基準値の1Vよりも大きいため、デジタルコードの1を出力する。
【0073】
次に、デジタルコードの1を出力したサイクリックADCは、LSBを求めるための量子化において、0V~2Vの範囲の上半分の1V~2Vの中央値である1.5Vを基準値として量子化を行い、アナログ信号の2.1Vが基準値の1.5Vよりも大きいため、デジタルコードの1を出力する。
【0074】
以上のようにして、アナログ信号の2.1Vが入力された場合に、サイクリックADCは、3ビットの出力011bを出力する。この量子化は間違っている。
【0075】
実施形態2のサイクリックADC200は、次のようにして量子化の間違いを補正する。
図7は、サイクリックADC200が量子化の間違いを補正する動作の一例を説明する図である。
【0076】
ここでは、
図6Bの動作と同様に、サイクリックADC200が最初の量子化で間違える場合について説明する。
【0077】
図7において、アナログ信号が2.1Vである場合に、MSBを求めるための量子化において、サイクリックADCは、0V~4Vの範囲の中央値である2Vを基準値として量子化を行うが、量子化で間違うことで、デジタルコードの0を出力する。
【0078】
次に、デジタルコードの0を出力したサイクリックADCは、0V~4Vの範囲の下半分の0V~2Vの中央値である1Vを基準値として量子化を行い、アナログ信号の2.1Vが基準値の1Vよりも大きいため、デジタルコードの1を出力する。
【0079】
次に、デジタルコードの1を出力したサイクリックADCは、LSBを求めるための量子化において、0V~2Vの範囲の上半分の1V~2Vの中央値である1.5Vを基準値として量子化を行い、アナログ信号の2.1Vが基準値の1.5Vよりも大きいため、デジタルコードの1を出力する。ここまでは、
図6Bと同様である。
【0080】
次に、サイクリックADC200は、冗長ビットを求めるための量子化を行う。冗長ビットを求めるための量子化では、LSBを求めるための量子化と同一の動作をもう一度行う。すなわち、1V~2Vの中央値である1.5Vを基準値として量子化を行い、アナログ信号の2.1Vが基準値の1.5Vよりも大きいため、デジタルコードの1を出力する。
【0081】
そして、サイクリックADC200は、3ビットの出力011bに、冗長ビットである1bを追加した3ビットの出力100bを出力する。このようにして、
図6Aで説明した場合と同様に、正しい結果を得ることができる。
【0082】
なお、サイクリックADC200は、
図6Aに示す動作と同様に正しい量子化を行った場合には、冗長ビットにおいて、2V~3Vの中央値である2.5Vを基準値として量子化を行い、アナログ信号の2.1Vが基準値の2.5Vよりも小さいため、デジタルコードの0を出力する。
【0083】
そして、サイクリックADC200は、3ビットの出力100bに、冗長ビットである0bを追加した3ビットの出力100bを出力する。このため、正しい量子化を行っている場合に冗長ビットを求めて加算しても、正しい結果を得ることができる。
【0084】
以上のように、所望のビット数の出力を求める際に、LSBの次に、LSBと同一条件で冗長ビットを求めて追加することで、量子化の間違いを補正することができる。
【0085】
以上、本発明の例示的な実施形態のハイブリッド型ADCについて説明したが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
100 ハイブリッド型ADC
101 入力端子
102 出力端子
110A スイッチ(第1スイッチの一例)
110B スイッチ(第2スイッチの一例)
115A 線路(分岐線路の一例)
115B 線路(帰還ループの一例)
120 加算器(第1加算器の一例)
130 遅延積分器
131 加算器
132 保持部
140 加算器(第2加算器の一例)
150 量子化器
160 DAC(デジタルアナログ変換器の一例)
170 DEMUX
180A 積分部(出力演算部の一例)
180B シフト演算部(出力演算部の一例)
180C 演算部(出力演算部の一例)
190 制御部
200 サイクリックADC
201 入力端子
202 出力端子
210 MUX
220 量子化器
230 DAC
240 アンプ
250 加算器