(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128745
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】分散剤
(51)【国際特許分類】
C04B 24/26 20060101AFI20240913BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20240913BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20240913BHJP
C08F 216/18 20060101ALI20240913BHJP
C08F 220/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
C04B24/26 B
C04B18/14 A
C04B18/14 Z
C04B22/08 Z
C04B24/26 E
C08F216/18
C08F220/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037920
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】新井 太一朗
(72)【発明者】
【氏名】前本 梨衣
【テーマコード(参考)】
4G112
4J100
【Fターム(参考)】
4G112MD01
4J100AE10P
4J100AE18P
4J100AJ01Q
4J100AJ02Q
4J100AJ03Q
4J100AK02Q
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4J100AK07Q
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4J100AK19Q
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4J100AK24Q
4J100AK25Q
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4J100AK29Q
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4J100AL44Q
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4J100AM32Q
4J100AM37Q
4J100BA03Q
4J100BA08P
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA19
4J100FA39
4J100JA67
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スラグ、シリカフューム及びフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、セメントを実質的に含有しない組成物の粘性を低減することができる分散剤を提供する。
【解決手段】分散剤は、下記式(1);
(式中、R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。R
4は、直接結合、CH
2基又はCH
2CH
2基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、1~300の数である。R
5は、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基を表す。)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位とを有し、該不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位の含有割合が全構造単位100質量%に対して20~70質量%であり、重量平均分子量が5000~35000である共重合体を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラグ、シリカフューム及びフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、セメントを含有しない組成物に用いられる分散剤であって、
該分散剤は、下記式(1);
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。R
4は、直接結合、CH
2基又はCH
2CH
2基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の繰り返し数を表し、1~300の数である。R
5は、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基を表す。)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位とを有し、
該不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位の含有割合が全構造単位100質量%に対して20~70質量%であり、
重量平均分子量が5000~35000である共重合体を含むことを特徴とする分散剤。
【請求項2】
前記不飽和カルボン酸系単量体は、不飽和モノカルボン酸系単量体であることを特徴とする請求項1に記載の分散剤。
【請求項3】
前記不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位の含有割合が全構造単位100質量%に対して25~70質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の分散剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤に関する。より詳しくは、セメントを実質的に含有しない組成物に有用である分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(メタ)アクリル酸等のポリカルボン酸の側鎖にポリアルキレングリコールを有するポリカルボン酸系共重合体は、その優れたセメント分散性能により、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物から土木・建築構造物等を構築するために欠かすことのできないものとなっている。
このような共重合体を含むセメント混和剤は、減水剤等として用いられ、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を有することになる。
【0003】
ところで、セメントの製造過程においてCO2が多く排出されることから、CO2の排出を低減するためにセメントをフライアッシュ、スラグ等に置換したコンクリート組成物が提案されている。このような組成物に用いられる分散剤に関して、例えば、特許文献1には、アルカリ活性化剤を含むバインダー組成物中の分散剤としての、櫛形ポリマーKPの使用であって、前記活性化剤は、潜在水硬性及び/又はポゾラン系バインダーを活性化するのに特に適し、前記櫛形ポリマーKPは、複数の骨格モノマーで構成されているポリマー骨格を有し、前記櫛形ポリマーKPは、前記骨格に結合した、各々が複数の側鎖モノマーで構成されている複数のポリマー側鎖を有し、かつ前記骨格モノマーの少なくとも一部分は、1個以上のイオン化可能基を有し、所定の式で定義される櫛形ポリマーKPの構造定数Kが、少なくとも70であることを特徴とする、櫛形ポリマーKPの使用が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、従来フライアッシュ、スラグ等を用いるコンクリート組成物が検討されているが、このようなコンクリート組成物は、セメントよりも粘性が高いという課題があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、スラグ、シリカフューム及びフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、セメントを実質的に含有しない組成物の粘性を低減することができる分散剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、スラグ、シリカフューム及びフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、セメントを実質的に含有しない組成物に用いられる分散剤について種々検討したところ、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位とを有し、該不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位の含有割合が所定の割合であって、重量平均分子量が所定の範囲である共重合体が、上記組成物の粘性を低減することができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
本発明は、以下の分散剤等を包含する。
〔1〕スラグ、シリカフューム及びフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、セメントを含有しない組成物に用いられる分散剤であって、該分散剤は、下記式(1);
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。R
4は、直接結合、CH
2基又はCH
2CH
2基を表す。AOは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の繰り返し数を表し、1~300の数である。R
5は、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基を表す。)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位とを有し、該不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位の含有割合が全構造単位100質量%に対して20~70質量%であり、重量平均分子量が5000~35000である共重合体を含むことを特徴とする分散剤。
〔2〕上記不飽和カルボン酸系単量体は、不飽和モノカルボン酸系単量体であることを特徴とする上記〔1〕に記載の分散剤。
〔3〕上記不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位の含有割合が全構造単位100質量%に対して25~70質量%であることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の分散剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分散剤は、上述の構成よりなり、スラグ、シリカフューム及びフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、セメントを実質的に含有しない組成物の粘性を低減できるため、スラグ等を含み、セメントを実質的に含有しないコンクリート組成物等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0011】
1.分散剤
本発明の分散剤は、上記式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(以下、単量体(A)ともいう)由来の構造単位(以下、構造単位(a)ともいう)と、不飽和カルボン酸系単量体(以下、単量体(B)ともいう)由来の構造単位(以下、構造単位(b)ともいう)とを有し、該不飽和カルボン酸系単量体(B)由来の構造単位(b)の含有割合が全構造単位100質量%に対して20~70質量%であって、重量平均分子量が5000~35000である共重合体を含む。
なお、本発明において、単量体由来の構造単位とは、単量体の炭素-炭素二重結合(C=C)部分が単結合に置き換わって隣り合う炭素原子と結合を形成した構造(-C-C-)を意味する。本発明において、単量体由来の構造単位は単量体を重合することによって形成されたものに限定されず、重合反応以外の反応により形成されたものであってもよい。
【0012】
上記共重合体における構造単位(a)の割合は、全構造単位100質量%に対して30~80質量%であることが好ましい。より好ましくは30~75質量%であり、更に好ましくは50~70質量%である。
【0013】
上記共重合体における構造単位(b)の割合は、全構造単位100質量%に対して20~70質量%であり、好ましくは25~70質量%である。これにより、上記組成物の粘性をより充分に低減することができる。上記構造単位(b)の割合として更に好ましくは30~50質量%である。
【0014】
上記共重合体は、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)及び不飽和カルボン酸系単量体(B)以外のその他の単量体(C)由来の構造単位(c)を有していてもよい。
上記共重合体における構造単位(c)の割合は、全構造単位100質量%に対して0~10質量%であることが好ましい。
より好ましくは0~8質量%であり、更に好ましくは0~5質量%であり、最も好ましくは0質量%である。
【0015】
上記共重合体は、重量平均分子量が5000~35000であり、好ましくは5000~30000 である。これにより、上記組成物の粘性をより充分に低減することができる。重量平均分子量として更に好ましくは7000~25000であり、特に好ましくは8000~20000である。
上記重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0016】
<ポリアルキレングリコール系単量体(A)>
上記ポリアルキレングリコール系単量体(A)は、上記式(1)で表される化合物である。
上記式(1)において、R1~R3は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。好ましくはR1、R2が水素原子であって、R3が水素原子又はメチル基である。より好ましくは、R1、R2が水素原子であって、R3がメチル基である。
【0017】
R4は、直接結合、CH2基又はCH2CH2基を表す。R4として好ましくはCH2CH2基である。
【0018】
上記式(1)におけるR5は、水素原子、又は、炭素数1~18の炭化水素基を表す。好ましくは炭素数1~12の炭化水素基又は水素原子であり、より好ましくは、水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基、更に好ましくは、水素原子又は炭素数1~6の炭化水素基、特に好ましくは、水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基である。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状)、フェニル基、アルキル置換フェニル基等が挙げられる。中でも、アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状)が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0019】
上記式(1)中、AOは、「同一又は異なって、」炭素数2~18のオキシアルキレン基を表すが、これは、ポリアルキレングリコール中にn個存在するAOのオキシアルキレン基が全て同一であってもよく、異なっていてもよいことを意味する。
上記オキシアルキレン基の炭素数は2~18であることが好ましい。より好ましくは2~12であり、更に好ましくは2~8であり、特に好ましくは2~4である。
上記式(1)中、AOで表されるオキシアルキレン基は、アルキレンオキシド付加物であり、このようなアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、スチレンオキシド等の炭素数2~8のアルキレンオキシドが挙げられる。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2~4のアルキレンオキシドであり、更に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
また、上記ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の中から選ばれる任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物である場合、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、ポリアルキレングリコール中のオキシアルキレン基として、オキシエチレン基を必須成分として有することが好ましく、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、90モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましい。
【0020】
上記式(1)中、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~300である。nとしては好ましくは3~200であり、より好ましくは5~100であり、更に好ましくは8~80であり、特に好ましくは10~50である。
【0021】
上記ポリアルキレングリコール系単量体(A)として具体的には、ビニルアルコール、アリルアルコール、メタリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール、3-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-1-オール、2-メチル-2-ブテン-1-オール、3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオール等の炭素数2~8の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを10~200モル付加させた化合物及びこれらの末端を炭素数1~30の炭化水素基で疎水変性した化合物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、好ましくは4-ヒドロキシブチル-1-モノビニルエーテル、(メタ)アリルアルコール又は3-メチル-3-ブテン-1-オールにアルキレンオキサイドを付加させたものであり、より好ましくは3-メチル-3-ブテン-1-オールにアルキレンオキサイドを付加させたものである。
【0022】
<不飽和カルボン酸系単量体(B)>
上記不飽和カルボン酸系単量体(B)は、カルボキシル基とエチレン性不飽和炭化水素基(不飽和基)を有するものであれば、特に制限されないが、下記式(2);
【0023】
【0024】
(式中、R6、R7、R8は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、-(CH2)p1COOM2(-(CH2)p1COOM2は、-COOM1又はその他の-(CH2)p1COOM2と無水物を形成していてもよい)、-(CH2)p2(CO)q1-O-R9、又は、-(CH2)p3CONR10R11を表す。p1、p2、p3は、同一又は異なって、0~2の整数を表し、q1は、0又は1を表す。M1及びM2は、同一又は異なって、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、三価金属原子、第4級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。R9、R10、R11は、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
【0025】
上記R6、R7、R8における炭素数1~10のアルキル基の炭素数として、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~4である。炭素数1~10のアルキル基として好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。上記R6、R7、R8のうち少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、より好ましくは少なくとも2つが水素原子である。上記R9、R10、R11における炭素数1~30の炭化水素基としては、炭素数1~30の脂肪族アルキル基、炭素数3~20の脂環式アルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数6~30のアリール基等が挙げられる。上記M1及びM2における一価金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等が挙げられる。二価金属原子としては、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等が挙げられる。三価金属原子としては、アルミニウム、鉄等が挙げられる。また、有機アミン基としては、例えば、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が挙げられる。上記M1及びM2としては、水素原子又はアルカリ金属原子が好ましい。
【0026】
上記不飽和カルボン酸系単量体(B)として具体的には、下記の不飽和モノカルボン酸系単量体や不飽和ジカルボン酸系単量体が挙げられる。不飽和モノカルボン酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、チグリン酸、3-メチルクロトン酸、2-メチル-2-ペンテン酸、α-ヒドロキシアクリル酸等;これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;下記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~22のアルコール又は炭素数2~4のグリコールとのハーフエステル;不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~22のアミンとのハーフアミド等が挙げられる。
【0027】
上記炭素数1~22のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナオール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、イコサノール等が挙げられる。
【0028】
上記炭素数2~4のグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。
【0029】
上記炭素数1~22のアミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ドデシルアミン等が挙げられる。
【0030】
不飽和ジカルボン酸系単量体としては、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、それらの無水物が挙げられる。
【0031】
上記不飽和カルボン酸系単量体(B)として好ましくは、不飽和モノカルボン酸系単量体であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)である。
【0032】
本発明の共重合体は、単量体(A)、(B)以外のその他の単量体(C)由来の構造単位(c)を有していてもよい。
その他の単量体(C)は、単量体(A)、(B)と共重合することができる限り特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸iso-ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート及びこれらの末端を炭素数1~30の炭化水素基で疎水変性したアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;3-(メタ)アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、α-メチル-p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルスルファミン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、4-(アリルオキシ)ベンゼンスルホン酸、1-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、1,1-ジメチル-2-プロペン-1-スルホン酸、3-ブテン-1-スルホン酸、1-ブテン-3-スルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-n-ブタンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-フェニルプロパンスルホン酸、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸等の不飽和スルホン酸及びこれらの塩;3-(メタ)アリルオキシ-1,2-ジヒドロキシプロパン、1-アリルオキシ-3-ブトキシプロパン-2-オール等の水酸基含有エーテル類;N-ビニルピロリドン等のN-ビニルラクタム系単量体;(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN置換若しくは無置換の(メタ)アクリルアミド;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、フェニルマレイミド、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、オクテン等のアルケン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール及びこれらの塩またはこれらの4級化物等の不飽和アミン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記その他の単量体(C)として好ましくは水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類である。
【0033】
(共重合体の製造方法)
本発明の共重合体の製造は特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、単量体成分の具体例及び好ましい例は、上述のとおりである。
重合反応による共重合体における各構造単位の割合は、反応原料として用いた各単量体の割合と高速液体クロマトグラフィーにより測定される単量体の残存量に基づいて算出することができる。
【0034】
上記共重合体の製造において、得られる重合体の分子量調整のために、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロピルアルコール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等)の低級酸化物及びその塩等の親水性連鎖移動剤が挙げられる。
【0035】
上記連鎖移動剤としてはまた、疎水性連鎖移動剤を使用することもできる。疎水性連鎖移動剤としては、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル等の炭素数3以上の炭化水素基を有するチオール系連鎖移動剤が好適に使用される。
また、共重合体の分子量調整のためには、(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。
【0036】
上記連鎖移動剤の使用量は、適宜設定すればよいが、単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.25モル以上、更に好ましくは0.5モル以上であり、また、好ましくは20モル以下、より好ましくは15モル以下、更に好ましくは10モル以下である。
【0037】
上記重合反応は、必要に応じてラジカル重合開始剤を使用し、溶液重合や塊状重合等の方法により行うことができる。溶液重合は、回分式でも連続式でも又はそれらの組み合わせでも行うことができ、その際に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。中でも、水溶液重合法によって重合することが好適である。
【0038】
上記水溶液重合を行う場合は、ラジカル重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’-アゾビス-2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2-カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤等が使用され、この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L-アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。中でも、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素とL-アスコルビン酸(塩)等の促進剤との組み合わせが好ましい。これらのラジカル重合開始剤や促進剤はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、低級アルコール、芳香族若しくは脂肪族炭化水素、エステル化合物又はケトン化合物を溶媒とする溶液重合を行う場合、又は、塊状重合を行う場合には、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t-ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等がラジカル重合開始剤として用いられる。この際アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。更に、水-低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤又はラジカル重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
【0039】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.01モル以上、更に好ましくは0.1モル以上、特に好ましくは0.2モル以上であり、また、好ましくは20モル以下、更により好ましくは10モル以下、特に好ましくは7モル以下、最も好ましくは5モル以下である。
【0040】
上記重合反応において、重合温度等の重合条件としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められるが、重合温度としては、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは30℃以上であり、更に好ましくは50℃以上である。また、より好ましくは120℃以下であり、更に好ましくは100℃以下である。
【0041】
各単量体成分の反応容器への投入方法は特に限定されず、全量を反応容器に初期に一括投入する方法;全量を反応容器に分割又は連続投入する方法;一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割又は連続投入する方法等が挙げられる。また、反応途中で各モノマーの反応容器への投入速度を連続的又は段階的に変えて、各単量体の単位時間あたりの投入重量比を連続的又は段階的に変化させることにより、モノマー比が異なる2種以上の共重合体を重合反応中に同時に合成するようにしてもよい。なお、ラジカル重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
上記のようにして得られた各重合体は、そのままでも分散剤として用いることができるが、必要に応じて、更にアルカリ性物質で中和して用いてもよい。アルカリ性物質としては、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミンが好適である。また、反応終了後、必要ならば濃度調整を行うこともできる。
【0042】
(分散剤が用いられる組成物)
本発明の分散剤は、スラグ、シリカフューム及びフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、セメントを含有しない組成物に用いられる分散剤である。
本明細書において、「セメントを含有しない」は、セメントを実質的に含有しないことを意味し、セメントの含有割合としては、組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
【0043】
上記スラグは、鉱石から金属を還元・精錬する際等に得られる副生成物であり、高炉スラグ、製鋼スラグ等が挙げられる。
【0044】
上記シリカフュームは、フェロシリコンや金属シリコン、電解ジルコニア等を製造する際に発生する排ガス中のダストを集塵して得られる副産物であり、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分として含有する非晶質球状微粒子である。
【0045】
上記フライアッシュは、石炭火力発電所等で石炭燃焼の際に発生する石炭灰のうち、集塵機により排ガス中から回収される微細な灰であり、シリカやアルミナを主成分とするものである。
【0046】
本発明の分散剤は、スラグを含む組成物に用いられることが好ましい。
【0047】
上記組成物においてセメントの含有割合は、スラグ、シリカフューム及びフライアッシュの合計の含有割合100質量%に対して、5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
【0048】
上記組成物は、スラグ、シリカフューム及びフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種を有するものであればよいが、スラグ、シリカフューム及びフライアッシュの合計の含有割合が、組成物100質量%に対して、40~100質量%であることが好ましい。この場合、本発明の技術的意義をより効果的に発揮することができる。より好ましくは60~100質量%である。より好ましくは80~100質量%であり、更に好ましくは90~100質量%である。
【0049】
上記組成物は、スラグ、シリカフューム及びフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、セメントを実質的に含有しないものであればよいが、カルシウム元素の含有割合が、組成物100質量%に対して、0.1~50質量%であることが好ましい。より好ましくは1~40質量%である。
上記組成物はまた、ケイ素元素の含有割合が、組成物100質量%に対して、1~50質量%であることが好ましい。より好ましくは10~40質量%である。
上記組成物は更に、アルミニウム元素の含有割合が、組成物100質量%に対して、1~50質量%であることが好ましい。より好ましくは10~30質量%である。
【0050】
上記組成物は、アルカリ刺激剤を含むことが好ましい。これにより上記組成物を硬化させたときの強度をより高めることができる。
アルカリ刺激剤としては特に制限されないが、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物であり、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムである。
【0051】
上記アルカリ刺激剤の含有割合は、スラグ、シリカフューム及びフライアッシュの合計の含有割合100質量%に対して、0.01~20質量%であることが好ましい。これにより上記組成物を硬化させたときの強度をより高めることができる。
アルカリ刺激剤の含有割合としてより好ましくは0.5~20質量%であり、更に好ましくは6~20質量%である。
【0052】
2.コンクリート組成物
本発明は、本発明の分散剤と、スラグ、シリカフューム及びフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種とを含有し、セメントを実質的に含有しないコンクリート組成物でもある。
【0053】
上記コンクリート組成物におけるスラグ、シリカフューム及びフライアッシュ並びにセメントの含有割合等は本発明の分散剤が用いられる組成物について述べたとおりである。
【0054】
上記コンクリート組成物において、本発明の分散剤の配合割合としては、例えば、本発明の必須成分である共重合体(複数含む場合はその合計量)が、固形分換算で、スラグ、シリカフューム及びフライアッシュの合計の含有割合100質量%に対して、0.005~10質量%となるように設定することが好ましい。0.005質量%以上とすることにより、本発明における性能をより充分に発揮することができ、10質量%以下とすることにより、本発明における性能を充分に発揮させつつ、経済性にも優れることとなる。より好ましくは、0.05~1.0質量%であり、更に好ましくは、0.1~0.3質量%である。
【0055】
上記コンクリート組成物は、上記アルカリ刺激剤を含むことが好ましい。アルカリ刺激剤の具体例及び好ましい形態並びに含有割合は、本発明の分散剤が用いられる組成物について述べたとおりである。
【0056】
上記コンクリート組成物は、更に、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)等の骨材を含んでいてもよい。
本発明の分散剤と、スラグ、シリカフューム及びフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種と、骨材とを含むコンクリート組成物は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0057】
上記骨材としては特に制限されないが、砂利;砕石;再生骨材;珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
【0058】
上記骨材の含有量(細骨材、粗骨材を合わせた全ての骨材の合計含有量)は特に制限されないが、スラグ、シリカフューム及びフライアッシュの合計の含有割合100質量%に対して、50~1000質量%であることが好ましい。より好ましくは100~600質量%であり、更に好ましくは200~600質量%である。
【0059】
上記コンクリート組成物は、更に、水溶性高分子物質(ポリエチレングリコール等)、高分子エマルジョン、遅延剤(グルコン酸等のオキシカルボン酸類等)、早強剤・促進剤、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤、AE剤、界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等の本発明の分散剤以外のその他のセメント添加剤等を含んでいてもよい。
【0060】
その他のセメント添加剤の含有量は特に制限されないが、スラグ、シリカフューム及びフライアッシュの合計の含有割合100質量%に対して、0.01質量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.005質量%以下であり、更に好ましくは 0.0001~0.005質量%である。
【実施例0061】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は質量基準である。
【0062】
<GPC分析法>
質量平均分子量は、以下の測定条件により測定した。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empower2プロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnsSWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整したもの。
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記標準物質のMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
標準物質試料液注入量:100μL(重合体濃度0.1質量%の溶離液溶液)
重合体試料液注入量:100μL(重合体濃度0.5質量%の溶離液溶液)
【0063】
<GPC解析条件(重合体の分析)>
得られたRIクロマトグラムにおいて、重合体溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、重合体を検出・解析した。ただし、単量体や単量体由来の不純物のピークが重合体ピークに一部重なって測定された場合、それらと重合体の重なり部分の最凹部において垂直分割して重合体部と単量体部や不純物部とを分離し、重合体部のみの分子量・分子量分布を計算した。凹部が無い場合はまとめて計算した。
重合体純分は、RI検出器によるピーク面積の比より、下記のようにして計算した。
重合体純分=(重合体ピーク面積)/(重合体ピーク面積+単量体や不純物のピーク面積)
【0064】
<モルタル試験>
(モルタル配合)
モルタル配合は、表1に示す。
B1:高炉スラグスピリッツ4000(日鉄セメント社製)
B2:フライアッシュ(北電興業株式会社製社製)
S:山砂
W:イオン交換水(共重合体、消泡剤を含む)
A:刺激剤(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム)
【0065】
(モルタル調製手順)
実験環境は、20℃プラスマイナス1℃、湿度60%プラスマイナス10%とした。所定量の添加剤の水溶液を量りとり、消泡剤としてアデカノールLG-299(アデカ製)を添加剤の固形分に対して有姿で5質量%加え、さらにイオン交換水を加えて240gとし、十分に均一溶解させた。
モルタル混練には、HOBART社製のN-50ミキサーにステンレス製ビーター(撹拌羽根)を取り付けたものを用いた。まず、混練容器に所定量のC、B、Wを仕込み、1速で30秒間混練したのち、Sを投入し引き続き2速で30秒間混練した。その後、混練を停止して15秒間、容器壁に付いたモルタルを掻き落し、2分45秒静置した。さらに2速で1分間混練して混練終了とし、モルタルを混練容器からポリエチレン製1L容器に移した。
【0066】
(モルタル流動性測定手順)
モルタル流動性の測定には、JIS-A-1171準拠のモルタルスランプ試験用器具を用いた。練り上がったモルタルをスパチュラで20回撹拌した後、水平に設置した鋼製平板上に置かれたスランプコーン(上端内径50mm、下端内径100mm、高さ150mm)の中にモルタルの半量を詰め、付棒で15回付いて均一に充填し、さらに同様の手順で残りの半量を充填し、表面を均一に馴らした。続いて、スランプコーンを垂直に引き上げ、モルタルの流動が止まってから、広がったモルタルの直径を縦横2点計測し、平均値をフロー値とした。
【0067】
(配管通過性)
ポンプ圧送時の配管通過性評価として、モルタルのロート流下試験を実施した。モルタルが途中で閉塞することなく、しかも短時間で流下したものは配管通過性が良好と判断した。ロート流下試験の具体的な方法は以下のとおりである。
土木学会基準JSCE-F541に規定されたJ14ロート(上端内径70mm、下端内径14mm、高さ392mm)の下端にゴム栓をし、台で鉛直に支持した。次に、流出したモルタル量を計測するための電子はかりをJ14ロート下端の下方に設置した。
得られたモルタルをJ14ロート上面まで流し込み上面をならした。次に、ゴム栓を外してモルタルを流出させ、モルタル流出開始より1000g流下するまでの時間をストップウォッチで計測し、これをロート流下時間とした。
なお、ロート流下時間を5%以上短縮できる場合は、特に、配管通過性に優れるものと言える。
【0068】
〔重合例1〕
アクリル酸(AA)60.0部およびアクリル酸2エチルヘキシル(2EHA)5.0部を混合した溶液(1a)を調製した。
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えた反応容器に水113.0部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(固形分80%溶液)(IPN-50)75.0部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドが平均10モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(固形分100%溶液)(IPN-10)75.0部、パラトルエンスルホン酸1水和物の70%水溶液0.5部を仕込み、続いて撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、過酸化水素35%水溶液を25.0部投入した。上述の混合溶液(1a)を4.0時間、L-アスコルビン酸1%水溶液65.0部を4.0時間、3-メルカプトプロピオン酸5%水溶液70.0部を3.5時間かけて滴下した。
滴下終了後、1時間引き続き60℃を維持し、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度において水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液のpHをpH=5.0まで中和した。このようにして、共重合体(1)を含む重合体水溶液を得た。得られた共重合体(1)の重量平均分子量Mwは33000であった。結果を表2に示す。
得られた共重合体(1)をスラグ配合セメント用分散剤として用いて、各種試験を行った。結果を表3に示す。
【0069】
〔重合例2~8、17~23〕
各重合例2~8、17~23につき、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN-50)、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドが平均10モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN-10)、アクリル酸(AA)及びアクリル酸2エチルヘキシル(2EHA)を表2に記載の比となる量で仕込み、重合例1に準じた方法で重合反応を行い、共重合体(2)~(8)、(17)~(23)のいずれかを含む各重合体水溶液を其々得た。得られた各共重合体の重量平均分子量Mwは表2に示すとおりである。
【0070】
〔重合例9〕
L-アスコルビン酸0.30部、3-メルカプトプロピオン酸1.6部を水60.7部に溶解させた水溶液(9a)を調整した。
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えた反応容器に水122.2部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(固形分80%溶液)(IPN-50)200.0部を仕込み、続いて撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、過酸化水素35%水溶液を0.5部投入した。
30分後、上述の混合溶液(9a)を4.0時間かけて、アクリル酸(AA)28.0部を3.0時間かけて、それぞれ一定速度で計量滴下した。この間の温度は60℃で一定とした。
混合溶液(9a)の滴下終了後、1時間引き続き60℃を維持し、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度において水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液のpHをpH=6.3まで中和した。このようにして、共重合体(9)を含む重合体水溶液を得た。得られた共重合体(9)の重量平均分子量Mwは15000であった。
【0071】
〔重合例10~16、24~26〕
各重合例10~16、24~26につき、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN-50)及びアクリル酸(AA)を表2に記載の比となる量で仕込み、重合例9に準じた方法で重合反応を行い、共重合体(10)~(16)、(24)~(26)のいずれかを含む各重合体水溶液を其々得た。得られた各共重合体の重量平均分子量Mwは表2に示すとおりである。
【0072】
【0073】
【0074】
実施例(1)~(16)及び比較例(1)~(9)
上記重合例で重合した共重合体(1)~(26)を表3に記載の割合で配合して調製した。調製したスラグ配合セメント用分散剤について、上述した方法でフロー値、配管通過性を評価した。
【0075】
【0076】
表3より、本発明に係る実施例(1)~(16)は、比較例(1)~(10)に対して、同程度のフロー値(mm)を示しながらも配管通過時間が短く、配管通過性が有意に高いことが示されている。よって、本発明の分散剤はスラグ、シリカフューム及びフライアッシュからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、セメントを実質的に含有しない組成物の粘性低減効果に優れていることが示唆される。