(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128697
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】充電制御装置、充電制御方法、および充電制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20240913BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240913BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240913BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H02J7/04 A
H02J7/04 L
H02J7/00 S
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037834
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】591167430
【氏名又は名称】株式会社KRI
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】早野 彰人
(72)【発明者】
【氏名】溝口 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】木下 肇
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA03
5G503CA04
5G503CA14
5G503CB11
5G503EA08
5H030AA10
5H030BB01
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
(57)【要約】
【課題】充電時における電池性能の劣化を、容易に抑制することを目的とする。
【解決手段】電源3から電力を供給して行われる二次電池1に対する充電を制御する充電制御装置であって、電源3から供給する電力を制御する制御部18と、二次電池1の内部抵抗5を求める抵抗取得部17とを備え、電源3は、充電電流6を変更して二次電池1に電力を供給することができ、制御部18は、充電電流6と内部抵抗5との積が、あらかじめ定められた閾値8以下となるように電源3の抑制制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から電力を供給して行われる二次電池に対する充電を制御する充電制御装置であって、
前記電源から供給する前記電力を制御する制御部と、
前記二次電池の内部抵抗を求める抵抗取得部とを備え、
前記電源は、充電電流を変更して前記二次電池に前記電力を供給することができ、
前記制御部は、前記充電電流と前記内部抵抗との積が、あらかじめ定められた閾値以下となるように前記電源の抑制制御を行う充電制御装置。
【請求項2】
前記閾値は、前記二次電池の充電時における許容可能な過電圧が考慮されて設定される請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
実験的に前記充電電流と前記内部抵抗との積を変化させて充放電を繰り返し、前記充放電を行う度に充電効率または満充電容量の低下率を測定し、前記充電効率または前記満充電容量の前記低下率が所定値より小さくなった際の前記充電電流と前記内部抵抗との積が前記閾値として定められる請求項2に記載の充電制御装置。
【請求項4】
充電中の前記二次電池の温度を制御する温度制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記抑制制御において、前記充電電流と前記内部抵抗との積が前記閾値以下となるように、前記温度制御部により前記二次電池の前記温度を制御して前記内部抵抗を制御する請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記二次電池の初期満充電容量を記憶する記憶部と、
前記初期満充電容量から前記二次電池の容量維持率を求める容量維持率取得部とをさらに備え、
前記制御部は、前記閾値と前記容量維持率との積以下となるように前記抑制制御を行う請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項6】
充電中の充電電圧を測定する電圧測定部をさらに備え、
前記制御部は、前記充電電圧が所定の上限電圧以上である際に前記抑制制御を行う請求項1から5のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項7】
充電中の充電電圧を測定する電圧測定部をさらに備え、
複数の充電電圧帯毎に異なる前記閾値が設定され、
前記制御部は、前記充電電圧帯毎に対応する前記閾値を用いて前記抑制制御を行う請求項1から5のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項8】
電源から電力を供給して行われる二次電池に対する充電を制御する充電制御方法であって、
前記二次電池の内部抵抗を求める工程と、
前記電力の充電電流と前記内部抵抗との積が、あらかじめ定められた閾値以下となるように前記電源の抑制制御を行う工程とを備える充電制御方法。
【請求項9】
電源から電力を供給して行われる二次電池に対する充電を制御する充電制御プログラムであって、
前記二次電池の内部抵抗を求める機能と、
前記電力の充電電流と前記内部抵抗との積が、あらかじめ定められた閾値以下となるように前記電源の抑制制御を行う機能とをコンピュータに実行させる充電制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の充電を制御する充電制御装置、充電制御方法、および充電制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、充電の際に様々な要因によって性能が劣化する場合がある。そのため、種々の方法で充電制御が行われている。例えば、リチウムイオン電池では低温充電時において負極からリチウム(Li)が析出し電池性能が低下する場合がある。このような現象を抑制するために、特許文献1に開示された発明では、負極の電位を求め、電位がリチウム基準電位まで低下しないように入力許可電力を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、負極の電位を精度良く求めることは容易ではなく、電池性能の劣化を抑制することは容易ではない。
【0005】
本発明は、充電時における電池性能の劣化を、容易に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る充電制御装置の特徴構成は、電源から電力を供給して行われる二次電池に対する充電を制御する充電制御装置であって、前記電源から供給する前記電力を制御する制御部と、前記二次電池の内部抵抗を求める抵抗取得部とを備え、前記電源は、充電電流を変更して前記二次電池に前記電力を供給することができ、前記制御部は、前記充電電流と前記内部抵抗との積が、あらかじめ定められた閾値以下となるように前記電源の抑制制御を行う点にある。
【0007】
また、本発明の一実施形態に係る充電制御方法の特徴構成は、電源から電力を供給して行われる二次電池に対する充電を制御する充電制御方法であって、前記二次電池の内部抵抗を求める工程と、前記電力の充電電流と前記内部抵抗との積が、あらかじめ定められた閾値以下となるように前記電源の抑制制御を行う工程とを備える点にある。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係る充電制御プログラムの特徴構成は、電源から電力を供給して行われる二次電池に対する充電を制御する充電制御プログラムであって、前記二次電池の内部抵抗を求める機能と、前記電力の充電電流と前記内部抵抗との積が、あらかじめ定められた閾値以下となるように前記電源の抑制制御を行う機能とをコンピュータに実行させる点にある。
【0009】
充電電流と内部抵抗との積は、電池性能の劣化に対する影響の目安となる。そのため、上記各構成によると、電池の性能劣化の目安となる充電電流と内部抵抗との積を用いて充電制御(抑制制御)を行うことができ、充電時における電池性能の劣化を、容易に抑制することができる。
【0010】
また、前記閾値は、前記二次電池の充電時における許容可能な過電圧が考慮されて設定されてもよい。
【0011】
発明者らは、鋭意研究した結果、充電電流と内部抵抗との積に対する過電圧の関係が電池性能の劣化に影響することを見出した。上記構成によると、この関係性を考慮して過電圧に基づいて閾値を設定することができ、充電時における電池性能の劣化を、容易に抑制することができる。
【0012】
また、実験的に前記充電電流と前記内部抵抗との積を変化させて充放電を繰り返し、前記充放電を行う度に充電効率または満充電容量の低下率を測定し、前記充電効率または前記満充電容量の前記低下率が所定値より小さくなった際の前記充電電流と前記内部抵抗との積が前記閾値として定められてもよい。
【0013】
このような構成により、閾値を精度良く生成することができ、充電時における電池性能の劣化を、容易かつ精度良く抑制することができる。
【0014】
また、充電中の前記二次電池の温度を制御する温度制御部をさらに備え、前記制御部は、前記抑制制御において、前記充電電流と前記内部抵抗との積が前記閾値以下となるように、前記温度制御部により前記二次電池の前記温度を制御して前記内部抵抗を制御してもよい。
【0015】
内部抵抗は二次電池の温度に依存する。そのため、二次電池の温度を変更することにより内部抵抗を変化させることができる。上記構成によると、二次電池の温度を変更することにより、充電電流と内部抵抗との積を容易に制御し、充電時における電池性能の劣化を、容易に抑制することができる。
【0016】
また、前記二次電池の初期満充電容量を記憶する記憶部と、前記初期満充電容量から前記二次電池の容量維持率を求める容量維持率取得部とをさらに備え、前記制御部は、前記閾値と前記容量維持率との積以下となるように前記抑制制御を行ってもよい。
【0017】
満充電容量が低下する状況は二次電池の劣化が進行している状況であると推定できる。上記構成によると、満充電容量の低下を示す容量維持率に対応して閾値を補正することができ、充電時における電池性能の劣化を、より容易かつ精度良く抑制することができる。
【0018】
また、充電中の充電電圧を測定する電圧測定部をさらに備え、前記制御部は、前記充電電圧が所定の上限電圧以上である際に前記抑制制御を行ってもよい。
【0019】
充電中は常に抑制制御が行われてもよいが、充電電圧が低い状態では抑制制御の影響は小さい。上記構成によると、抑制制御の影響が大きくなる、充電電圧が所定の上限電圧以上の際にのみ抑制制御が行われるため、充電時における電池性能の劣化を効率的に抑制することができる。
【0020】
また、充電中の充電電圧を測定する電圧測定部をさらに備え、複数の充電電圧帯毎に異なる前記閾値が設定され、前記制御部は、前記充電電圧帯毎に対応する前記閾値を用いて前記抑制制御を行ってもよい。
【0021】
充電電流と内部抵抗との積に対する電池の劣化の影響は、充電電圧が高くなる程大きくなる。そのため、充電電圧に応じて閾値を変化させることは有用である。上記構成によると、充電中の充電電圧を複数の充電電圧帯に区分けし、充電電圧帯毎に異なる閾値を設定することができ、充電時における電池性能の劣化を、より精度良く抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図4】充電制御を行うことによる劣化が抑制される効果を説明する図である。
【
図5】全ての充電期間で行われる充電制御を説明する図である。
【
図6】充電電圧帯で行われる充電制御を説明する図である。
【
図7】複数の充電電圧帯で行われる充電制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すように、リチウムイオン電池等の二次電池1は、電源3から電力の供給を受けて充電される。充電時の電池電圧(CCV:Closed Circuit Voltage)は、二次電池1が接続されていない際の端子間電圧(OCV:Open Circuit Voltage)と、充電電流6×内部抵抗5との和で表される。充電電流6と内部抵抗5との積(IR)が大きくなりすぎると充電中の二次電池1が過電圧の状態となる。そのため、充電電流6と内部抵抗5との積(IR)は、二次電池1の性能の低下(劣化)に対する1つの要因の指標となる。
【0024】
このことから、発明者らは、鋭意研究した結果、過電圧に対応する電圧に基づいて充電電流6と内部抵抗5との積(IR)を制御して充電することにより、二次電池1の劣化を抑制できることを見出した。さらに、発明者らは、充電電流6と内部抵抗5との積(IR)を制御するための過電圧に対応する電圧値を実験的に見出した。
【0025】
そこで、本実施形態における充電制御装置は、充電電流6と内部抵抗5との積(IR)が、あらかじめ定められた閾値8以下となるように充電時の電源3に対して充電に係る電力を抑制する制御(電源3の抑制制御)を行う。この場合の閾値8は、後述のように、二次電池1の充電時における許容可能な過電圧が考慮されて設定される。
【0026】
このように、劣化の一因である過電圧が考慮された閾値8を用いて充電を制御(電源3を抑制制御)することにより、適切に充電を行い、容易に二次電池1の劣化を抑制することができる。また、充電電流6と内部抵抗5との積(IR)が閾値8以下となるように充電を抑制制御することにより、充電電流6および内部抵抗5の少なくともいずれかを制御するだけで充電を抑制制御することができるため、容易に充電を抑制制御しながら、容易に二次電池1の劣化を抑制することができる。
【0027】
〔充電制御装置〕
以下、
図1,
図2を用いて、抑制制御のための構成例、および充電制御装置の構成例について説明する。
【0028】
上述のように、二次電池1は電源3から電力の供給を受けることにより充電される。この際、充電される電力の充電電流6を測定する電流計11が電力の供給経路内に設けられる。二次電池1には、内部の電流や電圧等の各種の情報を測定する測定部12が接続される。
【0029】
充電の際に抑制制御を行いながら充電を制御する充電制御装置は、通信部15と、抵抗取得部17と、制御部18と、記憶部19とを備える。充電制御装置は、CPU等のプロセッサを備え、充電制御装置の各機能ブロックはプロセッサにより制御される。充電制御装置は、二次電池1への充電が開始されると、抑制制御を含む充電制御を開始する(
図2のステップ#1)。
【0030】
通信部15は外部から情報を取得する。例えば、通信部15は、電流計11から充電電流6を経時的に取得し、それぞれの充電電流6を取得時刻と紐づけて記憶部19に格納する(
図2のステップ#2)。また、通信部15は、測定部12が測定した二次電池1の電流や電圧等の情報を経時的に取得し、取得時刻と紐づけられた電池情報21としてそれぞれの電池情報21を記憶部19に格納する。
【0031】
抵抗取得部17は、記憶部19に格納された電池情報21に基づいて、充電中の二次電池1の内部抵抗5を経時的に求める(
図2のステップ#3)。抵抗取得部17は、求められた内部抵抗5を、電池情報21が取得された時刻と紐づけて記憶部19に格納する。
【0032】
抵抗取得部17は、任意の方法で内部抵抗5を求めてもよく、例えば、電池情報21として取得された二次電池1の電流と電圧とから内部抵抗5を算出してもよい。また、あらかじめ任意の電池情報21と内部抵抗5との関係が規定されたテーブルを用意し、抵抗取得部17は、電池情報21に応じてテーブルに基づいて内部抵抗5を求めてもよい。また、測定部12が二次電池1の内部抵抗5を直接的に測定し、抵抗取得部17は通信部15を介して、測定部12が測定した内部抵抗5を経時的に取得してもよい。
【0033】
制御部18は、電源3から二次電池1に供給される電力を制御する。具体的には、制御部18は、充電電流6と、内部抵抗5と、閾値8とに基づいて、充電中に電源3から供給される電力を制御する抑制制御を行う。
【0034】
具体的には、まず、制御部18は、記憶部19に格納された充電電流6および内部抵抗5を取得し、充電中のある時刻における充電電流6と内部抵抗5との積(IR)を算出する(
図2のステップ#4)。
【0035】
次に、制御部18は、記憶部19にあらかじめ格納された閾値8を取得し、充電電流6と内部抵抗5との積(IR)が閾値8より大きいか否かを判定する(
図2のステップ#5)。
【0036】
IRが閾値8より大きい場合(
図2のステップ#5 Yes)、制御部18は抑制制御を実行する(
図2のステップ#6)。抑制制御は、IRが閾値8以下となるように、充電電流6および内部抵抗5の少なくともいずれかを抑制する制御である。
【0037】
IRが閾値8以下である場合(
図2のステップ#5 No)、または抑制制御が実行(
図2のステップ#6)されると、制御部18は、充電(充電制御)が終了したか否かを判定する(
図2のステップ#7)。充電が終了した場合(
図2のステップ#7 Yes)は処理が終了され、充電が終了していない場合(
図2のステップ#7 No)は、次の所定の時刻におけるIRの算出(
図2のステップ#4)に処理が戻り、充電が継続される。
【0038】
以上のように、二次電池1の充電時における許容可能な過電圧が考慮された閾値8を用いて、充電中の二次電池1の充電電流6と内部抵抗5との積(IR)の値を制御する。これにより、充電時の電池電圧(CCV)に対して支配的なIRが、許容可能な過電圧を超えないように直接的に制御できる。その結果、容易に充電を抑制して、二次電池1の劣化を抑制することができる。
【0039】
〔抑制制御〕
次に、
図1,
図2を用いて、抑制制御の具体的な構成例について説明する。上述のように、抑制制御は、充電電流6および内部抵抗5の少なくともいずれかを抑制する制御である。
【0040】
充電電流6を制御する場合、充電電流6と内部抵抗5との積(IR)の値が閾値8以下となるように、つまり、充電電流6≦閾値8/内部抵抗5となるように、制御部18は電源3を制御する(
図2のステップ#6-1)。
【0041】
内部抵抗5を制御する場合は任意の方法で内部抵抗5を制御してもよい。例えば、二次電池1の内部抵抗5は二次電池1の温度に依存する。そのため、制御部18は充電中の二次電池1の温度(充電温度28)を制御することにより内部抵抗5を制御(抑制)して充電制御を実行してもよい(
図2のステップ#6-2)。
【0042】
二次電池1の温度を制御することにより内部抵抗5を制御するために、二次電池1に温度調整部24が設けられる。温度調整部24は、二次電池1の温度(充電温度28)を制御する。また、充電制御装置は温度制御部26を備える。そして、測定部12は電池情報21として充電中の二次電池1の温度を継続的に測定し、通信部15は測定部12が測定した二次電池1の温度を取得し、充電温度28として記憶部19に格納する。
【0043】
このような構成において、内部抵抗5を制御する際に、充電電流6と内部抵抗5との積(IR)の値が閾値8以下となるように、つまり、内部抵抗5≦閾値8/充電電流6となるように、制御部18は充電温度28を制御する(変化させる)。具体的には、制御部18は、温度制御部26を介して温度調整部24を制御して、内部抵抗5を低下させるように二次電池1の充電温度28を上昇させる。充電温度28の制御は任意の方法で行われる。例えば、制御部18(温度制御部26)は、IRが閾値8を超えた際に、所定の温度、あるいは、現在の充電温度28に対して所定の割合だけ充電温度28を上昇させてもよい。または、内部抵抗5と充電温度28との関係示すテーブル等があらかじめ用意され、制御部18(温度制御部26)は、IRが閾値8以下となるような内部抵抗5に対応する充電温度28に二次電池1を制御してもよい。
【0044】
〔閾値〕
次に、
図1,
図3を用いて、閾値8を設定(決定)する構成例について説明する。ただし、閾値8は、下記のような方法で設定することに限定されず、任意の方法で設定することができる。
【0045】
充電制御装置で閾値8を設定する場合、充電制御装置は閾値設定部31を備える。閾値設定部31は、IR等の充電する電力の条件や放電の条件を変更して充放電を繰り返しながら二次電池1の電池性能の低下傾向を調べることにより、閾値8を決定(設定)する。なお、閾値8の設定は、通常、未使用時の二次電池1に対して行われる。
【0046】
具体的には、まず、閾値設定部31は、充放電における上下限の電圧と、放電電流とからなる充放電条件の設定入力を受け付ける(
図3のステップ#1)。閾値設定部31は、この充放電条件で充放電を繰り返し、この充放電条件は変更されない。
【0047】
次に、閾値設定部31は、充電時における初期的な充電電流6および内部抵抗5(充電電流6および内部抵抗5の積)をIR条件として設定する(
図3のステップ#2)。ここで、n=0の場合のIR条件として、閾値設定部31は、初期的な充電電流6を充電電流I(0)、初期的な内部抵抗5を内部抵抗R(0)とする。そして、この充放電条件とIR条件とで二次電池1に対して、所定の回数の充放電が繰り返し行われる。所定の回数は、あらかじめ定められた、1または複数の回数である。
【0048】
次に、閾値設定部31は、充放電を行う度に、測定部12が測定して記憶部19に格納した電池情報21に基づいて充電効率33を求め、記憶部19に格納する(
図3のステップ#3)。ここで、閾値設定部31は、充電効率33として、充電した電気量と放電可能な電気量との差(割合)であるAH効率や、充電容量と放電容量との差(割合)等で示される1または複数の指標を求めることができる。
【0049】
次に、閾値設定部31は、充電効率33に所定以上の低下傾向があるか、つまり、充電効率33が所定の値(所定値)、または所定の割合(低下率 第一基準値)以上低下しているか否かを判定する(
図3のステップ#4)。
【0050】
次に、充電効率33に低下傾向がない場合(
図3のステップ#4 No)、閾値設定部31は、IR条件を変更し、再度充放電を繰り返し、充電効率33を求める工程(
図3のステップ#3)以降の工程を繰り返す(
図3のステップ#5)。具体的には、閾値設定部31は、充電電流6および内部抵抗5の少なくとも一方の値を上昇させる。つまり、閾値設定部31は、nを1だけ繰り上げて、I(n)×R(n)>I(n-1)×R(n-1)となるように、充電電流I(n)および内部抵抗R(n)を設定する。例えば、初期的なIR条件で充放電を行って充電効率33に低下傾向がない場合、I1×R1>I0×R0となるように、閾値設定部31は充電電流I1および内部抵抗R1を設定する。
【0051】
なお、充電電流I(n)および内部抵抗R(n)のうちの一方が充電電流I(n-1)または内部抵抗R(n-1)より上昇されてもよいし、充電電流I(n)および内部抵抗R(n)の両方が充電電流I(n-1)および内部抵抗R(n-1)より上昇されてもよく、充電電流6および内部抵抗5の積が高められればよい。一方のみを上昇する場合、一方のみが偏って上昇しないように、閾値設定部31は、IR条件を変更する度に、充電電流6および内部抵抗5を交互に上昇させる等、適宜分散して上昇させることが好ましい。また、上昇させる値は、常に一定でもよいが、徐々に上昇幅を縮めたり、充電効率33の低下度に応じて変更したりしてもよい。例えば、閾値設定部31は、当初は一定の割合(値)で充電電流6および内部抵抗5の少なくとも一方上昇させ、充電効率33が第一基準値より大きい、所定の割合または値(第二基準値)以上低下した際に、上昇する値を低下させてもよい。
【0052】
そして、充電効率33に低下傾向がある場合(
図3のステップ#4 Yes)、閾値設定部31は、この際の充電電流6と内部抵抗5との積を閾値8に設定する(
図3のステップ#6)。これにより、過電圧により充電効率33が許容範囲を超えて悪化する状態を、二次電池1の電池性能が低下(劣化)に対応する閾値8として設定することができ、容易かつ精度良く二次電池1の劣化を判定することができる。
【0053】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、抑制制御は閾値8に基づいて行われる構成に限定されず、さらに二次電池1の容量維持率35が考慮されて行われてもよい。例えば、二次電池1に対して許容される過電圧は二次電池1の容量に依存するため、二次電池1に対して許容される過電圧は二次電池1の容量劣化に比例して変化する。このことから、制御部18は、充電電流6と内部抵抗5との積(IR)の値が、閾値8と容量維持率35の積以下となるように電源3を制御(抑制制御)する。
【0054】
容量維持率35を取得するために、充電制御装置は容量維持率取得部36を備える。また、未使用状態の二次電池1の充電容量が初期満充電容量38として記憶部19にあらかじめ格納される。容量維持率取得部36は、二次電池1の満充電容量39を取得し、初期満充電容量38を満充電容量39で除することにより容量維持率35を求める。なお、容量維持率取得部36は、別途求められた容量維持率35を、通信部15を介して外部から取得してもよい。
【0055】
このような構成により、二次電池1の劣化に応じた容量維持率35に基づいて閾値8を補正し、補正された閾値8に基づいて抑制制御が行われるため、より精度良く充電時における電池性能の劣化を抑制することができる。
【0056】
ここで、
図2,
図4を用いて、抑制制御の効果について説明する。
図4は充放電を繰り返し行った際の二次電池1の劣化度合を示す実験データである。
【0057】
図4において、横軸は総放電容量を示し、充放電の回数(二次電池1の使用量)に対応する。縦軸は二次電池1の容量維持率35を示す。また、三角のプロットは抑制制御を行わずに充電した際のデータ、四角のプロットは抑制制御を行って充電した際のデータ、丸のプロットは容量維持率35を考慮して抑制制御を行って充電した際のデータを示す。
【0058】
図4から分かるように、抑制制御を行わない場合、容量維持率35は早期から低下し、また大きく低下する。これに比べて、抑制制御を行うことにより、容量維持率35の低下、すなわち二次電池1の劣化が抑制されている。また、容量維持率35を考慮して抑制制御を行うことにより、二次電池1の劣化がさらに抑制されることが分かる。
【0059】
(2)上記各実施形態において、内部抵抗5は温度によって変化するため、抵抗取得部17は、求めた(取得した)内部抵抗5を温度補正してもよい。具体的には、抵抗取得部17は、充電温度28と内部抵抗5の温度変化係数との関係を示すテーブル等をあらかじめ用意し、充電温度28に基づいてテーブルから係数を取得し、取得した係数により内部抵抗5を補正する。
【0060】
また、充電温度28と内部抵抗5との関係をあらかじめ実験的に求めたテーブルが用意され、抵抗取得部17は、充電温度28に基づいてテーブルから内部抵抗5を求めてもよい。
【0061】
このように、充電温度28を考慮して内部抵抗5を求めることにより、より精度良く内部抵抗5を求めることができ、より精度良く充電時における電池性能の劣化を抑制することができる。
【0062】
(3)上記各実施形態において、抑制制御は、二次電池1を充電している間常に行われてもよいが、充電中の所定の期間だけ、例えば、充電の後半にのみ行われてもよい。具体的には、充電中において、充電電圧41または充電容量が所定の値(上限電圧または上限容量)を超えると、制御部18は、充電電流6と内部抵抗5との積(IR)が閾値8(または閾値8と容量維持率35との積)を超えないように充電電流6および内部抵抗5の少なくともいずれかを制御する抑制制御を実行する。この場合、充電電圧41は、測定部12(電圧測定部に相当)で測定され、通信部15を介して取得されて記憶部19に格納される。また、制御部18は、充電電圧41または充電容量が1または複数の所定の範囲内にある場合に、範囲毎に定められた閾値8に基づいて抑制制御を行ってもよい。例えば、充電電圧41の値に応じて複数の充電電圧帯42が定められ、充電電圧帯42毎に固有の閾値8が設定される。そして、制御部18は、充電電圧41が充電電圧帯42に対応する電圧になった際に、その充電電圧帯42に対応する閾値8を用いて抑制制御を行う。
【0063】
図5に示すように、一定の充電電流6で充電が行われると、充電が進むにつれて充電電圧41が上昇する。
図5に示す例では、充電電流6を抑制する方法で充電初期から抑制制御が行われている。この際、充電当初はCC(Constant Current)充電を行い、時刻t0において充電電圧41が二次電池1の充電上限電圧に到達すると充電方法がCV(Constant Voltage)充電に移行し、その後充電が終了する。充電はCV充電を行わず充電上限電圧に到達した後に終了してもよい。ここで、
図5および後述の
図6,
図7は、充電期間中の充電電流6と充電電圧41の変化を示す図である。
図5~
図7において、横軸は充電の経過時間、縦軸は充電電流6および充電電圧41を示す。
図6、
図7に示す例においても、
図5に示す例と同様に、充電当初はCC充電が行われ、充電電圧41が充電上限電圧に到達した後はCV充電に移行されても良く、CC充電のみが行われてもよい。
【0064】
図6に示すように、制御部18は、抑制制御を行う範囲を、充電電圧41の切替電圧VRで設定することができる。つまり、制御部18は、充電中に充電電圧41が切替電圧VR以上となる範囲(充電電圧帯42)で抑制制御を行う。ここで、切替電圧VRは、上限充電電圧または上限充電電圧より所定のマージンの分だけ小さい電圧である。
【0065】
図6において、時刻t1において充電電圧41が切替電圧VRを超える。そのため、時刻t1以降が充電電圧帯42となり、制御部18はこの充電電圧帯42において切替電圧VRが考慮された閾値8を用いて充電電流6を抑制する方法で抑制制御を行う。充電電圧帯42において時刻t2で充電電圧41が充電上限電圧に到達するとCV充電に移行され、IRが閾値8を超えると充電電流6を抑制する方法で抑制制御が行われる。
【0066】
複数の充電電圧帯42は複数の切替電圧VRで設定される。
図7において、時刻t3において充電電圧41が切替電圧VAを超える。そのため、時刻t3以降が充電電圧帯42Aとなり、制御部18はこの充電電圧帯42Aにおいて所定の閾値8Aを用いて充電電流6を抑制する方法で抑制制御を行う。さらに、時刻t4において充電電圧41が切替電圧VBを超える。そのため、時刻t4以降が充電電圧帯42Bとなり、制御部18はこの充電電圧帯42Bにおいて閾値8Aとは異なる閾値8Bを用いて充電電流6を抑制する方法で抑制制御を行う。この際も、充電電圧41が上限充電電圧を超えると(時刻t5)CV充電に移行され、IRが閾値8を超えると充電電流6を抑制する方法で抑制制御が行われる。なお、閾値8Aと閾値8Bは、上限充電電圧に対するマージンが異なる。
【0067】
(4)上記各実施形態において、充電制御装置は、
図1に示すような機能ブロックから構成されるものに限定されず、任意の機能ブロックから構成されてもよい。例えば、充電制御装置の各機能ブロックはさらに細分化されてもよく、逆に、各機能ブロックの一部または全部がまとめられてもよい。また、充電制御装置の機能は、上記機能ブロックに限らず、任意の機能ブロックが実行する方法により実現されてもよい。また、充電制御装置の機能の一部または全部は、ソフトウエアで構成されてもよい。ソフトウエアに係るプログラムは、記憶部19等の任意の記憶装置に記憶され、充電制御装置が備えるCPU等のプロセッサ(コンピュータ)、あるいは別に設けられたプロセッサ(コンピュータ)により実行される。例えば、プログラムの処理の一部または全部が、サーバ等の充電制御装置とは別途に設けられた装置に搭載れるプロセッサにより実行されてもよい。
【0068】
なお、上記の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本願発明は、二次電池に対する充電を制御する充電制御装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 二次電池
3 電源
5 内部抵抗
6 充電電流
8 閾値
12 測定部(電圧測定部)
17 抵抗取得部
18 制御部
19 記憶部
21 電池情報
26 温度制御部
35 容量維持率
36 容量維持率取得部
38 初期満充電容量
41 充電電圧
42 充電電圧帯