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  • 特開-太陽電池モジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128684
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H10K 39/10 20230101AFI20240913BHJP
   H10K 30/88 20230101ALI20240913BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20240913BHJP
【FI】
H10K39/10
H10K30/88
H10K30/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037809
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】小島 広平
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳一
(72)【発明者】
【氏名】寺下 徹
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA20
5F251CA37
5F251CB14
5F251CB15
5F251FA02
5F251FA03
5F251FA04
5F251JA02
5F251JA30
(57)【要約】
【課題】窓に配設した場合に圧迫感及び閉塞感を与えにくい採光可能な太陽電池モジュールを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る太陽電池モジュール1は、ペロブスカイト太陽電池セル10と、前記ペロブスカイト太陽電池セル10の表面側を覆う表面保護部材30と、前記ペロブスカイト太陽電池セル10の裏面側を覆う裏面保護部材40と、前記ペロブスカイト太陽電池セル10と前記表面保護部材30の間に平面視で前記ペロブスカイト太陽電池セル10の外側を覆うよう配置される黒色の表側着色材50と、前記ペロブスカイト太陽電池セル10と前記裏面保護部材40の間に平面視で前記ペロブスカイト太陽電池セル10の外側を覆うよう配置され、前記表側着色材50よりも明るい色を有する裏側着色材60と、前記表面保護部材30と前記裏面保護部材40の間に充填される封止材70と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト太陽電池セルと、
前記ペロブスカイト太陽電池セルの表面側を覆う表面保護部材と、
前記ペロブスカイト太陽電池セルの裏面側を覆う裏面保護部材と、
前記ペロブスカイト太陽電池セルと前記表面保護部材の間に平面視で前記ペロブスカイト太陽電池セルの外側を覆うよう配置される黒色の表側着色材と、
前記ペロブスカイト太陽電池セルと前記裏面保護部材の間に平面視で前記ペロブスカイト太陽電池セルの外側を覆うよう配置され、前記表側着色材よりも明るい色を有する裏側着色材と、
前記表面保護部材と前記裏面保護部材の間に充填される封止材と、
を備える、太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記表側着色材と前記裏側着色材の色差ΔEは、30以上である、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記ペロブスカイト太陽電池セルは、受光側から順に、透明な基材層、透明導電性酸化物からなる第1電極層、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層及び金属を含む第2電極層を有し、前記光電変換層及び前記第2電極層を除去した複数のスリットが形成されている、請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
透明な板状の表面保護部材と、裏面側の板状又はシート状の裏面保護部材との間に太陽電池セルを配置し、表面保護部材と裏面保護部材の間に封止材を充填した太陽電池モジュールが利用されている。このような太陽電池モジュールにおいて、表面保護部材と太陽電池セルの間に、太陽電池セルの外側の領域を覆う遮光フィルムを配設し、太陽電池セルの電極や太陽電池セルを接続する接続部材が見えないようにすることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
窓等に一部の光を透過する太陽電池モジュールを配設し、光電変換と同時に室内への採光を可能にすることも検討されている。一部の光を透過する太陽電池モジュールとしては、一部の波長域の光だけを吸収し、他の波長域の光を透過するペロブスカイト太陽電池セルを使用するものが考えられる。ペロブスカイト太陽電池セルは、短波長域の光を吸収して光電変換するが、長波長域の可視光を透過し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-209473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
窓に配設される採光可能な太陽電池モジュールでは、裏面保護部材にも配線材を隠す遮光領域を設けることが考えられる。このような太陽電池モジュールを室内側から見た場合、遮光領域の幅が大きく、屋外の景色が見える領域が小さく感じられるため、圧迫感又は閉塞感を与えやすい。
【0006】
本発明は、窓に配設した場合に圧迫感及び閉塞感を与えにくい採光可能な太陽電池モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る太陽電池モジュールは、ペロブスカイト太陽電池セルと、前記ペロブスカイト太陽電池セルの表面側を覆う表面保護部材と、前記ペロブスカイト太陽電池セルの裏面側を覆う裏面保護部材と、前記ペロブスカイト太陽電池セルと前記表面保護部材の間に平面視で前記ペロブスカイト太陽電池セルの外側を覆うよう配置される黒色の表側着色材と、前記ペロブスカイト太陽電池セルと前記裏面保護部材の間に平面視で前記ペロブスカイト太陽電池セルの外側を覆うよう配置され、前記表側着色材よりも明るい色を有する裏側着色材と、前記表面保護部材と前記裏面保護部材の間に充填される封止材と、を備える。
【0008】
上述の太陽電池モジュールにおいて、前記表側着色材と前記裏側着色材の色差ΔEは、30以上であってもよい。
【0009】
上述の太陽電池モジュールにおいて、前記ペロブスカイト太陽電池セルは、受光側から順に、透明な基材層、透明導電性酸化物からなる第1電極層、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層及び金属を含む第2電極層を有し、前記光電変換層及び前記第2電極層を除去した複数のスリットが形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、窓に配設した場合に圧迫感及び閉塞感を与えにくい採光可能な太陽電池モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールを示す平面図である。
図2図1の太陽電池モジュールのX-X線断面図である。
図3図1の太陽電池モジュールのY-Y線断面部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュール1の平面図である。図2は、図1の太陽電池モジュール1のX-X線断面図である。図3は、図1の太陽電池モジュール1のY-Y線断面部分拡大図である。
【0014】
太陽電池モジュール1は、複数のペロブスカイト太陽電池セル10と、複数のペロブスカイト太陽電池セル10を接続する配線材20と、複数のペロブスカイト太陽電池セル10の表面側(受光面側)を覆う表面保護部材30と、複数のペロブスカイト太陽電池セル10の裏面側を覆う裏面保護部材40と、ペロブスカイト太陽電池セル10と表面保護部材30の間に配置される表側着色材50と、ペロブスカイト太陽電池セル10と裏面保護部材40の間に配置される裏側着色材60と、表面保護部材30と裏面保護部材40の間に充填される封止材70と、を備える。
【0015】
ペロブスカイト太陽電池セル10は、基材層11、第1電極層12、光電変換層13及び第2電極層14をこの順番に有する構成とされ得る。本実施形態のペロブスカイト太陽電池セル10は、受光側に基材層11が配置され、少なくとも光電変換層13及び第2電極層14を除去した複数のスリット15が形成されている。
【0016】
基材層11は、ペロブスカイト太陽電池セル10の強度を担保する板状又はシート状の構造部材である。本実施形態において、基材層11は、透明であり、例えばポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂又はガラスから形成され得る。
【0017】
第1電極層12は、光電変換層13で生成された第1の電荷を収集して外部に出力する。本実施形態において、第1電極層12は、透明導電性酸化物(TCO:Transparent Conductive Oxide)から形成される。第1電極層12を形成する透明導電性酸化物としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン及びそれらの複合酸化物等を用いることができる。これらの中でも、酸化インジウムを主成分とするインジウム系複合酸化物が好ましい。高い導電率と透明性の観点からは、インジウム酸化物が特に好ましい。さらに、信頼性又はより高い導電率を確保するために、インジウム酸化物にドーパントを添加することが好ましい。ドーパントとしては、例えば、Sn、W、Zn、Ti、Ce、Zr、Mo、Al、Ga、Ge、As、Si、S等が挙げられる。特に好適な例として、インジウム酸化物にスズが添加されたITO(Indium Tin Oxide)が広く知られている。第1電極層12は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法などの方法で積層され得る。
【0018】
第1電極層12の厚みの下限としては、5nmが好ましく、10nmがより好ましい。一方、第1電極層12の厚みの上限としては、200nmが好ましく、100nmがより好ましい。第1電極層12の厚みを前記下限以上とすることによって、電気抵抗を小さくすることができるのでペロブスカイト太陽電池セル10の光電変換効率を向上できる。また、第1電極層12の厚みを前記上限以下とすることによって、不必要なコスト増や可撓性の低下を防止できる。第1電極層12は、例えば多結晶ITO層と非晶質ITO層との積層構造等の多層構造を有してもよい。
【0019】
光電変換層13は、ペロブスカイト化合物を含み、入射光を吸収して光キャリア(電子及び正孔)を生成する。光電変換層13に含まれるペロブスカイト化合物としては、1価の有機アンモニウムイオン及びアミジニウム系イオンのうちの少なくとも1種を含む有機原子A、2価の金属イオンを生成する金属原子B、及びヨウ化物イオンI、臭化物イオンBr、塩化物イオンCl、及びフッ化物イオンFのうちの少なくとも1種を含むハロゲン原子Xを含み、ABXで表される化合物を用いることができる。中でも、光電変換層13を蒸着法(ドライプロセス)により形成する場合、有機原子AとしてはメチルアンモニウムMA(CHNH)が好ましく、金属原子Bとしては鉛Pbが好ましく、ハロゲン原子Xとしてはヨウ化物I、臭化物イオンBr及び塩化物イオンClのうちの少なくとも1つが好ましい。
【0020】
具体的に、好ましいペロブスカイト化合物としては、メチルアンモニウムハロゲン化鉛MAPbX(CHNHPbX)、MAPbI、MAPbBr、MAPbCl等が挙げられる。なお、ハロゲン原子Xとしては複数種類を含んでもよい。ヨウ化物Iと他のハロゲン原子Xとを含むペロブスカイト化合物としては、例えばメチルアンモニウムヨウ化鉛MAPbI(3-y)(CHNHPbI(3-y))、MAPbIBr(3-y)、MAPbICl(3-y)等が挙げられる(yは任意の正の整数)。
【0021】
ペロブスカイト化合物を含む光電変換層13は、ペロブスカイト化合物がメチルアンモニウムハロゲン化鉛(MAPbX(CHNHPbX))である場合、光電変換層13は、ハロゲン化鉛(PbX)材料及びハロゲン化メチルアンモニウム(MAX)材料を順に製膜し、これらの材料の薄膜を反応温度で反応させることにより形成され得る。例えば、ペロブスカイト化合物がメチルアンモニウムヨウ化鉛(MAPbI(3-y)(CHNHPbI(3-y)))である場合、光電変換層13は、例えばハロゲン化鉛(PbX2)材料及びヨウ化メチルアンモニウム(MAI)材料を順に製膜し、これらの材料の薄膜を反応温度で反応させることにより形成される。また、光電変換層13は、例えば液相の塗膜内でペロブスカイト化合物を合成するゾルゲル法、予め合成されたペロブスカイト化合物を含む溶液を塗布する塗布法等の方法によっても形成され得る。
【0022】
光電変換層13の厚みとしては、形成材料等にもよるが、光の吸収率を大きくしつつ、生成する電荷の移動距離を小さくするために、100nm以上2000nm以下とすることが好ましい。
【0023】
第2電極層14は、第1電極層12と対をなす電極である。第2電極層14は、透明導電性酸化物によって形成されてもよいが、金属を含む導電性材料から形成されることが好ましい。具体的には、第2電極層14は、金属又は金属粒子をバインダで結合した組成物から形成され得る。このように、裏面側に金属により導電性を担保する第2電極層14を配置することによって、ペロブスカイト太陽電池セル10の集電抵抗を低減できる。また、金属を含む材料から形成される第2電極層14は、光電変換層13を透過した光を反射して光電変換層13に再度入射させることにより光電変換効率を向上できる。第2電極層14は、スパッタリング、めっき等の方法により金属を積層することによって、又は金属粒子を含む導電性組成物の塗工及び焼成によって形成することができる。
【0024】
第2電極層14の厚みの下限としては、5nmが好ましく、10nmがより好ましい。一方、第2電極層14の厚みの上限としては、200nmが好ましく、100nmがより好ましい。第2電極層14の厚みを前記下限以上とすることによって、集電抵抗を十分に小さくできる。また、第2電極層14の厚みを前記上限以下とすることによって、スリット15の形成が容易となる。
【0025】
スリット15は、光を吸収する層を除去するよう形成され、全波長域の光を透過することにより、太陽電池モジュール1の採光性(裏面側への光透過率)を向上する。また、多数の細いスリット15が平行に並んで形成されることによって、太陽電池モジュール1の裏面側の観者は個々のスリット15を意識せず、太陽電池モジュール1を通して外側の景色をより明確に視認できるようになる。
【0026】
スリット15の幅の下限としては、10μmが好ましく、100μmがより好ましい。一方、スリット15の幅の上限としては、10mmが好ましく、1mmがより好ましい。スリット15の幅を前記下限以上とすることによって、スリット15の幅の誤差に起因する光透過量のバラツキを相対的に小さくできるので、均等に採光できる。また、スリット15の幅を前記上限以下とすることによって、個々のスリット15が目立たないようにできる。スリット15のピッチとしては、得ようとする採光率に応じて適宜設計されるが、例えば100μm以上、1mm以下とされ得る。
【0027】
ペロブスカイト太陽電池セル10は、平面視でそれぞれ独立して電力を取り出す複数の領域、つまりサブセルに分割されていてもよい。また、ペロブスカイト太陽電池セル10は、電荷輸送層、反射防止層等のさらなる層を有する構成とされてもよい。
【0028】
配線材20は、ペロブスカイト太陽電池セル10間を接続し、複数のペロブスカイト太陽電池セル10から出力される電力を外部に導出する。配線材20としては、例えば金属箔、金属線、金属編組線等が用いられ得る。また、配線材20は、場所ごとに材質及び形状が異なってもよい。配線材20は、採光を阻害しないよう、ペロブスカイト太陽電池セル10に接続される部分を除いて、できるだけペロブスカイト太陽電池セル10と重ならないように配置される。つまり、配線材20は、主として平面視でペロブスカイト太陽電池セル10の外側に延在するよう配置される。
【0029】
表面保護部材30は、封止材70を介してペロブスカイト太陽電池セル10の表面を覆うことにより、ペロブスカイト太陽電池セル10を保護する。表面保護部材30は、板状又はシート状の材料から形成することができ、透光性、遮水性、耐傷性及び耐候性に優れることが好ましい。具体的には、表面保護部材30の材質としては、例えばアクリル樹脂若しくはポリカーボネート樹脂等の透明樹脂、ガラスなどを挙げることができる。また、表面保護部材30の表面は、光の反射を抑制するために、凹凸状に加工されたり、反射防止コーティング層で被覆されてもよい。
【0030】
裏面保護部材40は、封止材70を介して、ペロブスカイト太陽電池セル10の裏面を覆うことによって、ペロブスカイト太陽電池セル10を保護する。裏面保護部材40は、表面保護部材30と同様の板状の材料から形成することができる。
【0031】
表側着色材50は、黒色の材料からなり、平面視でペロブスカイト太陽電池セル10の外側を覆うよう配置される。表側着色材50は、配線材20等の美観を損ねる構成を表側から視認できないように覆い隠す。このため、表側着色材50は、ペロブスカイト太陽電池セル10の裏面側に光を透過する領域のみを開口するよう、ペロブスカイト太陽電池セル10の外縁部に重複して配設されることが好ましい。したがって、表側着色材50は、太陽電池モジュール1の外周部だけでなく、ペロブスカイト太陽電池セル10の間にも延在するよう設けられ得る。
【0032】
表側着色材50は、太陽電池モジュール1の外縁部を封止する部材と兼用されてもよく、遮光の機能のみを果たすために挿入されるシートであってもよく、表面保護部材30の裏面に形成される塗膜として構成されてもよい。表側着色材50の色(CIE1976)としては、L*、a*、b*の各値がそれぞれ10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
【0033】
裏側着色材60は、平面視でペロブスカイト太陽電池セル10の外側を覆うよう配置される。表側着色材50は、配線材20等の美観を損ねる構成を裏側から視認できないように覆い隠す。裏側着色材60は、平面視で表側着色材50と重複するよう同一形状に形成されることが好ましい。
【0034】
裏側着色材60は、太陽電池モジュール1の外縁部を封止する部材と兼用されてもよく、遮光の機能のみを果たすシートであってもよく、裏面保護部材40に形成される塗膜として構成されてもよい。裏側着色材60は、表側着色材50よりも明るい色を有する。つまり、裏側着色材60は、表側着色材50よりも明度L*(CIE1976)の値が大きい。これにより、太陽電池モジュール1の裏側の空間が表側の空間よりも暗い状態において、太陽電池モジュール1を裏側からみた場合に、表側の光を透過する太陽電池モジュール1と裏側着色材60の色差が小さくなり、太陽電池モジュール1と裏側着色材60の一体感が大きくなる。これにより、裏側着色材60の存在感が小さくなるため、複数の太陽電池モジュール1を通して見える景色の一体感が大きくなる。したがって、太陽電池モジュール1を窓に配設した場合に、室内の人が窓の有効面積を大きく感じるため、圧迫感や閉塞感を低減し、解放感を向上できる。
【0035】
表側着色材50と裏側着色材60の色差ΔE(CIE1976)の下限としては、30が好ましく、40がより好ましい。一方、表側着色材50と裏側着色材60の色差ΔEの上限としては、70が好ましく、60がより好ましい。表側着色材50と裏側着色材60の色差ΔEを前記下限以上とすることによって、表面側の空間が明るい場合の裏側着色材60の存在感を十分に小さくできる。また、表側着色材50と裏側着色材60の色差ΔEを前記上限以下とすることによって、つまり、裏側着色材60の明度及び彩度を大きくし過ぎないことによって、裏面側の空間が明るい場合の裏側着色材60が過度に目立たないようにできる。
【0036】
封止材70は、ペロブスカイト太陽電池セル10の受光側の面と表面保護部材30との間、ペロブスカイト太陽電池セル10の裏側の面と裏面保護部材40との間、及びペロブスカイト太陽電池セル10同士の隙間に充填される。封止材70は、ペロブスカイト太陽電池セル10と表面保護部材30及び裏面保護部材40とを接着すると共に、ペロブスカイト太陽電池セル10の周囲の隙間をなくすことで、ペロブスカイト太陽電池セル10に水分等が接触することを防止する。
【0037】
封止材70としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、又は、シリコーン樹脂等の透光性を有する樹脂が好適に用いられる。封止材70は、製造段階ではペロブスカイト太陽電池セル10の隙間に浸入する熱可塑性を有し、最終製品において熱可塑性を喪失するにより太陽電池モジュール1の温度が上昇しても形状を保持できる材料から形成されることが好ましい。つまり、封止材70は、熱可塑性樹脂を主体とし、この熱可塑性樹脂の軟化点よりも高い温度で活性化し、熱可塑性樹脂を架橋して硬化させる架橋剤を含有する樹脂組成物によって形成されることが好ましい。
【0038】
以上のように、本実施形態の太陽電池モジュール1は、透光性を有する複数のペロブスカイト太陽電池セル10と、黒色の表側着色材50と、表側着色材50よりも明るい色を有する裏側着色材60と、を備える。このため、太陽電池モジュール1を窓等に配設し、室内からより明るい屋外を見た場合に、ペロブスカイト太陽電池セル10とその周囲との一体感が大きく、複数のペロブスカイト太陽電池セル10を一体的に見せることができるので、室内の人に圧迫感や閉塞感を与えにくい。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 太陽電池モジュール
10 ペロブスカイト太陽電池セル
11 基材層
12 第1電極層
13 光電変換層
14 第2電極層
15 スリット
20 配線材
30 表面保護部材
40 裏面保護部材
50 表側着色材
60 裏側着色材
70 封止材
図1
図2
図3