(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128683
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】切削インサートのクランプ構造、サポーター及び刃先交換式切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/16 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
B23B27/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037808
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 翔太
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046EE11
3C046EE12
3C046EE14
3C046EE17
(57)【要約】
【課題】切削インサートをコンパクト化してコスト削減を図りつつ、サポーターの摩耗を抑制して、サポーターにより切削インサートを安定して保持できる切削インサートのクランプ構造、サポーター及び刃先交換式切削工具を提供する。
【解決手段】切削インサート2と、切削インサート2を後方、及び、左右方向の両側から保持可能なサポーター3と、を備え、サポーター3は、第1部材31と、第1部材31に組み合わされる第2部材32と、を有し、第1部材31は、切削インサート2に左右方向の片側または両側から対向する第1爪部35を有し、第2部材32は、切削インサート2に左右方向の片側または両側から接触する第2爪部52を有し、第1爪部35及び第2爪部52は、切削インサート2を左右方向から挟持し、第1部材31は、第2部材32よりも硬度が高く、第1爪部35は、少なくともサポーター3の上端部に配置される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプ部材により工具本体のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートのクランプ構造であって、
少なくとも前方端部に切刃が配置される切削インサートと、
前記切削インサートを後方、及び、左右方向の両側から保持可能なサポーターと、を備え、
前記サポーターは、
第1部材と、
前記第1部材に組み合わされる第2部材と、を有し、
前記第1部材は、前記切削インサートに左右方向の片側または両側から対向する第1爪部を有し、
前記第2部材は、前記切削インサートに左右方向の片側または両側から接触する第2爪部を有し、
前記第1爪部及び前記第2爪部は、前記切削インサートを左右方向から挟持し、
前記第1部材は、前記第2部材よりも硬度が高く、
前記第1爪部は、少なくとも前記サポーターの上端部に配置される、
切削インサートのクランプ構造。
【請求項2】
前記第1部材は、ビッカース硬さが900以上である、
請求項1に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項3】
前記第1部材は、超硬合金製である、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項4】
前記第1部材は、
部材本体と、
前記部材本体の表面のうち、少なくとも前記第1爪部に配置される硬質被膜と、を有する、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項5】
前記第2部材は、前記第1部材の下側に配置される、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項6】
前記第2部材は、前記クランプ部材の締結により弾性変形可能とされ、
前記第2爪部は、前記第2部材の弾性変形によって前記切削インサートを左右方向から押圧する、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項7】
前記第1部材は、前記切削インサートに後方から接触する後方支持部を有し、
前記後方支持部は、少なくとも前記サポーターの上端部に配置される、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項8】
前記第1部材は、上下方向に延びる中心軸を中心とする筒部を有し、
前記第2部材は、前記筒部の外周面に沿って湾曲状に延び、
前記第2爪部は、前記第2部材の端部に配置される、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項9】
前記第2部材は、前記クランプ部材の締結により弾性変形可能とされ、
前記筒部の外周面と前記第2部材の端部との間に、前記第2部材の弾性変形を許容する隙間部が設けられる、
請求項8に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項10】
前記第2爪部は、前記第2部材の両端部のうち一端部に配置され、
前記第1部材は、前記中心軸回りの周方向において前記第2部材の他端部と対向する当接部を有し、
前記当接部は、前記クランプ部材の締結により、前記他端部に接触する、
請求項8に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項11】
前記切削インサートは、上下方向において表裏反転対称形状であり、かつ、上下方向に延びるインサート中心軸を中心とする回転対称形状である、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項12】
クランプ部材により工具本体のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートのクランプ構造に備えられ、切削インサートを保持するサポーターであって、
第1部材と、
前記第1部材に組み合わされる第2部材と、を有し、
前記第1部材は、前記切削インサートに左右方向の片側または両側から対向する第1爪部を有し、
前記第2部材は、前記切削インサートに左右方向の片側または両側から接触する第2爪部を有し、
前記第1爪部及び前記第2爪部は、前記切削インサートを左右方向から挟持し、
前記第1部材は、前記第2部材よりも硬度が高く、
前記第1爪部は、少なくとも前記サポーターの上端部に配置される、
サポーター。
【請求項13】
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造と、
前記インサート取付座を有する前記工具本体と、
前記インサート取付座に前記切削インサートのクランプ構造を固定する前記クランプ部材と、を備える、
刃先交換式切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサートのクランプ構造、サポーター及び刃先交換式切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載の刃先交換式切削工具が知られている。この刃先交換式切削工具は、インサート取付座を有する工具本体と、硬質材料からなる切削インサートと、切削インサートを保持するキャリア本体(サポーター)と、切削インサート及びキャリア本体をインサート取付座に固定するクランプ部材と、を備える。特許文献1では、キャリア本体を用いることで高価な切削インサートの外形寸法を小型化でき、コスト削減の効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の刃先交換式切削工具では、サポーターが例えば鋼製等であり、サポーターに被削材の切屑が擦過することで、サポーターが摩耗しやすい。サポーターが摩耗すると、切削インサートを安定して保持できなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、切削インサートをコンパクト化してコスト削減を図りつつ、サポーターの摩耗を抑制して、サポーターにより切削インサートを安定して保持できる切削インサートのクランプ構造、サポーター及び刃先交換式切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0007】
〔本発明の態様1〕
クランプ部材により工具本体のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートのクランプ構造であって、少なくとも前方端部に切刃が配置される切削インサートと、前記切削インサートを後方、及び、左右方向の両側から保持可能なサポーターと、を備え、前記サポーターは、第1部材と、前記第1部材に組み合わされる第2部材と、を有し、前記第1部材は、前記切削インサートに左右方向の片側または両側から対向する第1爪部を有し、前記第2部材は、前記切削インサートに左右方向の片側または両側から接触する第2爪部を有し、前記第1爪部及び前記第2爪部は、前記切削インサートを左右方向から挟持し、前記第1部材は、前記第2部材よりも硬度が高く、前記第1爪部は、少なくとも前記サポーターの上端部に配置される、切削インサートのクランプ構造。
【0008】
本発明の切削インサートのクランプ構造、サポーター及び刃先交換式切削工具では、サポーターが切削インサートを後方、及び、左右方向の両側から保持する。これにより、例えば超硬合金やサーメットなどの高価な硬質材料からなる切削インサートの外形寸法を小さく抑えることができ、工具コストを削減できる。より詳しくは、切刃の損耗等に応じて交換が必要となる切削インサートのコストを削減することができる。
【0009】
また、サポーターは、互いに組み合わされる第1部材及び第2部材を備えている。切削インサートは、第1部材の第1爪部と、第2部材の第2爪部とにより、左右方向から保持される。
【0010】
切削時において、切削インサートの切刃によって生成される切屑は、切削インサートの上面(すくい面)でカールされつつ、サポーターの上端部に擦過する。より詳しくは、切屑は、サポーターの上端部のうち、特に切削インサートを左右方向から押さえる爪部に擦過する。
【0011】
本発明では、切削インサートを左右方向から保持する第1爪部及び第2爪部のうち、硬度の高い第1部材の第1爪部が、サポーターの上端部に位置している。このため、硬質材料からなる第1爪部に対して、切屑が擦過するように工具を配置することができる。
【0012】
被削材の構成材料よりも硬度の高い材料で第1部材を構成することにより、第1爪部に切屑が擦過しても、第1爪部の摩耗を安定して抑制することができる。すなわち、切屑の擦過によるサポーターの摩耗を抑制することができ、サポーターの寿命を延長できる。サポーターによる切削インサートの保持状態を、良好に維持することができる。サポーターを交換する必要が生じないため、工具コストをより削減できる。
【0013】
以上より本発明によれば、切削インサートをコンパクト化してコスト削減を図りつつ、サポーターの摩耗を抑制して、サポーターにより切削インサートを安定して保持することができる。
【0014】
〔本発明の態様2〕
前記第1部材は、ビッカース硬さが900以上である、態様1に記載の切削インサートのクランプ構造。
【0015】
第1部材のビッカース硬さ(HV)が900以上であれば、例えば鋼製等の被削材を切削する場合においても、第1爪部の摩耗をより確実に防止することができる。
【0016】
〔本発明の態様3〕
前記第1部材は、超硬合金製である、態様1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【0017】
この場合、被削材の構成材料の種類に関わらず、第1爪部の摩耗を安定して抑制することができる。
【0018】
〔本発明の態様4〕
前記第1部材は、部材本体と、前記部材本体の表面のうち、少なくとも前記第1爪部に配置される硬質被膜と、を有する、態様1から3のいずれか1つに記載の切削インサートのクランプ構造。
【0019】
この場合、硬質被膜によって第1爪部の耐摩耗性をより高めることができる。切屑の擦過による第1爪部の摩耗を、より確実に抑制できる。
【0020】
〔本発明の態様5〕
前記第2部材は、前記第1部材の下側に配置される、態様1から4のいずれか1つに記載の切削インサートのクランプ構造。
【0021】
上記構成のように、第2部材が第1部材の下側に配置されていると、第2爪部を第1爪部よりも下側に配置することができる。すなわち、第2爪部を、サポーターの下端部などに配置できる。これにより、硬度の低い第2部材の第2爪部に対して、切屑が擦過することが抑えられる。このため、第2爪部の摩耗についても安定して抑制することができる。サポーターによって切削インサートをより安定して保持できる。
【0022】
〔本発明の態様6〕
前記第2部材は、前記クランプ部材の締結により弾性変形可能とされ、前記第2爪部は、前記第2部材の弾性変形によって前記切削インサートを左右方向から押圧する、態様1から5のいずれか1つに記載の切削インサートのクランプ構造。
【0023】
この場合、クランプ部材の締結により第2部材が弾性変形し、これにともない第2爪部が切削インサートを左右方向から押圧して、切削インサートがサポーターに固定される。サポーターが切削インサートを安定して保持することができ、切削時の切削インサートの姿勢が安定する。
【0024】
〔本発明の態様7〕
前記第1部材は、前記切削インサートに後方から接触する後方支持部を有し、前記後方支持部は、少なくとも前記サポーターの上端部に配置される、態様1から6のいずれか1つに記載の切削インサートのクランプ構造。
【0025】
この場合、硬度の高い第1部材の後方支持部が、サポーターの上端部に位置している。このため、切削時に、サポーターの上端部のうち切削インサートの後方に位置する後方支持部に対して切屑が擦過しても、後方支持部の摩耗を抑制することができる。
【0026】
〔本発明の態様8〕
前記第1部材は、上下方向に延びる中心軸を中心とする筒部を有し、前記第2部材は、前記筒部の外周面に沿って湾曲状に延び、前記第2爪部は、前記第2部材の端部に配置される、態様1から7のいずれか1つに記載の切削インサートのクランプ構造。
【0027】
この場合、第1部材の筒部回りに湾曲状に延びる第2部材が、筒部の外周面にガイドされる。第1部材に対する第2部材の組付け姿勢が安定する。このため、第2部材の端部に位置する第2爪部によって、切削インサートを左右方向から安定して保持することができる。
【0028】
〔本発明の態様9〕
前記第2部材は、前記クランプ部材の締結により弾性変形可能とされ、前記筒部の外周面と前記第2部材の端部との間に、前記第2部材の弾性変形を許容する隙間部が設けられる、態様8に記載の切削インサートのクランプ構造。
【0029】
この場合、隙間部が設けられることで、クランプ部材の締結時に第2部材が安定して弾性変形させられる。第2部材の弾性変形により、第2部材の端部に位置する第2爪部が切削インサートを左右方向から押圧して、切削インサートがサポーターに安定して保持される。
【0030】
〔本発明の態様10〕
前記第2爪部は、前記第2部材の両端部のうち一端部に配置され、前記第1部材は、前記中心軸回りの周方向において前記第2部材の他端部と対向する当接部を有し、前記当接部は、前記クランプ部材の締結により、前記他端部に接触する、態様8または9に記載の切削インサートのクランプ構造。
【0031】
この場合、クランプ部材の締結時に、第1部材の当接部と第2部材の他端部とが接触する。これにより、第1部材と第2部材との組付け姿勢(クランプ姿勢)が安定し、第2部材の一端部に設けられる第2爪部によって、切削インサートをより安定して保持できる。
【0032】
〔本発明の態様11〕
前記切削インサートは、上下方向において表裏反転対称形状であり、かつ、上下方向に延びるインサート中心軸を中心とする回転対称形状である、態様1から10のいずれか1つに記載の切削インサートのクランプ構造。
【0033】
この場合、1つの切削インサートに少なくとも4つ以上の複数の切刃を設けることができ、切削インサートの工具寿命を延ばすことができる。
【0034】
〔本発明の態様12〕
クランプ部材により工具本体のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートのクランプ構造に備えられ、切削インサートを保持するサポーターであって、第1部材と、前記第1部材に組み合わされる第2部材と、を有し、前記第1部材は、前記切削インサートに左右方向の片側または両側から対向する第1爪部を有し、前記第2部材は、前記切削インサートに左右方向の片側または両側から接触する第2爪部を有し、前記第1爪部及び前記第2爪部は、前記切削インサートを左右方向から挟持し、前記第1部材は、前記第2部材よりも硬度が高く、前記第1爪部は、少なくとも前記サポーターの上端部に配置される、サポーター。
【0035】
〔本発明の態様13〕
態様1から11のいずれか1つに記載の切削インサートのクランプ構造と、前記インサート取付座を有する前記工具本体と、前記インサート取付座に前記切削インサートのクランプ構造を固定する前記クランプ部材と、を備える、刃先交換式切削工具。
【発明の効果】
【0036】
本発明の前記態様の切削インサートのクランプ構造、サポーター及び刃先交換式切削工具によれば、切削インサートをコンパクト化してコスト削減を図りつつ、サポーターの摩耗を抑制して、サポーターにより切削インサートを安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター及び刃先交換式切削工具の一部を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター及び刃先交換式切削工具の一部を示す上面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター及び刃先交換式切削工具を示す正面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター及び刃先交換式切削工具の一部を示す側面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す上面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す正面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す側面図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す下面図である。
【
図11】
図11は、本実施形態のサポーターの第1部材を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、本実施形態のサポーターの第1部材を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、本実施形態のサポーターの第2部材を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、本実施形態のサポーターの第2部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の一実施形態の切削インサートのクランプ構造10、サポーター3及び刃先交換式切削工具1について、図面を参照して説明する。
本実施形態の刃先交換式切削工具1は、旋削加工(ターニング)に用いられる刃先交換式バイトであり、図示しない旋盤などの工作機械の刃物台等に着脱可能に装着される。本実施形態においては、刃先交換式切削工具1を単に切削工具や工具などと呼ぶ場合がある。
【0039】
図1~
図4に示すように、刃先交換式切削工具1は、切削インサートのクランプ構造10と、インサート取付座5を有する工具本体4と、インサート取付座5に切削インサートのクランプ構造10を固定するクランプ部材6と、を備える。
切削インサートのクランプ構造10は、クランプ部材6により工具本体4のインサート取付座5に着脱可能に取り付けられる。切削インサートのクランプ構造10は、柱状または板状をなす切削インサート2と、切削インサート2を保持する板状のサポーター3と、を備える。すなわち、サポーター3は、切削インサートのクランプ構造10に備えられる。
【0040】
図5~
図10に示すように、本実施形態では切削インサートのクランプ構造10が、全体として、その中心軸C1を中心とする四角形板状をなしており、具体的には菱形板状である。すなわち、切削インサートのクランプ構造10は、全体として多角形板状をなす。
また切削インサート2は、そのインサート中心軸C2を中心とするトリゴン形の略六角形柱状または略六角形板状である。
図7に示す上面視(平面視)で、切削インサート2は、その外周部に、インサート中心軸C2回りに交互に並ぶ3つの鋭角の角部と3つの鈍角の角部とを有する。すなわち、切削インサート2は、多角形柱状または多角形板状をなす。
本実施形態では、上面視において、切削インサートのクランプ構造10の全体的な外形形状(菱形状)と、切削インサート2の外形形状(トリゴン形状)とが、互いに異なっている。
【0041】
サポーター3は、切削インサートのクランプ構造10の全体的な外形形状と略同じ外形形状を有する。すなわち、サポーター3は、全体として略多角形板状をなす。本実施形態ではサポーター3が、中心軸C1を中心とする略四角形板状をなしており、具体的には略菱形板状である。サポーター3は、中心軸C1が延びる方向つまり中心軸C1の軸方向において、互いに反対方向を向く一対の板面(端面)3a,3bを有する。一対の板面3a,3bのうち一方の板面3aは、表面3aであり、他方の板面3bは、裏面3bである。
またサポーター3は、サポーター3の複数(本実施形態では4つ)の角部のうち1つの角部に配置される凹状のポケット33を有する。ポケット33には、切削インサート2が配置される。
【0042】
〔方向の定義〕
本実施形態では、サポーター3の一対の板面3a,3bが向く方向を、上下方向と呼ぶ。各図に示すXYZ直交座標系において、上下方向は、Z軸方向に相当する。上下方向のうち、裏面3bから表面3aへ向かう方向(+Z側)を上側と呼び、表面3aから裏面3bへ向かう方向(-Z側)を下側と呼ぶ。なお上下方向は、切削インサートのクランプ構造10の中心軸C1の軸方向に相当する。このため上下方向は、軸方向と言い換えてもよい。また上下方向は、板状をなすサポーター3の板厚方向でもあることから、板厚方向と言い換えてもよい。
【0043】
上下方向と直交する方向のうち、サポーター3のポケット33及び切削インサート2が配置される一の角部と、中心軸C1とを通る所定方向を、前後方向と呼ぶ。本実施形態において前後方向は、一の角部と、一の角部の対角に位置する他の角部とを通る方向でもある。各図において前後方向は、X軸方向に相当する。前後方向のうち、中心軸C1から一の角部(ポケット33及び切削インサート2)へ向かう方向(-X側)を前方と呼び、一の角部から中心軸C1へ向かう方向(+X側)を後方と呼ぶ。
【0044】
上下方向及び前後方向と直交する方向を、左右方向と呼ぶ。各図において左右方向は、Y軸方向に相当する。左右方向のうち一方側(-Y側)を右側と呼び、他方側(+Y側)を左側と呼ぶ。-Y側は、切削インサートのクランプ構造10を前方から見たときの右側に相当し、+Y側は、切削インサートのクランプ構造10を前方から見たときの左側に相当する。
【0045】
なお本実施形態において、上側、下側、前方、後方、左側及び右側とは、各構成の相対的な位置関係をわかりやすく説明するための便宜的な名称である。このため、切削工具の使用時などにおける実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係以外の配置関係等であってもよい。
【0046】
また、切削インサートのクランプ構造10の中心軸C1と直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸C1に近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸C1から離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
また、切削インサートのクランプ構造10の中心軸C1回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。本実施形態では、
図7に示すように切削インサートのクランプ構造10を上側から見て(表面3aを正面に見て)、中心軸C1を中心とする反時計回りの回転方向が周方向一方側(θ1側)に相当し、中心軸C1を中心とする時計回りの回転方向が周方向他方側(θ2側)に相当する。
【0047】
なお中心軸C1は、切削インサートのクランプ構造10の中心軸であり、かつサポーター3の中心軸でもあることから、サポーター中心軸C1と言い換えてもよい。また、軸方向は、サポーター軸方向と言い換えてもよい。また、径方向は、サポーター径方向と言い換えてもよい。また、周方向は、サポーター周方向と言い換えてもよい。
【0048】
また、切削インサート2のインサート中心軸C2が延びる方向を、インサート軸方向と呼ぶ。切削インサート2のインサート中心軸C2は、切削インサートのクランプ構造10の中心軸C1よりも前方に位置し、中心軸C1と平行に延びる。すなわち、インサート軸方向は、軸方向(サポーター軸方向)及び上下方向に相当する。
【0049】
インサート中心軸C2と直交する方向をインサート径方向と呼ぶ。インサート径方向のうち、インサート中心軸C2に近づく方向をインサート径方向の内側と呼び、インサート中心軸C2から離れる方向をインサート径方向の外側と呼ぶ。
インサート中心軸C2回りに周回する方向をインサート周方向と呼ぶ。
【0050】
〔工具本体〕
工具本体4は、例えば鋼製等の金属製である。
図1~
図4に示すように、工具本体4は、略四角柱状であり、図示しない工具中心軸に沿って延びる。インサート取付座5は、工具本体4の両端部(第1端部4a及び図示しない第2端部)のうち、第1端部(先端部)4aに配置される。工具本体4は、互いに反対方向を向く頂面41及び底面42、互いに反対方向を向く一対の横面43,44、ならびに、第1端部4aの端面に位置する先端面45を有する。
【0051】
工具本体4の外面のうち、頂面41は、上側を向く。頂面41のうち工具本体4の第1端部4aつまり先端部に位置する部分は、第1端部4a以外の部分よりも、上側に突出する。また工具本体4は、傾斜面41aを有する。傾斜面41aは、頂面41のうち第1端部4aに位置する部分に配置される。傾斜面41aは、後方に向かうに従い下側に位置する傾斜した平面状である。
工具本体4の外面のうち、底面42は、下側を向く。
【0052】
工具本体4の外面のうち、一方の横面43は、右側を向く。
工具本体4の外面のうち、他方の横面44は、左側を向く。他方の横面44のうち工具本体4の第1端部4aに位置する部分は、第1端部4a以外の部分よりも、左側に突出する。
【0053】
工具本体4は、切削インサート2及びサポーター3が着脱可能に装着されるインサート取付座5と、クランプ部材6の後述するクランプネジ6bが螺着される図示しないネジ穴と、を有する。ネジ穴は、頂面41のうちインサート取付座5と傾斜面41aとの間に位置する部分に開口し、略上下方向に沿って延びる。
【0054】
インサート取付座5は、板状のシート部材51を有する。シート部材51は、インサート取付座5の一部(底面)を構成する。シート部材51は、シート部材51を上下方向に貫通するシート孔(図示省略)を有する。シート部材51は、シート孔に挿通される図示しないシート固定ネジにより、第1端部4aに固定される。本実施形態ではシート部材51が、四角形板状であり、具体的には菱形板状である。シート部材51は、例えば超硬合金製等である。
【0055】
インサート取付座5は、工具本体4の第1端部4aつまり先端部において、頂面41、他方の横面44及び先端面45に開口する。インサート取付座5は、工具本体4の頂面41、他方の横面44及び先端面45から窪む凹状である。インサート取付座5は、切削インサートのクランプ構造10、すなわち切削インサート2及びサポーター3を受け入れ可能な凹所である。本実施形態ではインサート取付座5が、略四角形凹状であり、具体的には略菱形凹状である。
【0056】
インサート取付座5は、切削インサート2の裏面22及びサポーター3の裏面3bと接触する底壁5aと、サポーター3の外周面と接触する側壁5bと、を有する。
底壁5aは、シート部材51の一対の板面のうち、上側を向く一方の板面(上面)により構成される。側壁5bは、複数設けられる。本実施形態ではインサート取付座5が、一対の側壁5bを有する。本実施形態では、上下方向から見て、一対の側壁5b間に形成される角度が、例えば、80°である。
【0057】
〔切削インサート〕
切削インサート2は、例えば、超硬合金製、PCD(多結晶ダイヤモンド)製、cBN(立方晶窒化ホウ素)製、サーメット製、セラミック製等である。切削インサート2は、工具本体4よりも硬度が高い硬質焼結体である。切削インサート2は、サポーター3のポケット33に着脱可能に取り付けられる。切削インサート2は、サポーター3にクランプされることにより、ポケット33に固定される。
【0058】
図5~
図10に示すように、切削インサート2は、上下方向を向く表面21及び裏面22と、表面21と裏面22とに接続される外周面23と、少なくとも表面21と外周面23とが接続される稜線部に配置される切刃24と、を有する。
【0059】
表面21は、多角形状であり、本実施形態では、トリゴン形の略六角形状である。表面21は、上側を向く。表面21は、上面21と言い換えてもよい。表面21は、すくい面26を有する。すくい面26は、表面21のうち少なくとも鋭角の角部に配置される。すくい面26は、表面21のうち切刃24と隣接する部分に配置される。すくい面26は、切刃24と接続される。
【0060】
裏面22は、多角形状であり、本実施形態では、トリゴン形の略六角形状である。裏面22は、下側を向く。裏面22は、下面22と言い換えてもよい。裏面22は、着座面27を有する。着座面27は、裏面22のうち少なくとも外周部よりもインサート径方向の内側に位置する部分に配置される。本実施形態では着座面27が、裏面22の全域にわたって配置される。着座面27は、インサート中心軸C2と垂直な方向に拡がる平面状である。着座面27は、インサート取付座5の底壁5aと接触する。
【0061】
外周面23は、インサート径方向の外側を向き、インサート周方向に延びる。外周面23は、逃げ面28を有する。逃げ面28は、外周面23のうち少なくともインサート軸方向の端部に配置される。逃げ面28は、外周面23のうち切刃24と隣接する部分に配置される。逃げ面28は、切刃24と接続される。
【0062】
外周面23は、インサート周方向に並ぶ複数の拘束面23aを有する。拘束面23aは、平面状であり、本実施形態では外周面23に6つ設けられる。各拘束面23aは、切削インサート2をインサート軸方向から見て、切削インサート2の外周部の6つの辺部に配置される。本実施形態では各拘束面23aが、四角形状である。
【0063】
切刃24は、切削インサート2のうち少なくとも前方端部に配置される。具体的に、切刃24は、切削インサート2の前方端部の上端部に配置される。切刃24は、すくい面26と逃げ面28とが接続される稜線部に配置される。切刃24は、前方に向けて突出する凸V字状である。切刃24は、コーナ刃部24aと、直線刃部24bと、を有する。
【0064】
コーナ刃部24aは、前方に向けて膨らむ凸曲線状である。直線刃部24bは、コーナ刃部24aの端部と接続され、直線状に延びる。直線刃部24bの刃長寸法は、コーナ刃部24aの刃長寸法よりも長い。本実施形態では、コーナ刃部24aが延びる刃長方向の両端部に、一対の直線刃部24bが接続される。すなわち直線刃部24bは、切刃24に一対設けられる。本実施形態では、インサート軸方向(上下方向)から見て、一対の直線刃部24b間に形成される角度が、例えば、80°である。
【0065】
本実施形態では切削インサート2が、インサート軸方向つまり上下方向において、表裏反転対称形状である。また切削インサート2は、上下方向に延びるインサート中心軸C2を中心とする回転対称形状である。このため切刃24は、切削インサート2に複数(少なくとも4つ以上)設けられる。具体的に、本実施形態の切削インサート2は、インサート中心軸C2を中心とする120°回転対称形状であり、切刃24は、表面21における鋭角の角部に3つと、裏面22における鋭角の角部に3つの計6つ設けられる。
【0066】
切削インサート2がサポーター3に保持された状態で、切削インサート2の前方端部に位置する切刃24は、サポーター3よりも前方に突出して配置される。また切削インサート2の後方端部は、中心軸C1よりも前方に位置する。
【0067】
〔サポーター〕
サポーター3は、ポケット33を有する。ポケット33は、サポーター3の前方端部から後方に窪む凹状をなしている。ポケット33には、切削インサート2が着脱可能に保持される。ポケット33は、切削インサート2の外周面23を、後方、左側及び右側から保持する。すなわち、サポーター3は、切削インサート2を後方、及び、左右方向の両側から保持可能である。ポケット33は、後述する第1爪部35、後方支持部36及び第2爪部52等により構成される。
【0068】
またサポーター3は、一対の板面(端面)3a,3bを有する。一対の板面3a,3bのうち、一方の板面(表面)3aは、上側を向く。一方の板面3aは、上面3aと言い換えてもよい。一方の板面3aは、中心軸C1と垂直な方向に拡がる平面状である。
【0069】
一対の板面3a,3bのうち、他方の板面(裏面)3bは、下側を向く。他方の板面3bは、下面3bと言い換えてもよい。他方の板面3bは、中心軸C1と垂直な方向に拡がる平面状である。
図10に示すように、本実施形態では他方の板面3bが、中心軸C1と垂直な方向に拡がる2つの平面(後述する第1部材31の下面と、第2部材32の下面)を組み合わせて構成されている。
【0070】
図8及び
図9に示すように、本実施形態では、切削インサート2の表面21が、上下方向において一方の板面3aと同じ位置、つまりサポーター3の表面3aと面一に配置される。ただしこれに限らず、特に図示しないが、切削インサート2の表面21が、一方の板面3aよりも上側に突出して配置されていてもよい。
【0071】
また、切削インサート2の裏面22(着座面27)は、上下方向において他方の板面3bと同じ位置、つまりサポーター3の裏面3bと面一に配置される。切削インサート2の裏面22(着座面27)及びサポーター3の裏面3bは、インサート取付座5の底壁5aすなわちシート部材51の上面と接触する。
【0072】
このため本実施形態において、切削インサート2の上下方向の寸法は、サポーター3の上下方向の寸法(板厚寸法)と同一である。なお、切削インサート2の上下方向の寸法は、サポーター3の上下方向の寸法より大きくてもよい。この場合、切削インサート2の切刃24は、サポーター3の表面3aよりも上側かつ前方に突出して配置される。
【0073】
また上記構成に限らず、特に図示しないが、切削インサート2の上下方向の寸法は、サポーター3の上下方向の寸法(板厚寸法)より小さくてもよい。この場合、切削インサート2の切刃24は、サポーター3の表面3aよりも下側かつ前方に突出して配置される。
【0074】
図5~
図14に示すように、サポーター3は、第1部材31と、第1部材31に組み合わされる第2部材32と、を有する。第2部材32は、第1部材31に係合される。第1部材31と第2部材32とは、互いに取り外し可能に組付けられている。
【0075】
第1部材31は、図示しない被削材の構成材料よりも硬度の高い材料により構成されている。第1部材31は、第2部材32よりも硬度が高い。第1部材31は、例えば、ビッカース硬さ(HV)が900以上であり、好ましくは、1300以上であり、より望ましくは、1700以上である。本実施形態では、第1部材31が、例えば、WC基の超硬合金製である。第2部材32は、例えば、鋼製等の金属製である。
【0076】
第1部材31は、全体としての形状が略多角形板状をなしており、具体的には、略四角形板状をなす。第1部材31の一対の板面は、上下方向を向く。第1部材31の一対の板面のうち、上側を向く一方の板面(つまり上面)は、サポーター3の一方の板面(表面)3aを構成している。
【0077】
また、第1部材31は、径方向外側を向く外周面31aを有する。外周面31aは、周方向(サポーター周方向)に並ぶ4つの側面31b,31cを有する。4つの側面31b,31cは、
図7に示すように上側(+Z側)から見て、外周が略四角形状をなす第1部材31の4つの辺部に配置される。具体的に、外周面31aは、前方を向く一対の前側面31bと、後方を向く一対の後側面31cと、を有する。
図7に示す上面視で、第1部材31の一対の前側面31b及び一対の後側面31cは、一般的なISO規格に準ずる四角形板状の切削インサート(菱形インサート)の外形形状つまり輪郭と一致するように、この輪郭上に配置される(輪郭上を延びる)。
【0078】
前側面31bは、外周面31aのうち前方を向く部分に配置される。前側面31bは、平面状である。一対の前側面31bは、前方へ向かうに従い、左右方向において互いに接近するように延びる。一対の前側面31bは、互いの間にポケット33を挟むように、周方向に並んで配置される。すなわち、一対の前側面31b間には、ポケット33が開口する。本実施形態では、
図7に示すように上側から見て、一対の前側面31b間に形成される角度が、例えば、80°である。
【0079】
図5に示すように、一対の前側面31bのうち、ポケット33の右側に位置する一方の前側面(右前側面)31baは、その後端部が、サポーター3の外周面のうち上側部分に位置している。また、一方の前側面31baのうち後端部以外の部分は、サポーター3の外周面の上下方向の全域(上側部分及び下側部分)にわたって配置される。
図5及び
図6に示すように、一対の前側面31bのうち、ポケット33の左側に位置する他方の前側面(左前側面)31bbは、サポーター3の外周面のうち上側部分に配置されている。
【0080】
後側面31cは、外周面31aのうち後方を向く部分に配置される。後側面31cは、平面状である。一対の後側面31cは、後方へ向かうに従い、左右方向において互いに接近するように延びる。一対の後側面31cは、周方向に並んで配置される。本実施形態では、
図7に示すように上側から見て、一対の後側面31c間に形成される角度が、例えば、80°である。
【0081】
図9に示すように、一対の後側面31cのうち、右側に位置する一方の後側面(右後側面)31caは、サポーター3の外周面のうち上側部分に配置されている。
図6に示すように、一対の後側面31cのうち、左側に位置する他方の後側面(左後側面)31cbは、サポーター3の外周面のうち上側部分に配置されている。
【0082】
図5~
図12に示すように、第1部材31は、貫通孔38と、筒部34と、第1爪部35と、開口部39と、後方支持部36と、ぬすみ部40と、当接部37と、を有する。第1爪部35、後方支持部36及びぬすみ部40は、それぞれ、ポケット33の一部を構成する。
【0083】
貫通孔38は、切削インサートのクランプ構造10の中心軸C1上に配置される。貫通孔38は、中心軸C1が延びる上下方向に沿って第1部材31を貫通しており、具体的には、サポーター3全体を貫通する。貫通孔38は、上下方向に延びて一対の板面(端面)3a,3bに開口する円孔状である。貫通孔38の中心軸は、切削インサートのクランプ構造10の中心軸C1と同軸に配置される。貫通孔38は、一般的なISO規格に準ずる四角形板状の切削インサート(菱形インサート)の貫通孔と、同一の内径寸法を有する。
【0084】
貫通孔38には、貫通孔38の上側から、クランプ部材6の後述するクランプ駒6aの突起部6eが挿入されて、係止される(
図1参照)。貫通孔38にクランプ部材6の一部が挿入され係止されることで、第1部材31すなわちサポーター3は、クランプ部材6に係止される。
【0085】
図10及び
図12に示すように、筒部34は、第1部材31の多角形板状をなす本体部分の下面から、下側に突出する。筒部34は、上下方向に延びる中心軸C1を中心とする筒状であり、具体的には、略円筒状である。
【0086】
より詳しくは、筒部34は、
図10に示すように下側(-Z側)から見て、中心軸C1回りの周方向に延びる湾曲状をなしており、かつ前方に開口する。筒部34は、下側から見て略C字状をなしている。貫通孔38のうち下側部分は、筒部34の内周面に配置されている。
【0087】
図5~
図7等に示すように、第1爪部35は、第1部材31の前方端部に配置されている。第1爪部35は、第1部材31の本体部分から前方に突出する。第1爪部35は、ポケット33に配置される切削インサート2に、左右方向の片側または両側から対向する。本実施形態では第1爪部35が、ポケット33の左側と右側とに位置して一対設けられており、切削インサート2に左右方向の両側から対向する。一対の第1爪部35は、左右方向に互いに間隔をあけて配置されている。一対の第1爪部35は、前方へ向かうに従い、左右方向において互いに接近するように延びる。
【0088】
第1爪部35は、切削インサート2の外周面23に左右方向から対向する横壁面35aを有する。ここで、
図7及び
図10に示すように上下方向から見て、中心軸C1およびインサート中心軸C2を通り前後方向に延びる仮想直線を、基準線Rと呼ぶ。横壁面35aは、第1爪部35のうち左右方向の内側(基準線R側)を向く面に配置されている。
【0089】
図11及び
図12に示すように、横壁面35aは、左右方向においてポケット33の内側を向く平面状であり、本実施形態では四角形状をなす。
図7に示すように、横壁面35aは、前方へ向かうに従い、左右方向において基準線Rに近づくように延びる。横壁面35aは、切削インサート2の外周面23の複数(6つ)の拘束面23aのうち、左右方向を向く拘束面23aに対向する。
【0090】
一対の第1爪部35は、ポケット33及び切削インサート2の右側(-Y側)に配置される一方の第1爪部35Aと、ポケット33及び切削インサート2の左側(+Y側)に配置される他方の第1爪部35Bと、を有する。本実施形態では、後述するようにクランプ部材6が締結(クランプ)されたときに、第1爪部35Aが切削インサート2に接触し、第1爪部35Bについては切削インサート2に接触しない(隙間をあけて対向した状態が維持される)。ただしこれに限らず、第1爪部35Bが切削インサート2に接触してもよい。
【0091】
図5、
図11及び
図12に示すように、一方の第1爪部35Aは、その上下方向の寸法が、サポーター3の上下方向の寸法(全長)と同じである。また、一方の第1爪部35Aの横壁面35aの上下方向の寸法は、切削インサート2の拘束面23aの上下方向の寸法と同じである。
【0092】
他方の第1爪部35Bは、その上下方向の寸法が、サポーター3の上下方向の寸法(全長)の略半分である。また、他方の第1爪部35Bの横壁面35aの上下方向の寸法は、切削インサート2の拘束面23aの上下方向の寸法の略半分である。他方の第1爪部35Bは、サポーター3の上側部分に配置されている。
このように、一対の第1爪部35(35A,35B)は、少なくともサポーター3の上端部に配置される。
【0093】
開口部39は、第1部材31の本体部分の前端部及び筒部34の前端部を、前後方向及び上下方向に切り欠くように形成されている。開口部39は、第1部材31の本体部分の前端部及び筒部34の前端部を前後方向に貫通し、上下方向に延びるスリット状である。開口部39が設けられることで、貫通孔38とポケット33とが、前後方向において互いに連通する。
図6及び
図7に示すように、ポケット33に切削インサート2が装着されたときに、開口部39には、切削インサート2の後端部に位置する鈍角の角部が配置される。
【0094】
後方支持部36は、第1部材31の本体部分の前端部に配置されている。後方支持部36は、ポケット33に配置される切削インサート2に、後方から接触する。後方支持部36は、左右方向において、一対の第1爪部35間に配置されている。本実施形態では後方支持部36が、開口部39の右側に位置する一方側部分と、開口部39の左側に位置する他方側部分と、を有する。後方支持部36の一方側部分(右側部分)及び他方側部分(左側部分)は、それぞれ、開口部39から左右方向へ離れるに従い、前方に向けて延びている。
【0095】
後方支持部36は、切削インサート2の外周面23に後方から接触する後壁面36aを有する。後壁面36aは、後方支持部36の前方を向く面に配置されている。後壁面36aは、後方支持部36の一方側部分(右側部分)と他方側部分(左側部分)とに、一対設けられる。各後壁面36aは、前方を向く平面状である。
【0096】
図7に示すように、各後壁面36aは、基準線Rから左右方向に離れるに従い、前方に向けて延びる。後壁面36aは、切削インサート2の外周面23の複数(6つ)の拘束面23aのうち、後方を向く拘束面23aに接触する。
【0097】
図5、
図11及び
図12に示すように、後方支持部36の一方側部分(右側部分)は、その上下方向の寸法が、サポーター3の上下方向の寸法(全長)と同じである。また、後方支持部36の一方側部分の後壁面36aの上下方向の寸法は、切削インサート2の拘束面23aの上下方向の寸法と同じである。
【0098】
後方支持部36の他方側部分(左側部分)のうち、左右方向の外側(基準線Rとは反対側)部分、つまり他方側部分のうち左側部分は、その上下方向の寸法が、サポーター3の上下方向の寸法(全長)の略半分である。この左側部分は、サポーター3の上側部分に配置されている。また、後方支持部36の他方側部分のうち、左右方向の内側(基準線R側)部分、つまり他方側部分のうち右側部分は、その上下方向の寸法が、サポーター3の上下方向の寸法と同じである。
このように、後方支持部36の一方側部分及び他方側部分は、少なくともサポーター3の上端部に配置される。
【0099】
ぬすみ部40は、第1爪部35と後方支持部36との間に配置される。具体的に、ぬすみ部40は、ポケット33のうち第1爪部35と後方支持部36とが接続される谷部に配置される。本実施形態ではぬすみ部40が、一方の第1爪部35Aと後方支持部36の一方側部分(右側部分)との間、及び、他方の第1爪部35Bと後方支持部36の他方側部分(左側部分)との間に、一対設けられる。各ぬすみ部40は、横壁面35aと後壁面36aとが接続される谷部に配置される。
【0100】
ぬすみ部40は、凹曲面状の溝であり、上下方向に延びる。
図7に示すように、ぬすみ部40は、切削インサート2の3つの鋭角の角部のうち、サポーター3から前方に突出して切刃24として用いられる鋭角の角部以外の鋭角の角部と対向する。
【0101】
図10及び
図12に示すように、当接部37は、第1部材31の下側部分に配置される。当接部37は、後方を向く平面状である。
図10に示すように下側から見て、当接部37は、径方向に沿って直線状に延びる。具体的に、当接部37は、径方向外側へ向かうに従い前方に向けて延びている。
【0102】
当接部37の径方向内端部は、筒部34の外周面と接続される。当接部37の径方向外端部は、前側面31bに接続される。本実施形態では当接部37が、筒部34の右側(-Y側)に配置されている。当接部37の径方向内端部は、筒部34の外周面のうち右端部に接続される。当接部37の径方向外端部は、右前側面31baに接続される。
【0103】
図5~
図10、
図13及び
図14に示すように、第2部材32は、周方向に延びる湾曲した板状をなしている。第2部材32は、第1部材31の下側に配置される。具体的に、第2部材32は、第1部材31の本体部分の下側に配置されており、筒部34の径方向外側に位置する。第2部材32は、筒部34の外周面に沿って湾曲状に延びている。第2部材32は、サポーター3の下側部分の一部を構成する。すなわち、第2部材32は、サポーター3の下側部分に配置される。
【0104】
本実施形態では第2部材32が、
図10に示すようにサポーター3を下側(-Z側)から見て、筒部34を後方、及び左右方向の両側から囲うように、すなわち筒部34の前端部以外の部分を径方向外側から囲うように配置されている。第2部材32は、複数箇所で屈曲しつつ周方向に延びている。第2部材32は、後述するクランプ部材6の締結(クランプ)により、弾性変形可能とされている。
【0105】
第2部材32は、径方向外側を向く外周面32aと、径方向内側を向く内周面32dと、を有する。
外周面32aは、周方向に並ぶ3つの側面32b,32cを有する。3つの側面32b,32cは、
図10に示すように下側から見て、第2部材32の外周の3つの辺部に配置される。具体的に、外周面32aは、前方を向く1つの前側面32bと、後方を向く一対の後側面32cと、を有する。
【0106】
図6及び
図14に示すように、前側面32bは、外周面32aのうち前方を向く部分に配置される。前側面32bは、平面状である。前側面32bは、前方へ向かうに従い、左右方向の内側(基準線R側)に向けて延びる。
【0107】
前側面32bは、ポケット33の左側(+Y側)に位置する左前側面32baを有する。左前側面32baは、サポーター3の外周面のうち下側部分に配置されている。
本実施形態では、
図10に示すように下側から見て、第2部材32の前側面32b(左前側面32ba)と、第1部材31の前側面31b(右前側面31ba)との間に形成される角度が、例えば、80°である。
【0108】
後側面32cは、外周面32aのうち後方を向く部分に配置される。一対の後側面32cは、後方へ向かうに従い、左右方向において互いに接近するように延びる。一対の後側面32cは、周方向に並んで配置される。
【0109】
図9及び
図13に示すように、一対の後側面32cのうち、右側(-Y側)に位置する一方の後側面(右後側面)32caは、平面状である。右後側面32caは、サポーター3の外周面のうち下側部分に配置されている。
【0110】
図6及び
図14に示すように、一対の後側面32cのうち、左側(+Y側)に位置する他方の後側面(左後側面)32cbは、凹曲面状である。左後側面32cbは、サポーター3の外周面のうち下側部分に配置されている。
【0111】
図7に示すように上側から見て、第2部材32の左後側面32cbの周方向の両端部は、第1部材31の左後側面31cbよりも径方向外側に出っ張っている。これにともない、
図7及び
図10に示すように上下方向から見て、左後側面32cbの周方向の後方端部と、右後側面31ca,32caとの間に形成される角度は、例えば、80°よりも小さい。また、左後側面32cbの周方向の前方端部と、右後側面31ca,32caとの間に形成される角度は、例えば、80°よりも大きい。
【0112】
図10、
図13及び
図14に示すように、第2部材32の内周面32dは、周方向に延びる凹曲面状である。内周面32dは、筒部34の外周面と対向する。内周面32dと筒部34の外周面とは、摺動自在に接触する。
【0113】
第2部材32は、第2爪部52と、係止部53と、凹部54と、を有する。第2爪部52は、ポケット33の一部を構成する。
【0114】
第2爪部52は、第2部材32の端部に配置される。本実施形態では第2爪部52が、第2部材32の両端部のうち一端部に配置される。具体的に、第2爪部52は、第2部材32が延びる周方向の両端部のうち、周方向一方側θ1の端部に配置されている。また第2爪部52は、第2部材32の前方端部に配置されている。
【0115】
第2爪部52は、ポケット33に配置される切削インサート2に、左右方向の片側または両側から接触する。具体的に、
図10に示すようにクランプ部材6の締結前の状態では、第2爪部52は、切削インサート2に左右方向から隙間をあけて対向しており、クランプ部材6を締結したときに第2部材32が弾性変形することで、第2爪部52は、切削インサート2に左右方向から接触する。
【0116】
本実施形態では第2爪部52が、ポケット33の左側(+Y側)に1つ設けられており、第2爪部52は、切削インサート2に左右方向の片側(左側)から接触する。第2爪部52は、前方へ向かうに従い、左右方向の内側(基準線R側)に向けて延びる。
【0117】
第2爪部52は、切削インサート2の外周面23に左右方向から接触する横壁面52aを有する。横壁面52aは、左右方向においてポケット33の内側を向く平面状であり、
図13に示すように本実施形態では、四角形状をなす。また
図10に示すように、横壁面52aは、前方へ向かうに従い、左右方向において基準線Rに近づくように延びる。横壁面52aは、切削インサート2の外周面23の複数(6つ)の拘束面23aのうち、左右方向を向く拘束面23aに接触する。
【0118】
図5及び
図6に示すように、第2爪部52は、その上下方向の寸法が、サポーター3の上下方向の寸法(全長)の略半分である。また、第2爪部52の横壁面52aの上下方向の寸法は、切削インサート2の拘束面23aの上下方向の寸法の略半分である。第2爪部52は、サポーター3の下側部分に配置されている。
【0119】
本実施形態では、後述するようにクランプ部材6が締結(クランプ)されたときに、第1部材31の一方の第1爪部35Aが、切削インサート2に右側から接触し、第2部材32の第2爪部52が、切削インサート2に左側から接触する。これにより、第1爪部35A及び第2爪部52は、切削インサート2を左右方向から挟持する。
【0120】
詳しくは、クランプ部材6の締結により、サポーター3を後方へ引き込む引込み力が発生し、サポーター3の外周面のうち後側面31c,32cが、インサート取付座5の側壁5bに押し付けられる。このとき、
図1、
図7及び
図10において、第2部材32の左後側面32cbのうち、第1部材31の左後側面31cbよりも径方向外側に突出する周方向の前方端部が、側壁5bにより押圧され、第2部材32が弾性変形しつつ、第2爪部52が周方向一方側θ1へ回動させられる。これにより、第2爪部52は切削インサート2の外周面23を右側へ押し、第1爪部35Aも切削インサート2の外周面23に接触させられて、切削インサート2は一対の爪部35A,52により挟まれる。このように、第2爪部52は、第2部材32の弾性変形によって切削インサート2を左右方向から押圧する。
【0121】
図10、
図13及び
図14に示すように、係止部53は、第2部材32の両端部のうち他端部に配置される。具体的に、係止部53は、第2部材32が延びる周方向の両端部のうち、周方向他方側θ2の端部に配置されている。
【0122】
係止部53は、前方を向く平面状である。
図10に示すように下側から見て、係止部53は、径方向に沿って直線状に延びる。具体的に、係止部53は、径方向外側へ向かうに従い前方に向けて延びている。
【0123】
係止部53は、当接部37と対向して配置される。言い換えると、当接部37は、中心軸C1回りの周方向において、係止部53すなわち第2部材32の他端部と対向する。当接部37は、クランプ部材6の締結により、第2部材32の他端部(係止部53)に接触する。
【0124】
詳しくは、クランプ部材6の締結により、サポーター3を後方へ引き込む引込み力が発生し、サポーター3の外周面のうち後側面31c,32cが、インサート取付座5の側壁5bに押し付けられる。このとき、
図1、
図7及び
図10において、第2部材32の左後側面32cbのうち、第1部材31の左後側面31cbよりも径方向外側に突出する周方向の後方端部が、側壁5bにより押圧され、第2部材32が弾性変形しつつ、係止部53が周方向他方側θ2へ回動させられる。これにより、係止部53と当接部37とが接触し、接触後はそれ以上の係止部53の周方向他方側θ2への回動が規制される。
【0125】
図10、
図13及び
図14に示すように、凹部54は、第2部材32の内周面32dから径方向外側に窪む凹状である。凹部54は、第2部材32の両端部のうち一端部に配置される。具体的に、凹部54は、第2部材32が延びる周方向の両端部のうち、周方向一方側θ1の端部に配置されている。また凹部54は、第2爪部52の後方に隣り合って配置されている。
【0126】
このような凹部54が形成されることで、
図10に示すように、筒部34の外周面と第2部材32の端部(一端部、すなわち周方向一方側θ1の端部)との間には、第2部材32の弾性変形を許容する隙間部55が設けられている。詳しくは、隙間部55が設けられることで、第2部材32が安定して弾性変形させられるとともに、第2爪部52が安定して周方向一方側θ1へ回動し、切削インサート2に接触させられる。
【0127】
〔クランプ部材〕
図1~
図4に示すように、クランプ部材6は、インサート取付座5に、切削インサートのクランプ構造10のうち少なくともサポーター3を固定する。クランプ部材6は、クランプ駒6aと、クランプネジ6bと、を有する。
【0128】
クランプ駒6aは、工具本体4の頂面41のうち第1端部4aに位置する部分の上側に配置される。クランプ駒6aは、前後方向に延びる。クランプ駒6aの前方端部は、インサート取付座5の上側に位置する。クランプ駒6aは、ネジ挿通孔6cと、スライド面6dと、突起部6eと、を有する。
【0129】
ネジ挿通孔6cは、クランプ駒6aを上下方向に貫通する。ネジ挿通孔6cは、クランプ駒6aのうち前後方向の両端部間に位置する中間部分に配置される。
スライド面6dは、クランプ駒6aの後端部に配置され、下側を向く。スライド面6dは、後方へ向かうに従い下側に位置する傾斜した平面状である。スライド面6dは、工具本体4の傾斜面41aと摺動可能に接触する。
【0130】
突起部6eは、クランプ駒6aの前端部に配置され、クランプ駒6aの下面から下側に突出する。特に図示しないが、突起部6eは、上下方向に延びる柱状である。突起部6eは、サポーター3の貫通孔38に上側から挿入される。突起部6eの外周面のうち後方を向く部分は、貫通孔38の内周面と接触可能である。
【0131】
クランプネジ6bは、ネジ挿通孔6cに上側から挿入され、工具本体4の頂面41に開口するネジ穴に螺着される。クランプネジ6bをネジ穴にねじ込んでいく際、スライド面6dが傾斜面41a上を摺動し、クランプ駒6aは、下側へ移動しつつ後方へ引き込まれる。これにより、突起部6eが貫通孔38の内周面を介して、サポーター3を後方へ引き込む。また、クランプ駒6aの前端部の下面のうち、突起部6eの周囲に位置する部分が、第1部材31の上面、すなわちサポーター3の表面3aの一部に上側から接触し、サポーター3を下側へ押さえる。このようにして、サポーター3がクランプ部材6に係止される。
【0132】
また、クランプ部材6によってサポーター3が後方に引き込まれることで、サポーター3の外周面のうち後側面31c,32cが、インサート取付座5の側壁5bに押し付けられる。これにより、第2部材32の左後側面32cbが側壁5bに押圧されて、第2部材32が弾性変形させられる。この弾性変形にともない、ポケット33の一対の爪部35A,52間の左右方向の寸法が狭まり、ポケット33に切削インサート2がクランプされ、固定される。このようにして、クランプ部材6による締結(クランプ)が行われる。
【0133】
〔切削工具の勝手について〕
ここで、刃先交換式切削工具1の「勝手」について説明する。本実施形態の刃先交換式切削工具1は、左勝手である。
【0134】
「勝手」について、以下に詳しく説明する。切削インサート2のすくい面26を鉛直方向の上側に向けた工具姿勢において、この工具を工具軸方向の先端側から見たときに、切刃24の主切れ刃(直線刃部24b)が工具本体4から左側に出っ張って配置される場合が左勝手であり、右側に出っ張って配置される場合が右勝手である。
【0135】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の切削インサートのクランプ構造10、サポーター3及び刃先交換式切削工具1では、サポーター3が切削インサート2を後方、及び、左右方向の両側から保持する。これにより、例えば超硬合金やサーメットなどの高価な硬質材料からなる切削インサート2の外形寸法を小さく抑えることができ、工具コストを削減できる。より詳しくは、切刃24の損耗等に応じて交換が必要となる切削インサート2のコストを削減することができる。
【0136】
また、サポーター3は、互いに組み合わされる第1部材31及び第2部材32を備えている。切削インサート2は、第1部材31の第1爪部35と、第2部材32の第2爪部52とにより、左右方向から保持される。
【0137】
切削時において、切削インサート2の切刃24によって生成される切屑は、切削インサート2の上面21(すくい面26)でカールされつつ、サポーター3の上端部に擦過する。より詳しくは、切屑は、サポーター3の上端部のうち、特に切削インサート2を左右方向から押さえる爪部35に擦過する。具体的に、本実施形態では切削工具が左勝手であり、切屑は、一対の第1爪部35のうち、他方(左側)の第1爪部35Bに擦過する。
【0138】
本実施形態では、切削インサート2を左右方向から保持する第1爪部35及び第2爪部52のうち、硬度の高い第1部材31の第1爪部35が、サポーター3の上端部に位置している。このため、硬質材料からなる第1爪部35に対して、切屑が擦過するように工具を配置することができる。
【0139】
被削材の構成材料よりも硬度の高い材料で第1部材31を構成することにより、第1爪部35に切屑が擦過しても、第1爪部35の摩耗を安定して抑制することができる。すなわち、切屑の擦過によるサポーター3の摩耗を抑制することができ、サポーター3の寿命を延長できる。サポーター3による切削インサート2の保持状態を、良好に維持することができる。サポーター3を交換する必要が生じないため、工具コストをより削減できる。
【0140】
以上より本実施形態によれば、切削インサート2をコンパクト化してコスト削減を図りつつ、サポーター3の摩耗を抑制して、サポーター3により切削インサート2を安定して保持することができる。
【0141】
また本実施形態では、第1部材31のビッカース硬さが、900以上である。
第1部材31のビッカース硬さ(HV)が900以上であれば、例えば鋼製等の被削材を切削する場合においても、第1爪部35の摩耗をより確実に防止することができる。
【0142】
また本実施形態では、第1部材31が、超硬合金製である。
この場合、被削材の構成材料の種類に関わらず、第1爪部35の摩耗を安定して抑制することができる。
【0143】
また本実施形態では、第2部材32が、第1部材31の下側に配置される。
上記構成のように、第2部材32が第1部材31の下側に配置されていると、第2爪部52を第1爪部35よりも下側に配置することができる。すなわち、第2爪部52を、サポーター3の下端部などに配置できる。これにより、硬度の低い第2部材32の第2爪部52に対して、切屑が擦過することが抑えられる。このため、第2爪部52の摩耗についても安定して抑制することができる。サポーター3によって切削インサート2をより安定して保持できる。
【0144】
また本実施形態では、クランプ部材6の締結により第2部材32が弾性変形し、これにともない第2爪部52が切削インサート2を左右方向から押圧して、切削インサート2がサポーター3に固定される。サポーター3が切削インサート2を安定して保持することができ、切削時の切削インサート2の姿勢が安定する。
【0145】
また本実施形態では、第1部材31が、切削インサート2に後方から接触する後方支持部36を有しており、後方支持部36は、少なくともサポーター3の上端部に配置される。
この場合、硬度の高い第1部材31の後方支持部36が、サポーター3の上端部に位置している。このため、切削時に、サポーター3の上端部のうち切削インサート2の後方に位置する後方支持部36に対して切屑が擦過しても、後方支持部36の摩耗を抑制することができる。
【0146】
また本実施形態では、第1部材31の筒部34回りに湾曲状に延びる第2部材32が、筒部34の外周面にガイドされる。第1部材31に対する第2部材32の組付け姿勢が安定する。このため、第2部材32の端部に位置する第2爪部52によって、切削インサート2を左右方向から安定して保持することができる。
【0147】
また本実施形態では、筒部34の外周面と第2部材32の端部との間に、第2部材32の弾性変形を許容する隙間部55が設けられる。
この場合、隙間部55が設けられることで、クランプ部材6の締結時に第2部材32が安定して弾性変形させられる。第2部材32の弾性変形により、第2部材32の端部に位置する第2爪部52が切削インサート2を左右方向から押圧して、切削インサート2がサポーター3に安定して保持される。
【0148】
また本実施形態では、第2爪部52が、第2部材32の両端部のうち一端部に配置され、第1部材31は、中心軸C1回りの周方向において第2部材32の他端部(係止部53)と対向する当接部37を有し、当接部37は、クランプ部材6の締結により、第2部材32の他端部に接触する。
この場合、クランプ部材6の締結時に、第1部材31の当接部37と第2部材32の他端部とが接触する。これにより、第1部材31と第2部材32との組付け姿勢(クランプ姿勢)が安定し、第2部材32の一端部に設けられる第2爪部52によって、切削インサート2をより安定して保持できる。
【0149】
また本実施形態では、切削インサート2は、上下方向において表裏反転対称形状であり、かつ、上下方向に延びるインサート中心軸C2を中心とする回転対称形状である。
この場合、1つの切削インサート2に少なくとも4つ以上の複数の切刃24を設けることができ、切削インサート2の工具寿命を延ばすことができる。
【0150】
また本実施形態では、貫通孔38が、中心軸C1上に配置される。
この場合、クランプ部材6が係止される第1部材31の貫通孔38が、切削インサートのクランプ構造10の中心軸C1上に位置しているため、小型化した切削インサート2及びサポーター3を、既存の切削工具に装着することができる。詳しくは、既存の工具本体4のインサート取付座5に、例えばISO規格等に準ずる既存の切削インサートを搭載する代わりに、本実施形態の小型化した切削インサート2及びサポーター3を搭載して、既存のクランプ部材6によって、この切削インサートのクランプ構造10をクランプすることができる。すなわち、本実施形態によれば、既存のクランプ部材6や工具本体4を流用可能であるため、汎用性が高められる。
【0151】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0152】
前述の実施形態では、第1部材31が一対の第1爪部35を有しており、一対の第1爪部35が、ポケット33に配置される切削インサート2の左側及び右側(つまり左右方向の両側)に配置される例を挙げたが、これに限らない。特に図示しないが、第1爪部35は、第1部材31に1つのみ設けられていてもよく、切削インサート2に左右方向の片側から対向していてもよい。なおこの場合、例えば前述の実施形態のように、切削工具が左勝手の場合には、第1爪部35Bが切削インサート2の左側に配置される。この構成においても、切屑の擦過による第1爪部35Bの摩耗が抑制されるため、前述の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0153】
前述の実施形態では、第2部材32が1つの第2爪部52を有しており、この第2爪部52が、切削インサート2に左右方向の片側(左側)から接触する例を挙げたが、これに限らない。特に図示しないが、第2爪部52は、第2部材32の両端部に一対設けられていてもよく、切削インサート2に左右方向の両側から接触してもよい。
【0154】
また特に図示しないが、第1部材31が、部材本体と、部材本体の表面(外面)のうち、少なくとも第1爪部35に配置される硬質被膜と、を有していてもよい。部材本体は、例えば超硬合金製等である。硬質被膜は、耐摩耗性を備えたコーティング膜等であり、例えばPVD法やCVD法により部材本体の表面上に成膜される。
この場合、硬質被膜によって第1爪部35の耐摩耗性をより高めることができる。切屑の擦過による第1爪部35の摩耗を、より確実に抑制できる。
【0155】
また、前述の実施形態では、クランプ部材6が、クランプ駒6a及びクランプネジ6bを有する例を挙げたが、これに限らない。特に図示しないが、クランプ部材は、例えばL字状のクランプレバーを有していてもよい。この場合、クランプレバーは、サポーター3の下側から貫通孔38に挿入されて係止され、サポーター3に後方への引き込み力を付与する。
【0156】
また、前述の実施形態では、上下方向から見て、切削インサート2の切刃24の一対の直線刃部24b間に形成される角度、サポーター3の前側面31b間(31ba,31bb間)に形成される角度、サポーター3の後側面31c間(31ca,31cb間)に形成される角度、及び、インサート取付座5の一対の側壁5b間に形成される角度が、それぞれ80°である例を挙げたが、これに限らない。特に図示しないが、上記の各角度は、例えば、35°、55°、60°、90°などであってもよい。これらの場合においても、前述の実施形態と同様に、ISO規格に準ずる各種の切削インサートを備えた既存の刃先交換式切削工具に対して、本発明品を適用可能である。
【0157】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態及び変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明の切削インサートのクランプ構造、サポーター及び刃先交換式切削工具によれば、切削インサートをコンパクト化してコスト削減を図りつつ、サポーターの摩耗を抑制して、サポーターにより切削インサートを安定して保持することができる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0159】
1…刃先交換式切削工具
2…切削インサート
3…サポーター
4…工具本体
5…インサート取付座
6…クランプ部材
10…切削インサートのクランプ構造
24…切刃
31…第1部材
32…第2部材
34…筒部
35,35A,35B…第1爪部
52…第2爪部
36…後方支持部
37…当接部
55…隙間部
C1…中心軸
C2…インサート中心軸