(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128779
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】監視システム、情報処理装置、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
G05B23/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037976
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】後藤 治久
(72)【発明者】
【氏名】清家 寛志
(72)【発明者】
【氏名】池田 七奈
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA02
3C223AA05
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223EB02
3C223FF04
3C223FF13
3C223FF16
3C223FF22
3C223FF42
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH08
(57)【要約】
【課題】ユーザが推定モデルの状態を把握することができるようにする。
【解決手段】監視システムが、運転情報の測定値、及び、運転情報の推定値を取得する取得部54と、測定値の時系列の履歴である測定値履歴50A、及び、推定値の時系列の履歴である推定値履歴50Bに基づき、測定値の変動の傾向と推定値の変動の傾向との相関性を示す評価値を算出する算出部56と、評価値に基づき、推定モデルの状態を判定する判定部58と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象装置を監視する監視システムであって、
前記監視対象装置の運転状況によって変動する当該監視対象装置の運転情報を推定するための推定モデルを記憶した記憶部と、
前記運転情報とは異なる前記監視対象装置の他の運転情報及び前記推定モデルに基づき、前記運転情報の値を推定値として推定する推定部と、
前記運転情報の測定値、及び、前記推定値を取得する取得部と、
前記測定値の時系列の履歴である測定値履歴、及び、前記推定値の時系列の履歴である推定値履歴に基づき、前記測定値の変動の傾向と前記推定値の変動の傾向との相関性を示す評価値を算出する算出部と、
前記評価値に基づき、前記推定モデルの状態を判定する判定部と、
を備える監視システム。
【請求項2】
前記算出部は更に、前記取得部により取得された前記測定値及び前記推定値の差異を表す差異値を算出し、
前記判定部は、前記差異値及び前記評価値に基づき、前記推定モデルの状態を判定する、
請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記記憶部には更に、第A閾値と第B閾値とが記憶されており、
前記判定部は、前記差異値が第A閾値以上であり、且つ、前記評価値が前記第B閾値未満である場合に、前記推定モデルが所定状態であると判定する、
請求項2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記記憶部には更に、前記第A閾値と同一の又は異なる第一閾値、及び、前記第B閾値と同一の又は異なる第二閾値とが記憶されており、
前記判定部は、
(A)前記差異値が第一閾値未満である場合に、前記監視対象装置が正常状態であると判定し、
(B)前記差異値が前記第一閾値以上であり、且つ、前記評価値が第二閾値以上である場合に、前記監視対象装置が異常状態であると判定し、
(C)前記差異値が前記第A閾値以上であり、且つ、前記評価値が前記第B閾値未満である場合に、前記推定モデルが前記所定状態として注意状態であると判定する、
請求項3に記載の監視システム。
【請求項5】
前記算出部は、前記測定値履歴のうち何れか一つの測定値を第一起点値として決定し、前記測定値履歴のうち当該第一起点値以外の複数の測定値と当該第一起点値との位置関係に基づいて測定値の第一変動値を算出し、且つ、前記推定値履歴のうち何れか一つの推定値を第二起点値として決定し、前記推定値履歴のうち当該第二起点値以外の複数の推定値と当該第二起点値との位置関係に基づいて推定値の第二変動値を算出し、当該第一変動値及び当該第二変動値に基づき、前記評価値を算出する、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の監視システム。
【請求項6】
前記判定部は、前記評価値に基づき、前記推定モデルの再学習が必要な状態か否かを判定する、
請求項4に記載の監視システム。
【請求項7】
前記記憶部には更に第三閾値が記憶されており、
前記判定部は、前記評価値が前記第A閾値以上となった回数を積算し、且つ、当該回数及び前記第三閾値に基づき、前記推定モデルの再学習が必要な状態か否かを判定する、
請求項6に記載の監視システム。
【請求項8】
前記記憶部には更に第三閾値が記憶されており、
前記判定部は、前記測定値履歴及び前記推定値履歴に基づき、前記評価値の移動平均の変化率を算出し、且つ、当該変化率及び前記第三閾値に基づき、前記推定モデルの再学習が必要な状態か否かを判定する、
請求項6に記載の監視システム。
【請求項9】
所定期間における前記評価値に基づいた値に前記第三閾値の設定を変更する設定部、
を更に備える請求項7又は8に記載の監視システム。
【請求項10】
時間の経過に応じて前記第一閾値又は前記第二閾値の設定を変更する設定部、
を更に備える請求項7又は8に記載の監視システム。
【請求項11】
前記判定部により前記推定モデルが前記注意状態であると判定された場合、その旨をユーザに通知する通知部、
を更に備える請求項4に記載の監視システム。
【請求項12】
前記判定部により前記推定モデルの再学習が必要な状態であると判定された場合、その旨をユーザに通知する通知部、
を更に備える請求項6に記載の監視システム。
【請求項13】
監視対象装置と通信可能な情報処理装置であって、
前記監視対象装置の運転状況によって変動する当該監視対象装置の運転情報、及び、当該運転情報の測定値、及び、当該運転情報の値が推定モデルにより推定された推定値を取得する取得部と、
前記測定値の時系列の履歴である測定値履歴、及び、前記推定値の時系列の履歴である推定値履歴に基づき、前記測定値の変動の傾向と前記推定値の変動の傾向との相関性を示す評価値を算出する算出部と、
前記評価値に基づき、前記推定モデルの状態を判定する判定部と、
を備える情報処理装置。
【請求項14】
監視対象装置と通信可能なコンピュータを、
前記監視対象装置の運転状況によって変動する当該監視対象装置の運転情報、及び、当該運転情報の測定値、及び、当該運転情報の値が推定モデルにより推定された推定値を取得する取得部、
前記測定値の時系列の履歴である測定値履歴、及び、前記推定値の時系列の履歴である推定値履歴に基づき、前記測定値の変動の傾向と前記推定値の変動の傾向との相関性を示す評価値を算出する算出部、
前記評価値に基づき、前記推定モデルの状態を判定する判定部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視システム、情報処理装置、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製油所では、発電タービンに複数設置されるバーナーの燃焼状態を監視するために温度計が設置されており、温度計が検出したバーナーの火炎の温度が所定の閾値以上になると異常と判定されている。
【0003】
これに関連する技術として、特許文献1には、ガスタービンの運転データを取得して、取得した測定データを推定モデルに入力してガスタービンの監視対象となるパラメータの推定値を算出し、運転データに含まれるパラメータの測定値と算出した推定値との差が閾値以上になると異常と判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、監視対象となるパラメータの測定値と推定値の差の大きさが判定対象となるが、例えば、推定モデルが、ある方向にバイアスがかかった推定値を算出するような状態の場合、測定値と推定値には常に一定の差が生じる可能性がある。このような場合に、両者の差が異常を表しているのか、推定モデルの状態によるものなのかを見分けて異常判定を行わなければ誤報につながる。例えば、測定値と推定値に閾値以上の差異値が生じていたとしても、両者の動きが同様の傾向を示せば、両者の差は、異常を示すものではない可能性がある。
【0006】
そこで、本開示はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザが推定モデルの状態を把握することができる監視システム、情報処理装置、及び、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様に係る監視システムは、監視対象装置を監視する監視システムであって、前記監視対象装置の運転状況によって変動する当該監視対象装置の運転情報を推定するための推定モデルを記憶した記憶部と、前記運転情報とは異なる前記監視対象装置の他の運転情報及び前記推定モデルに基づき、前記運転情報の値を推定値として推定する推定部と、前記運転情報の測定値、及び、前記推定値を取得する取得部と、前記測定値の時系列の履歴である測定値履歴、及び、前記推定値の時系列の履歴である推定値履歴に基づき、前記測定値の変動の傾向と前記推定値の変動の傾向との相関性を示す評価値を算出する算出部と、前記評価値に基づき、前記推定モデルの状態を判定する判定部と、を備える。
【0008】
本開示の別の態様に係る情報処理装置は、監視対象装置と通信可能な情報処理装置であって、前記監視対象装置の運転状況によって変動する当該監視対象装置の運転情報、及び、当該運転情報の測定値、及び、当該運転情報の値が推定モデルにより推定された推定値を取得する取得部と、前記測定値の時系列の履歴である測定値履歴、及び、前記推定値の時系列の履歴である推定値履歴に基づき、前記測定値の変動の傾向と前記推定値の変動の傾向との相関性を示す評価値を算出する算出部と、前記評価値に基づき、前記推定モデルの状態を判定する判定部と、を備える。
【0009】
本開示のさらに別の態様に係るプログラムは、監視対象装置と通信可能なコンピュータを、前記監視対象装置の運転状況によって変動する当該監視対象装置の運転情報、及び、当該運転情報の測定値、及び、当該運転情報の値が推定モデルにより推定された推定値を取得する取得部、前記測定値の時系列の履歴である測定値履歴、及び、前記推定値の時系列の履歴である推定値履歴に基づき、前記測定値の変動の傾向と前記推定値の変動の傾向との相関性を示す評価値を算出する算出部、前記評価値に基づき、前記推定モデルの状態を判定する判定部、として機能させる。
【0010】
なお、本開示は、プログラムの一部または全部を実現する半導体集回路として実現され得たり、情報処理装置として実現され得たり、情報処理装置を含むシステムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ユーザが推定モデルの状態を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る監視システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2A】判定対象情報である温度の測定値及び推定値の一例を示す図である。
【
図2B】判定対象情報である温度の測定値及び推定値の他の例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る監視装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る監視装置の機能的構成の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る監視装置の監視処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7A】測定値の一例を示す図であって、第一変動値の算出方法を示す図である。
【
図7B】推定値の一例を示す図であって、第二変動値の算出方法を示す図である。
【
図7C】第一変動値と第二変動値の二次元プロット図の一例を示す図であって、ずれ度合の算出方法を示す図である。
【
図8A】判定対象情報である温度の測定値、推定値、及び、バイアス評価指数の一例を示す図である。
【
図8B】判定対象情報である温度の測定値、推定値、及び、バイアス評価指数の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初に、本開示のいくつかの態様について説明する。
【0014】
本開示の第1態様に係る監視システムは、監視対象装置を監視する監視システムであって、前記監視対象装置の運転状況によって変動する当該監視対象装置の運転情報を推定するための推定モデルを記憶した記憶部と、前記運転情報とは異なる前記監視対象装置の他の運転情報及び前記推定モデルに基づき、前記運転情報の値を推定値として推定する推定部と、前記運転情報の測定値、及び、前記推定値を取得する取得部と、前記測定値の時系列の履歴である測定値履歴、及び、前記推定値の時系列の履歴である推定値履歴に基づき、前記測定値の変動の傾向と前記推定値の変動の傾向との相関性を示す評価値を算出する算出部と、前記評価値に基づき、前記推定モデルの状態を判定する判定部と、を備える。
【0015】
本開示の第2態様に係る監視システムでは、第1態様において、前記算出部は更に、前記取得部により取得された前記測定値及び前記推定値の差異を表す差異値を算出し、前記判定部は、前記差異値及び前記評価値に基づき、前記推定モデルの状態を判定する。
【0016】
本開示の第3態様に係る監視システムでは、第2態様において、前記記憶部には更に、第A閾値と第B閾値とが記憶されており、前記判定部は、前記差異値が第A閾値以上であり、且つ、前記評価値が前記第B閾値未満である場合に、前記推定モデルが所定状態であると判定する。
【0017】
本開示の第4態様に係る監視システムでは、第3態様において、前記記憶部には更に、前記第A閾値と同一の又は異なる第一閾値、及び、前記第B閾値と同一の又は異なる第二閾値とが記憶されており、前記判定部は、
(A)前記差異値が第一閾値未満である場合に、前記監視対象装置が正常状態であると判定し、
(B)前記差異値が前記第一閾値以上であり、且つ、前記評価値が第二閾値以上である場合に、前記監視対象装置が異常状態であると判定し、
(C)前記差異値が前記第A閾値以上であり、且つ、前記評価値が前記第B閾値未満である場合に、前記推定モデルが前記所定状態として注意状態であると判定する。
【0018】
本開示の第5態様に係る監視システムでは、第1態様乃至第4態様の何れか1つの態様において、前記算出部は、前記測定値履歴のうち何れか一つの測定値を第一起点値として決定し、前記測定値履歴のうち当該第一起点値以外の複数の測定値と当該第一起点値との位置関係に基づいて測定値の第一変動値を算出し、且つ、前記推定値履歴のうち何れか一つの推定値を第二起点値として決定し、前記推定値履歴のうち当該第二起点値以外の複数の推定値と当該第二起点値との位置関係に基づいて推定値の第二変動値を算出し、当該第一変動値及び当該第二変動値に基づき、前記評価値を算出する。
【0019】
本開示の第6態様に係る監視システムでは、第4態様において、前記判定部は、前記評価値に基づき、前記推定モデルの再学習が必要な状態か否かを判定する。
【0020】
本開示の第7態様に係る監視システムでは、第6態様において、前記記憶部には更に第三閾値が記憶されており、前記判定部は、前記評価値が前記第A閾値以上となった回数を積算し、且つ、当該回数及び前記第三閾値に基づき、前記推定モデルの再学習が必要な状態か否かを判定する。
【0021】
本開示の第8態様に係る監視システムでは、第6態様において、前記記憶部には更に第三閾値が記憶されており、前記判定部は、前記測定値履歴及び前記推定値履歴に基づき、前記評価値の移動平均の変化率を算出し、且つ、当該変化率及び前記第三閾値に基づき、前記推定モデルの再学習が必要な状態か否かを判定する。
【0022】
本開示の第9態様に係る監視システムは、第7態様又は第8態様において、所定期間における前記評価値に基づいた値に前記第三閾値の設定を変更する設定部、を更に備える。
【0023】
本開示の第10態様に係る監視システムは、第7態様又は第8態様において、時間の経過に応じて前記第一閾値又は前記第二閾値の設定を変更する設定部、を更に備える。
【0024】
本開示の第11態様に係る監視システムは、第4態様において、前記判定部により前記推定モデルが前記注意状態であると判定された場合、その旨をユーザに通知する通知部、を更に備える。
【0025】
本開示の第12態様に係る監視システムは、第6態様において、前記判定部により前記推定モデルの再学習が必要な状態であると判定された場合、その旨をユーザに通知する通知部、を更に備える。
【0026】
本開示の第13態様に係る情報処理装置は、監視対象装置と通信可能な情報処理装置であって、前記監視対象装置の運転状況によって変動する当該監視対象装置の運転情報、及び、当該運転情報の測定値、及び、当該運転情報の値が推定モデルにより推定された推定値を取得する取得部と、前記測定値の時系列の履歴である測定値履歴、及び、前記推定値の時系列の履歴である推定値履歴に基づき、前記測定値の変動の傾向と前記推定値の変動の傾向との相関性を示す評価値を算出する算出部と、前記評価値に基づき、前記推定モデルの状態を判定する判定部と、を備える。
【0027】
本開示の第14態様に係るプログラムは、監視対象装置と通信可能なコンピュータを、前記監視対象装置の運転状況によって変動する当該監視対象装置の運転情報、及び、当該運転情報の測定値、及び、当該運転情報の値が推定モデルにより推定された推定値を取得する取得部、前記測定値の時系列の履歴である測定値履歴、及び、前記推定値の時系列の履歴である推定値履歴に基づき、前記測定値の変動の傾向と前記推定値の変動の傾向との相関性を示す評価値を算出する算出部、前記評価値に基づき、前記推定モデルの状態を判定する判定部、として機能させる。
【0028】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態(以下、適宜、「本実施形態」と称す。)について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素及びステップに対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0029】
<全体構成>
図1は、本実施形態に係る監視システム2の全体構成の一例を示す図である。
【0030】
図1に示すように、監視システム2は、監視対象装置4と、推定装置6(推定部)と、監視装置10(情報処理装置)と、を備える。これらの監視対象装置4、推定装置6、監視装置10は、有線又は無線にて互いに通信可能に接続されている。
【0031】
監視システム2は、監視対象装置4の状態及び運転情報を判定して監視する監視システムである。監視システム2は、後述する推定モデル6Aの状態を判定する監視システムでもある。以下では、監視システム2が判定する運転情報を「判定対象情報」と称すことがある。
【0032】
監視対象装置4は、例えば、発電タービン、圧縮機、ボイラ、製油所などの各種プラント設備である。この監視対象装置4には、監視対象装置4の運転状況を示す状態量を測定する一又は複数の測定器4Aが設けられている。本実施形態では、複数の測定器4Aが設けられている。測定器4Aとしては、温度計、圧力計、振動計、流量計、回転計、電流計、及び、電圧計等が挙げられる。この測定器4Aが測定した、温度、圧力、振動、流量、回転数、電流値、及び、電圧値等の測定値や、起動、停止、運転負荷などの監視対象装置4の運転状況を示す各種の信号は、監視対象装置4から推定装置6及び監視装置10へ時々刻々と送信される。各種の測定値及び各種の信号を運
転情報(プロセスデータ)と呼ぶ。
【0033】
推定装置6は、不図示の記憶部を備えている。この記憶部には、監視対象装置4の運転状況によって変動する当該監視対象装置4の運転情報を推定するための一又は複数の推定モデル6Aが記憶されている。本実施形態では、記憶部には、測定器4A毎に推定モデル6Aが記憶されている。推定装置6は、監視対象装置4から各種の運転情報を受信し、受信した各種の運転情報のうち監視対象装置4の判定対象情報となる運転情報とは異なる1つ又は複数の他の運転情報と、測定器4Aに対応する推定モデル6Aとに基づき、判定対象情報である運転情報の値を推定値として推定し、その推定値を監視装置10へ送信する推定部として機能する。
【0034】
なお、この推定部の機能は、監視装置10に設けられてもよい。このような監視装置10は、例えば、監視対象装置4から各種の運転情報を受信するとともに、推定モデル6Aを後述の記憶部50に記憶している。この場合、監視装置10が推定部としての機能を実現できるため、監視システム2は推定装置6を省略することができる。
【0035】
推定モデル6Aとしては、機械学習モデルや関数の他、判定対象情報である運転情報及び当該運転情報とは異なる1つ又は複数の他の運転情報との対応関係を示した関係テーブル等が挙げられる。以下では、推定モデル6Aが、監視対象装置4が正常な状態で運転しているときに受信した各種の運転情報を学習データとして機械学習によって訓練された機械学習モデルである場合を説明する。この機械学習モデルでは、ある時刻に受信した(測定された)他の運転情報が入力されると、その時刻の判定対象情報である運転情報の推定値を出力するようになっている。
【0036】
監視装置10は、監視対象装置4を監視する装置である。監視装置10は、推定モデル6Aの状態を判定する装置でもある。この監視装置10は、監視対象装置4から取得した判定対象情報である運転情報(例えば、温度)の測定値と、推定装置6から取得した判定対象情報である運転情報の推定値との差異を表す差異値に基づいて、判定対象情報である運転情報が正常か異常かを判定し、この結果、監視対象装置4が正常か異常かを判定する。また、本実施形態では、監視装置10は、判定対象情報である運転情報の測定値とその推定値とに基づいて推定モデル6Aの状態を判定する。なお、差異値としては、測定値と推定値との差分、測定値と推定値の差分を補正した値、測定値を推定値で除算した値、推定値を測定値で除算した値等が挙げられる。
【0037】
具体的には、判定対象情報の測定値と推定値の差異値が所定の第一閾値未満であれば、監視装置10は、判定対象情報又は監視対象装置4が正常であると判定する。また、判定対象情報の測定値と推定値のトレンドが似通っている場合、つまり、測定値と推定値の時系列的な変動の相関性が強い場合は、判定対象情報の測定値と推定値との間の差異値が第一閾値以上であるときであっても、監視装置10は、その差異値が監視対象装置4の異常に由来するものではないと判定する。即ち、監視装置10は、測定値と推定値の差異値が推定モデル6Aのバイアスに由来すると判定し、推定モデル6Aに対して注意を要する状態であると判定する。また、測定値と推定値の差異値が第一閾値以上であって、且つ、測定値と推定値の時系列的な変動の相関性が強くない場合には、監視装置10は、判定対象情報又は監視対象装置4が異常であると判定する。このように、監視装置10は、判定対象情報の測定値と推定値との間の差異値が第一閾値以上である場合に、その差異値が、監視対象装置4の異常に由来しているのか、又は、推定モデル6Aのバイアスに由来しているのか、を判別する。即ち、監視装置10は、判定対象情報の測定値と推定値との間の差異値と、測定値と推定値の時系列的な変動の相関性と、に基づいて、監視対象装置4及び推定モデル6Aの状態を判定する。
【0038】
本開示において「バイアス」とは、判定対象情報の値において、測定器4Aが測定した測定値に対する推定モデル6Aから出力される推定値の偏りである。このような推定値の偏りは、例えば、推定モデル6Aを生成したときに用いたデータにおける監視対象装置4又は測定器4Aの状態と、生成された推定モデル6Aに基づいて推定値を算出したときに用いたデータにおける監視対象装置4又は測定器4Aの状態と、の差異によって生じる。このような状態の差異が生じる例としては、監視対象装置4又は測定器4Aの経年劣化が挙げられる。
【0039】
図2Aは、判定対象情報である温度の測定値及び推定値の一例を示す図である。
図2Bは、判定対象情報である温度の測定値及び推定値の他の例を示す図である。
図2Aと
図2Bの縦軸は温度(判定対象情報)、横軸は時間である。グラフL1(実線)は判定対象情報の測定値の推移を表し、グラフL2(破線)は判定対象情報の推定値の推移を表す。以下、
図2A及び
図2Bを用いて、監視装置10による監視対象装置4及び推定モデル6Aの状態の判定についてより具体的に説明する。
【0040】
図2Aに示される例では、グラフL1とグラフL2が示す各時刻における温度の差はほとんど無い。このような場合は、第一閾値を適切に設定すると、測定値と推定値の差異値が第一閾値未満となり、監視対象装置4は正常であると判定される。
図2Bに示される例では、
図2Aで示した場合と比べて、グラフL1とグラフL2が示す各時刻における温度に差がある。この差が設定された第一閾値以上であれば監視対象装置4が異常と判定され得るが、グラフL1とグラフL2の時系列的な変動の傾向は類似している。判定対象情報の推定値は、推定モデル6Aのバイアスの影響が存在すると考えると、測定値と推定値の差異値が第一閾値以上である場合であっても、一概に監視対象装置4の異常を示しているとは言い切れない。測定値と推定値の差異値が第一閾値以上である場合、監視装置10は、測定値と推定値との差異値が監視対象装置4の異常に由来しているのか、又は推定モデル6Aのバイアスに由来しているのかを判定するために、バイアス評価指数を算出する。
【0041】
バイアス評価指数は、測定値と推定値とに基づいて算出される値である。バイアス評価指数の算出方法の詳細は、後述される。バイアス評価指数は、推定モデル6Aに対する評価値の一例である。バイアス評価指数は、バイアスの発生度合を評価するための評価値の一例である。バイアス評価指数は、測定値の変動の傾向と推定値の変動の傾向との相関性を示す評価値の一例である。バイアス評価指数は、その値が大きいほど測定値の変動の傾向と推定値の変動の傾向との相関性が低いことを表し、その値が小さいほど測定値の変動の傾向と推定値の変動の傾向との相関性が高いことを表す。よって、測定値と推定値の差異値は、バイアス評価指数の値が大きいほど監視対象装置4の異常に由来することが示唆され、バイアス評価指数の値が低いほど推定モデル6Aのバイアスに由来することが示唆される。したがって、バイアス評価指数に対して後述する第2閾値を適切に設定することで、監視装置10は、測定値と推定値の差異値が第一閾値以上である場合に、その差異値が監視対象装置4の異常に由来するか、又は、推定モデル6Aのバイアスに由来するか、を判定できる。
【0042】
以下では、この推定モデル6Aの状態(バイアス)の判定を実現するための監視装置10のハードウェア構成や機能的構成について説明する。
【0043】
<ハードウェア構成>
図3は、本実施形態に係る監視装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0044】
図3に示すように、監視装置10は、プロセッサ20と、メモリ22と、入力装置24と、表示装置26と、記憶装置28と、通信装置30と、を備える。監視装置10は、監視装置10は、プロセッサ20と、メモリ22と、入力装置24と、表示装置26と、記憶装置28と、通信装置30とおよびこれらを接続するバスなどを含むコンピュータ装置として構成されている。なお、監視装置10は、
図3に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されていてもよいし、一部の装置を含まずに構成されていてもよい。
【0045】
プロセッサ20は、各種データを演算処理したり、表示装置26等含めてた監視装置10を制御処理したりする。プロセッサ20は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央演算装置(CPU: Central Processing Unit)によって構成されてもよい。プロセッサ20は、監視装置10における処理の実行に必要なプログラム等を、記憶装置28と通信装置30の少なくとも一方からメモリ22に読み出し、これらに従って処理を実行する。
【0046】
メモリ22は、コンピュータ可読記憶媒体であり、例えば、ROM(Read only memory)、EPROM(Erasable Program ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Program ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ22は、各種データを格納したり、監視装置10における処理の実行に必要なプログラム(プログラムコード)等を格納したりする。
【0047】
入力装置24は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、等)である。入力装置23は、ユーザの操作を受け付けて、当該操作を監視装置10に入力する。
【0048】
表示装置26は、外部への出力を実施する表示デバイス(例えば、ディスプレイ等)である。表示装置26は、文字や画像を出力する。
【0049】
記憶装置28は、非一時的コンピュータ可読命令記録媒体としてのハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等で構成される。この記憶装置28は、本実施形態に係るプログラムを含む、監視装置10における処理の実行に必要な各種プログラムや各種の情報、及び処理結果の情報を記憶する。また、記憶装置28は、推定装置6が省略される場合(監視装置10が推定部としての機能を有する場合)、推定モデル6Aを記憶する。なお、非一時的コンピュータ可読命令記録媒体としては、他にも、磁気テープやフレキシブルディスク、光ディスク、デジタルバーサタイルディスク、ブルーレイディスク、光磁気ディスク、メモリーカード、USBメモリ等の可搬型記録媒体が挙げられる。
【0050】
通信装置30は、外部の装置と通信するための通信インターフェース等で構成される。通信装置30は、有線ネットワークおよび無線ネットワークの少なくとも一方を介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)である。通信装置30は、例えば、ネットワークデバイス、ネットワークインタフェースカード、ネットワークコントローラ、ネットワークモジュール、通信モジュールなどとも呼ばれる。通信装置30は、例えば、監視対象装置4や推定装置6との間で各種の情報を送受信する。
【0051】
なお、監視装置10は、専用又は汎用のサーバ・コンピュータなどの情報処理装置を用いて実現することができる。また、監視装置10は、単一の情報処理装置より構成されるものであっても、通信ネットワーク上に分散した複数の情報処理装置より構成されるものであってもよい。また、
図3は、監視装置10が有する主要なハードウェア構成の一部を示しているに過ぎず、監視装置10は、サーバが一般的に備える他の構成を備えることができる。また、推定装置6のハードウェア構成も、監視装置10と同様の構成を備えることができる。
【0052】
<機能的構成>
図4は、本実施形態に係る監視装置10の機能的構成の一例を示す図である。
【0053】
図4に示すように、監視装置10は、機能的構成として、記憶部50と、出力制御部52と、取得部54と、算出部56と、判定部58と、通知部60と、設定部62と、を備える。これらの機能的構成は、プロセッサ20がプログラムをメモリ22に読み出して実行することにより実現される。なお、これらの機能的構成の機能のうち少なくとも一部の機能を実装したプログラムが、複数台のコンピュータのストレージにインストールされてもよい。複数台のコンピュータのプロセッサは、自機にインストールされたプログラムをメモリに読み出して実行することにより、複数の機能的構成の機能を発揮してもよい。すなわち、複数の機能的構成の機能は、複数台のコンピュータにより分散して実行されてもよい。
【0054】
記憶部50は、測定値履歴50Aと、推定値履歴50Bと、閾値群50Cと、を記憶する。測定値履歴50Aは、判定対象情報の測定値の時系列の履歴である。推定値履歴50Bは、判定対象情報の推定値の時系列の履歴である。閾値群50Cは、測定値と推定値の差異値に関する第一閾値を含む。この他に、閾値群50Cは、評価値に関する第二閾値、推定モデル6Aの再学習を判定するための第三閾値、並びに、推定モデル6Aの状態を判定するための第A閾値及び第B閾値を含む。なお、第一閾値は、第A閾値と同一であるか、略同一であるか又は異ってもよい。同様に、第二閾値は、第B閾値と同一であるか、略同一であるか又は異なってもよい。
【0055】
出力制御部52は、ユーザに対して監視画面や各種情報を出力制御する。
【0056】
取得部54は、運転情報の測定値、及び、その推定値を取得する。例えば、測定値については、取得部54が監視対象装置4から取得し、推定値については、取得部54が推定装置6から取得する。なお、測定値及び推定値の両方とも、取得部54が推定装置6から取得してもよい。また、測定値については、取得部54が監視対象装置4から取得し、推定値については、監視装置10の記憶部50から取得してもよい。
【0057】
算出部56は、測定値履歴50A及び推定値履歴50Bに基づき、測定値の変動の傾向と推定値の変動の傾向との相関性を示すバイアス評価指数を算出する。算出部56は更に、取得部54により取得された測定値及び推定値の差異値を算出する。
【0058】
バイアス評価指数の算出方法として具体的には、算出部56は、測定値履歴50Aのうち何れか一つの測定値を第一起点値として決定し、測定値履歴50Aのうち当該第一起点値以外の複数の測定値と当該第一起点値との位置関係に基づいて測定値の第一変動値を算出する。同様に、算出部56は、推定値履歴50Bのうち何れか一つの推定値を第二起点値として決定し、推定値履歴50Bのうち当該第二起点値以外の複数の推定値と当該第二起点値との位置関係に基づいて推定値の第二変動値を算出する。そして、算出部56は、当該第一変動値及び当該第二変動値に基づき、バイアス評価指数を算出する。
【0059】
なお、第一起点値は、現在の測定値であっても、過去の測定値であってもよい。同様に、第二起点値は、現在の推定値であっても、過去の推定値であってもよい。また、第一変動値の算出に利用される、第一起点値以外の測定値の点数は任意であってよい。同様に、第二変動値の算出に利用される、第二起点値以外の推定値の点数は任意であってよい。例えば、発電タービンのように複数のバーナーが存在するような場合、各バーナーについて測定値と推定値のバイアス評価指数を算出するのであれば、1つのバーナーあたりの点数を少なくして計算負荷を低減するようにしてもよい。また、運転員など知見を有する者が、判定対象情報の特性に基づいてデータ点数を決定してもよい。例えば、長期の変動の傾向を見る必要がある場合には、比較的多くの点数を選択するようにして長期的な変動に基づいてバイアス評価指数を算出してもよい。短期の変動を見るだけで良い場合には、なるべく少ない点数を選択するようにしてバイアス評価指数を算出するようにしてもよい。利用される点数を適切に設定することで、異常判定するための時間を少なくすることができ、異常判定のために蓄積しなければならないデータ(測定値履歴50A及び推定値履歴50B)を少なくすることができる。
【0060】
判定部58は、バイアス評価指数に基づき、推定モデル6Aの状態を判定する。具体的には、判定部58は、測定値と推定値の差異値及びバイアス評価指数に基づき、推定モデル6Aの状態を判定する。より具体的には、判定部58は、測定値と推定値の差異値が第A閾値以上であり、且つ、バイアス評価指数が第B閾値未満である場合に、推定モデル6Aが所定状態であると判定する。所定状態としては、例えば、推定モデル6Aにバイアスがある注意状態や、推定モデル6Aを再学習すべき状態等が挙げられる。ここで注意状態とは、測定値と推定値の時系列的な変動の傾向は概ね一致しているため、測定値と推定値の差異値が、監視対象装置4の異常に由来するのではなく、推定モデル6Aに由来するものである、と判定された状態であることを意味する。即ち、注意状態とは、推定モデル6Aを用いた判定結果の信頼度が十分でない可能性がある(例えば、経年変化などにより、推定モデル6Aを構築したときの監視対象装置4と現在の監視対象装置4の特性に乖離がある。)ことを意味している。なお、「推定モデル6Aを再学習する」とは、機械学習に限られず、推定モデル6Aの関数やその係数を再設定する意味も含むものとする。
【0061】
また、判定部58は、測定値と推定値の差異値及びバイアス評価指数に基づき、推定モデル6Aの状態だけでなく、監視対象装置4の状態も判定することが好ましい。具体的には、判定部58は、
(A)測定値と推定値の差異値が第一閾値未満である場合に、監視対象装置4が正常状態であると判定し、
(B)測定値と推定値の差異値が第一閾値以上であり、且つ、バイアス評価指数が第二閾値以上である場合に、監視対象装置4が異常状態であると判定し、
(C)測定値と推定値の差異値が第A閾値以上であり、且つ、バイアス評価指数が第B閾値未満である場合に、推定モデル6Aが所定状態として注意状態であると判定する。
【0062】
また、判定部58は、バイアス評価指数に基づき、推定モデル6Aの再学習が必要な状態か否かを判定する。
【0063】
また、判定部58は、バイアス評価指数が第A閾値以上となった回数を積算し、且つ、当該回数及び第三閾値に基づき、機械学習モデルの状態として、推定モデルの再学習が必要な状態か否かを判定する。
【0064】
通知部60は、判定部58により推定モデル6Aが注意状態であると判定された場合、その旨をユーザに通知する。また、通知部60は、判定部58により推定モデル6Aの再学習が必要な状態であると判定された場合、その旨をユーザに通知してもよい。通知する方法としては、その旨を、監視装置10の表示画面に表示出力したり、監視装置10等にメールしたり、ユーザの携帯電話にプッシュ通知したりしてもよい。
【0065】
設定部62は、ユーザの操作に応じて閾値群50Cの各種閾値を設定し、記憶部50に記憶する。また、設定部62は、監視対象装置4や、測定器4A、測定値履歴50A、推定値履歴50B、バイアス評価指数、日時、期間等に基づき、各種閾値の設定を自動的に変更してもよい。具体的には、設定部62は、所定期間毎に、当該所定期間におけるバイアス評価指数に応じた値に第三閾値の設定を自動的に変更する。例えば、所定期間におけるバイアス評価指数の変動が大きい場合には、推定モデル6Aに何等か原因があり再学習すべきであるとみなして、第三閾値の設定を小さい値に変更する。また、所定期間におけるバイアス評価指数の変動が小さい場合には、推定モデル6Aについて再学習する必要性は低いとみなして、第三閾値の設定を大きい値に変更する。また、設定部62は、時間の経過に応じて第一閾値又は第二閾値の設定を自動的に変更してもよい。例えば、時間の経過に応じて判定対象情報以外の原因で測定値と推定値との差異値が大きくなる場合、設定部62は、時間の経過に応じて第一閾値が徐々に大きくなるように第一閾値の設定を自動的に変更してもよい。また、時間の経過に応じて推定モデル6A以外の原因でバイアス評価指数が大きくなる場合、設定部62は、時間の経過に応じて第二閾値が徐々に大きくなるように第二閾値の設定を自動的に変更してもよい。また、設定部62は、時間の経過に応じて第A閾値又は第B閾値の設定を自動的に変更してもよい。
【0066】
<監視処理の流れ>
図5は、本実施形態に係る監視装置10の監視処理の一例を示すフローチャートである。なお、以下のステップの内容及び順番は適宜変更することができる。
【0067】
(ステップSP10)
出力制御部52は、ユーザの操作に応じて、監視対象装置4を監視するための監視画面を表示装置26に出力制御する。
【0068】
【0069】
図6に示すように、監視画面100は、監視ボタン102と、中断ボタン104と、終了ボタン106と、監視結果表示欄108と、グラフ表示欄110と、を含む。
【0070】
監視ボタン102は、監視対象装置4の監視を開始するためのボタンである。中断ボタン104は、監視対象装置4の監視を中断するためのボタンである。終了ボタン106は、監視対象装置4の監視を終了するためのボタンである。監視結果表示欄108は、監視結果を表示するための表示欄である。監視結果表示欄108には、選択ボックス108Aと、名前表示欄108Bと、測定値表示欄108Cと、推定値表示欄108Dと、差分表示欄108Eと、バイアス評価指数表示欄108Fと、判定結果表示欄108Gと、を含む。選択ボックス108Aは、グラフ表示欄110に表示する判定対象情報を選択するためのボックスである。名前表示欄108Bは、監視対象装置4に設けられた測定器4Aの名前である。測定値表示欄108Cは、判定対象情報としての温度の測定値である。推定値表示欄108Dは、判定対象情報としての温度の測定値である。差分表示欄108Eは、測定値表示欄108Cと推定値表示欄108Dとの差である。バイアス評価指数表示欄108Fは、測定値表示欄108Cの変動の傾向と推定値表示欄108Dの変動の傾向との相関性を示す評価値である。判定結果表示欄108Gは、判定対象情報が正常状態なのか異常状態なのか、推定モデル6Aが注意状態なのか判定された結果を示すものである。グラフ表示欄110は、選択ボックス108Aで選択された判定対象情報の測定値表示欄108Cと推定値表示欄108Dの推移を表すグラフである。
【0071】
図5に戻って、処理は、ステップSP12の処理に移行する。
【0072】
(ステップSP12)
出力制御部52は、監視ボタン102が押下されたか否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定された場合には処理はステップSP14の処理に移行し、当該判定が否定判定された場合には処理はステップSP10の処理に戻る。
【0073】
(ステップSP14)
取得部54は、監視対象装置4から、直前の時刻において測定器4Aにて測定された判定対象情報の測定値を取得する。ここで、推定装置6は、取得部54と同様に、監視対象装置4から判定対象情報の測定値を取得する。そして、推定装置6は、取得した測定値を推定モデル6Aに入力し、当該推定モデル6Aから出力された値を判定対象情報の推定値とすることで、直前の時刻の測定値に対する推定値を推定する。そして、取得部54は、推定装置6から、上記判定対象情報の推定値を取得する。最後に、取得部54は、取得した測定値を記憶部50の測定値履歴50Aに記憶し、取得した推定値を記憶部50の推定値履歴50Bに記憶する。そして、処理は、ステップSP16の処理に移行する。
【0074】
(ステップSP16)
算出部56は、現在の測定値及びその推定値を記憶部50から読み出して取得し、測定値と推定値との差異値として差分を算出する。そして、処理は、ステップSP18の処理に移行する。
【0075】
(ステップSP18)
判定部58は、算出部56により算出された差分が、閾値群50Cに含まれる第一閾値(=第A閾値)未満か否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定された場合には処理はステップSP20の処理に移行し、当該判定が否定判定された場合には処理はステップSP24の処理に移行する。
【0076】
(ステップSP20)
判定部58は、ステップSP18にて肯定判定された場合、すなわち、現在の測定値と推定値の差分が第一閾値未満である場合、監視対象装置4(の判定対象情報)が正常状態であると判定する。そして、通知部60は、監視対象装置4が正常状態である旨を監視画面100の判定結果表示欄108Gに表示制御することでユーザに通知する。そして、処理はステップSP22の処理に移行する。
【0077】
(ステップSP22)
判定部58は、終了ボタン106が押下されたか否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定された場合には
図5に示す一連の処理が終了し、当該判定が否定判定された場合には処理はステップSP14の処理に戻る。
【0078】
(ステップSP24)
ステップSP18で否定判定された場合、すなわち、測定値と推定値の差分が第一閾値以上の場合、算出部56は、測定値履歴50A及び推定値履歴50Bに基づき、判定対象情報に係る推定モデル6Aのバイアス評価指数を算出する。具体的には、算出部56は、以下のステップSP24A~ステップSP24Cのサブルーチン処理によりバイアス評価指数を算出する。
【0079】
(ステップSP24A)
算出部56は、測定値履歴50Aのうち何れか一つの測定値を第一起点値として決定し、測定値履歴50Aのうち当該第一起点値以外の測定値と当該第一起点値との位置関係に基づいて測定値の第一変動値を算出する。また、算出部56は、推定値履歴50Bのうち何れか一つの推定値を第二起点値として決定し、推定値履歴50Bのうち当該第二起点値以外の推定値と当該第二起点値との位置関係に基づいて推定値の第二変動値を算出する。
【0080】
図7Aは、測定値の一例を示す図であって、第一変動値の算出方法を示す図である。
【0081】
図7Aに示すように、算出部56は、測定値履歴50Aのうち例えば直前の時刻t6の測定値P16を第一起点値として決定する。また、算出部56は、測定値履歴50Aのうち直前の時刻t6より過去の判定対象情報の測定値の中から所定個(例えば直近の5個の測定値P11~P15)を選択する。そして、算出部56は、第一起点値から、選択した所定個の測定値P11~P15までの符号付き距離を第一変動値としてそれぞれ算出し、算出した第一変動値を、それぞれ時刻t1~t5と対応付けて記憶部50に記憶する。
【0082】
ここで、符号付き距離とは、第一起点値から対象となる測定値に対応する点までの距離にプラス符号(+1)又はマイナス符号(-1)を乗じた値である。対象とする点の測定値が、第一起点値の測定値よりも大きければ+1を乗じ、小さければ-1を乗じる。第一起点値の測定値と対象とする点の測定値が等しい場合には+1を乗じる(-1を乗じてもよい。)。例えば、算出部56は、第一起点値としての測定値P16から測定値P12までの距離D162を算出し、測定値P12が測定値P16より小さいので-1を乗じて-D162を、測定値P16から測定値P12までの符号付き距離として算出する。点P11についても同様である。また、算出部56は、第一起点値としての測定値P16から測定値P15までの距離D165を算出し、測定値P15が測定値P16より大きいので+1を乗じて+D165を、測定値P16から測定値P15までの符号付き距離として算出する。測定値P13、P14についても同様である。
【0083】
図7Bは、推定値の一例を示す図であって、第二変動値の算出方法を示す図である。
【0084】
図7Bに示すように、算出部56は、推定値履歴50Bのうち例えば直前の時刻t6の推定値P26を第二起点値として決定する。また、算出部56は、推定値履歴50Bのうち直前の時刻t6より過去の判定対象情報の推定値の中から所定個(例えば直近の5個の推定値P21~P25)を選択する。そして、算出部56は、第二起点値から、選択した所定個の推定値P21~P25までの符号付き距離を第二変動値としてそれぞれ算出し、算出した第二変動値を、それぞれ時刻t1~t5と対応付けて記憶部50に記憶する。
【0085】
例えば、算出部56は、第二起点値としての推定値P26と推定値P22の距離D262を算出し、推定値P22が推定値P26より小さいので-1を乗じて-D226を、推定値P26から推定値P22への符号付き距離として算出する。推定値P21についても同様である。また、算出部56は、第二起点値としての推定値P26と推定値P25の距離D265を算出し、推定値P25が推定値P26より大きいので+1を乗じて+D265を、推定値P26から推定値P25までの符号付き距離として算出する。推定値P23、P24についても同様である。
【0086】
図5に戻って、処理は、ステップSP24Bの処理に移行する。
【0087】
(ステップSP24B)
算出部56は、第一変動値と第二変動値に基づき、測定値と推定値の変動の傾向のずれ度合を算出する。
【0088】
図7Cは、第一変動値と第二変動値の二次元プロット図の一例を示す図であって、ずれ度合の算出方法を示す図である。
【0089】
図7Cでは、横軸(X軸)を第一変動値とし縦軸(Y軸)を第二変動値とする二次元座標空間に、第一変動値と第二変動値との対応関係、すなわち測定値と推定値の符号付き距離がプロットされている。例えば、時刻tの測定値の符号付き距離が+5、時刻tの推定値の符号付き距離が+4であれば、二次元座標空間の座標位置(5、4)に時刻tにおける第一変動値と第二変動値の対応関係を示す点がプロットされる。ここで、ある時刻tの測定値の第一変動値と推定値の第二変動値が同じ値であれば、これらの関係性を示す点は、y=xの直線上にプロットされる。つまり、測定値と推定値が、時系列的に全く同じ変動をしていれば、各時刻における推定値と測定値の差に関係なく、測定値の第一変動値と推定値の第二変動値の関係性を表す点は、y=xの直線上にプロットされる。反対に、測定値と推定値の変動の傾向に差があれば、この直線から外れる。
図7CのP31は、
図7AのP11と
図7BのP21の符号付き距離に基づいてプロットされた点である。同様に、P32、P33、P34、P35はそれぞれ、P12とP22、P13とP23、P14とP24、P15とP25の符号付き距離に基づいてプロットされた点である。なお、推定値と測定値の座標軸をどちらの方向に取るかについては、任意に設定することができる。
【0090】
上述の通り、測定値の時系列的な変動の傾向と推定値の時系列的な変動の傾向が同じであれば、P31~P35はy=x上に乗る。言い換えれば、P31~P35のy=xからの距離(垂線の長さ)が、測定値と推定値の変動の傾向のずれ度合を表す。したがって、算出部56は、y=xの直線から各点P31~P35の座標までの距離D31~D35を測定値と推定値の変動の傾向のずれ度合として算出する。
【0091】
図5に戻って、処理は、ステップSP24Cの処理に移行する。
【0092】
(ステップSP24C)
算出部56は、算出した距離D31~D35の平均値を計算することにより、バイアス評価指数を算出する。バイアス評価指数が大きい場合は、測定値と推定値の時系列的な変動の傾向のずれ度合が大きいことを示す。なお、バイアス評価指数の算出方法は、距離D31~D35の平均値に限定されない。算出部56は、距離D31~D35のRMS(Root Mean Square:二乗平均平方根)を算出して、この値をバイアス評価指数としてもよい。また、算出部56は、距離D31~D35の合計値を算出して、この値をバイアス評価指数としてもよい。また、算出部56は、測定値の第一起点値から選択したn個の測定値へのベクトルと、推定値の第二起点値から選択したn個の推定値へのベクトルとを生成し、対応するベクトル(それぞれの起点値から同じ時刻の測定値又は推定値へのベクトル)同士のベクトル距離を算出することによって、バイアス評価指数を算出してもよい。算出部56は、算出したバイアス評価指数を記憶部50に記憶する。
【0093】
ここで、
図8Aは、判定対象情報である温度の測定値、推定値、及び、バイアス評価指数の一例を示す図である。また、
図8Bは、判定対象情報である温度の測定値、推定値、及び、バイアス評価指数の他の例を示す図である。
図8A、
図8Bの縦軸は温度、横軸は時間である。グラフL1(実線)は測定値、グラフL2(破線)は推定値、グラフL5はバイアス評価指数の推移を表す。
【0094】
図8Aでは、グラフL1とグラフL2が示す各時刻における温度差はほとんど無く、温度差に関する第一閾値を適切に設定すると正常と判定される。さらに、
図8AのグラフL1とグラフL2の時系列的な変動の傾向は概ね一致しており、グラフL5を参照すると、バイアス評価指数の値は概ね15以下で安定している。
【0095】
図8Bでは、グラフL1とグラフL2の時系列的な変動の傾向は概ね一致しているが、各時刻における温度差が存在し、温度差に関する第一閾値に基づいて判定すると、異常と判定される場合が発生する。しかしながら、バイアス評価指数のグラフL5を参照すると、その値は、概ね15以下であるが上下に変動している。この例の場合、実際には監視対象装置4に異常は発生していないことを確認できており、グラフL1とグラフL2の温度差は推定モデル6Aのバイアスに由来するものであると推測される。
図8A及び
図8Bに示す例の解析結果から、例えば、バイアス評価指数の第二閾値を20に設定することによって、測定値と推定値との差分が第1閾値以上である場合に、その差分が監視対象装置4の異常を示しているのか、或いは、推定モデル6Aのバイアスに由来する差分なのか、を判別できる。
【0096】
なお、第二閾値については、ユーザが、所定期間に算出されたバイアス評価指数の標準偏差から、何σの変動があるかをみて設定してもよい。例えば、平均値と標準偏差に基づいて第二閾値を設定してよい。一例として、第二閾値を、所定期間におけるバイアス評価指数の平均値+3σとしてもよい。あるいは、設定部62が、第二閾値を、所定期間におけるバイアス評価指数の平均値+3σとして設定し、その値を記憶部50の閾値群50Cに記憶してもよい。
【0097】
図5に戻って、処理は、ステップSP26の処理に移行する。
【0098】
(ステップSP26)
判定部58は、バイアス評価指数が、閾値群50Cに含まれる第二閾値(=第B閾値)以上か否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定された場合には処理はステップSP28の処理に移行し、当該判定が否定判定された場合には処理はステップSP30の処理に移行する。
【0099】
(ステップSP28)
ステップSP26にて肯定判定された場合、すなわち、測定値と推定値の差分が第一閾値以上であり、且つ、バイアス評価指数が第二閾値以上である場合、判定部58は、監視対象装置4(の判定対象情報)が異常状態であると判定する。そして、通知部60は、監視対象装置4が異常状態である旨を監視画面100の判定結果表示欄108Gに表示制御することでユーザに通知する。そして、処理は、ステップSP22の処理に移行する。
【0100】
(ステップSP30)
ステップSP26にて否定判定された場合、すなわち、測定値と推定値の差分が第一閾値以上であり、且つ、バイアス評価指数が第二閾値未満である場合、判定部58は、推定モデル6Aが注意状態であると判定する。そして、通知部60は、推定モデル6Aが注意状態である旨を監視画面100の判定結果表示欄108Gに表示制御することでユーザに通知する。そして、処理は、ステップSP32の処理に移行する。
【0101】
(ステップSP32)
判定部58は、評価値が第二閾値以上となった回数Nを積算する(N=N+1)。そして、処理は、ステップSP34の処理に移行する。
【0102】
(ステップSP34)
判定部58は、回数Nが、閾値群50Cに含まれる第三閾値以上か否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定された場合には処理はステップSP36の処理に移行し、当該判定が否定判定された場合には処理はステップSP22の処理に移行する。
【0103】
(ステップSP36)
ステップSP34にて肯定判定された場合、判定部58は、推定モデル6Aについて再学習が必要な状態と判定する。続いて、通知部60は、推定モデル6Aについて再学習が必要な状態である旨をユーザに通知する。なお、通知を受けたユーザにより、推定モデル6Aが再学習された場合、判定部58は、回数Nをリセットする。また、ユーザに通知された後、出力制御部52は、推定装置6に対して推定モデル6Aを自動的に再学習するように指示を出力制御してもよい。また、出力制御部52は、回数Nが、第三閾値より高い第四閾値以上の場合、推定装置6に対して推定モデル6Aを自動的に再学習するように指示を出力制御してもよい。そして、処理は、ステップSP22の処理に移行する。
【0104】
<作用効果>
以上、本実施形態に係る監視システム2は、監視対象装置4を監視する監視システムである。そして、この監視システム2は、監視対象装置の運転状況によって変動する当該監視対象装置の運転情報を推定するための推定モデルを記憶した記憶部(推定装置6の記憶部)と、運転情報とは異なる監視対象装置4の他の運転情報及び推定モデル6Aに基づき、運転情報の値を推定値として推定する推定部(推定装置6)と、を備える。また、監視システム2は、運転情報の測定値、及び、推定値を取得する取得部54と、測定値の時系列の履歴である測定値履歴50A、及び、推定値の時系列の履歴である推定値履歴50Bに基づき、測定値の変動の傾向と推定値の変動の傾向との相関性を示すバイアス評価指数を算出する算出部56と、バイアス評価指数に基づき、推定モデル6Aの状態を判定する判定部58と、を備える。
【0105】
この構成によれば、判定部58が、バイアス評価指数に基づき、推定モデル6Aの状態を判定するので、ユーザが推定モデル6Aの状態を把握することができる。
【0106】
また、本実施形態では、算出部56は更に、取得部54により取得された測定値及び推定値の差異を表す差異値を算出し、判定部58は、差異値及びバイアス評価指数に基づき、推定モデル6Aの状態を判定する。
【0107】
この構成によれば、判定部58が、バイアス評価指数のみに基づいて推定モデル6Aの状態を判定する場合に比べて、推定モデル6Aの状態を精度良く判定することができる。
【0108】
また、本実施形態では、記憶部50には更に、第A閾値と第B閾値とが記憶されており、判定部58は、差異値が第A閾値以上であり、且つ、バイアス評価指数が第B閾値未満である場合に、推定モデル6Aが所定状態であると判定する。
【0109】
この構成によれば、判定部58が、バイアス評価指数のみに基づいて推定モデル6Aの状態を判定する場合に比べて、推定モデル6Aの状態を精度良く判定することができる。
【0110】
また、本実施形態では、記憶部50には更に、第A閾値と同一の又は異なる第一閾値、及び、第B閾値と同一の又は異なる第二閾値とが記憶されており、判定部58は、
(A)差異値が第一閾値未満である場合に、監視対象装置4が正常状態であると判定し、
(B)差異値が第一閾値以上であり、且つ、バイアス評価指数が第二閾値以上である場合に、監視対象装置4が異常状態であると判定し、
(C)差異値が第A閾値以上であり、且つ、バイアス評価指数が第B閾値未満である場合に、推定モデル6Aが所定状態として注意状態であると判定する。
【0111】
この構成によれば、監視対象装置4の状態と推定モデル6Aの状態をユーザが見分けることができる。具体的には、差異値が第一閾値以上であっても、監視対象装置4が異常状態であるのか、推定モデル6Aが注意状態であるのかをユーザが見分けることができる。
【0112】
また、本実施形態では、算出部56は、測定値履歴50Aのうち何れか一つの測定値を第一起点値として決定し、測定値履歴50Aのうち当該第一起点値以外の複数の測定値と当該第一起点値との位置関係に基づいて測定値の第一変動値を算出する。また、算出部56は、推定値履歴50Bのうち何れか一つの推定値を第二起点値として決定し、推定値履歴50Bのうち当該第二起点値以外の複数の推定値と当該第二起点値との位置関係に基づいて推定値の第二変動値を算出する。そして、算出部56は、第一変動値及び第二変動値に基づき、バイアス評価指数を算出する。
【0113】
この構成によれば、バイアス評価指数を精度良く算出することができる。
【0114】
また、本実施形態では、判定部58は、バイアス評価指数に基づき、推定モデル6Aの再学習が必要な状態か否かを判定する。
【0115】
この構成によれば、推定モデル6Aの再学習が必要か否かをユーザが把握することができる。
【0116】
また、本実施形態では、記憶部50には更に第三閾値が記憶されており、判定部58は、バイアス評価指数が第A閾値以上となった回数を積算し、且つ、当該回数及び第三閾値に基づき、推定モデル6Aの再学習が必要な状態か否かを判定する。
【0117】
この構成によれば、判定部58が、推定モデル6Aの再学習が必要か否かを精度良く判定することができる。
【0118】
また、本実施形態では、所定期間におけるバイアス評価指数に応じた値に第三閾値の設定を変更する設定部62を更に備える。
【0119】
この構成によれば、所定期間に応じて適切な第三閾値に設定を変更することができる。
【0120】
また、本実施形態では、時間の経過に応じて第一閾値又は第二閾値の設定を変更する設定部62を更に備える。
【0121】
この構成によれば、時間の経過に応じて適切な第一閾値又は第二閾値に設定を変更することができる。
【0122】
また、本実施形態では、判定部58により推定モデル6Aが注意状態であると判定された場合、その旨をユーザに通知する通知部60を更に備える。
【0123】
この構成によれば、推定モデル6Aを再学習する動機づけをユーザに与えることができる。
【0124】
また、本実施形態では、判定部58により推定モデル6Aの再学習が必要な状態であると判定された場合、その旨をユーザに通知する通知部60を更に備える。
【0125】
この構成によれば、推定モデル6Aを再学習する動機づけをユーザに与えることができる。
【0126】
<変形例>
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。また、上記実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本開示の特徴を含む限り本開示の範囲に包含される。
【0127】
例えば、上記実施形態では、推定装置6が、監視対象装置4の他の運転情報に基づき、判定対象情報である運転情報の値を推定値として推定する構成を説明した。この構成に加えて又は代わりに、推定装置6が、過去の他の運転情報又は/及び判定対象の過去の運転情報に基づき、判定対象情報である運転情報の値を推定値として推定してもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、判定部58は、バイアス評価指数が第A閾値以上となった回数N及び第三閾値に基づき、推定モデル6Aの再学習が必要な状態か否かを判定する構成を説明した。この構成の代わりに、判定部58は、バイアス評価指数の移動平均を算出し、バイアス評価指数の移動平均から推定モデル6Aの再学習が必要な状態か否かを判定してもよい。
例えば、判定部58は、時間的に連続する所定個のバイアス評価指数の移動平均を計算し、移動平均を第A閾値と比較し、第A閾値以上となる回数が第三閾値以上となると、推定モデル6Aの再学習が必要な状態であると判定してもよい。また、移動平均の変化に基づいて、例えば、移動平均が第A閾値以上変化する回数が所定の第B閾値以上となると、推定モデル6Aの再学習が必要な状態であると判定してもよい。また、移動平均のトレンドに基づいて、例えば、所定期間における移動平均が所定の変化率以上で上昇又は低下すると、推定モデル6Aの再学習が必要な状態であると判定してもよい。具体的には、判定部58は、測定値履歴50A及び推定値履歴50Bに基づき、時間的に連続する所定個のバイアス評価指数を選択し、これらのバイアス評価指数からバイアス評価指数の移動平均の変化率を算出し、且つ、当該変化率及び第三閾値に基づき、推定モデル6Aの再学習が必要な状態か否かを判定してもよい。あるいは、移動平均のトレンドの変化に基づいて、例えば、所定期間における移動平均のトレンドが所定回数以上変化すると(所定の変化率以上で上昇又は低下することが所定回数以上発生すると)、推定モデル6Aの再学習が必要な状態であると判定してもよい。
この構成によれば、判定部58が、推定モデル6Aの再学習が必要か否かを精度良く判定することができる。なお、判定部58は、バイアス評価指数の移動平均の代わりに、バイアス評価指数の平均値や最大値が閾値以上となった場合に、推定モデル6Aの再学習が必要と判定してもよい。
【0129】
また、算出部56は、第一起点値から、選択した所定個の測定値までの符号付き距離を算出する構成を説明した。この構成に代えて、算出部56は、第一起点値から、選択した所定個の測定値までの符号無し距離を算出してもよい。同様に、算出部56は、第二起点値から、選択した所定個の推定値までの符号無し距離を算出してもよい。
【0130】
また、上記実施形態では、判定部58は、測定値と推定値の差異値及びバイアス評価指数に基づき、推定モデル6Aの状態を判定する構成を説明した。この構成に代えて、判定部58は、バイアス評価指数のみ又は当該バイアス評価指数及び測定値と推定値の差異値以外の情報で推定モデル6Aの状態を判定してもよい。具体的には、判定部58は、バイアス評価指数が第B閾値以上である場合、すなわち、測定値と推定値の時系列的な変動の相関性が弱い場合、推定モデル6Aが注意状態又は再学習すべき状態であると判定してもよい。他にも、判定部58は、バイアス評価指数が第B閾値より高い第C閾値以上である場合、すなわち、測定値と推定値の時系列的な変動の相関性がより弱い場合、推定モデル6Aが注意状態又は再学習すべき状態であると判定してもよい。
【0131】
また、上記実施形態では、判定部58は、測定値と推定値の差異値が第一閾値以上であり、且つ、バイアス評価指数が第二閾値以上であるときに、監視対象装置4が異常状態であると判定する構成を説明した。この構成に加えて又は代わりに、判定部58は、測定値と推定値の差異値が第一閾値未満、且つ、バイアス評価指数が第二閾値以上である場合には、監視対象装置4ではなく推定モデル6Aが異常状態であると判定してもよい。
【0132】
また、上記実施形態では、推定装置6の記憶部には、測定器4A毎に推定モデル6Aが記憶されている場合を説明したが、複数の測定器4Aで共通の推定モデル6Aが記憶されていてもよい。この構成の場合、判定部58は、一の測定器4Aの測定値を利用して推定モデル6A等の状態を判定する際、他の測定器4Aの測定値を利用して推定モデル6A等の状態を判定した判定結果を利用してもよい。例えば、90%の測定器4Aについて測定値を利用した判定結果が監視対象装置4の異常状態を示している場合、判定部58は、一の測定器4Aの測定値を利用すると正常状態と判定するときであっても、他の90%の判定結果を参考にして、異常状態と判定してもよい。また、90%の測定器4Aについて測定値を利用した判定結果が推定モデル6Aの注意状態を示している場合、判定部58は、一の測定器4Aの測定値を利用すると正常状態又は異常状態と判定するときであっても、他の90%の判定結果を参考にして、推定モデル6Aの注意状態と判定してもよい。
【符号の説明】
【0133】
2 :監視システム
4 :監視対象装置
6 :推定装置(推定部)
6A :推定モデル
10 :監視装置(情報処理装置)
50 :記憶部
50A :測定値履歴
50B :推定値履歴
54 :取得部
56 :算出部
58 :判定部
60 :通知部
62 :設定部