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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128754
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20240913BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240913BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240913BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240913BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240913BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/36 E
H01M4/587
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037931
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 直利
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA03
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】極活物質としてSi系材料とハードカーボンとを含む負極を備える二次電池であって、サイクル特性とエネルギー密度が向上した二次電池を提供すること。
【解決手段】ここに開示される二次電池は、正極および負極60を有する電極体を備えた二次電池であって、負極60は、負極集電体62と、該負極集電体上に配置された負極活物質層64と、を備えており、負極活物質層64は、負極活物質として、Si含有粒子66と、ハードカーボン68と、を含む。Si含有粒子66は、網目構造状のSiナノ粒子66aを含有する多孔質体である。上記二次電池は、ハードカーボン68の平均粒子径D2に対するSi含有粒子66の平均粒子径D1の比(D1/D2)が0.1~0.7であり、Si含有粒子66とハードカーボン68との重量比が15:85~55:45である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を有する電極体を備えた二次電池であって、
前記負極は、負極集電体と、該負極集電体上に配置された負極活物質層と、を備えており、
前記負極活物質層は、負極活物質として、Si含有粒子と、ハードカーボンと、を含み、
前記Si含有粒子は、網目構造状のSiナノ粒子を含有する多孔質体であり、
前記ハードカーボンの平均粒子径D2に対する前記Si含有粒子の平均粒子径D1の比(D1/D2)が0.1~0.7であり、
前記Si含有粒子と前記ハードカーボンとの重量比が15:85~55:45である、二次電池。
【請求項2】
前記Si含有粒子および前記ハードカーボンは植物由来である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記Si含有粒子の含有量は、前記負極活物質を100wt%としたときに、10wt%~60wt%である、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記Si含有粒子の平均粒子径は、2μm~10μmである、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項5】
前記ハードカーボンの平均粒子径は、10μm~25μmである、請求項1または2に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。このような二次電池に用いられる負極は、一般的に、負極集電体上に負極活物質を含む負極活物質層が配置された構成を有する。
【0003】
近年では、二次電池の高容量化等を目的として、負極活物質としてSi系材料を使用することが検討されている(例えば特許文献1~3)特許文献1には、Si系材料を含む負極活物質と、最外周径が5nm以下のカーボンナノチューブと、重量平均分子量が15万以上45万以下のカルボキシメチルセルロースと、を含む負極が開示されている。特許文献2には、植物性原料から生成した非結晶シリカを前駆体としたシリコン素材が開示されている。特許文献3には、満充電して用いる二次電池用の難黒鉛化炭素質材料であって、酸素元素含量が0.25質量%である難黒鉛化炭素質材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-38114号公報
【特許文献2】国際公開第2022/070895号
【特許文献3】特許第6910296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Si系材料は、黒鉛粒子等の炭素材料と比較して比容量が大きい一方で、充放電時の膨張収縮が大きく、導電パスが切れやすい傾向にある。このため、Si系材料を用いた場合には、高容量化できる一方で、二次電池のサイクル特性が低下しやすい。本発明者らが検討した結果によれば、膨張収縮を緩和するために空隙(細孔)が多いSi系材料を用いた際には、負極活物質層の見かけの密度(いわゆる、負極密度)が低くなる傾向にあり、体積当たりのエネルギー密度が低下することを見出した。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、負極活物質としてSi系材料とハードカーボンとを含む負極を備える二次電池であって、サイクル特性とエネルギー密度が向上した二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される二次電池は、正極および負極を有する電極体を備えた二次電池であって、前記負極は、負極集電体と、該負極集電体上に配置された負極活物質層と、を備えており、前記負極活物質層は、負極活物質として、Si含有粒子と、ハードカーボンと、を含む。前記Si含有粒子は、網目構造状のSiナノ粒子を含有する多孔質体である。上記二次電池は、前記ハードカーボンの平均粒子径D2に対する前記Si含有粒子の平均粒子径D1の比(D1/D2)が0.1~0.7であり、前記Si含有粒子と前記ハードカーボンとの重量比が15:85~55:45である。
【0008】
網目状構造のSiナノ粒子を含む多孔質体であるSi含有粒子と、ハードカーボンと、を用いることにより、膨張収縮を抑制することができ、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。また、Si含有粒子の平均粒子径とハードカーボンの平均粒子径との比率、および、Si含有粒子とハードカーボンとの重量比を調整することにより、負極密度を向上させることができ、体積当たりのエネルギー密度を向上させることができる。したがって、かかる構成によれば、二次電池のサイクル特性とエネルギー密度の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る二次電池の内部構造を模式的に示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る電極体の構成を模式的に示す図である。
図3図3は、一実施形態に係る負極を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ここで開示される技術の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、ここに開示される技術を特徴付けない二次電池の一般的な構成および製造プロセス等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と、当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、各図面は模式的に描かれており、寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を必ずしも反映するものではない。また、以下に説明する図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、本明細書において範囲を示す「A~B」(A,Bは任意の数値)の表記は、A以上B以下を意味する。
【0011】
なお、本明細書において「二次電池」とは、正極と負極との間を電荷担体が移動することによって、充放電を繰り返すことができる電池をいう。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
【0012】
図1は、一実施形態に係る二次電池100の内部構造を模式的に示す図である。図1に示すように、二次電池100は、正極50および負極60を有する電極体20と、電解液(図示せず)と、電極体20および電解液を収容する電池ケース30と、を備えている。図1に示される二次電池100は、ここでは、リチウムイオン二次電池である。ここに開示される負極60は、好ましくはリチウムイオン二次電池用の負極として用いられる。
【0013】
電池ケース30は、外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36と、が設けられている。また、電池ケース30には、非水電解液を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。正極端子42は、正極集電板42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電板44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質としては、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
【0014】
図2は、電極体20の構成を模式的に示す図である。ここでは、電極体20は、扁平形状の捲回電極体である。図2に示すように、電極体20は、長尺シート状の正極50(以下、「正極シート50」ともいう。)と、長尺シート状の負極60(以下、「負極シート60」ともいう。)とが、2枚の長尺状のセパレータ70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成された構成を有する。図1および図2に示すように、正極集電体露出部52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)および、負極集電体露出部62a(すなわち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)は、電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極集電体露出部52aおよび負極集電体露出部62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
【0015】
正極シート50を構成する正極集電体52としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極集電体を用いてよく、特に限定されない。例えば、導電性の良好な金属(例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。正極集電体52としては、アルミニウム箔が好ましい。正極集電体52の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。正極集電体52としてアルミニウム箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0016】
正極活物質層54は、正極活物質を含有する。正極活物質としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の組成の正極活物質を用いてよい。具体的に例えば、正極活物質として、リチウム複合酸化物、リチウム遷移金属リン酸化合物(例えば、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO))等を用いることができる。正極活物質の結晶構造は、特に限定されず、層状構造、スピネル構造、オリビン構造等であってよい。
【0017】
リチウム複合酸化物としては、遷移金属元素として、Ni、Co、Mnのうちの少なくとも1種を含むリチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、その具体例としては、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等が挙げられる。これらの正極活物質は、1種単独で用いてよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、正極活物質としては、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物を好ましく用いることができる。
【0018】
なお、本明細書において「リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物」とは、Li、Ni、Co、Mn、Oを構成元素とする酸化物の他に、それら以外の1種または2種以上の添加的な元素を含んだ酸化物をも包含する用語である。かかる添加的な元素の例としては、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、Zn、Sn等の遷移金属元素や典型金属元素等が挙げられる。また、添加的な元素は、Y/Z、Si、P等の半金属元素や、S、F、Cl、Br、I等の非金属元素であってもよい。このことは、上記したリチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等についても同様である。
【0019】
特に限定されないが、二次電池100の高容量化や、二次電池100を作製する際のCO排出量を低減する観点からは、Niの含有量が多くCoの含有量が低い正極活物質を用いることが好ましい。例えば、少なくともLiとNiを含む複合酸化物であって、Liを除く金属元素の合計(総モル数)に対して、Niの含有量が70モル%~100モル%(より好ましくは70モル%~90モル%)であり、Coの含有量が5モル%以下(より好ましくは3モル%以下)である複合酸化物を用いるとよい。
【0020】
正極活物質層54は、正極活物質以外の成分、例えば、導電材、バインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック;気相法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)等の炭素繊維;その他(例、グラファイトなど)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0021】
特に限定されないが、導電材の割合は、正極活物質を100重量部としたときに、0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましく、1重量部以上5重量部以下であることがより好ましい。また、バインダの割合は、正極活物質を100重量部としたときに、0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましく、1重量部以上5重量部以下であることがより好ましい。
【0022】
正極活物質層54の片面当たりの厚みは、特に限定されないが、例えば20μm以上であり、好ましくは50μm以上である。一方、当該厚みは、例えば300μm以下であり、好ましくは200μm以下である。
【0023】
セパレータ70としては、従来と同様の各種微多孔質シートを用いることができ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から成る微多孔質樹脂シートが挙げられる。かかる微多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。また、セパレータ70は、耐熱層(HRL)を備えていてもよい。
【0024】
電解質は従来と同様のものを使用可能であり、例えば、有機溶媒(非水溶媒)中に、支持塩を含有させた非水電解液を用いることができる。非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。なかでも、カーボネート類、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を好適に採用し得る。あるいは、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)のようなフッ素化カーボネート等のフッ素系溶媒を好ましく用いることができる。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。また、特に限定されないが、二次電池100を作製する際のCO排出量を低減する観点からは、CO由来のDMCやECを用いることが好ましい。支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO等のリチウム塩を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、特に限定されるものではないが、0.7mol/L以上1.3mol/L以下程度が好ましい。
なお、上記非水電解質は、本技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒、支持塩以外の成分を含んでいてもよく、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
【0025】
以下、ここに開示される二次電池の負極60について説明する。図3は、ここに開示される二次電池100の負極60を模式的に示す図である。図3に示すように、負極60は、負極集電体62と、該負極集電体62上に配置される負極活物質層64と、を備えている。負極集電体62は、従来公知のものを用いてよく、特に限定されない。例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等の金属製のシートまたは箔状体が挙げられる。負極集電体62として銅箔を用いる場合には、その平均厚みは特に限定されないが、例えば5μm以上30μm以下であり、好ましくは5μm以上20μm以下、より好ましくは5μm以上15μm以下である。特に限定されないが地球環境への負荷を低減する観点からは、負極集電体62として、スクラップ銅等からリサイクルされた銅箔を用いることが好ましい。
【0026】
負極活物質層64は、少なくとも負極活物質を含んでいる。負極活物質層64は、負極活物質として、少なくともSi含有粒子66とハードカーボン68とを含んでいる。かかるSi含有粒子66の平均粒子径(D50粒子径)D1とハードカーボン68の平均粒子径(D50粒子径)D2との比率、および、Si含有粒子66とハードカーボン68との重量比を調整することにより、二次電池100のサイクル特性とエネルギー密度の向上を実現することができる。
【0027】
Si含有粒子66は、網目状構造のSiナノ粒子66aを含む多孔質体である。Si含有粒子66は、Siを含む限り、Si以外の成分を含んでいてもよい。Si含有粒子66としては、例えば、SiOx、Si-C複合体、多孔質Si粒子内にSiナノ粒子が分散されたもの等が挙げられる。Si含有粒子66の多孔質体部分は、例えば、Siを主成分として構成されていてもよいし、C(炭素)を主成分として構成されていてもよい。例えば、Si含有粒子66としては、網目状構造を有するSiナノ粒子と多孔質炭素粒子とを含むSi-C複合体が好ましく採用される。あるいは、Si含有粒子66としては、網目状構造を有するSiナノ粒子と多孔質Si粒子とを含むSi粒子が好ましく採用される。なお、本明細書において「AはBを主体として構成される」とは、Aを構成する成分のうち、重量基準でBが最大成分であることを意味する。
【0028】
Si含有粒子66は、複数の細孔(ポア)66bを有する多孔質体である。Si含有粒子66は、例えば、マイクロ細孔と、メソ細孔と、マクロ細孔とを有し得る。ここで、マイクロ細孔とは直径が2nm以下の細孔のことであり、メソ細孔とは直径が2nmを超えて50nm未満である細孔のことであり、マクロ細孔とは直径が50nm以上の細孔のことである。細孔サイズが大きすぎる場合には、電解液の侵食により二次電池100のサイクル特性が低下する虞がある。かかる観点からは、Si含有粒子66が有する細孔66bは、例えば、1nm以上300nm以下であることが好ましく、1nm以上250nm以下であってもよい。Si含有粒子66は、例えば、ナノサイズのポーラス構造を有するナノポーラス構造であり得る。
【0029】
特に限定されないが、Si含有粒子66は、直径が比較的小さい細孔66bを複数有していることが好ましい。これにより、充放電に伴うSi含有粒子66の膨張収縮を緩和することができ、二次電池100のサイクル特性を向上させることができる。また、負極60を作製する際にプレスをしたとしても、Si含有粒子66が比較的小さい細孔66bを複数有することにより、潰され難い性質を有している。換言すれば、Si含有粒子66は、かかる細孔66bを複数有することにより、一定の耐久性を有している。Si含有粒子66は、例えば、直径が100nm以上の細孔と、直径が10nm以下の細孔と、を含んでおり、直径10nmの細孔が直径100nmの細孔よりも多いナノポーラス構造を有していることが好ましい。具体的には、Si含有粒子66は、直径100nmの細孔のlog微分細孔容積V100に対する直径10nmの細孔のlog微分細孔容積V10の比(V10/V100)が、1以上となるように調整されているとよい。上記したV100に対するV10の比(V10/V100)は、1を超えることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.5以上であってもよい。また、V100に対するV10の比(V10/V100)は、例えば20以下であることが好ましく、10以下であってもよい。
【0030】
直径が100nmの細孔のlog微分細孔容積V100と、直径が10nmの細孔のlog微分細孔容積V10とは、比表面積・細孔分布測定装置を用いて、BJH法に基づき算出することができる。まず、Si含有粒子を真空下で加熱乾燥して、測定試料とする。次いで、液体窒素を冷媒として用いて、窒素ガス(Nガス)を吸着ガスとして測定試料の吸着等温線を取得し、得られた吸着等温線をBJH法により解析して、log微分細孔容積分布を求める。そして、log微分細孔容積分布から、直径が100nmの細孔のlog微分細孔容積V100と、直径が10nmの細孔のlog微分細孔容積V10とを求めることができる。
【0031】
Si含有粒子66は、網目状構造のSiナノ粒子66aを有している。Siナノ粒子66aは、ナノサイズ(すなわち、1μm未満)のSi粒子である。Siナノ粒子66aは、上記した多孔質体の表面および/または多孔質体の細孔66bの内部に存在し得る。Siナノ粒子66aは、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。これにより、Siナノ粒子66aの一粒あたりの充放電時の膨張収縮量を小さくすることができ、膨張収縮を繰り返しても割れ難くなる。また、特に限定されないが、Siナノ粒子66aの平均粒子径は、例えば、5nm以上であり得る。なお、本明細書において、「Siナノ粒子の平均粒子径」は、以下のようにして求めることができる。まず、負極活物質層を、FIB(集束イオンビーム)加工によって、走査透過型電子顕微鏡(STEM)観察用の試料を作製する。そして、当該試料をEDX元素マッピングにより元素分析した後、BF像(明視野像)およびHAADF像(高角散乱環状暗視野像)を取得する。BF像およびHAADF像により得られるコントラストおよび形状から、Siナノ粒子の直径を求めることができる。少なくとも10個のSiナノ粒子の直径の算術平均のことをここでの「Siナノ粒子の平均粒子径」とする。
【0032】
Siナノ粒子66aは、網目状構造を有している。かかる網目状構造は、複数の空隙がランダムあるいは規則的に形成されている。Siナノ粒子66aが網目状構造を有していることにより、導電パスが好適に向上する。また、Siナノ粒子66aが網目状構造を有していることにより、充放電に伴ってSiナノ粒子66aが過度に膨張収縮することが抑制される。
【0033】
特に限定されないが、Si含有粒子66は、上記したSiナノ粒子66aの周囲に複数の細孔66bが存在していることが好ましい。特に、Siナノ粒子66aの周囲に直径が小さい細孔(例えば直径10nm以下の細孔)が多く存在していることが好ましい。これにより、充放電に伴う膨張収縮を緩和しつつ、電解液の侵食を好適に抑制することができる。
【0034】
特に限定されないが、Si含有粒子の酸素含有量は、Si含有粒子全体を100wt%としたときに、例えば10wt%以下であることが好ましい。これにより、酸素含有量が多すぎることに起因する副反応を減少させることができ、二次電池の容量やサイクル特性を好適に向上させることができる。なお、酸素含有量は、酸素分析装置を用いて、不活性ガス中で加熱溶融することにより測定することができる。
【0035】
上記したSi含有粒子66は、例えば、Siを含有する植物を焼成することによって得ることができる。すなわち、Si含有粒子66は、植物由来であることが好ましい。具体的には、米(稲)、大麦、小麦、ライ麦等のもみ殻、椰子殻、茶葉、サトウキビ、トウモロコシ、等の植物を原料とするとよい。なかでも、Si含有粒子66はもみ殻を原料とすることが好ましい。ただし、Si含有粒子66は、SiまたはCを主体として構成される多孔質体と、網目状構造を有するSiナノ粒子とをそれぞれ用意し、当該多孔質体にSiナノ粒子を導入することにより用意してもよい。
【0036】
Si含有粒子66が、植物由来である場合、植物由来ではないSi含有粒子と比較して、より微細な細孔(空隙)66bが多い傾向にある。なお、植物を焼成する際の条件を適宜変更することにより、微細な細孔の量やSiナノ粒子66aの粒径を調整することができる。植物由来のSi含有粒子66を用いることによって、低膨張かつ高耐久なSi含有粒子66が実現される。Si含有粒子66が植物由来であることにより、さらに好適に二次電池100のサイクル特性の向上させることができる。また、植物は細胞壁の周囲に土中から吸収したケイ酸を蓄積している。これを焼成することにより、植物由来の網目状構造を有するSiナノ粒子66aを含有する多孔質体を得ることができる。
【0037】
ハードカーボン68は、難黒鉛化炭素とも呼ばれ、例えば3000℃以上の高温でも熱処理によってグラファイト(黒鉛)に変化しない固体状の炭素である。ハードカーボン68は、黒鉛と比べて結晶子が小さい。また、ハードカーボン68は、グラフェンが数層程度の積層構造であり、かつ、乱層構造を有している。ハードカーボン68は、黒鉛と比べて細孔が多く存在する構造である。このため、ハードカーボン68は、充放電に伴う膨張収縮を緩和することができ、二次電池100のサイクル特性を向上させることができる。また、ハードカーボン68は、イオンが挿入脱離できるポイントが多いため、二次電池100の入出力特性が向上しやすい傾向にある。
【0038】
ここに開示される二次電池100のハードカーボン68は、X線回折法(XRD:X-ray diffraction)に基づくd(002)面の格子面間隔(d002)は、0.37nm~0.39nmであることが好ましい。これにより、イオンの脱離挿入を速やかに行うことができ、二次電池100の入出力特性を向上させる。また、黒鉛と比較してリジット性が低いため、膨張収縮に対する耐久性が高くなる傾向にある。
【0039】
特に限定されないが、ハードカーボン68のブタノール法に基づく真密度は、1.4g/cm~1.7g/cmであることが好ましく、1.4g/cm~1.6g/cmであることがより好ましい。かかる範囲の真密度であることにより、低膨張かつ高耐久性が実現され得る。
【0040】
上記したようなハードカーボン68は、炭素質前駆体を酸処理した後、加熱処理することによって用意することができる。酸処理の条件を適宜変更することにより、さらに高容量化されたハードカーボン68を作製することができる。ここで、炭素質前駆体としては、フェノール樹脂等の熱可塑性樹脂であってもよいし、植物由来であってもよい。好ましくは、ハードカーボン68は、植物由来の炭素質前駆体から用意されたものであることが好ましい。植物由来の炭素質前駆体は、例えば、椰子殻、茶葉、珈琲豆、サトウキビ等の植物を原料とするとよい。なかでも、ハードカーボン68は椰子殻を原料とすることが好ましい。
【0041】
ハードカーボン68が植物由来である場合、一般的な黒鉛材料と比較して高容量である。また、植物由来のハードカーボンは、一般的な黒鉛材料と比較して真密度が低い傾向にある。植物由来のハードカーボンは、充放電時の膨張が小さく耐久性に優れており、導電パスが切れ難い。すなわち、植物由来のハードカーボン68を用いることによって、高容量であり、サイクル特性も向上した二次電池100を実現することができる。
【0042】
ここに開示される二次電池100では、上記したように、網目状構造のSiナノ粒子66aを含む多孔質体であるSi含有粒子66と、黒鉛と比べて細孔が多いハードカーボン68と、を用いることにより、二次電池100のサイクル特性を向上させることができる。その一方で、これらの材料は細孔(空隙)が比較的多いことから、負極60をプレスした際の密度が低くなる傾向にある。そこで、ここに開示される二次電池100では、上記したSi含有粒子66とハードカーボン68の平均粒子径(D50粒子径)の比率と、重量比率を所定の範囲に調整することにより、高エネルギー密度化を実現する。
【0043】
ここに開示される二次電池100は、ハードカーボン68の平均粒子径D2に対するSi含有粒子66の平均粒子径D1の比(D1/D2)が0.1~0.7である。かかる平均粒子径D2に対する平均粒子径D1の比(D1/D2)は、0.15~0.65であることが好ましく、0.17~0.60であることがより好ましい。Si含有粒子66とハードカーボン68の平均粒子径の比率が上記した範囲に調整されていることにより、負極60をプレスした際に各材料が好適に配置され、エネルギー密度を向上させることができる。
【0044】
Si含有粒子66の平均粒子径(D50粒子径)D1は、上記した(D1/D2)を満たす限り特に限定されない。例えば、Si含有粒子66の平均粒子径D1は、2μm以上10μm以下であることが好ましく、2μm以上7μm以下であることがより好ましい。また、ハードカーボン68の平均粒子径(D50粒子径)D2は、上記した(D1/D2)を満たす限り特に限定されない。例えば、ハードカーボン68の平均粒子径D2は、10μm以上25μm以下であることが好ましく、12μm以上20μm以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、「Si含有粒子の平均粒子径」および「ハードカーボンの平均粒子径」とは、レーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布において、微粒子側から累積50%に相当する粒子径(D50粒子径)のことをいう。
【0045】
ここに開示される二次電池100は、Si含有粒子66とハードカーボン68との重量比が、15:85~55:45である。サイクル特性をさらに向上させる観点からは、ハードカーボン68の含有割合を増加させることが好ましい。例えば、Si含有粒子66とハードカーボン68との重量比は、25:75~45:55であることがより好ましい。これにより、サイクル特性とエネルギー密度の向上が両立された二次電池100が実現される。
【0046】
負極活物質層64の見かけ密度(以下、単に「負極密度」ともいう。)が高いことにより、体積当たりの電池容量が増加する。換言すれば、負極密度が高いことにより体積エネルギー密度が向上する。かかる観点からは、負極密度は1.5g/cm以上であることが好ましく、1.55g/cm以上であることがより好ましく、1.58g/cm以上であることがさらに好ましい。負極密度の上限は特に限定されないが、例えば2.5g/cm以下であるとよい。Si含有粒子66とハードカーボン68の平均粒子径の比率、および重量比を調整することにより、上記したようなSi含有粒子66とハードカーボン68とを含む負極活物質層64であっても、かかる負極密度を実現することができる。なお、負極活物質層64の見かけ密度は、負極活物質層64の空隙部を含めた見かけ体積(cm)に対する、負極活物質層64の重量(g)の比である。例えば、負極活物質層64の目付量と、負極活物質層64の厚さとを測定し、((負極活物質層64の目付量)/(負極活物質層64の厚さ))として容易に算出することができる。
【0047】
負極活物質層64は、本技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、負極活物質として、上記したSi含有粒子66およびハードカーボン68以外の材料(例えば、上記したような構造を有しないSiOxや黒鉛粒子等)を含んでいてもよい。
【0048】
特に限定されないが、負極活物質の全重量(Si含有粒子66の重量とハードカーボン68の重量とその他負極活物質として含み得る成分の重量の合計重量)を100wt%としたときに、Si含有粒子66の含有量は、10wt%以上60wt%以下であることが好ましく、10wt%以上45wt%以下であることがより好ましく、25wt%以上45wt%以下であることがさらに好ましい。また、ハードカーボン68の含有量は、負極活物質の全重量を100wt%としたときに、40wt%以上90wt%以下であることが好ましく、65wt%以上90wt%以下であることがより好ましく、65wt%以上75wt%以下であることがさらに好ましい。Si含有粒子66とハードカーボン68とがかかる含有量に調整されていることにより、サイクル特性の向上とエネルギー密度の向上とが実現される。
【0049】
上記したとおり、ここに開示される二次電池100では、植物由来のSi含有粒子66と植物由来のハードカーボン68とを用いることが好ましい。そして、当該植物由来のSi含有粒子66と植物由来のハードカーボン68の平均粒子径の比率、および重量比を調整することにより、二次電池100のサイクル特性とエネルギー密度の向上を実現することができる。さらに、植物由来のSi含有粒子は、植物由来ではないSi含有粒子と比較して、低温、低電力で作製することができるため、CO排出量を削減することができる。また、植物由来のハードカーボンは、植物由来ではないハードカーボンと比較して、原料のCO排出原単価を削減することができる。これにより、サイクル特性の向上および高エネルギー密度化しつつ、材料のCO排出量が削減された二次電池100を実現することができる。
【0050】
負極活物質層64は、上記した負極活物質(Si含有粒子66およびハードカーボン68)以外の成分、例えば、導電材、バインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、従来公知のものを使用することができる。導電材としては、例えば、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)等のカーボンナノチューブ、アセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、炭素繊維等を使用することができる。このなかでも、カーボンナノチューブが好ましく、単層カーボンナノチューブがより好ましい。カーボンナノチューブを導電材として用いることにより、導電パスがさらに好適に維持され、二次電池100のサイクル特性をより好適に向上させ得る。
【0051】
導電材の割合は、負極活物質を100重量部としたとき、例えば0.01重量部以上であって、0.05重量部以上であり得る。また、導電材の割合は、負極活物質を100重量部としたとき、2重量部以下であって、1重量部以下、0.5重量部以下、または0.2重量部以下であり得る。
【0052】
バインダとしては、従来公知のものを使用することができる。バインダとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。なかでも、CMC、PAA、SBRを好ましく用いることができる。また、特に限定されないが、CMC、PAAおよびSBRを併用することがより好ましい。
【0053】
バインダ全体の割合は、負極活物質を100重量部としたとき、例えば1重量部以上であって、3重量部以上であることが好ましく、3.5重量部以上であることがより好ましい。また、バインダ全体の割合は、負極活物質を100重量部としたとき、10重量部以下であって、8重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましい。
【0054】
負極活物質層64の片面当たりの厚みは、特に限定されないが、例えば20μm以上であり、好ましくは50μm以上である。一方、当該厚みは、例えば300μm以下であり、好ましくは200μm以下である。
【0055】
特に限定されないが、負極活物質層64全体に占める負極活物質の割合は、例えば、80質量%以上であって、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。また、特に限定されるものではないが、負極活物質層64全体に占める負極活物質の割合は、例えば98質量%以下であってよい。
【0056】
負極活物質層64は、負極活物質としてのSi含有粒子66およびハードカーボン68と、必要に応じて用いられる材料(例えば、導電材やバインダ)とを、適当な溶媒(例えば水)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物を負極集電体62の表面に塗布して、乾燥することにより形成することができる。その後、必要に応じてプレスすることにより、負極活物質層64の厚みや密度を調整することができる。
【0057】
以上、一実施形態に係る負極60の構成及び二次電池100の構成について説明した。負極60は、非水電解液二次電池に好適に採用される。かかる負極60は、充放電の繰り返しに伴う膨張収縮に対する耐久性が高く、Si含有粒子66とハードカーボン68との粒径比および重量比がそれぞれ調整されていることで負極密度が向上している。したがって、サイクル特性および体積エネルギー密度が向上した二次電池100が実現される。かかる二次電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。二次電池100は、組電池の構築においても好適に用いることができる。
【0058】
また、上述の二次電池100では、電極体20として捲回電極体を例示したが、これに限られず、例えば、複数の略矩形状の正極と、複数の略矩形状の負極とがセパレータを介して交互に積層された電極体である積層電極体であってもよい。
【0059】
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0060】
<実施例1>
まず、負極活物質として、Si含有粒子(D50粒子径:5μm)と、ハードカーボン(D50粒子径:15μm)と、を用意した。実施例1のSi含有粒子は、もみ殻を原料とした植物由来のSi-C複合粒子である。また、実施例1のハードカーボンは、ヤシ殻を原料とした植物由来のハードカーボンである。また、導電材として、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を用意した。そして、バインダとして、カルボキシメチルセルロース(CMC)と、ポリアクリル酸(PAA)と、スチレンブタジエンラバー(SBR)と、を用意した。これらを、ハードカーボン:Si含有粒子:SWCNT:CMC:PAA:SBR=65:35:0.1:1:1:2の重量比となるように、溶媒としての水と混錬し、負極活物質層形成用スラリーを調製した。
【0061】
具体的に、負極活物質層形成用スラリーの混合および混錬は、以下のようにして実施した。まず、Si含有粒子と、ハードカーボンと、CMCと、PAAと、を乾式混合した。次いで、乾式混合した混合粉体と、ペースト状のSWCNT(固形分率2%)と、分散媒と、を固練り混錬した。固練り混錬時の固形分率は60%であった。固練り混錬した混合物に対して、さらにSBRと、溶媒(水)とを加えて混合した。このようにして、負極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、銅箔(厚み10μm)の両面に帯状に塗布した。そして、銅箔上のスラリーを乾燥し、線圧が1.1kN/cmとなる条件でプレスした後、所定の寸法に加工することで負極シートを作製した。
【0062】
次いで、正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのPVDFとを用意した。これらを、NCM:AB:PVDF=100:1:1の重量比となるように、溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、正極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、アルミニウム箔(厚み15μm)の両面に帯状に塗布した。そして、アルミニウム箔上のスラリーを乾燥し、所定の厚みまでプレスした後、所定の寸法に加工することで正極シートを作製した。
【0063】
上記用意した負極シートと、正極シートとをセパレータを介して積層し、積層電極体を作製した。正極板と負極板とにそれぞれ集電用のリードを取り付け、積層電極体をアルミニウムラミネートシートで構成される外装体に挿入した。外装体の内部に非水電解液を注入し、外装体の開口部を封止して実施例1の試験用電池を作製した。なお、セパレータとしては、PP/PE/PPの三層構造を有する多孔性ポリオレフィンシートを使用した。また、非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とを、EC:FEC:EMC:DMC=15:5:40:40の体積比となるように混合した混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
【0064】
<実施例2および3、比較例1および2>
Si含有粒子とハードカーボンとの重量比を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2および3、比較例1および2の評価用電池を作製した。
【0065】
<実施例4~7、比較例5>
Si含有粒子の平均粒子径(D50粒子径)D1とハードカーボンの平均粒子径(D50粒子径)D2とを、それぞれ表1に示すように変更した。このこと以外は実施例1と同様にして、実施例4~7、比較例5の評価用電池を作製した。
【0066】
<比較例3>
負極活物質として、Si含有粒子のみを使用した(すなわち、ハードカーボンを含まない)こと以外は実施例1と同様にして、比較例3の評価用電池を作製した。
【0067】
<比較例4>
負極活物質として、ハードカーボンのみを使用した(すなわち、Si含有粒子を含まない)こと以外は実施例1と同様にして、比較例4の評価用電池を作製した。
【0068】
<負極密度の評価>
線圧1.1kN/cmでプレスした際の負極密度を算出した。負極密度は、負極活質層の塗布目付および厚みを測定し、式:負極密度(g/cm)=((塗布目付)/(厚み));により算出した。結果を表1に示す。
【0069】
<体積エネルギー密度の評価>
25℃環境下、CCCV充電(4.2Vまでレート0.05C、その後0.05Cカット)をした後、CC放電(レート0.05Cで2.5Vカット)する初回サイクルにおいて、放電容量と平均電圧を取得した。次いで、式:電力量(Wh)=(放電容量)×(平均電圧);から電力量(Wh)を算出した。また、電極体厚みと電極体面積とを測定し、式:電極体体積(L)=(電極体の厚み)×(電極体面積);から電極体体積(L)を算出した。そして、式:体積エネルギー密度(Wh/L)=(電力量)/(電極体体積);から体積エネルギー密度(Wh/L)を算出した。結果を表1に示す。
【0070】
<サイクル容量維持率の評価>
25℃環境下、CCCV充電(4.2Vまでレート0.4C、その後0.1Cカット)をした後、CC放電(レート0.4Cで2.5Vカット)することを1サイクルとして、250サイクル充放電を繰り返すサイクル試験を行った。1サイクル目の放電容量(初期容量)と、250サイクル目の放電容量とを測定し、サイクル容量維持率を式:サイクル容量維持率(%)=((250サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量))×100;から求めた。サイクル容量維持率が高いほど、二次電池のサイクル特性が高いと言える。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示すように、実施例1~7の評価用電池では、負極密度が1.58g/cm以上であり、体積エネルギー密度が780Wh/L以上であり、さらに、容量維持率が80%以上であることがわかる。これらの結果より、負極活物質として、Si含有粒子と、ハードカーボンと、を含み、ハードカーボンの平均粒子径D2に対するSi含有粒子の平均粒子径D1の比(D1/D2)が0.1~0.7であり、Si含有粒子と前記ハードカーボンとの重量比が15:85~55:45であることにより、高エネルギー密度化とサイクル特性の向上とが両立された二次電池を実現することができる。
【0073】
また、ハードカーボンの平均粒子径D2に対するSi含有粒子の平均粒子径D1の比(D1/D2)が0.15~0.65であることにより、さらに負極密度と体積エネルギー密度とが向上することがわかる。
【0074】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0075】
以上のとおり、ここに開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:正極および負極を有する電極体を備えた二次電池であって、前記負極は、負極集電体と、該負極集電体上に配置された負極活物質層と、を備えており、前記負極活物質層は、負極活物質として、Si含有粒子と、ハードカーボンと、を含み、前記Si含有粒子は、網目構造状のSiナノ粒子を含有する多孔質体であり、前記ハードカーボンの平均粒子径D2に対する前記Si含有粒子の平均粒子径D1の比(D1/D2)が0.1~0.7であり、前記Si含有粒子と前記ハードカーボンとの重量比が15:85~55:45である、二次電池。
項2:前記Si含有粒子および前記ハードカーボンは植物由来である、項1に記載の二次電池。
項3:前記Si含有粒子の含有量は、前記負極活物質を100wt%としたときに、10wt%~60wt%である、項1または項2に記載の二次電池。
項4:前記Si含有粒子の平均粒子径は、2μm~10μmである、項1~項3のいずれか一つに記載の二次電池。
項5:前記ハードカーボンの平均粒子径は、10μm~25μmである、項1~項4のいずれか一つに記載の二次電池。
【符号の説明】
【0076】
20 電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極(正極シート)
52 正極集電体
52a 正極集電体露出部
54 正極活物質層
60 負極(負極シート)
62 負極集電体
62a 負極集電体露出部
64 負極活物質層
66 Si含有粒子
66a Siナノ粒子
66b 細孔(空隙)
68 ハードカーボン
70 セパレータ
100 二次電池
図1
図2
図3