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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128703
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】輻射式空調装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20240913BHJP
   F24F 1/58 20110101ALI20240913BHJP
【FI】
F24F5/00 101B
F24F1/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037847
(22)【出願日】2023-03-10
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】516093541
【氏名又は名称】株式会社エース・ウォーター
(71)【出願人】
【識別番号】502444733
【氏名又は名称】日軽金アクト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000250432
【氏名又は名称】理研軽金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】川島 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 博光
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 栄徳
(72)【発明者】
【氏名】朴 王丹
(72)【発明者】
【氏名】樋上 博幸
(72)【発明者】
【氏名】海野 芳照
【テーマコード(参考)】
3L054
【Fターム(参考)】
3L054BB02
(57)【要約】
【課題】すべての放熱フィンに対して速やかに熱伝導させることができる輻射式空調装置を提供する。
【解決手段】複数の放熱体20を備え、前記複数の放熱体20の内部に熱媒体を循環させて冷房又は暖房を行う輻射式空調装置10であって、前記放熱体20は、熱媒体が通過する管部21と、前記管部21から正面方向に延びる前方直状基部22と、前記管部21から背面方向に延びる後方直状基部23と、前記前方直状基部22および前記後方直状基部23の両側面から突出する複数の放熱フィン24と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放熱体を備え、前記複数の放熱体の内部に熱媒体を循環させて冷房又は暖房を行う輻射式空調装置であって、
前記放熱体は、熱媒体が通過する管部と、前記管部から正面方向に延びる前方直状基部と、前記管部から背面方向に延びる後方直状基部と、前記前方直状基部および前記後方直状基部の両側面から突出する複数の放熱フィンと、を備える、
輻射式空調装置。
【請求項2】
前記前方直状基部の先端部に、前記放熱体を保護するための保護部材を装着した、
請求項1に記載の輻射式空調装置。
【請求項3】
前記熱媒体が液体である、
請求項1に記載の輻射式空調装置。
【請求項4】
前記放熱体の背面は平坦に形成されており、
組み立て前の前記放熱体は、前記背面を底面として水平な地面に自立させることができる、
請求項1に記載の輻射式空調装置。
【請求項5】
前記放熱体の背面は、前記放熱フィンで形成されている、
請求項4に記載の輻射式空調装置。
【請求項6】
前記前方直状基部から突出する前記放熱フィンの数と、前記後方直状基部から突出する前記放熱フィンの数とが同数である、
請求項1に記載の輻射式空調装置。
【請求項7】
前記複数の放熱体の管部に接続されるヘッダー管と、
前記複数の放熱体の長手方向の端部が固定される固定板部と、
を備え、
前記放熱体の長手方向の両端部には、前記ヘッダー管を収容する凹部が形成されており、
前記放熱体の長手方向の両端部に固定した前記固定板部によって、前記凹部の開口が塞がれるように形成されている、
請求項1に記載の輻射式空調装置。
【請求項8】
前記放熱体は、前記凹部よりも正面側および背面側の両方に、前記固定板部を取り付けるためのビスホールを備える、
請求項7に記載の輻射式空調装置。
【請求項9】
前記凹部の両側の壁は、前記放熱フィンによって形成されている、
請求項7に記載の輻射式空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、体育館等の屋内施設内の冷暖房を行う輻射式空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体育館を含む屋内施設内の温度管理の重要性に鑑みて不要な風が発生することなく、送風による騒音の発生を抑制でき、かつ、地球温暖化の主な原因である温室効果ガスの排出を抑制できる冷暖房装置として輻射パネルが使用されている。
【0003】
このような輻射パネルに関し、本願発明者らは特許文献1に記載の発明を提案した。この輻射パネルは、上下1対のヘッダー管に接続される互いに平行な複数の放熱体を備えている。そして、これらの放熱体は、上記ヘッダー管に連通する管部と、該管部の長手方向の側面から正面方向に延在する直状基部と、該直状基部の両側面からそれぞれ互いに平行に突出する複数の放熱フィンとからなっている。冷暖房を行う際には、管部を流れる熱媒体の熱が直状基部及び複数の放熱フィンに伝わるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-160313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した特許文献1に記載の発明においては、管部から遠い位置にある放熱フィンには熱伝導に時間がかかるという問題があった。
そこで、本発明は、すべての放熱フィンまたは管部に対して速やかに熱伝導させることができる輻射式空調装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、本発明は、複数の放熱体を備え、前記複数の放熱体の内部に熱媒体を循環させて冷房又は暖房を行う輻射式空調装置であって、前記放熱体は、熱媒体が通過する管部と、前記管部から正面方向に延びる前方直状基部と、前記管部から背面方向に延びる後方直状基部と、前記前方直状基部および前記後方直状基部の両側面から突出する複数の放熱フィンと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上記の通りであり、放熱体は、熱媒体が通過する管部と、管部から正面方向に延びる前方直状基部と、管部から背面方向に延びる後方直状基部と、前方直状基部および後方直状基部の両側面から突出する複数の放熱フィンと、を備える。このような構成によれば、管部から前後両方向に放熱フィンが延びているため、一方向に放熱フィンが延びている態様と比較して、管部から最も遠い放熱フィンまでの距離が短くなるので、すべての放熱フィンまたは管部に対して速やかに熱伝導させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】輻射式空調装置の構成を示す図である。
図2】輻射パネルの正面図である。
図3】輻射パネルのA-A線断面図である(向きを90度回転)。
図4】放熱体の平面図である。
図5】上枠に放熱体を固定する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。なお、以下の説明において輻射パネル11の「正面」とは、輻射熱を放射する見付面を意味する。また、「背面」とは、この正面の反対側の面を意味する。
本実施形態に係る輻射式空調装置10は、熱媒体を循環させて冷房又は暖房を行う装置であり、図1に示すように、輻射パネル11と熱源50とを備える。
【0010】
輻射パネル11は、熱源50から供給された熱媒体を内部に循環させ、冷気や暖気を輻射させるためのパネルである。この輻射パネル11は、設置空間に応じて任意の枚数を並べて使用することができる。例えば体育館などの屋内施設内の壁面に沿って、複数枚の輻射パネル11を配設してもよい。
【0011】
この輻射パネル11は、図2に示すように、矩形状のパネル枠体12と、パネル枠体12内に配置された複数の放熱体20と、放熱体20の上端に接続される上部ヘッダー管18と、放熱体20の下端部に接続される下部ヘッダー管19と、を備える。
【0012】
パネル枠体12は、左右一対の縦枠13と、両縦枠13の上端に架設される上枠14と、両縦枠13の下部に架設される下枠15とで、枠組みされて形成されている。また、このパネル枠体12の背面部には、図3に示すように、表面に熱反射板を有するバックパネル17が取り付けられている。また、パネル枠体12内の放熱体20の下方位置には、樋状のドレン45が配置されている。このドレン45には、排水用のドレン管46が接続されている。また、パネル枠体12の背面側には、補強用の横桟16が取り付けられている。
【0013】
放熱体20は、熱媒体の熱を利用して熱交換を行うための長尺部材である。放熱体20は、熱伝導率の高い金属で形成されており、例えば、アルミニウム合金で形成されている。この放熱体20は、後述する凹部27を除けば、長手方向に同一断面形状で形成されており、押出形材で形成することができる。
【0014】
本実施形態においては、パネル枠体12内に互いに平行に12列の放熱体20が並設されている。放熱体20は、長手方向が上下方向となるように配置されており、放熱体20の上下端は上枠14および下枠15に固定されている。なお、本実施形態においては放熱体20が12列配置される場合について説明したが、放熱体20の数は輻射パネル11の幅寸法に合わせて任意に設定可能である。また、放熱体20は、長手方向が上下方向となるように配置する態様に限らず、長手方向が水平方向となるようにパネル枠体12内に固定してもよい。
【0015】
この放熱体20は、図4に示すように、管部21と、前方直状基部22と、後方直状基部23と、放熱フィン24とを備え、これらが一体に形成されている。これらの部位は、放熱体20の全長に渡って形成されている(ただし、前方直状基部22の一部および後方直状基部23の一部は、後述する凹部27において切り欠かれている)。
【0016】
管部21は、熱媒体を通過させるための部位である。管部21の内部には、上下に貫通する熱媒体の流通路が形成されている。この管部21は、図2に示すように、上端が上部ヘッダー管18の内部に挿入されて、上部ヘッダー管18の内部と連通しており、下端が下部ヘッダー管19の内部に挿入されて、下部ヘッダー管19の内部と連通している。この管部21の内部には、図4に示すように、流通路内に突出するリブ21aが形成されている。このリブ21aを設けることで、管部21の流通路内を流れる熱媒体の接触面積が大きくなるので、熱媒体から放熱体20への伝熱性能が向上する。
【0017】
前方直状基部22は、管部21から正面方向(図3における右方向)に延びる部位である。前方直状基部22は、管部21の長手方向の側面から、管部21に対して略直交状に延在している。この前方直状基部22の正面側の先端部には、後述する緩衝部材30および保護部材35を取り付けるための突出部22aが設けられている。この突出部22aは、後述する放熱フィン24よりも正面方向に突出しており、放熱フィン24と併せて平面視略T字形を形成している。
【0018】
後方直状基部23は、管部21から背面方向(図3における左方向)に延びる部位である。後方直状基部23は、管部21の長手方向の側面から、管部21に対して略直交状に延在している。この後方直状基部23は、前方直状基部22と同一直線上に配置されており、前方直状基部22と同一の厚みで形成されている。
【0019】
放熱フィン24は、前方直状基部22および後方直状基部23の両側面から突出する板状の突起である。この放熱フィン24は、前方直状基部22(突出部22aを含む)および後方直状基部23に対して直交する方向に突出している。本実施形態においては、前方直状基部22から突出する放熱フィン24の数(左右に4つずつ)と、後方直状基部23から突出する放熱フィン24の数(左右に4つずつ)とが同数に設定されている。なお、放熱フィン24の数はこれに限らず、任意の数とすることができる。
【0020】
この放熱フィン24は、前方直状基部22および後方直状基部23の肉厚より若干肉薄に形成されている。また、各放熱フィン24は、ほぼ均一な厚みで形成されているが、先端部は肉厚に形成されている。また、複数列の放熱フィン24のうち、最も正面側に配置された放熱フィン24と前方直状基部22との入隅部には肉厚部25が設けられ、狭小のテーパーが形成されている。同様に、最も正面側に配置された放熱フィン24と突出部22aとの入隅部にも肉厚部25が設けられ、狭小のテーパーが形成されている。また、最も背面側に配置された放熱フィン24と後方直状基部23との入隅部には肉厚部25が設けられ、狭小のテーパーが形成されている。このように肉厚部25を設けることで、もっとも外側の放熱フィン24や突出部22aを補強している。なお、入隅部は肉厚部が設けられれば良いので、これに限らずR形状でも良い。
【0021】
なお、本実施形態においては、最も背面側に配置された放熱フィン24(図4における最上部の放熱フィン24)は、後方直状基部23の先端に接続されている。言い換えると、最も背面側の放熱フィン24によって、放熱体20の背面23aが形成されている。このため、放熱体20の背面23aは平坦に形成されている。放熱体20の背面23aが平坦であるため、組み立て前の放熱体20は、この背面23aを底面として水平な地面に自立させることができる。このように、放熱体20を、突出部22aが上向きになるように自立させることができるので、輻射パネル11の組み立て作業を容易に行うことができる。
【0022】
また、前方直状基部22および後方直状基部23には、それぞれ1つ以上のビスホール26が設けられている。具体的には、前方直状基部22と放熱フィン24との交差部分に1カ所、後方直状基部23と放熱フィン24との交差部分に1カ所の、計2カ所にビスホール26が設けられている。このビスホール26は、後述する上枠14の固定板部14aに放熱体20を取り付ける際に使用される。
【0023】
ところで、上記した放熱体20の突出部22aには、図4に示すように、緩衝部材30および保護部材35が取り付けられる。この緩衝部材30および保護部材35は、長手方向に見て突出部22aと同じ全長で形成された長尺部材である。
【0024】
緩衝部材30は、突出部22aに嵌合して取り付けられる部材である。緩衝部材30は、可撓性を有する材料で形成されており、例えばEPDMなどの材料で形成できる。なお、緩衝部材30の材料はEPDMに限らず、他のゴムや合成樹脂材料を使用してもよい。
【0025】
この緩衝部材30は、断面略Ω形であり、突出部22aを覆うように取り付けられるU字状部31と、U字状部31の両端から互いに反対方向に延びる一対の延出部32と、を備える。U字状部31の内側には、突出部22aを圧入可能な凹溝が形成されている。なお、この緩衝部材30は、長手方向の全長に渡って同一断面形状で形成されている。
【0026】
保護部材35は、放熱体20の正面側を保護するための部材であり、緩衝部材30を介して突出部22aに装着される。本実施形態に係る保護部材35は、アルミニウム合金製の押出形材にて形成されている。この保護部材35は、長手方向の全長に渡って同一断面形状で形成されている。
この保護部材35は、中空部を有する略円筒状に形成されており、その外周面に、嵌合部35a、支持面35b、円筒面35cを備えている。
【0027】
嵌合部35aは、緩衝部材30のU字状部31を挿入可能に凹設された部位である。この嵌合部35aは、U字状部31の外形に沿うように略U字形に形成されている。
【0028】
支持面35bは、嵌合部35aの両側に形成された平坦な面であり、両側の支持面35bが面一に形成されている。この支持面35bは、最も正面側に配置された放熱フィン24(図4における最下部の放熱フィン24)の表面と平行に対向する。
【0029】
円筒面35cは、両側の支持面35bを接続するよう設けられた平面視C字形の面である。保護部材35を放熱体20の正面に取り付けると、この円筒面35cが外部に露出する。すなわち、ボールなどが飛んできたときには、この円筒面35cに当たるようになっている。
【0030】
この保護部材35の中空部には、突出部22aの延長線上に補強リブ36が形成されている。このように、保護部材35を中空円筒状に形成して補強リブ36を設けることにより、保護部材35を軽量にしつつ強度を持たせることができる。
【0031】
また、この保護部材35の中空部には、留具取付穴37が設けられている。具体的には、補強リブ36が円筒面35cに接続される部分(略T字状に交差する部分)に、留具取付穴37が形成されている。この留具取付穴37は、後述する上枠14の固定板部14aに保護部材35を固定する際に使用されるものである。この留具取付穴37を使用して保護部材35を固定することで、保護部材35が上枠14に固定されるので、保護部材35が突出部22aから脱落することを防止できる。なお、補強リブ36および留具取付穴37は1つに限らず、複数設けてもよい。
【0032】
この緩衝部材30および保護部材35を放熱体20の突出部22aに取り付けると、図4に示すように、嵌合部35aの内部にU字状部31が係合し、嵌合部35aの両側で延出部32が緩衝材として働くようになっている。すなわち、延出部32の一方の面(正面側を向いた面)が保護部材35の支持面35bに当接し、他方の面(背面側を向いた面)が最も正面側に配置された放熱フィン24に当接するようになっている。このように、保護部材35が直接に放熱体20に接触しないので、部材の破損を防止できるとともに、緩衝部材30によって断熱効果を発揮させることができる。また、保護部材35と放熱体20との間に隙間(遊び)ができないので、保護部材35のガタつきを防止できる。しかも、本実施形態においては、互いに平行な放熱フィン24の表面と保護部材35の支持面35bとで延出部32を挟み込んでいるため、保護部材35を面で安定的に支持することができる。
【0033】
上部ヘッダー管18は、熱媒体を流通させるためのまっすぐな管であり、本実施形態においては断面矩形状のアルミニウム製押出形材にて形成されている。この上部ヘッダー管18は、図5に示すように、放熱体20の上面に取り付けられる。上部ヘッダー管18は、複数の放熱体20にまたがって配置され、それぞれの放熱体20の管部21に接続される。
【0034】
また、下部ヘッダー管19は、熱媒体を流通させるためのまっすぐな管であり、本実施形態においては断面矩形状のアルミニウム製押出形材にて形成されている。この下部ヘッダー管19は、放熱体20の下面に取り付けられる。下部ヘッダー管19は、複数の放熱体20にまたがって配置され、それぞれの放熱体20の管部21に接続される。なお、下部ヘッダー管19は、熱媒体の流入側に配置された第1下部ヘッダー管19aと、熱媒体の流出側に配置された第2下部ヘッダー管19bと、に分割されている。なお、第1下部ヘッダー管19aは、後述する供給配管56に接続され、全体の半数(図2に示す右側の6列)の放熱体20の管部21に接続されている。また、第2下部ヘッダー管19bは、後述する排出配管57に接続され、残りの半数(図2に示す左側の6列)の放熱体20の管部21に接続されている。
【0035】
上記した上部ヘッダー管18および下部ヘッダー管19は、図5に示すように、放熱体20の長手方向の両端部(すなわち、上端部および下端部)に形成された凹部27に収容される。この凹部27は、図4に示すように、管部21付近の前方直状基部22および後方直状基部23を切り欠くことで形成されている。これにより、中央2列の放熱フィン24の間に凹部27が形成され、管部21の端部が突出している。言い換えると、放熱フィン24によって凹部27の両側の壁が形成されており、この両側の壁の間に管部21の先端が突出している。この凹部27は、上部ヘッダー管18および下部ヘッダー管19をすっぽりと収容できる深さに設定されている。このため、凹部27に上部ヘッダー管18および下部ヘッダー管19を取り付けたときに、上部ヘッダー管18および下部ヘッダー管19が放熱体20の上面および下面から突出しないようになっている。このように放熱体20の凹部27に上部ヘッダー管18および下部ヘッダー管19を収容すると、突出した管部21の端部が上部ヘッダー管18または下部ヘッダー管19の内部に挿入される。これにより、管部21の上端が上部ヘッダー管18と接続され、管部21の下端が下部ヘッダー管19と接続される。
【0036】
このように放熱体20の上面および下面に上部ヘッダー管18および下部ヘッダー管19を取り付けた状態で、図5に示すように、放熱体20はパネル枠体12に固定される。すなわち、放熱体20の上端が上枠14に固定され、放熱体20の下端が下枠15に固定される。
【0037】
具体的には、本実施形態に係る上枠14および下枠15は、放熱体20の長手方向の端部が固定される固定板部14aを備えている。固定板部14aは、放熱体20の上端または下端を突き当てて固定することができる板状の部位である。固定板部14aには、留具用の穴が貫通形成されており、この穴から挿入した留具(ネジなど)によって放熱体20および保護部材35が固定される。具体的には、固定板部14aの表面から挿入した放熱体用留具40を、放熱体20のビスホール26に螺着することで、放熱体20の端部が固定板部14aに固定される。また、固定板部14aの表面から挿入した保護部材用留具41を、保護部材35の留具取付穴37に螺着することで、保護部材35の端部が固定板部14aに固定される。
【0038】
このとき、放熱体20の上下端部に固定した固定板部14aによって、放熱体20の上下端部に形成された凹部27の開口が塞がれる。このため、上部ヘッダー管18および下部ヘッダー管19が凹部27から脱落しないように覆われる。しかも、本実施形態においては、凹部27を挟んだ両側にビスホール26が設けられている。このため、凹部27の両側において固定板部14aが固定されており、より強固に上部ヘッダー管18および下部ヘッダー管19の脱落を防止することができる。
【0039】
なお、本実施形態においては、固定板部14aを上枠14および下枠15の一部として設けている。すなわち、固定板部14aと上枠14または下枠15とが一体的に形成されている。このように構成することで、部品点数を減らし、すっきりとした意匠を実現することができる。しかしながら、これに限らず、固定板部14aを別部材として設け、これを上枠14または下枠15に取り付けるようにしてもよい。
【0040】
次に、輻射式空調装置10の作動方法について説明する。ここでは、熱媒体として定常の温度が冷房に適した温度(例えば、12℃±5℃)の液体、例えば不凍液、具体的には主成分がエチレングリコールで、防錆剤が含有され、水で薄めた23~40%の濃度の不凍液を使用した場合について説明する。なお、熱媒体は、定常の温度が冷房に適した液体を用いることが望ましい。このような液体を使用すれば、暖房時のみ熱媒体を加熱して所定温度にすればよいので、加熱のみの熱交換器53で温度調整することができる。ただし、熱媒体はこのような液体に限らず、他の液体や気体を用いてもよい。
【0041】
熱源50は、輻射パネル11に熱媒体を供給するものである。熱源50は、供給配管56に接続されており、液供給源51に開閉弁52を介して暖房時に熱媒体を加熱する熱交換器53とで構成されている。また、排出配管57は供給配管56の熱交換器53の一次側に接続されて循環経路が形成されている。この場合、排出配管57にはフィルタ54と循環ポンプ55が介設されている。
【0042】
上記のように構成される輻射式空調装置10において、冷房時には、熱源50の液供給源51から供給される熱媒体が、輻射パネル11の第1下部ヘッダー管19aに流入する。この熱媒体は、第1下部ヘッダー管19aに連通する6列の放熱体20の管部21を流れて上部ヘッダー管18内に流れる。そして、上部ヘッダー管18内に流れた熱媒体は、下流側の6列の放熱体20の管部21を流れて第2下部ヘッダー管19bに流れる。第2下部ヘッダー管19bに流れた熱媒体は、フィルタ54によって不純物が除去された状態で循環ポンプ55によって供給配管56側に流れて循環供給される。なお、熱媒体を循環供給する際、液供給源51から熱媒体を補充するようにしてもよい。
【0043】
また、輻射パネル11を暖房用として使用する場合は、液供給源51から供給される熱媒体を熱交換器53によって所定温度(例えば40℃)に加熱し、加熱した熱媒体を上記と同様に輻射パネル11に供給すればよい。
【0044】
このように作動させることで、熱媒体が流れる管部21から、前方直状基部22、後方直状基部23、放熱フィン24へと熱が伝わる。この熱を輻射パネル11の正面方向へ放熱させることにより、輻射による冷房または暖房効果を得ることができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、放熱体20の正面側の先端部に形成された突出部22aに、緩衝部材30を介して保護部材35が装着されているので、放熱を阻害する構成部材の削減が図れ、保護部材35が受ける衝撃を緩衝部材30によって吸収することができ、ボール等の衝撃からの保護の強化、すなわち耐久性の向上が図れる。
【0046】
また、熱媒体が流れる管部21から前方直状基部22、後方直状基部23及び複数の放熱フィン24によって輻射熱移動に対流を増幅させて輻射パネル11前面に放熱させることで、輻射熱(放射熱)の放熱性能の向上が図れる。
【0047】
また、放熱体20は、熱媒体が通過する管部21と、管部21から正面方向に延びる前方直状基部22と、管部21から背面方向に延びる後方直状基部23と、前方直状基部22および後方直状基部23の両側面から突出する複数の放熱フィン24と、を備える。このような構成によれば、管部21から前後両方向に放熱フィン24が延びているため、一方向に放熱フィン24が延びている態様(例えば、特開2022-160313号公報参照)と比較して、管部21から最も遠い放熱フィン24までの距離が短くなるので、暖房時はすべての放熱フィン24に対して速やかに熱伝導させ、冷房時は管部21に対して速やかに熱伝導させることができる。
【0048】
また、放熱体20の背面23aが平坦に形成されており、組み立て前の放熱体20は、この背面23aを底面として水平な地面に自立させることができる。このため、輻射パネル11を組み立てる際に、突出部22aが上を向くように放熱体20を地面に置いて作業することができる。突出部22aが上を向いているので、緩衝部材30や保護部材35の取り付けが容易である。また、複数の放熱体20を平行に並べて、上部ヘッダー管18や下部ヘッダー管19、更にはパネル枠体12を取り付けることができるので、作業性がよい。
【0049】
また、このような放熱体20の背面23aは、放熱フィン24で形成されている。すなわち、最も背面側の放熱フィン24の背面が、放熱体20の背面23aとなっている。このような構成によれば、特別な加工や部品を追加しなくても、上記したような自立する放熱フィン24を提供することができる。
【0050】
また、前方直状基部22から突出する放熱フィン24の数と、後方直状基部23から突出する放熱フィン24の数とが同数に設定されている。このため、すべての放熱フィン24に対して速やかに熱伝導させることができる。なお、管部21から最も遠い正面側の放熱フィン24の先端までの距離と、管部21から最も遠い背面側の放熱フィン24の先端までの距離とは、互いに等しく設定することが望ましい。これにより、最も離れた放熱フィン24の中間位置に管部21を配置できるので、先端までの熱伝導を最速とすることができる。
【0051】
また、複数の放熱体20の管部21に接続されるヘッダー管(上部ヘッダー管18および下部ヘッダー管19)と、複数の放熱体20の長手方向の端部が固定される固定板部14aと、を備え、放熱体20の長手方向の両端部には、ヘッダー管を収容する凹部27が形成されており、放熱体20の長手方向の両端部に固定した固定板部14aによって、凹部27の開口が塞がれるように形成されている。このような構成によれば、放熱体20の中央に管部21を配置したことに伴い、ヘッダー管を放熱体20の中央の凹部27に取り付けることができる。そして、取り付けられたヘッダー管は、放熱体20を固定する固定板部14aによって覆われる。よって、ヘッダー管が外部に露出せず、また、凹部27からヘッダー管が脱落することもない。よって、組み立て時の作業性や安全性の向上を図ることができ、また、意匠性の向上を図ることができる。
【0052】
また、放熱体20は、上記した凹部27よりも正面側および背面側の両方に、固定板部14aを取り付けるためのビスホール26を備える。よって、凹部27の両側において固定板部14aが固定されており、より強固に上部ヘッダー管18および下部ヘッダー管19の脱落を防止することができる。
【0053】
また、上記した凹部27の両側の壁は、放熱フィン24によって形成されている。よって、上記した凹部27を形成するために特別な形状を設ける必要がなく、放熱フィン24を利用してヘッダー管の収容空間を形成することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 輻射式空調装置
11 輻射パネル
12 パネル枠体
13 縦枠
14 上枠
14a 固定板部
15 下枠
16 横桟
17 バックパネル
18 上部ヘッダー管
19 下部ヘッダー管
19a 第1下部ヘッダー管
19b 第2下部ヘッダー管
20 放熱体
21 管部
21a リブ
22 前方直状基部
22a 突出部
23 後方直状基部
23a 背面
24 放熱フィン
25 肉厚部
26 ビスホール
27 凹部
30 緩衝部材
31 U字状部
32 延出部
35 保護部材
35a 嵌合部
35b 支持面
35c 円筒面
36 補強リブ
37 留具取付穴
40 放熱体用留具
41 保護部材用留具
45 ドレン
46 ドレン管
50 熱源
51 液供給源
52 開閉弁
53 熱交換器
54 フィルタ
55 循環ポンプ
56 供給配管
57 排出配管
図1
図2
図3
図4
図5