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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012880
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】デジタル移相器
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/18 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
H01P1/18
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114658
(22)【出願日】2022-07-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】上道 雄介
(57)【要約】
【課題】接続部の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布を平均化することができるデジタル移相器を提供する。
【解決手段】デジタル移相器100は、第1のデジタル移相回路群の端部に位置する第1のデジタル移相回路(例えばデジタル移相回路10-10)と、第2のデジタル移相回路群の端部に位置する第2のデジタル移相回路(例えばデジタル移相回路10-11)とを接続するベンド型の接続部(例えば接続部20-1)を備え、接続部20における第1の接続線路、第1のデジタル移相回路群をなす隣接する2つのデジタル移相回路10の信号線路同士の接続位置近傍、及び、第2のデジタル移相回路群をなす隣接する2つのデジタル移相回路10の信号線路同士の接続位置近傍の少なくとも1つに、コンデンサ50が並列接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデジタル移相回路が縦続接続された第1のデジタル移相回路群と、
複数のデジタル移相回路が縦続接続された第2のデジタル移相回路群と、
前記第1のデジタル移相回路群の端部に位置する第1のデジタル移相回路と、前記第2のデジタル移相回路群の端部に位置する第2のデジタル移相回路とを接続するベンド型の接続部と、
を少なくとも一つずつ備え、
前記デジタル移相回路は、信号線路、前記信号線路の両側に設けられた一対の内側線路、前記一対の内側線路の外側に設けられた一対の外側線路、前記一対の内側線路及び前記一対の外側線路の各一端に接続された第1の接地導体、前記一対の外側線路の各他端に接続された第2の接地導体、前記一対の内側線路の各他端と前記第2の接地導体との間に各々設けられる一対の電子スイッチを少なくとも有し、前記一対の内側線路にリターン電流が流れる低遅延モード又は前記一対の外側線路にリターン電流が流れる高遅延モードに設定される回路であり、
前記接続部における前記第1のデジタル移相回路の前記信号線路と前記第2のデジタル移相回路の前記信号線路とを接続する第1の接続線路、前記第1のデジタル移相回路群をなす隣接する2つの前記デジタル移相回路の前記信号線路同士の接続位置近傍、及び、前記第2のデジタル移相回路群をなす隣接する2つの前記デジタル移相回路の前記信号線路同士の接続位置近傍の少なくとも1つに、コンデンサが並列接続されている、
デジタル移相器。
【請求項2】
少なくとも一つの前記第1の接続線路の中間部に、前記コンデンサが並列接続されている、請求項1に記載のデジタル移相器。
【請求項3】
少なくとも一つの前記第1の接続線路における前記第1のデジタル移相回路側の一端部と前記第2のデジタル移相回路側の他端部のそれぞれに、前記コンデンサが並列接続されている、請求項1に記載のデジタル移相器。
【請求項4】
前記第1のデジタル移相回路の前記信号線路と、前記第1のデジタル移相回路に隣接する第3のデジタル移相回路の前記信号線路との接続位置近傍、及び、前記第2のデジタル移相回路の前記信号線路と、前記第2のデジタル移相回路に隣接する第4のデジタル移相回路の前記信号線路との接続位置近傍、のそれぞれに、前記コンデンサが並列接続されている、請求項1に記載のデジタル移相器。
【請求項5】
前記コンデンサの一端側を接地させるか否かを切り替える電子スイッチを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【請求項6】
複数の前記デジタル移相回路の少なくとも1つは、移相量の分布を緩和する緩和回路とされている、請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【請求項7】
前記デジタル移相回路は、
前記信号線路と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間に接続される第2のコンデンサと、
前記信号線路と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間に前記第2のコンデンサを接続するか否かを切り替える第2の電子スイッチと、を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【請求項8】
前記接続部は、
前記第1のデジタル移相回路の前記一対の内側線路と前記第2のデジタル移相回路の前記一対の内側線路とを接続する一対の第2の接続線路と、
前記第1の接続線路及び前記一対の第2の接続線路の上方及び下方の少なくとも一方に配置されるグランド層と、
少なくとも前記一対の第2の接続線路と前記グランド層とを接続するビアホールと、を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【請求項9】
前記接続部は、
前記第1のデジタル移相回路の前記一対の外側線路と前記第2のデジタル移相回路の前記一対の外側線路とを接続する一対の第3の接続線路を備える、請求項8に記載のデジタル移相器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル移相器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、マイクロ波、準ミリ波、又はミリ波等の高周波信号を対象とするデジタル制御型の移相回路(デジタル移相回路)が開示されている。このデジタル移相回路は、実際には多数が縦続接続された状態で半導体基板上に実装される。即ち、デジタル移相回路は、実際のデジタル移相器の構成における単位ユニットであり、数十個が縦続接続されることによって所望の機能を発揮する。
【0003】
デジタル移相器の構成が、上記のデジタル移相回路が一列に繋げられた構成である場合にはデジタル移相器の長さが長くなる。デジタル移相器の長さを短くするためには、デジタル移相器の構成を、折れ曲がりの構造を有するベンド型の線路等の接続部を用いて折り曲げた構成にすることが考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A Ka-band Digitally-Controlled Phase Shifter with sub-degree Phase Precision (2016,IEEE,RFIC)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、多数のデジタル移相回路が縦続接続された構成のデジタル位相器においては、移相量に分布が生じないことが望ましい。しかしながら、上述したベンド型の線路等の接続部を用いて折り曲げた構成のデジタル位相器は、良好な入出力インピーダンス整合が取られている状況においても、接続部の前後で生ずる微弱な反射に起因して移相量に分布が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、接続部の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布を平均化することができるデジタル移相器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係るデジタル移相器は、複数のデジタル移相回路が縦続接続された第1のデジタル移相回路群と、複数のデジタル移相回路が縦続接続された第2のデジタル移相回路群と、前記第1のデジタル移相回路群の端部に位置する第1のデジタル移相回路と、前記第2のデジタル移相回路群の端部に位置する第2のデジタル移相回路とを接続するベンド型の接続部と、を少なくとも一つずつ備え、前記デジタル移相回路は、信号線路、前記信号線路の両側に設けられた一対の内側線路、前記一対の内側線路の外側に設けられた一対の外側線路、前記一対の内側線路及び前記一対の外側線路の各一端に接続された第1の接地導体、前記一対の外側線路の各他端に接続された第2の接地導体、前記一対の内側線路の各他端と前記第2の接地導体との間に各々設けられる一対の電子スイッチを少なくとも有し、前記一対の内側線路にリターン電流が流れる低遅延モード又は前記一対の外側線路にリターン電流が流れる高遅延モードに設定される回路であり、前記接続部における前記第1のデジタル移相回路の前記信号線路と前記第2のデジタル移相回路の前記信号線路とを接続する第1の接続線路、前記第1のデジタル移相回路群をなす隣接する2つの前記デジタル移相回路の前記信号線路同士の接続位置近傍、及び、前記第2のデジタル移相回路群をなす隣接する2つの前記デジタル移相回路の前記信号線路同士の接続位置近傍の少なくとも1つに、コンデンサが並列接続されている。
【0008】
本発明の第1の態様に係るデジタル移相器では、接続部における第1の接続線路、第1のデジタル移相回路群をなす隣接する2つのデジタル移相回路の間、及び、第2のデジタル移相回路群をなす隣接する2つのデジタル移相回路の間の少なくとも1つに、コンデンサを並列接続する。これにより、接続部の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布を平均化することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様のデジタル移相器において、少なくとも一つの前記第1の接続線路の中間部に、前記コンデンサが並列接続されてもよい。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様のデジタル移相器において、少なくとも一つの前記第1の接続線路における前記第1のデジタル移相回路側の一端部と前記第2のデジタル移相回路側の他端部のそれぞれに、前記コンデンサが並列接続されてもよい。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1から第3の態様のいずれか一つのデジタル移相器において、前記第1のデジタル移相回路の前記信号線路と、前記第1のデジタル移相回路に隣接する第3のデジタル移相回路の前記信号線路との接続位置近傍、及び、前記第2のデジタル移相回路の前記信号線路と、前記第2のデジタル移相回路に隣接する第4のデジタル移相回路の前記信号線路との接続位置近傍、のそれぞれに、前記コンデンサが並列接続されてもよい。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1から第4の態様のいずれか一つのデジタル移相器において、前記コンデンサの一端側を接地させるか否かを切り替える電子スイッチを備えてもよい。
【0013】
本発明の第6の態様は、第1から第5の態様のいずれか一つのデジタル移相器において、複数の前記デジタル移相回路の少なくとも1つは、移相量の分布を緩和する緩和回路とされてもよい。
【0014】
本発明の第7の態様は、第1から第6の態様のいずれか一つのデジタル移相器において、前記デジタル移相回路は、前記信号線路と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間に接続される第2のコンデンサと、前記信号線路と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間に前記第2のコンデンサを接続するか否かを切り替える第2の電子スイッチと、を備えてもよい。
【0015】
本発明の第8の態様は、第1から第7の態様のいずれか一つのデジタル移相器において、前記接続部は、前記第1のデジタル移相回路の前記一対の内側線路と前記第2のデジタル移相回路の前記一対の内側線路とを接続する一対の第2の接続線路と、前記第1の接続線路及び前記一対の第2の接続線路の上方及び下方の少なくとも一方に配置されるグランド層と、少なくとも前記一対の第2の接続線路と前記グランド層とを接続するビアホールと、を備えてもよい。
【0016】
本発明の第9の態様は、第8の態様のデジタル移相器において、前記接続部は、前記第1のデジタル移相回路の前記一対の外側線路と前記第2のデジタル移相回路の前記一対の外側線路とを接続する一対の第3の接続線路を備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明の一態様によれば、接続部の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布を平均化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係るデジタル移相器を示す回路図である。
図2】第1実施形態に係るデジタル移相回路を示す斜視図である。
図3】第1実施形態に係るデジタル移相回路の高遅延モードを説明する図である。
図4】第1実施形態に係るデジタル移相回路の低遅延モードを説明する図である。
図5】第1実施形態に係る接続部を示す平面図である。
図6図5中のA-A線に沿う矢視断面図である。
図7】第1実施形態に係る接続部の変形例を示す断面図である。
図8】第1実施形態に係るデジタル移相器の移相量の分布を示す図である。
図9】第2実施形態に係るデジタル移相器を示す回路図である。
図10】第2実施形態に係るデジタル移相器の移相量の分布を示す図である。
図11】第3実施形態に係るデジタル移相器を示す回路図である。
図12】第3実施形態に係るデジタル移相器の移相量の分布を示す図である。
図13】第4実施形態に係るコンデンサ周辺の回路図である。
図14】第5実施形態に係る緩和回路のうちの第1緩和回路を説明する図である。
図15】第5実施形態に係る緩和回路のうちの第2緩和回路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるデジタル移相器について詳細に説明する。尚、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、必要に応じて各部材の寸法を適宜変えて図示している。
【0020】
(第1実施形態)
〈デジタル移相器〉
図1は、第1実施形態に係るデジタル移相器100を示す回路図である。図1に示す通り、第1実施形態のデジタル移相器100は、複数のデジタル移相回路10(10-1~10-40)と、複数の接続部20(20-1~20-3)と、を備える。このようなデジタル移相器100は、所定の周波数帯域の信号Sを、縦続接続された複数のデジタル移相回路10によって移相する。信号Sは、マイクロ波、 準ミリ波、又はミリ波等の周波数帯域を有する高周波信号である。
【0021】
複数のデジタル移相回路10は、電気的に縦続接続されている。図1では、40個のデジタル移相回路10(10-1~10-40)が縦続接続されている例を図示しているが、縦続接続されるデジタル移相回路10の数は任意である。図1に示す例では、説明の便宜上、縦続接続されている40個のデジタル移相回路10を、図1において実線矢印で示す信号Sが流れる順番に、デジタル移相回路10-1,10-2,…,10-40としている。但し、信号Sが流れる方向は、図1において点線矢印で示すように逆でもよい。
【0022】
ここで、デジタル移相回路10は、複数個を単位としてデジタル移相回路群30を構成する。具体的に、1番目から10番目までのデジタル移相回路10-1~10-10は、デジタル移相回路群30-1を構成し、11番目から20番目までのデジタル移相回路10-11~10-20は、デジタル移相回路群30-2を構成する。また、21番目から30番目までのデジタル移相回路10-21~10-30は、デジタル移相回路群30-3を構成し、31番目から40番目までのデジタル移相回路10-31~10-40は、デジタル移相回路群30-4を構成する。
【0023】
換言すると、デジタル移相器100は、複数のデジタル移相回路10-1~10-10が縦続接続されたデジタル移相回路群30-1と、複数のデジタル移相回路10-11~10-20が縦続接続されたデジタル移相回路群30-2と、を有する。また、デジタル移相器100は、複数のデジタル移相回路10-21~10-30が縦続接続されたデジタル移相回路群30-3と、複数のデジタル移相回路10-31~10-40が縦続接続されたデジタル移相回路群30-4と、を有する。
【0024】
接続部20は、ベンド型の形状を有しており、2つのデジタル移相回路群30を接続する。図1に示す例において、接続部20は、180°ベンドの形状を有している。具体的に、接続部20-1は、デジタル移相回路群30-1の信号Sが入力される一端とは反対側の他端と、デジタル移相回路群30-2の一端とを接続する。接続部20-2は、デジタル移相回路群30-2の他端と、デジタル移相回路群30-3の一端とを接続する。接続部20-3は、デジタル移相回路群30-3の他端と、デジタル移相回路群30-4の一端とを接続する。
【0025】
つまり、接続部20-1は、デジタル移相回路群30-1(第1のデジタル移相回路群)におけるデジタル移相回路10-10(第1のデジタル移相回路)と、デジタル移相回路群30-2(第2のデジタル移相回路群)におけるデジタル移相回路10-11(第2のデジタル移相回路)とを接続する。接続部20-2は、デジタル移相回路群30-2(第1のデジタル移相回路群)におけるデジタル移相回路10-20(第1のデジタル移相回路)と、デジタル移相回路群30-3(第2のデジタル移相回路群)におけるデジタル移相回路10-21(第2のデジタル移相回路)とを接続する。接続部20-3は、デジタル移相回路群30-3(第1のデジタル移相回路群)におけるデジタル移相回路10-30(第1のデジタル移相回路)と、デジタル移相回路群30-4(第2のデジタル移相回路群)におけるデジタル移相回路10-31(第2のデジタル移相回路)とを接続する。
【0026】
デジタル移相回路群30-1とデジタル移相回路群30-2とが接続部20-1によって接続されることにより、信号Sの経路が180°折り曲げられる。また、デジタル移相回路群30-2とデジタル移相回路群30-3とが接続部20-2によって接続されることにより、信号Sの経路が180°折り曲げられる。同様に、デジタル移相回路群30-3とデジタル移相回路群30-4とが接続部20-3によって接続されることにより、信号Sの経路が180°折り曲げられる。このように、デジタル移相回路群30-1~30-4は、互いに並行に配列され、接続部20-1~20-3を介してメアンダ状に接続されている。尚、接続部20の詳細については後述する。
【0027】
〈デジタル移相回路〉
図2は、第1実施形態に係るデジタル移相回路10を示す斜視図である。図2に示す通り、デジタル移相回路10は、信号線路1、一対の内側線路2(第1の内側線路2a及び第2の内側線路2b)、一対の外側線路3(第1の外側線路3a及び第2の外側線路3b)、一対の接地導体4(第1の接地導体4a及び第2の接地導体4b)、コンデンサ5、複数の接続導体6、4つの電子スイッチ7(電子スイッチ7a,7b,7c,7d)、及びスイッチ制御部8を備える。
【0028】
信号線路1は、所定方向に延在する直線状の帯状導体である。即ち、信号線路1は、一定幅W1、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。図2に示す例では、信号線路1には、手前側から奥側に向かって信号Sが流れる。
【0029】
第1の内側線路2aは、直線状の帯状導体である。即ち、第1の内側線路2aは、一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第1の内側線路2aは、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。第1の内側線路2aは、信号線路1と平行に設けられており、信号線路1の一方側(図1における右側)に所定の距離M1だけ離間している。
【0030】
第2の内側線路2bは、直線状の帯状導体である。即ち、第2の内側線路2bは、第1の内側線路2aと同様に、一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第2の内側線路2bは、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。第2の内側線路2bは、信号線路1と平行に設けられており、信号線路1の他方側(図1における左側)に所定の距離M1だけ離間している。
【0031】
第1の外側線路3aは、信号線路1の一方側において、第1の内側線路2aよりも信号線路1から遠い位置に設けられる直線状の帯状導体である。第1の外側線路3aは、一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第1の外側線路3aは、信号線路1に対して第1の内側線路2aを挟んだ状態で信号線路1から所定距離を隔てて平行に設けられている。第1の外側線路3aは、第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bと同様に、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。
【0032】
第2の外側線路3bは、信号線路1の他方側において、第2の内側線路2bよりも信号線路1から遠い位置に設けられる直線状の帯状導体である。第2の外側線路3bは、第1の外側線路3aと同様に、一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第2の外側線路3bは、信号線路1に対して第2の内側線路2bを挟んだ状態で信号線路1から所定距離を隔てて平行に設けられている。第2の外側線路3bは、第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bと同様に、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。
【0033】
第1の接地導体4aは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bの各一端側に設けられる直線状の帯状導体である。第1の接地導体4aは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bの各一端に電気的に接続されている。第1の接地導体4aは、一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。
【0034】
第1の接地導体4aは、同一方向に延在する第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bに直交するように設けられている。第1の接地導体4aは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bから所定距離を隔てた下方に設けられている。
【0035】
第1の接地導体4aは、左右方向における一端が第1の外側線路3aの右側縁部と略同一位置となるように設定されている。また、第1の接地導体4aは、左右方向における他端が第2の外側線路3bの左側縁部と略同一位置となるように設定されている。
【0036】
第2の接地導体4bは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bの各他端側に設けられる直線状の帯状導体である。第2の接地導体4bは、第1の接地導体4aと同様に一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。
【0037】
第2の接地導体4bは、第1の接地導体4aに対して平行に配置されており、第1の接地導体4aと同様に、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bに直交するように設けられている。第2の接地導体4bは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bから所定距離を隔てた下方に設けられている。
【0038】
第2の接地導体4bは、左右方向における一端が第1の外側線路3aの右側縁部と略同一位置となるように設定されている。また、第2の接地導体4bは、左右方向における他端が第2の外側線路3bの左側縁部と略同一位置となるように設定されている。即ち、第2の接地導体4bは、左右方向における位置が第1の接地導体4aと同一である。
【0039】
コンデンサ5は、信号線路1の他端と第2の接地導体4bとの間に設けられる。例えば、コンデンサ5は、上部電極が信号線路1に対して接続され、下部電極が電子スイッチ7dに対して電気的に接続されている。例えば、コンデンサ5は、MIM(Metal Insulator Metal)構造の薄膜のコンデンサである。尚、コンデンサ5は、平行平板の対向面積に応じた静電容量を有する。但し、コンデンサ5は平行平板コンデンサに替えて、櫛歯型コンデンサを用いてもよい。
【0040】
複数の接続導体6は、少なくとも接続導体6a~6fを含む。接続導体6aは、第1の内側線路2aの一端と第1の接地導体4aとを電気的且つ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6aは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が第1の内側線路2aの下面に接続し、他端(下端)が第1の接地導体4aの上面に接続する。
【0041】
接続導体6bは、第2の内側線路2bの一端と第1の接地導体4aとを電気的且つ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6bは、接続導体6aと同様に上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が第2の内側線路2bの下面に接続し、他端(下端)が第1の接地導体4aの上面に接続する。
【0042】
接続導体6cは、第1の外側線路3aの一端と第1の接地導体4aとを電気的且つ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6cは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が第1の外側線路3aの一端における下面に接続し、他端(下端)が第1の接地導体4aの上面に接続する。
【0043】
接続導体6dは、第1の外側線路3aの他端と第2の接地導体4bとを電気的且つ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6dは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が第1の外側線路3aの他端における下面に接続し、他端(下端)が第2の接地導体4bの上面に接続する。
【0044】
接続導体6eは、第2の外側線路3bの一端と第1の接地導体4aとを電気的且つ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6eは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が第2の外側線路3bの一端における下面に接続し、他端(下端)が第1の接地導体4aの上面に接続する。
【0045】
接続導体6fは、第2の外側線路3bの他端と第2の接地導体4bとを電気的且つ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6fは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が第2の外側線路3bの他端における下面に接続し、他端(下端)が第2の接地導体4bの上面に接続する。
【0046】
接続導体6gは、信号線路1の他端とコンデンサ5の上部電極とを電気的且つ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6gは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が信号線路1の他端における下面に接続し、他端(下端)がコンデンサ5の上部電極に接続する。
【0047】
電子スイッチ7aは、第1の内側線路2aの他端と第2の接地導体4bとの間に接続される。電子スイッチ7aは、例えばMOS型FET(電界効果トランジスタ)であり、ドレイン端子が第1の内側線路2aの他端に電気的に接続され、ソース端子が第2の接地導体4bに電気的に接続され、ゲート端子がスイッチ制御部8に電気的に接続されている。
【0048】
電子スイッチ7aは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。閉状態とは、ドレイン端子及びソース端子が導通している状態である。開状態とは、ドレイン端子及びソース端子が導通しておらず、電気的な接続が遮断している状態である。電子スイッチ7aは、スイッチ制御部8の制御によって、第1の内側線路2aの他端及び第2の接地導体4bを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。
【0049】
電子スイッチ7bは、第2の内側線路2bの他端と第2の接地導体4bとの間に接続される。電子スイッチ7bは、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が第2の内側線路2bの他端に接続され、ソース端子が第2の接地導体4bに接続され、ゲート端子がスイッチ制御部8に接続されている。
【0050】
電子スイッチ7bは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。電子スイッチ7bは、スイッチ制御部8の制御によって、第2の内側線路2bの他端及び第2の接地導体4bを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。
【0051】
電子スイッチ7cは、信号線路1の他端と第2の接地導体4bとの間に接続される。電子スイッチ7cは、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が信号線路1の他端に接続され、ソース端子が第2の接地導体4bに接続され、ゲート端子がスイッチ制御部8に接続されている。尚、図2に示す例では、電子スイッチ7cは、信号線路1の他端側に設けられているが、これに限定されず、信号線路1の一端側に設けられてもよい。尚、電子スイッチ7cは、必要がなければ使用しなくてもよい。
【0052】
電子スイッチ7cは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。電子スイッチ7cは、スイッチ制御部8の制御によって、信号線路1の他端及び第2の接地導体4bを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。
【0053】
電子スイッチ7dは、信号線路1の他端と第2の接地導体4bとの間において、コンデンサ5に対して直列に接続される。電子スイッチ7dは、例えばMOS型FETである。図2に示す例では、電子スイッチ7dは、ドレイン端子がコンデンサ5の下部電極に接続され、ソース端子が第2の接地導体4bに接続され、ゲート端子がスイッチ制御部8に接続されている。
【0054】
電子スイッチ7dは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。電子スイッチ7dは、スイッチ制御部8の制御によって、コンデンサ5の下部電極及び第2の接地導体4bを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。
【0055】
スイッチ制御部8は、複数の電子スイッチ7a,7b,7c,7dを制御する制御回路である。例えば、スイッチ制御部8は、4つの出力ポートを備えている。スイッチ制御部8は、各出力ポートから個別のゲート信号を出力して複数の電子スイッチ7の各ゲート端子に供給することにより複数の電子スイッチ7のそれぞれを個別に開状態又は閉状態に制御する。
【0056】
図2ではデジタル移相回路10の機械的構造が解り易いようにデジタル移相回路10を斜視した模式図を示しているが、実際のデジタル移相回路10は、半導体製造技術を利用することにより、多層構造物として形成される。
【0057】
一例として、デジタル移相回路10は、信号線路1、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bが第1の導電層に形成されている。第1の接地導体4a及び第2の接地導体4bは、絶縁層を挟んで第1の導電層と対向する第2の導電層に形成されている。第1の導電層に形成された構成要素と第2の導電層に形成された構成要素とは、ビアホール(via hole)によって相互に接続される。複数の接続導体6は、絶縁層内に埋設されたビアホールに相当する。
【0058】
次に、本実施形態におけるデジタル移相回路10の動作について説明する。デジタル移相回路10は、動作モードとして、高遅延モードと低遅延モードとを有する。デジタル移相回路10は、高遅延モード又は低遅延モードで動作する。
【0059】
《高遅延モード》
図3は、第1実施形態に係るデジタル移相回路10の高遅延モードを説明する図である。高遅延モードは、信号Sに第1の位相差を発生させるモードである。高遅延モードでは、図3に示す通り、電子スイッチ7a及び電子スイッチ7bが開状態に制御され、電子スイッチ7dが閉状態に制御される。
【0060】
電子スイッチ7aが開状態に制御されることにより、第1の内側線路2aの他端と第2の接地導体4bとの電気的な接続が遮断された状態となる。電子スイッチ7bが開状態に制御されることにより、第2の内側線路2bの他端と第2の接地導体4bとの電気的な接続が遮断された状態となる。電子スイッチ7dが閉状態に制御されることにより、信号線路1の他端は、コンデンサ5を介して第2の接地導体4bに接続された状態となる。
【0061】
信号線路1に入力端(他端)から出力端(一端)に向かって信号Sが伝搬すると、信号Sとは逆方向である一端から他端に向かってリターン電流R1が流れる。高遅延モードでは、電子スイッチ7a及び電子スイッチ7bが開状態であるため、リターン電流R1は、主として、図3に示す通り、第1の外側線路3a及び第2の外側線路3bを流れる。
【0062】
高遅延モードでは、リターン電流R1が第1の外側線路3a及び第2の外側線路3bを流れるため、低遅延モードと比較して、インダクタンス値Lが高い。高遅延モードでは、低遅延モードよりも大きな遅延量を得ることができる。また、電子スイッチ7dが閉状態になることで、信号線路1の他端と第2の接地導体4bとがコンデンサ5で電気的に接続されるため、デジタル移相回路10の静電容量値Cも高い。よって、高遅延モードでは、低遅延モードよりも大きな遅延量を得ることができる。
【0063】
《低遅延モード》
図4は、第1実施形態に係るデジタル移相回路10の低遅延モードを説明する図である。低遅延モードは、信号Sに第1の位相差よりも小さい第2の位相差を発生させるモードである。低遅延モードでは、図4に示す通り、電子スイッチ7a及び電子スイッチ7bが閉状態に制御され、電子スイッチ7dが開状態に制御される。
【0064】
電子スイッチ7aが閉状態に制御されることにより、第1の内側線路2aの他端と第2の接地導体4bとが電気的に接続された状態となる。電子スイッチ7bが閉状態に制御されることにより、第2の内側線路2bの他端と第2の接地導体4bとが電気的に接続された状態となる。
【0065】
信号線路1に入力端(他端)から出力端(一端)に向かって信号Sが伝搬すると、信号Sとは逆方向である一端から他端に向かってリターン電流R2が流れる。低遅延モードでは、電子スイッチ7a及び電子スイッチ7bが閉状態であるため、リターン電流R2は、主として、図4に示す通り、第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bを流れる。
【0066】
低遅延モードでは、リターン電流R2が第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bを流れるため、高遅延モードと比較して、インダクタンス値Lが低い。低遅延モードでの遅延量は、高遅延モードでの遅延量よりも小さくなる。また、信号線路1の他端にはコンデンサ5が接続されているが、電子スイッチ7dが開状態であるため、コンデンサ5の静電容量は機能せず(信号線路1からは見えず)、コンデンサ5の静電容量に比べて極めて小さい寄生容量が存在するのみである。よって、低遅延モードでは、高遅延モードよりも小さい遅延量を得ることができる。
【0067】
ここで、低遅延モードでは、電子スイッチ7cが閉状態に制御されることにより、信号線路1の損失を意図的に増加させることも可能である。これは、低遅延モードにおける高周波信号の損失を高遅延モードにおける高周波信号の損失と同程度とするためのものである。
【0068】
即ち、低遅延モードにおける高周波信号の損失は、高遅延モードにおける高周波信号の損失よりも明確に小さい。この損失差は、動作モードを低遅延モードと高遅延モードとに切り替えた場合にデジタル移相回路10から出力される高周波信号の振幅差を招来させるものである。このような事情に対して、デジタル移相回路10では、低遅延モードで電子スイッチ7cを閉状態に制御することにより、上記振幅差を解消することもある。
【0069】
〈接続部〉
図5は、第1実施形態に係る接続部20を示す平面図である。図6は、図5中のA-A線に沿う矢視断面図である。尚、本実施形態のデジタル移相器100は、3つの接続部20(接続部20-1,20-2,20-3)を備えるが、3つの接続部20は同様の構成であるため、ここでは、接続部20-1について説明する。図5図6に示す通り、接続部20-1は、第1の接続線路21、第2の接続線路22、第3の接続線路23、第1のグランド層24、及び第2のグランド層25を備える。
【0070】
第1の接続線路21は、例えば、一定幅W2、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第1の接続線路21は、デジタル移相回路10-10の信号線路1と、デジタル移相回路10-11の信号線路1とを接続する。デジタル移相回路10-10の信号線路1から出力される信号Sは、第1の接続線路21を介してデジタル移相回路10-11の信号線路1に入力される。尚、第1の接続線路21の幅W2は、信号線路1の幅W1と同様であってもよいし、幅W1よりも広くてもよい。
【0071】
第2の接続線路22は、一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第2の接続線路22は、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。第2の接続線路22は、第1の接続線路21と平行に設けられており、所定の距離M2だけ離間している。具体的には、第2の接続線路22は、第1の接続線路21の両側において第1の接続線路21から所定の距離M2だけ離間して配置されている。尚、以下の説明において、第1の接続線路21の一方側に配置された第2の接続線路22を、「第2の接続線路22a」といい、第1の接続線路21の他方側に配置された第2の接続線路22を、「第2の接続線路22b」という場合がある。
【0072】
所定の距離M2は、所定の距離M1と同等であってもよいし、所定の距離M1よりも短い距離であってもよい。例えば、所定の距離M1が10μmである場合には、所定の距離M2は10μm未満に設定されてもよい。より好ましくは、所定の距離M2は、例えば2.5μm又は2μm以下であり、第1の接続線路21に対して第2の接続線路22を可能な限り接近させることが望ましい。本実施形態において、第1の接続線路21に対し第2の接続線路22を製造限界又は製造限界近くまで接近させてもよい。
【0073】
第2の接続線路22は、デジタル移相回路10-10の内側線路2と、デジタル移相回路10-11の内側線路2とを接続する。第2の接続線路22aは、一端がデジタル移相回路10-10の第1の内側線路2aに接続され、他端がデジタル移相回路10-11の第1の内側線路2aに接続される。第2の接続線路22bは、一端がデジタル移相回路10-10の第2の内側線路2bに接続され、他端がデジタル移相回路10-11の第2の内側線路2bに接続される。
【0074】
第3の接続線路23は、第1の接続線路21の一方側及び他方側の両側において、第2の接続線路22よりも第1の接続線路21から遠い位置に設けられる帯状導体である。第3の接続線路23は、第1の接続線路21に対して第2の接続線路22を挟んだ状態で第1の接続線路21から所定距離を隔てて平行に設けられている。尚、以下の説明において、第1の接続線路21の一方側に配置された第3の接続線路23を、「第3の接続線路23a」といい、第1の接続線路21の他方側に配置された第3の接続線路23を、「第3の接続線路23b」という場合がある。
【0075】
第3の接続線路23は、デジタル移相回路10-10の外側線路3と、デジタル移相回路10-11の外側線路3とを接続する。第3の接続線路23aは、一端がデジタル移相回路10-10の第1の外側線路3aに接続され、他端がデジタル移相回路10-11の第1の外側線路3aに接続される。第3の接続線路23bは、一端がデジタル移相回路10-10の第2の外側線路3bに接続され、他端がデジタル移相回路10-11の第2の外側線路3bに接続される。
【0076】
第1のグランド層24は、第1の接続線路21及び第2の接続線路22から所定距離を隔てた上方に設けられている。第1のグランド層24は、第1のグランド層24の幅が少なくとも各第2の接続線路22の一方側の側面220まで延在していることが好ましい。側面220とは、第1の接続線路21が配置されている側とは反対の側面である。
【0077】
第1のグランド層24は、第2の接続線路22a及び第2の接続線路22bのそれぞれに対してビアホール40を介して接続されている。ビアホール40は、図5に示す通り、第2の接続線路22aに沿って複数配列されているとともに、第2の接続線路22bに沿って複数配列されている。
【0078】
第2のグランド層25は、第1の接続線路21及び第2の接続線路22から所定距離を隔てた下方に設けられている。第2のグランド層25は、第2のグランド層25の幅が少なくとも各第2の接続線路22の一方側の側面220まで延在していることが好ましい。
【0079】
第2のグランド層25は、第2の接続線路22a及び第2の接続線路22bのそれぞれに対してビアホール42を介して接続されている。ビアホール42は、ビアホール40と同様に、第2の接続線路22aに沿って複数配列されているとともに、第2の接続線路22bに沿って複数配列されている。
【0080】
図7は、第1実施形態に係る接続部20の変形例を示す断面図である。図7に示す通り、接続部20は、第1のグランド層24が、第3の接続線路23の上方まで延在し、且つ、第2のグランド層25が、第3の接続線路23の下方まで延在するものであってもよい。
【0081】
この変形例において、第1のグランド層24は、第2の接続線路22a及び第2の接続線路22bのそれぞれに対してビアホール40を介して接続され、第3の接続線路23a及び第3の接続線路23bのそれぞれに対してビアホール41を介して接続されている。尚、図7に例示される構成では、ビアホール41は、第3の接続線路23aに沿って複数配列されるとともに、第3の接続線路23bに沿って複数配列される。
【0082】
また、第2のグランド層25は、第2の接続線路22a及び第2の接続線路22bのそれぞれに対してビアホール42を介して接続され、第3の接続線路23a及び第3の接続線路23bのそれぞれに対してビアホール43を介して接続されている。尚、図7に例示される構成では、ビアホール43は、ビアホール41と同様に、第3の接続線路23aに沿って複数配列されるとともに、第3の接続線路23bに沿って複数配列される。
【0083】
尚、図6及び図7に示す例では、接続部20-1は、第1のグランド層24と第2のグランド層25とを有しているが、これに限定されず、第1のグランド層24と第2のグランド層25との少なくとも一方を備えていればよい。即ち、第1の接続線路21の上方及び下方の少なくとも一方にグランド層が配置されていればよい。
【0084】
図1に戻り、上記構成の接続部20には、コンデンサ50が並列接続されている。コンデンサ50は、接続部20の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布を平均化するリアクタンス素子である。コンデンサ50は、3つの接続部20(接続部20-1,20-2,20-3)のそれぞれの中間部に並列接続されている。なお、コンデンサ50は、3つの接続部20(接続部20-1,20-2,20-3)の少なくとも一つの中間部に並列接続されていればよい。接続部20の中間部とは、好ましくは接続部20の全長の1/2の中間位置であるが、当該中間位置の近傍であっても構わない。例えば、接続部20の中間部とは、接続部20の全長を3等分したときの真ん中の領域であってもよく、好ましくは、接続部20の全長を5等分したときの真ん中の領域であってもよい。
【0085】
コンデンサ50は、例えば、MIM(Metal Insulator Metal)構造の薄膜のコンデンサである。コンデンサ50は、平行平板の対向面積に応じた静電容量を有する。但し、コンデンサ5は平行平板コンデンサに替えて、櫛歯型コンデンサを用いてもよい。コンデンサ50は、上部電極が第1の接続線路21に対して接続され、下部電極が電気的に接地されている。尚、コンデンサ50の下部電極は、第1のグランド層24、第2のグランド層25、その他のグランド(図示しないデジタル移相器100のフレームグランド等)のいずれかに接続されてもよい。
【0086】
〈デジタル移相器の特性〉
図8は、第1実施形態に係るデジタル移相器100の移相量の分布を示す図である。尚、図8(a)に示す移相量分布は、デジタル移相器100からコンデンサ50を削除した比較例についてのものである。また、図8(b)に示す移相量分布は、デジタル移相器100(実施例1)についてのものである。図8に示すグラフは、横軸にデジタル移相回路10の番号(「1」~「40」)をとり、縦軸にデジタル移相回路10毎の移相量をとってある。
【0087】
図8に示す移相量分布は、デジタル移相回路10-1~10-40の全てが高遅延モードに設定されている状態から、デジタル移相回路10-1~10-40の順で、順次低遅延モードへ切り替え制御を行った場合に得られたものである。また、図8に示す移相量分布は、信号Sの周波数が30[GHz]で、コンデンサ50の静電容量が40[fF]の場合のものである。デジタル移相器100の理想的な特性は、図8に示すグラフの上部が平坦であること(移相量の分布がないこと)である。
【0088】
尚、デジタル移相回路10-1~10-40の制御は、デジタル移相回路10-1から開始され、デジタル移相回路10-1~10-40の接続順に順次行われる。これは、デジタル移相回路10-n(nは、1≦n≦39を満たす整数)では、デジタル移相回路10-(n+1)が接続された側とは反対側(の接地導体)にコンデンサ5が設けられている(接続されている)ためである。
【0089】
つまり、メアンダ状に接続されたデジタル移相回路群30-1~30-4をなすデジタル移相回路10のうち、最も外側に位置するのは、デジタル移相回路10-1及びデジタル移相回路10-40である。これらデジタル移相回路10-1及びデジタル移相回路10-40のうち、デジタル移相回路10-2が接続された側とは反対側にコンデンサ5が設けられているデジタル移相回路10-1から制御が開始される。
【0090】
まず、図8(a)を参照すると、接続部20の近傍のデジタル移相回路10(デジタル移相回路10-10、10-20、10-30等)において、移相量の分布に凸部が生じていることが分かる。
次に、図8(b)を参照すると、接続部20の近傍のデジタル移相回路10(デジタル移相回路10-10、10-20、10-30等)において、移相量の分布の凸部が小さくなっており、図8(a)と比較して、移相量の分布が平均化されている(平坦(または平坦に近い状態)になっている)ことが分かる。このため、接続部20の中間部に、コンデンサ50を並列接続することが望ましいことが分かる。
【0091】
接続部20は、伝送線路からなっており、特性インピーダンスは実部が支配的である。これに対して複数のデジタル移相回路10が縦続接続されたデジタル移相回路群30のインピーダンスは、虚部も無視できず、これらの差異によって接続部20において微弱な反射が引き起こされ、移相量の分布につながっているものと推察される。この推察の下、第1実施形態では、原因と想定される箇所(接続部20の中間部)に、虚部の素子(リアクタンス素子であるコンデンサ50)を導入した。これにより、第1実施形態では、移相量の分布が平均化した。
【0092】
以上の通り、本実施形態のデジタル移相器100は、複数のデジタル移相回路10が縦続接続された第1のデジタル移相回路群(例えばデジタル移相回路群30-1)と、複数のデジタル移相回路10が縦続接続された第2のデジタル移相回路群(例えばデジタル移相回路群30-2)と、第1のデジタル移相回路群の端部に位置する第1のデジタル移相回路(例えばデジタル移相回路10-10)と、第2のデジタル移相回路群の端部に位置する第2のデジタル移相回路(例えばデジタル移相回路10-11)とを接続するベンド型の接続部(例えば接続部20-1)と、を備える。
尚、第1のデジタル移相回路群は、デジタル移相回路群30-1~30-4のいずれであっても構わない。第2のデジタル移相回路群は、当該第1のデジタル移相回路群と異なるデジタル移相回路群であればよい。すなわち、デジタル移相回路群30-1~30-4は、第1のデジタル移相回路群に相当する場合もあれば、他のデジタル移相回路群との関係で第2のデジタル移相回路群に相当する場合もある。また、コンデンサ50が並列接続された接続部20は、第1のデジタル移相回路群と第2のデジタル移相回路群を接続するものであれば、接続部20-1~20-3の少なくとも一つであってもよい。
【0093】
また、デジタル移相回路10は、図2に示すように、信号線路1、信号線路1の両側に設けられた一対の内側線路2、一対の内側線路2の外側に設けられた一対の外側線路3、一対の内側線路2及び一対の外側線路3の各一端に接続された第1の接地導体4a、一対の外側線路3の各他端に接続された第2の接地導体4b、一対の内側線路2の各他端と第2の接地導体4bとの間に各々設けられる一対の電子スイッチ7a,7bを少なくとも有し、一対の内側線路2にリターン電流が流れる低遅延モード又は一対の外側線路3にリターン電流が流れる高遅延モードに設定される回路である。
【0094】
このデジタル移相器100において、接続部20の第1の接続線路21の中間部に、コンデンサ50を並列接続する。これにより、図8に示すように、接続部20の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布を平均化することができる。
【0095】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0096】
〈デジタル移相器〉
図9は、第2実施形態に係るデジタル移相器100Aを示す回路図である。図9に示すように第2実施形態におけるデジタル移相器100Aは、接続部20における両端部に、コンデンサ50が並列接続されている点で、上記実施形態と異なる。
【0097】
具体的に、接続部20-1においては、デジタル移相回路10-10側の一端部と、デジタル移相回路10-11側の他端部のそれぞれに、コンデンサ50が並列接続されている。
【0098】
接続部20-1の一端部とは、好ましくは接続部20-1とデジタル移相回路10-10との接続位置(接点)であるが、当該接続位置の近傍であっても構わない。例えば、接続部20-1の一端部とは、接続部20-1の全長を3等分したときのデジタル移相回路10-10側の領域であってもよく、好ましくは、接続部20-1の全長を5等分したときの最もデジタル移相回路10-10側の領域であってもよい。
【0099】
また、接続部20-1の他端部とは、好ましくは接続部20-1とデジタル移相回路10-11との接続位置(接点)であるが、当該接続位置の近傍であっても構わない。例えば、接続部20の他端部とは、接続部20-1の全長を3等分したときのデジタル移相回路10-11側の領域であってもよく、好ましくは、接続部20-1の全長を5等分したときの最もデジタル移相回路10-11側の領域であってもよい。
【0100】
同様に、接続部20-2においては、デジタル移相回路10-20側の一端部と、デジタル移相回路10-21側の他端部のそれぞれに、コンデンサ50が並列接続されている。また同様に、接続部20-3においては、デジタル移相回路10-30側の一端部と、デジタル移相回路10-31側の他端部のそれぞれに、コンデンサ50が並列接続されている。
【0101】
〈デジタル移相器の特性〉
図10は、第2実施形態に係るデジタル移相器100Aの移相量の分布を示す図である。尚、図10(a)に示す移相量分布は、デジタル移相器100Aからコンデンサ50を削除した比較例についてのものである。また、図10(b)に示す移相量分布は、デジタル移相器100A(実施例2)についてのものである。その他の条件は、図8と同様である。
【0102】
まず、図10(a)を参照すると、接続部20の近傍のデジタル移相回路10(デジタル移相回路10-10、10-20、10-30等)において、移相量の分布に凸部が生じていることが分かる。
次に、図10(b)を参照すると、接続部20の近傍のデジタル移相回路10(デジタル移相回路10-10、10-20、10-30等)において、移相量の分布の凸部が小さくなっており、図10(a)と比較して、移相量の分布が平均化されている(平坦(または平坦に近い状態)になっている)ことが分かる。このため、接続部20の両端部に、コンデンサ50を並列接続することが望ましいことが分かる。
【0103】
以上の通り、第2実施形態のデジタル移相器100Aでは、接続部20(例えば接続部20-1)における第1のデジタル移相回路(例えばデジタル移相回路10-10)側の一端部と第2のデジタル移相回路(例えばデジタル移相回路10-11)側の他端部のそれぞれに、コンデンサ50が並列接続されている。このように、接続部20において微弱な反射が引き起こされる原因と想定される箇所(接続部20の両端部)に、虚部の素子(リアクタンス素子であるコンデンサ50)を導入することで、移相量の分布を平均化することができる。
【0104】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0105】
〈デジタル移相器〉
図11は、第3実施形態に係るデジタル移相器100Bを示す回路図である。図11に示すように第3実施形態におけるデジタル移相器100Bは、接続部20と接続される、接続部20から見て1つ目のデジタル移相回路10と、そのデジタル移相回路10に隣接する2つ目のデジタル移相回路10との間に、コンデンサ50が並列接続されている点で、上記実施形態と異なる。
【0106】
具体的に、デジタル移相回路群30-1においては、接続部20-1に接続されるデジタル移相回路10-10と、デジタル移相回路10-10に隣接するデジタル移相回路10-9との間に、コンデンサ50が並列接続されている。
【0107】
デジタル移相回路10-10とデジタル移相回路10-9との間とは、好ましくはデジタル移相回路10-10の信号線路1とデジタル移相回路10-9の信号線路1との接続位置(接点)であるが、当該接続位置の近傍であっても構わない。例えば、デジタル移相回路10-10とデジタル移相回路10-9との間とは、当該接続位置からデジタル移相回路10-10側に僅かにズレた、デジタル移相回路10-10側の信号線路1でもよいし、当該接続位置からデジタル移相回路10-9側に僅かにズレた、デジタル移相回路10-9側の信号線路1でもよい。また、デジタル移相回路10-10の信号線路1とデジタル移相回路10-9の信号線路1とが図示しない伝送線路で接続されていれば、その伝送線路でもよい。
【0108】
同様に、デジタル移相回路群30-2においては、接続部20-1に接続されるデジタル移相回路10-11と、デジタル移相回路10-11に隣接するデジタル移相回路10-12との間に、コンデンサ50が並列接続されている。さらに、デジタル移相回路群30-2においては、接続部20-2に接続されるデジタル移相回路10-20と、デジタル移相回路10-20に隣接するデジタル移相回路10-19との間に、コンデンサ50が並列接続されている。
【0109】
同様に、デジタル移相回路群30-3においては、接続部20-2に接続されるデジタル移相回路10-21と、デジタル移相回路10-21に隣接するデジタル移相回路10-22との間に、コンデンサ50が並列接続されている。さらに、デジタル移相回路群30-3においては、接続部20-3に接続されるデジタル移相回路10-30と、デジタル移相回路10-30に隣接するデジタル移相回路10-29との間に、コンデンサ50が並列接続されている。
【0110】
同様に、デジタル移相回路群30-4においては、接続部20-3に接続されるデジタル移相回路10-31と、デジタル移相回路10-31に隣接するデジタル移相回路10-32との間に、コンデンサ50が並列接続されている。
【0111】
〈デジタル移相器の特性〉
図12は、第3実施形態に係るデジタル移相器100Bの移相量の分布を示す図である。尚、図12(a)に示す移相量分布は、デジタル移相器100Bからコンデンサ50を削除した比較例についてのものである。また、図12(b)に示す移相量分布は、デジタル移相器100B(実施例3)についてのものである。その他の条件は、図8と同様である。
【0112】
まず、図12(a)を参照すると、接続部20の近傍のデジタル移相回路10(デジタル移相回路10-10、10-20、10-30等)において、移相量の分布に凸部が生じていることが分かる。
次に、図12(b)を参照すると、接続部20の近傍のデジタル移相回路10(デジタル移相回路10-10、10-20、10-30等)において、移相量の分布の凸部が小さくなっており、図12(a)と比較して、移相量の分布が平均化されている(凹凸の差が小さくなっている)ことが分かる。このため、接続部20に隣接する1つ目及び2つ目のデジタル移相回路10のセル間に、コンデンサ50を並列接続することが望ましいことが分かる。
【0113】
以上の通り、第3実施形態のデジタル移相器100Bは、第1のデジタル移相回路群(例えばデジタル移相回路群30-1)に含まれるデジタル移相回路10であって、第1のデジタル移相回路(例えばデジタル移相回路10-10)と、第1のデジタル移相回路に隣接する第3のデジタル移相回路(例えばデジタル移相回路10-9)との間、及び、第2のデジタル移相回路群(例えばデジタル移相回路群30-2)に含まれるデジタル移相回路10であって、第2のデジタル移相回路(例えばデジタル移相回路10-11)と、第2のデジタル移相回路に隣接する第4のデジタル移相回路(例えばデジタル移相回路10-12)との間、のそれぞれに、コンデンサ50が並列接続されている。この構成によれば、接続部20において微弱な反射が引き起こされる原因と想定される箇所(接続部20から見て1つ目及び2つ目のデジタル移相回路10のセル間)に、虚部の素子(リアクタンス素子であるコンデンサ50)を導入することで、移相量の分布を平均化することができる。
【0114】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0115】
図13は、第4実施形態に係るコンデンサ50周辺の回路図である。第4実施形態では、図13に示すように、移相量の分布を平均化するコンデンサ50の下部電極側に、電子スイッチ51を備えている。なお、電子スイッチ51は、コンデンサ50の上部電極側に設けられてもよい。図13に示す電子スイッチ51は、コンデンサ50の下部電極とグランドとの間において、コンデンサ50に対して直列に接続される。電子スイッチ51は、例えばMOS型FETである。図13に示す例では、電子スイッチ51は、ドレイン端子がコンデンサ50の下部電極に接続され、ソース端子がグランドに接続され、ゲート端子がスイッチ制御部8(図2参照)に接続されている。
【0116】
電子スイッチ51は、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。電子スイッチ51は、スイッチ制御部8の制御によって、コンデンサ50の下部電極及びグランドを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。なお、電子スイッチ51は、バイポーラートランジスター(BJT)等であっても構わない。
【0117】
このように、第4実施形態では、コンデンサ50の一端側(下部電極側)を接地させるか否かを切り替える電子スイッチ51を備える。電子スイッチ51は、信号Sの所望の周波数帯が、第1の周波数帯である場合にON(閉状態)になり、第2の周波数帯である場合にOFF(開状態)になることで、各々の所望の周波数帯に応じて好適にコンデンサ50の効果を発揮させることができる。
【0118】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0119】
第5実施形態では、上記移相量の分布の凸部や凹部をさらに緩和するため、上述したデジタル移相回路10-1~10-40の少なくとも1つが、接続部20の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布を緩和する緩和回路RCとされている。
緩和回路RCには、後述するように、第1緩和回路RC1と第2緩和回路RC2とがある。第1緩和回路RC1は、緩和回路RC(第1緩和回路RC1、第2緩和回路RC2)以外のデジタル移相回路10と比較して大きな移相量を有するデジタル移相回路10であって、上記の移相量の分布の凹部を緩和する回路である。第2緩和回路RC2は、緩和回路RC(第1緩和回路RC1、第2緩和回路RC2)以外のデジタル移相回路10と比較して小さな移相量を有するデジタル移相回路10であって、上記の移相量の分布の凸部を緩和する回路である。
【0120】
例えば図8(b)の場合、デジタル移相回路10-40は、第2緩和回路RC2とされてもよい。また、デジタル移相回路10-25は、第1緩和回路RC1とされてもよい。尚、緩和回路RC(第1緩和回路RC1、第2緩和回路RC2)の具体的構成については後述する。
【0121】
〈緩和回路〉
《第1緩和回路》
図14は、第5実施形態に係る緩和回路RCのうちの第1緩和回路RC1を説明する図である。第1緩和回路RC1の基本的な構成は、緩和回路RC(第1緩和回路RC1、第2緩和回路RC2)以外のデジタル移相回路10(以下、「標準デジタル移相回路ST」という)とほぼ同様である。但し、第1緩和回路RC1は、標準デジタル移相回路STと比較して大きな移相量を有するように、標準デジタル移相回路STとは若干構成が異なる。
【0122】
具体的に、第1緩和回路RC1は、以下に列挙する条件の少なくとも1つを満足する構成である。
・条件1:長さが標準デジタル移相回路STよりも長い
・条件2:信号線路1と内側線路2との距離が標準デジタル移相回路STよりも短い
・条件3:信号線路1と外側線路3との距離が標準デジタル移相回路STよりも長い
・条件4:コンデンサ5が標準デジタル移相回路STよりも大きい
・条件5:電子スイッチ7a,7bが標準デジタル移相回路STよりも大きい
【0123】
図14(a)は、上記の「条件1」を満足する第1緩和回路RC1を示す図である。図14(a)に示す第1緩和回路RC1は、長さ(信号線路1、内側線路2、外側線路3等の長さ)Paが、標準デジタル移相回路STの長さPよりも長い。
【0124】
図14(b)は、上記の「条件2」を満足する第1緩和回路RC1を示す図である。図14(b)に示す第1緩和回路RC1は、信号線路1と内側線路2(第1の内側線路2a及び第2の内側線路2b)との距離Qaが、標準デジタル移相回路STにおける信号線路1と内側線路2(第1の内側線路2a及び第2の内側線路2b)との距離Qよりも短い。
【0125】
図14(c)は、上記の「条件3」を満足する第1緩和回路RC1を示す図である。図14(c)に示す第1緩和回路RC1は、信号線路1と外側線路3(第1の外側線路3a及び第2の外側線路3b)との距離Raが、標準デジタル移相回路STにおける信号線路1と外側線路3(第1の外側線路3a及び第2の外側線路3b)との距離Rよりも長い。
【0126】
図14(d)は、上記の「条件4」を満足する第1緩和回路RC1を示す図である。図14(d)に示す第1緩和回路RC1は、コンデンサ5の大きさが、標準デジタル移相回路STにおけるコンデンサ5の大きさよりも大きい。尚、図示は省略しているが、上記の「条件5」を満足する第1緩和回路RC1は、電子スイッチ7a及び電子スイッチ7b(図2~4参照)の大きさが、標準デジタル移相回路STの電子スイッチ7a及び電子スイッチ7bの大きさよりも大きい。
【0127】
第1緩和回路RC1は、上述の通り、標準デジタル移相回路STと比較して大きな移相量を有する。このため、標準デジタル移相回路STに代えて第1緩和回路RC1を用いることで、移相量を大きくすることができる。従って、例えば、接続部20の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布が凹部を有している場合には、第1緩和回路RC1を用いることで、その凹部を緩和することができる。
【0128】
《第2緩和回路》
図15は、第5実施形態に係る緩和回路RCのうちの第2緩和回路RC2を説明する図である。第2緩和回路RC2の基本的な構成は、第1緩和回路RC1と同様に、標準デジタル移相回路STとほぼ同様である。但し、第2緩和回路RC2は、標準デジタル移相回路STと比較して小さな移相量を有するように、標準デジタル移相回路STとは若干構成が異なる。
【0129】
具体的に、第2緩和回路RC2は、以下に列挙する条件の少なくとも1つを満足する構成である。
・条件1:長さが標準デジタル移相回路STよりも短い
・条件2:信号線路1と内側線路2との距離が標準デジタル移相回路STよりも長い
・条件3:信号線路1と外側線路3との距離が標準デジタル移相回路STよりも短い
・条件4:コンデンサ5が標準デジタル移相回路STよりも小さい
・条件5:電子スイッチ7a,7bが標準デジタル移相回路STよりも小さい
【0130】
図15(a)は、上記の「条件1」を満足する第2緩和回路RC2を示す図である。図15(a)に示す第2緩和回路RC2は、長さ(信号線路1、内側線路2、外側線路3等の長さ)Paが、標準デジタル移相回路STの長さPよりも短い。
【0131】
図15(b)は、上記の「条件2」を満足する第2緩和回路RC2を示す図である。図15(b)に示す第2緩和回路RC2は、信号線路1と内側線路2(第1の内側線路2a及び第2の内側線路2b)との距離Qaが、標準デジタル移相回路STにおける信号線路1と内側線路2(第1の内側線路2a及び第2の内側線路2b)との距離Qよりも長い。
【0132】
図15(c)は、上記の「条件3」を満足する第2緩和回路RC2を示す図である。図15(c)に示す第2緩和回路RC2は、信号線路1と外側線路3(第1の外側線路3a及び第2の外側線路3b)との距離Raが、標準デジタル移相回路STにおける信号線路1と外側線路3(第1の外側線路3a及び第2の外側線路3b)との距離Rよりも短い。
【0133】
図15(d)は、上記の「条件4」を満足する第2緩和回路RC2を示す図である。図15(d)に示す第2緩和回路RC2は、コンデンサ5の大きさが、標準デジタル移相回路STにおけるコンデンサ5の大きさよりも小さい。尚、図示は省略しているが、上記の「条件5」を満足する第2緩和回路RC2は、電子スイッチ7a及び電子スイッチ7b(図2~4参照)の大きさが、標準デジタル移相回路STの電子スイッチ7a及び電子スイッチ7bの大きさよりも小さい。
【0134】
第2緩和回路RC2は、上述の通り、標準デジタル移相回路STと比較して小さな移相量を有する。このため、標準デジタル移相回路STに代えて第2緩和回路RC2を用いることで、移相量を小さくすることができる。従って、例えば、接続部20の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布が凸部を有している場合には、第2緩和回路RC2を用いることで、その凸部を緩和することができる。
【0135】
以上の通り、第5実施形態では、複数のデジタル移相回路10が縦続接続された複数のデジタル移相回路群30と、2つのデジタル移相回路群30の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部20とを備え、少なくとも1つのデジタル移相回路群30をなすデジタル移相回路10の少なくとも1つが、移相量の分布を緩和する緩和回路RCとされている。このため、接続部20の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布をさらに緩和することができる。
【0136】
ここで、上記の緩和回路RCは、標準デジタル移相回路STと比較して大きな移相量を有するデジタル移相回路10である第1緩和回路RC1と、標準デジタル移相回路STと比較して小さな移相量を有するデジタル移相回路10である第2緩和回路RC2との少なくとも一方を含む。第1緩和回路RC1を用いることで移相量の分布の凹部を緩和することができ、第2緩和回路RC2を用いることで移相量の分布の凸部を緩和することができる。このように、第1緩和回路RC1と第2緩和回路RC2とを用いることで、移相量の分布が凹部を有するものであっても、凸部を有するものであっても対応することが可能である。
【0137】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、信号Sの周波数が30[GHz]である場合について説明したが、信号Sの周波数は、30[GHz]以外であってもよい。例えば、マイクロ波、 準ミリ波、又はミリ波等の周波数帯域における任意の周波数であってよい。
【0138】
また、上記実施形態では、デジタル移相回路10がコンデンサ5(第2のコンデンサ)を備える構成について説明したが、当該コンデンサ5が無い構成であっても構わない。この場合、コンデンサ5の下部電極に接続される電子スイッチ7d(第2の電子スイッチ)も無くても構わない。
【符号の説明】
【0139】
1…信号線路、2…内側線路、2a…第1の内側線路、2b…第2の内側線路、3…外側線路、3a…第1の外側線路、3b…第2の外側線路、4…接地導体、4a…第1の接地導体、4b…第2の接地導体、5…(第2の)コンデンサ、6…接続導体、6a~6g…接続導体、7…電子スイッチ、7a~7d…電子スイッチ、8…スイッチ制御部、10…デジタル移相回路、10-1~10-40…デジタル移相回路、20…接続部、20-1~20-3…接続部、21…第1の接続線路、22…第2の接続線路、22a…第2の接続線路、22b…第2の接続線路、23…第3の接続線路、23a…第3の接続線路、23b…第3の接続線路、24…第1のグランド層、25…第2のグランド層、30…デジタル移相回路群、30-1~30-4…デジタル移相回路群、40~43…ビアホール、50…コンデンサ、51…電子スイッチ、100…デジタル移相器、100A…デジタル移相器、100B…デジタル移相器、220…側面、R1…リターン電流、R2…リターン電流、Ra…距離、RC…緩和回路、RC1…第1緩和回路、RC2…第2緩和回路、S…信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15