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特開2024-128722電気牧柵用のワイヤ保持器及び該保持器を備えるポスト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128722
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】電気牧柵用のワイヤ保持器及び該保持器を備えるポスト
(51)【国際特許分類】
   A01K 3/00 20060101AFI20240913BHJP
   A01M 29/30 20110101ALI20240913BHJP
   E04H 17/20 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A01K3/00
A01M29/30
E04H17/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037884
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000105844
【氏名又は名称】サージミヤワキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100202740
【弁理士】
【氏名又は名称】増山 樹
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 豊
【テーマコード(参考)】
2B101
2B121
2E142
【Fターム(参考)】
2B101AA01
2B101HA02
2B101HA04
2B101HA06
2B121AA01
2B121BB27
2B121DA06
2B121EA26
2B121EA30
2B121FA12
2B121FA20
2E142BB01
2E142HH12
2E142HH21
2E142JJ06
(57)【要約】
【課題】電気牧柵のワイヤの移動によるポストの倒壊を防ぐ機構を安価に製造する。
【解決手段】支柱7に直接又は支柱7に挿通した複数のパイプ40にそれぞれ取り付ける電気牧柵用のワイヤの保持器31を、バネ線材製の第1バネ部材41、第2バネ部材42及びコイルバネ43と、第2バネ部材42の折り返し部に取付けるワイヤ保持具44から形成し、第1バネ部材41はその一端を支柱かパイプに固定して他端にフックを設け、第2バネ部材42の自由端にもフックを設け、コイルバネ43には一方から第1バネ部材41を挿入し、他方から第2バネ部材42を挿入して両者のフック間にコイルバネ43を位置させる。この構成により、ワイヤ保持具44に保持されたワイヤ2が引張られると第2バネ部材42がコイルバネ43を圧縮して移動し、引張力が無くなるとコイルバネ43が元に戻るので、ワイヤ2が引張られた時の電気柵の支柱の倒壊が防止される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルバネと、
円柱状の部材が貫通可能な開口部が形成されたループ部、前記コイルバネの内側を挿通するように前記ループ部から延伸し且つ先端が前記コイルバネの一端から先端が突出する一対の第1平行部、及び前記一対の第1平行部の先端に配置され、前記コイルバネの一端が前記ループ部側から圧縮されたときに前記コイルバネの他端に係止されて前記コイルバネからの荷重を受け止める一対の第1フック部を備える第1基材と、
前記コイルバネに対して前記ループ部に対向して配置される支持部、前記コイルバネの内側を挿通するように前記支持部から延伸し且つ前記コイルバネの一端から先端が突出する一対の第2平行部、及び前記一対の第2平行部の先端に配置され、前記支持部が前記ループ部から離れる方向に移動したときに前記コイルバネの一端を圧縮する一対の第2フック部を備える第2基材と、
前記支持部に支持され、ワイヤを保持するワイヤ保持具と、
を有することを特徴とする電気牧柵用のワイヤ保持器。
【請求項2】
前記ループ部は、少なくとも2周巻回される螺旋状の形状を有する、請求項1に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
【請求項3】
前記一対の第1フック部は、前記開口部の貫通方向に直交する方向に並んで配置される、請求項1又は2に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
【請求項4】
前記一対の第1フック部は、前記開口部の貫通方向に平行する方向に並んで配置される、請求項1又は2に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
【請求項5】
前記ループ部が突出する第1端部と、
前記第1端部に対向し、前記支持部が突出する第2端部と、
前記第1端部と前記第2端部との間に配置され、前記コイルバネ、前記第1平行部及び前記第2平行部を収容する収容部と、を有し、
前記第1端部から前記第2端部に向かって直線上に延伸し、前記コイルバネが前記ループ部側から圧縮されたときに前記一対の第2フック部が移動可能な一対のスリットが形成されると共に、前記第2端部の外縁に前記一対の第1フック部を受け入れる一対の凹部が形成される筐体を更に有する、請求項1~4の何れか一項に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
【請求項6】
前記一対のスリットの前記第1端部での位置は、前記一対の凹部の前記第2端部での位置から90度シフトする、請求項5に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
【請求項7】
前記ワイヤ保持具は、前記支持部を貫通させることにより前記第2基材と取り付け可能な貫通孔を形成した合成樹脂製である、請求項3に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
【請求項8】
前記ワイヤ保持具は、金属製であり、
前記ワイヤ保持具は、
湾曲部を形成したU字状の基部と、
前記基部の端部に貫通孔を形成した第1の自由端と、
前記第1の自由端と異なる前記基部の端部にネジ孔を形成した第2の自由端と、
前記貫通孔に挿通された後に前記ネジ孔に螺合される先端部にネジ溝が形成されたロッドと、を備えた請求項3に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
【請求項9】
前記ワイヤ保持具は金属製であり、
前記ワイヤ保持具は、
折り返し部は正面視前記第2基材の折り返し部に係合する湾曲部となっている側面視V字状の基部と、
前記基部の端部に貫通孔を形成した第1の自由端と、
前記第1の自由端と異なる前記基部の端部にネジ孔を形成した第2の自由端と、
前記貫通孔に挿通された後に前記ネジ孔に螺合される先端部にネジ溝が形成された金属製のロッドと、を備えた請求項4に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
【請求項10】
前記ワイヤ保持具は、前記ロッドを回転軸として回転する前記ワイヤを保持するプーリーと、を有する、請求項8又は9に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
【請求項11】
前記ワイヤ保持器は、請求項1から10の何れか一項に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器である、電気牧柵用のワイヤ保持器を備えるポスト。
【請求項12】
前記ポストは、前記ワイヤの張設段の各段の該ワイヤの張設方向を変更可能な、請求項11に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器を備えるポスト。
【請求項13】
前記ポストは、前記ワイヤの張設方向を変更するコーナー部に設置する2つのコーナーポストの間の領域の地面に設置される、請求項12に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器を備えるポスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電気牧柵用のワイヤ保持器及び該保持器を備えるポストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤーやフェンスを用いた物理的な動物用の柵は、家畜や野生動物によって容易に破られて突破されることが多い。そこで、従来は、ポストに張設した導電ワイヤー(以後単にワイヤと言う)に7000ボルト程度の高電圧を印加して、ワイヤに触れた家畜や野生動物を電気ショックで追い払う動物用の電気柵が普及している。電気柵は、動物の侵入を阻止したい耕作地の周囲に間隔を開けて設置したポストにワイヤを地面とは絶縁された状態で架線し、高電圧発生電源からワイヤに高電圧のパルスを一定の時間間隔で通電する柵である。電気柵は、簡易的な構造であるが、ワイヤに触れた動物は、電気ショックを受け、以後は怯えて動物が電気柵に近づかなくなる心理的な効果がある。
【0003】
一方、このような電気柵では、ワイヤが何らかの原因で動物の脚や角に引かかることによって発生する引張荷重が近傍のポストに加わると、ワイヤの切断、ワイヤを架線する碍子の破損、或いはポストの倒壊が起こる。特に、ワイヤがポストに固定されていない場合、ワイヤに加わった引張荷重は、電気柵のコーナーに設置したコーナーポストに加わる。そして、コーナーポストに加わる引張荷重がコーナーポストの物理的許容範囲内ならば、ワイヤが切れる場合がある。また、ワイヤが丈夫な場合は、コーナーポストの変形若しくは破壊により、電気柵が機能しなくなるという問題があった。
【0004】
このような問題点に対して、従来は、コーナーポストを形成する剛性を備えた支柱に取り付けられたワイヤ保持器のワイヤの保持部を移動可能にして、ワイヤに引張荷重が加わるとワイヤの保持位置を変更し、ワイヤ切断や支柱倒壊の虞のない動物用恒久柵のコーナーポストが出願され、特許になっている(特許文献1及び特許文献2参照)。特許文献1及び2に開示の発明では、動物による引張荷重がワイヤに加わらなくなると、ワイヤ保持器とワイヤを元の状態に戻るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6706853号公報
【0006】
【特許文献2】特許第6888790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に開示の動物用恒久柵のコーナーポスト及び特許文献2に開示の動物用恒久柵におけるワイヤ保持用のポストでは、ワイヤ保持器が、支柱に固定されるブラケットと、ブラケットに一端が回動可能に取り付けられた第1アームと、第1アームの先端部に回動自在に取り付けられた第2アームと、第1と第2アームが近づく方向に付勢するバネと、第2アームの先端でワイヤを保持する保持具を備えていて部品点数が多い。更に、第2アームの先端部にある保持器は、ワイヤの保持位置を変更可能なプーリーを備えている。そして、ワイヤ保持器の各部材には、錆びに強く値段も高いステンレスが使用されているので、ワイヤ保持器のコストが高いという課題があった。
【0008】
1つの側面では、上述の課題に鑑み、特許文献1及び2に開示のワイヤ保持器と同等の機能を備えながら、ポスト又はポストを形成する支柱に挿通するスリーブに取り付けることができ、構造が簡素でコストが安い電気牧柵用のワイヤ保持器を提供することを目的とする。他の側面では、該保持器を備えるポストを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの形態によれば、コイルバネと、円柱状の部材が貫通可能な開口部が形成されたループ部、コイルバネの内側を挿通するようにループ部から延伸し且つ先端がコイルバネの一端から先端が突出する一対の第1平行部、及び一対の第1平行部の先端に配置され、コイルバネの一端がループ部側から圧縮されたときにコイルバネの他端に係止されてコイルバネからの荷重を受け止める一対の第1フック部を備える第1基材と、コイルバネに対してループ部に対向して配置される支持部、コイルバネの内側を挿通するように支持部から延伸し且つコイルバネの一端から先端が突出する一対の第2平行部、及び一対の第2平行部の先端に配置され、支持部がループ部から離れる方向に移動したときにコイルバネの一端を圧縮する一対の第2フック部を備える第2基材と、支持部に支持され、ワイヤを保持するワイヤ保持具と、を有することを特徴とする電気牧柵用のワイヤ保持器が提供される。
【0010】
他の形態によれば、電気牧柵用のワイヤ保持器が、コイルバネと、円柱状の部材が貫通可能な開口部が形成されたループ部、コイルバネの内側を挿通するようにループ部から延伸し且つコイルバネの一端から先端が突出する一対の第1平行部、及び一対の第1平行部の先端に配置され、コイルバネがループ部側から圧縮されたときにコイルバネの他端に係止されてコイルバネからの荷重を受け止める一対の第1フック部を備える第1基材と、コイルバネに対してループ部に対向して配置される支持部、コイルバネの内側を挿通するように支持部から延伸し且つコイルバネの他端から先端が突出する一対の第2平行部、及び一対の第2平行部の先端に配置され、支持部がループ部から離れる方向に移動したときにコイルバネの一端を圧縮する一対の第2フック部を備える第2基材と、支持部に支持され、ワイヤを保持するワイヤ保持具と、を有する電気牧柵用のワイヤ保持器であるポストが提供される。
【発明の効果】
【0011】
開示の電気牧柵用のワイヤ保持器及び該保持器を備えるポストには、電気柵に架線されたワイヤが動物によって引張られ、保持器又は保持器を備えるポストに大きな荷重がかかっても、荷重が解放された後に元の状態に復帰させることが可能な保持器又は保持器を備えたポストを安価に提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は特許文献1、2に開示のコーナーポストに取り付けられた本発明に関係する架線具の構造を示す側面図、(b)は(a)に示した架線具の動作を示す側面図である。
図2】特許文献1、2に開示のコーナーポストの構造を示す側面図である。
図3】本発明の電気牧柵用のワイヤ保持器の第1実施例の構成部材とワイヤ保持器を取り付けるパイプを示す図であり、(a)は第1バネ部材の一例の斜視図、(b)は第2バネ部材の一例の斜視図、(c)は圧縮コイルバネの斜視図、(d)はワイヤ保持具の一例の斜視図、(e)は(a)に示した第1バネ部材を取り付ける塩化ビニールパイプの斜視図である。
図4】(a)は図3(a)から(d)に示した第1実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器の構成部材を組み立てて(e)に示したパイプに取り付けた状態を示す斜視図、(b)は図3(d)に示したワイヤ保持具が開いた状態を示す側面図、(c)は(b)に示したワイヤ保持具が閉じた状態を示す側面図である。
図5】(a)は図4(a)に示したパイプに取り付けられ他第1実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器にワイヤが保持された状態を示す概略側面図、(b)は(a)に示したワイヤが外力で引張られた状態の時の電気牧柵用のワイヤ保持器の動作を示す概略側面図である。
図6図5(a)に示した第1実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器が取り付けられ他パイプが1本の支柱に複数個取り付けられて形成されたコーナーポストの構造を示す側面図である。
図7】(a)は本発明の第2実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器に使用する図3(d)に示したワイヤ保持具とは別の実施例ワイヤ保持具の閉じた状態を示す側面図、(b)は(a)に示したワイヤ保持具の平面図、(c)は(a)に示したワイヤ保持器の開いた状態を示す側面図、(d)は(c)に示したワイヤ保持具の平面図、(e)は図7(a)、(b)に示した保持具を使用した第2実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器にワイヤが保持された状態を示す部分側面図である。
図8図7(a)から(d)に示したワイヤ保持器に使用するワイヤ保持具の第1変形例を示すものであり、(a)は第1変形例のワイヤ保持具の開いた状態を示す側面図、(b)は(a)に示した第1変形例のワイヤ保持具の閉じた状態を示す側面図、(c)は第2変形例のワイヤ保持具の構成部材を示す組立斜視図、(d)は(c)に示した第2変形例のワイヤ保持具の組立後の閉じた状態を示す側面図、(e)は第3変形例のワイヤ保持具の閉じた状態を示す斜視図である。
図9】本発明の第3実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器の構成部材を示す図であり、(a)は第1バネ部材の一例の斜視図、(b)は第2バネ部材の一例の斜視図、(c)は圧縮コイルバネの斜視図、(d)は(b)に示した第2バネ部材の先端部に保持させるワイヤ保持具の構成を示す側面図、(e)は(d)の正面図、(f)は(d)に示したワイヤ保持具を第2バネ部材に保持させた状態でワイヤを保持する状態を示す斜視図である。
図10】(a)は図9(a)から(f)に示した構成部材を組み立てて形成された本発明の第3実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器をパイプに取り付け、ワイヤ保持器にワイヤが保持された状態を示す概略側面図、(b)は(a)に示した電気牧柵用のワイヤ保持器に保持されたワイヤが外力で引張られた状態の時の電気牧柵用のワイヤ保持器の動作を示す概略側面図である。
図11】(a)は図8(c)、(d)に示した本発明の第2実施例の第2変形例のワイヤ保持具を使用する本発明の第4実施例のワイヤ保持具の組立斜視図であり、(b)は(a)に示したワイヤ保持具の組立後の閉じた状態を示す側面図である。
図12】(a)は図11(b)に示したワイヤ保持具を組み込んだ本発明の第4実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器にワイヤが保持された状態を示す概略側面図、(b)は(a)に示した電気牧柵用のワイヤ保持器に保持されたワイヤが外力で引張られた状態の時の電気牧柵用のワイヤ保持器の動作を示す概略側面図である。
図13】(a)は図9(d)から(f)に示した本発明の第3実施例のワイヤ保持具を使用する本発明の第4実施例の変形例のワイヤ保持具の組立斜視図であり、(b)は(a)に示したワイヤ保持具の組立後の閉じた状態を示す側面図である。
図14】(a)は図13(a)、(b)に示した第4実施例の変形例に使用するワイヤ保持具を組み込んだ電気牧柵用のワイヤ保持器にワイヤが保持された状態を示す概略側面図、(b)は(a)に示した電気牧柵用のワイヤ保持器に保持されたワイヤが外力で引張られた状態の時の電気牧柵用のワイヤ保持器の動作を示す概略側面図である。
図15】本発明の第5実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器の一部を示すものであり、(a)はワイヤ保持器の圧縮コイルバネに取り付けるバネカバーの一実施例を示す斜視図、(b)はバネカバーに設ける第1バネ部材のフック部を係止する係止溝の一例を示す部分拡大図、(c)はバネカバーに設ける第1バネ部材のフック部を係止する係止溝の他の例を示す部分拡大図、(d)はバネカバーに設ける第1バネ部材のフック部を係止する係止溝の更に他の例を示す部分拡大図である。
図16図5(a)に示したワイヤ保持器の圧縮コイルバネに、図15(a)に示したバネカバーを取り付けた状態を示す概略側面図である。
図17】(a)は圧縮コイルバネに取り付けるバネカバーの他の形態を示す斜視図、(b)は(a)のバネカバーを矢印B方向から見た矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を用いて本出願の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態においては、同一または類似の要素には共通の参照符号を付し、理解を容易にするために、図面の縮尺を適宜変更している。
【0014】
図1は、特許文献1、2に開示のコーナーポストCPの構造を示す側面図であり、(a)はワイヤに外力が加わっていない状態を示す部分側面図、(b)はワイヤに外力が加わっている状態を示す部分側面図である。コーナーポストCPとなる支柱7には、伸縮可能なワイヤ保持器20が複数個固定されている。ワイヤ保持器20は、図1(a)に示すように、支柱7に固定されたブラケット21、ブラケット21に回転軸22で取り付けられた第1アーム23,第1アーム23に回転軸24で取り付けられた第2アーム25、第2アーム25を第1アーム23側に引き寄せるバネ28及び第2アーム25の先端に取り付けられてワイヤ2を保持する留め具27とプーリー11を備えている。
【0015】
以上のような構造を備えるワイヤ保持器20は、ワイヤ2が動物に引張られると、図1(b)に示すように、バネ28に抗して第1アーム23と第2アーム25のなす角が大きくなり、プーリー11が支柱7から離れる方向に移動して、ワイヤ2を移動させることができる。この結果、ワイヤ保持器20は、ワイヤ2の切断、コーナーポストCPの倒壊を防ぐことができる。動物がワイヤ2から外れ、ワイヤ2が引張られなくなると、バネ28の収縮力でワイヤ保持器20が、図1(a)に示した状態に戻る。
【0016】
図2は、特許文献1、2に開示のコーナーポストCPを示すものである。コーナーポストCPには、支柱7に3個のスリーブ7R1が挿通されており、各スリーブ7R1にワイヤ保持器20のブラケット21が、固定されている。支柱7の先端には、スリーブ7R1が支柱7から抜けないようにするためのキャップ15が、嵌着されている。支柱7に挿通された3個のスリーブ7R1は、それぞれ独立に支柱7の回りを回転することができる。よって、ワイヤ2の何れかが引張られても、スリーブ7R1が回転することによってワイヤ2の変形を吸収することができる。
【0017】
ところが、特許文献1,2に開示されたワイヤ保持器20は、部品点数が多く、しかも屋外で使用されるために錆難く鉄より高価なステンレス材が使用されるので、コストが高かった。そして、1本の支柱7にワイヤ保持器20は、複数個使用されるので、支柱7のコストが高くなっていた。本発明は、特許文献1,2に開示されたワイヤ保持器20と同等の動作と機能を備えながら、コストを大幅に低減した電気牧柵用のワイヤ保持器及び該保持器を備えるポストを提供するものである。
【0018】
図3は、本発明の第1実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器の構成部材を示すものである。図3において、(a)は第1バネ部材41(第1基材と呼ばれる)、(b)は第2バネ部材42(第2基材と呼ばれる)、(c)は圧縮コイルバネ43(コイルバネと呼ばれる)、(d)はワイヤ保持具44を示しており、これらは、組み合わされてワイヤ保持器が形成され、(e)に示す所定長さを備えた塩化ビニールパイプ40(円柱状の部材と呼ばれる)に取り付けられる。第1バネ部材41、第2バネ部材42及び圧縮コイルバネ43は、ステンレス製のバネ線材から形成されており、ワイヤ保持具44は、合成樹脂製である。ワイヤ保持具44を形成する合成樹脂としては、成型後の表面抵抗が小さく、保持したワイヤ―の滑りが良い材質を使用する。例えば、ガラス繊維入りナイロンを使用することができる。第1実施例では、電気牧柵用のワイヤ保持器は、所定長さを備えた塩化ビニールパイプ40に取り付けられているが、電気牧柵用のワイヤ保持器は、地面に立設された支柱に直接取り付けられても良い。以下に個々の構成部材の形状について説明する。
【0019】
図3(a)に示される第1バネ部材41は、一端に塩化ビニールパイプ(スリーブと呼ばれることもある)40の外周面に圧着できる、円柱状の部材が貫通可能な開口部が形成されたループ部41Lがあり、中央部にはループ部41Lから延伸し且つ先端が圧縮コイルバネ43の一端から突出する外力が加わらない状態で平行になる一対の平行部41P(第1平行部と呼ばれる)があり、一対の平行部41Pの他の先端に外側に折り返された一対のフック部41H(第1フック部と呼ばれる)が配置される。第1実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器では、第1バネ部材41の平行部41Pは、地面に対して垂直方向に平行になるようにループ部41Lの両端部において折り曲げられている。一対のフック部41Hは、ループ部41Lの開口部の貫通方向に平行する方向に並んで配置される。フック部41Hは、平行部41Pの一端を近づけることによって重ね合わせ状態にすれば圧縮コイルバネ43の内側を挿通させることができ、挿通させた後に圧縮コイルバネ43の端部に引掛けられる。従って、平行部41Pの長さは、圧縮コイルバネ43の全長より長く形成されている。また、ループ部41Lは、少なくとも2周巻回される螺旋状の形状である。ループ部41Lの巻数は、第1実施例では2巻きであるが、3巻き以上でも良い。
【0020】
図3(b)に示される第2バネ部材42は、バネ線材が、ループ部41Lに対向して配置される折り返し部42T(支持部と呼ばれる)においてU字状に折り返された形状をしており、折り返された第2バネ部材42の中央部は、折り返し部42Tから延伸し且つ圧縮コイルバネ43の他端から先端が突出する外力が加わらない状態で平行になる一対の平行部42P(第2平行部と呼ばれる)となっている。平行部42Pの間隔は、圧縮コイルバネ43の内径より小さく、ワイヤ保持具44の肉厚より大きい。平行部42Pの自由端側は、一対の平行部42Pの先端に配置されそれぞれ外側に折り返された一対のフック部42H(第2フック部と呼ばれる)となっており、平行部42Pの一端を近づけて重ね合わせた状態で圧縮コイルバネ43の内側を挿通させることができる。折り返し部42Tは、ワイヤ保持具44を保持するために図示のように直線部としても良いが、円弧状に形成しても良い。直線部の長さは、圧縮コイルバネ43の内側を通過できる長さであり、直線部の長さ又は円弧状の場合の直径は、圧縮コイルバネ43の内側を通過できる長さである。フック部42Hは、重ね合わされて圧縮コイルバネ43の内側を挿通された後に、圧縮コイルバネ43の端部に引掛けられる。従って、平行部42Pの長さは、圧縮コイルバネ43の全長より長く形成されている。また、第1実施例では、第1バネ部材41の平行部41Pが地面に対して垂直方向に平行に配置されているので、第2バネ部材42の平行部42Pは、地面に対して平行になるように、圧縮コイルバネ43の中に挿入する。
【0021】
図3(c)に示される圧縮コイルバネ43は、前述のように、重ね合わされた第1バネ部材41のフック部41H及び重ね合わされた第2バネ部材42のフック部42Hを挿通させることができる内径を備えている。また、圧縮コイルバネ43の全長は、第1バネ部材41の平行部41Pと第2バネ部材42の平行部42Pの長さよりも短い。圧縮コイルバネ43の、一方の端部には、第1バネ部材41のフック部41Hが引掛けられ、他方の端部には、第2バネ部材42のフック部42Hが引掛けられる。そして、圧縮コイルバネ43は、第2バネ部材42の平行部42Pが内側を移動すると、第2バネ部材42のフック部42Hによって圧縮されて縮む。圧縮コイルバネ43が圧縮されたとき第1バネ部材41のフック部41Hは圧縮コイルバネ43の一端に係止され、第2バネ部材42のフック部42Hは圧縮コイルバネ43の他端に係止される。圧縮コイルバネ43の耐荷重は、10kg程度に設定してある。
【0022】
第1実施例では、図3(d)に示すように、ワイヤ保持具44は、その本体がループ状をしており、本体の一部にある移動部44Mが移動することにより、ループが開閉できるようになっている。具体的には、移動部44Mの先端部には、突起44Pがあり、図4(b)に示すように、突起44Pが、ワイヤ保持具44の本体に形成された溝44Dから外れた状態ではワイヤ保持具44のループが開き、図4(c)に示すように、この突起44Pが、溝44Dに係合されることによってワイヤ保持具44のループが閉じる。また、ワイヤ保持具44の本体には、その表裏を貫通する貫通孔44Hがある。貫通孔44Hの直径は、第2バネ部材42の線径より大きい。
【0023】
図4(a)は、図3(e)に示した塩化ビニールパイプ40に、図3(a)から(d)に示した第1バネ部材41,第2バネ部材42、圧縮コイルバネ43及びワイヤ保持具44を備える電気牧柵用のワイヤ保持器31が、取り付けられた状態を示すものである。ここでは、この電気牧柵用のワイヤ保持器31を組み立てる工程(1)~(5)を、順を追って説明する。
【0024】
(1)最初に、第1バネ部材41は、塩化ビニールパイプ40の所定位置に第1バネ部材41のループ部41Lを開いて取り付ける。
(2)次に、第1バネ部材41は、第1バネ部材41のフック部41H同士を近づけて重ね合わせた状態で、圧縮コイルバネ43の内側にフック部41Hを挿通し、圧縮コイルバネ43の内側に第1バネ部材41の平行部41Pが位置するように移動させる。
(3)第1バネ部材41のフック部41Hは、圧縮コイルバネ43から出ると広がるので、圧縮コイルバネ43の端部にフック部41Hを引掛ける。
【0025】
(4)ここで、第2バネ部材42は、第2バネ部材42の一方のフック部42Hをワイヤ保持具44の貫通孔44Hに挿通し、ワイヤ保持具44を第2バネ部材42の折り返し部42Tまで移動させる。
(5)最後に、第2バネ部材42は、ワイヤ保持具44が折り返し部42Tに取り付けられた第2バネ部材のフック部42Hを近づけ、重ね合わせて縮めた状態で平行部42Pが地面に対して平行になる状態で圧縮コイルバネ43の自由端側から差し込み、フック部42Hが圧縮コイルバネ43から出たら、圧縮コイルバネ43の端部にフック部42Hを引掛ける。
【0026】
第2バネ部材42の折り返し部42Tに取り付けるワイヤ保持具44は、図4(b)に示すように移動部44Mの先端の突起44Pを溝44Dから外した状態にして、ワイヤ保持具44のループが不連続な状態にしておく。この状態では、ワイヤ保持具44は、移動部44Mと本体との間に隙間が形成されているので、ワイヤ張設時に、ワイヤをその隙間からワイヤ保持具44のループ内に引き込むことができる。また、第2バネ部材42の平行部42Pが地面に対して平行になるように圧縮コイルバネ43に挿入されているので、第2バネ部材42の折り返し部42Tに位置するワイヤ保持具44は、図4(c)に示すように地面に対して垂直な状態で折り返し部42Tに保持(支持)される(ワイヤ保持具44の貫通孔44H内の第2バネ部材42の折り返し部の断面の図示は省略)。そして、ワイヤ保持具44は、ワイヤ2をワイヤ保持具44のループ内に引き込んだら、移動部44Mの先端の突起44Pを溝44Dに入れて、ワイヤ保持具44を閉じた状態にする。図4(c)に示す状態では、ワイヤ保持具44の本体は閉じているので、ワイヤ保持具44のループ内に引き込んだ電気牧柵のワイヤ2は、ワイヤ保持具44から外れることはない。
【0027】
図5(a)は、図4(a)に示した電気牧柵用のワイヤ保持器31にワイヤ2が保持された状態を簡略化して示すものである。ワイヤ2は、1本当たり50~150kgfの張力で張設されているので、ワイヤ2を保持しているワイヤ保持具44は、ワイヤ2によって圧縮コイルバネ43から離れる方向に付勢されている。このため、ワイヤ保持具44が取り付けられた第2バネ部材42もワイヤ保持具44を介してワイヤ2に引張られるので、フック部42Hによって圧縮コイルバネ43が圧縮されている。圧縮コイルバネ43に加えられた圧縮力は、第1バネ部材41のフック部41Hによって受け止められるので、ワイヤ2の張力は、ワイヤ保持具44,第2バネ部材42,圧縮コイルバネ43及び第1バネ部材41を通じて塩化ビニールパイプ40が受け止めている。
【0028】
このような状態において、動物によってワイヤ2が引張られると、図5(b)に示すように、ワイヤ保持具44と第2バネ部材42を通じて圧縮コイルバネ43が圧縮され、ワイヤ保持具44が、塩化ビニールパイプ40から離れる方向に移動するので、ワイヤ2を移動させることができる。動物がワイヤ2から外れ、ワイヤ2が引張られなくなると、圧縮コイルバネ43が元の状態に戻り、第2バネ部材42を通じてワイヤ保持具44を引張るので、電気牧柵用のワイヤ保持器31が図5(a)に示した状態に戻る。
【0029】
図6は、図5(a)に示した電気牧柵用のワイヤ保持器31が地面Cに埋め込まれた剛性を備えた支柱7に3個取り付けられて形成されたコーナーポストCPの構造を示すものである。コーナーポストCPは、前述のワイヤ保持器31を第1バネ部材41のループ部41Lによって塩化ビニールパイプ40に固定し、この塩化ビニールパイプ40を3個、支柱7に挿通させることによって組み立てられる。支柱7に挿通した塩化ビニールパイプ40は、支柱7に対して回転可能な回転機構である。ワイヤ保持器31が固定された3個の塩化ビニールパイプ40を支柱7に挿通した後は、塩化ビニールパイプ40が支柱7から外れないように、支柱7の先端部には、キャップ15が取り付けられる。
【0030】
図6に示すように、電気柵のコーナー部の地面Cに突設された支柱7に、ワイヤ保持器31がそれぞれ固定された3個の塩化ビニールパイプ40が挿通されて形成されたコーナーポストCPでは、支柱7に挿通された3個の塩化ビニールパイプ40は、ワイヤ2を張設した張設段として機能し、それぞれ独立に支柱7の回りを回転することができる。よって、本実施例のコーナーポストCPでは、ワイヤ2の何れかが引張られた場合でも、引張られたワイヤ2に対応する塩化ビニールパイプ40が回転することによって、ワイヤ2の変形を吸収することができる。コーナーポストCPでは、ワイヤの張設段である塩化ビニールパイプ40又は地面に立設された支柱に直接取り付けられた第1バネ部材41のループ部41Lの角度を変更することにより、各段のワイヤの張設方向を変更可能となっている。
【0031】
また、コーナーポストCPは、地面Cに突設された支柱7に、ワイヤ保持器31が固定された塩化ビニールパイプ40を必要な数だけ取り付けるだけで済むので、設置及び撤去の時間及び労力が大幅に削減できる。また、塩化ビニールパイプ40は、回転することにより、ワイヤ2にかかる応力を分散でき、ワイヤ2が引張られても支柱7に加わる力を低減でき、コーナーポストの倒壊を防止できる。そして、塩化ビニールパイプ40は、絶縁体であるので、コーナーポストCPとワイヤ2の間の漏電を防止することができる。なお、塩化ビニールパイプ40の内周面に、塩化ビニールパイプ40の抜け防止用の爪を少なくとも1箇所に設けておけば、抜け防止用の爪は、塩化ビニールパイプ40を支柱7から抜け難くすることができる。爪の形状、設置個数は特に限定されるものではない。更に、塩化ビニールパイプ40は、ワイヤ保持器31又は伸縮しないワイヤ保持器を取り付けて、前述のコーナーポストCPと共に2つのコーナーポスト間の領域の地面Cに用いる中間ポストに使用することもできる。
【0032】
図7は、本発明の第2実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器32の構造を示すものであり、第1実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器31とは、図7(e)に示すように、ワイヤ保持具45の構造だけが異なる。第2実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器32が、第1実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器31と異なる点は、ワイヤ保持具45の構造のみである。第1実施例では、ワイヤ保持具44に貫通孔44Hがあり、この貫通孔44Hに第2バネ部材42を挿通してから、ワイヤ保持具44を第2バネ部材42の折り返し部42Tに位置させ、この状態で第2バネ部材42を圧縮コイルバネ43に挿通させていた。一方、第2実施例のワイヤ保持具45には、第2バネ部材42を挿通するための貫通孔はなく、ワイヤ保持具45の一部を開閉することにより、ワイヤ保持具45を第2バネ部材42の折り返し部42Tに位置させることができる。ワイヤ保持具45は、ステンレス製である。
【0033】
ワイヤ保持具45は、図7(a)に示す側面図のように、C字状の基部45Aを備えており、この基部45Aの不連続部45Cには、不連続部45Cを開閉するバネ45Bがある。バネ45Bは、図7(b)に示すようにU字状をしており、2つの自由端部は折り返し部からの長さが異なる。2つの自由端部には、内側に折り曲げられた軸部があり、2つの軸部は、それぞれ基部45Aの側面の異なる位置に開けられた穴に挿入され、バネ45Bの回転軸となる。バネ45Bは、図7(a)に示すように、基部45Aに取り付けられた状態で不連続部45Cを塞いでいる。
【0034】
図7(c)は、バネ45Bに外力が加えられてバネ45Bが移動し、不連続部45Cによりワイヤ保持具45が開いた状態を示している。図7(d)は、図7(c)に示したワイヤ保持具45を平面視したものである。バネ45Bは、2つの自由端部が基部45Aの側面の異なる位置に開けられた穴に挿入されているので、外力によってワイヤ保持具45を開いた状態では捩れ、外力が無くなると元の状態に戻ってワイヤ保持具45を図7(a)に示す閉じた状態にする。よって、第2実施例では、バネ45Bに外力を加えてワイヤ保持具45を開くことにより、ワイヤ保持具45を第2バネ部材42の折り返し部42Tに位置させることができる。
【0035】
図7(e)は、本発明の第2実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器32の全体構成を示すものである。第1実施例同様に、塩化ビニールパイプ40には、第1バネ部材41がループ部41Lによって固定されており、第1バネ部材41のループ部41Lとフック部41Hの間には、圧縮コイルバネ43が位置していて、圧縮コイルバネ43の内側に第2バネ部材42が挿入されている。ワイヤ保持具45は、圧縮コイルバネ43から突出する第2バネ部材42の折り返し部42Tに後から取り付けることができる。そして、ワイヤ保持具45は、バネ45Bを開くことにより、ワイヤ保持具45の中にワイヤ2を入れることができ、ワイヤ2を張設することができる。
【0036】
以上のように形成された第2実施例の電気牧柵用ワイヤ保持器32は、第1実施例と同様に塩化ビニールパイプ40に第1バネ部材41のループ部41Lを取り付け、塩化ビニールパイプ40を支柱7に挿通することにより、コーナーポストCPを形成することができる。そして、第2実施例の電気柵用のワイヤ保持器32の動作は、第1実施例の電気柵用ワイヤ保持器31の動作と同じであるので、これ以上の説明を省略する。
【0037】
ここでは、図8を用いて本発明の第2実施例の変形例の電気牧柵用のワイヤ保持器32に使用できる3種類のワイヤ保持具を説明するが、第2実施例の変形例は、この3種類のワイヤ保持具の構造に限定されるものではない。第2実施例の変形例においても、塩化ビニールパイプ40、第1バネ部材41、第2バネ部材42及び圧縮コイルバネ43は、第1実施例と同じものを使用することができる。
【0038】
図8(a)、(b)は、第2実施例の第1変形例のワイヤ保持具51の構造を示すものである。第1変形例のワイヤ保持具51は、C字状の基部51Aを備えており、この基部51Aの一方の端部には、ネジ溝51Mが設けられており、他方の端部には、基部51Aを移動可能なスリーブ51Sが設けられている。スリーブ51Sの内周面には、ネジ溝51Mに螺合するネジ溝が設けられており、第1変形例のワイヤ保持具51は、スリーブ51Sを回転させてその内周面とネジ溝51Mの螺合を解除すれば、図8(a)に示すように不連続部51Cが現れてワイヤ保持具51が開く。また、第1変形例のワイヤ保持具51は、スリーブ51Sを回転させてその内周面とネジ溝51Mを螺合させれば、図8(b)に示すようにワイヤ保持具51が閉じる。第1変形例のワイヤ保持具51は、ステンレス製であり、第2実施例のワイヤ保持具45と同様に使用することができる。
【0039】
図8(c)は、第2実施例の第2変形例のワイヤ保持具52の構造を示す斜視図であり、図8(d)は、(c)を側面視したものである。第2変形例のワイヤ保持具52は、湾曲部を有するU字状の基部52Aを備えており、この基部52Aの両端部は、膨出されてそれぞれにネジ孔52Nと貫通孔52Hが設けられている。更に、第2変形例のワイヤ保持具52には、基部52Aの端部(第1の自由端とも呼ぶ)にある貫通孔52Hに挿通されて反対側の端部(第2の自由端とも呼ぶ)にあるネジ孔52Nに螺合するロッド52Lがある。ロッド52Lの先端側には、ネジ溝52Mが設けられており、反対側の端部には、ロッド52Lを回転させるための平板部52Pがある。第2変形例のワイヤ保持具52は、ロッド52Lを貫通孔52Hに挿通させた後にロッド52Lのネジ溝52Mをネジ孔52Nに螺合させれば、図8(d)に示すようにワイヤ保持具52が閉じる。第2変形例のワイヤ保持具52も第2実施例のワイヤ保持具45と同様に使用することができる。第2変形例のワイヤ保持具52は、ステンレス製である。
【0040】
図8(e)は、第2実施例の第3変形例のワイヤ保持具53の構造を示すものであり、二重リングと呼ばれるものである。第3変形例のワイヤ保持具53は、ステンレス製でリング状をしており、1本のバネ線材が密着して隙間なく円環状に巻かれたものである。バネ線材とバネ線材の間の隙間53Gは、バネ力で密着しており、外力を加えると隙間53Gが開くが、外力が無くなると隙間53Gが閉じる。第3変形例のワイヤ保持具53は、外力で隙間53Gを開いた状態で、前述の第2バネ部材42の折り返し部42T(図3参照)を開いた隙間53Gに滑り込ませ、ワイヤ保持具53を回転させてワイヤ保持具53の内部に第2バネ部材42の折り返し部42Tを入れる。ワイヤ保持具53の内部にワイヤを保持させる場合も外力で隙間53Gを開けば良い。
【0041】
図9は、本発明の第3実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器の構成部材を示すものである。図9において、(a)は第1バネ部材41、(b)は第2バネ部材42、(c)は圧縮コイルバネ43、(d)~(f)はワイヤ保持具46を示しており、これらは、組み合わされてワイヤ保持器が形成され、ワイヤ保持器は、所定長さを備えた塩化ビニールパイプ(図3(e)参照)に取り付けられる。第1バネ部材41、第2バネ部材42及び圧縮コイルバネ43は、第1実施例同様にステンレス製のバネ線材から形成されており、ワイヤ保持具46もステンレス製である。第1バネ部材41は、第1実施例同様に、地面に立設された支柱に直接取り付けられても良い。本実施例では、以下に個々の構成部材の形状について説明する。
【0042】
図9(a)に示される第1バネ部材41のループ部41Lは、第3の実施例では3回巻かれており、塩化ビニールパイプの外周面により強固に圧着させることができる。中央部には、外力が加わらない状態で平行になる平行部41Pがあり、他端には、それぞれ外側に折り返されたフック部41Hがある。一方、図4に示した第1実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器31では、第1バネ部材41の平行部41Pは、地面に対して垂直方向に平行になるようにループ部41Lの両端部において折り曲げられていた。これに対して、第3実施例の平行部41Pは、地面に対して平行になるようにループ部41Lの両端部において折り曲げられている。一対のフック部41Hは、ループ部41Lの開口部の貫通方向に直交する方向に並んで配置される。
【0043】
図9(b)に示される第2バネ部材42は、第1実施例同様にバネ線材が、折り返し部42TにおいてU字状に折り返され、中央部に平行部42Pがある。ワイヤ保持具44を保持する折り返し部42Tは、第3実施例では円弧状に形成されている。第3の実施例における第2バネ部材42の形状は、折り返し部42Tの形状が直線状ではなく湾曲している点で第1実施例の第2バネ部材42と異なるが、その他の部分の構造は、第1実施例の第2バネ部材42と同じである。しかしながら、第3実施例では、第1バネ部材41の平行部41Pが地面に対して平行に配置されているので、第2バネ部材42の圧縮コイルバネ43への挿入方向を異ならせている。即ち、第3実施例では、第2バネ部材42の平行部42Pは、地面に対して垂直になるように、圧縮コイルバネ43の中に挿入される。
【0044】
図9(c)に示される圧縮コイルバネ43の構造は、第1実施例と同じであり、重ね合わされた第1バネ部材41のフック部41Hと第2バネ部材42のフック部42Hが挿通された後に、一方の端部には、第1バネ部材41のフック部41Hが引掛けられ、他方の端部には、第2バネ部材42のフック部42Hが引掛けられる。圧縮コイルバネ43は、第2バネ部材42が内側を移動すると、第2バネ部材42のフック部42Hによって圧縮されて収縮する点、耐荷重が10kg程度に設定してある点は同じである。
【0045】
第3実施例では、図9の(d)、(e)及び(f)に示すように、ワイヤ保持具46は、側面視V字状の基部46Aを備えており、基部46Aの折り返し部46Tは、正面視した時に前述の第2バネ部材42の折り返し部42Tに係合するように湾曲しており、基部46Aの両端部は、膨出されてそれぞれに貫通孔46Hとネジ孔46Nが設けられている。更に、第3実施例のワイヤ保持具46は、基部46Aの一方の端部(第1の自由端とも呼ぶ)にある貫通孔46Hに挿通されて反対側の端部(第2の自由端とも呼ぶ)にあるネジ孔46Nに螺合するロッド46Lを、基部46Aとは別に備えている。ロッド46Lの先端側には、ネジ溝が設けられており、反対側の端部には、ロッド46Lを回転させるための平板部46Pがある。ロッド46Lを貫通孔46Hに挿通させた後にロッド46Lのネジ溝をネジ孔46Nに螺合させれば、ワイヤ保持具46が閉じる。第3実施例のワイヤ保持具46は、図8(c)、(d)に示した第2実施例の第2変形例のワイヤ保持具52と同様に使用することができる。
【0046】
第3実施例では、図9(a)から(c)に示した第1バネ部材41,第2バネ部材42及び圧縮コイルバネ43を、第1実施例同様に組み立てて塩化ビニールパイプ40に取り付ける。この時、第2実施例と同様に、第3実施例では、第2バネ部材42に予めワイヤ保持具46を取り付けておく必要は無く、ワイヤ保持具46は、ワイヤ保持具46のロッド46Lを緩めて基部46Aとの間に隙間を設けることにより、図9(f)に示すように、第2バネ部材42の折り返し部42Tに保持させることができる。
【0047】
図10(a)は、図9(a)から(f)に示した構成部材が組み立てられて塩化ビニールパイプ40に取り付けられて形成された電気牧柵用のワイヤ保持器33に、ワイヤ2が保持された状態を示すものである。ワイヤ2は、1本当たり50~150kgfの張力で張設されているので、ワイヤ2を保持しているワイヤ保持具46は、ワイヤ2によって圧縮コイルバネ43から離れる方向に付勢されている。このため、ワイヤ保持具46が取り付けられた第2バネ部材42も、ワイヤ保持具46を介してワイヤ2に引張られ、フック部42Hによって圧縮コイルバネ43を圧縮している。圧縮コイルバネ43に加えられた圧縮力は、第1バネ部材41のフック部41Hによって受け止められるので、ワイヤ2の張力は、ワイヤ保持具46,第2バネ部材42,圧縮コイルバネ43及び第1バネ部材41を通じて塩化ビニールパイプ40が受け止めている。
【0048】
このような状態において、電気牧柵用のワイヤ保持器33は、動物によってワイヤ2が引張られると、図10(b)に示すように、ワイヤ保持具46と第2バネ部材42を通じて圧縮コイルバネ43が圧縮され、ワイヤ保持具46が塩化ビニールパイプ40から離れる方向に移動するので、ワイヤ2を移動させることができる。動物がワイヤ2から外れ、ワイヤ2が引張られなくなると、圧縮コイルバネ43が、元の状態に戻り、第2バネ部材42を通じてワイヤ保持具46を引張るので、電気牧柵用のワイヤ保持器33が図10(a)に示した状態に戻る。
【0049】
第3実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器33も、図6に示した第1実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器31と同様に、塩化ビニールパイプ40に取り付けられ、この塩化ビニールパイプ40が地面Cに埋め込まれた支柱7に3個挿通されることにより、コーナーポストCPを形成することができる。
【0050】
ここでは、本発明の第4実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器34について説明する。第1から第3実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器31~33では、ワイヤ保持具44,45,46及び51,52に、電気牧柵用ワイヤ2が引掛けられているだけであった。一方、図12に示す第4実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器34では、図8(c)、(d)に示したワイヤ保持具52に、プーリー12が組み込まれており、電気牧柵用ワイヤ2がプーリー12に移動可能に保持されている点が異なる。以下の段落では、これを図11図12を用いて説明する。
【0051】
図11(a)は、図8(c)、(d)に示した本発明の第2実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器の第2変形例のワイヤ保持具52と、ワイヤ保持具52のロッド52Lに取り付けるプーリー12を示すものである。第2変形例のワイヤ保持具52は、湾曲部を形成したU字状の基部52Aの両端部にネジ孔52Nと貫通孔52Hがあり、先端部にネジ溝52Mのあるロッド52Lを貫通孔52Hから挿通して、平板部52Pを回してネジ溝52Mをネジ孔52Nに螺合させ、ワイヤ保持具52を閉じていた。そして、ワイヤ2は、ロッド52Lに引掛けられて保持されていた。一方、第4実施例では、貫通孔52Hを挿通させるロッド52Lに、プーリー12を挿通させてからネジ溝52Mをネジ孔52Nに螺合させてワイヤ保持具47を形成している。
【0052】
図11(b)は、第4の実施例のワイヤ保持具47を側面視した図を示している。第4の実施例のワイヤ保持具47では、ロッド52Lを回転させてロッド52Lに回転保持されたプーリー12とワイヤ保持具47の基部52Aとの間に隙間を設け、この隙間からワイヤ保持具47内にワイヤ2を挿入し、プーリー12にワイヤ2を保持させることができる。このため、第4の実施例のワイヤ保持具47は、ワイヤ2が左右に少々移動した際でも、プーリー12が回転することにより、ワイヤ2の移動をスムーズに行わせることができる。
【0053】
図12(a)は、図11(b)に示したワイヤ保持具47を組み込んだ本発明の第4実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器34にワイヤ2が保持された状態を示している。第4実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器34には、図3(a)、(b)に示した第1バネ部材41と第2バネ部材42を使用する。ワイヤ2は、1本当たり50~150kgfの張力で張設されているので、ワイヤ2を保持しているワイヤ保持具47は、ワイヤ2によって圧縮コイルバネ43から離れる方向に付勢されている。このため、ワイヤ保持具47が取り付けられた第2バネ部材42も、ワイヤ保持具47を介してワイヤ2に引張られ、フック部42Hによって圧縮コイルバネ43を圧縮している。圧縮コイルバネ43に加えられた圧縮力は、第1バネ部材41のフック部41Hによって受け止められるので、ワイヤ2の張力は、ワイヤ保持具47,第2バネ部材42,圧縮コイルバネ43及び第1バネ部材41を通じて塩化ビニールパイプ40が受け止めている。
【0054】
このような状態において、第4実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器34は、動物によってワイヤ2が引張られると、図12(b)に示すように、ワイヤ保持具47と第2バネ部材42を通じて圧縮コイルバネ43が圧縮され、ワイヤ保持具47が塩化ビニールパイプ40から離れる方向に移動するので、ワイヤ2を移動させることができる。このワイヤ2の移動時に、ワイヤ2が第4実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器34に対して左右方向に異なる長さ移動した場合でも、プーリー12が回転するので、第4実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器34は、この引張力の偏りを補正することができる。そして、第4実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器34は、動物がワイヤ2から外れ、ワイヤ2が引張られなくなると、圧縮コイルバネ43が元の状態に戻り、第2バネ部材42を通じてワイヤ保持具47を引張るので、図12(a)に示した状態に戻る。
【0055】
次に、ここでは、本発明の第4実施例の変形例の電気牧柵用のワイヤ保持器35について説明する。図13(a)は、図9(d)~(f)に示した本発明の第3実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器33のワイヤ保持具46と、ワイヤ保持具46のロッド46Lに取り付けるプーリー12を用いた第4実施例の変形例のワイヤ保持具48を示すものである。第3実施例のワイヤ保持具46は、側面視V字状の基部46Aの折り返し部46Tが第2バネ部材42の折り返し部42Tに係合するように湾曲しており、基部46Aの両端部には、貫通孔46Hとネジ孔46Nが設けられている。そして、先端部にネジ溝46Mを有するロッド46Lが、貫通孔46Hに挿通された後にネジ孔46Nに螺合されてワイヤ保持具46を閉じるようになっている。そして、ワイヤ2は、ロッド46Lに引掛けられて保持されていた。一方、第4実施例の変形例では、貫通孔46Hを挿通させたロッド46Lにプーリー12を挿通させてからネジ溝46Mをネジ孔46Nに螺合させてワイヤ保持具48を形成している。
【0056】
図13(b)は、第4の実施例の変形例のワイヤ保持具48を示すものである。第4の実施例の変形例のワイヤ保持具48では、ロッド46Lを回転させてロッド46Lに回転保持されたプーリー12とワイヤ保持具48の基部46Aとの間に隙間を設け、この隙間からワイヤ保持具48内にワイヤ2を挿入し、プーリー12にワイヤ2を保持させることができる。このため、第4の実施例の変形例のワイヤ保持具48は、ワイヤ2が左右に少々移動した際でも、プーリー12が回転することにより、ワイヤ2の移動をスムーズに行わせることができる。
【0057】
図14(a)は、図13(b)に示したワイヤ保持具48を組み込んだ本発明の第4実施例の変形例の電気牧柵用のワイヤ保持器35にワイヤ2が保持された状態を示している。第4実施例の変形例の電気牧柵用のワイヤ保持器35には、図9(a)、(b)に示した第1バネ部材41と第2バネ部材42を使用する。ワイヤ2は、1本当たり50~150kgfの張力で張設されているので、ワイヤ2を保持しているワイヤ保持具48は、ワイヤ2によって圧縮コイルバネ43から離れる方向に付勢されている。このため、ワイヤ保持具48が取り付けられた第2バネ部材42も、ワイヤ保持具48を介してワイヤ2に引張られ、フック部42Hによって圧縮コイルバネ43を圧縮している。圧縮コイルバネ43に加えられた圧縮力は、第1バネ部材41のフック部41Hによって受け止められるので、ワイヤ2の張力は、ワイヤ保持具48,第2バネ部材42,圧縮コイルバネ43及び第1バネ部材41を通じて塩化ビニールパイプ40が受け止めている。
【0058】
このような状態において、第4実施例の変形例の電気牧柵用のワイヤ保持器35は、動物によってワイヤ2が引張られると、図14(b)に示すように、ワイヤ保持具48と第2バネ部材42を通じて圧縮コイルバネ43が圧縮され、ワイヤ保持具48が塩化ビニールパイプ40から離れる方向に移動するので、ワイヤ2を移動させることができる。このワイヤ2の移動時に、第4実施例の変形例の電気牧柵用のワイヤ保持器35は、ワイヤ2が第4実施例の変形例の電気牧柵用のワイヤ保持器35に対して左右方向に異なる長さ移動した場合でも、プーリー12が回転するので、この引張力の偏りを補正することができる。そして、第4実施例の変形例の電気牧柵用のワイヤ保持器35は、動物がワイヤ2から外れ、ワイヤ2が引張られなくなると、圧縮コイルバネ43が元の状態に戻り、第2バネ部材42を通じてワイヤ保持具48を引張るので、図14(a)に示した状態に戻る。
【0059】
図15は、電気牧柵用のワイヤ保持器の圧縮コイルバネ43にバネカバー60(筐体と呼ぶ)を被せる本発明の第5実施例を説明するものであり、(a)は圧縮コイルバネ43に取り付けるバネカバー60の一実施例を示している。圧縮コイルバネ43にバネカバー60を被せるのは、圧縮コイルバネ43の内側に挿入する第1バネ部材41と第2バネ部材42の位置関係を保持するためと、ワイヤ保持器31の外側の美観を向上させるためである。図3から図7を用いて説明した本発明の第1実施例の電気牧柵用のワイヤ保持器31では、第1バネ部材41の平行部41Pが、地面に対して垂直方向に平行になるようにループ部41Lの両端部においてバネ線材が折り曲げられており、第2バネ部材42の平行部42Pが、地面に対して平行になるように、圧縮コイルバネ43の中に挿入されていた。この場合、圧縮コイルバネ43の端部において、第1バネ部材41のフック部41Hの2本のバネ線材は地面に対して垂直方向に並び、第2バネ部材42のフック部42Hの2本のバネ線材は地面に対して水平方向に並んでいる。
【0060】
ところが、ワイヤ保持器31の圧縮コイルバネ43の一端に保持された第1バネ部材41のフック部41Hと、他端に保持された第2バネ部材42のフック部42Hは、ワイヤ保持器31の動作中に保持位置が動いてしまう虞があった。第1バネ部材41のフック部41Hと第2バネ部材42のフック部42Hの圧縮コイルバネ43による保持位置が動くと、第1バネ部材41の平行部41Pと第2バネ部材42の平行部42Pが干渉して、ワイヤ保持器31の動作がスムーズに行われないことがある。また、ワイヤ保持器31において圧縮コイルバネ43がむき出しになっていると、ワイヤ保持器31の美観を損なう虞がある。このため、本発明の第5実施例では、圧縮コイルバネ43の内側に挿入する第1バネ部材41と第2バネ部材42の位置関係を保持すると共に、ワイヤ保持器31の美観を向上させるために、圧縮コイルバネ43にバネカバー60を被せることとした。
【0061】
図15(a)に示すバネカバー60は合成樹脂で形成することができる。そして、バネカバー60は、圧縮コイルバネ43と平行部41Pと平行部42Pを収容する、圧縮コイルバネ43の全長以上の長さと、圧縮コイルバネ43が内部でスムーズに収縮或いは伸長できる内径を備える収容部を有するようにする。また、バネカバー60の両端部には、外壁が僅かに膨出する膨出部61を形成し、一方の膨出部61の自由端(第2端部と呼ばれる)の外縁には、第1バネ部材41のフック部41Hを係止するための一対の係止溝62(凹部と呼ばれる)を対向位置に設ける。膨出部61は係止溝62の補強も兼ねる。係止溝62の溝幅は、図15(b)に示すように、第1バネ部材41のフック部41Hにおけるバネ線材の直径を備える円溝とすれば良い。また、図15(c)に示すように、係止溝62の入り口部の幅を拡げ、係止溝62に第1バネ部材41のフック部41Hが入り易くした形状でも良い。更に、図15(d)に示すように、係止溝61の入り口部の幅は拡げるが、係止溝61の途中にバネ線材の直径よりも短いストッパ62Sを形成し、フック部41Hの挿入時は対向位置にあるストッパ62Sの間の距離を拡げて挿入し、係止溝61内に挿入されたフック部41Hが抜け難いような形状にすることもできる。
【0062】
ループ部41Lが突出するバネカバー60の他方の端部(第1端部と呼ばれる)には、圧縮コイルバネ43を圧縮しながら移動する第2バネ部材42のフック部42Hの移動をガイドするバネカバー60の他方の端部から係止溝62を設けた膨出部61の自由端に向かって直線上に延伸する一対のガイド溝63(スリットと呼ばれる)を対向位置に設ける。膨出部61の自由端からのガイド溝63の長さは、第2バネ部材42のフック部42Hの移動距離以上であり、ガイド溝63の幅は第2バネ部材42のフック部42Hがスムーズに移動できる幅である。従って、ガイド溝63は膨出部61だけでなく、バネカバー60の本体60Aにも設けている。そして、ガイド溝63は、対向位置にあるガイド溝63の同じ場所を結ぶ線が、前述の対向位置にある係止溝62の同じ場所を結ぶ線に対してねじれの位置となり、地面に対して水平になるようにバネカバー60に形成する。ガイド溝63のバネカバー60のループ部41Lが突出する端部での位置は、係止溝62を設けた膨出部61の自由端での位置から90度シフトしている。また、第2バネ部材42のフック部42Hはバネカバー60に係止されないので、ガイド溝63を設ける側のバネカバー60の本体60Aに膨出部61を設ける必要はないが、本実施例ではバネカバー60の美観上の理由で膨出部61を設けている。
【0063】
図16は、図5(a)に示したワイヤ保持器31の圧縮コイルバネ43に、図15(a)に示したバネカバー60を取り付けた状態を示すものである。ワイヤ2は1本当たり50~150kgfの張力で張設されているので、ワイヤ2を保持しているワイヤ保持具44はワイヤ2によって圧縮コイルバネ43から離れる方向に付勢されている。このため、ワイヤ保持具44が取り付けられた第2バネ部材42もワイヤ保持具44を介してワイヤ2に引張られるので、フック部42Hによって圧縮コイルバネ43が圧縮され、フック部42Hはバネカバー60のガイド溝63の中に位置している。このような状態において、動物によってワイヤ2が引張られると、図示は省略するが、フック部42Hがガイド溝63内を移動して圧縮コイルバネ43を圧縮する。この時、圧縮コイルバネ43は、バネカバー60内で圧縮されるので、歪むことなく円柱状を保持したまま縮む。そして、動物がワイヤ2から外れてワイヤ2が引張られなくなると、バネカバー60内で圧縮コイルバネ43が元の状態に戻り、フック部42Hがバネカバー60のガイド溝63内を移動して、電気牧柵用のワイヤ保持器31が図16に示した状態に戻る。
【0064】
図17は、電気牧柵用のワイヤ保持器の圧縮コイルバネに、他の形態のバネカバー60′を被せる本発明の第5実施例の変形例を説明するものであり、(a)は変形例のバネカバーの60′の形状を示すものである。また、図17(b)は図17(a)に示したバネカバー60′を矢印B方向から見たものである。本実施形態のバネカバー60′も合成樹脂で形成することができる。バネカバー60′の全長は、圧縮コイルバネ43の全長以上の長さとする点は図15(a)に示したバネカバー60と同じである。
【0065】
図16に示した第5実施例では、バネカバー60の両端部に膨出部61を形成し、一方の膨出部61の自由端には係止溝62を設けて第1バネ部材41のフック部41Hを係止し、他方の端部には第2バネ部材42のフック部42Hの移動をガイドするガイド溝63を設けていた。第5実施例のようなバネカバー60を使用すると、圧縮コイルバネはバネカバー60によって見えなくなるので電気牧柵用のワイヤ保持器の美観が向上するが、第1バネ部材41のフック部41H及び第2バネ部材42のフック部42Hは外部から視認することができた。
【0066】
そこで、図17に示す形態のバネカバー60′では、第1バネ部材41のフック部41Hをバネカバー60′の一方の端部に固定し、第2バネ部材42のフック部42Hをスライド可能にガイドすると共に、両者が外部から視認できない状態にして、ワイヤ保持器31の美観を更に向上させている。具体的に説明すると、第5実施例の変形例では、バネカバー60′の両端部に膨出部61を形成し、一方の膨出部61の自由端には係止溝62を設けて第1バネ部材41のフック部41Hを係止し、他方の端部には第2バネ部材42のフック部42Hの移動をガイドするガイド溝63を設ける点は同じである。一方、第5実施例の変形例では更に、係止溝62とガイド溝63の外側に、係止溝62に係止された第1バネ部材41のフック部41Hを覆う目隠しカバー64と、第2バネ部材42のフック部42Hの移動を妨げずに覆う目隠しカバー65とを設けている。目隠しカバー64と目隠しカバー65の高さは、フック部41H、42Hの大きさに合わせて形成すれば良い。この形態のバネカバー60′によれば、電気牧柵用のワイヤ保持器の美観が更に向上する。
【0067】
以上本発明をいくつかの実施例に基づいて説明したが、本発明の電気牧柵用のワイヤ保持器は、1つの支柱に複数個使用することから、本発明の電気牧柵用のワイヤ保持器を備えるポストは、特許文献1,2に開示されたポストと同等の動作と機能を備えながら、コストを大幅に低減することができる。本開示に係る電気牧柵のワイヤ保持器は以下の態様であってもよい。
(1)地面に対して垂直に立設される剛性を備えた支柱に直接、或いは前記支柱に対して回転可能に挿通される少なくとも1つのパイプにそれぞれ、取り付けられてワイヤを保持する電気牧柵用のワイヤ保持器であって、
バネ線材から形成される第1バネ部材、第2バネ部材及びコイルバネと、前記第2バネ部材の折り返し部に取り付けられて前記ワイヤを保持するワイヤ保持具を備え、
第1バネ部材は、支柱又は前記パイプの外周面に圧着できるループ部と、ループ部の両端から同じ方向に延伸されてコイルバネの内側を挿通する平行部と、コイルバネ挿通後の平行部の先端において外側に折り返されてコイルバネの端部に係止されるフック部とを備え、
第2バネ部材は、折り返し部と、折り返し部に隣接する平行部と、平行部の先端において外側に折り返されたフック部を備え、フック部は平行部のコイルバネ挿通後にコイルバネの端部に係止され、
コイルバネは、第1、第2バネ部材の平行部の長さよりも短い全長を備え、
ワイヤ保持具には環状部があり、環状部には前記ワイヤの環状部の内外への出し入れを可能にする開閉部がある、電気牧柵用のワイヤ保持器。
(2)ループ部のバネ線材は、支柱又はパイプに対して少なくとも2周巻かれている態様(1)に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
(3)第1バネ部材の前記平行部の2本のバネ線材は地面に対して垂直方向に並んでおり、第2バネ部材の平行部の2本のバネ線材は地面に対して平行方向に並んでいる態様(1)又は(2)に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
(4)第1バネ部材の平行部の2本のバネ線材は地面に対して平行方向に並んでおり、第2バネ部材の平行部の2本のバネ線材は地面に対して垂直方向に並んでいる態様(1)又は(2)に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
(5)ワイヤ保持具は所定の肉厚を備える合成樹脂製であり、その本体の一部に肉厚方向に貫通する貫通孔があり、ワイヤ保持具は第2バネ部材がコイルバネに挿通される前に、貫通孔を介して折り返しに取り付けられる態様(3)に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
(6)ワイヤ保持具は湾曲部を備えるU字状の金属製であり、2つの自由端の一方には貫通孔、他方にはネジ孔が形成され、先端部にネジ溝が形成された金属製のロッドが貫通孔に挿通された後にネジ孔に螺着されることによって環状部が形成され、ロッドのネジ溝が前記ネジ孔から離脱することによって開閉部が形成され、湾曲部が第2バネ部材の折り返し部に取り付けられた状態でロッドが地面に対して垂直になる態様(3)に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
(7)ワイヤ保持具は、側面視V字状の基部を備え、基部の折り返し部は正面視第2バネ部材の折り返し部に係合する湾曲部となっており、基部の2つの自由端の一方には貫通孔、他方にはネジ孔が形成され、先端部にネジ溝が形成された金属製のロッドが貫通孔に挿通された後にネジ孔に螺着されることによって環状部が形成され、ロッドのネジ溝がネジ孔から離脱することによって開閉部が形成され、湾曲部が第2バネ部材の折り返し部に取り付けられた状態でロッドが地面に対して垂直になる態様(4)に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
(8)ワイヤ保持具のロッドにロッドを回転軸として回転するプーリーが取り付けられており、環状部内に挿入されたワイヤはプーリーに保持される態様(6)又は(7)に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
(9)内部空間に前記ワイヤ保持具の前記圧縮コイルバネを収容できる本体を備え、前記本体の一端に前記第1バネ部材のフック部を係止する溝が対向位置に設けられ、他端に前記第2バネ部材のフック部の移動をガイドするスリットが対向位置に設けられたカバーを更に備える態様(1)から(8)の何れかに記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
(10)対向する2つの前記溝の同じ場所を通る直線と、対向する2つの前記スリットの同じ場所を通る直線が、ねじれの位置にある態様(9)に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
(11)前記溝の外側に、前記溝に係止された前記第1バネ部材のフック部を覆って隠す目隠しカバーが設けられ、前記スリットの外側に、前記スリット内を移動する前記第2バネ部材のフック部を覆って隠す目隠しカバーが設けられている態様(10)に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器。
(12)地面に対して垂直に立設される剛性を備えた支柱に直接、或いは支柱に対して回転可能に挿通される少なくとも1つの所定長さを備えるパイプにそれぞれ、取り付けられてワイヤを保持する電気牧柵用のワイヤ保持器を備えるポストであって、
電気牧柵用のワイヤ保持器が、態様(1)から(10)の何れかに記載の電気柵用のワイヤ保持器であるポスト。
(13)ポストが、ワイヤの張設段の各段のワイヤの張設方向を変更することが可能なコーナーポストである態様(12)に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器を備えるポスト。
(14)ポストが、ワイヤの張設方向を変更するコーナー部に設置する2つのコーナーポストの間の領域の地面に設置されてワイヤを保持する中間ポストである態様(13)に記載の電気牧柵用のワイヤ保持器を備えるポスト。
【符号の説明】
【0068】
7 支柱
11、12 プーリー
31、32、33、34、35ワイヤ保持器
40 塩化ビニールパイプ
41 第1バネ部材
42 第2バネ部材
43 圧縮コイルバネ
44、45、46、47、48、51、52、53ワイヤ保持具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17