(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128758
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】マイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法、マイクログリッドシステム及び三相不平衡緩和装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/26 20060101AFI20240913BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H02J3/26
H02J3/38 110
H02J3/38 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037937
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】宮本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】石橋 一成
(72)【発明者】
【氏名】喜舎場 朝士
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 亮佑
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066GA01
5G066GA02
5G066GB02
5G066HA11
5G066HA13
5G066HB03
(57)【要約】
【課題】マイクログリッドシステムの三相不平衡を緩和することができるマイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法、マイクログリッドシステム及び三相不平衡緩和装置を提供する。
【解決手段】マイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法は、上位系統に接続され、インバータ電源と、インバータ電源の出力側に接続される供給系統とを備えるマイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法であって、上位系統が停電した際のマイクログリッド運転時に、インバータ電源の三相電力潮流又は三相電圧を計測し、計測した三相電力潮流又は三相電圧に基づいて供給系統の三相不平衡状態を特定し、特定した三相不平衡状態に基づいて、供給系統に接続される単相負荷を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位系統に接続され、インバータ電源と、前記インバータ電源の出力側に接続される供給系統とを備えるマイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法であって、
前記上位系統が停電した際のマイクログリッド運転時に、前記インバータ電源の三相電力潮流又は三相電圧を計測し、
計測した三相電力潮流又は三相電圧に基づいて前記供給系統の三相不平衡状態を特定し、
特定した三相不平衡状態に基づいて、前記供給系統に接続される単相負荷を調整する、
マイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法。
【請求項2】
特定の相が他の相より潮流が小さい又は電圧が高い場合、前記特定の相に対して単相負荷を増やす、
請求項1に記載のマイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法。
【請求項3】
特定の相が他の相より潮流が大きい又は電圧が低い場合、前記特定の相に対して単相負荷を減らす、
請求項1に記載のマイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法。
【請求項4】
単相負荷を調整した場合、前記供給系統に対して電流源インバータの供給電力を変更する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のマイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法。
【請求項5】
上位系統に接続され、インバータ電源と、前記インバータ電源の出力側に接続される供給系統とを備えるマイクログリッドシステムであって、
前記上位系統が停電した際のマイクログリッド運転時に、前記インバータ電源の三相電力潮流又は三相電圧を計測する計測部と、
計測した三相電力潮流又は三相電圧に基づいて前記供給系統の三相不平衡状態を特定する特定部と、
特定した三相不平衡状態に基づいて、前記供給系統に接続される単相負荷を調整する調整部と
を備える、
マイクログリッドシステム。
【請求項6】
制御部を備え、
前記制御部は、
上位系統が停電した際のマイクログリッド運転時に、前記上位系統に接続され、供給系統を備えるマイクログリッドシステムの前記供給系統に電力を供給するインバータ電源の三相電力潮流又は三相電圧を取得し、
取得した三相電力潮流又は三相電圧に基づいて前記供給系統の三相不平衡状態を特定し、
特定した三相不平衡状態に基づいて、前記供給系統に接続される単相負荷を調整する、
三相不平衡緩和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法、マイクログリッドシステム及び三相不平衡緩和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、災害時のエネルギー供給の確保、エネルギー利用の効率化、地域のエネルギー活用による地域産業の活性化などのメリットがあることから、マイクログリッドが注目されている。マイクログリッドは、平常時は下位系統の潮流を把握し、災害等による上位系統の大規模停電時には、上位系統から切り離され、分散型のエネルギーリソースを用いて自立的に電力を供給することができる。
【0003】
特許文献1には、分散型のエネルギーリソースとしてのインバータ電源を備え、インバータ電源の交流端が昇圧トランスを介して配電系統に接続されるマイクログリッドシステムが開示されている。
【0004】
配電系統内には、複数の需要家の電力負荷が設置され、マイクログリッドシステムは、需要家のニーズに基づいて設計・設置・運用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
需要家の電力負荷には、様々な種類があり、また電力負荷は三相負荷に限らず単相負荷も含まれる。このため、需要家の電力負荷の稼動状態によっては、三相間の電力不平衡が発生する。また、配電系統には単相負荷が多いので、三相間の不平衡を一層助長し、電気機器の使用に支障をきたす可能性もある。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、マイクログリッドシステムの三相不平衡を緩和することができるマイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法、マイクログリッドシステム及び三相不平衡緩和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、本実施形態のマイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法は、上位系統に接続され、インバータ電源と、前記インバータ電源の出力側に接続される供給系統とを備えるマイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法であって、前記上位系統が停電した際のマイクログリッド運転時に、前記インバータ電源の三相電力潮流又は三相電圧を計測し、計測した三相電力潮流又は三相電圧に基づいて前記供給系統の三相不平衡状態を特定し、特定した三相不平衡状態に基づいて、前記供給系統に接続される単相負荷を調整する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マイクログリッドシステムの三相不平衡を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態のマイクログリッドシステムの構成の一例を示す図である。
【
図2】三相不平衡の緩和方法の第1例を示す図である。
【
図3】三相不平衡の緩和方法の第2例を示す図である。
【
図4】本実施形態の三相不平衡緩和方法の処理手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態のマイクログリッドシステムの構成の一例を示す図である。マイクログリッドシステムは、開閉器2を介して上位系統1に接続される。上位系統1は、一般送配電事業者等が所有する送電線、配電線などである。平常時には、開閉器2が閉じた状態になっており、マイクログリッドシステムは、上位系統1を通じて電力供給を受ける。
【0012】
マイクログリッドシステムは、電圧源インバータ10、電圧源インバータ10の出力を昇圧する昇圧トランス51、電圧源インバータ10と昇圧トランス51との間の電路に設けられ、電圧源インバータ10の各相の潮流(有効電力P及び無効電力Q)を計測する電力計測器71、昇圧トランス51に接続される供給系統5、電流源インバータ20、30、供給系統5と電流源インバータ20、30との間に設けられる昇圧トランス52、53、電流源インバータ40、供給系統5と電流源インバータ40との間に設けられる昇圧トランス54などを備える。なお、無効電力Qは、インバータ電源(電圧源インバータ10)の電圧値、電流値及び有効電力Pから計算できる。なお、電力計測器71に代えて、電圧源インバータ10の各相の電圧を計測する電圧計測器を設けてもよい。
【0013】
災害等により上位系統1が停電した非常時には、事故復旧の一手段として、開閉器2が閉状態から開状態に切り替えられ、マイクログリッドシステムが上位系統1から切り離される。また、配電線3の下流側に接続された開閉器2aを閉状態から開状態に切り替えることで、マイクログリッドシステムを下流側の隣接系統から切り離すことができる。この場合、電圧源インバータ10、及び電流源インバータ20、30は、供給系統5に対して電力を供給し、電流源インバータ40は、待機して運転を停止しているとする。
【0014】
また、マイクログリッドシステムは、供給系統5に接続される降圧トランス55、降圧トランス55の二次側(低圧側)に接続される接続装置65、接続装置65を介して降圧トランス55の各相に接続される単相負荷61、62、63を備える。各単相負荷61、62、63は1つに限定されるものではない。例えば、単相負荷61は、当該相に接続可能な複数の単相負荷で構成してもよい。個々の単相負荷は個別に当該相に接続又は非接続とすることができる。他の単相負荷62、63も同様である。単相負荷61~63は、三相不平衡調整用の負荷である。単相負荷61~63は、例えば、抵抗器で構成してもよく、充放電可能な蓄電池でもよく、水を電気分解する水素製造装置等で構成してもよい。
【0015】
また、マイクログリッドシステムは、不平衡緩和装置100を備える。不平衡緩和装置100は、例えば、CPU、ROM、及びRAM等を有する制御部を備えるコンピュータ等で構成することができる。不平衡緩和装置100は、電力計測器71から電圧源インバータ10の出力側の各相の潮流を取得する。また、不平衡緩和装置100は、電圧計測器から電圧源インバータ10の出力側の各相の電圧を取得してもよい。不平衡緩和装置100は、取得した各相の潮流又は電圧のいずれかを合算して、供給系統5の三相不平衡状態を特定する。不平衡緩和装置100は、特定した三相不平衡状態に応じて、接続装置65を制御し、降圧トランス55に接続する各相の単相負荷の数を調整する。
【0016】
昇圧トランス51~54は、例えば、210V又は420Vを6600Vに昇圧することができる。
【0017】
供給系統5は、例えば、6.6kV(高圧)の配電系統であり、配電線3に複数の降圧トランス4が接続されている。各降圧トランス4には、需要家の三相負荷6、及び単相負荷7が接続される。需要家の三相負荷6、及び単相負荷7は、三相不平衡に対しては調整不可な負荷である。なお、
図1の例では、4つの降圧トランス4に、それぞれ2つの三相負荷6と単相負荷7が接続された構成を示しているが、降圧トランス4の数、三相負荷6及び単相負荷7の数や接続構成は
図1の例に限定されない。
【0018】
次に、三相不平衡の緩和方法について説明する。
【0019】
マイクログリッドシステムの供給系統5の三相に単相負荷を接続した場合、接続した単相負荷の容量が20kW程度を超えると、実測の三相の線間電圧及び相電流の不平衡が見られ、電圧不平衡状態及び相電流の不平衡状態が許容範囲を超えた。以下では、三相不平衡の緩和方法について具体的に説明する。
【0020】
不平衡緩和装置100は、上位系統1が停電した際のマイクログリッド運転時に、インバータ電源(
図1の例では、電圧源インバータ10)の三相の潮流(電力潮流)を計測し、計測した三相の潮流に基づいて供給系統5の三相不平衡状態を特定し、特定した三相不平衡状態に基づいて、供給系統5に接続される各相の単相負荷61~63の数を調整する。また、不平衡緩和装置100は、インバータ電源(
図1の例では、電圧源インバータ10)の三相の電圧を計測し、計測した三相の電圧に基づいて供給系統5の三相不平衡状態を特定し、特定した三相不平衡状態に基づいて、供給系統5に接続される各相の単相負荷61~63の数を調整してもよい。なお、電流源インバータ20、30、40は、一般的に三相平衡状態で運転されるが、電圧源インバータ10の場合には、負荷の状態に応じて電圧源インバータ10の三相の潮流又は電圧に三相不平衡となり、供給系統5の三相不平衡状態の原因となる。上述の構成により、マイクログリッドシステムの三相不平衡を緩和することができる。なお、本実施形態のマイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法は、災害等により上位系統1が停電した非常時に実施することができるが、非常時に限定されるものではなく、平常時に実施してもよい。
【0021】
図2は三相不平衡の緩和方法の第1例を示す図である。
図2Aは三相の不平衡状態の例を示す。三相をa相、b相及びc相とする。
図2Aの例では、c相の電力を100%としたとき、a相及びb相の電力が少なく三相不平衡が生じている。三相不平衡状態は、例えば、三相不平衡率として表すことができる。例えば、a相、b相、及びc相の電力をPa、Pb、Pcとすると、a相の不平衡率をPa/(Pa+Pb+Pc)で表し、b相の不平衡率をPb/(Pa+Pb+Pc)で表し、c相の不平衡率をPc/(Pa+Pb+Pc)で表す。三相不平衡率は、例えば、a相、b相及びc相の不平衡率の最大値と最小値との差に比例する数値として算出することができる。なお、三相不平衡率の算出方法はこれに限定されない。
図2Aでは、a相及びb相の潮流が少なく、c相の潮流がa相及びb相よりも多い。また、
図2Aに示す三相不平衡が許容値を超えている場合、不平衡緩和装置100は、潮流の少ない相に対して単相負荷を増やすことで負荷補償し、三相不平衡を緩和することができる。
【0022】
すなわち、
図2Bに示すように、潮流が少ないa相及びb相に対しては、単相負荷(複数の単相負荷の一部でもよい)をオフからオンにして単相負荷を調整する。一方、潮流が多いc相に対しては、単相負荷をオフのままにして単相負荷を変更しない。
【0023】
図2Cに示すように、負荷補償を行うことにより、a相、b相、及びc相の潮流が略平衡(均一化)し、三相不平衡が緩和される。上述のように、不平衡緩和装置100は、特定の相が他の相より潮流が小さい場合、当該特定の相に対して単相負荷を増やしても(投入してもよい)よい。これにより、マイクログリッドシステムの三相不平衡を緩和することができる。
【0024】
なお、
図2において、調整前のa相、b相、c相の単相負荷が全てオンの場合には、潮流が少ないa相及びb相に対しては、単相負荷をオンのままにし、潮流が多いc相に対しては、単相負荷をオンからオフにして単相負荷を減少させて、各相の潮流が平衡になるようにしてもよい。
【0025】
図示していないが、例えば、a相、b相、及びc相の電圧をVa、Vb、Vcとすると、a相の不平衡率をVa/(Va+Vb+Vc)で表し、b相の不平衡率をVb/(Va+Vb+Vc)で表し、c相の不平衡率をVc/(Va+Vb+Vc)で表す。三相不平衡率は、例えば、a相、b相及びc相の不平衡率の最大値と最小値との差に比例する数値として算出してもよい。
【0026】
図3は三相不平衡の緩和方法の第2例を示す図である。
図3Aの例では、a相の電力を100%としたとき、b相及びc相の電力が多く三相不平衡が生じている。
図3Aでは、a相の潮流よりもb相及びc相の潮流が多い。また、
図3Aに示す三相不平衡が許容値を超えている場合、不平衡緩和装置100は、潮流の多い相に対して単相負荷を減らすことで負荷補償し、三相不平衡を緩和することができる。
【0027】
すなわち、
図3Bに示すように、潮流が少ないa相に対しては、単相負荷をオンのままにして単相負荷を変更しない。一方、潮流が多いb相及びc相に対しては、単相負荷(複数の単相負荷の一部でもよい)をオンからオフにして単相負荷を調整する。
【0028】
図3Cに示すように、負荷補償を行うことにより、a相、b相、及びc相の潮流が略平衡(均一化)し、三相不平衡が緩和される。上述のように、不平衡緩和装置100は、特定の相が他の相より潮流が大きい場合、当該特定の相に対して単相負荷を減らしてもよい(開放してもよい)。これにより、マイクログリッドシステムの三相不平衡を緩和することができる。
【0029】
なお、
図3において、調整前のa相、b相、c相の単相負荷が全てオフの場合には、潮流が少ないa相に対しては、単相負荷をオフからオンにして単相負荷を増加し、潮流が多いb相及びc相に対しては、単相負荷をオフのままにして、各相の潮流が平衡になるようにしてもよい。
【0030】
図2又は
図3において例示したように、供給系統5における三相不平衡の状態が許容値を超えている場合、降圧トランス55の二次側の各相に接続する単相負荷61~63の数を調整する。単相負荷61~63の数を増やす場合、インバータ電源(電圧源インバータ10、電流源インバータ20、30)が供給する電力の一部が、新たに接続された単相負荷61~63によって消費される。このため、供給系統5内の需要家に供給する電力が減少する。そこで、不平衡緩和装置100は、負荷補償によって単相負荷61~63を増やした場合、待機中の電流源インバータ40を立ち上げることにより、供給系統5に電力を供給して、負荷補償による供給電力低下を補償(電力補償)することができる。電力補償用の電流源インバータ40の出力容量は、例えば、数十kW程度あればよい。
【0031】
上述のように、不平衡緩和装置100は、三相不平衡を緩和すべく、単相負荷を調整した場合、供給系統5に対して電流源インバータの供給電力を変更してもよい。これにより、負荷補償を行った場合でも、供給系統5に供給する電力を維持することができる。
【0032】
なお、単相負荷61~63それぞれは、直列接続・並列接続された低抵抗値の複数の抵抗器で構成し、当該複数の抵抗器それぞれの接続状態を連続的又は段階的に変更することで、単相負荷61~63それぞれの抵抗値を、例えば、0%~100%の間で連続的又は段階的に可変することができる。
【0033】
図4は本実施形態の三相不平衡緩和方法の処理手順の一例を示す図である。不平衡緩和装置(制御部)100は、運転中の電圧源インバータ10の各相の潮流又は電圧を計測し(S11)、各相の潮流又は電圧を合算して三相の不平衡状態を特定する(S12)。不平衡緩和装置100は、三相不平衡状態は許容範囲内であるか否かを判定し(S13)、許容範囲内である場合(S13でYES)、ステップS11以降の処理を続ける。
【0034】
三相不平衡状態は許容範囲内でない場合(S13でNO)、不平衡緩和装置100は、特定の相が他の相よりも潮流が小さい又は電圧が高いか否かを判定する(S14)。特定の相が他の相よりも潮流が小さい又は電圧が高い場合(S14でYES)、不平衡緩和装置100は、特定の相に対して単相負荷を投入し(S15)、電流源インバータ20、30の供給電力を変更し(S16)、後述のステップS19の処理を行う。
【0035】
特定の相が他の相よりも潮流が小さくない又は電圧が高くない場合(S14でNO)、不平衡緩和装置100は、特定の相が他の相よりも潮流が大きい又は電圧が低いか否かを判定する(S17)。特定の相が他の相よりも潮流が大きい又は電圧が低い場合(S17でYES)、不平衡緩和装置100は、特定の相に対して単相負荷を開放し(S18)、ステップS16の処理を行う。
【0036】
特定の相が他の相よりも潮流が大きくない又は電圧が低くない場合(S17でNO)、不平衡緩和装置100は、三相は平衡状態にあると判定し、処理を終了するか否かを判定する(S19)。処理を終了しない場合(S19でNO)、不平衡緩和装置100は、ステップS11以降の処理を続ける。処理を終了する場合(S19でYES)、不平衡緩和装置100は、処理を終了する。
【0037】
上述のように、不平衡緩和装置100は、制御部を備え、当該制御部は、上位系統1が停電した際のマイクログリッド運転時に、当該上位系統1に接続され、供給系統5を備えるマイクログリッドシステムの当該供給系統5に電力を供給するインバータ電源(電圧源インバータ10)の三相電力潮流又は三相電圧を取得し、取得した三相電力潮流又は三相電圧に基づいて供給系統5の三相不平衡状態を特定し、特定した三相不平衡状態に基づいて、供給系統5に接続される単相負荷61~63の数を調整することができる。
【0038】
(付記1)マイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法は、上位系統に接続され、インバータ電源と、前記インバータ電源の出力側に接続される供給系統とを備えるマイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法であって、前記上位系統が停電した際のマイクログリッド運転時に、前記インバータ電源の三相電力潮流又は三相電圧を計測し、計測した三相電力潮流又は三相電圧に基づいて前記供給系統の三相不平衡状態を特定し、特定した三相不平衡状態に基づいて、前記供給系統に接続される単相負荷を調整する。
【0039】
(付記2)マイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法は、付記1において、特定の相が他の相より潮流が小さい又は電圧が高い場合、前記特定の相に対して単相負荷を増やす。
【0040】
(付記3)マイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法は、付記1又は付記2において、特定の相が他の相より潮流が大きい又は電圧が低い場合、前記特定の相に対して単相負荷を減らす。
【0041】
(付記4)マイクログリッドシステムの三相不平衡緩和方法は、付記1から付記3のいずれか一つにおいて、単相負荷を調整した場合、前記供給系統に対して電流源インバータの供給電力を変更する。
【0042】
(付記5)マイクログリッドシステムは、上位系統に接続され、インバータ電源と、前記インバータ電源の出力側に接続される供給系統とを備えるマイクログリッドシステムであって、前記上位系統が停電した際のマイクログリッド運転時に、前記インバータ電源の三相電力潮流又は三相電圧を計測する計測部と、計測した三相電力潮流又は三相電圧に基づいて前記供給系統の三相不平衡状態を特定する特定部と、特定した三相不平衡状態に基づいて、前記供給系統に接続される単相負荷を調整する調整部とを備える。
【0043】
(付記6)三相不平衡緩和装置は、制御部を備え、前記制御部は、上位系統が停電した際のマイクログリッド運転時に、前記上位系統に接続され、供給系統を備えるマイクログリッドシステムの前記供給系統に電力を供給するインバータ電源の三相電力潮流又は三相電圧を取得し、取得した三相電力潮流又は三相電圧に基づいて前記供給系統の三相不平衡状態を特定し、特定した三相不平衡状態に基づいて、前記供給系統に接続される単相負荷を調整する。
【0044】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 上位系統
5 供給系統
10 電圧源インバータ
20、30、40 電流源インバータ
51、52、53、54 昇圧トランス
4、55 降圧トランス
61、62、63 単相負荷
65 接続装置
100 不平衡緩和装置