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特開2024-128777電磁式アクチュエータ及び燃料噴射装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128777
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】電磁式アクチュエータ及び燃料噴射装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 51/00 20060101AFI20240913BHJP
   F02M 51/06 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
F02M51/00 F
F02M51/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037974
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 久雄
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA07
3G066AC09
3G066BA51
3G066CA15U
3G066CA21
3G066CC14
3G066CE22
(57)【要約】
【課題】アーマチャがステータコアに当接した時に発生する急峻的な閉弁動作を抑制することによって、燃料噴射の制御性が悪化するのを抑制する。
【解決手段】本開示に係る電磁式アクチュエータの一態様は、燃料噴射装置のケーシングの内部に設けられ、通電されると磁束を発生するコイルを内蔵したステータコアと、ステータコアにおけるケーシングの軸線方向の一方側の端面に対向して配置される対向面を有するとともに、軸線方向に沿って延在する第1貫通孔を有するアーマチャであって、ステータコアから発生する電磁力の有無によって軸線方向に沿って往復動可能なアーマチャと、第1貫通孔に挿入されるとともに第1貫通孔からステータコア側に突出した突出部に形成された第1貫通孔の径より大径の鍔部を有する弁体であって、ケーシングに形成された背圧室の出口ポートを開閉可能な弁体と、弁体を軸線方向に沿って前記出口ポートを閉止する方向に付勢する第1バネ部材と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射装置に設けられる電磁式アクチュエータであって、
前記燃料噴射装置のケーシングの内部に設けられ、通電されると磁束を発生するコイルを内蔵したステータコアと、
前記ステータコアにおける前記ケーシングの軸線方向の一方側の端面に対向して配置される対向面を有するとともに、前記軸線方向に沿って延在する第1貫通孔を有するアーマチャであって、前記ステータコアから発生する電磁力の有無によって前記軸線方向に沿って往復動可能なアーマチャと、
前記第1貫通孔に挿入されるとともに前記第1貫通孔から前記ステータコア側に突出した突出部に形成された前記第1貫通孔の径より大径の鍔部を有する弁体であって、前記ケーシングに形成された背圧室の出口ポートを開閉可能な弁体と、
前記弁体を前記軸線方向に沿って前記出口ポートを閉止する方向に付勢する第1バネ部材と、を備え、
前記弁体は、前記第1貫通孔に挿入された状態において前記軸線方向に沿って摺動自在に配置され、
前記電磁式アクチュエータは、前記アーマチャが前記軸線方向に沿って前記ステータコア側に移動する際に、前記アーマチャの前記対向面が前記鍔部に当接することで、前記弁体が前記出口ポートを開放する方向に移動するように構成される、
電磁式アクチュエータ。
【請求項2】
前記アーマチャを前記軸線方向に沿って前記ステータコア側の方向に付勢する第2バネ部材をさらに備え、
前記第2バネ部材は、前記コイルが通電されていない状態において、前記弁体が前記出口ポートを閉止するとともに、前記アーマチャの前記対向面が前記鍔部に当接するようなバネ力を有するように構成された、
請求項1に記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項3】
前記第1バネ部材は、前記ステータコアの径方向内側に配置されるとともに前記軸線方向に沿って延在し、かつ前記鍔部に対向するように配置され、
前記電磁式アクチュエータは、前記第1バネ部材と前記ステータコアとの間に配置されるとともに前記軸線方向に沿って延在し、かつ前記第1バネ部材を囲むように配置された筒状の枠体をさらに備え、
前記アーマチャの前記対向面は、前記枠体の端面に対向する位置に前記対向面より前記ステータコア側へ突出するように形成された凸部を有する、
請求項1又は2に記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項4】
前記第1バネ部材は、前記ステータコアの径方向内側に配置されるとともに前記軸線方向に沿って延在し、かつ前記鍔部に対向するように配置され、
前記電磁式アクチュエータは、
前記第1バネ部材と前記ステータコアとの間に配置されるとともに前記軸線方向に沿って延在し、かつ前記第1バネ部材を囲むように配置された筒状の枠体と、
前記アーマチャの前記対向面に形成された環状の凹部に嵌合された環状のスペーサであって、少なくとも前記枠体の端面に対向する位置において前記アーマチャの前記対向面より前記ステータコア側に突出しているスペーサと、
をさらに備える、
請求項1又は2に記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項5】
前記ケーシングの内部において前記アーマチャに対して前記ステータコアの反対側に配置されたアンカ部材であって、前記第1貫通孔から前記ステータコアとは反対側に突出した前記弁体の軸部が挿入される、前記軸線方向に沿って延在する第2貫通孔を有するアンカ部材をさらに備え、
前記第2バネ部材は、前記アーマチャの前記対向面とは反対側の面と、前記アンカ部材の外周面に形成された段部との間に配置されている、
請求項2に記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1に記載の電磁式アクチュエータを備える、
燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電磁式アクチュエータ及びこの電磁式アクチュエータを備える燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル機関における燃料噴射システムは、コモンレールを初めとして電子制御方式が広く普及している。電子制御方式の燃料噴射システムにおいては、高速応答電磁弁が採用されて燃料の噴射制御が行われる事例が多い。このような電磁弁は、一般的な構造として、ソレノイドコイルを内蔵したステータコアに対向して磁性体で構成されるアーマチャが配置され、ソレノイドコイルに通電することで発生する電磁力でアーマチャを引き上げると共に、アーマチャに接続された弁体を持ち上げて燃料通路を開放するように構成されている。特許文献1及び2には、上述のような構成を有する燃料噴射装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-018934号公報
【特許文献2】特開2010-159734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に開示された燃料噴射装置は、アーマチャと弁体とが一体に形成され、アーマチャと弁体とは同じ動作を行う。ソレノイドコイルに通電する時間が増加すると、アーマチャの動き量が増大すると共に弁体のリフト量も増加するが、アーマチャがステータコアに当接すると、ステータコアから反発力を受けて閉弁方向に向かう急峻な動きが発生する。そのため、それまで放物的な動作をしていた弁体は、アーマチャがステータコアに当接した時点で急峻的な閉弁動作に向かうため、通電時間に対する燃料噴射量の関係が上り勾配から下り勾配となり、燃料噴射の制御性が悪化するという問題がある。
【0005】
本開示は、上述する事情に鑑みてなされたもので、上述のように、アーマチャがステータコアに当接した時に弁体に発生する急峻的な閉弁動作を抑制することによって、燃料噴射の制御性が悪化するのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る電磁式アクチュエータの一態様は、燃料噴射装置に設けられる電磁式アクチュエータであって、前記燃料噴射装置のケーシングの内部に設けられ、通電されると磁束を発生するコイルを内蔵したステータコアと、前記ステータコアにおける前記ケーシングの軸線方向の一方側の端面に対向して配置される対向面を有するとともに、前記軸線方向に沿って延在する第1貫通孔を有するアーマチャであって、前記ステータコアから発生する電磁力の有無によって前記軸線方向に沿って往復動可能なアーマチャと、前記第1貫通孔に挿入されるとともに前記第1貫通孔から前記ステータコア側に突出した突出部に形成された前記第1貫通孔の径より大径の鍔部を有する弁体であって、前記ケーシングに形成された背圧室の出口ポートを開閉可能な弁体と、前記弁体を前記軸線方向に沿って前記出口ポートを閉止する方向に付勢する第1バネ部材と、を備え、前記弁体は、前記第1貫通孔に挿入された状態において前記軸線方向に沿って摺動自在に配置され、前記電磁式アクチュエータは、前記アーマチャが前記軸線方向に沿って前記ステータコア側に移動する際に、前記アーマチャの前記対向面が前記鍔部に当接することで、前記弁体は前記出口ポートを開放する方向に移動するように構成される。
【0007】
本開示に係る燃料噴射装置の一態様は、上述の電磁式アクチュエータを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電磁式アクチュエータ及び燃料噴射装置の一態様によれば、弁体は、第1貫通孔に挿入されてアーマチャに対して軸線方向に沿って摺動自在に配置されているため、燃料噴射孔から燃焼室に燃料を噴射するためにコイルに通電された時、アーマチャがステータコアに当接してステータコアから受ける反発力によって、アーマチャがステータコア側から離れる方向へ急峻的な動作を行っても、弁体がアーマチャと連動して急峻的な閉弁動作を起こすのを抑制できる。これによって、燃料噴射の制御性が悪化するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る燃料噴射装置を示す模式的な縦断面図である。
図2図1に示されている燃料噴射装置に組み込まれた一実施形態に係る電磁式アクチュエータを示す縦断面図である。
図3】別な実施形態に係る電磁式アクチュエータの一部を示す拡大縦断面図である。
図4】さらに別な実施形態に係る電磁式アクチュエータの一部を示す拡大縦断面図である。
図5】燃料噴射装置における燃料噴射量とコイルに通電する時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、これらの実施形態に記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状及びその相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
(燃料噴射装置の構成)
図1は、本開示に係る燃料噴射装置の一実施形態を示す模式的縦断面図である。図2は、図1に図示された燃料噴射装置の一部を示す縦断面図であって、本開示に係る電磁式アクチュエータの一実施形態を示す縦断面図である。
【0012】
図1において、燃料噴射装置10のケーシング12には燃料通路14が形成されている。燃料通路14には、高圧燃料配管(不図示)から、矢印aで示されるように、高圧の燃料が供給される。例えば、燃料噴射装置10がディーゼルエンジンに設けられるコモンレール式燃料噴射システムに適用される場合には、一種のサージタンクである、「コモンレール」と称される蓄圧配管に蓄圧された高圧燃料が燃料通路14に供給される。
【0013】
ケーシング12の内部にはケーシング12の軸線Oに沿って延在する第1空間Sが形成され、第1空間Sにスプール16が配置されている。スプール16の一端側にピストン18が設けられ、他端側にニードル弁20が設けられている。ケーシング12の先端部には複数の噴射孔22が形成され、燃料通路14は、ケーシング12の内部で噴射孔22に連通する燃料通路14aと、ピストン18に面して形成された背圧室Pに連通する燃料通路14bとに分岐している。スプール16と共にニードル弁20が軸線Oに沿って往復動することにより、噴射孔22が開閉する。開放された噴射孔22から内燃機関の燃焼室(不図示)に高圧状態の燃料が噴射される。
なお、図1において、噴射孔22が設けられたケーシング12の先端側をX方向とし、X方向と反対方向をY方向としている。
【0014】
ケーシング12の内部に燃料通路14bから背圧室Pに連通する入口オリフィス25が形成されており、第1空間SのY方向側に隔壁12aを介して隣接する第2空間Sが形成され、隔壁12aに背圧室Pと第2空間Sとに連通する出口オリフィス24が形成されている。第2空間Sには、出口オリフィス24を開閉するために、本開示に係る電磁式アクチュエータの一実施形態に係る電磁式アクチュエータ40が設けられている。
【0015】
第1空間Sにおいて、スプール16の軸方向中央部にはバネ部材26が設けられ、バネ部材26の一端は第1空間Sに面するケーシング12の内側壁に形成された段部28に係止し、バネ部材26の他端はスプール16に一体に設けられ、ケーシング12の径方向(以下単に「径方向」とも言う。)に拡大した支持台30に係止している。バネ部材26は、ニードル弁20が噴射孔22を閉止する方向へスプール16にバネ力を付勢している。電磁式アクチュエータ40が出口オリフィス24を閉止しているとき、スプール16は噴射孔22を閉止する位置にある。
【0016】
電磁式アクチュエータ40が出口オリフィス24を開放したとき、背圧室Pは第2空間Sと連通し、一方で、燃料通路14bからの燃料の流入は入口オリフィス25を介して絞られるため(制限されるため)、背圧室Pの燃料圧が減圧される。これによって、スプール16をX方向へ付勢する力が減少し、スプール16がY方向へ移動することで、噴射孔22が開口し、高圧燃料がエンジン(例えばディーゼルエンジンなど)の燃焼室に噴射される。ケーシング12には第1空間Sと第2空間Sとに連通するリーク通路32が形成され、燃料通路14a及び14bから第1空間Sに漏れた燃料は第1空間Sからリーク通路32を経て第2空間Sに流入する。そして、第2空間Sから、矢印bで示されるように、ケーシング12に形成された排出口34を介して排出される。
【0017】
(電磁式アクチュエータの構成)
図2に示されるように、電磁式アクチュエータ40は、第2空間Sに設けられたステータコア42を備えている。ステータコア42は磁性体で構成され、ソレノイドコイル44を内蔵し、ソレノイドコイル44に通電されると、ソレノイドコイル44は磁束を発生し、ステータコア42から電磁力が発生する。さらに、ケーシング12の軸線方向(以下単に「軸線方向」とも言う。)においてステータコア42の一方側(図2に図示されている実施形態ではX方向側)にアーマチャ46が配置されている。アーマチャ46は、ステータコア42の一方側端面42a(図1に図示された実施形態では、ステータコア42の下面42a)に対向して配置される対向面46a(図1に図示された実施形態では、アーマチャ46の上面)、及び軸線方向に沿って延在する第1貫通孔46bを有している。アーマチャ46は、ステータコア42から発生する電磁力の有無によって軸線方向に沿って往復動可能に配置されている。即ち、ステータコア42から電磁力が発生すると、アーマチャ46は軸線方向に沿ってステータコア42に引き寄せられる。
【0018】
さらに、電磁式アクチュエータ40は、弁体48及び第1バネ部材52を備えている。弁体48は、第1貫通孔46bに挿入された状態で、第1貫通孔46bの内部で軸線方向に摺動自在に配置され、軸線方向に往復動することで噴射孔22を開閉する。また、弁体48は第1貫通孔46bからステータコア42側へ突出するように配置された突出部48bを有し、突出部48bは、第1貫通孔46bの直径より大きい径を有する鍔部50を有している。突出部48b及び鍔部50は弁体48と一体に形成されている。第1バネ部材52のバネ力は、弁体48を軸線方向に沿って出口オリフィス24を閉止する方向(X方向)へ付勢している。
【0019】
このような構成において、ソレノイドコイル44に通電されない時、弁体48に付勢される第1バネ部材52のバネ力によって弁体48は出口オリフィス24を閉止する位置に保持されている(閉弁状態)。ソレノイドコイル44が通電され、ソレノイドコイル44から磁束が発生してステータコア42から電磁力が発生すると、アーマチャ46にはステータコア42側へ引っ張られる吸引力が付勢される。この吸引力によってアーマチャ46は軸線Oの延在方向に沿ってステータコア42側へ平行移動する。アーマチャ46がステータコア42側へ平行移動すると、鍔部50は第1貫通孔46bより大きな径を有するため、アーマチャ46の対向面46aが鍔部50に当接する。そのため、鍔部50と一体の弁体48も第1バネ部材52のバネ力に抗して出口オリフィス24を開放するように移動する(開弁動作)。
【0020】
このように、弁体48は第1貫通孔46bに挿入された状態でアーマチャ46に対して軸線方向に沿って摺動可能に配置されているため、アーマチャ46がステータコア42に当接して発生する反発力によって、アーマチャ46がステータコア42側から離れる方向へ急峻的な動作を行っても、その急峻的な動作は弁体48には直接伝わらない。そのため、弁体48がアーマチャ46と連動して急峻的な閉弁動作を起こすのを抑制でき、これによって、燃料噴射の制御性が悪化するのを抑制できる。
【0021】
図5は、電磁式アクチュエータ40を備える燃料噴射装置10、及び特許文献1及び2に開示された燃料噴射装置において、ソレノイドコイル44への通電時間と燃料噴射量との関係を示すグラフである。同図中、ラインLは燃料噴射装置10の燃料噴射量を示し、ラインLは特許文献1及び2に開示された燃料噴射装置の燃料噴射量を示している。
【0022】
弁体48のステータコア42側への移動量(リフト量)は、アーマチャ46がステータコア42に当接するまでは、通電時間が増加するに伴って放物的に増加し、燃料噴射量も通電時間にほぼ比例して増加する。しかし、アーマチャ46の対向面46aがステータコア42の対向面42aに当接すると、アーマチャ46はステータコア42から反発力を受け、急峻的に閉弁方向へ向かう動作を行う。従って、特許文献1及び2に開示されているように、アーマチャと弁体とが一体に構成された燃料噴射装置では、弁体48も急峻的に閉弁方向へ向かう動作を行うため、ラインLのように、燃料噴射量が増加から急激に減少に転じる。そのため、燃料噴射の制御性が悪化するという問題がある。
【0023】
図5中、ラインLのピークf1、f2及びf3は、アーマチャがステータコアに当接した時点を示す。ラインLでは、ピークf1、f2及びf3の後で燃料噴射量が急激に落ち込んでいる。
【0024】
これに対して、本実施形態に係る燃料噴射装置10では、アーマチャ46と弁体48とは一体ではなく、弁体48は第1貫通孔46bの挿入された状態でアーマチャ46に対して摺動自在に配置されているため、アーマチャ46の対向面46aがステータコア42の対向面42aに当接してステータコア42から反発力を受け、アーマチャ46がステータコア42側から離れる方向へ急峻的な動作を行っても、その急峻的な動作は弁体48には直接伝わらない。そのため、燃料噴射量はラインLのような滑らかな曲線を維持し、急激に落ち込まないため、燃料噴射の制御性が悪化するのを抑制できる。
【0025】
図2に図示されている実施形態では、ケーシング12の内部で、第1バネ部材52、アーマチャ46、第1貫通孔46b、弁体48、及び鍔部50を含む突出部48bは、これらの軸線が軸線Oと一致するように配置されている。また、ステータコア42及びアーマチャ46の互いの対向面42a及び46aは軸線Oと直交する方向に延在する平坦面で形成されている。
【0026】
また、第1バネ部材52はステータコア42の中心部に形成された空間で軸線O上に配置され、かつ軸線方向に沿って延在するコイルバネで構成されている。
突出部48bは弁体48と一体に形成され、円筒形状を有し、鍔部50及び弁体48の後述する軸部48aより小径の小径部48b1を有している。小径部48b1は第1バネ部材52の内側に形成された空間に挿入されている。鍔部50は突出部48bと弁体48との間に形成され、小径部48b1及び軸部48aより大径を有する円板形状に構成されている。小径部48b1及び鍔部50は、磁性体又は非磁性体で構成されてもよい。例えば、耐摩耗性材料で構成されていれば、摩耗を抑制できる。
【0027】
また、図2に図示されている実施形態では、アーマチャ46に形成される第1貫通孔46bは、横断面が円形に形成され、軸線O上で軸線方向に延在するように形成されている。弁体48は、軸線O上で軸線方向に沿って配置された円筒形状の軸部48aを有し、軸部48aが第1貫通孔46bに挿入され、第1貫通孔46bの内部で摺動可能に配置されている。また、鍔部50とは反対側の弁体48の先端部には、出口オリフィス24を形成する隔壁12aに形成された弁座に当接又は離接して出口オリフィス24を開閉する突部48cが形成されている。
【0028】
また、アーマチャ46は第1貫通孔46bから径方向外側に拡径する円板状の形状を有し、拡径部に対向面46aと対向面46aと反対側の裏面46cとに貫通するリーク孔46dが形成されている。第1空間Sからリーク通路32を通して第2空間Sに流入した漏れ燃料はリーク孔46dを通過して排出口34から矢印b方向へ流出する。
なお、リーク孔46dは必ずしも形成されていなくてもよい。リーク孔46dが形成されていない場合には、例えば、後述するように、アーマチャ46の対向面46aに突出量tを有する凸部64が形成されたことによって、対向面46aとステータコア42の対向面42aとの間に隙間が形成され、この隙間から排出口34へ流出させるようにしてもよい。
【0029】
さらに、アーマチャ46の裏面46cは、アーマチャ46の径方向中心側から径方向外側へ向かうにつれてステータコア42側へ傾斜した傾斜面を形成している。これによって、アーマチャ46の容積及び重量を低減できる。
【0030】
なお、本実施形態では、背圧室Pに連通して第2空間Sに開口する開口として絞り機能を有する出口オリフィス24を設けているが、絞り機能を有さない開口を形成するようにしてもよい。
【0031】
一実施形態では、図2に図示されているように、電磁式アクチュエータ40は第2バネ部材54を備えている。第2バネ部材54は、アーマチャ46を軸線方向に沿ってステータコア42側の方向へ付勢し、ソレノイドコイル44が通電されていない状態において、弁体48(突部48c)が出口オリフィス24を閉止すると共に、アーマチャ46の対向面46aが鍔部50に当接するようなバネ力を有するように構成されている。
【0032】
この実施形態では、ソレノイドコイル44が通電されていない時、弁体48には、弁体48(突部48c)が出口オリフィス24を閉鎖する方向に、第1バネ部材52のバネ力が付勢されているため、弁体48は出口オリフィス24を閉止している。加えて、第2バネ部材54のバネ力がアーマチャ46をステータコア42側に付勢するため、ステータコア42側に対向するアーマチャの対向面46aは鍔部50の対向面50aに当接した状態となる。この状態でソレノイドコイル44に通電されてステータコア42に電磁力が発生すると、アーマチャ46がステータコア42側に引き寄せられ、そのアーマチャ46の動きは即座に鍔部50に伝わって、鍔部50をステータコア42側へ移動させるため、弁体48の開弁動作を遅滞なく惹起させることができる。
【0033】
図2に図示されている実施形態では、弁体48を安定して支持するためのアンカ部材56を備えている。アンカ部材56は、ケーシング12の内部において、軸線方向においてアーマチャ46に対してステータコア42と反対側に配置されると共に、軸線方向に沿って延在する第2貫通孔56aを有する。
弁体48は軸線方向に沿って延在する軸部48aを有し、軸部48aは、第1貫通孔46bからステータコア42とは反対側に突出した部位が第2貫通孔56aに摺動自在に挿入されている。第2バネ部材54は、アーマチャ46の対向面46aとは反対側の裏面46cと、アンカ部材56の外周面56bに形成された段部56cとの間に配置されている。
【0034】
この実施形態によれば、第1貫通孔46bからステータコア42とは反対側に突出した弁体48の軸部48aがアンカ部材56の第2貫通孔56aに挿入され、アンカ部材56によって摺動自在に支持されるため、弁体48はアンカ部材56によって安定して支持される。また、第2バネ部材54は、アーマチャ46の対向面46aとは反対側の裏面46cと、アンカ部材56の外周面56bに形成された段部56cとの間に配置されているため、アーマチャ46とアンカ部材56との間に安定して支持されると共に、アーマチャ46に対して弁体48の軸方向に沿うバネ力を正確に付勢することができる。
【0035】
図2に図示されている実施形態では、アンカ部材56は軸線Oを中心として裏面46cからアンカ部材56側に向けて延在する小径部56dを有する。アンカ部材56は軸線Oを中心として軸線方向でアーマチャ46側に配置された小径部46eを有する。第2バネ部材54は弁体48の軸部48a及び小径部46e、56dを取り巻くよう配置されたコイルバネで構成されている。第2バネ部材54はコイルバネで構成されているため、小径部46e及び56dの周囲に配置するのが容易になる。
【0036】
さらに、アーマチャ46には、裏面46cより中心側でかつ小径部46eの周辺に小径部46eを取り巻くように対向面46aと平行な(即ち軸線Oと直交する)環状の平面46fが形成されている。第2バネ部材54の一端は平面46fに係止するように配置されるため、平面46fによって安定して支持される。アンカ部材56の外周面56b、小径部46eの外形及びアンカ部材56の小径部56dの外形は円形を有しているため、コイルバネで構成された第2バネ部材54の配置が容易になる。
【0037】
さらに、図2に図示されている実施形態では、アンカ部材56には、アーマチャ46に対して軸線方向反対側に形成され、外周面56bよりさらに大径を有する拡径部56eがアンカ部材56と一体に形成されている。そして、アンカ部材56の径方向外側には、アンカ部材56を取り巻くように環状のリテーニングナット58が配置され、リテーニングナット58の外周面はケーシング12の内周面と螺合している。アンカ部材56はリテーニングナット58によってケーシング12の内部で安定して支持される。また、拡径部56eには燃料通路14に連通する燃料通路60が形成され、燃料通路60は背圧室Pを介して出口オリフィス24と連通している。
【0038】
図3は、一実施形態に係る電磁式アクチュエータ40Aを示す一部拡大縦断面図である。
図3に示されるように、本実施形態に係る電磁式アクチュエータ40Aは、第1バネ部材52がステータコア42の径方向内側に配置されると共に、軸線方向に沿って延在し、かつ鍔部50に対向するように配置されている。
図3に図示されている実施形態では、第1バネ部材52はコイルバネで構成され、コイルバネの軸線方向端部は鍔部50の対向面50bに接するように配置されている。
【0039】
第1バネ部材52の径方向外側であってかつステータコア42の径方向内側には、軸線方向に沿って延在し、かつ第1バネ部材52を囲むように筒状の枠体62が設けられている。そして、アーマチャ46の対向面46aには、枠体62の端面に対向する位置に対向面46aよりステータコア42側へ向かって突出するように形成された凸部64が形成されている。
【0040】
電磁式アクチュエータ40Aは、対向面46aに凸部64が形成されているため、弁体48の開弁動作時に凸部64がステータコア42の対向面42aがステータコア42に当接する。従って、ステータコア42に当接するアーマチャ46の当接部を凸部64に限ることができる。ステータコア42の対向面42aに当接するアーマチャ46の部位にばらつきがあると、アーマチャ46がステータコア42に当接するタイミングにばらつきが発生するおそれがある。本実施形態では、アーマチャ46がステータコア42に当接する当接部を凸部64に限ることができるため、弁体48の開弁動作の管理が容易になる。
【0041】
また、凸部64は磁性体からなるステータコア42ではなく枠体62の端面に当接するため、ステータコア42の摩耗を抑制できる。さらに、凸部64は枠体62の端面からアーマチャ46の径方向中心側に形成することができるため、アーマチャ46がステータコア42に当接するタイミングがアーマチャ46の対向面46aの水平方向に対する傾きの影響を受けにくくすることができる。
【0042】
図3に示されている実施形態では、第1バネ部材52はコイルバネで構成され、このコイルバネは円筒形の小径部48b1を囲むように配置され、該コイルバネの軸線は軸線Oと一致するように配置されている。そして、枠体62は円筒形を有して軸線方向に沿って延在し、その軸線が軸線Oと一致するように配置されている。このように、第1バネ部材52は小径部48b1を囲むように配置され、内側空間に小径部48b1が入りこむように位置決めされるため、第1バネ部材52の位置決めが容易である。
【0043】
さらに、凸部64は、アーマチャ46の対向面46aよりtだけステータコア42側に突出した平面を有している。図3に図示されている実施形態では、凸部64は、枠体62と当接する領域だけでなく、鍔部50のアーマチャ46の対向面46aに対向する対向面50aに当接する領域にも形成されている。即ち、図3に図示されている実施形態では、凸部64は、第1貫通孔46bの上端縁46b1から径方向外側へ向かって枠体62の端面に対向する領域に形成されている。
【0044】
また、凸部64は、全領域で同じ突出量tとなるように形成されている。従って、凸部64の突出量tを決めれば、アーマチャ46の対向面46aとステータコア42の対向面42aとの間のクリアランスも決まるため、このクリアランスを別に管理する必要がなくなる。例えば、突出量tはミクロン単位の高さでもよい。
なお、別な実施形態では、凸部64は、アーマチャ46の対向面46aのうち、最低限枠体62の端面と当接する領域にのみ形成されてもよい。
【0045】
なお、凸部64を形成することで、ステータコア42の対向面42aとアーマチャ46の対向面46aとの間に隙間が形成される。これによって、ソレノイドコイル44への通電を停止した後、アーマチャ46に磁気が残留することによる応答不良を防止できる。そのため、ソレノイドコイル44への通電を停止すると、アーマチャ46がステータコア42の対向面42aから遠ざかる側への移動を即座に開始できる。
【0046】
図4は、別な実施形態に係る電磁式アクチュエータ40Bを示す一部拡大縦断面図である。本実施形態において、第1バネ部材52がステータコア42の径方向内側に配置されると共に、軸線方向に沿って延在し、かつ鍔部50に対向するように配置されている。第1バネ部材52の径方向外側であってかつステータコア42の径方向内側には、軸線方向に沿って延在し、かつ第1バネ部材52を囲むように筒状の枠体62が設けられている。そして、枠体62に対向する対向面46aに環状の凹部66が形成され、凹部66にスペーサ68が嵌合されている。ステータコア42に対向するスペーサ68の対向面68aはアーマチャ46の対向面46aよりステータコア42側にtだけ突出して、枠体62の軸線方向端面にスペーサ68の対向面68aが対向して配置される。
【0047】
この実施形態によれば、スペーサ68の対向面68aはアーマチャ46の対向面46aよりステータコア42側にtだけ突出しているため、開弁時にアーマチャ46がステータコア42に当接する当接部をスペーサ68の対向面68aに限ることができる。そのため、アーマチャ46がステータコア42に当接するタイミングのばらつきをなくすことができ、これによって、弁体48の開弁動作の管理が容易になる。また、スペーサ68は磁性体からなるステータコア42ではなく、枠体62の端面に当接するため、ステータコア42の摩耗を抑制できる。さらに、スペーサ68は枠体62に対向する位置に形成されるため、アーマチャ46の対向面46aの中心側領域に形成できる。そのため、アーマチャ46がステータコア42に当接するタイミングがアーマチャ46の水平方向に対する傾きの影響を受けにくくすることができる。
【0048】
図4に図示されている実施形態では、凹部66は、アーマチャ46の対向面46aのうち枠体62に当接する領域だけでなく、径方向内側領域に延在し、第1貫通孔46bに達するまで形成されている。即ち、スペーサ68は、第1貫通孔46bの上端縁46b1から径方向外側へ向かって枠体62の端面に対向する領域に形成されている。そして、スペーサ68も凹部66の形状に合わせて凹部66が形成する全領域を埋めるように環状に形成され、スペーサ68の内周面が軸部48aの外周面に対向して隣接するように形成されている。この実施形態によれば、凹部66が第1貫通孔46bに達するまで延在しているため、凹部66の加工が容易になる。
なお、凹部66は最低限枠体62の端面に当接する対向面46aのみに形成さればよく、かつスペーサ68もそのように形成された環状の凹部に嵌合するように形成されればよい。
【0049】
図4に図示されている実施形態では、凹部66の外周面は円形を有し、かつ底面は全体として径方向で同一深さの平面を形成している。凹部66はこのような形状を有しているため、加工が容易である。また、この形状に合わせて製造されるスペーサ68の製造も容易になる。
また、例示的な実施形態では、スペーサ68を凹部66に着脱可能に嵌合する。これによって、スペーサ68が一定の許容される摩耗量を超えたときは、新しいスペーサと交換することができる。
また、スペーサ68が磁性体からなるアーマチャ46より耐摩耗性が良い材料で構成されていれば、スペーサ68の摩耗を抑制できる。
【0050】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0051】
1)一態様に係る電磁式アクチュエータは、燃料噴射装置(10)に設けられる電磁式アクチュエータ(40)であって、前記燃料噴射装置(10)のケーシング(12)の内部に設けられ、通電されると磁束を発生するコイル(44)を内蔵したステータコア(42)と、前記ステータコア(42)における前記ケーシング(12)の軸線方向の一方側の端面(42a)に対向して配置される対向面(46a)を有するとともに、前記軸線方向に沿って延在する第1貫通孔(46b)を有するアーマチャ(46)であって、前記ステータコア(42)から発生する電磁力の有無によって前記軸線方向に沿って往復動可能なアーマチャ(46)と、前記第1貫通孔(46b)に挿入されるとともに前記第1貫通孔(46b)から前記ステータコア(42)側に突出した突出部(48b)に形成された前記第1貫通孔(46b)の径より大径の鍔部(50)を有する弁体(48)であって、前記ケーシング(12)に形成された背圧室(P)の出口ポート(24)を開閉可能な弁体(48)と、前記弁体(48)を前記軸線方向に沿って前記出口ポート(24)を閉止する方向に付勢する第1バネ部材(52)と、を備え、前記弁体(48)は、前記第1貫通孔(46b)に挿入された状態において前記軸線方向に沿って摺動自在に配置され、前記電磁式アクチュエータ(40)は、前記アーマチャ(46)が前記軸線方向に沿って前記ステータコア(42)側に移動する際に、前記アーマチャ(46)の前記対向面(46a)が前記鍔部(50)に当接することで、前記弁体(48)が前記出口ポート(24)を開放する方向に移動するように構成される。
【0052】
このような構成によれば、コイル(44)に通電されない時、弁体(48)に付勢される第1バネ部材(52)のバネ力によって弁体(48)は出口ポート(24)を閉止している。この状態でコイル(44)に通電されるとステータコア(42)に電磁力が発生し、この電磁力によってアーマチャ(46)がステータコア(42)側へ引き寄せられる。アーマチャ(46)がステータコア(42)側へ引き寄せられると、アーマチャ(46)は鍔部(50)に当接して鍔部(50)をステータコア(42)側へ引き寄せるため、鍔部(50)と一体の弁体(48)は、第1バネ部材(52)のバネ力に抗して出口ポート(24)を開弁する。その時、アーマチャ(46)がステータコア(42)に当接して反発力を受け、ステータコア(42)側から離れる方向へ急峻的な動作を行っても、弁体(48)は第1貫通孔(46b)に挿入された状態でアーマチャ(46)に対して軸線方向に沿って摺動自在に配置されているため、弁体(48)がアーマチャ(46)と連動して急峻的な閉弁動作を起こすのを抑制できる。これによって、燃料噴射の制御性が悪化するのを抑制できる。
【0053】
2)別な態様に係る電磁式アクチュエータ(40)は、1)に記載の電磁式アクチュエータ(40)において、前記アーマチャ(46)を前記軸線方向に沿って前記ステータコア(42)側の方向に付勢する第2バネ部材(54)をさらに備え、前記第2バネ部材(54)は、前記コイル(44)が通電されていない状態において、前記弁体(48)が前記出口ポート(24)を閉止するとともに、前記アーマチャ(46)の前記対向面(46a)が前記鍔部(50)に当接するようなバネ力を有するように構成される。
【0054】
このような構成によれば、コイル(44)が通電されていない時、弁体(48)は第1バネ部材(52)のバネ力を受けて出口ポート(24)を閉止しているが、この状態で上記第2バネ部材(54)のバネ力がアーマチャ(46)に付勢されるため、アーマチャ(46)はステータコア(42)側に寄せられ、ステータコア(42)側に対向するアーマチャ(46)の対向面(46a)は鍔部(50)に当接した状態となる。この状態でコイル(44)が通電されてステータコア(42)に電磁力が発生し、この電磁力でアーマチャ(46)がステータコア(42)側に引き寄せられると、アーマチャ(46)の動きは即座に鍔部(50)に伝わって鍔部(50)を動かすと共に、鍔部(50)と一体の弁体(48)の開弁動作を遅滞なく惹起させることができる。
【0055】
3)さらに別な態様に係る電磁式アクチュエータ(40A)は、1)又は2)に記載の電磁式アクチュエータ(40)において、前記第1バネ部材(52)は、前記ステータコア(42)の径方向内側に配置されるとともに前記軸線方向に沿って延在し、かつ前記鍔部(50)に対向するように配置され、前記電磁式アクチュエータ(40A)は、前記第1バネ部材(52)と前記ステータコア(42)との間に配置されるとともに前記軸線方向に沿って延在し、かつ前記第1バネ部材(52)を囲むように配置された筒状の枠体(62)をさらに備え、前記アーマチャ(46)の前記対向面(46a)は、前記枠体(62)の端面に対向する位置に前記対向面(46a)より前記ステータコア(42)側へ突出するように形成された凸部(64)を有する。
【0056】
このような構成によれば、アーマチャ(46)がステータコア(42)に当接する当接部を上記凸部(64)に限ることができる。ステータコア(42)に当接するアーマチャ(46)の部位にばらつきがあると、アーマチャ(46)がステータコア(42)に当接するタイミングにばらつきが発生するおそれがある。上記構成によれば、アーマチャ(46)がステータコア(42)に当接する当接部を凸部(64)に限ることができるため、弁体(48)の開弁動作の管理が容易になる。また、上記凸部(64)は磁性体からなるステータコア(42)ではなく上記枠体(62)の端面に当接するため、ステータコア(42)の摩耗を抑制できる。さらに、凸部(64)は上記枠体(62)に対向する位置に形成されるため、アーマチャ(46)の径方向中心側に形成することができる。そのため、凸部(64)がアーマチャ(46)の径方向周辺側に形成される場合と比べて、アーマチャ(46)がステータコア(42)に当接するタイミングがアーマチャ(46)の水平方向に対する傾きの影響を受けにくくすることができる。
【0057】
4)さらに別な態様に係る電磁式アクチュエータ(40B)は、1)又は2)に記載の電磁式アクチュエータ(40)において、前記第1バネ部材(52)は、前記ステータコア(42)の径方向内側に配置されるとともに前記軸線方向に沿って延在し、かつ前記鍔部(50)に対向するように配置され、電磁式アクチュエータ(40B)は、前記第1バネ部材(52)と前記ステータコア(42)との間に配置されるとともに前記軸線方向に沿って延在し、かつ前記第1バネ部材(52)を囲むように配置された筒状の枠体(62)と、前記アーマチャ(46)の前記対向面(46a)に形成された環状の凹部(66)に嵌合された環状のスペーサ(68)であって、少なくとも前記枠体の端面に対向する位置において前記アーマチャ(46)の前記対向面(46a)より前記ステータコア(42)側に突出しているスペーサ(68)と、を備える。
【0058】
このような構成によれば、開弁動作時にアーマチャ(46)がステータコア(42)に当接する当接部を上記スペーサ(68)に限ることができるため、アーマチャ(46)がステータコア(42)に当接するタイミングのばらつきをなくすことができ、これによって、弁体(48)の開弁動作の管理が容易になる。また、スペーサ(68)は磁性体からなるステータコア(42)ではなく上記枠体(62)に当接するため、ステータコア(42)の摩耗を抑制できる。さらに、スペーサ(68)は上記枠体(62)に対向する位置に形成されるため、アーマチャ(46)の径方向中心側に形成することができる。そのため、スペーサ(68)がアーマチャ(46)の径方向周辺側に形成される場合と比べて、アーマチャ(46)がステータコア(42)に当接するタイミングがアーマチャ(46)の水平方向に対する傾きの影響を受けにくくすることができる。
【0059】
5)さらに別な態様に係る電磁式アクチュエータ(40)は、2)に記載の電磁式アクチュエータ(40)において、前記ケーシング(12)の内部において前記アーマチャ(46)に対して前記ステータコア(42)の反対側に配置されたアンカ部材(56)であって、前記第1貫通孔(46b)から前記ステータコア(42)とは反対側に突出した前記弁体(48)の軸部(48a)が挿入される、前記軸線方向に沿って延在する第2貫通孔(56a)を有するアンカ部材(56)をさらに備え、前記第2バネ部材(54)は、前記アーマチャ(46)の前記対向面(46a)とは反対側の面(46c)と、前記アンカ部材(46)の外周面(56b)に形成された段部(56c)との間に配置されている。
【0060】
このような構成によれば、第1貫通孔(46b)からステータコア(42)とは反対側に突出した弁体(48)の軸部(48a)が上記アンカ部材(56)の第2貫通孔(56a)に挿入され、アンカ部材(56)によって摺動可能に支持されるため、弁体(48)は開弁動作及び閉弁動作を行いながらアンカ部材(56)によって安定して支持される。また、第2バネ部材(54)は、アーマチャ(46)の対向面(46a)とは反対側の面(56c)と、アンカ部材(56)の外周面(56b)に形成された段部(56c)との間に介装されるため、アーマチャ(46)とアンカ部材(56)との間に安定して配置できると共に、アーマチャ(46)に対して弁体(48)の軸方向に沿うバネ力を正確に付勢することができる。
【0061】
6)一態様に係る燃料噴射装置(10)は、1)乃至5)のいずれかに記載の電磁式アクチュエータ(40)を備える。
【0062】
このような構成によれば、本開示に係る燃料噴射装置の一態様は、上述の構成を有する電磁式アクチュエータ(40)を備えるため、燃料噴射孔(22)から燃焼室に燃料を噴射するためにコイル(44)に通電された時、アーマチャ(46)がステータコア(42)に当接してステータコア(42)から受ける反発力によって、アーマチャ(46)がステータコア(42)側から離れる方向へ急峻的な動作を行っても、弁体(48)は、第1貫通孔(46b)に挿入されてアーマチャ(46)に対して軸線方向に沿って摺動自在に配置されているため、弁体(48)がアーマチャ(46)と連動して急峻的な閉弁動作を起こすのを抑制できる。これによって、燃料噴射の制御性が悪化するのを抑制できる。
【符号の説明】
【0063】
10 燃料噴射装置
12 ケーシング
12a 隔壁
14(14a、14b)、60 燃料通路
16 スプール
18 ピストン
20 ニードル弁
22 噴射孔
24 出口オリフィス(出口ポート)
25 入口オリフィス
26 バネ部材
28 段部
30 支持台
32 リーク通路
34 排出口
40(40A、40B) 電磁式アクチュエータ
42 ステータコア
42a 対向面
44 ソレノイドコイル
46 アーマチャ
46a 対向面
46b 第1貫通孔
46b1 上端縁
46c 裏面
46d リーク孔
46e 小径部
46f 平面
48 弁体
48a 軸部
48b 突出部
48b1 小径部
48c 突部
50 鍔部
50a、50b 対向面
52 第1バネ部材
54 第2バネ部材
56 アンカ部材
56a 第2貫通孔
56b 外周面
56c 段部
56d 小径部
56e 拡径部
58 リテーニングナット
62 枠体
64 凸部
66 凹部
68 スペーサ
68a 対向面
O 軸線
P 背圧室
第1空間
第2空間
f1、f2、f3 ピーク
t 突出量
図1
図2
図3
図4
図5