(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128706
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】シーラントフィルム、それを含む積層体、包装材
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20240913BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240913BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
C08L23/08
B32B27/32 103
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037855
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関谷 慶子
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA28
4F100AK62A
4F100AK63A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CA30A
4F100GB15
4F100GB23
4F100GB66
4F100JA06A
4F100JA13A
4F100JK06
4F100JL00
4F100JL12A
4F100YY00A
4J002AF022
4J002BB051
4J002BB162
4J002DE236
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002EC056
4J002EF106
4J002EG056
4J002EG076
4J002EG096
4J002EW046
4J002FD202
4J002FD206
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】低温シートシール性、及び耐ブロッキング性が共に優れるシーラントフィルムを提供し、それを含む積層体、包装材を提供することを目的とする。
【解決手段】下記の要件(a1)および要件(a2)の特性を満たす、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)100重量部、および核剤(B)100~2500ppmを含むシーラントフィルム。
要件(a1)JIS K 7210に準拠して測定したメルトフローレート(MFR、190℃、2.16kg荷重)が0.5~10g/10分である。
要件(a2)JIS K7112に準拠して測定した密度が890~915kg/m3である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の要件(a1)および要件(a2)の特性を満たす、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)100重量部、および核剤(B)100~2500ppmを含むシーラントフィルム。
要件(a1)JIS K 7210に準拠して測定したメルトフローレート(MFR、190℃、2.16kg荷重)が0.5~10g/10分である。
要件(a2)JIS K7112に準拠して測定した密度が890~915kg/m3である。
【請求項2】
基材フィルムと、その基材フィルム上に形成された請求項1に記載のシーラントフィルム層とからなることを特徴とする積層体。
【請求項3】
請求項1のシーラントフィルム、または請求項2記載の積層体を含む包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温シール性および耐ブロッキング性が共に優れるシーラントフィルム、それを含む積層体、包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題を背景にリサイクル可能包材(ALL PE)が各国にて検討されている。ALL PE構成のシーラントフィルムに必要な特性として、優れた低温シール性が求められる。一方、食品および医薬品などの包装材として、ポリオレフィン系樹脂等からからなる基材フィルムにシーラント層を設けて、袋状に加工して、その開口部をヒートシールすることが行われている。このシーラントフィルムには一般的にLLDPE等のエチレン・α-オレフィン共重合体が用いられている。しかし、LLDPE等のエチレン・α-オレフィン共重合体では包装材として求められる低温ヒートシール性、耐ブロッキング性が、不十分であり、更なる改良が求められている。
【0003】
本発明は、特定の密度範囲のエチレン・α-オレフィン共重合体と、特定割合の結晶核剤とからなるシーラントフィルムが低温ヒートシール性、及び耐ブロッキング性が共に優れることが見出されたことに基づく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低温ヒートシール性、及び耐ブロッキング性が共に優れるシーラントフィルムを提供し、それを含む積層体、包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の概要は以下の通りである。
〔1〕
下記の要件(a1)および要件(a2)の特性を満たす、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)100重量部、および核剤(B)100~2500ppmを含むシーラントフィルム。
要件(a1)JIS K 7210に準拠して測定したメルトフローレート(MFR、190℃、2.16kg荷重)が0.5~10g/10分である。
要件(a2)JIS K7112に準拠して測定した密度が890~915kg/m3である。
〔2〕
基材フィルムと、その基材フィルム上に形成された上記〔1〕に記載のシーラントフィルムとからなることを特徴とする積層体。
〔3〕
上記〔1〕のシーラントフィルム、または上記〔2〕に記載の積層体を含む包装材。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、低温ヒートシール性、及び耐ブロッキング性が共に優れるシーラントフィルムが提供され、それを含む積層体、包装材が提供される。これにより、このシーラントフィルム、それを含む積層体、包装材を、食品、医薬などの包装材として使用した場合、低温ヒートシール性にも優れるため、包装材への充填速度の高速化が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明のシーラントフィルムおよび基材フィルム、それを含む積層体、包装材について具体的に説明する。
本発明のシーラントフィルムについて説明する。まず、フィルムの主体となるエチレン・α-オレフィンとの共重合体(A)について具体的に説明する。
【0008】
本発明に使用されるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、エチレンと炭素数3以上20以下のα-オレフィン、好ましくはエチレンと炭素数6~10のα-オレフィンとの共重合体である。エチレンとの共重合に用いられる炭素数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられる。なかでも、1-ヘキセンが好ましい。
本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、1種のエチレン・α-オレフィン共重合体であってもよく、2種以上のエチレン・α-オレフィン共重合体を組み合わせてもよい。
【0009】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、それを構成するモノマーにバイオマス由来モノマー(エチレン、α-オレフィン)を含んでいてもよい。重合体を構成するモノマーがバイオマス由来モノマーのみでもよいし、バイオマス由来モノマーと化石燃料由来モノマーの両方を含んでもよい。バイオマス由来モノマーとは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料としてなるモノマーで、炭素として14C同位体を10-12程度の割合で含有し、ASTM D 6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度(pMC)が100(pMC)程度である。バイオマス由来モノマーは、従来から知られている方法により得られる。本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を構成するモノマーがバイオマス由来モノマーを含むことは環境負荷低減(主に温室効果ガス削減)の観点から好ましい。重合用触媒、重合プロセス重合温度、などの重合体製造条件が同等であれば、原料モノマーがバイオマス由来モノマーを含んでいても、14C同位体を10-12~10-14程度の割合で含む以外の分子構造は、化石燃料由来モノマーからなるエチレン・α-オレフィン共重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
また、本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、構成するモノマーの少なくとも一部がケミカルリサイクル由来モノマー(エチレン、α-オレフィン)を含んでいてもよい。共重合体(A)を構成するモノマーがケミカルリサイクル由来モノマーのみでもよいし、ケミカルリサイクル由来モノマーと化石燃料由来モノマーおよび/またはバイオマス由来モノマーを含んでもよい。ケミカルリサイクルス由来モノマーは、従来から知られている方法により得られる。本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を構成するモノマーがケミカルリサイクル由来モノマーを含むことは環境負荷低減(主に廃棄物削減)の観点から好ましい。原料モノマーがケミカルリサイクル由来モノマーを含んでいても、ケミカルリサイクル由来モノマーは廃プラスチックなどの重合体を解重合、熱分解等でエチレンなどのモノマー単位にまで戻したモノマー、ならびに該モノマーを原料にして製造したモノマーであるので、重合用触媒、重合プロセス、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、分子構造は化石燃料由来モノマーからなるエチレン・α-オレフィン共重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0010】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は要件(a1)および要件(a2)の特性を満たす。
【0011】
要件(a1)190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR、2.16kg/10分)が0.5~10g/10分である。
MFRは、JIS K7210-1に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定される。
MFRは、フィルム成形時の樹脂流動性に寄与し、0.1g/10分未満ではダイからの押出が困難である。この範囲をはずれると、インフレーション成形不可となる。
MFRは、好ましくは0.5~8g/10分の範囲である。
【0012】
要件(a2)JIS K7112に準拠して測定した密度が890~915kg/m3である。
密度がこの範囲外となると、耐ブロッキング性が不十分となる傾向がある。また、密度が915kg/m3を超えると低温ヒートシール性が不十分となる傾向がある。
密度の好ましい範囲は890~914kg/m3である。
【0013】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は要件(a1)及び要件(a2)の特性を同時に満たすことによって、耐ブロッキング性が改善される。このため、本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を用いてフィルムを製造する際に、アンチブロッキング剤が不要となるか、従来よりも少ないアンチブロッキング剤の添加で十分な耐ブロッキング性を示すフィルムが得られる。
【0014】
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、オレフィン系重合体製造用触媒の存在下、エチレンと炭素数3以上20以下のα-オレフィンとを共重合することにより製造することができる。
【0015】
本発明では、たとえば、チーグラー・ナッタ触媒、フィリップス触媒、バナジウム系触媒やメタロセン触媒など公知の重合用触媒を用いて製造することができる。
重合方法としても特に限定されず、溶液重合、懸濁重合、バルク重合法などの液相重合法、気相重合法、その他公知の重合方法で行うことができる。
【0016】
核剤(B)としては、ソルビトール系核剤、リン系核剤、環状ジカルボン酸塩系核剤、カルボン酸金属塩核剤、ポリマー核剤、無機化合物系核剤、ロジン系核剤等が挙げられる。
【0017】
ソルビトール系核剤の具体例としては、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトール、1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ-(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトールが挙げられる。
【0018】
リン系核剤の具体例としては、ナトリウム-ビス-(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カリウム-ビス-(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ビス(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ〔d,g〕〔1,3,2〕ジオキサホスホシン-6-オキシド)ナトリウム塩ビス(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ〔d,g〕〔1,3,2〕ジオキサホスホシン-6-オキシド)水酸化アルミニウム塩が挙げられる。
【0019】
環状ジカルボン酸塩系核剤の具体例としては、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ビシクロ[2,2 ,1]ヘプテンジカルボン、およびこれらのナトリウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。
【0020】
カルボン酸金属塩核剤の具体例としては、p-t-ブチル安息香酸アルミニウム塩、ヒドロキシ-ジ(p-t-ブチル安息香酸)アルミニウム(商品名「AL-PTBBA」、ジャパンケムテック製)、アジピン酸アルミニウム、安息香酸ナトリウムが挙げられる。
【0021】
ポリマー核剤としては分岐状α-オレフィン重合体が好適に用いられる。
分岐状α-オレフィン重合体の例として、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンの単独重合体、あるいはそれら相互の共重合体、さらにはそれらと他のα-オレフィンとの共重合体を挙げることができる。
これらのうち、高融点ポリマーとしては、ポリビニルシクロヘキサン、ポリビニルシクロペンタンなどのポリビニルシクロアルカン、ポリ3-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、ポリアルケニルシランなどが挙げられる。
【0022】
無機化合物核剤の具体例としては、タルク、マイカ、炭酸カルシウムが挙げられる。
【0023】
ロジン系核剤としては、たとえばロジン酸の金属塩があり、ロジン酸の金属塩とはロジン酸と金属化合物との反応生成物をいう。ロジン酸としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン;不均化ロジン、水素化ロジン、脱水素化ロジン、重合ロジン、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンなどの各種変性ロジン;前記天然ロジンの精製物、変性ロジンの精製物などを例示できる。なお、前記α,β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンの調製に用いられる不飽和カルボン酸としては、たとえばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などを挙げることができる。これらの中では、天然ロジン、変性ロジン、天然ロジンの精製物および変性ロジンの精製物からなる群より選ばれる少なくとも一種のロジン酸であることが好ましい。ここで、ロジン酸は、ピマル酸、サンダラコピマル酸、パラストリン酸、イソピマル酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ジヒドロピマル酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸などから選ばれる樹脂酸を複数含んでいる。
【0024】
前記ロジン酸と反応して金属塩を形成する金属化合物としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの金属元素を有し、かつ前記ロジン酸と造塩する化合物が挙げられる。具体的には、前記金属の塩化物、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
【0025】
これらの核剤の中では、環状ジカルボン酸塩系核剤が好適であり、中でも市販品として
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸カルシウム塩を主成分とする商品名「Hyperform HPN-20E」(ミリケン社製)が好適である。
これらの核剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のシーラントフィルムは、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)100重量部、および核剤(B)100~2500ppmを含むものである。核剤(B)の配合割合の下限は、好ましくは30ppm以上であり、上限は好ましくは50ppm以上である。100ppm未満では耐ブロッキング性が不十分となる傾向があり、2500ppmを超えると低温シール性が悪くなる傾向がある。
【0026】
本発明のシーラントフィルムには、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等の添加剤が必要に応じて配合されていてもよい。
【0027】
本発明のシーラントフィルムは、従来公知の種々の方法により成形することができる。例えば、基材フィルムなどの他の層に押出ラミネ-トにより成形する方法、例えば、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、核剤(B)とを、V-ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシエルミキサー、タンブラーブレンダーなどで混合した後、基材フィルム上にT-ダイで押出コーティングする方法、あるいは、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、核剤(C)を上記の方法で混合した後、押出機を用いて160~220℃の温度で溶融混練しながらペレットを作り、そのペレットをT-ダイで基材上に押出コーティングする方法により製造することができる。この場合、核剤(B)を予め少量のエチレン・α-オレフィン共重合体と溶融混錬して、マスターバッチを調製して利用することも行われる。
また、他の方法として、基材となる他の層(単層、多層)の成形とシーラントフィルムの成形を同時に行う、共押し出により成形する方法がある。例えば、シーランントフィルム(単層、多層)をTダイフィルム成形、インフレ-ション成形(空冷、水冷、多段冷却、高速加工)などにより成形する方法が挙げられる。
【0028】
また、基材上にシーラントフィルムを押出コーティングする際には、基材に直接シーラントフィルムを押出コーティングしてもよく、また基材とシーラントフィルムの間の接着力を高めるために、基材に予めアンカーコート剤を塗布したり、あるいは接着性ポリオレフィン、高圧法ポリエチレンなどの下貼樹脂層を設けた後にシーラントフィルムを押出コーティングしてもよい。
アンカーコート剤には、有機チタン系、ポリエチレンイミン系、イソシアネート系、ポリウレタン、イソシアネート化合物、もしくはそれらの混合物および反応生成物、ポリエステル、またはポリオールとイソシアネート化合物との混合物および反応生成物、あるいはそれら溶液等の公知のアンカーコート剤、接着剤等を基材表面に塗布することによりなされる。
【0029】
基材上にシーラントフィルムを押出コーティングする際の加工温度(T-ダイ下の樹脂温度)は、基材とシーラントフィルム、基材と下貼樹脂(接着性ポリオレフィン、高圧法ポリエチレンなど)、下貼樹脂とシーラントフィルムとの接着性およびラミネート製品のヒートシール性、生産性を考慮して決められるが、好ましくは230~330℃であり、より好ましくは280~320℃である。
【0030】
また基材と下貼樹脂、または基材とエチレン系共重合体組成物と接着性を確保するために、必要に応じて、T-ダイから押出した樹脂の溶融膜にオゾンを吹きかけて膜の表面を強制酸化することも行われる。
【0031】
押出コーティングは、好ましくは20~300m/分、より好ましくは40~300m/分の加工速度で行なわれる。
【0032】
また、シーラントフィルム(単層、多層)のみを予め成形しておき、基材などの他の層に積層することも行われる。
具体的には、シーランントフィルム(単層、多層)をTダイフィルム成形、インフレ-ション成形(空冷、水冷、多段冷却、高速加工)などにより成形する方法が挙げられる。
シーラントフィルムが単層の場合は勿論、多層の場合は本発明のシーラントフィルムの層がシーリングの用途に用いられる。
予め成形されたフィーラントフィルムを基材フィルムに積層する場合も、必要に応じて、基材の表面の表面処理、接着剤を介した積層が行われる。
このようなシーラントフィルムは用途、要望されるシーリング部の剥離強度に応じて、その厚さなどが調整されるが、その厚さは一般には1μmから0.5mm程度である。
【0033】
本発明の積層体は、基材フィルムと、その基材フィルム上に形成された本発明のシーラントフィルムとからなる。
基材フィルムとしては、例えば、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、およびアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むフィルム(延伸フィルムであってもよい。)、金属箔、金属蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルム等のセラミック蒸着フィルム、紙、不織布、ならびにこれらの積層体から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。基材フィルムの厚さは、通常、5~80μm程度である。
金属箔は、材質や厚さなどによって特に限定されず、厚さ5~50μmのアルミニウム 箔、錫箔、鉛箔、亜鉛メッキした薄層鋼板、電気分解法によりイオン化金属を薄膜にしたもの、アイアンフォイル等が用いられる。
【0034】
また、金属蒸着フィルムについても、材質や厚さなどによって特に限定されず、蒸着金 属としてはアルミニウムや亜鉛等が挙げられ、厚みは、通常0.01~0.2μmのもの が好ましく用いられる。蒸着の方法も特に限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等周知の方法が用いられる。
【0035】
セラミック蒸着フィルムにおいて、蒸着されるセラミックとしては、例えば、一般式SiOx(0.5≦x≦2)で表されるケイ素酸化物のほか、ガラス、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化錫等の金属酸化物、蛍石、フッ化セレン等の金属フッ化物が挙げられる。
金属酸化物には、微量の金属や、他の金属酸化物、金属水酸化物が含まれていてもよい。蒸着は、フィルムの少なくとも片面に、上記の種々の蒸着方法を適用することによっても行うことができる。また、被蒸着フィルムとしては、特に制限はなく、延伸ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム等の透明フィルムが挙げられる。
【0036】
また、基材とシーラントフィルムとの接触面には、ポリウレタン、イソシアネート化 合物、ポリエステル、ならびにポリオールとイソシアネート化合物との混合物および反応生成物からなる群から選ばれる1種以上の接着剤を介在させて、接着性を向上させることが好ましい。
【0037】
基材フィルムは、基本的には単層(1層のみ)から構成されるが、複数の層から構成し てもよく、例えば、ポリエステルフィルムとセラミック蒸着ポリエステルフィルムとをドライラミネートした2層フィルムであってもよく、ポリエステルフィルムとアルミ箔とを ドライラミネートし、さらにアルミ箔面にポリエステルフィルムをドライラミネートした3層フィルムであってもよい。
【0038】
本発明の積層体は、包装材の用途に好適である。
包装材としては水物包装袋、液体スープ包袋、液体紙器、ラミ原反、特殊形状液体包装
袋(スタンディングパウチなど)、規格袋、重袋、ラップフィルム、砂糖袋、油物包装袋
、食品包装用などの各種包装用フィルム、プロテクトフィルム、輸液バック、農業用資材
、バックインボックス、半導体材料、医薬品、食品などの包装に用いられるクリーンフィ
ルムなどに好適である。このとき、エチレン系組成物(α)からなる層を1以上有するフ
ィルム又はシートとして用いることもできるし、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィ
ンフィルムなどからなる基材にエチレン系組成物(α)からなる層を積層した形態を有す
る積層体(フィルム又はシート)として用いることもできる。
【実施例0039】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
<シーラントフィルム>
下記のエチレン・α-オレフィン共重合体(A-1)および核剤(B-1)を、表1に記載されたブレンド比率でドライブレンドを行い、得られた混合物を用いてインフレーションフィルムの成形を行った。物性評価の結果を表1に示す。
なお、物性の測定は以下によった。
【0041】
<シール開始温度〔℃〕>
インフレーションフィルムの内面同士を二枚重ねした試験片を所定時間、温度と荷重をかけてヒートシールした後、二枚のヒートシール試験片を引き離すために必要な力(N/15mm)が10N/15mmに達した温度をシール開始温度とする。
ヒートシール圧力:0.2MPa
ヒートシール時間:1sec
試験速度:300mm/min.
試験片 厚み/幅:40μm/15mm幅
<ブロッキング係数>
インフレーションフィルムの内面同士を二枚重ねした試験片を所定時間、温度と荷重をかけてエージングした後、インストロン型万能材料試験機に取り付けられたブロッキング測定治具にセットする。インストロン型万能材料試験機により二枚のブロッキングした試験片を引き離すのに必要な力を試験片の幅で除した値をブロッキング係数とする。
測定温度:23℃
試験速度:200mm/min
試験片 厚み/幅:40μm/200mm
エージング条件:50℃×10kgf×3日
<耐熱ブロッキング>
インフレーションフィルムの内面同士を二枚重ねした試験片を70℃で所定時間、荷重をかけてヒートシールした後、二枚のヒートシール試験片を引き離すために必要な力(N/15mm)を熱ブロッキングとする。数値が低いほど耐熱ブロッキング性に優れる。
ヒートシール圧力:0.2MPa
ヒートシール時間:30sec
試験速度:300mm/min.
試験片 厚み/幅:40μm/15mm幅
【0042】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A-1)
実施例1 比較例1 エチレン・1-ヘキセン共重合体 密度 904kg/m3
(商品名:エボリュー SP0540 株式会社プライムポリマー製)
実施例2及び3 比較例2 エチレン・1-ヘキセン共重合体 密度 904kg/m3
(商品名:エボリュー SP0510 株式会社プライムポリマー製)
実施例4及び5 エチレン・1-ヘキセン共重合体 密度 910kg/m3
(商品名:エボリュー SP0820 株式会社プライムポリマー製)
比較例3 エチレン・1-ヘキセン共重合体 密度 916kg/m3
(商品名:エボリュー SP2020 株式会社プライムポリマー製)
【0043】
核剤(B-1)
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸カルシウム塩を主成分とする商品名「Hyperform HPN-20E」(ミリケン社製)を用いた。
【0044】
本発明のシーラントフィルムは、低温ヒートシール性、及び耐ブロッキング性が共に優れており、それを含む積層体は種々の用途に利用され、中でも食品および医薬品などの用途をはじめとして種々の用途の包装材として、広い用途に利用することが可能である。
さらに、低温ヒートシール性にも優れるため、包装材への充填速度の高速化が可能となる。