(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128772
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】振込機構
(51)【国際特許分類】
B65G 47/14 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
B65G47/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037963
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】522087154
【氏名又は名称】合同会社ポーラス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】蒲田 喜彦
【テーマコード(参考)】
3F080
【Fターム(参考)】
3F080AA13
3F080BC05
3F080BC07
3F080CA03
3F080DA18
(57)【要約】
【課題】効率よくワークのポケット充填率を99~100%にすることを課題とする。
【解決手段】振込機構1は、上面開放され、内部を第1及び第2エアチャンバ21,22に区画されたエアチャンバ2と、第1及び第2エアチャンバ21,22内の各区画のそれぞれに空気を吸排気する吸排気部Pと、エアチャンバ2を傾動させる傾斜部3と、吸排気部Pと傾斜部3とを制御する制御部7とを備え、第1エアチャンバ21は、内部を複数に区画する区画部材2Aを分離部Sとして備えると共に上面開放部位にポーラスプレート4が設けられ、第2エアチャンバ22は、上面開放部位にポケットZが形成されたポーラスパレット41が設けた構成とした。
【効果】分散・均した小分けされ、かつ浮上したワークWがポーラスパレット41に搬送されるので、結果として高速で供給の無駄なく充填率を99~100%にできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積状に供給された極小のワークを整列させて所定の行及び列で形成されたポケットに個別に充填する振込機構であって、上面開放され、内部が中空とされると共に第1及び第2エアチャンバに区画されたエアチャンバと、前記第1及び第2エアチャンバの各区画のそれぞれに空気を吸排気する吸排気部と、前記エアチャンバを傾動させる傾斜部と、前記吸排気部と前記傾斜部とを制御する制御部とを備え、前記第1エアチャンバは、該第1エアチャンバ内の中空空間を複数に区画するための区画部材を分離部として備えると共に前記上面開放部位に、その表裏面に亘って該ワークよりさらに小さい多数の孔を有したポーラスプレートが設けられ、前記第2エアチャンバは、前記上面開放部位に、その表裏面に亘って前記ポーラスプレートにワークが個別で充填されるポケットが形成されたポーラスパレットが設けられている振込機構。
【請求項2】
前記分離部内を中空として、中空とされた該分離部に対応した吸排気部を接続した請求項1記載の振込機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて小さい、例えば半導体素子や電子・電気素子のような部品が乱雑に搬送されて多層状、山積状、といったように堆積して部品(以下、ワークという)が重なった状態から整列させて所定のポケットに収納するまでの処理を行う振込機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークが搬送途中において、多層状、山積状になっていると、例えば個数を計数する工程であれば、重なった塊を1個と認識されてしまうので、正確な個数を計数できず、また、例えば外観検査工程であれば、重なって隠れたワークについての外観検査ができず、さらに、例えば個別に移載させる場合は、重なって隠れたワークを移載残しが生じる。したがって、ワークが堆積していれば、重なった状態を均す必要がある。
【0003】
例えば特許文献1(特開2020-111466号公報)には、ワークが接触した載置面や搬送面を揺動又は振動させたり、ヘラを用いたりする手法では、ワークを損傷する可能性あることから適してなく、堆積状のワークを一層化する有効な手立てが存在しないという課題を解決するために、次の構成とした一層化装置が開示されている。
【0004】
すなわち、特許文献1の一層化装置は、ワークの載置面に該ワークよりさらに小さい多数の孔を有すると共に内部が中空とされた載置台と、この載置台に接続されて該載置台の内部に正圧又は負圧を生じさせる吸排気機構と、載置台を揺動させる揺動機構と、吸排気機構と揺動機構とを駆動制御する制御部とを備えた構成とされている。
【0005】
また、特許文献1には、載置台におけるワークよりさらに小さい多数の孔が形成された載置面に、ワークが1個だけ嵌入するポケットを形成したものを採用することも開示されている。なお、このポケット内にもポケット外同様にワークよりさらに小さい多数の孔が形成されている。こうすれば一層化と共にワークを整列させて(ポケット内に)収納することが可能である。
【0006】
ところが、特許文献1の一層化装置は、一層化するに際して堆積状のワーク全てを一斉に均す構成であったため、一層化したワーク全てを例えば移送するには、まずワーク全てを均した後になるため、却って時間がかかるといった問題があった。また、特許文献1においてポケットを形成した載置台では、載置台中央にワークを堆積状に載置した後に、ワークを浮かせて該載置台を前後左右に傾斜させてポケットにワークを挿入することとなるが、全ポケットに対して充填率を99~100%にしようとすると、前後左右の傾斜を何度も繰り返す必要が生じて、時間がかかっていた。
【0007】
また、本出願人は、先に、上面開放され、内部を複数に区画するための区画部材を分離部として設けたエアチャンバと、このエアチャンバの上面開放部位に設けられ、その表裏面に亘って該ワークよりさらに小さい多数の孔を有したポーラスプレートと、エアチャンバにおける各区画部にそれぞれ設けられて独立して空気が吸排気される吸排気部と、エアチャンバを所定角度傾斜させる傾斜部と、吸排気部と傾斜部とを制御する制御部とを備えた一層化機構を提案している(特願2022-193247号:先行出願)。
【0008】
本出願人による先行出願によれば、一層化しつつワークを移送することができるというより、ワークを所定の数量で移送しつつ一層化するので、ワークを均した後に移送するという時間と処理が省ける。
【0009】
しかしながら、先行出願では、一層化機構におけるポーラスプレートを特許文献1のようなポケットを設けたものに変換してしまうと、ポケットにワークが挿入されると当該ポケットにおける吸排気が阻害され、移送が滞ってしまい、ワークを数量で移送しつつ一層化するという効果が発揮できないこととなり、結果的に、ワークの一層化してポケットにワークを整列するには時間がかかり、また、充填率を99~100%とするにはさらに時間がかかるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題は、ワークの一層化に時間がかかると共に、ワークのポケット充填率を99~100%とするにはさらに時間を要する点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、堆積状に供給された極小のワークを整列させて所定の行及び列で形成されたポケットに個別に充填する振込機構であって、上面開放され、内部が中空とされると共に第1及び第2エアチャンバに区画されたエアチャンバと、前記第1及び第2エアチャンバの各区画のそれぞれに空気を吸排気する吸排気部と、前記エアチャンバを傾動させる傾斜部と、前記吸排気部と前記傾斜部とを制御する制御部とを備え、前記第1エアチャンバは、該第1エアチャンバ内の中空空間を複数に区画するための区画部材を分離部として備えると共に前記上面開放部位に、その表裏面に亘って該ワークよりさらに小さい多数の孔を有したポーラスプレートが設けられ、前記第2エアチャンバは、前記上面開放部位に、その表裏面に亘って前記ポーラスプレートにワークが個別で充填されるポケットが形成されたポーラスパレットが設けられたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、第1エアチャンバにおける上方傾斜端からポーラスパレットにおけるポケット数とほぼ同数だけワークを供給すれば、第2エアチャンバの下方傾斜下流端に0~1%の残留ワークが生じ、第1エアチャンバから第2エアチャンバへワークを片道搬送するだけで、ポーラスパレットに99~100%充填することができる。よって、充填率の向上と振込時間の大幅な短縮化が図れるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施例構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施例構成のエアチャンバ周辺を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施例の制御フローチャートである。
【
図4】(a)(b)は本発明の第1実施例の動作を説明するための図である。
【
図5】(a)(b)は本発明の第1実施例の動作を説明するための図である。
【
図6】(a)(b)は本発明の第1実施例の動作を説明するための図である。
【
図7】(a)(b)は本発明の第1実施例の動作を説明するための図である。
【
図8】(a)(b)は本発明の第1実施例の動作を説明するための図である。
【
図9】本発明の第2実施例構成を概略的に示すブロック図である。
【
図10】本発明の第2実施例構成のエアチャンバを示す図である。
【
図11】(a)~(d)は本発明の第2実施例の動作を説明するための図である。
【
図12】本発明の第3実施例構成を概略的に示すブロック図である。
【
図13】本発明の第3実施例構成のエアチャンバを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ワークの一層化に時間がかかると共に、ワークのポケット充填率を99~100%とするにはさらに時間を要するという問題を、上面開放され、内部が中空とされると共に第1及び第2エアチャンバに区画されたエアチャンバと、前記第1及び第2エアチャンバの各区画のそれぞれに空気を吸排気する吸排気部と、前記エアチャンバを傾動させる傾斜部と、前記吸排気部と前記傾斜部とを制御する制御部とを備え、前記第1エアチャンバは、該第1エアチャンバ内の中空空間を複数に区画するための区画部材を分離部として備えると共に前記上面開放部位に、その表裏面に亘って該ワークよりさらに小さい多数の孔を有したポーラスプレートが設けられ、前記第2エアチャンバは、前記上面開放部位に、その表裏面に亘って前記ポーラスプレートにワークが個別で充填されるポケットが形成されたポーラスパレットが設けた構成により解消した。
【0016】
エアチャンバは、第1エアチャンバと第2エアチャンバに区画され、さらに第1エアチャンバ自体も区画され、各区画に対応して吸排気部が接続されている。また、第1エアチャンバの各区画を隔てる区画部材が本発明では分離部として機能している。第1エアチャンバの上面全域はポーラスプレートが設けられ、該エアチャンバ内外の空気の流通が可能となっている。
【0017】
一方、第2エアチャンバの上面領域にはワークが個別に充填されるポケットが行及び列をなして形成されたポーラスパレットが設けられる。ポーラスプレート及びポーラスパレットは、共に、第1及び第2エアチャンバにおいて正圧(排気)を受けてワークを僅かに浮上させる。
【0018】
第2エアチャンバのポーラスパレットにおけるポケットは、平面視縦横サイズはワークが1個だけ充填されるサイズであればよいが、深さに関してだけは、ワークが僅かに突出するサイズとする。この理由は、ワークがポケットに埋没してしまう深さであると、ワークが重なってポケットに2つ充填される可能性があると共に、ワークがポケットで引っかかって上手く搬送されない可能性がある。
【0019】
すなわち、ポケットからワークが僅かに突出する深さとすることで、未だ充填されていないワークは、ポケットから僅かに突出したワークに弾かれて別の場所に移動し、移動した先で未充填のポケットがあればそこに挿入される。
【0020】
また、傾斜部は第1及び第2エアチャンバを一体としたエアチャンバを所定角度傾斜させるものであり、第1エアチャンバの上方傾斜端から第2エアチャンバの下方傾斜端へと、吸排気部による空気噴射により僅かに浮上したワークを移動させる。なお、本発明においてワークの推進力は、浮上したワークの自重である。
【0021】
傾斜部と、吸排気部とは、制御部に接続されており、この制御部によりワークの大きさ(重さ)や全体量や切り分け量に応じて、傾斜角度や空気圧を制御することで、堆積状のワークを一定量ずつ切り分けて、広い区画に誘導して、ここで確実に一層化とワーク同士の分散を行う。
【0022】
そして、吸排気部によるワークの浮上と、ワークの自重及び傾斜部によるワークの移動と、ポーラスパレットにおけるポケットから僅かにワークが突出するポケットサイズ(深さ)により、第1エアチャンバの上方傾斜端から第2エアチャンバの下方傾斜端へ片道送りするだけで、ワークはほぼポーラスパレットのポケットに充填されることとなる。
【0023】
要するに、本発明は、堆積状で供給されたワーク全てを一層化して次工程に送るという従来手法に代えて、堆積状で供給されたワークを少しずつ一層化して、一層化されて小分けされたワークをポーラスパレットにおいてポケットに充填することで、ワークの供給からワークのポケット充填までの時間を短縮することができ、なおかつポーラスパレットの全ポケットへのワークの充填率を99~100%とすることができる。
【0024】
また、本発明は、上記構成において、前記分離部内を中空として、中空とされた該分離部に対応した吸排気部を接続してもよい。こうすることで、より効率的にワークを一層化して小分けして第2エアチャンバのポーラスパレットへ送ることが可能となるので、充填率を100%に近づけることができる。
【実施例0025】
以下、
図1~
図13を参照して本発明の具体的な第1~第実施例を説明する。本発明の振込機構についての基本構成は第1実施例において説明する。第2~第4実施例では、第1実施例と異なる構成について説明することとし、第1実施例と重複する構成についての説明は省略し、図示においては同じ参照符号を示す。また、図示において、例えばポケットZ等は、誇張したり、説明において不要な場合は省略したりしている。
【0026】
(第1実施例)
図1~
図8に示す本発明の振込機構1は、上面が開放され、底面と4側面が閉塞したエアチャンバ2を備えている。エアチャンバ2は、供給されたワークWを一層化して小分けしつつ搬送する領域を形成する第1エアチャンバ21と、一層化して小分けされたワークWを整列して収納する領域を形成する第2エアチャンバ22とからなる。
【0027】
第1エアチャンバ21は、内部が、第1実施例の場合、区画部材2Aにより、(図示左から)領域L1と領域L2とに2分割されている。区画部材2Aは、本発明では分離領域S(分離部)とされ、堆積したワークWの切り分け機能を果たしている。
【0028】
第1エアチャンバ21の領域L1と領域L2のそれぞれの底面には、各々独立して稼働する吸排気部P1(領域L1に対応)、吸排気部P2(領域L2に対応)が、バルブを介して接続されている。
【0029】
第2エアチャンバ22の内部は、本例の場合、上記に倣って領域L3とされ、領域L3の底面には、同じく吸排気部P3がバルブを介して接続されている。これら、吸排気部P1~P3を総称するときは吸排気部Pということとする。
【0030】
なお、第1エアチャンバ21の領域L2と第2エアチャンバ22の領域L3の間には互いを区画する区画部材2Bを設けているが、本例においては分離領域Sとして積極利用しない。もちろん、区画部材2Bを分離領域Sとして積極的に利用してもよい。
【0031】
エアチャンバ2には、傾斜部3が設けられており、この傾斜部3は、第1エアチャンバ21の一方端(
図1に示す状態で第1エアチャンバ21の左端)に軸部3Aが設けられ、他方端下面(
図1に示す状態で第2エアチャンバ22の右端下面)には傾動部3Bが設けられている。
【0032】
傾斜部3は、傾動部3Bにより他方端を上下動させることで、軸部3Aを中心にエアチャンバ2ごと傾斜させるよう構成とされている。なお、この傾斜部3に関しては、エアチャンバ2が傾斜させることができれば、特に構成の限定はしない。
【0033】
第1エアチャンバ21における上面の開放面には、その表裏面に亘って現行の最小サイズのワークWよりさらに小さいサイズの多数の孔を有したポーラスプレート4が設けられている。ポーラスプレート4は全領域一面に多数の孔を有したものであって区画されていないが、以下の説明では、このポーラスプレート4上において、上記のエアチャンバ2の領域L1、領域L2、分離領域Sを示している。
【0034】
第2エアチャンバ22における上面の開放面には、その表裏面に亘って現行の最小サイズのワークWよりさらに小さいサイズの多数の孔を有したポーラスプレートに、ワークWの縦横サイズより若干大きく、高さサイズより若干浅い、ポケットZが列及び行をなして整列して形成されたポーラスパレット41が設けられている。ポーラスパレット41のポケットZの内底面にも現行の最小サイズのワークWよりさらに小さいサイズの多数の孔が形成されている。
【0035】
ポーラスプレート4、ポーラスパレット41における領域L1~L3を一体とした上面には、枠体5が設けられている。この枠体5は、ポーラスプレート4及びポーラスパレット41上の4側面部の壁面として機能してワークWの落下、散乱を予防することと、該ポーラスプレート4及びポーラスパレット41をエアチャンバ2に取り付ける部材として機能してエアチャンバ2の内圧で該ポーラスプレート4及びポーラスパレット41が反ったり、該エアチャンバ2との接触部分に隙間が生じたりすることを予防する。
【0036】
ポーラスプレート4の上方には、カメラ6が設けられ、このカメラ6で撮像したデータが処理部6Aに入力される。本例では、カメラ6はポーラスプレート4上全体を視野に入れる1台とされ、画角や視野の切り替えなどは後述の制御部7が行う。
【0037】
上記、吸排気部P1,P2,P3、傾斜部3(傾動部3B),処理部6Aは、制御部7において制御される。以下、制御部7によって、供給された堆積状のワークWを一層化及び分散し、小分けしてポーラスパレット41のポケットZにワークWを充填するまでの具体的な制御手順について説明する。
【0038】
図3の手順1(以下#1と記す)、
図4(a)(b)に示すように、制御部7は、エアチャンバ2を傾斜0°つまり水平にし、吸排気部P1,P2,P3をOFF、つまり吸気も排気も行わない状態とし、この状態で、ワークWがポーラスプレート4上の領域L1に供給される。このとき、ワークWは山状に堆積された状態となっている。
【0039】
図3の#2、
図5(a)(b)に示すように、制御部7は、ワークWが領域L1に供給された後に、吸排気部P1,P2をON、この場合は排気(エアチャンバ2内を正圧化する)すると、ワークWがポーラスプレート4からの空気圧で浮上しようとして、堆積山が崩れ、裾野の面積が広がる。
【0040】
分離領域Sは第1実施例の場合、区画部材2Aによってポーラスプレート4の孔を塞いでいる。よって、エアチャンバ2の正圧の影響でワークWは浮上せず、水平であればほぼ分離領域Sを超えて領域L2に移動することはない。
【0041】
図3の#3では、制御部7は、吸排気部P1,P2,P3をONとすると共に吸排気部P2,P3の圧力を吸排気部P1より高くし、さらにエアチャンバ2を角度-θだけ傾斜するよう傾斜部3を制御する。
【0042】
なお、以下の説明では負角度は
図1で言うと第2エアチャンバ22側の図示右端が下方に傾斜するように傾動することを、正角度は
図1で言うと第2エアチャンバ22側の図示右端が上方に傾斜するように傾動することを、それぞれ意味する。
【0043】
図6(a)(b)に示すように、吸排気部P1,P2,P3をONとすると共に吸排気部P2,P3の圧力を吸排気部P1より高くし、エアチャンバ2を角度-θだけ傾斜すると、現時点では、領域L1のワークWが浮上してポーラスプレート4との接触摩擦による拘束から開放されて、傾斜とワークWの自重により領域L2に移動する。
【0044】
このとき、分離領域Sは上記したとおり無圧状態であるため、領域L2へ移動しようとするワークWは該分離領域Sで停止するが、この停止時に傾斜とワークWの自重の余力で分離領域Sから領域L2側へはみ出した分が、領域L2の吸排気部P2の正圧により小分けされて領域L2へ移動する。
【0045】
図3の#4では、制御部7は、#4で吸排気部P1をOFFにした状態で所定時間をカウントする(#5)し、カメラ6により領域L1におけるワークWの残量を確認して、領域L1のワークW全てが領域L2に移動した場合(#6でYES)は、吸排気部P1をOFFにして(#7)、#8の処理を行う。一方、領域L1のワークW全てが領域L2に移動していない場合(#6でNO)は、処理を#3に戻し、領域L1のワークW全てが領域L2に移動するまで(#6でYES)、
図3の#3~#6を循環する。
【0046】
ポーラスプレート4(領域L1、領域L2)上のワークWは、極めて微細であるとしてポーラスプレート4の孔の開いている部分とそうでない部分とを移動することになるので、該ポーラスプレート4の面と常に平行に移動するのではなく、上下左右に微細に揺れながら(踊りながら)移動することとなる。したがって、上下で重なっていたり、前後左右で接触したりするワークWは、一層化されると共に分散化される。
【0047】
そして、吸排気部P1のONとOFFを繰り返すことで、領域L2には小分けされた複数のワークWが領域L2を移動することとなる。そして、
図3の#3~#6を循環している間に領域L2に移動した小分けされた複数のワークWは、エアチャンバ2の傾斜と、浮上したワークWの自重により領域L3に到達する。
【0048】
図7(a)(b)に示すように、領域L2を通過した小分けされた複数のワークWは、浮上したまま領域L3に移動する。領域L3に移動した小分けされた複数のワークWは、ポーラスパレット41の未充填のポケットZに順次挿入する。
【0049】
ここで、ポケットZにワークWが挿入される原理を説明する。ポーラスパレット41は、ポケットZの内底面にも現行の最小サイズのワークWよりさらに小さいサイズの多数の孔が形成されている。また、第2エアチャンバ22における吸排気部P3からの正圧は領域L3全域で一定であって、ポーラスパレット41においてポケットZの内底面は、該ポーラスパレット41のポケットZが形成されていない部分の表面より、正圧として噴射する空気の吹き出し位置が低い。
【0050】
同高さ位置から同じ正圧をワークWに与えた場合はワークWの浮上高さは一定なので、低い位置から同じ正圧をワークWに与えた場合は、その低い位置から上記の一定高さ分浮上する。つまり、ポーラスパレット41におけるポケットZの「内底面」からのワークWの浮上高さ、該ポケットZの存在しない部分の「表面」からのワークWの浮上高さ、一定で、ワークWは常に「吹き出し位置」に対して一定の浮上高さを保っているが、ポケットZの位置では吹き出し位置が低い位置にあるので、その高低差に沿ってポケットZの存在しない部分の高さに比べて沈む(ポケットZに挿入)のである。
【0051】
また、ポケットZは、ワークWが僅かに突出する高さとされているので、ワークWは装填済みのポケットZの位置に移動すると、ここで突出したワークWと接触して、例えばピンボールのピンにボールが接触したようにワークWが弾かれて別の場所に移動し、そもそも領域L2から領域L3に移動するワークWも規則正しく並んでいない。こうした理由でワークWがポーラスパレット41上を全面的に移動するから充填率が向上する。
【0052】
図3の#3~#6を循環し、領域L1から領域L2、領域L2から領域L3へワークを移動させ、制御部7は、領域L2にワークが存在しているか否かをカメラ6で撮像して処理部6Aがその旨検知するまで(#8,#9でNO)、
図3の#7の処理を行う。また、領域L2にワークWが存在しなくなり(#8でYES)、かつ領域L3においてポーラスパレット41のポケットZ形成領域を移動するワークWが検出されなくなった(#9でYES)とき、
図8(a)(b)に示すように吸排気部P2、P3をOFFにして、エアチャンバ2を水平に戻す(#10)。
【0053】
(第2実施例)
図9~
図11に示す第2実施例の振込機構1は、以下が第1実施例と異なる構成である。第3実施例は、領域L1と領域L2を区画する区画部材2Aの内部が中空で、この領域を調整領域Scとしている、つまり(図示左から)領域L1、調整領域Sc、領域L2とされている。また、調整領域Scは、これに対応した吸排気部Pcが設けられている。
【0054】
以下、制御部7によって、供給された堆積状のワークWを一層化及び分散し、ポーラスパレット41のポケットZにワークWを個別に充填するまでの制御手順について説明する。第2実施例の制御手順は、構成が相違するので異なる手順があるが、領域L1にワークWが供給され、領域L1からワークWを小分けして領域L2に切り出し、領域L2において一層化及び分散化して領域L3においてワークWをポーラスパレット41に収納するという手順は、上記
図3及び
図4~
図8に示した第1実施例の制御手順に準じている。
【0055】
第2実施例において、制御部7は、吸排気部P1,Pc,P2をOFFにすると共にエアチャンバ2を水平にしておき、この状態で、
図11(a)に示すように、ワークWが領域L1に供給される。領域L1に供給されたワークWは山積みの状態とされる。
【0056】
ワークWが領域L1に供給された後、
図11(b)に示すように、制御部7は、吸排気部PcをOFFのまま、吸排気部P2,P3を吸排気部P1よりも高圧に設定して、吸排気部P1,P2,P3をONにすると共にエアチャンバ2を角度-θだけ傾斜させる。このとき、調整領域Scは、領域L1から領域L2側へ移動しようとするワークWを一旦停止させる分離領域Sとして機能している。
【0057】
上記の後、
図11(c)に示すように、制御部7は、上記でOFFとしていた吸排気部Pcを吸排気部P2,P3と同圧にてONにし、所定時間経過後にOFFとすることを繰り返す。これを数度繰り返すことで、領域L2に移動するワークは、吸排気部PcをOFFにした時間分だけ領域L1-L2方向に間隔が空き、ワークW同士をより確実に分散させることができる。
【0058】
そして、制御部7は、吸排気部PcのON・OFFの繰り返しを領域L1からワークWが存在しなくなるまで行った後、吸排気部P1、PcをOFFとし、以降順次、領域L2からワークWが存在しなくなったら吸排気部P2をOFFとし、領域L3においてポーラスパレット41のポケットZ形成領域を移動するワークWが検出されなくなった後、
図11(d)に示すように、吸排気部P3をOFFとすると共に、エアチャンバWの傾斜を水平に戻す。
【0059】
(第3実施例)
図12及び
図13に示す第3実施例の振込機構1は、以下が第1実施例と異なる構成である。第4実施例は、領域L1と領域L2を区画する区画部材2Aの内部が中空で、この領域を調整領域Scとしている、つまり(図示左から)領域L1、調整領域Sc、領域L2とされている。
【0060】
また、区画部材2Aの内部中空は、領域L1,L2方向と直交する方向に複数区画され、前記領域L1,L2方向と直交する方向に交互に調整領域Sc1,Sc2が設けられている。すなわち調整領域Scは調整領域Sc1,Sc2で構成されている。さらに、これら調整領域Sc1,Sc2に対応した吸排気部Pc1,Pc2が設けられている。また、領域L1の面積が領域L2よりも小さくされている。
【0061】
以下、制御部7によって、供給された堆積状のワークWを一層化及び分散し、ポーラスパレット41のポケットZにワークWを個別に充填するまでの制御手順について説明する。第3実施例の制御手順は、構成が相違するので異なる手順があるが、領域L1にワークWが供給され、領域L1からワークWを小分けして領域L2に切り出し、領域L2において一層化及び分散化して領域L3においてワークWをポーラスパレット41に収納するという手順は、上記
図3及び
図4~
図8に示した第1実施例の制御手順に準じている。
【0062】
第3実施例において、制御部7は、吸排気部P1,Pc1,Pc2,P2,P3をOFFにすると共にエアチャンバ2を水平としておき、この状態でワークWが領域L1に供給される。
【0063】
ワークWが領域L1に供給された後、制御部7は、吸排気部Pc1,Pc2,をOFFのまま、吸排気部P2,P3を吸排気部P1よりも高圧にして吸排気部P1,P2,P3をONにすると共にエアチャンバ2を角度-θだけ傾斜させる。このとき、調整領域Sc1,Sc2は、領域L1から領域L2側へ移動しようとするワークWを一旦停止させる分離領域Sとして機能している。
【0064】
上記の後、制御部7は、上記でOFFとしていた例えば吸排気部Pc1を吸排気部P2と同圧にてONにし、所定時間経過後に吸排気部Pc1をOFFとすると同時に吸排気部Pc2をONにすることを繰り返す。これを数度繰り返すことで、領域L2に移動するワークは、吸排気部Pc1,Pc2をOFFにした時間分だけ領域L1-L2方向及び該領域L1-L2方向と直交する方向で互いに隣接する調整領域Sc1、Sc2の間隔が空き、ワークW同士をより確実に分散させることができる。
【0065】
そして、制御部7は、吸排気部Pc1,Pc2の交互のON・OFFの繰り返しを領域L1からワークWが存在しなくなるまで行った後、吸排気部P1、Pc1,Pc2をOFFとし、以降順次、領域L2からワークWが存在しなくなったら吸排気部P2をOFFとし、領域L3においてポーラスパレット41のポケットZ形成領域を移動するワークWが検出されなくなった後に吸排気部P3をOFFとする。
【0066】
上記、本発明の第1~第3実施例によれば、ポーラスパレット41における全ポケットZへのワークW充填率は99~100%であった。また、処理開始から吸排気部PをOFFにするまでの1サイクルの処理速度は、ワークWの自重、エアチャンバ2の傾斜角度、吸排気部Pの圧力にもよるが、ワークWのサイズに応じた、最低速条件で実施しても従来のものより短時間で処理が完了し、また、最高速条件で実施しても上記充填率を維持することができた。
【0067】
また、本発明の振込機構1は、従来では最初に領域L1に供給するワークWの数量は闇雲に多量に供給していて、ポケットZに収納しきれずに領域L1から再供給するためにその都度戻す必要があったのに対し、充填率が99~100%を達成することができるので、最初に領域L1に供給するワークWの数量はポケットZの数に対して多くとも10%程度多めに供給すればよく、再供給のために領域L1へワークWを戻す頻度を下げることができるから、ワークWの全量を処理し終えるまでの時間が大幅に短縮することができる。
【0068】
なお、上記で「吸排気部」とした構成については、上記実施例では排気のみを行う構成としていたが、例えば給気も制御において活用することでさらに効率的な動作を実現できる可能性がある。