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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128695
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】遠隔制御装置及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/042 20060101AFI20240913BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G05B19/042
H04Q9/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037832
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】松山 拓紀
(72)【発明者】
【氏名】大西 直哉
(72)【発明者】
【氏名】平野 竜馬
【テーマコード(参考)】
5H220
5K048
【Fターム(参考)】
5H220AA01
5H220AA04
5H220BB09
5H220CC08
5H220CX01
5H220JJ12
5H220JJ38
5K048AA06
5K048BA21
5K048BA34
5K048EB10
5K048EB11
5K048EB13
5K048FC01
5K048FC03
5K048HA01
5K048HA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】制御演算の周期性を守り、制御プログラムを実行することができる制御装置及び遠隔制御装置を提供する。
【解決手段】一つの実施形態によれば、遠隔制御装置は、制御対象設備の制御演算を行う制御装置から、前記制御演算の移行に関する移行開始通知と、前記制御対象設備のセンサのデータ及び前記制御演算の演算途中の制御情報を含む受信値とを受信する通信部を備える。さらに前記遠隔制御装置は、前記移行開始通知の受信後、前記センサのデータ及び前記演算途中の制御情報に基づいて、前記制御演算の制御プログラムを実行する制御プログラム実行部を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象設備の制御演算を行う制御装置から、前記制御演算の移行に関する移行開始通知と、前記制御対象設備のセンサのデータ及び前記制御演算の演算途中の制御情報を含む受信値とを受信する通信部と、
前記移行開始通知の受信後、前記センサのデータ及び前記演算途中の制御情報に基づいて、前記制御演算の制御プログラムを実行する制御プログラム実行部とを備える、
遠隔制御装置。
【請求項2】
前記制御プログラム実行部は、前記演算途中の制御情報を前記制御プログラムの内部情報として反映させ、前記センサのデータを用いて前記制御プログラムを実行する、請求項1に記載の遠隔制御装置。
【請求項3】
制御対象設備の制御演算を遠隔で行う遠隔制御装置から、前記制御演算の結果及び前記制御演算の演算途中の制御情報を含む受信値を受信する通信部と、
前記受信値を一定時間内に受信しない場合に、前記制御演算の制御プログラムの開始に関する制御開始通知を行う制御切り替え判定部と、
前記制御開始通知の受信後、前記演算途中の制御情報に基づいて、前記制御プログラムを実行する制御プログラム実行部とを備える、
制御装置。
【請求項4】
前記制御プログラム実行部は、前記演算途中の制御情報を前記制御プログラムの内部情報として反映させ、制御対象設備のセンサのデータを用いて前記制御プログラムを実行する、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御切り替え判定部は、前記遠隔制御装置からの前記受信値の格納を停止する受信値格納停止通知をさらに行い、
前記通信部は、前記受信値格納停止通知の受信後、前記受信値の格納を停止する、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御切り替え判定部は、前記制御演算の移行に関する移行開始通知をさらに行い、
前記受信値の受信回数に基づいて、前記制御装置の制御を停止する制御停止通知を行う、
請求項3に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、遠隔制御装置及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PLC(Programable Logic Controller)等の制御装置は、工場等に設置され、センサから収集したデータ等を用いて、制御対象設備を動作させるための制御演算を実行している。また、制御演算を周期的に実行するための制御プログラムについても、現場の制御対象装置内に記憶され、制御装置、センサ及び制御対象機器等、構成機器のすべてが現場で管理されている。
【0003】
近年、制御装置が行っている制御演算について、広域ネットワークを介して遠隔に設置された遠隔制御装置で実行する制御システムの構築が検討されてきた。この制御システムでは、遠隔制御装置内にも制御プログラムが記憶され、遠隔制御装置で制御演算を実行する。遠隔で制御演算を実施できるよう構築することで、リソースを遠隔制御装置に割り当てて負荷分散することができ、また、システムの冗長化としての観点からも有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第593767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
同一の制御装置内で、更新前の制御プログラムから更新後の制御プログラムに切り替えを行う技術がある。この技術では、制御プログラムを切り替える際に、制御装置は、切り替え信号を出力し、周期プログラムの実行が完了した後に、制御プログラムの切り替えを行う。
【0006】
しかし、この技術では、現場の制御装置と、遠隔制御装置との間の制御プログラムの切替は考慮されていない。例えば、広域ネットワークの通信障害により、切り替え信号が到着しなかった場合や、遠隔制御装置の制御演算結果が制御装置で受信できなくなった場合、制御対象設備の制御をリアルタイムに制御できない可能性がある。
【0007】
そこで、本発明の実施形態は、制御演算の周期性を守り、制御プログラムを実行することができる制御装置及び遠隔制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの実施形態によれば、遠隔制御装置は、制御対象設備の制御演算を行う制御装置から、前記制御演算の移行に関する移行開始通知と、前記制御対象設備のセンサのデータ及び前記制御演算の演算途中の制御情報を含む受信値とを受信する通信部を備える。さらに前記遠隔制御装置は、前記移行開始通知の受信後、前記センサのデータ及び前記演算途中の制御情報に基づいて、前記制御演算の制御プログラムを実行する制御プログラム実行部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態における制御システムの全体構成図の例である。
図2】第1実施形態における制御システムの各ブロック図の例である。
図3】第1実施形態における制御システムの別の例の各ブロック図である。
図4】第1実施形態における遠隔制御装置立ち上げ前の処理シーケンスの例を示す図である。
図5】第1実施形態における遠隔制御装置と制御装置との間の制御移行時の処理シーケンスの例を示す図である。
図6】第1実施形態における遠隔制御装置及び制御装置の通常時の処理シーケンスのタイミングチャートである。
図7】第1実施形態における遠隔制御装置と制御装置との間の通常時の処理シーケンスの例を示す図である。
図8】第2実施形態における遠隔制御装置と制御装置との間の通常時の処理シーケンスの例を示す図である。
図9】第2実施形態における遠隔制御装置と制御装置との間の制御移行時の処理シーケンスの例を示す図である。
図10】第3実施形態における遠隔制御装置と制御装置との間の制御移行時の処理シーケンスの例を示す図である。
図11】第3実施形態における制御装置が受信値を格納開始する際の処理シーケンスの例を示す図である。
図12】第3実施形態における遠隔制御装置と制御装置との間の制御移行時の処理シーケンスの別の例を示す図である。
図13】第4実施形態における遠隔制御装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的又は概念的なものであり、各部分の比率等は、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における制御システムの全体構成図の例である。
【0012】
制御システム100は、遠隔制御装置1、広域ネットワーク2、制御装置3、センサ4、アクチュエータ5及びHMI(Human machine Interface)40を備える。
【0013】
遠隔制御装置1と、制御装置3とは、広域ネットワーク2を介して通信可能である。
【0014】
遠隔制御装置1は、例えば、工場から離れた管理所に設置される。また、遠隔制御装置1は、管理所の他、クラウド上に設置されてもよい。遠隔制御装置1が立ち上がった後は、遠隔制御装置1は、制御装置3から、広域ネットワーク2を介してセンサ4のデータを受信し、制御対象設備(不図示)を制御するための制御演算を実行する。制御演算の結果は、広域ネットワーク2を介して制御装置3に送信される。
【0015】
制御装置3は、例えば、工場等のプラントに設置される。制御装置3は、遠隔制御装置1の立ち上がる前、装置内で制御演算を実施し、この結果に基づいてアクチュエータ5を制御する制御信号を生成する。また、制御装置3は、遠隔制御装置1によって制御演算が行われる場合、遠隔制御装置1から受信した制御演算の結果に基づいて、アクチュエータ5を制御する制御信号を生成する。制御信号によってアクチュエータ5が駆動し、制御対象設備を動作させる。
【0016】
広域ネットワーク2は、光回線またはメタル回線等の有線回線の他、4G(4th Generation)回線、5G(5th Generation)回線、多重無線回線または衛星回線等の無線回線によって構築される。各ネットワーク20、21におけるルータ等のネットワーク設備の記載については省略する。広域ネットワーク2は、専用線として構築されてもよく、インターネット等の公衆回線を用いて構築されてもよい。また、広域ネットワーク2は、WAN(Wide Area Network)ではなく、LAN(Local Area Network)として構成されてもよい。
【0017】
図1では、制御システム100は、1台の遠隔制御装置1に対して、複数の制御装置3が広域ネットワーク2を介して接続されており、制御装置3ごとに、異なる制御対象設備を制御している。本実施形態では、制御装置3が2台接続された例を用いて説明する。説明のため、2台の制御装置3のうち1台を制御装置Aとし、もう1台を制御装置Bとして扱う。また、制御装置A及びBには、それぞれセンサ4及びアクチュエータ5が接続される。
【0018】
制御システム100のユーザは、HMI40を介して、遠隔制御装置1や制御装置3の状態を監視する。また、これらの装置を動作させるためのユーザプログラムについては、HMI40を通じてダウンロードすることができる。この図では、HMI40は、遠隔制御装置1に接続し、制御システム100を一元的に監視する例を示しているが、HMI40は、制御装置3に接続する構成としてもよい。
【0019】
図2は、第1実施形態における制御システムの各ブロック図の例である。
【0020】
図2では、遠隔制御装置1、制御装置A及びBのブロック図について説明する。また、制御装置AとBとは、同様のブロック図であるため、制御装置3として説明する。
【0021】
遠隔制御装置1は、通信部11、制御プログラム実行部12及び制御用メモリ13を備える。また、遠隔制御装置1は、例えばPC(Personal Computer)に遠隔制御装置1用のプログラムをインストールすることで実現できる。遠隔制御装置1内のCPU(Central Processing Unit)が、遠隔制御装置1のプログラムを実行することにより、通信部11、制御プログラム実行部12及び制御用メモリ13の機能が実現される。制御用メモリ13、例えば、RAM(Random Access Memory)上に構築される。また、遠隔制御装置1は、PCにVM(Virtual Machine)として実装されてもよい。
【0022】
通信部11は、遠隔制御装置1が立ち上がった後、広域ネットワーク2を介して、後述する制御装置3の通信部31と通信を行う。制御装置3への制御演算の結果の送信や、制御装置3からのセンサ4のデータの受信は、通信部11を介して行う。
【0023】
制御プログラム実行部12は、制御対象設備を制御するための制御演算を実行する。
【0024】
制御用メモリ13は、センサ4のデータ、制御演算の結果及び演算途中の制御情報を格納する。制御プログラム実行部12は、制御用メモリ13に格納されたセンサ4のデータを読み出し、制御演算を実行する。
【0025】
制御プログラム実行部12によって算出された制御演算の結果は、制御用メモリ13に格納され、通信部11を介して制御装置3に送信される。
【0026】
演算途中の制御情報とは、例えば、制御演算で用いられる変数の値である。演算途中の制御情報は、より具体的には、センサ4のデータや過去に算出した制御演算の結果が閾値を超えた回数、または過去の制御演算で使用した値等であり、制御演算の結果を出力するために必要な途中の情報が該当する。以下、演算途中の制御情報のことを単に制御情報とも呼ぶ。
【0027】
制御装置3は、通信部31、制御プログラム実行部32、制御用メモリ33及び制御切り替え判定部34を備える。また、制御装置3は、例えばPC(Personal Computer)に制御装置3用のプログラムをインストールすることで実現できる。制御装置3内のCPU(Central Processing Unit)が、制御装置3のプログラムを実行することにより、通信部31、制御プログラム実行部32、制御用メモリ33及び制御切り替え判定部34の機能が実現される。制御用メモリ13、例えば、メモリ等のRAM(Random Access Memory)上に構築される。また、制御装置3は、PLCとして実装されてもよい。
【0028】
通信部31は、遠隔制御装置1が立ち上がった後、広域ネットワーク2を介して、通信部11と通信を行う。遠隔制御装置1に送信するセンサ4のデータや、遠隔制御装置1から受信する制御演算の結果は、通信部31を介して送受信を行う。
【0029】
制御プログラム実行部32は、遠隔制御装置1が立ち上がる前、制御プログラム実行部32で制御対象設備を制御するための制御演算を実行する。
【0030】
制御用メモリ33は、遠隔制御装置1が立ち上がる前、センサ4のデータに加え、制御装置3によって算出された制御演算の結果及び演算途中の制御情報を格納する。
【0031】
また、制御用メモリ33は、遠隔制御装置1が立ち上がった後、センサ4のデータに加え、遠隔制御装置1によって算出された制御演算の結果及び演算途中の制御情報を受信し、格納する。
【0032】
制御装置3で制御演算が実行される場合、制御プログラム実行部32は、入力値として、制御用メモリ33に格納されたセンサ4のデータを読み出し、制御演算を実行する。
【0033】
また、制御装置3で制御演算が実行される場合、制御演算の結果は、制御用メモリ33に格納された後、通信部31によって、制御信号としてアクチュエータ5に送信される。
【0034】
制御切り替え判定部34は、遠隔制御装置1の立ち上げに伴って、制御演算を切り替える判定を行う。例えば、制御切り替え判定部34によって、制御演算を制御装置3から遠隔制御装置1へ切り替える判定がなされた場合、制御演算は、切り替え処理の後、遠隔制御装置1の制御プログラム実行部12で実行される。
【0035】
図3は、第1実施形態における制御システムの別の例の各ブロック図である。
【0036】
図3は、1台の物理上のPC50の中で仮想の遠隔制御装置1が複数台動作している例である。この例では、1台の物理上のPC50のCPU、メモリ等のリソースを2台の仮想の遠隔制御装置1が共有している。この例では、制御装置Aの制御演算を実行する遠隔制御装置1を遠隔制御装置Aと呼び、制御装置Bの制御演算を実行する遠隔制御装置1を遠隔制御装置Bと呼ぶ。このように、遠隔制御装置1は、それぞれの制御装置3を動作させる個別のVMとして実装されてもよい。また、制御システム100の各装置が扱う変数等のデータは、例えばリングバッファに格納し、各装置間で共有してもよい。これにより、制御システム100は、各装置でメモリの使用量の増加を抑えることができる。以下、制御装置3から遠隔制御装置1への切り替え動作を説明するため、1台の遠隔制御装置1と1台の制御装置3との間の切り替えについて説明する。
【0037】
図4は、第1実施形態における遠隔制御装置立ち上げ前の処理シーケンスの例を示す図である。
【0038】
図4は、例えば、遠隔制御装置1の立ち上げ前の状態の処理シーケンスを示している。遠隔制御装置1の立ち上げ前、制御演算は、現場の制御装置3によって実行される。遠隔制御装置1の立ち上げ前、各処理T1及びT6はこの順で、それぞれ独立して実施される。また、T1及びT6は、T1周期タイマ及びT6周期タイマによって、周期的に実施される。
【0039】
T1は、制御装置3と、センサ4及びアクチュエータ5との間の通信処理である。通信部31は、センサ4のデータを受信し、入力値として制御用メモリ33に格納する。また、通信部31は、制御演算の結果をアクチュエータ5に対する出力値として制御用メモリ33から読み出して、アクチュエータ5に送信する。
【0040】
T6は、制御装置3で制御プログラムを実行する処理である。具体的には、制御プログラム実行部32は、制御用メモリ33から、センサ4のデータを読み出し、制御演算を実行する。また、制御プログラム実行部32は、制御演算の結果に加えて、演算途中の制御情報を制御用メモリ33に格納する。
【0041】
本実施形態における制御プログラム実行部32は、遠隔制御装置1が立ち上がった後、遠隔制御装置1で制御演算を実行できるように、制御装置3によって算出された演算途中の制御情報を格納する。
【0042】
図5は、第1実施形態における遠隔制御装置と制御装置との間の制御移行時の処理シーケンスの例を示す図である。
【0043】
ここでは、遠隔制御装置1が立ち上がった後、制御装置3で実行していた制御演算を止めることなく、制御プログラムの実行場所を制御装置3から遠隔制御装置1に移行させる処理T7の例について説明する。
【0044】
一方で、遠隔制御装置1及び制御装置3は、周期的な通信を行っている。制御装置3は、周期的な通信で互いの装置の間の疎通確認が取れたことによって、遠隔制御装置1の立ち上がりを確認する。また、各装置は、互いの装置間を結ぶ広域ネットワーク2の通信障害についても、この周期的な通信によって疎通確認が取れた場合、復旧を確認する。また、互いの装置の間の周期的な通信は、例えばPING(Packet InterNet Groper)といった一般的な疎通確認方法によって実施してもよい。
【0045】
T7では、まず制御切り替え判定部34は、通信部31に制御演算を移行するための移行開始通知を行い、制御プログラム実行部32に制御演算を停止するための制御停止通知を行う。移行開始通知を受信した通信部31は、入力値及び移行開始通知の送信と、受信値格納開始とT2周期タイマ開始とを実行する。
【0046】
入力値及び移行開始送信では、通信部31は、制御用メモリ33のセンサ4のデータ及び演算途中の制御情報を入力値として読み出して、通信部11に送信する。また、通信部31は、入力値の送信の際に、移行開始通知を併せて送信する。この移行開始通知は、入力値と別の送信データとして送信してもよく、また入力値の送信データの中に、例えば識別ヘッダとして付与することで、同一の送信データとして送信してもよい。
【0047】
受信値格納開始では、通信部31は、遠隔制御装置1が制御演算を開始した後、制御演算の結果及び演算途中の制御情報を受信し、これらのデータを受信値として制御用メモリ33に格納する処理を開始する。
【0048】
T2周期タイマ開始では、制御装置3は、制御装置3から遠隔制御装置1へ周期的に制御用メモリ33の内容を遠隔制御装置1に送信する処理T2を開始するため、T2周期タイマを開始する。処理T2の詳細については後述する。
【0049】
また、制御停止通知を受信した制御プログラム実行部32は、遠隔制御装置1から受信する制御演算の結果と、制御プログラム実行部32で実行した制御演算の結果と混同を防止するため、T6周期タイマを停止する。
【0050】
制御装置3から入力値及び移行開始通知を受信した遠隔制御装置1の通信部11は、受信値格納、制御開始通知及びT4周期タイマ開始を行う。
【0051】
受信値格納では、通信部11は、通信部31から受信したセンサ4のデータ及び演算途中の制御情報を受信値として制御用メモリ13に格納する。制御開始通知では、通信部11は、制御プログラム実行部12に、制御演算を開始するための制御開始通知を行う。T4周期タイマ開始では、制御装置3は、周期的に制御装置3へ送信を繰り返す処理T4を開始するため、T4周期タイマを開始する。処理T4の詳細については後述する。
【0052】
また、制御開始通知を受信した制御プログラム実行部12は、制御情報反映、制御演算及びT3周期タイマ開始を行う。
【0053】
制御情報反映では、制御プログラム実行部12は、制御用メモリ13から演算途中の制御情報を読み出して、プログラムの内部情報として反映させる。制御演算では、制御プログラム実行部12は、制御用メモリ13からセンサ4のデータを読み出して、このデータを用いて制御演算を実行し、その結果を制御用メモリ13に格納する。T3周期タイマ開始では、制御装置3は、周期的に遠隔制御装置1で制御演算を実行するT3周期タイマを開始する。処理T3の詳細については後述する。
【0054】
上述の処理シーケンスによって、T1及びT6が実行されている状態から、T7によって、T1~T4がこの順で、それぞれ独立して実行される状態に遷移する。また、T1~T4は、それぞれT1~T4周期タイマによって、周期的に実施される。
【0055】
図6は、第1実施形態における遠隔制御装置及び制御装置の通常時の処理シーケンスのタイミングチャートである。
【0056】
通常時は、T1~T4がこの順で周期的に繰り返されることで処理シーケンスが実行され、遠隔での制御演算が実現される。また、本実施形態では、各T1~T4が実行され、次の周期で再び各処理T1~T4が実行されるまでの時間間隔のことを周期時間と呼ぶ。図6では、各処理T1~T4の周期時間をそれぞれt1~t4で表している。また、この例では、処理T1~T4を毎回の周期で順番通りに実行するため、t1~t4は同一の値として設定される。また、これらの周期時間は、周期タイマT1~T4によって実行開始時間が管理される。
【0057】
図7は、第1実施形態における遠隔制御装置と制御装置との間の通常時の処理シーケンスの例を示す図である。
【0058】
T1は、上述と同様の処理であるため、説明を省略する。T2は、制御装置3の制御用メモリ33の内容を遠隔制御装置1に送信する処理である。制御装置3の通信部31は、制御用メモリ33からセンサ4のデータを入力値として読み出して、遠隔制御装置1に送信する。また、センサ4のデータを受信した遠隔制御装置1の通信部11は、制御用メモリ13に、受信値としてその値を格納する。なお、T2では、制御装置3は制御演算を行っていないため、制御装置3の通信部31は演算途中の制御情報を遠隔制御装置1に送信しない。そのため、T2では、演算途中の制御情報は、遠隔制御装置1の通信部11の受信値に含まれていない。
【0059】
T3は、遠隔制御装置1で制御プログラムを実行する処理である。制御プログラム実行部12は、制御用メモリ13からセンサ4のデータを読み出して、制御演算を実行する。遠隔制御装置1は、実行された制御演算の結果や演算途中の制御情報を制御用メモリ13に格納する。
【0060】
T4は、遠隔制御装置1の制御用メモリ13に格納されたデータを制御装置3に送信するための処理である。遠隔制御装置1の通信部11は、制御用メモリ13から、制御演算の結果及び演算途中の制御情報を読み出して、出力値として制御装置3に送信する。制御装置3の通信部31は、制御演算の結果及び演算途中の制御情報を受信し、これらの値を受信値として制御用メモリ33に格納する。
【0061】
また、広域ネットワーク2の通信障害の発生により、制御装置3で制御演算を行っている場合、制御システム100は、通信障害復旧後、制御演算を遠隔制御装置1で実施する際も同様の処理シーケンスによって制御プログラムの実行場所を移行することができる。
【0062】
本実施形態によれば、制御システム100は、T1及びT6が実行される状態、つまり制御装置3によって制御演算が実行される状態から、T1~T4が実行される状態、つまり遠隔制御装置1によって制御演算が実行される状態に遷移することができる。これにより、制御システム100は、現場の制御装置3から遠隔制御装置1に制御プログラムの実行場所を移行することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、制御装置3は、演算途中の制御情報を制御用メモリ33に格納し、通信部31を介して遠隔制御装置1に送信する。また、遠隔制御装置1は、この値を制御装置3から受信し、制御用メモリ13に格納する。遠隔制御装置1は、制御プログラムの実行を開始する際に、この値を読み出すことで、制御演算に過去のデータを反映することができる。これにより、遠隔制御装置1は、制御装置3と疎通確認が取れた場合や、広域ネットワーク2の通信障害の復旧後、遠隔で制御演算を実行する場合に、遠隔制御装置1と制御装置3との間でデータが欠落することなく、制御演算を遠隔で連続的に実行することができる。
【0064】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態における遠隔制御装置と制御装置との間の通常時の処理シーケンスの例を示す図である。
【0065】
T1~T3は、第1実施形態と同一の処理であるため、説明を省略する。
【0066】
T4では、遠隔制御装置1の通信部11は、制御用メモリ13から、制御演算の結果及び演算途中の制御情報を読み出して、出力値として制御装置3に送信する。制御装置3の通信部31は、制御演算の結果及び演算途中の制御情報を受信し、これらの値を受信値として制御用メモリ33に格納する。また、通信部31は、制御切り替え判定部34に受信値の受信時刻を通知する。制御切り替え判定部34は、通信部31から受信時刻を通知された場合、受信タイマを更新する。
【0067】
本実施形態では、第1実施形態と比較して、制御切り替え判定部34は、受信値の受信時刻に基づいて受信タイマを更新する点で異なっている。
【0068】
図9は、第2実施形態における遠隔制御装置と制御装置との間の制御移行時の処理シーケンスの例を示す図である。
【0069】
図9の処理シーケンスは、図8で説明した処理シーケンスの続きであり、広域ネットワーク2に通信障害が発生した場合等にこの処理シーケンスが実行される。
【0070】
T5は、制御プログラムの実行場所を遠隔制御装置1から制御装置3へ移行する処理である。制御切り替え判定部34は、遠隔制御装置1から制御演算の結果及び演算途中の制御情報を受信できたか否かを、受信タイマにより監視する。図8の処理シーケンスで説明した通り、通信部31は、遠隔制御装置1より、制御演算の結果及び演算途中の制御情報を受信した後、制御切り替え判定部34に受信時刻を通知(T4参照)する。通常時の処理シーケンスが実行されている間、制御切り替え判定部34における受信タイマは、T4で受信値を受信する度に受信時刻を更新する。最後に更新された受信時刻から、一定時間を超えても受信時刻が更新されない場合タイムアウトとなり、制御切り替え判定部34は、遠隔制御装置1と制御装置3との間の通信ができないと判断し、制御移行のための処理シーケンスを開始する。
【0071】
ここで、タイムアウトのための一定時間は、T1~T4の周期時間t1~t4よりも短い値として設定される。例えば、T4の周期時間t4が1秒である場合には、一定時間は、その半分である0.5秒としてもよく、制御移行時の処理に0.2秒を要するのであれば、一定時間は、0.8秒と設定することが考えられる。
【0072】
さらに、タイムアウトのための一定時間を設定した後は、T4における受信時刻通知をタイムアウトのための一定時間よりも短く実施する必要がある。その方法として、t4の時間を短く設定し直すこと、T4において出力値送信とは別の周期時間で生存を確認するための通信パケットを送信すること、が挙げられる。t4の時間を短く設定し直すことで、遠隔制御装置1での出力値送信がタイムアウトのための一定時間よりも短く実施され、タイムアウトよりも前に制御装置3での受信時刻通知が実施可能となる。また、生存確認の通信パケットでは、T4において出力値送信とは別のタイマをもう1つ用意し、出力値送信とは別の周期時間で生存を確認するための通信パケットを送信することで、タイムアウトよりも前に受信時刻通知が実施可能となる。生存を確認するための通信パケットには、制御演算の結果及び演算途中の制御情報は必要ないため、t4の時間を短く設定し直すよりも通信負荷を軽減することができる。
【0073】
T5は、制御演算を遠隔制御装置1から制御装置3に移行する処理である。T5でタイムアウトとなった場合、制御切り替え判定部34は、制御移行のための処理シーケンスを開始するため、制御装置3の制御プログラム実行部32に制御開始通知を行う。また、制御切り替え判定部34は、通信部31に、遠隔制御装置1からの受信値を制御用メモリ33に格納しないための受信値格納停止通知を行う。この処理シーケンスでは、制御開始通知が先に通知され、受信値格納停止通知が後に通知されている例を示しているが、これらの通知の順番は、逆であってもよい。
【0074】
制御開始通知を受信した制御プログラム実行部32は、制御情報反映を行い、制御用メモリ33から演算途中の制御情報を読み出して、プログラムの内部情報として反映させる。反映後、制御プログラム実行部32は、制御用メモリ33からセンサ4のデータを読み出して制御演算を実行し、制御演算の結果を制御用メモリ33に格納する。以降、制御装置3は、制御装置3で周期的に制御演算を実行するT6を開始するために、T6周期タイマを開始する。
【0075】
T5で受信値格納停止通知を受信した通信部31は、遅れて届いた遠隔制御装置1の制御演算の結果と、制御プログラム実行部32で実行した制御演算の結果との混同を避けるため、受信値格納停止通知以降の遠隔制御装置1からの受信値を制御用メモリ33に格納しない。
【0076】
T5の完了以降、制御装置3は、T2の実行を停止してもよい。また、遠隔制御装置1の制御プログラム実行部12は、制御装置3の制御切り替え判定部34と同様に、受信値を格納(T2参照)した際に、受信タイマを更新してもよい。これにより、遠隔制御装置1は、一定時間を超えても受信時刻が更新されない場合タイムアウトとなり、T3及びT4の実行を停止することとしてもよい。
【0077】
T6では、制御プログラム実行部32は、制御用メモリ33から、センサ4のデータを読み出し、制御演算を実行する。また、制御プログラム実行部32は、制御演算の結果に加えて、演算途中の制御情報を制御用メモリ33に格納する。
【0078】
制御装置3は、T1周期タイマ及びT6周期タイマに従って、T1及びT6を周期的に実行する。
【0079】
また、広域ネットワーク2の通信障害の復旧後は、第1実施形態と同様に、T7を実行することで、制御プログラムの実行場所を制御装置3から遠隔制御装置1に移行することができる。
【0080】
本実施形態によれば、制御装置3は、遠隔制御装置1から制御演算の結果等を受信する度に受信タイマを更新し、制御装置3と遠隔制御装置1との間の通信の健全性を確認する。また、制御装置3は、受信タイマのタイムアウトに基づいて、制御プログラムの実行場所を遠隔制御装置1から制御装置3へ切り替えることで、遠隔制御装置1から制御演算の結果が受信できない場合でも制御演算を継続することができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、遠隔制御装置1は、演算途中の制御情報を制御用メモリ13に格納し、通信部11を介して制御装置3に送信する。また、制御装置3は、この値を遠隔制御装置1から受信し、制御用メモリ33に格納する。制御装置3は、制御プログラムの実行を開始する際に、この値を読み出すことで、制御演算に過去のデータを反映することができる。これにより、制御装置3は、広域ネットワーク2で通信障害が発生した場合でも、遠隔制御装置1と制御装置3との間でデータが欠落することなく、制御演算を現場で連続的に実行することができる。
【0082】
また、本実施形態によれば、制御装置3は、制御プログラム実行部32で制御演算を実行する場合、受信値格納停止によって遠隔制御装置1からの受信値の格納を行わない。これにより、遅れて届いた遠隔制御装置1の制御演算の結果と、制御プログラム実行部32で実行した制御演算の結果との混同を避けることができる。
【0083】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態における遠隔制御装置と制御装置との間の制御移行時の処理シーケンスの例を示す図である。
【0084】
広域ネットワーク2の通信障害の復旧時、制御装置3から送信されたセンサ4のデータ、演算途中の制御情報及び移行開始通知が遠隔制御装置1で受信できなかった場合、制御システム100は、遠隔制御装置1と、制御装置3との両方で制御演算が停止してしまう。そこで、第3実施形態では、制御システム100は、遠隔制御装置1と制御装置3との間の通信を複数回繰り返し、広域ネットワーク2の通信状況が安定したことを確認した後、制御装置3での制御演算を停止する。
【0085】
T7’では、T7で実行される一部の処理が実行されない。具体的には、T7’では、制御切り替え判定部34での制御停止通知及び通信部31における受信値格納開始が実施されない。
【0086】
制御切り替え判定部34では、制御停止通知が実行されないため、制御プログラム実行部32は制御演算を実行(T6)し続ける。また、T4では、通信部31は受信値格納開始を実行しないため、通信部31が受信した受信値が制御用メモリ33に格納されない。
【0087】
図11は、第3実施形態における制御装置が受信値を格納開始する際の処理シーケンスの例を示す図である。
【0088】
通信部31は、T7’の際に受信値の格納を開始せずに、広域ネットワーク2の通信状況の安定を確認するために、制御切り替え判定部34で受信回数判定を実施する。受信回数判定では、制御切り替え判定部34は、遠隔制御装置1の通信部11によって送信される出力値、つまり制御演算の結果及び演算途中の制御情報について、通信部31で一定時間内に受信できた回数が閾値を超えたか否かの判定を行う。以下、本実施形態では、通信部31で受信した制御演算の結果及び演算途中の制御情報を受信値として説明する。
【0089】
図11では、通信部31は、制御切り替え判定部34に受信値の受信時刻を通知し、制御切り替え判定部34が、この通知に基づいて受信タイマを更新する。また、制御切り替え判定部34は、この受信タイマの更新回数の度に受信回数の判定を行う処理シーケンスとなっている。図7のように、受信タイマの更新を行わない場合、制御装置3は、通信部31が制御切り替え判定部34に対して、受信値を一定時間内に受信した旨の信号を送信し、制御切り替え判定部34受信回数を判定する構成としてもよい。
【0090】
T4’は、受信回数の判定の結果、受信値の受信回数が閾値を超えていないと判断された場合の処理シーケンスであり、T4’’は、受信回数の判定の結果、受信値の受信回数が閾値を超えたと判断された場合の処理シーケンスである。T4’及びT4’’は、いずれもT4周期タイマによって実行周期が管理される。
【0091】
T4’’では、受信値の受信回数が閾値を超えたと判断された場合、制御装置3は、制御停止通知、受信値格納開始を実行する。制御停止通知では、制御切り替え判定部34は、制御プログラム実行部32に通知を行い、制御切り替え判定部34は、T6’周期タイマを停止する。また、制御切り替え判定部34は、通信部31に受信値格納開始通知を行い、通信部31は、受信値納格納処理を実行する。受信値格納開始処理の実行後は、T4’’の処理の代わりに、T4が実行される。
【0092】
以上により、制御システム100は、T1及びT6が実行される状態から、T7’によって、T1~T4及びT6がそれぞれ独立して周期的に実行される状態に遷移することができる。また、T4’は、通信部31での受信値の受信回数が閾値を超えた場合、T4’’が実行される。これにより、T6が停止し、T4が再開されるため、制御システム100は、T1~T4がそれぞれ独立して周期的に実行される状態に遷移することができる。つまり、制御システム100は、遠隔制御装置1で制御演算を実施する通常の処理シーケンスに復旧することができる。
【0093】
この閾値は、制御システム100のユーザが任意の値として定めてもよい。閾値の値が大きいほど、受信回数判定の回数も大きくなるため、制御切り替え判定部34は、広域ネットワーク2の通信状況が安定していることを判断することができる。
【0094】
図12は、第3実施形態における遠隔制御装置と制御装置との間の制御移行時の処理シーケンスの別の例を示す図である。
【0095】
図11では、出力値を一定時間内に受信した受信回数を判定する処理シーケンスの例を示した。図12では、受信タイマがタイムアウトした場合の処理シーケンスの例を示す。
【0096】
制御切り替え判定部34は、遠隔制御装置1からの出力値が安定して受信できたか否かを受信タイマ及び受信回数によって判定する。制御切り替え判定部34における受信タイマは、T4’において、受信時刻通知を受信する度、受信タイマを更新する。制御切り替え判定部34は、タイムアウトとなった場合、受信回数をリセットし、再度、T7’を開始する。ここで、T7’で再度開始されるT2~T4周期タイマは、制御切り替え判定部34によって上書きが行われる。これにより、タイムアウトとなって、再度T7’を実行した場合でも、T6が実行され続けるため、制御プログラムが停止することはない。また、制御切り替え判定部34は、各周期タイマを上書きすることで、複数のタイマを管理する必要もない。
【0097】
本実施形態によれば、制御装置3は、演算途中の制御情報を制御用メモリ33に格納し、通信部31を介して遠隔制御装置1に送信する。また、遠隔制御装置1は、この値を制御装置3から受信し、制御用メモリ13に格納する。遠隔制御装置1は、制御プログラムの実行を開始する際に、この値を読み出すことで、制御演算に過去のデータを反映することができる。これにより、遠隔制御装置1は、制御装置3と疎通確認が取れた場合や、広域ネットワーク2の通信障害の復旧後に、遠隔で制御演算を実行する場合に、遠隔制御装置1と制御装置3との間でデータが欠落することなく、制御演算を遠隔で連続的に実行することができる。
【0098】
また、本実施形態によれば、制御システム100は、遠隔制御装置1と制御装置3との間の通信を複数回繰り返し、広域ネットワーク2の通信状況が安定したことを確認した後、制御装置3での制御演算を停止する。これにより、制御システム100は、遠隔制御装置1と、制御装置3との両方の装置で制御演算が停止してしまうことを防止することができる。
【0099】
また、本実施形態によれば、受信タイマがタイムアウトとなった場合、制御切り替え判定部34は、受信回数をリセットして再び受信回数を数え直す。これにより、制御システム100は、広域ネットワーク2の通信状況がより安定したことを確認した後、制御装置3での制御演算を停止することができ、遠隔制御装置1と、制御装置3との両方の装置で制御演算が停止してしまうことを防止することができる。
【0100】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態における遠隔制御装置のハードウェア構成図である。
【0101】
図13の遠隔制御装置1は、CPU等のプロセッサ52と、RAM等の主記憶装置53と、HDD等の補助記憶装置54と、LAN(Local Area Network)ボード等のネットワークインタフェース55と、メモリスロットやメモリポート等のデバイスインタフェース56、と、これらの機器を互いに接続するバス57とを備えている。遠隔制御装置1は例えば、PC等のコンピュータであり、キーボードやマウス等の入力装置や、LCD(Liquid Crystal Display)モニタ等の出力装置を備えている。
【0102】
本実施形態においては、遠隔制御装置1の情報処理をコンピュータに実行させるためのプログラムが、補助記憶装置54内にインストールされている。遠隔制御装置1は、このプログラムを主記憶装置53に展開して、プロセッサ52により実行する。これにより、図2に示す各ブロックの機能を遠隔制御装置1内で実現し、第1実施形態で説明した処理シーケンス移行等が可能となる。なお、この情報処理により生成されたデータは、主記憶装置53に一時的に保持されるか、補助記憶装置54内に格納され保存される。
【0103】
このプログラムは例えば、このプログラムを記録した外部装置58をデバイスインタフェース56に装着し、このプログラムを外部装置58から補助記憶装置54に格納することでインストール可能である。外部装置58の例は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体や、このような記録媒体を内蔵する記録装置である。記録媒体の例はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、CD-R(Compact Disk Recordable)、フレキシブルディスク、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、DVD-R (Digital Versatile Disk Recordable)であり、記録装置の例はHDDである。また、このプログラムは例えば、このプログラムをネットワークインタフェース55を介してダウンロードすることでインストール可能である。
【0104】
本実施形態によれば、第1実施形態における遠隔制御装置1の機能をソフトウェアにより実現することが可能となる。また、制御装置3も同様にソフトウェアにより実現することが可能となる。
【0105】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な遠隔制御装置1及び制御装置3は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した遠隔制御装置1及び制御装置3の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0106】
1:遠隔制御装置、2:広域ネットワーク、3:制御装置、4:センサ、
5:アクチュエータ、11:通信部、12:制御プログラム実行部、
13:制御用メモリ、31:通信部、32:制御プログラム実行部、
33:制御用メモリ、34:制御切り替え判定部、40:HMI、
52:プロセッサ、53:主記憶装置、54:補助記憶装置、
55:ネットワークインタフェース、56:デバイスインタフェース、
57:バス、58:外部装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13