(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128780
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240913BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240913BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240913BHJP
B64D 27/24 20240101ALI20240913BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/02 J
B64C27/08
B64D27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037980
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 周平
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA10
5G503CB02
5G503CB11
5G503DA04
5G503DA17
5G503EA05
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】電池異常が生じるのを抑制できる制御装置、制御方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】制御装置50は、eVTOLにおいて電池14から回転翼13を駆動するEPU15に供給する電力を制御する。制御装置は、電池が備える複数の単位電池である電池パック141の状態を示す電池情報を取得する取得部51と、電池情報に基づいて制御を実行する制御部52を備える。制御部は、離陸動作から巡航動作に移行した直後の所定期間を除く動作期間のうちの少なくとも一部において、電池情報に基づいて、複数の電池パック間の状態ばらつきを抑制するように複数の電池パックの電力配分を制御する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動飛行体(10)において電池(14)から回転翼(13)を駆動する電動推進装置(15)に供給する電力を制御する制御装置であって、
前記電池が備える複数の単位電池(141,142)の状態を示す電池情報を取得する取得部(51)と、
離陸動作から巡航動作に移行した直後の所定期間を除く動作期間のうちの少なくとも一部において、前記電池情報に基づいて、複数の前記単位電池間の状態ばらつきを抑制するように複数の前記単位電池の電力配分を制御する制御部(52)と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記所定期間は、前記離陸動作にともなう前記単位電池の状態の変動率に基づいて設定される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記状態ばらつきが所定度合いを超えると、電力配分制御を実行する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定期間において電力配分制御の実行を制限する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記所定期間を除く前記巡航動作時において電力配分制御を実行する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記巡航動作時の出力プロファイルを用いて推定または予測された前記電池情報に基づいて、電力配分制御を実行する、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記電動飛行体は、前記電動推進装置を複数備えており、
前記制御部は、複数の前記電動推進装置それぞれに対応する前記単位電池間の状態ばらつきを抑制するように、前記巡航動作時における複数の前記電動推進装置の出力配分を制御する、請求項5または請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、離着陸動作における電力配分を前記離着陸動作の開始前に決定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記離着陸動作時の出力プロファイルを用いて予測された予測値を前記電池情報として、電力配分を決定する、請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、複数の前記単位電池の充電動作時において、各単位電池に供給する電力配分を制御する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記充電動作時において、前記単位電池からの出力を制限する、請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記電池情報としてのSOCおよび/または電池温度に基づいて、前記電力配分を決定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項13】
複数の前記単位電池は、各電動推進装置が備える複数のモータに対して個別に接続された複数の電池パックであり、
前記制御部は、前記電動推進装置に供給する電力配分を複数の前記電池パックの間で制御する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記モータの温度情報に基づいて、各電池パックから供給する電力の配分を制御する、請求項13に記載の制御装置。
【請求項15】
複数の前記単位電池は、互いに直列接続および/または並列接続されて電池パックを構成する複数の電池モジュールであり、
複数の前記電池モジュールは、他の前記電池モジュールとの電気的な接続が一時的に切り離された予備モジュール(142S)を含み、
前記制御部は、前記電池情報に基づいて、複数の前記電池モジュールの状態ばらつきを抑制するように、複数の前記電池モジュールの中から前記予備モジュールを選定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項16】
複数の前記単位電池は、互いに共通の前記電動推進装置に対して電力を供給可能な複数の電池パックであり、
複数の前記電池パックは、前記電動推進装置との電気的な接続が一時的に切り離された予備パック(141S)を含み、
前記制御部は、前記電池情報に基づいて、複数の前記電池パックの状態ばらつきを抑制するように、複数の前記電池パックの中から前記予備パックを選定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項17】
電動飛行体(10)において電池(14)から回転翼(13)を駆動する電動推進装置(15)に供給する電力の制御方法であって、
前記電池が備える複数の単位電池(141,142)の状態を示す電池情報を取得し、
離陸動作から巡航動作に移行した直後の所定期間を除く動作期間のうちの少なくとも一部において、前記電池情報に基づいて、複数の前記単位電池間の状態ばらつきを抑制するように複数の前記単位電池の電力配分を制御する、
ことを含む制御方法。
【請求項18】
電動飛行体(10)において電池(14)から回転翼(13)を駆動する電動推進装置(15)に供給する電力を制御するためのプログラムであって、
少なくともひとつの処理部(201)に、
前記電池が備える複数の単位電池(141,142)の状態を示す電池情報を取得すること、
離陸動作から巡航動作に移行した直後の所定期間を除く動作期間のうちの少なくとも一部において、前記電池情報に基づいて、複数の前記単位電池間の状態ばらつきを抑制するように複数の前記単位電池の電力配分を制御すること、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、制御装置、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電動化航空機を開示している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池を構成する複数の単位電池から電力を供給する構成では、複数の単位電池間で電池状態のばらつき、たとえばSOCばらつきや温度ばらつきが生じる。特に特許文献1に例示される電動化航空機では、離着陸動作時に高出力を必要とする。このため、複数の単位電池間において状態ばらつきが増大し、一部の単位電池に異常を生じる虞がある。上記した観点において、または言及されていない他の観点において、制御装置、制御方法、およびプログラムにはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、電池異常が生じるのを抑制できる制御装置、制御方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のひとつである制御装置は、
電動飛行体(10)において電池(14)から回転翼(13)を駆動する電動推進装置(15)に供給する電力を制御する制御装置であって、
電池が備える複数の単位電池(141,142)の状態を示す電池情報を取得する取得部(51)と、
離陸動作から巡航動作に移行した直後の所定期間を除く動作期間のうちの少なくとも一部において、電池情報に基づいて、複数の単位電池間の状態ばらつきを抑制するように複数の単位電池の電力配分を制御する制御部(52)と、
を備える。
【0007】
開示の制御装置によれば、単位電池の状態を把握したうえで、複数の単位電池の電力配分を制御する。これにより、電池状態のばらつきを抑制することができる。この結果、電池異常が生じるのを抑制することができる。たとえば、電池異常を未然に防止することができる。よって、飛行の安全性を高めることができる。
【0008】
特に、離陸動作時の高出力負荷は、イオン濃度の偏りや温度の偏りを生じさせやすい。離陸動作から巡航動作に移行した直後は、上記した偏りの影響のため、電池状態の監視精度が一時的に低下する。開示の制御装置によれば、所定期間を除く動作期間の少なくとも一部において、電力配分制御を実行する。これにより、配分制御値の判断ミスを回避し、電池状態のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0009】
開示の他のひとつである制御方法は、
電動飛行体(10)において電池(14)から回転翼(13)を駆動する電動推進装置(15)に供給する電力の制御方法であって、
電池が備える複数の単位電池(141,142)の状態を示す電池情報を取得し、
離陸動作から巡航動作に移行した直後の所定期間を除く動作期間のうちの少なくとも一部において、電池情報に基づいて、複数の単位電池間の状態ばらつきを抑制するように複数の単位電池の電力配分を制御する、
ことを含む。
【0010】
開示の制御方法によれば、単位電池の状態を把握したうえで、複数の単位電池の電力配分を制御する。これにより、電池状態のばらつきを抑制することができる。この結果、電池異常が生じるのを抑制することができる。たとえば、電池異常を未然に防止することができる。よって、飛行の安全性を高めることができる。
【0011】
特に、離陸動作時の高出力負荷は、イオン濃度の偏りや温度の偏りを生じさせやすい。離陸動作から巡航動作に移行した直後は、上記した偏りの影響のため、電池状態の監視精度が一時的に低下する。開示の制御方法によれば、所定期間を除く動作期間の少なくとも一部において電力配分制御を実行する。これにより、配分制御値の判断ミスを回避し、電池状態のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0012】
開示の他のひとつであるプログラムは、
電動飛行体(10)において電池(14)から回転翼(13)を駆動する電動推進装置(15)に供給する電力を制御するためのプログラムであって、
少なくともひとつの処理部(201)に、
電池が備える複数の単位電池(141,142)の状態を示す電池情報を取得すること、
離陸動作から巡航動作に移行した直後の所定期間を除く動作期間のうちの少なくとも一部において、電池情報に基づいて、複数の単位電池間の状態ばらつきを抑制するように複数の単位電池の電力配分を制御すること、
を実行させる。
【0013】
開示のプログラムによれば、単位電池の状態を把握したうえで、複数の単位電池の電力配分を制御する。これにより、電池状態のばらつきを抑制することができる。この結果、電池異常が生じるのを抑制することができる。たとえば、電池異常を未然に防止することができる。よって、飛行の安全性を高めることができる。
【0014】
特に、離陸動作時の高出力負荷は、イオン濃度の偏りや温度の偏りを生じさせやすい。離陸動作から巡航動作に移行した直後は、上記した偏りの影響のため、電池状態の監視精度が一時的に低下する。開示のプログラムによれば、所定期間を除く動作期間の少なくとも一部において電力配分制御を実行させる。これにより、配分制御値の判断ミスを回避し、電池状態のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0015】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】eVTOLおよび地上局の構成を示す図である。
【
図2】EPUに対する電池パックの冗長構成の一例を示す図である。
【
図3】EPUに対する電池パックの冗長構成の一例を示す図である。
【
図4】eVTOLの電力プロファイルを示す図である。
【
図5】運航管理システムの機能配置を示す図である。
【
図6】制御装置および制御装置を含むシステムを示す図である。
【
図9】ΔSOCとΔ出力との関係を示す回帰モデルの一例を示す図である。
【
図10】ΔTとΔ出力との関係を示す回帰モデルの一例を示す図である。
【
図11】ΔSOCとΔ出力との関係を示すマップモデルの一例を示す図である。
【
図12】ΔTとΔ出力との関係を示すマップモデルの一例を示す図である。
【
図13】制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図14】制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図15】制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図16】第2実施形態に係る制御装置および制御装置を含むシステムを示す図である。
【
図17】制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図18】第3実施形態に係る制御装置が実行する制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図19】第4実施形態に係る制御装置および複数の電池モジュールの一例を示す図である。
【
図20】制御装置および複数の電池モジュールの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0018】
以下に示す制御装置、制御方法、およびプログラムは、電動飛行体に適用される。なお、Aおよび/またはBとの記載は、AおよびBの少なくともひとつを意味する。つまり、Aのみ、Bのみ、AとBの両方、を含み得る。
【0019】
(第1実施形態)
電動飛行体は、移動するための駆動源としてモータ(回転電機)を備える。電動飛行体は、電動飛行機、電動航空機などと称されることがある。電動飛行体は、鉛直方向への移動、水平方向への移動が可能である。電動飛行体は、鉛直方向成分および水平方向成分を有する方向、つまり斜め方向への移動が可能である。電動飛行体は、たとえば電動垂直離着陸機(eVTOL)、電動短距離離着陸機(eSTOL)、ドローンなどである。eVTOLは、electronic Vertical Take-Off and Landing aircraftの略称である。eSTOLは、electronic Short distance Take-Off and Landing aircraftの略称である。
【0020】
電動飛行体は、有人機、無人機のいずれでもよい。有人機の場合、電動飛行体は、操縦者としてのパイロットにより操縦される。無人機の場合、電動飛行体は、操縦者による遠隔操作により操縦され、あるいは、コントロールシステムにより自動的に制御され得る。一例として本実施形態の電動飛行体は、eVTOLである。
【0021】
<eVTOL>
図1は、eVTOLおよび地上局を示している。
図1に示すように、eVTOL10は、機体本体11、固定翼12、回転翼13、電池14、EPU15、およびBMS16などを備えている。
【0022】
機体本体11は、機体の胴体部である。機体本体11は、前後に延びた形状をなしている。機体本体11は、乗員が乗るための乗員室、および/または、荷物を搭載するための荷室を有している。
【0023】
固定翼12は、機体の翼部であり、機体本体11に連なっている。固定翼12は、滑空揚力を提供する。滑空揚力は、固定翼12の生じる揚力である。一例として固定翼12は、主翼121と、尾翼122を有している。主翼121は、機体本体11の前後方向における中央付近から左右に延びている。尾翼122は、機体本体11の後部から左右に延びている。固定翼12の形状は特に限定されない。たとえば後退翼、三角翼、直線翼などを採用することができる。
【0024】
回転翼13は、機体に複数設けられている。複数の回転翼13の少なくとも一部は、固定翼12に設けられてもよい。複数の回転翼13の少なくとも一部は、機体本体11に設けられてもよい。eVTOL10が備える回転翼13の数は、特に限定されない。一例として回転翼13は、機体本体11および主翼121のそれぞれに複数設けられている。eVTOL10は、6つの回転翼13を備えている。
【0025】
回転翼13は、ロータ、プロペラ、ファンなどと称されることがある。回転翼13は、ブレード131と、シャフト132を有している。ブレード131は、シャフト132に取り付けられている。ブレード131は、シャフト132とともに回転する羽根である。複数のブレード131が、シャフト132の軸線周りに放射状に延びている。シャフト132は、回転翼13の回転軸であり、EPU15のモータによって回転駆動される。
【0026】
回転翼13は、回転により推進力を生じる。推進力は、eVTOL10の離着陸動作時に、主に回転揚力としてeVTOL10に作用する。回転翼13は、離着陸動作時に主として回転揚力を提供する。回転揚力は、回転翼13の回転により生じる揚力である。離着陸動作時において、回転翼13は回転揚力のみを提供してもよいし、回転揚力とともに、前方に進む推力を提供してもよい。回転翼13は、eVTOL10のホバリング時に、回転揚力を提供する。
【0027】
推進力は、eVTOL10の巡航動作時に、主に推力としてeVTOL10に作用する。回転翼13は、巡航動作時に主として推力を提供する。巡航動作時において、回転翼13は推力のみを提供してもよいし、推力とともに揚力を提供してもよい。
【0028】
電池(BAT)14は、回転翼13を回転駆動するための機器である。電池14は、直流電力を蓄えることが可能であり、充電可能な電池セルを有している。電池セルは、化学反応によって起電圧を生成する二次電池である。電池セルは、たとえばリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池などである。電池セルは、電解質が液体の二次電池でもよいし、電解質が固体のいわゆる全固体電池でもよい。電池セルは、電池反応に寄与するイオン(電解質)が電解液および/または固体電解質を介して正負極間を移動することで、電池反応が生じる構成であればよい。eVTOL10は、機器に電力を供給する電源として、電池14に加えて、燃料電池や発電機などを備えてもよい。電池14は、EPU15に電力を供給する。
【0029】
eVTOL10の電池14には、高容量とともに高出力な性能が求められている。このため、高容量かつ高い出力が得られる電池セルが望ましい。出力観点では、幅広いSOC領域で抵抗が低い電池セルが望ましい。特に低SOCの領域においても抵抗が低く、高い出力が得られる電池セルが望ましい。SOCは、State Of Chargeの略称である。
【0030】
電池セルの正極材料としては、たとえばLCO、NMC、NCA、LFP、LMFPを採用することができる。LCOは、コバルト酸リチウム(LiCoO2)である。NMCは、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(Li(NiMnCo)O2)である。NCAは、リチウムニッケルコバルトアルミネート(Li(NiCoAl)O2)である。LFPは、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)である。LMFPは、リン酸マンガン鉄リチウム(LiFexMnyPO4)である。特に、低SOCの領域で抵抗が低い、LMFPの正極、あるいは、LMFPとNMCとをブレンドした正極が好ましい。
【0031】
電池セルの負極材料としては、たとえばハードカーボンやソフトカーボンなどのカーボン系、シリコン、リチウム系、LTOやNTOなどのチタン系を採用することができる。LTOは、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)である。NTOは、ニオブチタン酸化物(TiNb2O7)である。特に、低SOCの領域で抵抗の低い、カーボン系の負極やチタン系の負極が好ましい。
【0032】
EPU15は、eVTOL10に推進力を付与する回転翼13を回転駆動する。EPU15は、回転翼13を回転駆動するための機器である。EPUは、Electric Propulsion Unitの略称である。EPU15が、電動推進装置に相当する。EPU15は、モータを備える。EPU15は、モータに加えてインバータやESCを備える。ESCは、Electronic Speed Controllerの略称である。一例としてEPU15は、回転翼13と同数設けられる。つまりeVTOL10は、6つのEPU15を備えている。EPU15と回転翼13とは、一対一で接続されている。これに代えて、ひとつのEPU15に対して、ギヤボックスを介して2つ以上の回転翼13を接続する構成としてもよい。
【0033】
BMS16は、電池14を構成する単位電池の状態を監視する。BMSは、Battery Management Systemの略称である。BMS16は、電池14の電圧、電流、温度、内部抵抗、SOC、SOH、その他、内圧やガス漏れなど安全性に関わる状態などを監視し得る。SOHは、State Of Healthの略称である。BMS16は、たとえばひとつの単位電池に対してひとつ設けられている。BMS16は、複数の単位電池それぞれの状態を監視する。
【0034】
eVTOL10は、さらにECU20や図示しない補機などを備えている。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。eVTOL10は、図示しない揚力調整機構を備えてもよい。揚力調整機構は、固定翼12の滑空揚力を調整する。揚力調整機構は、固定翼12が生じる滑空揚力を増大させたり、減少させたりする。eVTOL10は、揚力調整機構として、たとえばチルト機構やフラップを備えてもよい。チルト機構は、回転翼13のチルト角を調整するために駆動する。フラップは、可動翼片であり、固定翼12に設けられる。
【0035】
<単位電池>
電池14は、所定単位の電池要素である単位電池を複数備えて構成されている。電池14は、複数の単位電池として複数の電池パックを備えてもよい。電池パックの数や配置は、特に限定されない。電池パックを単位電池とする場合、各電池パックは少なくともひとつの電池モジュールを備えればよい。電池モジュールは、複数の電池セルをモジュール化したものである。電池モジュールは、直列接続された複数の電池セル、または、並列接続かつ直列接続された複数の電池セルを有している。
【0036】
電池パックは、複数のEPU15に対して個別に設けられてもよい。ひとつのEPU15に対して、複数の電池パックから電力を供給可能に構成されてもよい。ひとつの電池パックから複数のEPU15に対して電力を供給可能に構成されてもよい。
【0037】
一例として本実施形態の電池14は、複数の電池パックを備えている。電池パックは、EPU15に対して冗長に設けられている。つまり、ひとつのEPU15に対して、複数の電池パックから電力を供給可能に構成されている。ひとつのEPU15に対して、複数の電池パックから電力を供給可能であり、且つ、ひとつの電池パックから複数のEPU15に対して電力を供給可能に構成されてもよい。
【0038】
冗長構成として、
図2に示すように、EPU15を構成する複数のモータ151に電池パック141を個別に接続する構成としてもよい。
図2では、ひとつの回転翼単位で、電池14(電池パック141)とEPU15を示している。
図2に示す例では、EPU15が、共通(単一)の回転翼13を駆動する2つのモータ151と、2つのインバータ152を備えている。電池14は、2つの電池パック141を備えている。モータ(M1)151には、インバータ(INV1)152を介して電池パック(BP1)141が接続されている。モータ(M2)151には、インバータ(INV2)152を介して電池パック(BP2)141が接続されている。
【0039】
このように、ひとつの回転翼13に対して、モータ(M1)151、インバータ(INV1)152、電池パック(BP1)141を含む第1系統と、モータ(M2)151、インバータ(INV2)152、電池パック(BP2)141を含む第2系統が設けられている。なお、共通の回転翼13を駆動するモータ151の数は、上記した例に限定されない。たとえば、3つ以上のモータ151を備えてもよい。
【0040】
冗長構成として、
図3に示すように、電池パック141を並列接続する構成としてもよい。
図3では、便宜上、2つのEPU15と、2つの電池パック141を示している。2つのEPU15は、互いに異なる回転翼13を駆動する。各EPU15は、ひとつのモータ151と、ひとつのインバータ152を備えている。各インバータ152は、PMU143に接続されている。2つの電池パック141も、PMU143に接続されている。PMUは、Power Management Unitの略称である。PMU143は、分電機と称されることがある。2つの電池パック(BP1,BP2)141は、PMU143およびインバータ(INV1)152を介してモータ(M1)151に電力を供給可能である。2つの電池パック(BP1,BP2)141は、PMU143およびインバータ(INV2)152を介してモータ(M2)151に電力を供給可能である。電池パック141のそれぞれは、2つのEPU15に電力を供給可能である。
【0041】
PMU143は、電池パック141から供給される電力を複数のEPU15に対して分配する機能を有する。PMU143は、後述の制御装置からの指令に従って、複数の電池パック141の充放電を行ってもよい。PMU143は、所定の電力配分となるように充放電を行ってもよい。PMU143は、複数の電池パック141に対する電気的な遮断機能を有してもよい。なお、PMU143に接続されるEPU15の数は、上記した例に限定されない。3つ以上のEPU15が接続されてもよい。PMU143に接続される電池パック141の数は、上記した例に限定されない。3つ以上の電池パック141が接続されてもよい。
【0042】
<電力プロファイル>
図4は、eVTOL10の離陸から着陸までの電力プロファイルを示している。なお、eVTOL以外の電動飛行体の電力プロファイルも、eVTOL10と同様である。期間P1は、離陸動作時、離陸時、離陸期間などと称される。期間P2は、巡航動作時、巡航時、巡航期間などと称される。期間P3は、着陸動作時、着陸時、着陸期間などと称される。期間P1,P3は、離着陸動作時、離着陸時、離着陸期間などと称される。便宜上、
図1では期間P1,P3それぞれのほぼ全域において、必要電力、つまり出力を一定としている。
【0043】
eVTOL10は、期間P1において離陸地点から巡航開始地点まで上昇する。eVTOL10は、期間P2において所定高度で巡航する。eVTOL10は、期間P3において期間P2の終点から着陸地点まで降下する。eVTOL10の移動は、期間P2において主として水平方向成分を含み、期間P1,P3において主として鉛直方向成分を含む。鉛直方向に移動する期間P1,P3において、回転翼13の駆動には、所定時間連続で高出力が要求される。
【0044】
<電池状態のばらつき>
図2に示した冗長構成の場合、通常時には、たとえば各電池パック141から対応するモータ151に対して互いにほぼ等しい電力が供給される。モータ151または電池パック141に異常が生じた場合、複数系統のうちの異常系統が電気的に遮断され、残りの正常な系統で回転翼13の駆動が継続される。
【0045】
このように、複数の電池パック141(単位電池)から電力を供給する構成では、電池パック141間で電池状態のばらつき、たとえばSOCのばらつきや電池温度のばらつきが生じる。このようなばらつきは、たとえば初期個体差、劣化度合差、環境温度差などに起因する電池パック141間での抵抗差により生じ得る。また、環境温度差や電池の放熱性能差などによって生じ得る。互いに共通するEPU15に対して電力を供給する構成であっても、冗長性を考慮した分割配置によって電池状態のばらつきが顕在化する。
【0046】
特にeVTOL10では、複数の電池パック141(単位電池)間で電池状態のばらつきが増大しやすい。上記したように離陸動作時には、高出力が必要となる。このため、たとえば共通のEPU15を駆動する電池パック141間においてSOCばらつきや温度ばらつきが増加する。巡航動作時には、EPU15ごとに駆動のさせ方が異なる。このため、各EPU15に対応する電池パック141間でSOCばらつきや温度ばらつきが増加する。離着陸動作時とは異なり、巡航動作時には一部のパワーしか使用しないがゆえに、各EPU15に対応する電池パック141間でばらつきが生じやすい。さらに、着陸動作時にも高出力が必要となる。離陸動作時や巡航動作時においてばらつきが生じた状態で着陸動作を実行するため、SOCばらつきや温度ばらつきが拡大する。
【0047】
SOCばらつきが増加すると、一部の電池パック141の出力が大きく低下する。温度ばらつきが増加すると、一部の電池パック141が過昇温異常となる。よって、熱暴走など本来の電池異常ではなく、冗長システムとしての異常を招く虞がある。たとえ一回の飛行で異常を招かなくとも、離着陸の繰り返しにより異常発生のリスクが高まる。なお、
図3に示した構成においても、電池パック141間においてSOCばらつきや温度ばらつきが問題となる。
【0048】
以上のように、eVTOL10に代表される電動飛行体では、複数の単位電池間における電池状態のばらつき、つまり状態ばらつきが問題となる。
【0049】
<運航管理システム>
運航管理システムは、運航計画の立案、運航状況の監視、運航に関する情報の収集と管理、運航のサポートなどを行うためのシステムである。運航管理システムの機能の少なくとも一部は、eVTOL10の機内コンピュータに配置されてもよい。運航管理システムの機能の少なくとも一部は、eVTOL10と無線通信可能な外部のコンピュータに配置されてもよい。外部コンピュータの一例は、
図1に示す地上局30のサーバ31である。地上局30は、eVTOL10と無線通信が可能である。地上局30は、地上局同士で無線通信が可能である。
【0050】
一例として本実施形態では、運航管理システムの機能の一部がeVTOL10のECU20に配置され、運航管理システムの機能の一部が地上局30のサーバ31に配置されている。運航管理システムの機能は、ECU20とサーバ31との間で分担されている。
【0051】
図1に示すようにECU20は、プロセッサ(PC)201、メモリ(MM)202、ストレージ(ST)203、および無線通信のための通信回路(CC)204などを備えて構成されている。プロセッサ201は、メモリ202へのアクセスにより、種々の処理を実行する。メモリ202は、書き換え可能な揮発性の記憶媒体である。メモリ202は、たとえばRAMである。RAMは、Random Access Memoryの略称である。ストレージ203は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体である。ストレージ203には、プロセッサ201によって実行されるプログラム(PG)203Pが格納されている。プログラム203Pは、複数の命令をプロセッサ201に実行させることで、複数の機能部を構築する。ECU20は、複数のプロセッサ201を備えてもよい。
【0052】
サーバ31は、ECU20と同様に、プロセッサ(PC)311、メモリ(MM)312、ストレージ(ST)313、通信回路(CC)314などを備えて構成されている。プロセッサ311は、メモリ312へのアクセスにより、種々の処理を実行する。メモリ312は、書き換え可能な揮発性の記憶媒体であり、たとえばRAMである。ストレージ313は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体である。ストレージ313には、プロセッサ311によって実行されるプログラム(PG)313Pが格納されている。プログラム313Pは、複数の命令をプロセッサ311に実行させることで、複数の機能部を構築する。サーバ31は、複数のプロセッサ311を備えてもよい。
【0053】
図5は、運航管理システムの機能配置の一例を示している。
図5に示すように、一例として本実施形態の運航管理システム40は、機外管理部41と、機内管理部42を有している。機外管理部41は、地上局30のサーバ31内に機能配置されている。機内管理部42は、eVTOL10のECU20内に機能配置されている。このように、運航管理システム40の機能の一部はサーバ31に配置され、機能の他の一部はECU20に配置されている。機外管理部41と機内管理部42とは、相互に無線通信可能である。機内管理部42は、eVTOL10に配置された各種装置と有線または無線にて通信可能である。
【0054】
<制御装置>
図5に示す制御装置50は、電池14が備える複数の単位電池の状態を示す電池情報を取得し、取得した電池情報に基づいて複数の単位電池の電力配分を制御する。一例として本実施形態の制御装置50は、複数の電池パック141の電池情報を取得し、複数の電池パック141の電力配分を制御する。
【0055】
制御装置50の少なくとも一部は、eVTOL10のECU20に機能配置されてもよいし、地上局30のサーバ31に機能配置されてもよい。制御装置50の少なくとも一部は、機外管理部41の一部として配置されてもよいし、機内管理部42の一部として配置されてもよい。制御装置50の少なくとも一部は、EPU15に配置されてもよい。制御装置50の少なくとも一部は、BMS16に配置されてもよい。制御性の観点から、制御装置50の少なくとも一部はeVTOL10の機内に配置されるとよい。一例として本実施形態の制御装置50は、
図5に示すようにeVTOL10のECU20に機能配置されている。
【0056】
図6は、制御装置50の概略構成を示している。
図6は、制御装置50を含むシステムを示している。
図6では、電池14およびEPU15として
図2に示した冗長構成を簡素化して例示している。
図6では、制御装置50とともに、電池14、EPU15、および運航管理システムを示している。制御装置50は、電池14とともに電池システムを構成してもよい。制御装置50は、EPU15とともに駆動システムを構成してもよい。制御装置50は、電池14およびEPU15とともにシステムを構成してもよい。制御装置50は、運航管理システム40とともにシステムを構成してもよい。
【0057】
図6に示すように、制御装置50は、取得部51と、制御部52を備えている。取得部51は、複数の単位電池それぞれの電池情報を取得する。上記したように、電池情報は、単位電池の電池状態を示す情報である。電池状態とは、SOCおよび/または電池温度である。一例として本実施形態の取得部51は、単位電池である電池パック141それぞれの電池情報を取得する。取得部51は、電池情報としてSOCを取得してもよいし、電池温度を取得してもよい。SOCと電池温度の両方を取得してもよい。
【0058】
取得部51は、EPU15に対して個別に設けられてもよいし、複数のEPU15に対して共通に設けられてもよい。また、電池パック141に対して個別に設けられてもよい。一例として本実施形態の取得部51は、EPU15に対して個別に設けられている。各取得部51は、対応するEPU15に電力を供給する複数の電池パック141それぞれの電池情報を取得する。
【0059】
取得部51は、電池情報として、BMS16などから演算値を取得してもよい。取得部51は、BMS16などから単位電池に関する生データを取得し、演算することで電池情報を取得してもよい。制御装置50に取得部51とは別の演算機能を設け、演算結果である電池情報を取得部51が取得してもよい。電池情報として、電池温度などの実測値を用いてもよいし、推定値や予測値を用いてもよい。推定値や予測値は、たとえば実測値、演算値、過去フライトの履歴データなどの電池データと出力プロファイルなどの運航計画データとを用いて、マップモデルや回帰モデルなどにより算出してもよい。推定値や予測値は、過去フライトの履歴データを用いて、回帰モデルにより算出してもよい。推定値は現時点での値であり、予測値は将来の推定値である。
【0060】
SOCは、たとえば開回路電圧(OCV)、駆動時の電流、電圧、電池温度などの実測値を用い、マップモデルや、電池等価回路モデル、電池反応モデルなどの電池モデルにより推定してもよい。OCVは、Open Circuit Voltageの略である。電池温度は、たとえば一部の電池セルの実測温度データから推定して算出、またはマップモデル、回帰モデル、電池モデルおよび/または熱解析モデルなどを用いて出力データなどから推定してもよい。推定値や予測値の算出には、運航管理システム40などから電池以外の情報、たとえば飛行情報、気象情報、規制情報の少なくともひとつを用いてもよい。飛行情報は、たとえば現在のフライトにおける飛行高度、飛行速度、姿勢(角度)、飛行位置などを含み得る。飛行情報は、現在のフライトにおける情報に加えて、運航計画に基づく飛行高度、飛行速度などの情報を含んでもよい。気象情報は、たとえば風向、風速、気圧などを含み得る。規制情報は、たとえば静音規制の有無、飛行高度のルールなどを含み得る。
【0061】
制御部52は、取得部51の取得した電池情報に基づいて、複数の単位電池の電力配分を制御(調整)する。制御部52は、電池情報に基づいて、複数の単位電池間の状態ばらつきを抑制するように電力配分を制御する。制御部52は、離陸動作から巡航動作に移行した直後の所定期間を除く動作期間のうちの少なくとも一部において、電力配分を制御する。制御部52は、巡航動作に移行した直後の所定期間において、電力配分制御を実行しない。
【0062】
一例として本実施形態の制御部52は、上記した所定期間を除く動作期間のうちの少なくとも一部において、電池情報に基づいて、複数の電池パック141間の状態ばらつきを抑制するように電力配分を制御する。動作期間は、電池14が動作をする期間である。動作期間は、上記した期間P1,P2,P3を含む。動作期間は、たとえば電池14の充電期間を含んでもよい。
【0063】
二次電池を出力、つまり放電すると、電池反応に寄与するイオンの濃度分布に一時的な偏りを生じる。濃度偏りは、電解液や電極において生じる。濃度偏りを生じると、電池の内部抵抗が一時的(可逆的)に上昇する。このため、SOCが十分であっても、電池の出力性能が低下する。このように、電池に一時的(可逆的)な劣化が生じる。一時劣化は、ハイレート劣化と称されることがある。濃度偏りが大きいほど、一時劣化の度合いが増加する。特に、高出力によって一時劣化の度合いは増加する。また、高出力によって、電池モジュール内部の温度ムラ(偏り)が増加する。
【0064】
このように離陸動作時の高出力負荷は、電池モジュール内部のイオン濃度の偏りや温度の偏りを生じさせやすい。離陸動作から巡航動作に移行した直後は、上記した偏りの影響のため、電池状態の監視精度が低下する。よって、本制御をこの期間に行うと電力分配の精度悪化を招く虞がある。所定期間に電力配分制御を実行しない制限により、分配制御値の判断ミスを回避し、電池状態のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0065】
所定期間は、単位電池の状態の変動率に基づいて設定してもよい。これにより、変動率が大きい期間を避けて電力配分制御の実行が可能となる。上記したように、イオン濃度に偏りを生じると、電池の内部抵抗が上昇する。よって、抵抗や電圧の変動率を用いてもよい。また、電池温度の変動率を用いてもよい。所定の変動率以下となるまでの期間を所定期間と設定することができる。この場合、リアルタイム監視によって所定期間を判断してもよい。所定期間は、事前の実験等によって予め設定してもよい。
【0066】
制御部52は、互いに影響し合うすべての電池パック141を対象に、電池パック141間の電池状態のばらつきを減らす方向に電力配分を制御するとよい。制御部52は、各EPU15の出力要求の制約のもとで各電池パック141の電力配分を制御してもよい。制御部52は、複数のEPU15それぞれに対応する電池パック141間の状態ばらつきを抑制するように、複数のEPU15の出力配分を制御してもよい。
【0067】
電力配分制御として、制御部52は、たとえば
図7に示すように各電池パック(BP1,BP2)141の出力値の配分を制御(調整)してもよい。制御部52は、たとえばインバータ152、DCDCコンバータ、抵抗などを用いて出力値の配分制御を行うことができる。制御部52は、電池情報に基づいて出力値の配分を決定し、決定した出力値で電池パック141が出力するように、たとえばインバータ152を介して制御する。配分制御なしの場合、
図7に示すように、出力値が互いにほぼ同じとなるように均等制御を実行してもよい。
【0068】
電力配分制御として、制御部52は、たとえば
図8に示すように、各電池パック(BP1,BP2)141の出力時間の配分を制御してもよい。制御部52は、出力値は一定で、出力時間により電力配分を制御する。制御部52は、出力時間の配分制御を実行する際に、インバータやDCDCコンバータを用いてもよいし、メカリレーや半導体スイッチなどを用いてもよい。配分制御なしの場合、
図8に示すように、出力時間が互いにほぼ同じとなるように、具体的には互いに同じ出力値で交互に同じ時間ずつ出力するように、均等制御を実行してもよい。制御部52は、
図7に例示した出力値の配分制御と、
図8に例示した出力時間の配分制御とを組み合わせて実行してもよい。
【0069】
制御部52は、回帰モデルやマップモデルを用いて、電力配分を決定してもよい。回帰モデルやマップモデルは、SOCばらつきや電池温度のばらつきと電力配分との関係をモデル化、マップ化したものであり、事前の実験データやシミュレーションを用いて生成することができる。回帰モデルの生成には、機械学習を用いてもよい。
【0070】
図9は、SOCばらつき(ΔSOC)と電池パック141の出力の変動量(Δ出力)との関係を示す回帰モデルの一例を示している。この回帰モデルによれば、SOCが大きい電池パック141の出力を増やすことができる。
図10は、電池温度のばらつき(ΔT)と電池パック141の出力の変動量(Δ出力)との関係を示す回帰モデルの一例を示している。この回帰モデルによれば、高温の電池パック141の出力を減らすことができる。なお、
図9および
図10では、回帰モデルとして線形回帰モデルを示したが、これに限定されない。非線形回帰モデルを用いてもよい。
【0071】
図11は、SOCばらつき(ΔSOC)と電池パック141の出力の変動量(Δ出力)との関係を示すマップモデルの一例を示している。
図12は、電池温度のばらつき(ΔT)と電池パック141の出力の変動量(Δ出力)との関係を示すマップモデルの一例を示している。
【0072】
図9~
図12では、縦軸を出力の変動量(Δ出力)としたが、これに代えて出力時間の変動量(Δ出力時間)としてもよい。回帰モデルやマップモデルは、
図9~
図12に示したようにSOCばらつき単独、温度ばらつき単独で生成してもよい。SOCばらつきと温度ばらつきを変数とする回帰モデルやマップモデルを生成してもよい。
【0073】
制御部52は、複数の単位電池間での電池状態のばらつきである状態ばらつきが所定度合いを超えたら、電力配分制御を実行する構成としてもよい。状態ばらつきの指標としては、たとえば最大値と最小値の差や分散を用いることができる。所定度合いは、機器の電力配分精度、ばらつきの許容レベルなどを考慮して決めることができる。許容レベルとは、たとえば異常に至る設定閾値に対する余裕度である。これによって効果的にばらつきを抑制することができる。
【0074】
制御部52は、eVTOL10の航行モードに応じて電力配分制御を切り替えてもよい。eVTOL10(電動飛行体)は、上記したように巡航動作時と離着陸動作時とで電力プロファイルが大きく異なる。よって、航行モードに応じた最適な電力配分制御を実行する、たとえば電力配分の条件や制御実行のタイミングを設定することで、状態ばらつきを効果的に抑制することができる。
【0075】
また、状態ばらつきの生じやすさは、EPU15または電池14の構成や配置、航続距離、飛行高度、環境条件などの諸条件により、航行モードごとに異なる。制御部52は、航行モードごとの状態ばらつきの生じやすさに応じて、離陸動作時のみ、巡航動作時のみ、着陸動作時のみ電力配分制御を実行し、他の航行モードでは電力配分制御を制限してもよい。制御部52は、航行モードごとの状態ばらつきの生じやすさに応じて、離陸動作時、巡航動作時、着陸動作時の特定期間のみ電力配分制御を実行し、特定期間を除く期間において電力配分制御を制限してもよい。
【0076】
制御部52は、所定期間を除く巡航動作時において、電力配分制御を実行してもよい。上記したように、巡航動作時には離着陸動作時のような高出力負荷は要求されておらず、出力性能の一部しか発揮する必要がない。機能分担や動作停止など、EPU15ごとに異なった動作をさせることもあるため、各EPU15の動作に応じた最適なタイミング、間隔で制御することにより、状態ばらつきを効果的に抑制することができる。
【0077】
たとえば、事前の実験等でEPU15の動作ごとに状態ばらつきの度合いを求めておくことで、所定のタイミングと間隔で電力配分制御を実行することが可能である。過去のフライトでの実績に応じてタイミングと間隔を決定してもよい。リアルタイム監視によって、タイミングと間隔を判断してもよい。
【0078】
巡航動作時において、制御部52は、実測値、演算値、履歴データなどの電池データと運航計画に基づく出力プロファイルなどのデータとを用いて、回帰モデルなどにより算出された推定値または予測値を、電池情報として用いてもよい。推定や予測の際には、運航管理システム40から電池以外の情報、たとえば飛行情報、気象情報、規制情報の少なくともひとつを用いてもよい。
【0079】
上記したように、巡航動作時にはEPU15間で状態ばらつきが生じやすく、着陸動作時の高出力負荷に対して十分に性能を発揮できなくなる虞がある。そこで制御部52は、巡航動作時において、複数のEPU15それぞれに対応する単位電池(電池パック141)の電力配分を制御してもよい。つまり制御部52は、複数のEPU15それぞれに対応する単位電池間の状態ばらつきを抑制するように、複数のEPU15の出力配分を制御してもよい。制御部52は、巡航に必要となる揚力と推力の配分、つまり各EPU15が必要とする電力の総計を、複数のEPU15の間で調整してもよい。
【0080】
制御部52は、たとえば単位電池の個体抵抗差や環境温度差などで補正しつつ、すべてのEPU15の電力負荷が略均一となるように出力配分を制御する。EPU15の出力配分を制御する場合、制御部52は、ひとつのEPU15に対応する複数の単位電池について、電力配分制御を実行してもよいし、電力を均等に配分するようにしてもよい。
【0081】
上記したように、離着陸動作時は巡航動作時に較べて出力負荷が高い。このため、一気に状態ばらつきが拡大する虞がある。そこで制御部52は、リアルタイムに監視してフィードバック制御するのではなく、離着陸動作前に電力配分を事前決定し、離着陸開始時から事前決定した配分にて制御してもよい。制御部52は、実測値、演算値、履歴データなどの電池データと運航計画に基づく出力プロファイルなどのデータとを用いて、回帰モデルなどにより算出された推定値または予測値を、電池情報として用いてもよい。制御部52は、離着陸動作が終了した時点における電池情報、ひいては状態ばらつきを予測し、この予測に基づいて電力配分を決定してもよい。予測に用いる電池情報は、SOCの場合、たとえば離着陸前のSOC、電池抵抗のばらつき情報である。電池温度の場合、たとえば離着陸前の電池温度、電池熱容量、放熱性能のばらつき情報である。
【0082】
なお、機内のコンピュータ(たとえばECU20)、空調装置などの図示しない補機への電力供給には、EPU15に電力を供給する電池パック141(電池14)とは別の電池パックを用いてもよいし、電池パック141の少なくとも一部を用いてもよい。電池モジュールの一部を用いてもよい。冗長性を確保するため、電池14の少なくとも一部と別の電池とを組み合わせてもよい。補機に対して電池14の少なくとも一部から電力を供給すする場合、EPU15に加えて補機への電力供給も考慮して電力配分制御を実行するとよい。補機への電力供給がEPU15への電力供給に較べてわずかな場合は、電力配分制御に補機を考慮しなくてもよい。
【0083】
一例として本実施形態の制御部52は、個別制御部521と、統合制御部522を有している。個別制御部521は、取得部51同様、EPU15ごとに設けられている。個別制御部521は、互いに共通のEPU15に電力を供給する複数の電池パック141間の電力配分を制御する。統合制御部522は、EPU15間の電力配分を制御する。つまり、統合制御部522は、複数のEPU15それぞれに対応する電池パック141間の電力配分を制御する。統合制御部522は、EPU15の出力配分を制御してもよい。
【0084】
<制御方法>
プロセッサ201によって制御装置50の各機能ブロックの処理が実行されることが、制御方法が実行されることに相当する。上記したように、制御装置50は、航行モードに応じた電力配分制御を実行する。
【0085】
図13は、制御装置50が実行する電力配分制御処理、つまり電力配分のための制御方法の一例を示している。
【0086】
まず制御装置50は、電池情報を取得する(ステップS10)。上記したように、電池情報として演算値を取得してもよいし、生データを取得し、演算により電池情報を取得してもよい。電池情報は、実測値でもよいし、予測値や推定値でもよい。たとえば、実測値や履歴データなどの電池情報と巡航動作時の出力プロファイルなどのデータとを用いて、マップモデルや回帰モデルにより算出される推定値または予測値でもよい。一例として本実施形態の制御装置50は、電池情報としてSOCおよび電池温度を取得する。制御装置50は、電池情報に合わせて、その他の電池14に関する情報、飛行情報、気象情報、および規制情報の少なくともひとつを取得してもよい。取得したその他の情報を用いて電池情報(電池状態)を補正してもよいし、その他の情報に基づいて電力配分制御の実行可否を判定してもよい。
【0087】
次いで制御装置50は、電池14およびEPU15が正常か否かを判定する(ステップS20)。電池14とEPU15に異常が生じていない場合、制御装置50は正常と判定し、ステップS30に移行する。電池14およびEPU15の少なくともひとつに異常が生じている場合、制御装置50は正常ではないと判定し、一連の処理を終了する。
【0088】
電池14およびEPU15が正常の場合、次いで制御装置50は、所定期間が終了したか否かを判定する(ステップS30)。上記したように、所定期間は予めメモリに格納された所定値でもよいし、電池状態の変動率が所定の変動率以下となるまでの期間でもよい。離陸動作から巡航動作に移行した直後の所定期間が終了すると、制御装置50は、ステップS40に移行する。所定期間が終了していない場合、制御装置50は、一連の処理を終了する。
【0089】
所定期間が終了すると、制御装置50は、複数の電池パック141間の状態ばらつきを抑制するように、複数の電池パック141の電力配分を決定する処理を実行する(ステップS40)。制御装置50は、共通のEPU15に電力を供給する複数の電池パック141について電力配分を決定してもよい。EPU15間、つまりEPU15それぞれに対応する電池パック141について電力配分を決定してもよい。EPU15間の電力配分を決定しつつ、各EPU15に対応する複数の電池パック141間の電力配分を決定してもよい。
【0090】
次いで制御装置50は、決定した配分で電池パック141の出力を制御し(ステップS50)、一連の処理を終了する。
【0091】
制御装置50は、所定期間を除く巡航動作時において、
図13に示す処理を所定周期で繰り返し実行してもよい。制御装置50は、巡航動作時の出力プロファイルを用いた巡航動作の完了時点における電池情報の推定値を取得し、この推定値に基づいて電力配分を決定してもよい。この場合、一度決めた電力配分にて、巡航動作が終了するまでステップS50の制御を実行してもよい。
【0092】
たとえば、ステップS20の処理を省略してもよい。所定期間が予め設定された所定値の場合、電池情報を取得する前に、所定期間の終了判定処理を行ってもよい。つまり、所定期間の終了後、電池情報を取得し、取得した電池情報に基づいて電力配分の決定および制御を実行してもよい。この場合、所定期間の終了前において電池情報を取得しない。
【0093】
ステップS20で電池14およびEPU15の少なくともひとつに異常ありと判定した場合、電力の均等配分制御を行ってもよい。電力の均等配分制御に代えて、それまでの制御を継続してもよい。同様に、ステップS30で所定期間が終了していないと判定した場合、電力の均等配分制御を行ってもよいし、それまでの制御を継続してもよい。
【0094】
図14に示すように、所定期間終了の判定処理と電力配分の決定処理との間に、状態ばらつきの判定処理(ステップS140)を追加してもよい。
図14に示すステップS110,S120,S130は、
図13に示したステップS10,S20,S30に対応している。ステップS150,S160は、ステップS40,S50に対応している。
【0095】
ステップS140において、制御装置50は、状態ばらつきが所定度合いThを超えたか否かを判定する。状態ばらつきが所定度合いThを超えると、制御装置50はステップS150の処理、つまり電力配分決定処理を実行する。状態ばらつきが所定度合いThを超えない場合、制御装置50は一連の処理を終了する。
【0096】
図15は、制御装置50が実行する電力配分制御処理、つまり電力配分のための制御方法の一例を示している。制御装置50は、たとえば離陸予定時刻の所定時間前に
図15に示す処理を開始してもよい。制御装置50は、離陸開始前に実行される所定処理や離陸開始前における所定状態をトリガとして、
図15に示す処理を開始してもよい。
【0097】
まず制御装置50は、電池情報を取得する(ステップS210)。電池情報として演算値を取得してもよいし、生データを取得し、演算により電池情報を取得してもよい。電池情報は、実測値、演算値、履歴データなどの電池データと離陸動作時の出力プロファイルなどのデータと用いて、回帰モデルなどにより算出される推定値または予測値でもよい。制御装置50は、電池情報として、離陸動作の終了時点における電池情報を取得する。
【0098】
次いで制御装置50は、電力配分を決定する処理を実行する(ステップS220)。制御装置50は、ステップS210で取得した電池情報を用いて離陸動作完了時点における電池状態のばらつきを予測し、複数の電池パック141間の状態ばらつきを抑制するように電力配分を決定する。制御装置50は、たとえばSOCと電池抵抗情報から、SOCばらつきを予測する。制御装置50は、たとえば電池温度情報から、温度ばらつきを予測する。制御装置50は、回帰モデルやマップモデルを用いて電力配分を決定してもよい。制御装置50は、たとえば共通のEPU15に電力を供給する複数の電池パック141について電力配分を決定する。
【0099】
次いで制御装置50は、離陸動作が開始したか否かを判定する(ステップS230)。制御装置50は、離陸動作を開始するまでステップS230の処理を繰り返す。離陸動作を開始したと判定すると、制御装置50は、ステップS220で決定した配分で電池パック141の出力を制御する(ステップS240)。離陸動作が終了すると、制御装置50はステップS240、ひいては
図15に示す一連の処理を終了する。
【0100】
このように制御装置50は、離陸動作前に電力配分を事前決定し、離陸開始時から事前決定した配分にて制御する。図示を省略するが、着陸動作についても同様である。制御装置50は、着陸動作前に電力配分を事前決定し、着陸開始時から事前決定した配分にて制御する。
【0101】
なお、巡航動作時(ステップS20参照)のように、電池14とEPU15が正常か否かを判定してもよい。制御装置50は、正常な場合にステップS220の配分決定処理を実行し、正常ではない場合に一連の処理を終了してもよい。
【0102】
<第1実施形態のまとめ>
上記したように、本実施形態の制御装置50は、複数の単位電池の電池情報を取得し、取得した電池情報に基づいて単位電池間の状態ばらつきを抑制するように、複数の単位電池の電力配分を決定する。単位電池(電池パック141)の状態を把握したうえで、複数の単位電池の電力配分を制御する。これにより、電池状態のばらつき、つまり単位電池間での偏りを抑制することができる。この結果、電池異常が生じるのを抑制することができる。たとえば、電池異常を未然に防止することができる。よって、飛行の安全性を高めることができる。
【0103】
上記したように離陸動作時の高出力負荷は、イオン濃度の偏りや温度の偏りを生じさせやすい。離陸動作から巡航動作に移行した直後は、上記した偏りの影響のため、電池状態の監視精度が一時的に低下する。制御装置50は、所定期間を除く動作期間の少なくとも一部において、電力配分制御を実行する。これにより、配分制御値の判断ミスを回避し、電池状態のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0104】
制御装置50は、所定期間において電力配分制御の実行を制限するとよい。制御装置50は、巡航動作に移行した直後の所定期間において電力配分制御を実行しない。これにより、配分制御値の判断ミスを回避、つまり誤作動を抑制することができる。
【0105】
所定期間は、離陸動作にともなう単位電池の状態の変動率に基づいて設定されてもよい。これによれば、監視精度が低下する変動率の大きい期間を避けて電力分配制御を実行することができる。よって、判断ミスをより確実に回避することができる。
【0106】
制御装置50は、状態ばらつきが所定度合いThを超えると、電力配分制御を実行してもよい。つまり、状態ばらつきが小さいときには、電力配分制御を実行しない構成としてもよい。電力分配の精度を考慮し、状態ばらつきが大きいときに電力配分制御を実行するため、状態ばらつきを効果的に抑制することができる。
【0107】
制御装置50は、所定期間を除く巡航動作時において、電力配分制御を実行してもよい。これにより、離陸動作によって大きくなった状態ばらつきを低減することができる。高出力が要求される着陸動作の前に状態ばらつきを低減数ことができる。離陸動作が完了した直後の所定期間を除く巡航動作時に電力配分制御を実行するため、配分制御値の判断ミスを回避し、電池状態のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0108】
巡航動作時の電力配分制御の一例として、制御装置50は、巡航動作時の出力プロファイルを用いた推定値または予測値を電池情報として、電力配分制御を実行してもよい。これにより、リアルタイム監視によるフィードバック制御に較べて、巡航動作時に生じ得る状態ばらつきを未然に防ぐことができる。
【0109】
制御装置50は、複数のEPU15それぞれに対応する電池パック141(単位電池)間の状態ばらつきを抑制するように、巡航動作時における複数のEPU15の出力配分を制御してもよい。巡航動作時には離着陸動作時のような高出力負荷は要求されず、EPU15によって負荷が異なる。異なる負荷が加わるEPU15間で出力配分を調整するため、状態ばらつきを効果的に抑制することができる。
【0110】
制御装置50は、離着陸動作における電力配分を離着陸動作の開始前に決定してもよい。離着陸動作の開始前に電力配分を決定するため、高出力負荷にともなう状態ばらつきの拡大を抑制することができる。
【0111】
制御装置50は、離着陸動作時の出力プロファイルを用いた予測値を電池情報として、電力配分を決定してもよい。予測に基づいて電力配分を事前決定する。よって、離着陸動作時において状態ばらつきを抑制することができる。たとえば離着陸動作時に生じ得る状態ばらつきを未然に防ぐことができる。
【0112】
制御装置50は、電池情報としてのSOCおよび/または電池温度に基づいて、電力配分を決定してもよい。特に高出力負荷時に大きなばらつきを生じやすいSOC、電池温度を電池情報として取り扱うため、電力配分の精度を向上することができる。
【0113】
図2に例示した冗長構成において、制御装置50は、互いに共通のEPU15に電力を供給する複数の電池パック141の間で、電力配分を制御してもよい。この構成では、EPU15が、複数のモータ151と、モータ151に個別に接続されたインバータ152を備える。よって、インバータ152を制御することで、電力配分制御が可能である。つまり、ハード構成を追加することなく、電力配分制御を実行することができる。
【0114】
本実施形態の制御方法は、電池情報を取得することと、電力配分を制御すること、を含む。電池情報の取得においては、電池14が備える複数の電池パック141(単位電池)の状態を示す電池情報を取得する。電力配分制御においては、所定期間を除く動作期間のうちの少なくとも一部において、電池情報に基づいて、複数の電池パック141間の状態ばらつきを抑制するように複数の電池パック141の電力配分を制御する。このように、単位電池(電池パック141)の状態を把握したうえで、複数の単位電池の電力配分を制御する。これにより、電池状態のばらつき、つまり単位電池間での偏りを抑制することができる。この結果、電池異常が生じるのを抑制することができる。たとえば、電池異常を未然に防止することができる。よって、飛行の安全性を高めることができる。
【0115】
上記したように離陸動作時の高出力負荷は、イオン濃度の偏りや温度の偏りを生じさせやすい。離陸動作から巡航動作に移行した直後は、上記した偏りの影響のため、電池状態の監視精度が一時的に低下する。これに対し、本実施形態の制御方法では、所定期間を除く動作期間の少なくとも一部において、電力配分制御を実行する。これにより、配分制御値の判断ミスを回避し、電池状態のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0116】
本実施形態のプログラム(プログラム203P)は、少なくともひとつのプロセッサ201(処理部)に、電池情報を取得することと、電力配分制御を実行すること、を実行させる。プログラム203Pは、プロセッサ201に、電池14が備える複数の電池パック141(単位電池)の状態を示す電池情報の取得を実行させる。プログラム203Pは、プロセッサ201に、所定期間を除く動作期間のうちの少なくとも一部において、電池情報に基づいて、複数の電池パック141間の状態ばらつきを抑制するように複数の電池パック141の電力配分制御を実行させる。このように、単位電池(電池パック141)の状態を把握したうえで、複数の単位電池の電力配分を制御する。これにより、電池状態のばらつきを抑制することができる。この結果、電池異常が生じるのを抑制することができる。たとえば、電池異常を未然に防止することができる。よって、飛行の安全性を高めることができる。
【0117】
特に、離陸動作時の高出力負荷は、イオン濃度の偏りや温度の偏りを生じさせやすい。離陸動作から巡航動作に移行した直後は、上記した偏りの影響のため、電池状態の監視精度が一時的に低下する。本実施形態のプログラム203Pによれば、所定期間を除く動作期間の少なくとも一部において電力配分制御を実行させる。これにより、配分制御値の判断ミスを回避し、電池状態のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0118】
<変形例>
EPU15および電池14は、冗長構成に限定されない。複数のEPU15がモータ151をそれぞれひとつのみ備え、各EPU15に対して互いに異なるひとつの電池パック141から電力を供給する構成にも提供することができる。制御装置50は、複数の電池パック141間の状態ばらつきを抑制するように、所定期間を除く動作期間の少なくとも一部において、複数の電池パック141の電力配分を制御する。
【0119】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、複数の単位電池の出力(放電)について電力配分を制御した。これに代えて、または付加して、複数の単位電池の入力(充電)について電力配分を制御してもよい。
【0120】
図16は、本実施形態に係る制御装置50を示している。
図16は、制御装置50を含むシステムを示している。制御装置50は、充電器60とともに電力制御システムを構成してもよい。制御装置50は、電池14およびEPU15の少なくともひとつと、充電器60とともにシステムを構成してもよい。制御装置50は、入力(充電)時において、電力配分制御を実行するように構成されている。充電器60は、機内に配置された発電機、燃料電池、電池14とは別の電池でもよいし、地上の充電器でもよい。電池14は、充電器60からの充電が可能である。
【0121】
充電器から電池14への充電を制御する機器である図示しない充電関連機器は、充電器60と一体的に設けられてもよいし、電池14と一体的に設けられてもよい。充電関連機器の作動は、制御装置50により制御される。充電関連機器は、充電作動のタイミングと連続作動時間を管理するために、充電器60と電池14とを電気的に接続または遮断する機能、つまり接続をオンオフする機能を有する。充電関連機器は、複数の電池パック141間において電力を配分する機能を有する。充電関連機器は、たとえばリレーを備えている。電流を制御する必要がある場合には、充電関連機器に電流調整機能を付加してもよい。たとえば抵抗、DC-DCコンバータ、双方向DC-DCコンバータなどを用いることができる。双方向で充電する機能を付加したい場合には、たとえば双方向DC-DCコンバータを用いることができる。
【0122】
図17は、制御装置50が実行する電力配分制御処理、つまり電力配分のための制御方法の一例を示している。制御装置50は、充電動作にともなって、
図17に示す処理を実行する。
【0123】
まず制御装置50は、電池情報を取得する(ステップS310)。電池情報として演算値を取得してもよいし、生データを取得し、演算により電池情報を取得してもよい。電池情報は、実測値でもよいし、推定値または予測値でもよい。
【0124】
次いで制御装置50は、電力配分を決定する処理を実行する(ステップS320)。制御装置50は、複数の電池パック141の状態ばらつきを抑制するように電力配分を決定する。制御装置50は、共通のEPU15に電力を供給する複数の電池パック141について電力配分を決定してもよい。EPU15間で電力配分を決定してもよい。複数のEPU15の間で電力配分を決定しつつ、各EPU15に対応する複数の電池パック141間で電力配分を決定してもよい。
【0125】
次いで制御装置50は、電池パック141からの出力を制限する(ステップS330)。これにより、電池パック141(電池14)は充電中において出力(放電)しない。次いで制御装置50は、ステップS320で決定した配分で電池パック141の入力を制御する(ステップS340)。制御装置50は、充電関連機器の作動を制御することで、複数の電池パック141間の状態ばらつきを抑制するように、充電における複数の電池パック141の電力配分を制御する。充電が終了すると、制御装置50はステップS340、ひいては
図17に示す一連の処理を終了する。
【0126】
制御装置50は、一度決めた電力配分にて、ステップS340の制御を実行してもよい。制御装置50は、
図17に示す処理を所定周期で繰り返し実行してもよい。つまり、電池情報の取得と電力配分の決定を所定周期ごとに実行し、決定した配分でステップS240の制御を実行してもよい。
【0127】
<第2実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、所定期間を除いた動作期間の一部である充電時において電力配分を制御する。これにより、充電が完了した時点で、複数の電池パック141(単位電池)間の状態ばらつきを抑制することができる。制御装置50は、出力(放電)時と入力(充電)時において電力配分を制御してもよい。出力時のみならず、入力時にも電力配分することで、電池状態のばらつきを抑制する機会を増やすことができる。
【0128】
制御装置50は、充電時において電池パック141(単位電池)からの出力を制限してもよい。充電時には電池パック141から出力しないため、安全性を向上することができる。また、ハーネスへの電流負荷増加を抑制することができる。
【0129】
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に示した構成のいずれとも組み合わせが可能である。
【0130】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、電池情報に基づいて電力配分を制御した。これに付加して、EPUを構成するモータの温度を考慮して電力配分を制御してもよい。
【0131】
図18は、制御装置50が実行する電力配分制御処理、つまり電力配分のための制御方法の一例を示している。
図18は、
図13に対応している。
図18に示す制御方法は、
図13に示した制御方法に対して、ステップS440,S450を追加した構成となっている。ステップS410,S420,S430は、
図13に示したステップS10,S20,S30に対応している。ステップS460,S470は、ステップS40,S50に対応している。
【0132】
ステップS410において、制御装置50は、電池情報とともにEPU15を構成するモータ151の温度情報を取得する。制御装置50は、モータ151それぞれの温度情報を取得する。
【0133】
ステップS430において所定期間が終了したと判定すると、制御装置50は、モータ151の温度が所定の閾値温度Tth以下であるか否かあるかを判定する(ステップ440)。モータ151の少なくともひとつの温度が閾値温度Tthを超える場合、制御装置50は閾値温度Tthを超えるモータ151(対象モータ)の出力を制限し(ステップS450)、次いでステップS460の電力配分決定処理を実行する。モータ151それぞれの温度が閾値温度Tth以下の場合、ステップS450の処理を実行せずに、ステップS460の処理を実行する。
【0134】
制御装置50は、ステップS460において、複数の電池パック141間の状態ばらつきを抑制するように、電力配分を決定する。モータ151の少なくともひとつの温度が閾値温度Tthを超える場合、制御装置50は、対象モータに電力を供給する電池パック141の出力を制限しつつ、残りの電池パック141の電力配分を決定する。制御装置50は、対象モータに電力を供給しない電池パック141間で状態ばらつきを抑制するように電力配分を決定する。
【0135】
モータ151それぞれの温度が閾値温度Tth以下の場合、制御装置50は、すべての電池パック141の電力配分を決定する。制御装置50は、すべての電池パック141間で状態ばらつきを抑制するように電力配分を決定する。
【0136】
<第3実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、モータ151の温度情報に基づいて、各電池パック141から供給する電力の配分を制御する。温度が閾値温度Tthを超えるモータ151(対象モータ)に電力を供給可能に接続された電池パック141の出力を制限し、残りの電池パック141の電力配分を決定する。対象モータに接続された電池パック141の電力配分をゼロとし、これにより対象モータが出力しないようにする。よって、電力配分制御を実行しつつ、モータ異常のリスクを回避することができる。
【0137】
<変形例>
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に示した構成のいずれとも組み合わせが可能である。
【0138】
モータ151の温度が閾値温度Tthを超えたらモータ151の出力を制限する例を示したが、これに限定されない。たとえば閾値温度Tthを多段に設定し、温度が高いほど制限量を大きくしてもよい。そして、制限量が大きいほど電力配分が小さくなるように、制限量を考慮して電力配分を決定してもよい。
【0139】
ステップS440,S450の処理を排除してもよい。制御装置50は、電池情報およびモータ温度情報に基づいて、電力配分を決定してもよい。制御装置50は、状態ばらつきを抑制しつつ、温度が高いモータ151の出力を制限するように、複数の電池パック141の電力配分を決定してもよい。
【0140】
ステップS440,S450の処理は、巡航の電力配分制御に限定されない。離陸や着陸の電力配分制御に適用してもよい。
【0141】
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、電池パックの状態ばらつきを抑制した。これに代えて、または付加して、電池モジュールの状態ばらつきを抑制してもよい。また、予備モジュールまたは予備パックを含む構成において、状態ばらつきを抑制するように予備モジュールまたは予備パックを選定してもよい。
【0142】
<電池モジュール>
図19および
図20のそれぞれは、本実施形態に係る制御装置50と、制御装置50によって電力配分制御が実行される複数の電池モジュールの一例を示している。上記したように、電池14は、所定単位の電池要素である単位電池を複数備えて構成されている。電池14は、単位電池として複数の電池モジュール142を備えている。電池14は、複数の電池モジュール142を含む電池パック141をひとつのみを備えてもよいし、複数備えてもよい。
【0143】
電池パック141を構成する複数の電池モジュール142は、たとえば
図19に示すように互いに直列に接続されてもよい。
図20に示すように、互いに並列に接続されててもよい。図示を省略するが、互いに直列および並列に接続されてもよい。
図19および
図20では、
図2に示した冗長構成において各電池パック(BP1,BP2)141が5つの電池モジュール(MDL1,MDL2,MDL3,MDL4,MDL5)142を備えている。電池モジュール142の数は、
図19および
図20に示す例に限定されない。
図3に示した冗長構成において、各電池パック141が複数の電池モジュール142を備えてもよい。電池14がひとつの電池パック141のみを備える構成において、電池パック141が複数の電池モジュール142を備えてもよい。
【0144】
各電池パック141は、任意の電池モジュール142を、他の電池モジュール142に対して電気的に切り離す機能を有している。このような遮断機能は、リレーや半導体スイッチにより提供することができる。
図19に例示する直列接続の場合、たとえば各電池モジュール142に対して2つのリレーまたは半導体スイッチを設けてもよい。第1のリレーをオン、第2のリレーをオフすると電池モジュール142を含む経路に電流が流れ、第1のリレーをオフ、第2のリレーをオンすると電池モジュール142の経路を迂回する経路に電流が流れる構成としてもよい。
図20に例示する並列接続の場合、たとえば各電池モジュール142に対してひとつのリレーまたは半導体スイッチを設けてもよい。オンにより電池モジュール142が電気的に接続され、オフにより電池モジュール142が切り離される。
【0145】
電池パック141を構成する複数の電池モジュール142は、他の電池モジュール142との電気的な接続が一時的に切り離された電池モジュール142である予備モジュール142Sを含んでいる。予備モジュール142Sは、入出力しない電池モジュール142である。一例として、
図19および
図20では、電池モジュール(MDL5)142が予備モジュール142Sとなっている。
【0146】
<電力配分制御>
EPU15を駆動する電池14の電圧は車用途に較べて高い。このため、電池モジュール142の直列接続数も多くなり、電池モジュール142間でのSOCばらつきや温度ばらつきも問題となる。このように、eVTOL10に代表される電動飛行体では、複数の電池モジュール142(単位電池)間の状態ばらつきも問題となる。
【0147】
制御装置50は、電池パック141を単位電池とする場合と同様に、複数の電池モジュール142の電力配分を制御する。制御装置50は、共通の電池パック141を構成する複数の電池モジュール142それぞれの電池情報を取得する。制御装置50は、取得した電池情報に基づいて、複数の電池モジュール142間の状態ばらつきを抑制するように、電気的に切り離す電池モジュール142、つまり予備モジュール142Sを選定する。
【0148】
制御装置50は、上記したリレーや半導体スイッチのオンオフを制御することで、任意の電池モジュール142を予備モジュール142Sに選定する。制御装置50は、SOCが低い電池モジュール142や電池温度が高い電池モジュール142を予備モジュール142Sとして選定してもよい。制御装置50は、巡航動作時や離着陸動作時において、必要に応じて予備モジュール142Sを切り替えてもよい。たとえば
図19に示す構成において、予備モジュール142Sを、電池モジュール(MDL5)142から電池モジュール(MDL3)142に切り替えてもよい。制御装置50は、複数の電池モジュール142の一部を予備モジュール142Sとして選定する。制御装置50は、ひとつの予備モジュール142Sを選定してもよいし、複数の予備モジュール142Sを選定してもよい。
【0149】
以上のようにして、制御装置50は、単位電池である電池モジュール142間の状態ばらつきを抑制するように、複数の電池モジュール142の電力配分を制御する。
【0150】
<第4実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、電池情報に基づいて、複数の電池モジュール142間の状態ばらつきを抑制するように、複数の電池モジュール142の中から予備モジュール142Sを選定する。これにより、EPU15へ供給する電力を大きく変化させることなく、電池パック141内において電池モジュール142の状態ばらつきを抑制することができる。たとえば電池モジュール142の電池状態を略均等にすることができる。
【0151】
また、一部の電池モジュール142に異常が生じた場合、その電池モジュール142を予備モジュール142Sとして切り離すことが可能である。よって、電池パック141内において冗長性を確保することができる。
【0152】
<変形例>
EPU15に対して複数の電池パック141から電力を供給する構成する例を示したが、これに限定されない。ひとつのEPU15に対して、複数の電池モジュール142を備えるひとつの電池パック141から電力を供給する構成においても、上記した予備モジュール142Sの選定を適用することができる。
【0153】
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に示した構成のいずれとも組み合わせが可能である。たとえば制御装置50は、複数の電池パック141間の状態ばらつきを抑制するように電池パック141の電力配分を制御し、かつ、各電池パック141において複数の電池モジュール142の状態ばらつきを抑制するように予備モジュール142Sを選定してもよい。複数の電池パック141間の状態ばらつきを抑制するように電池パック141の電力配分を制御する場合には、各電池パック141が備える複数の電池モジュール142の電力を均等制御としてもよい。
【0154】
図21に示すように、複数の電池パック141の中から予備パック141Sを選定してもよい。
図21では、
図3同様、単位電池である複数の電池パック141から共通のEPU15に対して電力を供給可能な構成となっている。複数の電池パック141が並列接続されている。複数の電池パック141は、PMU143を介してEPU15に電力を供給する。
【0155】
図21では、電池パック141のそれぞれを、他の電池パック141に対して電気的に切り離すことが可能となっている。このような遮断機能は、リレーや半導体スイッチにより提供することができる。オンにより電池パック141が電気的に接続され、オフにより電池パック141が切り離される。リレーや半導体スイッチは、MPU143が有してもよいし、各電池パック141が有してもよい。複数の電池パック141は、他の電池パック141との電気的な接続が一時的に切り離された電池パック141である予備パック141Sを含んでいる。予備パック141Sは、入出力しない電池パック141である。
【0156】
制御装置50は、上記したリレーや半導体スイッチのオンオフを制御することで、任意の電池パック141を予備パック141Sに選定する。制御装置50は、SOCが低い電池パック141や電池温度が高い電池パック141を予備パック141Sとして選定してもよい。制御装置50は、巡航動作時や離着陸動作時において、必要に応じて予備パック141Sを切り替えてもよい。制御装置50は、ひとつの予備パック141Sを選定してもよいし、複数の予備パック141Sを選定してもよい。
【0157】
制御装置50は、電池情報に基づいて、複数の電池パック141間の状態ばらつきを抑制するように、複数の電池パック141の中から予備パック141Sを選定する。これにより、電池パック141間において状態ばらつきを抑制することができる。たとえば電池パック141の電池状態を略均等にすることができる。また、一部の電池パック141に異常が生じた場合、その電池パック141を予備パック141Sとして切り離すことが可能である。よって、冗長性を高めることができる。
【0158】
なお、並列接続された複数の電池パック141の中から予備パック141Sを選定し、且つ、各電池パック141において複数の電池モジュール142の中から予備モジュール142Sを選定してもよい。並列接続された複数の電池パック141の中から予備パック141Sを選定する場合には、各電池パック141が備える複数の電池モジュール142の電力を均等制御としてもよい。
【0159】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0160】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0161】
ある要素または層が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の層に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在層が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0162】
本開示に示す種々のフローチャートは何れも一例であって、フローチャートを構成するステップの数や、処理の実行順は適宜変更可能である。また、本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。さらに、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0163】
たとえばプロセッサ201が備える機能の一部または全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、ひとつまたは複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。プロセッサ(演算コア)としては、CPUや、MPU、GPU、DFPなどを採用可能である。CPUは、Central Processing Unitの略称である。MPUは、Micro-Processing Unitの略称である。GPUは、Graphics Processing Unitの略称である。DFPは、Data Flow Processorの略称である。
【0164】
プロセッサ201が備える機能の一部または全部は、複数種類の演算処理装置を組み合わせて実現されていてもよい。プロセッサ201が備える機能の一部又は全部は、SoC、ASIC、FPGAなどを用いて実現されていても良い。SoCは、System on Chipの略称である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。FPGAは、Field-Programmable Gate Arrayの略称である。プロセッサ311についても同様である。
【0165】
また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に記憶されていてもよい。プログラムの保存媒体としては、HDD、SSD、フラッシュメモリ等を採用可能である。HDDは、Hard-disk Driveの略称である。SSDは、Solid State Driveの略称である。コンピュータを制御装置50として機能させるためのプログラム、当該プログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体等の形態も、本開示の範囲に含まれる。
【0166】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0167】
<技術的思想1>
電動飛行体(10)において電池(15)から回転翼(13)を駆動する電動推進装置(15)に供給する電力を制御する制御装置であって、
前記電池が備える複数の単位電池(141,142)の状態を示す電池情報を取得する取得部(51)と、
離陸動作から巡航動作に移行した直後の所定期間を除く動作期間のうちの少なくとも一部において、前記電池情報に基づいて、複数の前記単位電池間の状態ばらつきを抑制するように複数の前記単位電池の電力配分を制御する制御部(52)と、
を備える制御装置。
【0168】
<技術的思想2>
前記所定期間は、前記離陸動作にともなう前記単位電池の状態の変動率に基づいて設定される、技術的思想1に記載の制御装置。
【0169】
<技術的思想3>
前記制御部は、前記状態ばらつきが所定度合いを超えると、電力配分制御を実行する、技術的思想1または技術的思想2に記載の制御装置。
【0170】
<技術的思想4>
前記制御部は、前記所定期間において電力配分制御の実行を制限する、技術的思想1~3いずれかひとつに記載の制御装置。
【0171】
<技術的思想5>
前記制御部は、前記所定期間を除く前記巡航動作時において電力配分制御を実行する、技術的思想1~4いずれかひとつに記載の制御装置。
【0172】
<技術的思想6>
前記制御部は、前記巡航動作時の出力プロファイルを用いて推定または予測された前記電池情報に基づいて、電力配分制御を実行する、技術的思想5に記載の制御装置。
【0173】
<技術的思想7>
前記電動飛行体は、前記電動推進装置を複数備えており、
前記制御部は、複数の前記電動推進装置それぞれに対応する前記単位電池間の状態ばらつきを抑制するように、前記巡航動作時における複数の前記電動推進装置の出力配分を制御する、技術的思想5または技術的思想6に記載の制御装置。
【0174】
<技術的思想8>
前記制御部は、離着陸動作における電力配分を前記離着陸動作の開始前に決定する、技術的思想1~7いずれかひとつに記載の制御装置。
【0175】
<技術的思想9>
前記制御部は、前記離着陸動作時の出力プロファイルを用いて予測された予測値を前記電池情報として、電力配分を決定する、技術的思想8に記載の制御装置。
【0176】
<技術的思想10>
前記制御部は、複数の前記単位電池の充電動作時において、各単位電池に供給する電力配分を制御する、技術的思想1~9いずれかひとつに記載の制御装置。
【0177】
<技術的思想11>
前記制御部は、前記充電動作時において、前記単位電池からの出力を制限する、技術的思想10に記載の制御装置。
【0178】
<技術的思想12>
前記制御部は、前記電池情報としてのSOCおよび/または電池温度に基づいて、前記電力配分を決定する、技術的思想1~11いずれかひとつに記載の制御装置。
【0179】
<技術的思想13>
複数の前記単位電池は、各電動推進装置が備える複数のモータに対して個別に接続された複数の電池パックであり、
前記制御部は、前記電動推進装置に供給する電力配分を複数の前記電池パックの間で制御する、技術的思想1~12いずれかひとつに記載の制御装置。
【0180】
<技術的思想14>
前記制御部は、前記モータの温度情報に基づいて、各電池パックから供給する電力の配分を制御する、技術的思想13に記載の制御装置。
【0181】
<技術的思想15>
複数の前記単位電池は、互いに直列接続および/または並列接続されて電池パックを構成する複数の電池モジュールであり、
複数の前記電池モジュールは、他の前記電池モジュールとの電気的な接続が一時的に切り離された予備モジュール(142S)を含み、
前記制御部は、前記電池情報に基づいて、複数の前記電池モジュールの状態ばらつきを抑制するように、複数の前記電池モジュールの中から前記予備モジュールを選定する、技術的思想1~14いずれかひとつに記載の制御装置。
【0182】
<技術的思想16>
複数の前記単位電池は、互いに共通の前記電動推進装置に対して電力を供給可能な複数の電池パックであり、
複数の前記電池パックは、前記電動推進装置との電気的な接続が一時的に切り離された予備パック(141S)を含み、
前記制御部は、前記電池情報に基づいて、複数の前記電池パックの状態ばらつきを抑制するように、複数の前記電池パックの中から前記予備パックを選定する、技術的思想1~12いずれかひとつに記載の制御装置。
【符号の説明】
【0183】
10…eVTOL、11…機体本体、12…固定翼、121…主翼、122…尾翼、13…回転翼、131…ブレード、132…シャフト、14…電池、141…電池パック、141…予備パック、142…電池モジュール、142S…予備モジュール、15…EPU、151…モータ、152…インバータ、20…ECU、201…プロセッサ、202…メモリ、203…ストレージ、203P…プログラム、204…通信回路、30…地上局、31…サーバ、311…プロセッサ、312…メモリ、313…ストレージ、313P…プログラム、314…通信回路、40…運航管理システム、41…機外管理部、42…機内管理部、50…制御装置、51…取得部、52…制御部、521…個別制御部、522…統合制御部、60…充電器