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  • 特開-電子装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128714
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20240913BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20240913BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240913BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240913BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H01L23/12 L
H01L21/56 R
C09J7/38
C09J201/00
C09J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037869
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】アールエム東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】三浦 徹
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F061
【Fターム(参考)】
4J004AA06
4J004AA07
4J004AA10
4J004AA11
4J004AA14
4J004AA18
4J004AB01
4J004CA01
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004EA05
4J004FA05
4J040DA001
4J040DF001
4J040DF011
4J040DF041
4J040DF051
4J040EF001
4J040EF282
4J040EK031
4J040HA066
4J040HA076
4J040HB44
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA11
4J040KA16
4J040LA06
4J040MA10
4J040NA19
4J040PA42
5F061AA01
5F061BA05
5F061CB11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】粘着性フィルム上において微細な配線層を形成することが可能な電子装置の製造方法を提供する。
【解決手段】支持基板60と、前記支持基板60に貼り付けられた粘着性フィルム50と、を備える構造体を準備する工程と、前記粘着性フィルム50上にレジストを用いてレジストパターン70を形成する工程と、前記粘着性フィルム50上に無電解めっきにより配線層80を形成する工程と、前記レジストパターン70を除去する工程と、を含む電子装置の製造方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、前記支持基板に貼り付けられた粘着性フィルムと、を備える構造体を準備する工程と、
前記粘着性フィルム上にレジストを用いてレジストパターンを形成する工程と、
前記粘着性フィルム上に無電解めっきにより配線層を形成する工程と、
前記レジストパターンを除去する工程と、
を含む電子装置の製造方法。
【請求項2】
前記配線層はエッチング工程を経ないで形成される、請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項3】
前記配線層の上に、電子部品を搭載する工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の電子装置の製造方法。
【請求項4】
前記配線層上に搭載した前記電子部品を封止材で封止する工程をさらに含む、請求項3に記載の電子装置の製造方法。
【請求項5】
粘着性樹脂層(B)が外部刺激により粘着力が低下する層を含み、
前記封止工程の後に、外部刺激を与えることにより前記粘着性樹脂層(B)の粘着力を低下させて前記支持基板又は前記配線層から前記粘着性フィルムを剥離する第1剥離工程をさらに備える、請求項4に記載の電子装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1剥離工程の後に、前記支持基板又は前記配線層から前記粘着性フィルムを剥離する第2剥離工程をさらに備える、請求項5に記載の電子装置の製造方法。
【請求項7】
前記電子装置がファンアウト型パッケージを含む、請求項1~6のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【請求項8】
前記粘着性フィルムが基材層と、前記基材層の第1面側に設けられた粘着性樹脂層(A)と、前記基材層の第2面側に設けられた粘着性樹脂層(B)と、を備え、
前記粘着性樹脂層(A)又は前記粘着性樹脂層(B)の少なくとも一方が、還元剤を含み、
前記粘着性樹脂層(A)又は前記粘着性樹脂層(B)のうち前記還元剤を含む層が設けられた面に前記配線層を形成する、請求項1~7のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【請求項9】
前記還元剤が鉄、コバルト、ニッケル、スズ、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金及び金からなる群から選択される一種又は二種以上を含む、請求項8に記載の電子装置の製造方法。
【請求項10】
前記還元剤がパラジウムを含む、請求項9に記載の電子装置の製造方法。
【請求項11】
前記還元剤がパラジウム単体及びハロゲン化パラジウムからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、請求項10に記載の電子装置の製造方法。
【請求項12】
前記粘着性樹脂層(A)及び前記粘着性樹脂層(B)のうち少なくとも一方が、(メタ)アクリル系粘着性樹脂、シリコーン系粘着性樹脂、ウレタン系粘着性樹脂、オレフィン系粘着性樹脂及びスチレン系粘着性樹脂から選択される一種又は二種以上を含む、請求項8~11のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【請求項13】
前記粘着性樹脂層(B)が外部刺激により粘着力が低下する自己剥離性粘着性樹脂層を含む、請求項8~12のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【請求項14】
前記自己剥離性粘着性樹脂層が加熱膨張型粘着剤を含み、
前記加熱膨張型粘着剤が、150℃を超える温度で加熱することで接着力が低下又は喪失する粘着剤である、請求項13に記載の電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置(例えば、半導体装置)の小型化・軽量化を図ることができる技術として、ファンアウト型WLP(ウエハレベルパッケージ)が開発されている。
【0003】
このようなファンアウト型WLPの製造方法に関する技術としては、例えば、特許文献1に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、基板レス半導体チップを樹脂封止する際に、貼着して使用される半導体装置製造用耐熱性粘着シートであって、上記耐熱性粘着シートは基材層と粘着剤層とを有し、該粘着剤層は貼り合わせ後の対SUS304粘着力が0.5N/20mm以上であり、樹脂封止工程完了時点に至るまでに受ける刺激により硬化して、対パッケージ剥離力が2.0N/20mm以下になる層であることを特徴とする半導体装置製造用耐熱性粘着シートが記載されている。
特許文献1には、金属製のリードフレームを用いない基板レス半導体チップを樹脂封止する際に、チップを指定の位置からずれること無く保持し、且つ使用後に糊残りを発生しないので、さらに加熱時にガスの発生がなく、粘着剤が溶着しないために、確実に配線を設けることができ、ひいては半導体パッケージの製造歩留まりを向上させると共に、シート剥離時の糊残りによる汚染を低減することができる効果を有すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-134811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ファンアウト型WLPの作製方法のひとつであるeWLB(Embedded Wafer Level Ball Grid Array)には、大きく分けて二つの方法がある。一つ目の方法は、支持基板に貼り付けた粘着性フィルム上に、半導体チップ等の複数の電子部品を離間させた状態で仮固定し、樹脂封止をおこない、その上に再配線層(RDL層)を形成する、チップファーストプロセスと呼ばれる工法である。二つ目の方法は、仮固定材上に再配線層(RDL層)を形成し、半導体チップ等の電子部品を接続した後に樹脂封止をおこなうRDLファーストプロセスと呼ばれる工法である。
【0007】
RDLファーストプロセスは、配線層形成の方法により、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、フルアディティブ法の三種類の方法に大別される。
サブトラクティブ法では、仮固定材上に金属層を形成し、これをエッチングして配線層を形成する。
セミアディティブ法では、(1)仮固定材上にシード層となる金属薄膜を形成し、(2)金属薄膜上にフォトリソグラフィーなどによりレジストパターンを形成し、(3)金属膜上で電解めっきをおこなってレジストパターン通りに配線層を形成し、(4)レジストパターンを除去し、(5)レジストパターンに覆われていた部分のめっきシード層を溶かす分だけエッチングをおこない、配線層を形成する。
フルアディティブ法では、まず配線層を形成したい面をキャタライズ(触媒化)し、次いでキャタライズした面にフォトリソグラフィーなどによりレジストパターンを形成し、次いで無電解めっきにより配線層を形成する。
【0008】
フルアディティブ法ではエッチングをおこなわずに配線層を形成できるため、微細な配線層を形成するのに有利である。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、粘着性フィルム上において微細な配線層を形成することが可能な電子装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以下に示す電子装置の製造方法が提供される。
【0011】
[1]
支持基板と、前記支持基板に貼り付けられた粘着性フィルムと、を備える構造体を準備する工程と、
前記粘着性フィルム上にレジストを用いてレジストパターンを形成する工程と、
前記粘着性フィルム上に無電解めっきにより配線層を形成する工程と、
前記レジストパターンを除去する工程と、
を含む電子装置の製造方法。
[2]
前記配線層はエッチング工程を経ないで形成される、上記[1]に記載の電子装置の製造方法。
[3]
前記配線層の上に、電子部品を搭載する工程をさらに含む、上記[1]又は[2]に記載の電子装置の製造方法。
[4]
前記配線層上に搭載した前記電子部品を封止材で封止する工程をさらに含む、上記[3]に記載の電子装置の製造方法。
[5]
粘着性樹脂層(B)が外部刺激により粘着力が低下する層を含み、
前記封止工程の後に、外部刺激を与えることにより前記粘着性樹脂層(B)の粘着力を低下させて前記支持基板又は前記配線層から前記粘着性フィルムを剥離する第1剥離工程をさらに備える、上記[4]に記載の電子装置の製造方法。
[6]
前記第1剥離工程の後に、前記支持基板又は前記配線層から前記粘着性フィルムを剥離する第2剥離工程をさらに備える、上記[5]に記載の電子装置の製造方法。
[7]
前記電子装置がファンアウト型パッケージを含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
[8]
前記粘着性フィルムが基材層と、前記基材層の第1面側に設けられた粘着性樹脂層(A)と、前記基材層の第2面側に設けられた粘着性樹脂層(B)と、を備え、
前記粘着性樹脂層(A)又は前記粘着性樹脂層(B)の少なくとも一方が、還元剤を含み、
前記粘着性樹脂層(A)又は前記粘着性樹脂層(B)のうち前記還元剤を含む層が設けられた面に前記配線層を形成する、上記[1]~[7]のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
[9]
前記還元剤が銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金及び金からなる群から選択される一種又は二種以上を含む、上記[8]に記載の電子装置の製造方法。
[10]
前記還元剤がパラジウムを含む、上記[9]に記載の電子装置の製造方法。
[11]
前記還元剤がパラジウム単体及びハロゲン化パラジウムからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、上記[10]に記載の電子装置の製造方法。
[12]
前記粘着性樹脂層(A)及び前記粘着性樹脂層(B)のうち少なくとも一方が、(メタ)アクリル系粘着性樹脂、シリコーン系粘着性樹脂、ウレタン系粘着性樹脂、オレフィン系粘着性樹脂及びスチレン系粘着性樹脂から選択される一種又は二種以上を含む、上記[8]~[11]のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
[13]
前記粘着性樹脂層(B)が外部刺激により粘着力が低下する自己剥離性粘着性樹脂層を含む、上記[8]~[12]のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
[14]
前記自己剥離性粘着性樹脂層が加熱膨張型粘着剤を含み、
前記加熱膨張型粘着剤が、150℃を超える温度で加熱することで接着力が低下又は喪失する粘着剤である、上記[13]に記載の電子装置の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、粘着性フィルム上において微細な配線層を形成することが可能な電子装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る粘着性フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
図2】本発明に係る粘着性フィルム上での無電解めっきによる配線層形成の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<電子装置の製造方法>
まず、本実施形態に係る電子装置の製造方法について説明する。
【0015】
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、支持基板と、前記支持基板に貼り付けられた粘着性フィルムと、を備える構造体を準備する工程と、前記粘着性フィルム上にレジストを用いてレジストパターンを形成する工程と、前記粘着性フィルム上に無電解めっきにより配線層を形成する工程と、前記レジストパターンを除去する工程と、を含む。
【0016】
無電解めっきとは、金属イオンと還元剤の化学反応により、金属イオンを還元析出させる方法である。
【0017】
ここで、本実施形態に係る粘着性フィルム上での無電解めっきによる配線層形成について、粘着性樹脂層(A)が還元剤を含む場合を例にして、図2を用いて説明する。
(1)粘着性フィルム50の第2面(基材層の第2面10B側の面)を支持基板60に貼り付けることにより、構造体100を準備する。
(2)粘着性フィルム50の第1面(基材層の第1面10A側の面)にレジストを用いてレジストパターン70を形成する。
(3)粘着性フィルム50の第1面に無電解めっきにより配線層80を形成する。具体的には、粘着性フィルム50の第1面上のレジストパターン70が形成されていない場所にめっき液を接触させ、粘着性フィルム50の第1面にめっき液を触れさせて、めっき液中の金属イオンを還元析出させることにより、配線層80を形成する。
(4)レジストパターン70を除去する。
【0018】
なお、上記では粘着性樹脂層(A)が還元剤を含む場合について記載したが、粘着性樹脂層(B)が還元剤を含んでもよい。その場合、粘着性フィルム50の第1面を支持基板60に貼り付け、第2面にレジストパターン70及び配線層80を形成する。
また、粘着性樹脂層(A)及び粘着性樹脂層(B)は還元剤を含まなくてもよい。その場合、例えば、粘着性フィルム50の第1面10A又は第2面10Bに還元剤を付着させ、その後粘着性フィルム50をめっき液に浸漬することにより、無電解めっきをおこなうことができる。また、粘着性フィルム50をめっき液に浸漬した後に粘着性フィルム50に還元剤を付着させて無電解めっきをおこなってもよい。
【0019】
本実施形態に係る電子装置の製造方法によると、粘着性フィルム上での無電解めっきが可能であるため、エッチングが不要なフルアディティブ法による配線層の形成が可能である。
【0020】
本実施形態に係る電子装置の製造方法においては、配線層80がエッチング工程を経ないで形成されることが好ましい。
エッチングをおこなわないことにより、エッチングにより配線が断線したりショートしたりすることを回避できるため、微細配線を形成するという観点で有利である。
また、エッチングをおこなわずに配線層を形成できるというのは、廃液量を低減させ、環境負荷を低減させるという観点でも有利である。そのため、本実施形態の粘着性フィルムによると、廃液量を低減させ、環境負荷を低減させることができる。
【0021】
本実施形態に係る電子装置の製造方法における無電解めっきの方法は特に限定されない。例えば、レジストパターン70を形成した後、めっき液中に浸漬させめっき浴をすることにより無電解めっきをおこなうことができる。
【0022】
本実施形態に係るめっき液は特に限定されず、金属元素を含有するものであればよい。めっき液が含有する金属元素は、例えば、銅、白金、金、銀、ニッケル、クロム、コバルト及びスズからなる群から選択される一種又は二種以上を含み、好ましくは銅及びニッケルからなる群から選択される一種又は二種以上を含み、より好ましくはニッケルを含む。
【0023】
本実施形態に係るめっき液は、水及び水溶性有機溶剤からなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0024】
無電解めっきの処理温度は特に限定されず、例えば25℃以上であり、好ましくは35℃以上であり、より好ましくは45℃以上であり、そして、例えば95℃以下である。また、無電解めっきの処理時間も特に限定されず、例えば5分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは20分以上であり、そして、例えば3時間以下である。
【0025】
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、配線層80の上に、電子部品を搭載する工程をさらに含んでもよい。
【0026】
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、配線層80上に搭載した電子部品を封止材で封止する工程をさらに含んでもよい。
【0027】
電子部品を封止材で封止する方法は特に限定されないが、例えば、封止材を加熱し、硬化させることにより、電子部品を封止することができる。なお、加熱温度は特に限定されないが、粘着性樹脂層(B)の粘着力を維持する観点から、150℃以下であることが好ましい。
【0028】
本実施形態に係る封止材の形態は特に限定されないが、例えば、顆粒状、シート状または液状である。
【0029】
封止材の成分は特に限定されないが、好ましくはエポキシ樹脂系封止材を含み、粘着性フィルム50への封止材の親和性がより良好になり、電子部品をより一層ムラなく封止することが可能となる観点から、より好ましくは液状のエポキシ樹脂系封止材を含む。
このようなエポキシ樹脂系封止材としては、例えば、ナガセケムテックス社製のT693/R4000シリーズやT693/R1000シリーズ、T693/R5000シリーズ等を用いることができる。
【0030】
封止工程における封止方法は特に限定されないが、トランスファー成形法、射出成形法、圧縮成形法及び注型成形法からなる群から選択される一種または二種以上の成形方法を用いて、前記封止材により前記電子部品を封止することが好ましい。
【0031】
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、粘着性樹脂層(B)が外部刺激により粘着力が低下する層を含み、封止工程の後に、外部刺激を与えることにより粘着性樹脂層(B)の粘着力を低下させて支持基板60又は配線層80から粘着性フィルム50を剥離する第1剥離工程をさらに備えてもよい。
粘着性樹脂層(B)の粘着力を低下させる手段は特に限定されないが、例えば、粘着性樹脂層(B)が150℃を超える温度に加熱により粘着力が低下する層を含む場合、150℃を超える温度に加熱することにより粘着力を低下させることができる。
【0032】
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、第1剥離工程の後に、支持基板60又は配線層80から粘着性フィルム50を剥離する第2剥離工程をさらに備えてもよい。
支持基板60又は配線層80から粘着性フィルム50を剥離する方法としては、例えば、機械的に剥離する方法や、粘着性フィルム50表面の粘着力を低下させてから剥離する方法等が挙げられる。
【0033】
本実施形態に係る電子装置の製造方法により得られる電子装置の種類は特に限定されないが、好ましくはファンアウト型パッケージを含む。ファンアウト型パッケージではチップの外側まで端子を広げること(fan out)ができるため、チップ面積と比べて端子数が多い用途でも採用できる。また、パッケージ基板が不要になるため薄型化も可能になる。
【0034】
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、好ましくは、粘着フィルム50が、基材層10と、基材層10の第1面10A側に設けられた粘着性樹脂層(A)と、前記基材層10の第2面10B側に設けられた粘着性樹脂層(B)と、を備え、粘着性樹脂層(A)又は粘着性樹脂層(B)の少なくとも一方が、還元剤を含み、粘着性樹脂層(A)又は粘着性樹脂層(B)のうち還元剤を含む層が設けられた面に配線層80を形成する。
【0035】
本実施形態に係る還元剤は、めっき液中の金属イオンを還元析出できるものであれば特に限定されないが、金属イオンの還元析出をより一層効率的におこなう観点から、好ましくは、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金及び金からなる群から選択される一種又は二種以上を含み、より好ましくは銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金及び金からなる群から選択される一種又は二種以上を含み、さらに好ましくはパラジウムを含み、さらに好ましくはパラジウム単体及び塩化パラジウム、臭化パラジウム等のハロゲン化パラジウムからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0036】
本実施形態に係る還元剤の形状は特に限定されないが、金属イオンの還元析出をより一層効率的におこなう観点から、粒子状であることが好ましい。
【0037】
本実施形態に係る還元剤の市販品としては、イオックス社製「ML-001N」などのパラジウムナノパウダー、日産化学工業株式会社製「HYPERTECH(登録商標)PL-シリーズ感光性無電解めっき用核剤」などのパラジウム粒子と樹脂粒子を複合化させた粒子などを例示できる。
【0038】
本実施形態に係る還元剤の含有量は、めっき液中の金属イオンを還元析出できる量であれば特に限定されないが、金属イオンの還元析出をより一層効率的におこなう観点から、粘着性フィルム全体に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは5.0質量%以上である。
【0039】
本実施形態に係る還元剤を粘着性樹脂層(A)及び粘着性樹脂層(B)のうち少なくとも一方に含有させる方法は特に限定されず、還元剤を含有する粘着剤を基材層10に塗布してもよいし、あらかじめ基材層10上に粘着性樹脂層を形成してから還元剤を含侵させてもよい。
【0040】
<電子装置の製造方法に用いられる粘着性フィルム>
次いで、本実施形態に係る電子装置の製造方法において用いられる粘着性フィルムについて説明する。
【0041】
まず、本実施形態に係る粘着性フィルム50を構成する各層について説明する。
【0042】
(基材層)
基材層10は、粘着性フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。
基材層10は特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
上記樹脂フィルムを構成する樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;ポリアクリレート;ポリメタアクリレート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;エチレン・酢酸ビニル共重合体;ポリアクリロニトリル;ポリカーボネート;ポリスチレン;アイオノマー;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンエーテル等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、透明性や機械的強度、価格等のバランスに優れる観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミドから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選択される少なくとも一種がより好ましい。
【0043】
基材層10は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、基材層10を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよいが、基材層10の機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであることが好ましい。
【0044】
基材層10の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは1μm以上500μm以下、より好ましくは5μm以上300μm以下、さらに好ましくは10μm以上250μm以下である。
基材層10は、他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0045】
(粘着性樹脂層(A))
粘着性樹脂層(A)は、基材層10の一方の面側に設けられる層であり、例えば、電子装置の製造工程において封止材により電子部品を封止する際に、電子部品の表面に接触して電子部品を仮固定するための層である。
【0046】
粘着性樹脂層(A)は、好ましくは(メタ)アクリル系粘着性樹脂、シリコーン系粘着性樹脂、ウレタン系粘着性樹脂、オレフィン系粘着性樹脂及びスチレン系粘着性樹脂から選択される一種または二種以上を含み、これらの中でも粘着力の調整を容易にする観点から、より好ましくは(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)を含む。
【0047】
粘着性樹脂層(A)に使用される(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(a1)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(a2)を含む共重合体が挙げられる。
本実施形態において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、またはこれらの混合物を意味する。
【0048】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(a2)を含むモノマー混合物を共重合することにより得ることができる。
【0049】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(a1)を形成するモノマー(a1)としては、炭素数1~12程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。好ましくは炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(a1)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、10質量%以上98.9質量%以下であることが好ましく、50質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(a2)を形成するモノマー(a2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャル-ブチルアミノエチルアクリレート、ターシャル-ブチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等である。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)において、モノマー単位(a2)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0051】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)は、モノマー単位(a1)、モノマー単位(a2)以外に、2官能性モノマー単位(a3)や界面活性剤としての性質を有する特定のコモノマー(以下、重合性界面活性剤と称する)単位をさらに含んでもよい。
重合性界面活性剤は、モノマー(a1)、モノマー(a2)およびモノマー(a3)と共重合する性質を有すると共に、乳化重合する場合には乳化剤としての作用を有する。
【0052】
2官能性モノマー単位(a3)を形成するモノマー(a3)としては、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、例えば、両末端がジアクリレートまたはジメタクリレートで主鎖の構造がプロピレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製、商品名;PDP-200、同PDP-400、同ADP-200、同ADP-400)、テトラメチレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製、商品名;ADT-250、同ADT-850)およびこれらの混合型(例えば、日本油脂(株)製、商品名:ADET-1800、同ADPT-4000)であるもの等が挙げられる。
【0053】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)において、モノマー単位(a3)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0054】
重合性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンRN-10、同RN-20、同RN-30、同RN-50等)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンHS-10、同HS-20、同HS-1025等)、および分子内に重合性二重結合を持つ、スルホコハク酸ジエステル系(花王(株)製;商品名:ラテムルS-120A、同S-180A等)等が挙げられる。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)において、重合性界面活性剤の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0055】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)は、さらに必要に応じて、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の重合性2重結合を有するモノマーにより形成されたモノマー単位をさらに含有してもよい。
【0056】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)の重合反応機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。(メタ)アクリル系粘着性樹脂(a)の製造コスト、モノマーの官能基の影響および電子部品表面へのイオンの影響等を考慮すればラジカル重合によって重合することが好ましい。
ラジカル重合反応によって重合する際、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、メチルエチルケトンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-ヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物;2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等のアゾ化合物が挙げられる。
【0057】
乳化重合法により重合する場合には、これらのラジカル重合開始剤の中で、水溶性の過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、同じく水溶性の4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物が好ましい。電子部品表面へのイオンの影響を考慮すれば、過硫酸アンモニウム、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物がさらに好ましく、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物が特に好ましい。
【0058】
本実施形態に係る粘着性樹脂層(A)は、粘着性樹脂(A1)に加えて、架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤(A2)をさらに含むことが好ましい。
架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤(A2)は、粘着性樹脂(A1)が有する官能基と反応させ、粘着力および凝集力を調整するために用いる。
このような架橋剤(A2)としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物;N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N'-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の4官能性エポキシ系化合物;ヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物およびアジリジン系化合物から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
【0059】
架橋剤(A2)の含有量は、通常、架橋剤(A2)中の官能基数が粘着性樹脂(A1)中の官能基数よりも多くならない程度の範囲が好ましい。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合等、必要に応じて過剰に含有してもよい。
粘着性樹脂層(A)中の架橋剤(A2)の含有量は、粘着性樹脂層(A)の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、粘着性樹脂(A1)100質量部に対し、0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0060】
粘着性樹脂層(A)は、その他の成分として、可塑剤、粘着付与樹脂等の添加剤を含んでもよい。粘着性樹脂層(A)が放射線架橋型粘着性樹脂層の場合は放射線架橋のための各種添加剤を含んでもよい。粘着性樹脂層(A)中の粘着性樹脂(A1)および架橋剤(A2)の含有量の合計は、粘着性樹脂層(A)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。これにより、電子部品から粘着性フィルムを剥離する際の電子部品側の糊残りをより一層抑制することができる。
【0061】
粘着性樹脂層(A)の厚さは特に制限されないが、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0062】
粘着性樹脂層(A)は、例えば、基材層10上に粘着剤を塗布することにより形成することができる。粘着剤は溶剤に溶解して塗布液として塗布してもよいし、水系エマルジョンとして塗布してもよいし、液状の粘着剤を直に塗布してもよい。
中でも有機溶剤に溶解した粘着剤塗布液が好ましい。有機溶剤は特に限定されず、溶解性や乾燥時間を鑑みて公知の中から適宜選択すればよい。有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系;アセトン、MEK等のケトン系;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族系;ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の直鎖ないし環状脂肪族系;イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系を例示することができる。有機溶剤として酢酸エチル、トルエンが好ましい。これらの溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80~200℃の温度範囲において、10秒~10分間乾燥することが好ましい。さらに好ましくは、80~170℃において、15秒~5分間乾燥する。架橋剤と粘着剤との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40~80℃において5~300時間程度加熱してもよい。
また、基材層10と粘着性樹脂層(A)とは共押出成形によって形成してもよいし、フィルム状の基材層10とフィルム状の粘着性樹脂層(A)とをラミネート(積層)して形成してもよい。
【0063】
(粘着性樹脂層(B))
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、基材層10の第1面10Aとは反対側の第2面10B側に粘着性樹脂層(B)を備える。
【0064】
粘着性樹脂層(B)は、好ましくは(メタ)アクリル系粘着性樹脂、シリコーン系粘着性樹脂、ウレタン系粘着性樹脂、オレフィン系粘着性樹脂及びスチレン系粘着性樹脂から選択される一種または二種以上を含み、これらの中でも粘着力の調整を容易にする観点から、より好ましくは(メタ)アクリル系粘着性樹脂を含む。
【0065】
粘着性樹脂層(B)は、外部刺激により粘着力が低下する自己剥離性粘着性樹脂層を含むことが好ましい。これにより、外部刺激を与えることで支持基板60から粘着性フィルム50を容易に剥離することができる。
ここで、外部刺激により粘着力が低下する自己剥離性粘着性樹脂層としては、例えば、加熱により粘着力が低下する加熱剥離型の自己剥離性粘着性樹脂層や、放射線により粘着力が低下する放射線剥離型の自己剥離性粘着性樹脂層等が挙げられる。これらの中でも加熱により粘着力が低下する加熱剥離型の自己剥離性粘着性樹脂層が好ましい。
加熱剥離型の自己剥離性粘着性樹脂層としては、例えば、気体発生成分を含む加熱膨張型粘着剤、膨張して粘着力を低減できる熱膨張性の微小球を含む加熱膨張型粘着剤、熱により接着剤成分が架橋反応することで接着力が低下する加熱膨張型粘着剤等により構成された粘着性樹脂層が挙げられる。
【0066】
自己剥離性粘着性樹脂層は、好ましくは加熱膨張型粘着剤を含み、加熱膨張型粘着剤は、好ましくは150℃を超える温度で加熱することで接着力が低下又は喪失する粘着剤である。
ここで、150℃を超える温度で加熱することで接着力が低下または喪失することは、例えば、粘着性樹脂層(B)側をステンレス板に貼り付け、140℃で1時間の加熱処理をおこない、次いで、150℃を超える温度で2分間加熱した後に測定される、ステンレス板からの剥離強度により評価することができる。150℃を超える温度で加熱する際の具体的な加熱温度は、気体が発生する温度や熱膨張性の微小球が熱膨張する温度よりも高い温度に設定され、発生する気体や熱膨張性の微小球の種類によって適宜設定される。本実施形態において、接着力が喪失するとは、例えば、23℃、引張速度300mm/分の条件で測定される180°剥離強度が0.5N/25mm未満になる場合をいう。
【0067】
加熱膨張型粘着剤に使用される気体発生成分としては、例えば、アゾ化合物、アジド化合物、メルドラム酸誘導体等を用いることができる。また、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水酸化ホウ素ナトリウム、各種アジド類等の無機系発泡剤や、水;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジン系化合物;p-トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物;5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物;N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N´-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド等のN-ニトロソ系化合物等の有機系発泡剤等も用いることができる。気体発生成分は粘着性樹脂(B1)に添加されていてもよく、粘着性樹脂(B1)に直接結合されていてもよい。
【0068】
加熱膨張型粘着剤に使用される熱膨張性の微小球としては、例えば、マイクロカプセル化されている発泡剤を用いることができる。このような熱膨張性の微小球としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタン等の加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球等が挙げられる。上記殻を構成する材料として、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等が挙げられる。熱膨張性の微小球は、例えば、コアセルベーション法や、界面重合法等により製造することができる。
熱膨張性の微小球は粘着性樹脂に添加することができる。
【0069】
気体発生成分および熱膨張性の微小球から選択される少なくとも一種の含有量は、加熱剥離型の粘着性樹脂層(B)の膨張倍率や接着力の低下性等に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、加熱剥離型の粘着性樹脂層(B)中の粘着性樹脂(B1)100質量部に対して、例えば1質量部以上150質量部以下、好ましくは10質量部以上130質量部以下、さらに好ましくは12質量部以上100質量部以下である。
気体が発生する温度や熱膨張性の微小球が熱膨張する温度が、150℃を超える温度になるように設計することが好ましい。
【0070】
加熱膨張型粘着剤を構成する粘着性樹脂(B1)としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂(b)、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン-ジエンブロック共重合体系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも(メタ)アクリル系樹脂(b)が好ましい。
【0071】
粘着性樹脂層(B)に使用される(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(b1)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(b2)を含む共重合体が挙げられる。
本実施形態において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、またはこれらの混合物を意味する。
【0072】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(b2)を含むモノマー混合物を共重合することにより得ることができる。
【0073】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(b1)を形成するモノマー(b1)としては、炭素数1~12程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。好ましくは炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(b1)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、10質量%以上98.9質量%以下であることが好ましく、50質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。
【0074】
架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(b2)を形成するモノマー(b2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャル-ブチルアミノエチルアクリレート、ターシャル-ブチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等である。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)において、モノマー単位(b2)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0075】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)は、モノマー単位(b1)、モノマー単位(b2)以外に、2官能性モノマー単位(b3)や界面活性剤としての性質を有する特定のコモノマー(以下、重合性界面活性剤と称する)単位をさらに含んでもよい。
重合性界面活性剤は、モノマー(b1)、モノマー(b2)およびモノマー(b3)と共重合する性質を有すると共に、乳化重合する場合には乳化剤としての作用を有する。
【0076】
2官能性モノマー単位(b3)を形成するモノマー(b3)としては、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、例えば、両末端がジアクリレートまたはジメタクリレートで主鎖の構造がプロピレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製、商品名;PDP-200、同PDP-400、同ADP-200、同ADP-400)、テトラメチレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製、商品名;ADT-250、同ADT-850)およびこれらの混合型(例えば、日本油脂(株)製、商品名:ADET-1800、同ADPT-4000)であるもの等が挙げられる。
【0077】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)において、モノマー単位(b3)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0078】
重合性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンRN-10、同RN-20、同RN-30、同RN-50等)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1-プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンHS-10、同HS-20、同HS-1025等)、および分子内に重合性二重結合を持つ、スルホコハク酸ジエステル系(花王(株)製;商品名:ラテムルS-120A、同S-180A等)等が挙げられる。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)において、重合性界面活性剤の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0079】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)は、さらに必要に応じて、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の重合性2重結合を有するモノマーにより形成されたモノマー単位をさらに含有してもよい。
【0080】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)の重合反応機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。(メタ)アクリル系粘着性樹脂(b)の製造コスト、モノマーの官能基の影響および電子部品表面へのイオンの影響等を考慮すればラジカル重合によって重合することが好ましい。
ラジカル重合反応によって重合する際、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、メチルエチルケトンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-ヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物;2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等のアゾ化合物が挙げられる。
【0081】
乳化重合法により重合する場合には、これらのラジカル重合開始剤の中で、水溶性の過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、同じく水溶性の4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物が好ましい。電子部品表面へのイオンの影響を考慮すれば、過硫酸アンモニウム、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物がさらに好ましく、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物が特に好ましい。
【0082】
本実施形態に係る粘着性樹脂層(B)は、粘着性樹脂(B1)に加えて、架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤(B2)をさらに含むことが好ましい。
架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤(B2)は、粘着性樹脂(B1)が有する官能基と反応させ、粘着力および凝集力を調整するために用いる。
このような架橋剤(B2)としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物;N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N'-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の4官能性エポキシ系化合物;ヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物およびアジリジン系化合物から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
【0083】
架橋剤(B2)の含有量は、通常、架橋剤(B2)中の官能基数が粘着性樹脂(B1)中の官能基数よりも多くならない程度の範囲が好ましい。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合等、必要に応じて過剰に含有してもよい。
粘着性樹脂層(B)中の架橋剤(B2)の含有量は、粘着性樹脂(B1)100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0084】
本実施形態に係る粘着性樹脂層(B)は、支持基板への密着性を向上させる観点から、粘着性樹脂(B1)に加えて、粘着付与樹脂を含むことが好ましい。粘着性樹脂層(B)に粘着付与樹脂を含有させることが、常温付近における支持基板との密着性の調整が容易となるために好ましい。粘着付与樹脂としては、その軟化点が100℃以上であるものが好ましい。粘着付与樹脂の具体例としては、エステル化等の処理をしたロジン系誘導体等のロジン系樹脂;α-ピネン系、β-ピネン系、ジペンテン系、テルペンフェノール系等のテルペン系樹脂;ガム系、ウッド系、トール油系等の天然系ロジン;これらの天然系ロジンに水素化、不均化、重合、マレイン化、石油樹脂;クマロン-インデン樹脂等を挙げることができる。
【0085】
これらのなかでも、軟化点が100~160℃の範囲内であるものがより好ましく、120~150℃の範囲であるものが特に好ましい。軟化点が上記範囲内である粘着付与樹脂を用いると、支持基板への汚染、糊残りが少ないばかりでなく、作業環境下における支持基板との密着性をさらに向上させることが可能となる。さらに、粘着付与樹脂として重合ロジンエステル系の粘着付与樹脂を用いると、支持基板への汚染、糊残りが少ないばかりか、80~130℃の環境下での支持基板との粘着性が向上するとともに、熱膨張性の微小球を含む加熱膨張型粘着剤の場合には、熱膨張性微小球の膨張後は、支持基板からさらに容易に剥離可能となる。
【0086】
粘着付与樹脂の配合割合は、粘着性樹脂層(B)の弾性率を所望とする所定の数値範囲内に調整することができるように適宜選択すればよく、特に制限はない。ただし、粘着性樹脂層(B)の弾性率と初期剥離力の面から、粘着性樹脂(B1)100質量部に対して、1~100質量部とすることが好ましい。粘着付与樹脂の配合割合が、粘着性樹脂(B1)100質量部に対して、上記下限値以上であると、作業時の支持基板との密着性が良好になる傾向にある。一方、上記上限値以下であると、常温における支持基板との貼り付け性が良好になる傾向にある。支持基板との密着性、及び常温における貼り付け性の面から、粘着付与樹脂の配合割合を、粘着性樹脂(B1)100質量部に対して、2~50質量部とすることがさらに好ましい。また、粘着付与樹脂の酸価は、30以下であることが好ましい。粘着付与樹脂の酸価が上記上限値以下であると剥離時に支持基板に糊残りが生じ難くなる傾向にある。
【0087】
粘着性樹脂層(B)は、その他の成分として、可塑剤等の添加剤を含んでもよい。粘着性樹脂層(B)中の粘着性樹脂(B1)、架橋剤(B2)および粘着付与樹脂の含有量の合計は粘着性樹脂層(B)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。さらに粘着性樹脂層(B)が加熱膨張型粘着剤により構成されている場合は、粘着性樹脂層(B)中の粘着性樹脂(B1)、架橋剤(B2)、粘着付与樹脂、気体発生成分および熱膨張性の微小球の含有量の合計は、粘着性樹脂層(B)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
【0088】
粘着性樹脂層(B)の厚さは特に制限されないが、例えば、5μm以上300μm以下であることが好ましく、20μm以上150μm以下であることがより好ましい。
【0089】
粘着性樹脂層(B)は、例えば、基材層10上に粘着剤塗布液を塗布する方法や、セパレータ上に形成した粘着性樹脂層(B)を基材層10上に移着する方法等により形成することができる。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80~200℃の温度範囲において、10秒~10分間乾燥することが好ましい。さらに好ましくは、80~170℃において、15秒~5分間乾燥する。架橋剤と粘着剤との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40~80℃において5~300時間程度加熱してもよい。
また、基材層10と粘着性樹脂層(B)とは共押出成形によって形成してもよいし、フィルム状の基材層10とフィルム状の粘着性樹脂層(B)とをラミネート(積層)して形成してもよい。
【0090】
(その他の層)
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、基材層10と粘着性樹脂層(A)との間あるいは基材層10と粘着性樹脂層(B)との間に、例えば凹凸吸収層、衝撃吸収層、易接着層等がさらに設けられていてもよい。
【0091】
凹凸吸収層は、ASTM D-2240のD型ショアーによるショアーD型硬度が、例えば50以下、好ましくは40以下の天然ゴムや合成ゴム、又はゴム弾性を有する合成樹脂により形成することが好ましい。凹凸吸収層の厚さは、例えば500μm以下、好ましくは5~300μm、より好ましくは10~150μmである。
【0092】
合成ゴム又は合成樹脂としては、例えばニトリル系やジエン系やアクリル系等の合成ゴム、ポリオレフィン系やポリエステル系等の熱可塑性エラストマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体やポリウレタン、ポリブタジエンや軟質ポリ塩化ビニル等のゴム弾性を有する合成樹脂が挙げられる。なお、ポリ塩化ビニルのように本質的には硬質系のポリマーであっても可塑剤や柔軟剤等の配合剤との組合せでゴム弾性をもたせたものも本実施形態においては用いることができる。また上記の粘着性樹脂層(A)や粘着性樹脂層(B)で例示した粘着性樹脂等も凹凸吸収層の形成に好ましく用いることができる。
【0093】
(粘着性フィルムの厚さ)
本実施形態に係る粘着性フィルム50全体の厚さは、機械的特性と取扱い性のバランスの観点から、好ましくは10μm以上1000μm以下であり、より好ましくは20μm以上500μm以下である。
【0094】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0095】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0096】
A 粘着性樹脂層
B 粘着性樹脂層
10 基材層
10A 第1面
10B 第2面
50 粘着性フィルム
60 支持基板
70 レジストパターン
80 配線層
100 構造体
図1
図2