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特開2024-128707風力発電設備の検査装置、風力発電設備の検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128707
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】風力発電設備の検査装置、風力発電設備の検査方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/30 20160101AFI20240913BHJP
   F03D 80/50 20160101ALI20240913BHJP
   G01R 31/54 20200101ALI20240913BHJP
   G01R 31/58 20200101ALI20240913BHJP
   G01R 31/56 20200101ALI20240913BHJP
   H02G 13/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
F03D80/30
F03D80/50
G01R31/54
G01R31/58
G01R31/56
H02G13/00 040
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037858
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】生方 正志
(72)【発明者】
【氏名】小池 匠
(72)【発明者】
【氏名】小川 昇
【テーマコード(参考)】
2G014
3H178
【Fターム(参考)】
2G014AA13
2G014AB08
2G014AB33
2G014AB60
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB43
3H178BB56
3H178BB73
3H178BB79
3H178CC02
3H178CC23
3H178DD12Z
3H178DD51X
3H178DD52X
(57)【要約】
【課題】風力発電設備検査における検査装置の接触部と風力発電設備の受雷部との接触状態を確認する作業の容易性を向上する。
【解決手段】大地もしくは水域に立設された支柱1と、軸回りに回転する風車3と、風車のブレード32に設けられていて落雷による電流を受ける受雷部41と、受雷部が受けた電流を大地もしくは水域に逃がす避雷装置4とを備える風力発電設備10の導通検査を行う検査装置20であって、受雷部に接触させる導電性材料からなる複数の受雷部接触部本体54a,54bにより構成される受雷部接触部54と、避雷装置と通電可能な状態で避雷装置と接触させる避雷装置接触部59と、複数の受雷部接触部本体の間における導通検査を行う端子間導通検査部551と、受雷部接触部、避雷装置接触部、及び、受雷部導通検査部を搭載する飛行体5と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大地もしくは水域に立設された支柱と、軸回りに回転する風車と、前記風車のブレードに設けられていて落雷による電流を受ける受雷部と、前記受雷部が受けた前記電流を大地もしくは水域に逃がす避雷装置とを備える風力発電設備の導通検査を行う検査装置であって、
前記検査装置は、
前記受雷部に接触させる導電性材料からなる複数の受雷部接触部本体により構成される受雷部接触部と、
前記避雷装置と通電可能な状態で前記避雷装置と接触させる避雷装置接触部と、
複数の前記受雷部接触部本体の間における導通検査を行う端子間導通検査部と、
前記受雷部接触部、前記避雷装置接触部、及び、前記端子間導通検査部を搭載する飛行体と、
を備える、風力発電設備の検査装置。
【請求項2】
前記受雷部接触部は、複数の前記受雷部接触部本体が離間して設けられている、
請求項1に記載の風力発電設備の検査装置。
【請求項3】
前記端子間導通検査部は、複数の前記受雷部接触部本体が前記受雷部を介して通電することにより複数の前記受雷部接触部本体の間における導通検査を行う、
請求項2に記載の風力発電設備の検査装置。
【請求項4】
前記受雷部接触部が前記受雷部に接触し、かつ、前記避雷装置接触部が前記避雷装置に接触したときに流れる前記電流に基づいて前記風力発電設備の導通検査を行う受雷部導通検査部、
を備える、請求項1または3に記載の風力発電設備の検査装置。
【請求項5】
大地もしくは水域に立設された支柱と、軸回りに回転する風車と、前記風車のブレードに設けられていて落雷による電流を受ける受雷部と、前記受雷部が受けた前記電流を大地もしくは水域に逃がす避雷装置とを備える風力発電設備の導通検査を行う検査方法であって、
前記受雷部に接触させる導電性材料からなる複数の受雷部接触部本体により構成される受雷部接触部と、
前記避雷装置と通電可能な状態で前記避雷装置と接触させる避雷装置接触部と、
複数の前記受雷部接触部本体の間における導通検査を行う端子間導通検査部と、
前記受雷部接触部が前記受雷部に接触し、かつ、前記避雷装置接触部が前記避雷装置に接触したときに流れる前記電流に基づいて前記風力発電設備の導通検査を行う受雷部導通検査部と、
前記受雷部接触部、前記避雷装置接触部、前記受雷部導通検査部、及び、前記端子間導通検査部を搭載する飛行体と、
を備える、前記風力発電設備の検査装置を用いて、
複数の前記受雷部接触部本体を前記受雷部に接触させるステップと、
複数の前記受雷部接触部本体、前記受雷部、及び、前記端子間導通検査部により第1閉回路を形成するステップと、
前記端子間導通検査部が前記第1閉回路に前記電流が流れているか否かを判定するステップと、
前記避雷装置接触部を前記避雷装置に接触させるステップと、
前記受雷部接触部、前記避雷装置、及び、前記避雷装置接触部により第2閉回路を形成するステップと、
前記受雷部導通検査部が前記第2閉回路に前記電流が流れているか否かを判定するステップと、を実行する風力発電設備の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電設備の検査装置、風力発電設備の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、需要が高まっている風力発電に用いられる風力発電設備は、落雷による損傷を防ぐため、落雷による電流を大地もしくは海等の水中に逃がすことができるように構成されている。風力発電設備は、定期的な検査項目の一つとして、例えば、落雷による損傷対策として、落雷により風力発電設備に流れる電流を大地もしくは水中等に流せるか否かを検査する導通検査が課されている。
【0003】
以上のような風力発電設備における検査に用いられる技術として、風力発電設備の受雷部に接触させる接触部を有する飛行体と、接触部が風力発電設備に接触して取得した情報を用いて風力発電設備の導通検査を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7021470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ドローンなどの飛行体を用いて風力発電設備の導通検査を行う場合に、風力発電設備に設けられている受雷部と飛行体に取り付けられる接触部とが接続していることを確認する必要がある。
【0006】
ここで、飛行体の接触部と受雷部との接触を確認するための方法としては、作業員が目視または飛行体に取り付けられているカメラからの画像を確認することが考えられる。しかしながら、目視または画像によって接触を確認することは、容易ではなかった。
【0007】
また、飛行体の接触部と受雷部との接触を目視または画像にて確認できた場合であっても、検査装置と受雷部との導通が確認できない場合が考えられる。この場合、検査装置や風力発電設備に断線等があるのか、あるいは接触部が受雷部に接触できていないのか、検査装置の接触部と風力発電設備の受雷部との接触状態の確認作業を、データ等に基づいて客観的な判別を行うためにさらなる改良が求められる。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、風力発電設備検査における検査装置の接触部と風力発電設備の受雷部との接触状態を確認する作業の容易性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の代表的な実施の形態に係る風力発電設備の検査装置は、大地もしくは水域に立設された支柱と、軸回りに回転する風車と、前記風車のブレードに設けられていて落雷による電流を受ける受雷部と、前記受雷部が受けた前記電流を大地もしくは水域に逃がす避雷装置とを備える風力発電設備の導通検査を行う検査装置であって、前記検査装置は、前記受雷部に接触させる導電性材料からなる複数の受雷部接触部本体により構成される受雷部接触部と、前記避雷装置と通電可能な状態で前記避雷装置と接触させる避雷装置接触部と、複数の前記受雷部接触部本体の間における導通検査を行う端子間導通検査部と、前記受雷部接触部、前記避雷装置接触部、及び、前記端子間導通検査部を搭載する飛行体と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、風力発電設備検査における検査装置の接触部と風力発電設備の受雷部との接触状態を確認する作業の容易性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】風力発電設備の検査装置及び検査対象である風力発電設備の概要を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る風力発電設備の検査装置の概要を示す斜視図である。
図3】風力発電設備の検査装置における受雷部接触部、避雷装置接触部、及び制御部の構成と風力発電設備の受雷部及びその周辺の構成とを示す模式図である。
図4】風力発電設備の検査方法において、受雷部接触部、避雷装置、及び、避雷装置接触部により第2閉回路を形成するステップと、第2閉回路に電流が流れているか否かを判定するステップと、を示す模式図である。
図5】本実施の形態の変形例1に係る風力発電設備の検査装置の概要を示す斜視図である。
図6】変形例1に係る風力発電設備の検査装置における受雷部接触部、避雷装置接触部、及び制御部の構成と風力発電設備の受雷部及びその周辺の構成とを示す模式図である。
図7】本実施の形態の変形例2に係る風力発電設備の検査装置及び検査対象である風力発電設備の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0013】
[1] 大地もしくは水域に立設された支柱(1)と、軸回りに回転する風車(3)と、前記風車のブレード(32)に設けられていて落雷による電流を受ける受雷部(41)と、前記受雷部が受けた前記電流を大地もしくは水域に逃がす避雷装置(4)とを備える風力発電設備(10)の導通検査を行う検査装置(20)であって、前記検査装置は、前記受雷部に接触させる導電性材料からなる複数の受雷部接触部本体(54a,54b)により構成される受雷部接触部(54)と、前記避雷装置と通電可能な状態で前記避雷装置と接触させる避雷装置接触部(59)と、複数の前記受雷部接触部本体の間における導通検査を行う端子間導通検査部(551)と、前記受雷部接触部、前記避雷装置接触部、及び、前記端子間導通検査部を搭載する飛行体(5)と、を備える、風力発電設備の検査装置。
【0014】
[2] 前記受雷部接触部は、複数の前記受雷部接触部本体が離間して設けられている、[1]に記載の風力発電設備の検査装置。
【0015】
[3] 前記端子間導通検査部は、複数の前記受雷部接触部本体が前記受雷部を介して通電することにより複数の前記受雷部接触部本体の間における導通検査を行う、[2]に記載の風力発電設備の検査装置。
【0016】
[4] 前記受雷部接触部が前記受雷部に接触し、かつ、前記避雷装置接触部が前記避雷装置に接触したときに流れる前記電流に基づいて前記風力発電設備の導通検査を行う受雷部導通検査部(552)、を備える、[1]または[3]に記載の風力発電設備の検査装置。
【0017】
[5] 大地もしくは水域に立設された支柱(1)と、軸回りに回転する風車(3)と、前記風車のブレード(32)に設けられていて落雷による電流を受ける受雷部(41)と、前記受雷部が受けた前記電流を大地もしくは水域に逃がす避雷装置(4)とを備える風力発電設備(10)の導通検査を行う検査方法であって、前記受雷部に接触させる導電性材料からなる複数の受雷部接触部本体(54a,54b)により構成される受雷部接触部(54)と、前記避雷装置と通電可能な状態で前記避雷装置と接触させる避雷装置接触部(59)と、複数の前記受雷部接触部本体の間における導通検査を行う端子間導通検査部(551)と、前記受雷部接触部が前記受雷部に接触し、かつ、前記避雷装置接触部が前記避雷装置に接触したときに流れる前記電流に基づいて前記風力発電設備の導通検査を行う受雷部導通検査部(552)と、前記受雷部接触部、前記避雷装置接触部、前記受雷部導通検査部、及び、前記端子間導通検査部を搭載する飛行体(5)と、を備える、前記風力発電設備の検査装置(20)を用いて、複数の前記受雷部接触部本体を前記受雷部に接触させるステップと、複数の前記受雷部接触部本体、前記受雷部、及び、前記端子間導通検査部により第1閉回路を形成するステップと、前記端子間導通検査部が前記第1閉回路に前記電流が流れているか否かを判定するステップと、前記避雷装置接触部を前記避雷装置に接触させるステップと、前記受雷部接触部、前記避雷装置、及び、前記避雷装置接触部により第2閉回路を形成するステップと、前記受雷部導通検査部が前記第2閉回路に前記電流が流れているか否かを判定するステップと、を実行する風力発電設備の検査方法。
【0018】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、実物と異なる場合がある。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る風力発電設備10の検査装置20及び検査対象である風力発電設備10の概要を示す図である。
【0020】
<風力発電設備>
図1に示すように風力発電設備10は、周囲に高層建造物がなく、風況のよい場所(山頂、沿岸等)に設けられている。風力発電設備10は、支柱1と、ナセル2と、風車3と、避雷装置4と、を備えている。
【0021】
支柱1は、地面又は海等の水域に設けられた基礎に立設されている。支柱1は、内部に空洞が形成されており、作業者が保守や点検のために支柱1内を移動できるようになっている。支柱1は、例えば、十分な強度を有する導電性材料から形成されており、支柱1に流れる電流を、接地線11を介して大地もしくは水中(海底、水底を含む)に逃がすことができる。支柱1の基端部には、大地もしくは水中に接地する接地線11が通電可能(電気的)に接続されている。すなわち、支柱1及び接地線11は、避雷装置4の一部としても機能する。
【0022】
ナセル2は、支柱1の上端部に設けられている。ナセル2は、内部に空洞が形成されており、作業者が保守や点検のためにナセル2内を移動できるようになっている。ナセル2内には、風車3の軸31から伝達された回転力を電気に変換する発電機、発電機の発電効率を高めるために風車3の軸31の回転速度を増加させる増速機、強風時の風車3の回転を停止させるブレーキ装置等が設けられている。
【0023】
風車3は、回転軸となる軸31と、軸31に所定間隔をあけて設けられたブレード32と、を備えている。軸31の一部は、ナセル2内に収容されており、増速機に連結されている。ブレード32は、例えば、軸31に対して互いに等間隔となるように合計で3枚設けられている。
【0024】
避雷装置4は、落雷による電流を大地もしくは水中に逃がすものである。避雷装置4は、ブレード32に設けられている。避雷装置4は、受雷部41と、導体42と、を備えている。なお、図1及び後述する図4から図6において、避雷装置4が風車3の3枚のブレード32のうち1枚に設けられている例を示しているが、風車3に設けられている避雷装置4の数はこれに限定されない。
【0025】
受雷部41は、導電性材料から形成されており、ブレード32の先端部または先端部近傍に設けられている。受雷部41は、一端がブレード32の表面に露出するように、ブレード32に設けられている。
【0026】
導体42は、導電性材料から形成されており、ブレード32の内部に設けられている。導体42は、ブレード32の長手方向(延在方向)に沿って設けられており、一端が受雷部41に通電可能に接続され、他端が支柱1に通電可能に接続されている。導体42が支柱1に通電可能に接続されていることにより、受雷部41は、導体42、支柱1、及び接地線11とともに避雷装置4として機能する。
【0027】
<風力発電設備の検査装置>
風力発電設備10の検査装置20について説明する。
【0028】
図2は、検査装置20の概要を示す斜視図である。
【0029】
検査装置20は、風力発電設備10の導通を検査する。風力発電設備10のうち、特に、ブレード32には落雷により大きな電流が流れることがある。検査装置20は、このような落雷により風力発電設備10の損傷を防止するために、風力発電設備10において、その電流を大地もしくは水中へ逃がすために導通が確保されていることを検査する。
【0030】
図2に示すように、検査装置20は、飛行体5に、受雷部接触部54、制御部55、及び、避雷装置接触部59を備えている。
【0031】
飛行体5は、遠隔操作により空中を飛行することができるものである。飛行体5は、主に、本体部51と、駆動部52と、翼部53と、を備えている。
【0032】
本体部51は、飛行体5のフレームを構成する。本体部51は、飛行体5の各部である駆動部52及び翼部53と、検査装置20を構成する受雷部接触部54、制御部55、及び、避雷装置接触部59とを支持する。図2において、本体部51の形状は、簡略化して示したものであるため、図2の形状に限定されない。
【0033】
駆動部52は、翼部53を回転させる機能を有する。駆動部52は、具体的には、例えば、電動のモータから構成されている。駆動部52は、翼部53ごとに設けられており、例えば、図2に示すように4つ設けられている。
【0034】
翼部53は、駆動部52それぞれの駆動軸に設けられている。翼部53は、駆動部52の駆動によって回転する回転翼である。
【0035】
図3は、検査装置20における受雷部接触部54、避雷装置接触部59、及び制御部55の構成と風力発電設備10の受雷部41及びその周辺の構成とを示す模式図である。
【0036】
図2及び図3に示すように、受雷部接触部54は、複数、例えば、2つの受雷部接触部本体54a,54bにより構成される。受雷部接触部本体54a,54bは、導電性材料から形成されており、支持部541により本体部51から外側に突出した位置に設けられている。受雷部接触部本体54a,54bは、少なくともいずれか一方をブレード32に設けられている受雷部41に接触させることにより、制御部55により実行される風力発電設備10の導通検査に用いられる。受雷部接触部本体54aは、導電性材料から形成されているケーブル542により、制御部55と通電可能な状態で接続されている。受雷部接触部本体54bは、導電性材料から形成されているケーブル543により、制御部55と通電可能な状態で接続されている。受雷部接触部本体54a,54bは、検査時に多少の位置ズレがあった場合でも受雷部41に接触しやすくするため、例えば、受雷部41に対して十分な接触面を有するように形成されているのが望ましい。また、受雷部接触部本体54a,54bは、一方の受雷部接触部本体54aと他方の受雷部接触部本体54bとが所定の距離で離間して設けられているのが望ましい。
【0037】
避雷装置接触部59は、導電性材料から形成されている。避雷装置接触部59は、導電性材料から形成されているケーブル61により、制御部55と通電可能な状態で接続されている。
【0038】
避雷装置接触部59は、ケーブル61とともに飛行体5の本体部51の適宜な箇所から下方に向かって垂下されている。避雷装置接触部59は、図1に示す風力発電設備10の支柱1など、風力発電設備10において避雷装置4を構成する部位に接触させることにより、制御部55により実行される風力発電設備10の導通検査に用いられる。図2において、避雷装置接触部59の形状は、簡略化して示したものであるため、図2の形状に限定されない。
【0039】
制御部55は、本体部51内に設けられている。制御部55は、検査装置20における飛行体5の機能を制御するとともに、端子間導通検査部551及び受雷部導通検査部552の機能を実現する。これらの機能部を実現するために、制御部55には、上述したようにケーブル542,543を介して受雷部接触部本体54a,54bが通電可能に接続しているとともに、ケーブル61を介して避雷装置接触部59が通電可能に接続している。
【0040】
飛行体5の機能を制御する機能を含めて、上述した制御部55における機能部は、例えば、プログラム処理装置によって実現されている。例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、及び入出力I/F回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えばマイクロコントローラ)において、CPUがメモリに記憶されているプログラムに従って各種演算処理を実行し、その処理結果に基づいてA/D変換回路や入出力インターフェース回路等の周辺回路を制御することによって、上述した機能ブロックが実現されている。
【0041】
端子間導通検査部551は、検査装置20における、複数の受雷部接触部本体54a,54bの間の導通を確認する機能部である。端子間導通検査部551は、複数の受雷部接触部本体54a,54bのうち一方、例えば、受雷部接触部本体54aに電流を流す。受雷部接触部本体54a,54bがいずれも風力発電設備10の受雷部41に接触すると、端子間導通検査部551から受雷部接触部本体54aに流れる電流は、受雷部41を介して他方の受雷部接触部本体54bに流れてケーブル543から端子間導通検査部551に戻る、図3に示す矢印L1のループ、すなわち、第1閉回路を形成する。端子間導通検査部551は、第1閉回路L1により、2つの受雷部接触部本体54a,54bの導通を確認することで、受雷部接触部本体54a,54bが受雷部41に接触したことを判別する。
【0042】
端子間導通検査部551は、複数の受雷部接触部本体54a,54bの間の導通が確認された場合には、作業者が操作する外部機器に報知部を設けておくことで、作業者は容易に導通の判定結果を知ることができる。報知部の具体例としては、例えば、ブザー音を発する音声出力装置、あるいは、LEDやモニタ等の表示装置などが挙げられる。
【0043】
受雷部導通検査部552は、風力発電設備10に電流を流して避雷装置4の導通の状態を検査する導通テスターとしての機能部である。受雷部導通検査部552は、受雷部接触部54及び避雷装置接触部59と通電可能に接続されている。受雷部接触部54が受雷部41に通電可能に接続するとともに、避雷装置接触部59が支柱1などの風力発電設備10において避雷装置4を構成する部位に接触することで、受雷部導通検査部552は、図3及び図4において矢印L2で示す導通検査の測定用の閉回路を形成することができる。
【0044】
受雷部導通検査部552は、受雷部接触部54が受雷部41に接触し避雷装置接触部59が避雷装置4に接触することで、図3において矢印L2で示すループ、すなわち、第2閉回路が形成されて電流が流れるので、電流が流れるか否かの情報に基づいて風力発電設備10の導通検査の判定を行うことができる。
【0045】
受雷部導通検査部552は、第2閉回路L2の導通が確認された場合には、先に説明した端子間導通検査部551におけると同様に、作業者が操作する外部機器に報知部を設けておくことで、作業者は容易に導通の判定結果を知ることができる。
【0046】
制御部55は、飛行体5における各駆動部52の駆動を独立して制御する。制御部55は、各駆動部52の駆動を独立して制御することで、各翼部53の回転速度を調節することができる。すなわち、制御部55は、各翼部53の回転速度に差をつけることによって、飛行体5の上昇、下降、前進、後退、水平方向への回転を自在に行わせることができる。また、制御部55は、飛行体5の動作を操作用のリモートコントローラなどの外部機器との通信機能を有している。このため、制御部55は、外部機器から受け付けた飛行体5の操作に応じて上述した駆動部52の駆動制御を行うことができる。飛行体5は、制御部55及び駆動部52に電力を供給する電源を有している。
【0047】
<風力発電設備の検査方法>
検査装置20を用いた風力発電設備の検査方法について説明する。以下では、風力発電設備10の導通検査方法について説明する。
【0048】
図1に示すように、風力発電設備の検査方法において、検査装置20の作業者は、風力発電設備10の付近から検査装置20を操縦する。作業者は、ブレード32の先端部近傍まで検査装置20を移動させる。作業者は、検査装置20が風力発電設備10に近づくと、避雷装置接触部59及びケーブル61を風力発電設備10に向かって降下させる。
【0049】
作業者は、例えば、検査装置20に備え付けられたカメラで撮像した映像や、船舶からの望遠鏡での確認により、受雷部接触部54が受雷部41に対向するように検査装置20の位置を調節して接近する。
【0050】
検査装置20の位置を決めた後、作業者は、検査装置20をブレード32に接近させて避雷装置接触部59を支柱1に接触させる。また、作業者は、受雷部接触部54を受雷部41に接触させる。避雷装置接触部59を支柱1に接触させるステップと、受雷部接触部54を受雷部41に接触させるステップとは、順番が前後しても、また、同時にないしはほぼ同時に行ってもよい。
【0051】
検査装置20における端子間導通検査部551は、第1閉回路L1により、2つの受雷部接触部本体54a,54bの導通を確認することで、受雷部接触部本体54a,54bが受雷部41に接触したことを判別するステップを実行する。具体的には、受雷部接触部54を受雷部41に接触させる際に、端子間導通検査部551は、受雷部接触部本体54aに電流を流す。受雷部接触部本体54a,54bがいずれも風力発電設備10の受雷部41に接触すると、端子間導通検査部551から受雷部接触部本体54aに流れる電流は、受雷部41を介して他方の受雷部接触部本体54bに流れてケーブル543から端子間導通検査部551に戻る、図3に示した第1閉回路L1を形成する。第1閉回路L1が形成されることにより、端子間導通検査部551は、複数の受雷部接触部本体54a,54bのいずれもが受雷部41に接触したと判定することができる。
【0052】
図4は、風力発電設備の検査方法において、受雷部接触部54、避雷装置4、及び、避雷装置接触部59により第2閉回路L2を形成するステップと、第2閉回路L2に電流が流れているか否かを判定するステップと、を示す模式図である。図4に示すように、受雷部41及び導体42が断線していなければ、受雷部導通検査部552から出力された電流は、ケーブル61、避雷装置接触部59、支柱1、導体42、受雷部41、受雷部接触部54、ケーブル542,543によって形成される第2閉回路L2内を流れ続ける。第2閉回路内に電流が流れるか否かを判定することにより、受雷部導通検査部552は、風力発電設備10の導通検査を行うことができる。
【0053】
[実施の形態の作用効果]
以上のように、検査装置20及び風力発電設備10の検査方法によれば、飛行体5に端子間導通検査部551、複数の受雷部接触部本体54a,54b、及び、避雷装置接触部59を有する。このような構成により、検査装置20は、複数の受雷部接触部本体54a,54bのそれぞれと受雷部41とが通電可能に接続することにより、第1閉回路L1を形成するので、第1閉回路L1内に端子間導通検査部551から供給される電流が流れるか否かの情報に基づいて導通を判定することにより、受雷部接触部本体54a,54bの導通検査を行うことができる。
【0054】
つまり、検査装置20及び風力発電設備10の検査方法によれば、飛行体5を用いて風力発電設備10の導通検査を行う場合に、作業者が、受雷部41と飛行体5に取り付けられる受雷部接触部本体54a,54bとが接続していることを容易に確認することができる。
【0055】
また、検査装置20及び風力発電設備10の検査方法によれば、端子間導通検査部551により受雷部41と受雷部接触部本体54a,54bとが接続していることが確認することができることで、受雷部導通検査部552と受雷部41との導通が確認できない場合に、作業者が、風力発電設備10に断線等の支障があることを推定することができる。このため、検査装置20及び風力発電設備10の検査方法によれば、検査装置20と風力発電設備10との接触状態、及び、風力発電設備10の避雷装置4の導通検査の確認作業を、容易に行うことができる。
【0056】
従って、検査装置20及び風力発電設備10の検査方法によれば、風力発電設備検査における検査装置20の受雷部接触部54と風力発電設備10の受雷部41との接触状態を確認する作業の容易性を向上することができる。
【0057】
[実施の形態の拡張]
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られるものではない。
【0058】
図5は、本実施の形態の変形例1に係る検査装置120の概要を示す斜視図である。図6は、変形例2に係る検査装置220における受雷部接触部254、避雷装置接触部59、及び制御部55の構成と風力発電設備10の受雷部41及びその周辺の構成とを示す模式図である。
【0059】
検査装置は、以上説明した例に限定されず、例えば、図5及び図6に示すような構成であってもよい。図5及び図6において、検査装置120は、主に受雷部接触部154,254の構成が、先に説明した検査装置20と異なる。
図5に示す変形例1の検査装置120において、受雷部接触部154は、本体部51の側面1つにおいて、水平方向に延びるローラー状の受雷部接触部本体154a,154bが2つ設けられている。受雷部接触部本体154a,154bは、ローラー状の導体により構成される。このような受雷部接触部本体154a,154bにより構成される受雷部接触部154を有する検査装置120によれば、受雷部接触部154の水平方向における受雷部41に対する接触面積を広く確保することができるため、受雷部41に対して容易に接触させることができる。
【0060】
図5に示す変形例2の検査装置220において、受雷部接触部254は、本体部51の側面1つにおいて、水平方向に延びるローラー状のローラー部253の側面(長手方向の面)255における両端部に、受雷部接触部本体254a,254bが設けられている。検査装置220における受雷部接触部本体254a,254bは、ローラー部253の側面255の表面において、導電パターンのように設けられている。このような受雷部接触部本体254a,254bにより構成される受雷部接触部254を有する検査装置220によれば、受雷部接触部154の水平方向における位置を離間させて配置することができる。
【0061】
例えば、受雷部41は、ブレード32の先端部に一端が露出するように設けられるものに限らず、ブレード32の先端部を受雷部41で構成してもよい。この場合、受雷部41がブレード32の一部となる。
【0062】
また、導体42は、支柱1の上端部に接続される場合に限らず、支柱1の基端部まで延ばし、水中に接地させてもよい。この場合には、支柱1は、導電性材料から形成されていなくてもよい。
【0063】
また、図2図5において、本体部51は、箱状に形成されているが、このような形状に限定されることはなく、飛行体5の各機能を実現できるようであれば自由に変更可能である。また、翼部53の形状、数量、配置についても、飛行体5としての機能を実現できる範囲内で自由に変更可能である。
また、受雷部接触部54は、検査装置20をブレード32に接近させた後、静電吸着の原理を利用して、受雷部41に接触させてもよい。
【0064】
また、受雷部41が磁性体で構成されている場合、あるいは、受雷部41近傍のブレード32に磁性体を設けた場合には、電磁石を利用して受雷部接触部54を受雷部41に接触させるようにしてもよい。
【0065】
図7は、本実施の形態の変形例2に係る風力発電設備10の検査装置20及び検査対象である風力発電設備10の概要を示す図である。以上説明した実施の形態において、検査装置20及び風力発電設備10の検査方法は、地面に設けられた基礎に立設されている例について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図7に示すように海等の水域における海水Sの水面上に露出する風力発電設備10に対しても適用することができる。
【0066】
また、端子間導通検査部551及び受雷部導通検査部552は、飛行体5の内部に搭載されている例について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、端子間導通検査部551及び受雷部導通検査部552が飛行体5とは別の構成要素に搭載されていてもよい。具体的には、飛行体5とは別の装置である導通テスターが、端子間導通検査部551及び受雷部導通検査部552の機能を有し、風力発電設備10に電流を流して導通の状態を検査するものであってもよい。この場合、導通テスターは、不図示のケーブルにより飛行体5の受雷部接触部54に通電可能に接続するとともに、ケーブル61を支柱1またはナセル2近傍の導体42に通電可能に接続すればよい。
【0067】
また、避雷装置接触部59は、図1,2、図4,5などにおいてケーブル61とともに飛行体5の本体部51の適宜な箇所から下方に向かって垂下されている箱状の部材の例について説明したが、本発明はこれに限定されず、適宜な手法により受雷部導通検査部552に接続しているケーブル61と風力発電設備10の接地極Gとを接続することができればよい。具体的には、避雷装置接触部59は、例えば、ケーブル61を直接的に風力発電設備10の接地極Gと接続する場合は、ケーブル61の先端部が避雷装置接触部59として機能する。
【0068】
また、受雷部接触部54,154,254において、受雷部接触部本体54a,54b,154a,154b,254a,254bは、いずれも2つ設けられている例について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、3つ以上の複数個の受雷部接触部本体を有していてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…支柱、2…ナセル、3…風車、4…避雷装置、5…飛行体、11…接地線、20,120,220…検査装置、31…軸、32…ブレード、41…受雷部、42…導体、51…本体部、52…駆動部、53…翼部、54,154,254…受雷部接触部、54a,54b,154a,154b,254a,254b…受雷部接触部本体、55…制御部、57…格納部、58…蓋部、59…避雷装置接触部、61,542,543…ケーブル、253…ローラー部、255…側面、511…底部、541…支持部、551…端子間導通検査部、552…受雷部導通検査部、G…接地極、S…海水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7