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特開2024-128766樹脂組成物及びそれを含有する成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128766
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びそれを含有する成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/02 20060101AFI20240913BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20240913BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
C08L1/02
C08L23/02
C08L23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037954
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野呂 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】越田 伺励
(72)【発明者】
【氏名】石橋 直也
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB011
4J002BB033
4J002BB063
4J002BB094
4J002BB152
4J002FD012
4J002GB00
4J002GC00
4J002GG01
4J002GG02
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】セルロース粉を高含有率で含有しながらも一般的な樹脂成形品と同等の強度を有する成形品が得られる樹脂組成物及びそれを含有する成形品を提供する。
【解決手段】樹脂組成物は、セルロース粉100質量部に対して、オレフィン系エラストマーを30~60質量部、熱可塑性樹脂を29~200質量部、相溶化剤を5~15質量部を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース粉100質量部に対して、オレフィン系エラストマーを30~60質量部、熱可塑性樹脂を29~200質量部、相溶化剤を5~15質量部を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記セルロース粉の平均粒子径は10μm以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂はポリエチレン系樹脂であるか、又は、
前記熱可塑性樹脂は低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンのうちの1種以上を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記相溶化剤は無水マレイン酸変性ポリオレフィンである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有するフィルム。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する成形品。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記セルロース粉と前記相溶化剤とを混合して混合物を得る工程と、
前記混合物と前記オレフィン系エラストマーとを混合してペレットを得る工程と、
前記ペレットと前記熱可塑性樹脂とを混合して前記樹脂組成物を得る工程と、を備える、樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース粉を含有する樹脂組成物及び該樹脂組成物を含有する成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海洋プラスチック問題を始め、合成樹脂製品の廃棄物が問題視されている。そのため、合成樹脂製品、特に利用後に廃棄される製品に対し、原材料の少なくとも一部を合成樹脂以外の原材料に転換し、合成樹脂の使用量を削減することが要望されている。
【0003】
この合成樹脂以外の原材料としては、例えば、紙等のセルロース材料が挙げられ、このセルロース材料は安価であり、リサイクル性に優れているため、フィルム等の成形材料である熱可塑性樹脂やエラストマーの補強材として広く使用されている。
【0004】
このようなセルロース材料を含有する成形品としては、例えば、セルロース粉末(A)、オレフィン系樹脂(B)及び酸無水物構造を有する化合物(C)を含有し、インフレーション成形法によりフィルム化されてなり、JISZ1702の1種Aで規定される包装用ポリエチレンフィルムの引張強さ及び伸び率を満たし、かつ、フィルム表面における光沢度のばらつき(標準偏差)が0.1~8.0であるセルロース配合フィルムが提案されている。そして、このようなセルロース配合フィルムでは、フィルム表面でのセルロース粉末の塊が少なく、インフレーション成形時にも、水分が原因で生じるピンホールが発生しないと記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-201852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂組成物の全体に対してセルロース粉の含有率が50質量%を超える場合、合成樹脂削減効果に優れ、かつ、その樹脂組成物の成形品(容器包装)は、容器包装リサイクル法上の「主として紙製の容器包装」として取り扱うことができるため、セルロース粉の含有率を高めることが望ましい。しかしながら、セルロース粉の含有率を増加させると、フィルム等の成形品の十分な強度を確保することが難しい、また、そもそも成形自体が難しくなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、セルロース粉を高含有率で含有しながらも一般的な樹脂成形品と同等の強度を有する成形品が得られる樹脂組成物及びそれを含有する成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の樹脂組成物は、セルロース粉100質量部に対して、オレフィン系エラストマーを30~60質量部、熱可塑性樹脂を29~200質量部、相溶化剤を5~15質量部を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、セルロース粉を高含有率で含有しながらも成形が容易な樹脂組成物を得ることができる。また、一般的な樹脂成形品と同等の強度を有する、リデュース性と実用性とを兼ね備えた成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の樹脂組成物について具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して適用することができる。
【0011】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、セルロース粉と、オレフィン系エラストマーと、熱可塑性樹脂と、相溶化剤とを含有する。
【0012】
≪セルロース粉≫
本発明のセルロース粉は、例えば、精製された高純度のコットンリンター、木材、竹、バガス等を由来とするパルプを使用し、これらのパルプをナイフミル、竪型ローラミル、ジェットミル等の粉砕機で粉砕した粉末パルプを原料とし、目的の平均粒子径となるように分級する方法により製造することができる。
【0013】
また、セルロース粉の平均粒子径は、10μm以下であることが好ましい。平均粒子径が10μm以下であれば、樹脂組成物の表面が滑らかになるとともに、セルロース粉が均一に分散するため、押出し時にはドローダウンによる穴あき等がなくなり、射出時には微細な構造に対応しやすくなる。従って、樹脂組成物の成形性に優れるとともに、靭性に優れる。
【0014】
また、セルロース粉の平均粒子径は、5μm以上がより好ましい。平均粒子径が5μm以上であれば、樹脂組成物の剛性が優れる。
【0015】
なお、「平均粒子径」とは、50%粒径(D50)を指し、レーザー回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製乾式粒度分布計、商品名:MASTER SIZER 3000)等により体積平均粒子径として測定できる。
【0016】
また、セルロース粉は、市販品を使用してもよい。セルロース粉の市販品としては、日本製紙株式会社製のKCフロック、レッテンマイヤージャパン株式会社製のセルロースマイクロファイバ一等が挙げられる。
【0017】
また、樹脂組成物の全体(すなわち、セルロース粉と、後述のオレフィン系エラストマーと、後述の相溶化剤、及び各種添加剤との総質量)に対するセルロース粉の含有率は、樹脂組成物の全体に対して(すなわち、樹脂組成物100質量%のうち)15質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%超であることがさらに好ましい。なお、セルロース粉の含有率が50質量%超であれば、成形品における合成樹脂の使用量の削減効果に優れ、環境負荷を低減することができるとともに、熱可塑性樹脂の含有割合が少ない場合であっても、十分な剛性を発現することができる。また、成形品を、容器リサイクル法上の「主として紙製の容器包装」として取り扱うことが可能になる。
【0018】
また、樹脂組成物の成形性と剛性をより一層向上させるとの観点から、樹脂組成物の全体に対するセルロース粉の含有率は、60質量%以下が好ましい。
【0019】
≪オレフィン系エラストマー≫
本発明で使用するオレフィン系エラストマーとしては、炭素数3以上のオレフィンを主成分とした共重合体又は単独重合体、並びにエチレンを主成分とした炭素数3以上のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。
【0020】
より具体的には、プロピレン-エチレン共重合、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体等が挙げられる。なお、オレフィン系エラストマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
また、オレフィン系エラストマーは、一般的に力学的性質などの基本物性を支配するハードセグメントと、ゴム的な性質である伸縮性を支配するソフトセグメントによって構成される。オレフィン系エラストマーのハードセグメントがポリプロピレンからなるものをプロピレン系エラストマーといい、ハードセグメントがポリエチレンからなるものをエチレン系エラストマーという。オレフィン系エラストマーのソフトセグメントとしては、EPDM、EPM、EBM、IIR、水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)、NBR、アクリルゴム(ACM)が挙げられる。
【0022】
また、樹脂組成物の成形性に優れるとともに、靭性に優れるとの点から、プロピレンを主成分とした共重合体(例えば、上述の「プロピレン-エチレン共重合体」)またはプロピレンの単独重合体であるプロピレン系エラストマーが好ましい。
【0023】
また、プロピレン系エラストマーの場合、全単位に対するプロピレン単位含有率は、70質量%~95質量%が好ましく、80質量%~90質量%がより好ましい。ハードセグメントであるプロピレン単位含有率が70質量%以上であれば、強度が向上するため、優れた成形性が得られ、95質量%以下であれば、ソフトセグメントの弾性により、優れた伸縮性が得られる。
【0024】
また、セルロース粉100質量部に対するオレフィン系エラストマーの含有率は30~60質量部であり、41~52質量部であることが好ましい。これは、30質量部未満の場合は、樹脂組成物が硬い上、脆くもなるため、成形性が低下するためであり、60質量部よりも多い場合は、樹脂組成物が柔らか過ぎて、離型性が悪くなるため、成形性が低下するためである。
【0025】
また、樹脂組成物の成形性を向上させるとの観点から、樹脂組成物における熱可塑性樹脂とオレフィン系エラストマーとの質量比(熱可塑性樹脂の質量:オレフィン系エラストマーの質量)が1:0.2~1:2であることが好ましく、1:0.25~1:1.8であることが好ましい。
【0026】
また、オレフィン系エラストマーの融点は、50~160℃が好ましく、50~120℃がより好ましく、50~80℃がさらに好ましい。オレフィン系エラストマーの融点が50℃以上であれば、樹脂組成物の靭性がより優れ、160℃以下であれば、樹脂組成物の剛性がより優れる。また、オレフィン系エラストマーの融点を、120℃以下とすることにより、セルロース粉の変性(焼け付き)を防止しやすくなる。
【0027】
なお、「融点」とは、示差走査熱量計(DSC)におけるDSCチャートの融解開始温度のことを意味する。
【0028】
また、オレフィン系エラストマーの曲げ弾性率は、5~50MPaが好ましく、5~10MPaがより好ましい。オレフィン系エラストマーの曲げ弾性率が5~50MPaであれば、靭性に優れた成形品を得ることができる。
【0029】
≪熱可塑性樹脂≫
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂等が挙げられる。なお、熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。特に、熱可塑性樹脂はコスト面で有利であり、防寒性に優れ、かつ防水性に優れセルロースの吸湿を防止できる、という観点からポリエチレン系樹脂であることが好ましい。
【0030】
また、ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及び超低密度ポリエチレン(ULDPE)等を使用することができ、ポリエチレン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
特に、熱可塑性樹脂は低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンのうちの1種以上を含むことが好ましい。
【0032】
なお、セルロース粉と複合した樹脂組成物とした際にも柔軟性を損ないにくく、エラストマーと相溶しやすいとの観点から、熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレン(密度:0.900~0.930g/cm)を使用することが好ましい。特に、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を使用すると、成形品の伸びが良くなり、引裂強さがより良好となる。
【0033】
なお、熱可塑性樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)やメタロセン触媒により得られた低密度ポリエチレンを用いると、摺動性が向上するため、本発明の樹脂組成物は、頻回に開閉がおこなわれる容器の蓋等のスクリュー形状を有する成形品に、特に適している。
【0034】
セルロース粉100質量部に対する熱可塑性樹脂の含有率は29~200質量部であり、29~166質量部であることが好ましい。これは、29質量部未満の場合は、樹脂組成物のセルロース粉含有率が相対的に高すぎることから、樹脂組成物が硬い上、脆くもなるため、成形性が低下するためである。熱可塑性樹脂の含有率が増加すると成形性の向上及び十分な物性の確保という観点では望ましい場合もあるが、当該含有率が200質量部よりも多い場合は、合成樹脂の使用量抑制効果(リデュース性)が得られにくくなるためである。
【0035】
≪相溶化剤≫
本発明の樹脂組成物は、相溶化剤を含有する。樹脂組成物が相溶化剤を含有することにより、樹脂組成物及びそれを含有する成形品において、セルロース粉が分散しやすくなるとともに、セルロース粉と樹脂との親和性が高まり、物性が向上する。
【0036】
相溶化剤としては、樹脂組成物中におけるセルロース粉の十分な分散性を得ることができれば特に限定されるものではなく、公知の相溶化剤を採用できる。
【0037】
相溶化剤としては、具体的には例えば、マレイン酸無水物、コハク酸無水物等の酸無水物で変性されたポリオレフィン等の熱可塑性樹脂が挙げられ、特に無水マレイン酸変性ポリオレフィン(以下、「MA-PO」という場合がある。)を採用することが好ましい。
【0038】
MA-POとしては、α-オレフィン-無水マレイン酸共重合体、α-オレフィン重合体と無水マレイン酸との混合物、α-オレフィンとα-オレフィン-無水マレイン酸共重合体と無水マレイン酸との混合物等が挙げられる。また、α-オレフィンとしては、エチレンやプロピレン等が挙げられる。
【0039】
相溶化剤としてMA-POを使用する場合、MA-POの溶融粘度は、100~15000mPa・sが好ましく、200~5000mPa・sがより好ましい。MA-POの溶融粘度が100mPa・s以上であれば、樹脂組成物の成形性に優れるとともに、靭性に優れ、15000mPa・s以下であれば、樹脂組成物の剛性がより優れる。
【0040】
なお「溶融粘度」は、キャピラリーレオメータにより測定される粘度のことを言う。
【0041】
相溶化剤としてMA-POを使用する場合、MA-POの酸価は、5~150mgKOH/gが好ましく、30~100mgKOH/gがより好ましい。MA-POの酸価が5mgKOH/g以上であれば、樹脂組成物の成形性に優れ、150mgKOH/g以下であれば、樹脂組成物の外観がより優れる。
【0042】
なお、「酸価」は、中和滴定により測定される値のことを言う。
【0043】
セルロース粉100質量部に対する相溶化剤の含有率は5~15質量部であり、7~13質量部であることが好ましい。これは、5質量部未満の場合は、樹脂組成物内のセルロース粉の分散性が低下し、成形性が低下するためであり、15質量部よりも多い場合は、相溶化剤の成分同士が凝集してしまうため、相溶化剤の含有率が5質量部未満の場合と同様に、樹脂組成物内のセルロース粉の分散性が低下し、成形性が低下するためである。
【0044】
≪他の成分≫
樹脂組成物は、必要に応じて、上述のセルロース粉、オレフィン系エラストマー、熱可塑性樹脂及び相溶化剤以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、目ヤニ防止剤、MFR調整剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤等の添加剤が挙げられる。
【0045】
なお、セルロース粉100質量部に対する他の成分の含有率は、0質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0質量部以上7質量部以下であることがより好ましい。
【0046】
<成形品及び成形品の製造方法>
本発明の成形品は、上述の樹脂組成物を、例えばブロー成形、インフレーション成形、射出成形、押出成形等の一般的に公知の各種成形方法を用いて成形することにより得られる。
【0047】
本発明の成形品は、限定する意図ではないが、具体的には例えば、液体やクリーム状等の流動性の高いものを収容する、医薬品や化粧品用の容器等、コップ、皿、フォーク、及びスプーン等の食器等、おむつなどの衛生用品を梱包する外袋、レジ袋、ごみ袋等のフィルム等その他の各種日用品、工業用品等である。
【0048】
以下に、本発明の成形品の製造方法の一例について説明する。
【0049】
まず、セルロース粉と相溶化剤とを所定の配合比率で混合して混合物を得る(混合物調製工程)。
【0050】
その後、得られた混合物とオレフィン系エラストマーと、必要に応じて各種添加剤とを所定の配合比率で混合し、例えばストランドダイを備えた同方二軸押出機にて溶融混錬してストランド状に押し出し、押し出された混練物をカットして、ペレットを得る(ペレット製造工程)。
【0051】
そして、このペレットと、熱可塑性樹脂と、必要に応じて各種添加剤とを混合して樹脂組成物を得る(樹脂組成物調製工程)。
【0052】
なお、上記各工程における混合方法としては、スーパーミキサ、ヘンシェルミキサ等で乾式混合する方法が挙げられる。
【0053】
そして、得られた樹脂組成物を成形することにより、本発明の成形品が製造される。
【0054】
例えば、成形方法として、射出成形を使用する場合は、樹脂組成物を所定の温度で射出成形することにより、種々の成形品が製造される。
【0055】
また、例えば、成形方法として、インフレーション成形を使用する場合は、樹脂組成物を、円形ダイを備えた二軸押出機にて所定の温度で溶融押し出しによりフィルム状に成形し、当該フィルム状物を巻取りロールで巻き取ることにより、フィルム等の成形品が製造される。
【0056】
また、例えば、成形方法として、ブロー成形を使用する場合は、樹脂組成物を用いて、押出機にて所定の温度で溶融押し出しにより円筒状のパリソンを成形し、該パリソンをブロー成型用金型で挟み込んだ後、空気を吹き込み、中空体を成形することにより、本発明の樹脂組成物を用いた、例えば容器等の成形品が製造される。
【0057】
本発明の成形品の製造方法の特徴の1つは、予め高含有率のセルロース粉と相溶化剤、さらにオレフィン系エラストマーを混合してペレット化しておくことにある。本構成により、様々な種類の熱可塑性樹脂との組合せで、所望のセルロース粉含有率を有し且つ所望の物性を備えた成形品を容易に得ることができる。また、本発明では、セルロース粉と直接混合すると凝集して外観不良を招きやすい添加剤を、成形工程で添加することができる。さらに、セルロース粉含有率の高いペレットを予め製造しておき、成形工程において熱可塑性樹脂で希釈することにより、最初から全ての材料を混合してペレット化し、成形工程に供する場合に比べて、最終的に成形品を得るまでの製造時間を短縮化でき、コスト削減に資することができる。
【0058】
<引裂強さ>
本発明の樹脂組成物をフィルム状に成形した場合、成形品であるフィルム(膜厚120μm)は、エルメンドルフ引裂法(JISK 7128-2)による引裂強さ[N]が、2.0N以上であることが好ましく、3.0N以上であることがより好ましく、4.0N以上であることがさらに好ましく、5.0N以上であることがさらに好ましく、15N以上であることが特に好ましい。ただし、当該フィルムにおいて、MD方向及びTD方向における引裂強さに差がある場合は、低い方の値が上記数値範囲を満たすことが好ましい。
【0059】
なお、引裂強さの上限値は、特に限定されるものではなく、一般的な樹脂成形品と同程度の値とすることができ、具体的には例えば、30N以下、好ましくは25N以下とすることができる。
【0060】
<引張破壊呼びひずみ>
引張破壊呼びひずみ[%]は、上述のフィルムにおいて、5%超であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、10%超であることがさらに好ましく、600%以上であることが特に好ましい。
【0061】
引張破壊呼びひずみは、熱可塑性樹脂としてLDPEを使用した場合、70%以上が好ましく、400%以上が好ましく、600%以上であることが特に好ましい。また、引張破壊呼びひずみは、熱可塑性樹脂としてLLDPEを使用した場合、500%以上が好ましく、550%以上が好ましく、600%以上であることが特に好ましい。
【0062】
なお、引張破壊呼びひずみは、実施例に記載の方法で測定できる。
【0063】
<効果>
このように、本発明の成形品は、引裂強さや引張破壊呼びひずみが上記数値範囲を満たし得る。従って、本発明の成形品は、セルロース粉を例えば50質量%超の高含有率で含有しながらも一般的な樹脂成形品と同等の強度を有しているから、リデュース性と実用性とを兼ね備えることができる。
【実施例0064】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0065】
本実施例で使用した材料を以下に示す。
(1)セルロース粉1(平均粒子径:10μm、レッテンマイヤージャパン株式会社製、商品名:ARBOCEL UFC100)
(2)プロピレン系エラストマー1(プロピレン-エチレン共重合体、エチレン単位含有率:16質量%、MFR:3g/10min、融点:55℃、ExxonMobil社製、商品名:Vistamaxx(登録商標)6102FL)
(3)プロピレン系エラストマー2(プロピレン-エチレン共重合体、エチレン単位含有率:6質量%、MFR:10,000g~100,000g/10min(溶融粘度に基づく換算値)、融点:97℃、ExxonMobil社製、商品名:Vistamaxx(登録商標)8880)
(4)LDPE-1(低密度ポリエチレン、密度:0.921g/cm、MFR:5g/10min、住友化学社製、商品名:スミカセン(登録商標)CE3635)
(5)LDPE-2(低密度ポリエチレン、密度:0.922g/cm、MFR:2g/10min、ロッテ・ケミカル社製、商品名:TITANLENE(登録商標)LDF200YZ)
(6)LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン、密度:0.913g/cm、MFR:2g/10min、株式会社プライムポリマー製、商品名:エボリュー(登録商標)SP1520)
(7)HDPE(高密度ポリエチレン、密度:0.958g/cm、MFR:0.98g/10min、株式会社プライムポリマー製、商品名:ハイゼックス(登録商標)3600F)
(8)相溶化剤(オレフィン系ワックス、α-オレフィン-無水マレイン酸共重合体:66.8質量%、α-オレフィン系重合体:32.9質量%、無水マレイン酸:0.3質量%、融点:70~76℃、溶融粘度:140~210mPa・s、酸価95~110mgKOH/g、三菱ケミカル社製、商品名:ダイヤカルナ30M)
(9)目ヤニ防止剤(脂肪酸金属塩系添加剤、ベースポリマー:低密度ポリエチレン(密度:0.9g/cm)、MFR:6.3g/10min、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを10質量%含有するマスターバッチ、勝田化工株式会社製、商品名:AP-600P)
(10)MFR調整剤(低結晶性PP、密度:0.870g/cm、出光興産株式会社製、商品名:エルモーデュS400)
(11)滑剤(エルカ酸アミド、密度:0.850g/cm、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、アーモスリップE)
(12)気泡防止剤(酸化カルシウム、酸化カルシウムを65質量%・ベースポリマーとしてLLDPEを35質量%含有するマスターペレット、近江化学工業株式会社製、BELL-CML EM)
注:MFRは、JIS K 7210-1に準拠して、ポリエチレン系樹脂であれば、温度:190℃、荷重:2.16kgの条件、プロピレン系エラストマーを含む、ポリプロピレン系樹脂であれば温度:230℃、荷重:2.16kgの条件で測定することができる。
【0066】
(実施例1~13、比較例1~8)
<樹脂組成物の調製>
表1及び表2に示す配合に従って、以下の手順で樹脂組成物を調製した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
まず、セルロース粉と相溶化剤とをスーパーミキサで混合して混合物を得た。
【0070】
次いで、得られた混合物と残りの原料(プロピレン系エラストマー、添加剤等)とを、同方向二軸押出機にて、成形温度150~210℃、スクリュー回転数40~120rpmの条件で溶融混練し、直径2~4mmのストランド状に押し出し、押し出された混練物を裁断してペレットを得た。
【0071】
得られたペレットと、熱可塑性樹脂と、添加剤等とを、表1及び表2に記載の分量でドライブレンドし、樹脂組成物を得た。
【0072】
なお、比較例7、8は、セルロース粉及びプロピレン系エラストマーを含有せず、熱可塑性樹脂のみを樹脂組成物の代替として以下のフィルム成形に供した例である。
【0073】
<成形品(フィルム)製造方法>
得られた樹脂組成物を、一軸押出機にて、成形温度150~210℃、スクリュー回転数60rpmの条件で溶融混練し、円形ダイに導いてインフレーション成形した後、空冷により冷却固化させ、巻取機にて巻取った。フィルムの幅(インフレーション成形品を折りたたんだ際の幅。すなわち、成形品は、円周280mmの筒状に成形される。)は140mm、厚さは120μmとした。なお、スクリューの仕様は、フルフライト、L/D:25、C/R:3.08であった。
【0074】
<引裂強さ>
得られたフィルムからJIS K 7128-2:1998 エルメンドルフ引裂法に準拠し、長方形試験片を得た。長方形試験片は各試験例より、測定条件決定用1枚、TD方向測定用9枚、MD方向測定用9枚の各19枚準備した。
【0075】
初めに、下記の測定器Aを用いて測定条件を決定し、測定条件決定用試験片のTD方向の引裂強さが1N未満の場合は測定器A、引裂強さが1N以上の場合は測定器Bを用いて測定を行った。
【0076】
測定器A
フィルム引裂試験機(株式会社東洋精機製作所 No.193 軽荷重引裂試験機 測定レンジを1960mNにセット)
測定器B
エルメンドルフ引裂試験機(株式会社東洋精機製作所 No,164デジタルエルメンドルフ・引裂試験機 測定レンジを32Nにセット)
各々の試験片について、1枚ずつ測定を行い、n=9の中央値5つの平均値をそれぞれTD方向の引裂強さ、MD方向の引裂強さとした。
【0077】
TD方向の引裂強さとMD強度の引裂強さのうち、両者に差がある場合は低い方の値を当該試験例の引裂強さとした。結果を表1及び表2に示す。
【0078】
<引張破壊呼びひずみの測定>
JIS K 7161-2に準拠して、得られたフィルムの引張破壊呼びひずみ[%]を測定した。より具体的には、得られたフィルムからJIS K 6251に規定されるダンベル状3号形の試験片(標線間距離:20mm)を切り出した。そして、当該試験片について、精密万能試験機(株式会社島津製作所製 オートグラフAG-5000A)を用い、温度23℃、相対湿度50%、試験速度200mm/min±10%の条件でMD方向及びTD方向における引張破壊呼びひずみを求めた。そして、MD方向及びTD方向の引張破壊呼びひずみのうち低い方の値を当該試験例の引張破壊呼びひずみとした。結果を表1及び表2に示す。
【0079】
<考察>
表1及び表2に示すように、実施例1~13のフィルムでは、引裂強さ及び引張破壊呼びひずみのいずれにおいても、比較例1~6のフィルムに比べて高い値を示し、強度に優れることが判る。
【0080】
特に、実施例1~13のフィルムでは、比較例7及び比較例8の熱可塑性樹脂のみからなるフィルムと比較して、遜色ない値を示している。当該結果から、本発明によれば、セルロース粉を高含有率で含有しながらも、一般的な樹脂成形品と同等の強度を有し、リデュース性と実用性とを兼ね備えた成形品、特に成形条件が比較的厳しいフィルム成形品を容易に製造可能であることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上説明したように、本発明は、セルロース粉を含有する樹脂組成物及びそれを含有する成形品の分野において有用である。