(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128693
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】スポンジローラ
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20240913BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G03G15/00 551
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037828
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 優樹
【テーマコード(参考)】
2H033
2H171
【Fターム(参考)】
2H033AA23
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H171FA19
2H171FA24
2H171FA26
2H171FA27
2H171FA30
2H171GA20
2H171JA12
2H171QC36
2H171TA03
2H171TA15
2H171TA17
2H171UA03
2H171UA06
2H171UA07
2H171UA08
2H171UA10
2H171UA12
2H171UA19
2H171UA22
2H171VA02
2H171VA06
2H171XA02
(57)【要約】
【課題】耐久性の高いスポンジローラを提供する。
【解決手段】本発明は、軸体2と、軸体2の外周に設けられたシリコーンゴムスポンジ層4とを備えるスポンジローラ1であって、軸体2とシリコーンゴムスポンジ層4との間に、シリコーンゴムソリッド層3を備え、シリコーンゴムソリッド層3のTYPE A硬度が、40以上70以下であり、シリコーンゴムソリッド層3とシリコーンゴムスポンジ層4の間の破壊強度が、500N以上であるスポンジローラである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周に設けられたシリコーンゴムスポンジ層とを備えるスポンジローラであって、
前記軸体と前記シリコーンゴムスポンジ層との間に、シリコーンゴムソリッド層を備え、
前記シリコーンゴムソリッド層のTYPE A硬度が、40以上70以下であり、
前記シリコーンゴムソリッド層と前記シリコーンゴムスポンジ層の間の破壊強度が、500N以上あるスポンジローラ。
【請求項2】
前記シリコーンゴムソリッド層の厚みが、前記シリコーンゴムスポンジ層の厚みに対して、5%以上50%以下である請求項1記載のスポンジローラ。
【請求項3】
前記シリコーンゴムスポンジ層の平均セル径が、50μm以上200μm以下である請求項1記載のスポンジローラ。
【請求項4】
前記シリコーンゴムスポンジ層が、発泡剤として化学発泡剤及びマイクロバルーンの少なくとも一方を含む請求項1記載のスポンジローラ。
【請求項5】
最外層として、樹脂チューブを備える請求項1記載のスポンジローラ。
【請求項6】
前記スポンジローラが、加圧ローラである請求項1記載のスポンジローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポンジローラに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、軸体とその外周面に形成された弾性層とを有する、例えば、クリーニングローラ、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、二次転写ローラ、加圧ローラ、紙送り搬送ローラ、定着ローラ等の各種印刷用スポンジローラを備えている。
【0003】
これらのローラは、対向するローラに圧接されて使用されるため、その応力によって、軸体とスポンジゴム層との界面で、スポンジゴムが破壊されることがある。そこで、特許文献1には、芯金の外周に、非発泡シリコーンゴム層を被覆し、さらに、非発泡シリコーンゴム層の外周を、発泡シリコーンゴム層で被覆して2層被覆構造にした定着用ロールが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術でも、比較的高い圧力で当接した場合は、芯金とスポンジゴム間の接着が十分でなく、強い応力によってスポンジゴムが破壊される場合がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐久性の高いスポンジローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、軸体とスポンジゴム層との間に、所定の特性を有するソリッドゴム層を設けることにより、高圧縮条件でもスポンジゴム層が破壊されないことを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、軸体と、軸体の外周に設けられたシリコーンゴムスポンジ層とを備えるスポンジローラであって、軸体とシリコーンゴムスポンジ層との間に、シリコーンゴムソリッド層を備え、シリコーンゴムソリッド層のTYPE A硬度が、40以上70以下であり、シリコーンゴムソリッド層とシリコーンゴムスポンジ層の間の破壊強度が、500N以上であるスポンジローラである。
【0007】
シリコーンゴムソリッド層の厚みは、シリコーンゴムスポンジ層の厚みに対して、5%以上50%以下であることが好ましい。
【0008】
シリコーンゴムスポンジ層の平均セル径は、50μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0009】
シリコーンゴムスポンジ層は、発泡剤として化学発泡剤及びマイクロバルーンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0010】
最外層として、樹脂チューブを備えてもよい。
【0011】
スポンジローラは、加圧ローラであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐久性の高いスポンジローラを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のスポンジローラの一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】破壊試験で用いる破壊治具と、その破壊治具をスポンジローラに装着した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[スポンジローラ]
図1に示すように、本発明のスポンジローラ1は、軸体2と、軸体2の外周に設けられたシリコーンゴムスポンジ層4とを備えるスポンジローラであって、軸体2とシリコーンゴムスポンジ層4との間に、シリコーンゴムソリッド層3を備え、シリコーンゴムソリッド層3のTYPE A硬度が、40以上70以下であるスポンジローラであり、シリコーンゴムソリッド層3とシリコーンゴムスポンジ層4の間の破壊強度(以下、単に破壊強度という。)が、500N以上である。
以下、各構成の詳細を説明する。
【0015】
<軸体>
軸体2は、好ましくは、導電特性を有する、従来公知のスポンジローラに用いられる軸体を用いることができる。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、及び真鍮からなる群より選択される少なくとも1種の金属で構成されていることが好ましい。なお、このような軸体2は、一般に、「芯金」の名称でも知られている。
【0016】
軸体2は、絶縁性樹脂を含むものであってもよい。絶縁性樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体と、この芯体上に設けられたメッキ層と、を備えるものであってよい。このような軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体にメッキを施して導電化することにより得ることができる。
軸体2は、良好な導電特性を得るために、芯金であることが好ましい。
【0017】
軸体2の形状は、例えば、棒状、管状等であることが好ましい。軸体2の断面形状は、例えば、円形又は楕円形であってもよく、多角形等の非円形であってもよい。軸体2の外周面には、洗浄処理、脱脂処理、プライマー処理等の処理が施されていてもよい。
【0018】
軸体2の軸方向の長さは特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してもよい。また、軸体2の直径(外接円の直径)も特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整すればよい。
【0019】
<シリコーンゴムソリッド層>
本発明は、軸体2とシリコーンゴムスポンジ層4との間に、シリコーンゴムソリッド層3を備えることにより、使用によって、軸体2とシリコーンゴムスポンジ層4との間にかかる強い応力を緩和することができる。
シリコーンゴムソリッド層3は、シリコーンゴムソリッド層用組成物を硬化させて形成することができる。以下にシリコーンゴムソリッド層用組成物の成分について説明する。
【0020】
(A)ミラブル型シリコーンゴム組成物
ミラブル型シリコーンゴム組成物としては、付加硬化型のミラブル型シリコーンゴム組成物が好ましい。付加硬化型のミラブル型シリコーンゴム組成物は、例えば、少なくとも(a)オルガノポリシロキサン、(b)充填剤及び(c)導電性付与剤を含有するものが好ましい。
【0021】
(a)オルガノポリシロキサン
(a)オルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)で示される。
R1
nSiO(4-n)/2 …(1)
式(1)中、nは1.95以上2.05以下の正数を示す。また、R1は、同一又は異なっていてよい、置換又は非置換の一価の炭化水素基を示す。炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1以上12以下であり、より好ましくは1以上8以下である。
【0022】
R1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基及びトリル基等のアリール基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基等が挙げられる。また、R1は、これらの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基であってもよい。置換基は、例えばハロゲン原子、シアノ基等であってよい。置換基を有する炭化水素基としては、例えば、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0023】
(a)オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端が、トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基、ジメチルビニルシリル基等のジアルキルアラルキルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基等のジアルキルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等のトリアラルキルシリル基等で封鎖されていることが好ましい。
【0024】
(a)オルガノポリシロキサンは、分子中に2つ以上のアルケニル基を有することが好ましい。(a)オルガノポリシロキサンは、R1のうち0.001モル%以上5モル%以下(より好ましくは0.01モル%以上0.5モル%以下)のアルケニル基を有することが好ましい。(a)オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としてはビニル基が特に好ましい。
【0025】
(a)オルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することによって、又は、シロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンを開環重合することによって得ることができる。(a)オルガノポリシロキサンは、基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであってよく、一部分岐していてもよい。また、(a)オルガノポリシロキサンは、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。
【0026】
(a)オルガノポリシロキサンは、25℃における動粘度が100cSt以上であることが好ましく、100000cSt以上10000000cSt以下であることがより好ましい。
また、(a)オルガノポリシロキサンの重合度は、例えば100以上であることが好ましく、3000以上10000以下であることがより好ましい。
【0027】
(b)充填剤
(b)充填材としては、例えばシリカ系充填材が挙げられる。シリカ系充填材としては、例えば、煙霧質シリカ、沈降性シリカ等が挙げられる。
【0028】
シリカ系充填材としては、R2Si(OR3)3で示されるシランカップリング剤で表面処理された、表面処理シリカ系充填材を好適に用いることができる。ここで、R2は、ビニル基又はアミノ基を有する基であってよく、例えば、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N-フェニルアミノプロピル基、メルカプト基等であってよい。R3はアルキル基であってよく、例えばメチル基、エチル基等であってよい。シランカップリング剤は、例えば信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」、「KBE402」等として、容易に入手できる。表面処理シリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面をシランカップリング剤で処理することにより得ることができる。表面処理シリカ系充填材としては、市販品を用いてもよく、例えば、J.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が挙げられる。
【0029】
シリカ系充填材の配合量は、(a)オルガノポリシロキサン100質量部に対して11質量部以上39質量部以下であることが好ましく、15質量部以上35質量部以下であることがより好ましい。また、シリカ系充填材の平均粒子径は、1μm以上80μm以下であることが好ましく、2μm以上40μm以下であることがより好ましい。なお、シリカ系充填材の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定できる。
【0030】
(c)導電性付与剤
導電性付与剤としては、例えば、導電性カーボン、ゴム用カーボン類、金属、導電性ポリマー等を含む導電性粉末を挙げることができる。導電性粉末としては、カーボンブラックを用いることが好ましく、カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)等のファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等を挙げることができる。
シリコーンゴムスポンジ層の抵抗値は、4~9(logΩ)の範囲に調製されることが好ましい。
【0031】
シリコーンゴムソリッド層用組成物は、さらに、上記以外に、添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、例えば、助剤(鎖延長剤、架橋剤等)、触媒、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
【0032】
シリコーンゴムソリッド層3は、公知の成形方法によって、加熱硬化と成形とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。
シリコーンゴムソリッド層3の成形方法は、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、押出成形等を選択することができる。
シリコーンゴムソリッド層用組成物の硬化方法は、シリコーンゴムソリッド層用組成物の硬化(加硫)に必要な熱を加えられる方法であればよい。シリコーンゴムソリッド層用組成物を加硫させる際の加熱温度は、100℃以上500℃以下が好ましく、120℃以上300℃以下がより好ましい。加熱時間は数秒以上1時間以下が好ましく、10秒以上35分以下がより好ましい。また、必要に応じ、二次加硫してもよい。
【0033】
軸体2上に形成されたシリコーンゴムソリッド層3を研削、研磨等してもよい。
【0034】
(TYPE A硬度)
本発明のスポンジローラにおいては、シリコーンゴムソリッド層3のTYPE A硬度は、40以上70以下である。上記範囲であることにより、軸体2とシリコーンゴムスポンジ層4の間の硬度をもつため、軸体2とシリコーンゴムスポンジ層4との間にかかる強い応力を良好に緩和することができる。シリコーンゴムソリッド層のTYPE A硬度は、50以上60以下がより好ましい。
【0035】
(シリコーンゴムソリッド層の厚み)
シリコーンゴムソリッド層3の厚みは、シリコーンゴムスポンジ層4の厚みに対して、5%以上50%以下であることが好ましく、10%以上35%以下がより好ましい。シリコーンゴムソリッド層3の厚みが、上記範囲であることにより、シリコーンゴムスポンジ層4の破壊を良好に防止することができる。
【0036】
<シリコーンゴムスポンジ層>
シリコーンゴムスポンジ層4は、例えば、上記のミラブル型シリコーンゴム組成物に、更に、下記の(d)発泡剤及び(e)架橋剤を含有させたシリコーンゴムスポンジ層用組成物を硬化(加硫)させることにより形成することができる。
以下、(d)発泡剤及び(e)架橋剤の詳細について説明する。
【0037】
(d)発泡剤
発泡剤としては、化学発泡剤及び未膨張マイクロバルーンの少なくとも一方を用いることができる。
【0038】
(d1)化学発泡剤
化学発泡剤であれば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられる。また、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。有機アゾ化合物の中でも、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス-イソブチロニトリル等が好適に使用される。特に、アゾビス-イソブチロニトリルが好適に使用できる。
【0039】
(d2)未膨張マイクロバルーン
未膨張マイクロバルーンとして、樹脂マイクロバルーンを挙げることができる。樹脂マイクロバルーンとしては、外殻に熱可塑性樹脂を用いたものが好ましく用いられる。外殻を構成する熱可塑性樹脂としては、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート/アクリロニトリル共重合体、メタアクリロニトリル/アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。シリコーンゴムの硬化温度に合わせて、外殻となる樹脂の軟化温度が適当な範囲内にある樹脂マイクロバルーンを用いることが好ましい。また、内包される蒸発性物質としては、ブタン、イソブタン等の炭化水素を挙げることができる。
未膨張マイクロバルーンの平均粒子径は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上25μm以下であることがより好ましい。
【0040】
本発明に好適な未膨張マイクロバルーンは、「マツモトマイクロスフェアーFシリーズ」(松本油脂製薬株式会社製)、「エクスパンセルシリーズ」(エクスパンセル社製)等として市販されている。この発明に好適な未膨張樹脂マイクロバルーンは、シリコーンゴムスポンジ層を形成するのに使用される化学発泡剤の分解温度よりも高い温度で膨張する機能を有する樹脂マイクロバルーンから選択される。
【0041】
発泡剤の配合量は、シリコーンゴムスポンジ層用組成物100質量部に対しての低比重でありながら、大きさが均一なセルを得る観点から、0.5質量%以上6質量%以下であることが好ましい。
【0042】
(e)架橋剤
架橋剤としては、付加反応架橋剤、有機過酸化物架橋剤等を挙げることができる。
上記付加反応架橋剤として、例えば、一分子中に二個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適に挙げられる。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
付加反応架橋剤の配合量は、通常、シリコーンゴムスポンジ層用組成物100質量部に対して0.1質量部以上7質量部以下である。
【0043】
付加反応架橋剤を使用する場合、有機過酸化物架橋剤は、単独でミラブル型シリコーンゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すると、得られるトナー供給ローラの強度、歪み等の物性をより一層向上させることができる。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス-2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
有機過酸化物架橋剤の配合量は、通常、シリコーンゴムスポンジ層用組成物100質量部に対して0.1質量部以上7質量部以下である。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0044】
付加反応架橋剤は、付加反応触媒を併用するのが好ましい。付加反応触媒は白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができる。
【0045】
(その他の成分)
シリコーンゴムスポンジ層用組成物には、さらに、各種の添加剤が含有されてもよい。各種の添加剤として、例えば鎖延長剤等の助剤、触媒、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、シリカ系以外の充填材として、例えばガラスビーズ、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0046】
(シリコーンゴムスポンジ層のセル径)
シリコーンゴムスポンジ層4のセル径は、50μm以上200μm以下であることが好ましい。シリコーンゴムスポンジ層のセル径が上記範囲であることにより、トナーがセルの中に入り込むことがなく、シリコーンゴムスポンジ層4の表面からトナーが離脱しやすい。
【0047】
<破壊強度>
本発明では、シリコーンゴムソリッド層3とシリコーンゴムスポンジ層4の間の破壊強度が、500N以上である。破壊強度の上限については特に制限はないが、2000N以下が現実的である。したがって、破壊強度は、500N以上2000N以下であることが好ましく、1000N以上1500N以下であることがより好ましい。
【0048】
<その他の構成>
シリコーンゴムスポンジ層4の外周面に、樹脂チューブを設けてもよい。樹脂チューブの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、FEP(4フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ETFE(4フッ化エチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS、ポリウレタン等を用いることができる。これらのなかでも、PFAが好ましい。
樹脂チューブは、樹脂組成物を溶融押出法等により作製することができる。樹脂チューブは、公知の加圧挿入法、減圧挿入法によって装着することができる。
【0049】
本発明のスポンジローラは、シリコーンゴムソリッド層を有することにより、軸体-シリコーンゴムスポンジ層界面に集中していた応力が緩和されるため、ゴム層が破壊しにくくなり、高い耐久性を有すると考えられる。
【0050】
[スポンジローラの製造方法]
次に、スポンジローラの製造方法について説明する。
まず、上記シリコーンゴムソリッド層用組成物を調製する。シリコーンゴムソリッド層用組成物の成分を混合する方法は特に限定されず、例えば、常温常圧下で、ミラブル型シリコーンゴム組成物、ビニル基含有シリコーン生ゴムを順次、又は一挙に投入して攪拌機、混練器等で均一に混合させる方法等が挙げられる。
【0051】
シリコーンゴムソリッド層用組成物は、二本ロール、三本ロール、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練機等を用いて、均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分以上1時間以下にわたって常温又は加熱下で混練することにより得ることができる。
【0052】
次に、シリコーンゴムソリッド層用組成物を、スポンジローラを構成するための軸体の外周面に、押出成形による連続加熱成形等によって円柱状に形成した後に、円柱状の成形体を軸体ごと加熱して加硫する(一次加硫)。
【0053】
一次加硫として、100℃から300℃、特に150℃から250℃で5分から30分間加熱することが好ましい。
【0054】
次に、シリコーンゴムスポンジ層用組成物を、シリコーンゴムソリッド層用組成物と同様に調製する。そして、二次押出成形により、シリコーンゴムソリッド層の外周に、シリコーンゴムスポンジ層を形成し、二次加硫として180℃から250℃、特に200℃から230℃で、1時間から10時間加熱することが好ましい。
【0055】
さらに、三次加硫として、180℃から250℃、特に200℃から230℃で、1時間から10時間加熱することが好ましい。
【0056】
このように複数の回数をもって加熱すると、化学発泡剤の分解、ミラブル型シリコーンゴムの硬化、残留する低分子シロキサンの排除、を必要に応じてコントロールすることが可能となり好ましい。
加硫するために必要な加熱は、赤外線加熱炉又は熱風炉等の加熱炉、乾燥機等の加熱機等で行うことができる。
【0057】
このようにして得られるシリコーンゴムソリッド層を、更に研磨工程に供してもよい。
また、最外層として、シリコーンゴムスポンジ層の外周に樹脂チューブを設けてもよい。
【0058】
本発明のスポンジローラは、画像形成装置の、例えば定着装置の加圧ローラ、転写ローラ等として組み込むことができ、耐久性を有するため、安定した電気特定を有し、高品質な画像を提供に寄与する。
【実施例0059】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
[実施例1]
以下の手順により、実施例1のスポンジローラを作製した。
(プライマー層の形成)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM23製、直径10mm、長さ274.2mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の外周面にプライマー層を形成した。
【0061】
(シリコーンゴムソリッド層の形成)
以下のシリコーンゴムソリッド層用組成物を調製した。
-シリコーンゴムソリッド層用組成物-
・KE551-U(ミラブル型シリコーンゴム、信越化学工業株式会社製)
100質量部
・C-25A(触媒、信越化学工業株式会社製) 0.5質量部
・C-25B(加硫剤、信越化学工業株式会社製) 2.0質量部
【0062】
上記シリコーンゴムソリッド層用組成物を用いて、押出成形により、プライマー層が形成された軸体の外周面上にシリコーンゴムソリッド層を成形した(一次押出)。なお、押出成形では、上記組成物を、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて200℃で10分間加熱した(一次加硫)。これにより、プライマー処理された軸体の外周面上にシリコーンゴムからなるシリコーンゴムソリッド層を形成した。シリコーンゴムソリッド層の厚さは、0.5mmであった。
【0063】
(シリコーンゴムスポンジ層の形成)
以下のシリコーンゴムスポンジ層用組成物を調製した。
-シリコーンゴムスポンジ層用組成物-
・KE-571―U(シリコーン生ゴム、信越化学工業株式会社製)
100質量部
・C-3(架橋剤、信越化学工業株式会社製) 3質量部
・KE-COLOR-BR(着色剤、信越化学工業株式会社社製)
0.5質量部
・AIBN(化学発泡剤、大塚化学株式会社製) 0.5質量部
・マツモトマイクロスフェアー(未膨張マイクロバルーン、松本油脂製薬株式会社製)
2.0質量部
【0064】
上記シリコーンゴムスポンジ層用組成物を用いて、押出成形により、シリコーンゴムソリッド層の外周面上にシリコーンゴムスポンジ層を成形した(二次押出)。なお、押出成形では、上記組成物を、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて200℃で25分間加熱し、更に、ギヤオーブンを用いて200℃4時間熱して硬化させた(二次加硫)。これにより、シリコーンゴムソリッド層の外周面上にシリコーンゴムスポンジ層を形成した。シリコーンゴムスポンジ層の厚さは、3.0mmであった。
【0065】
[実施例2]
シリコーンゴムソリッド層の厚み、シリコーンゴムソリッド層のTYPE A硬度、及びシリコーンゴムスポンジ層の平均セル径を表1のようにしたこと以外は、実施例1と同様にスポンジローラを作製した。
【0066】
[実施例3]
シリコーンゴムソリッド層の厚み、シリコーンゴムソリッド層のTYPE A硬度、及びシリコーンゴムスポンジ層の平均セル径を表1のようにしたこと以外は、実施例1と同様にスポンジローラを作製した。
【0067】
[比較例1]
軸体の外周面上に、シリコーンゴムソリッド層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にスポンジローラを作製した。
【0068】
[評価]
上記実施例及び比較例のスポンジローラについて、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0069】
(シリコーンゴムソリッド層のTYPE A硬度)
シリコーンゴムソリッド層のTYPE A硬度は、JIS K6253に従い、タイプAデュロメータにより、測定した。
【0070】
(シリコーンゴムスポンジ層のセル径)
平均セル径は、ウレタンフォーム・エラストマー用試験機「PORE!SCAN」(商品名、Goldlucke GmbH社製)により、測定した。
【0071】
(破壊試験)
実施例及び比較例のスポンジローラについて、以下の方法で破壊試験を行った。
図2に、破壊試験で用いる破壊治具と、その破壊治具をスポンジローラに装着した状態を示す。
(1)スポンジローラ1のゴム層を、軸方向の一端から10mm残すように、その内側を10mm以上の幅で切除する。
(2)軸体2の径に対して+1~2mmの内径を有する円筒状の金属の破壊治具10を準備する。
(3)スポンジローラ1を垂直に配置し、他端をチャック固定する。
(4)破壊治具10を、スポンジローラ1の一端から挿入し、速度50mm/minで他端に向かって下降させ、軸体2とゴム層が破壊されるまでの強度(破壊強度)を測定した。
ここで、実施例では、シリコーンゴムソリッド層とシリコーンゴムスポンジ層を有するため、ゴム層とは、これらを含めたものを示し、比較例は、シリコーンゴムスポンジ層を示す。
【0072】
(耐久試験)
実施例及び比較例のスポンジローラについて、耐久試験を実施した。試験に用いる耐久性試験装置70を
図3に示す。具体的には、耐久性試験装置70は、筐体内部の下面に固定され、内部ヒータ72を備えた加熱ローラ71と、この加熱ローラ71の軸方向に沿って、その両側に設けられた保温材73と、加熱ローラ71と対向するように、筐体内部の上面に上下動可能に設けられた試験ローラ装着部74と、試験ローラ装着部74を上下に移動可能な押圧力調整手段75、例えば、押圧調整用マイクロメータとを備えている。なお、加熱ローラ71として、直径20mmの金属(ステンレス鋼、SUS304)製ローラを用いた。
【0073】
図3に示すように、実施例及び比較例で作製したスポンジローラを、試験ローラ装着部74のベアリングに装着した(
図3では、スポンジローラ76として示す)。押圧力調整手段75を操作して、装着したスポンジローラ76を加熱ローラ71に圧接し、加熱ローラ71とスポンジローラ76との圧接部においてスポンジローラ76における発泡弾性層が内部に1.2mm凹陥するようにスポンジローラ76を固定した(すなわち、スポンジローラ76の半径と加熱ローラ71との半径の和よりも1.2mm短くなるように、スポンジローラ76の中心軸と加熱ローラ71の中心軸との距離dを調節した。)。
次いで、内部ヒータ72を起動し、加熱ローラ71の表面温度を200℃に調節した。その後、試験ローラ装着部74に装備された駆動手段(図示しない。)により、回転速度180rpmで1000時間にわたって回転駆動させた。
【0074】
1000時間までシリコーンゴムソリッド層又はシリコーンゴムスポンジ層の破壊がなかった場合は○、1000時間持たずに破壊があった場合を×とした。
【0075】
【0076】
実施例1、2及び3は、1000時間までシリコーンゴムソリッド層又はシリコーンゴムスポンジ層の破壊がなかった。一方、比較例では、1000時間持たずに破壊が起こった。