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  • 特開-エアバッグ 図1
  • 特開-エアバッグ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128737
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/239 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
B60R21/239
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037903
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小林 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 勇磨
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054CC15
3D054CC34
3D054CC43
3D054FF16
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】簡素な構造で穴部周辺の応力を効果的に分散できるエアバッグを提供する。
【解決手段】エアバッグ1は、穴部4を有する袋状のエアバッグ本体部2と、穴部4の周囲に固着される補強体5と、を備える。補強体5は、第一補強体11と、第一補強体11よりも外形が大きく、第一補強体11を覆う第二補強体12と、を有する。第一補強体11と第二補強体12とのいずれかの外形の少なくとも一部が曲線状に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴部を有する袋状のエアバッグ本体部と、
前記穴部の周囲に固着される補強体と、を備え、
前記補強体は、
第一補強体と、
この第一補強体よりも外形が大きく、この第一補強体を覆う第二補強体と、を有し、
前記第一補強体と前記第二補強体とのいずれかの外形の少なくとも一部が曲線状に形成されている
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
第二補強体は、エアバッグ本体部に対する固着部がこのエアバッグ本体部の展開時に分離可能である
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【請求項3】
穴部は、ベントホールである
ことを特徴とする請求項1または2記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ本体部の開口部の周囲に固着される補強体を備えるエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に備えられるエアバッグ装置は、折り畳まれた袋状のエアバッグの内部にガス発生器であるインフレータからガスを噴出することでエアバッグを膨張展開させ、乗員を拘束保護する。
【0003】
従来、インフレータから噴出されるガスからエアバッグの内部、特にインフレータの挿入開口やガス排気穴であるベントホールなど、エアバッグ本体部に形成された穴部を保護するために、穴部の開口縁を含む周辺に補強体(パッチ)が取り付けられる。
【0004】
このような補強体は、強度向上のため、穴部と同心円状の複数の縫製によりエアバッグ本体部に固着し、さらにガス圧により捲れ上がることがないように、ガスが噴出している方向に向けて、補強体の中央部から外縁部外側へかけて縫製を施している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-71924号公報 (第3-4頁、図1-5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ガス圧を受ける補強体は通常1枚であり、その1枚に対して施された縫製部にガス圧が集中することになる。そこで、適切な強度を確保するための縫製箇所の検討や糸の種類の選定などが容易でない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、簡素な構造で穴部周辺の応力を効果的に分散できるエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のエアバッグは、穴部を有する袋状のエアバッグ本体部と、前記穴部の周囲に固着される補強体と、を備え、前記補強体は、第一補強体と、この第一補強体よりも外形が大きく、この第一補強体を覆う第二補強体と、を有し、前記第一補強体と前記第二補強体とのいずれかの外形の少なくとも一部が曲線状に形成されているものである。
【0009】
請求項2記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、第二補強体は、エアバッグ本体部に対する固着部がこのエアバッグ本体部の展開時に分離可能であるものである。
【0010】
請求項3記載のエアバッグは、請求項1または2記載のエアバッグにおいて、穴部は、ベントホールであるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のエアバッグによれば、エアバッグ本体部の内部にインフレータから噴出されたガスによってエアバッグ本体部が膨張展開する際のガスの圧力を、補強体の曲線状の部分によって受け流すとともに、ガスの圧力が第一補強体と第二補強体とのいずれかに集中しにくく、簡素な構成で応力を効果的に分散できる。
【0012】
請求項2記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加えて、エアバッグ本体部からの分離によってガスの圧力を吸収し、応力をより効果的に分散させることができる。
【0013】
請求項3記載のエアバッグによれば、請求項1または2記載のエアバッグの効果に加えて、インフレータから噴出されたガスの圧力を受けるベントホールに対して、その周辺の応力を効果的に分散できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態のエアバッグの一部をエアバッグ本体部の内側から示す平面図である。
図2】同上エアバッグの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1及び図2において、1はエアバッグを示す。このエアバッグ1は、自動車などの車両に搭載され、折り畳まれた状態で収納されているとともに、インフレータから供給されるガスにより車室内に膨張展開することで乗員を拘束保護する。本実施の形態において、エアバッグ1は、例えば座席の側部などの被収納部に収納されて乗員の側部に膨張展開するサイドエアバッグ(SAB)を例に挙げる。
【0017】
エアバッグ1は、袋状のエアバッグ本体部2を有する。エアバッグ本体部2は、単数または複数の基布を袋状に縫製して構成されている。エアバッグ本体部2と、インフレータと、これらエアバッグ本体部2及びインフレータを収納するケースと、により、エアバッグ装置が構成される。エアバッグ装置は、エアバッグ本体部2が折り畳まれた状態でインフレータなどとともにケースに収納され、ケースととともに被収納部に設置される。
【0018】
エアバッグ本体部2には、乗員に対向して乗員を拘束する対向部3が形成されている。対向部3は、乗員拘束面などとも呼ばれ、例えば乗員の側部を覆う面状に形成される。
【0019】
エアバッグ本体部2には、穴部4が形成されている。穴部4は、任意の形状としてよいが、例えば四角形状、特に細長い四角形状に形成されている。本実施の形態において、穴部4は、エアバッグ本体部2内に噴出されたガスの一部を排出することで内圧を適切に設定するための排気穴つまりベントホールを例に挙げて説明する。図示される例では、穴部4は、エアバッグ本体部2の対向部3を貫通して開口されている。
【0020】
穴部4の周囲には、補強体5が固着され、穴部4の周囲のエアバッグ本体部2を補強している。補強体5は、パッチなどとも呼ばれる。補強体5は、複数設定される。本実施の形態において、補強体5には、第一補強体11と第二補強体12とが設定される。
【0021】
第一補強体11は、基布などにより形成されている。第一補強体11は、穴部4よりも外形が大きく形成され、エアバッグ本体部2の内面に重ねられている。
【0022】
第一補強体11には、穴部4と連通する第一開口部14が形成されている。第一開口部14は、穴部4と同形状または略同形状に形成され、第一補強体11がエアバッグ本体部2の内面に重ねられた状態で穴部4の位置に一致するようになっている。
【0023】
第二補強体12は、基布などにより形成されている。第一補強体11よりも外形が大きく、第一補強体11を覆って第一補強体11及びエアバッグ本体部2の内面に重ねられている。第二補強体12は、第一補強体11の外形を完全に覆う大きさに形成されている。つまり、第一補強体11の全体が第二補強体12により覆われている。
【0024】
第二補強体12には、穴部4と連通する第二開口部15が形成されている。第二開口部15は、第一開口部14と同様に、穴部4及び/または第一開口部14と同形状または略同形状に形成され、第二補強体12がエアバッグ本体部2の内面及び第一補強体11に重ねられた状態で穴部4及び第一開口部14の位置に一致するようになっている。
【0025】
なお、第一補強体11は、エアバッグ本体部2の内面に対して密着するように重ねられ、第二補強体12は、第一補強体11及びエアバッグ本体部2の内面に対して密着するように重ねられているが、図2においては、説明を明確にするために、第一補強体11をエアバッグ本体部2の内面に対して離して示し、第二補強体12を第一補強体11及びエアバッグ本体部2の内面に対して離して示している。
【0026】
そして、図1に示すように、第一補強体11と第二補強体12とのいずれかは、外形の少なくとも一部が曲線状に形成されている。本実施の形態では、第一補強体11の外形が直線状であり、第二補強体12の外形の少なくとも一部が曲線状に形成されている。
【0027】
図示される例では、第一補強体11は、外形が四角形状に形成されている。例えば、第一補強体11の外形は、長方形状であって、外縁部をなす各辺部がそれぞれ直線状となっている。
【0028】
また、例えば、第二補強体12の外形は、楕円形状に形成されている。すなわち、第二補強体12の外形は、全体が曲線状に形成され、直線状の部分を有さない。第二補強体12の外形は、緩やかな曲線状に湾曲されている。
【0029】
図1及び図2に示すように、補強体5は、固着部16によりエアバッグ本体部2に固着されている。本実施の形態において、固着部16は、例えば縫製部である。補強体5には、第一補強体11をエアバッグ本体部2に固着する第一固着部18と、第二補強体12をエアバッグ本体部2に固着する第二固着部19と、が設定されている。
【0030】
第一固着部18は、第一開口部14を囲む位置に形成されている。
【0031】
第二固着部19は、第二開口部15を囲み、かつ、第一固着部18よりも外側、すなわち第一固着部18を基準として第一開口部14及び穴部4とは反対側の位置に形成されている。
【0032】
そして、第一固着部18は、第一補強体11の外形に沿って、第一補強体11の外縁部近傍にループ状に形成されている。同様に、第二固着部19は、第二補強体12の外形に沿って、第二補強体12の外縁部近傍にループ状に形成されている。そのため、本実施の形態では、第二固着部19の少なくとも一部が曲線状に形成されている。
【0033】
図示される例では、第一固着部18は、第一開口部14の外形を囲む四角形状に形成されている。第一固着部18は、第一補強体11の外縁部寄りの位置で、かつ、外縁部から第一補強体11の内側に離れた位置にある。そのため、第一補強体11において、第一固着部18よりも外縁部側の部分が、接合代11aとなっている。
【0034】
第二固着部19は、第二開口部15の外形を囲む楕円形状に形成されている。すなわち、第二固着部19は、全体が曲線状に形成され、直線状の部分を有さない。図示される例では、第二固着部19は、第一補強体11の外形を囲む楕円形状に形成されている。そのため、第二固着部19は、緩やかな曲線状に湾曲されている。第二固着部19は、第二補強体12の外縁部寄りの位置で、かつ、外縁部から第二補強体12の内側に離れた位置にある。そのため、第二補強体12において、第二固着部19よりも外縁部側の部分が、接合代12aとなっている。本実施の形態では、接合代12aの幅寸法は、接合代11aの幅寸法よりも小さい。
【0035】
また、第二固着部19は、第一固着部18よりも固着強度が小さい。例えば、第二固着部19を構成する縫製糸19aが、第一固着部18を構成する縫製糸18aよりも細く設定されている。また、第二固着部19の縫製ピッチは、第一固着部18の縫製ピッチよりも大きい。そのため、第二固着部19は、エアバッグ本体部2の展開時にガスの圧力によってエアバッグ本体部2から分離可能となっている。
【0036】
そして、穴部4の周囲を補強する補強体5として、第一補強体11と、第一補強体11よりも外形が大きく第一補強体11を覆う第二補強体12と、を設定し、第一補強体11と第二補強体12とのいずれかの外形の少なくとも一部を曲線状に形成していることで、折り畳まれた状態のエアバッグ本体部2の内部にインフレータから噴出されたガスによってエアバッグ本体部2が膨張展開する際のガスの圧力を、曲線状の部分によって受け流すとともに、第一補強体11と第二補強体12との二枚の補強体によって穴部4の周囲を補強しているので、ガスの圧力が第一補強体11と第二補強体12とのいずれかに集中しにくく、簡素な構成で応力を効果的に分散できる。
【0037】
本実施の形態では、外形が曲線状に形成された第二補強体12が第一補強体11を覆っているので、第一補強体11の縫い代11aと第一固着部18との間にガスが集中的に溜まることを防止できる。
【0038】
この結果、第一固着部18の縫い目が繋がったり、第一固着部18から第一補強体11とともにエアバッグ本体部2が破れたりすることを防止できる。
【0039】
また、第二固着部19が、エアバッグ本体部2の展開時にガスの圧力によってエアバッグ本体部2から分離可能であるため、このエアバッグ本体部2からの分離によってガスの圧力を吸収し、応力をより効果的に分散させることができる。
【0040】
特に、穴部4が対向部3に形成されている場合、複数の補強体5を対向部3に固着することは、エアバッグ本体部2の展開時に対向部3と固着部16とに負荷が掛かるため、第二固着部19の少なくとも一部を曲線状とし、その固着強度を第一固着部18の固着強度より小さくしておくことで、対向部3に加わる応力を減らすことができる。
【0041】
特に、穴部4がベントホールであるため、インフレータから噴出されたガスの圧力を受けるベントホールに対して、その周辺の応力を効果的に分散できる。
【0042】
なお、一実施の形態において、固着部16は、縫製に限らず、接着剤などにより形成されていてもよい。
【0043】
また、穴部4は、ベントホールを例に挙げて説明したが、これに限らず、例えばインフレータの挿入開口など、エアバッグ本体部2に開口されて補強体により補強される任意の穴部に対しても同様の構成を適用できる。
【0044】
また、エアバッグ1は、サイドエアバッグに限らず、車窓を覆って車室内に膨張展開するカーテンエアバッグなど、他の任意の種類のエアバッグに適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、自動車などの車両用のエアバッグとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0046】
1 エアバッグ
2 エアバッグ本体部
4 穴部
5 補強体
11 第一補強体
12 第二補強体
図1
図2