(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128815
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20240913BHJP
F03D 13/20 20160101ALI20240913BHJP
【FI】
E04H1/02
F03D13/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038048
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】廣田 大
【テーマコード(参考)】
2E025
3H178
【Fターム(参考)】
2E025AA03
2E025AA12
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB31
3H178BB77
3H178CC22
3H178DD67X
(57)【要約】
【課題】太陽光パネルを設置し難い建物であっても、再生可能エネルギーである風力を利用して発電することができる建物を提供する。
【解決手段】屋上40に設けられて、複数の壁部(機械室42の側壁42a及び意匠壁43)により風の流通方向に沿って風の流路面積を狭めて屋上40に吹く風を増幅させる増幅部60と、増幅部60に設けられた回転可能な風車51を有し、風車51の回転によって発電可能な風力発電機50を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋上に設けられ、複数の壁部により風の流通方向に沿って風の流路面積を狭めて前記屋上に吹く風を増幅させる増幅部と、
前記増幅部に設けられた回転可能な風車を有し、前記風車の回転によって発電可能な風力発電機を具備する、
建物。
【請求項2】
前記増幅部は、
前記流通方向の一側にある一側部と、他側にある他側部とを有し、
前記風車は、前記一側部と前記他側部との境界部分において、風を受ける正面側を前記一側及び前記他側のうち任意の一方に変更可能に設けられる、
請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記一側部と前記他側部とが、前記流通方向において対称形状に形成される、
請求項2に記載の建物。
【請求項4】
前記複数の壁部には、
前記屋上に設けられる塔屋の壁部が含まれる、
請求項1に記載の建物。
【請求項5】
前記建物の塔屋には、
前記建物のエレベータの機械室が含まれる、
請求項4に記載の建物。
【請求項6】
前記複数の壁部には、
意匠面を有する意匠壁が含まれる、
請求項1に記載の建物。
【請求項7】
前記風車を前記増幅部の内側に設置するための設置部を具備し、
前記設置部は、
前記増幅部の複数の壁部に架設される梁部と、
前記梁部を用いて前記風車を吊設する吊設部と、
を有する、
請求項1に記載の建物。
【請求項8】
前記設置部は、
前記風車の振動を吸収可能な抑制部を有する、
請求項7に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能エネルギーを利用して発電可能な建物の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、再生可能エネルギーを利用して発電可能な建物の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、住宅の屋根の上に太陽光パネルが設置された電力供給システムが記載されている。当該電力供給システムにおいては、太陽電池で発電された電力や燃料電池で発電された電力を、家庭内負荷に供給することができる。
【0004】
ここで近年、ZEH-M(ゼッチマンション)が増加している。ここで、ZEH(ゼッチ)とは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略であり、再生可能エネルギー等を導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅のことである。
【0005】
しかし、太陽光パネルを設置し難い建物においては、再生可能エネルギーを利用して発電することは困難であるという問題があった。例えば、高層になれば住戸数に対する屋根面積が少なくなることに加え、様々な設備機器が設置されることや風圧が強くなるため太陽光パネルを設置し難いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、太陽光パネルを設置し難い建物であっても、再生可能エネルギーを利用して発電することができる建物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、屋上に設けられ、複数の壁部により風の流通方向に沿って風の流路面積を狭めて前記屋上に吹く風を増幅させる増幅部と、前記増幅部に設けられた回転可能な風車を有し、前記風車の回転によって発電可能な風力発電機を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記増幅部は、前記流通方向の一側にある一側部と、他側にある他側部とを有し、前記風車は、前記一側部と前記他側部との境界部分において、風を受ける正面側を前記一側及び前記他側のうち任意の一方に変更可能に設けられるものである。
【0011】
請求項3においては、前記一側部と前記他側部とが、前記流通方向において対称形状に形成されるものである。
【0012】
請求項4においては、前記複数の壁部には、前記屋上に設けられる塔屋の壁部が含まれるものである。
【0013】
請求項5においては、前記建物の塔屋には、前記建物のエレベータの機械室が含まれるものである。
【0014】
請求項6においては、前記複数の壁部には、意匠面を有する意匠壁が含まれるものである。
【0015】
請求項7においては、前記風車を前記増幅部の内側に設置するための設置部を具備し、前記設置部は、前記増幅部の複数の壁部に架設される梁部と、前記梁部を用いて前記風車を吊設する吊設部と、を有するものである。
【0016】
請求項8においては、前記設置部は、前記風車の振動を吸収可能な抑制部を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
請求項1においては、太陽光パネルを設置し難い建物であっても、再生可能エネルギー(風力)を利用して発電することができる。
【0019】
請求項2においては、例えば風向きが異なる季節に応じて風車の向きを変更できるため、風力発電機の発電を効果的に行うことができる。
【0020】
請求項3においては、風力発電機の発電を効果的に行うことができる。
【0021】
請求項4においては、塔屋の壁部を用いて、再生可能エネルギー(風力)を利用して発電することができる。
【0022】
請求項5においては、エレベータの機械室の壁部を用いて、再生可能エネルギー(風力)を利用して発電することができる。
【0023】
請求項6においては、意匠壁を用いて、再生可能エネルギー(風力)を利用して発電することができる。
【0024】
請求項7においては、風車を吊設するため、風力発電機による振動が建物に伝わるのを抑制できる。
【0025】
請求項8においては、抑制部を有するため、風力発電機による振動が建物に伝わるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係るマンションの高層階部分(屋上近辺)の構成を示す正面図。
【
図5】(a)設置部における梁部の接続構造を示す斜視図。(b)設置部における吊設部の接続構造を示す正面図。
【
図6】
図3に示す状態から風車の向きを変更した状態における屋上部分を示す平面図。
【
図7】別例に係るマンションの屋上部分を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、
図1から
図5を用いて、本発明の第一実施形態に係るマンション1について説明する。なお各図面においては図中に記した矢印に従って、東西南北方向をそれぞれ定義する。
【0028】
マンション1は、再生可能エネルギー(具体的には、風力)を利用して発電可能に構成されるものである。本実施形態においては、マンション1は、複数階を有する高層マンションである。また
図3に示すように、マンション1は、平面視で略矩形状に形成され、四方の壁部がそれぞれ東西南北方向へ向けられる。マンション1は、主としてエレベータホール10、廊下20、住戸30、屋上40、風力発電機50、増幅部60及び設置部70を具備する。
【0029】
図1に示すエレベータホール10は、エレベータに乗降するためのスペースである。エレベータホール10は、マンション1の各階の略中央に設けられる。
【0030】
図1に示す廊下20は、マンション1の複数の居住者が共同で使う共用部分にある通路である。廊下20は、マンション1の各階に設けられ、エレベータホール10を取り囲むように形成される。
【0031】
図1に示す住戸30は、マンション1の居住者の居住スペースである。住戸30は、マンション1の各階に複数設けられる。複数の住戸30は、廊下20を取り囲むように設けられる。住戸30の屋外と面する部分には、バルコニー31が設けられる。
【0032】
図1から
図4に示す屋上40は、マンション1の最上部に設けられる。屋上40には、ヘリポート41、機械室42、意匠壁43、風力発電機50、増幅部60及び設置部70が設けられる。
【0033】
図3に示すヘリポート41は、緊急時においてヘリコプターが離着陸する場所である。本実施形態において、ヘリポート41は、屋上40の南西部分に設けられる。ヘリポート41には、ヘリポート用の夜間照明45が設けられる。
【0034】
図1から
図4に示す機械室42は、エレベータの巻き上げ機や制御盤等の各種機器が設置された塔屋である。機械室42は、平面視で略矩形状に形成され、四方の壁部がそれぞれ東西南北方向へ向けられる。機械室42は、屋上40の平面視略中央に設けられる。なお機械室42は、後述するように増幅部60の一部を構成する。
【0035】
図1から
図4に示す意匠壁43は、屋上40から垂直方向へ立設される壁である。意匠壁43は、壁面の少なくとも一部に、意匠が施された意匠面を有する。意匠壁43は、機械室42よりも東方に設けられる。意匠壁43は、概ね南北方向に延びるように形成される。意匠壁43の意匠面は、当該意匠壁43の東側の面(すなわち、機械室42とは反対側の面)に形成される。意匠壁43の高さは、機械室42の高さと略同一となるように設定される。意匠壁43の南側及び北側の上端部には、それぞれ東方へ延びる棒状のライト部44が設けられる。ライト部44は、夜間に前記意匠面を照明(ライティング)することができる。
【0036】
意匠壁43は、マンション1の頂部のデザインに利用される。こうして、意匠壁43を含むマンション1の頂部が建物の特徴となるため、ランドマーク性を向上できる。なお意匠壁43は、後述するように増幅部60の一部を構成する。
【0037】
図1から
図4に示す風力発電機50は、風力を利用して発電(風力発電)を行うものである。風力発電機50は、後述する増幅部60に設けられる。風力発電機50は、風車51及び集風体52を具備する。
【0038】
風車51は、風力を受けて回転可能に構成される。風車51は、複数の羽根を有する。本実施形態において、風車51は、回転軸を南北方向へ向けて設けられる。また風車51は、風を受ける正面側を南側へ向けている。
【0039】
集風体52は、風車51が回転自在に取り付けられる部材(ディフューザ)である。集風体52は、つば付きの略円筒状に形成され、その内側に風車51を支持する。本実施形態において、集風体52は、風車51と同様に、軸方向を南北方向へ向けて設けられる。
【0040】
上述の如く構成された風力発電機50は、図示せぬ発電機を備えており、風車51の回転運動が前記発電機に伝達されることにより、発電することができる。また風力発電機50は、集風体52を備えることにより、比較的小型の風車51を用いて、微量の風力でも発電可能に構成される。これにより、発電効率を向上しつつ、低騒音化を図ることができる。
【0041】
図1から
図4に示す増幅部60は、屋上40の所定の場所において、風を増幅させるものである。また増幅部60は、風車51及び集風体52(以下では、総称して風車51等と称する場合がある。)を支持するものである。増幅部60は、概ね南北方向に延びるように形成される。本実施形態において、増幅部60は、主として機械室42の側壁42a及び意匠壁43により構成される。
【0042】
なお、増幅部60は、南北方向中央部を挟んだ南北方向において対称形状を有する。そこで以下では、増幅部60のうち主として南側部分(以下では「南側増幅部160」と称する)を説明し、北側部分(以下では「北側増幅部260」と称する)の説明は適宜省略する。
【0043】
機械室42の側壁42aは、本実施形態において、機械室42の東側の側壁である。側壁42aは、南北方向に沿って平面視で直線状に延びるように形成される。
【0044】
意匠壁43は、上述の如く概ね南北方向に延びるように形成される。ここで、意匠壁43は、南北方向中央部を挟んだ南北方向において対称形状を有する。意匠壁43のうち南側部分(以下では「南側意匠壁143」と称する)は、南側増幅部160を構成する。また意匠壁43のうち北側部分(以下では「北側意匠壁243」と称する)は、北側増幅部260を構成する。以下では、主として南側意匠壁143を説明し、北側意匠壁243の説明は適宜省略する。
【0045】
南側意匠壁143は、北側から南側へ行くに従って徐々に東側に位置するように形成される。こうして、南側意匠壁143は、概ね南東方向へ沿って平面視で直線状に延びるように形成される。南側意匠壁143は、機械室42の南側半分に対する東方向に形成される。
【0046】
こうして、南側増幅部160は、機械室42の側壁42a及び南側意匠壁143のそれぞれの壁面により、平面視において、北側の開口部(以下では「第一開口部61」と称する)よりも南側の開口部(以下では「第二開口部62」と称する)の方が大きく開口された略ハの字状の空間として形成される。南側増幅部160は、第二開口部62(南側)から取り込んだ空気を、第一開口部61(北側)へと流通させる。すなわち、南側増幅部160は、南北方向(風の流通方向)に沿って、風の流路面積を狭めるように構成される。
【0047】
このような構成により、
図3及び
図4の矢印が示すように、南側増幅部160は、南側から北側へ吹く風を、大きく開口された第二開口部62によりできるだけ多く取り込むと共に、取り込んだ風を、小さく開口された第一開口部61に通過させ、当該第一開口部61を通過する風速を上げることができる。こうして、南側増幅部160は、屋上40に吹く風を増幅させることができる。
【0048】
なお詳細な説明は省略したが、北側増幅部260は、機械室42の側壁42a及び北側意匠壁243のそれぞれの壁面により、平面視において、第一開口部61(南側の開口部)よりも北側の開口部(以下では「第三開口部63」と称する)の方が大きく開口された略ハの字状の空間として形成される。
【0049】
このような構成により、北側増幅部260は、北側から南側へ吹く風を、大きく開口された第三開口部63によりできるだけ多く取り込むと共に、取り込んだ風を、小さく開口された第一開口部61に通過させ、当該第一開口部61を通過する風速を上げることができる。こうして、北側増幅部260は、屋上40に吹く風を増幅させることができる。
【0050】
図2から
図5に示す設置部70は、風力発電機50の風車51等を増幅部60の内側に設置するものである。設置部70は、梁部710及び吊設部720を具備する。
【0051】
梁部710は、機械室42の側壁42a及び意匠壁43に架設されるものである。
図5(a)に示すように、梁部710は、受け部711、梁712、防振ゴム713及びカバー714を具備する。
【0052】
受け部711は、梁712を受けるためのものである。受け部711は、上方が開放された略コの字状に形成される。受け部711は、機械室42の側壁42a及び意匠壁43(すなわち、増幅部60)における南北方向中央部に設けられる。また受け部711は、機械室42の側壁42a及び意匠壁43のそれぞれの上端部に、東西方向に対向するように設けられる。梁712は、ロ型鉄骨により形成される。梁712は、長手方向の端部がそれぞれ受け部711に受けられる。こうして、梁712は、長手方向を東西方向へ向けて配置される。防振ゴム713は、受け部711と梁712との間に設けられる。カバー714は、受け部711を上方から覆うように設けられる。また、梁712(鉄骨フレーム)は、防振ゴム713(免震装置)で構成された基礎に、上方から屋上40のパラペットをまたぐ形(門型)で設置される。すなわち、梁712は、屋上40のコンクリートに直接固定されるのではなく、防振ゴム713で構成された基礎を介して固定される。
【0053】
こうして、梁部710は、増幅部60の南北方向中央部、すなわち南北方向における南側増幅部160及び北側増幅部260の境界部分の上端部において、東西方向に亘るように設けられる。
【0054】
吊設部720は、梁部710を用いて風車51等を吊設するものである。吊設部720は、上側ワイヤ部材721、下側ワイヤ部材722、フック723、ターンバックル724及びバネ725を具備する。
【0055】
上側ワイヤ部材721及び下側ワイヤ部材722は、可撓性を有するワイヤ状の部材である。上側ワイヤ部材721は、長手方向一側(上側)が梁712に接続され、長手方向他側(下側)が風力発電機50の集風体52に接続される。こうして、上側ワイヤ部材721は、梁712に風力発電機50の回転軸として設けられる。なお、上側ワイヤ部材721は、ワイヤ状の部材に限定されず、軸心回りに回転自在な部材であれば、可撓性を有しなくてもよい。また、上側ワイヤ部材721は、自身が軸心回りに回転自在な部材でなくとも、梁712との接続部分が、軸心回りに回転自在に構成されてもよい。
【0056】
また下側ワイヤ部材722は、東西方向に一対設けられる。東側の下側ワイヤ部材722は、長手方向一側(上側)が風力発電機50の集風体52に接続され、長手方向他側(下側)が意匠壁43の南北方向中央部に接続される。また西側の下側ワイヤ部材722は、長手方向一側(上側)が風力発電機50の集風体52に接続され、長手方向他側(下側)が機械室42の側壁42aに接続される。
【0057】
東側及び西側の下側ワイヤ部材722の壁側の接続には、フック723、ターンバックル724及びバネ725が用いられる。
図5(b)は、東側の下側ワイヤ部材722の壁側(意匠壁43側)の接続構造について示している。
【0058】
図5(b)に示すように、下側ワイヤ部材722は、長手方向下側端部に設けられたフック723が、意匠壁43に設置されたリングRに引っ掛けられる。また下側ワイヤ部材722の中途部には、ターンバックル724が設けられる。こうして、ターンバックル724により下側ワイヤ部材722の張りを調整することができる。また下側ワイヤ部材722において、ターンバックル724よりも上側(集風体52側)には、バネ725が設けられる。なお、ターンバックル724及びバネ725の代わりに、ゴム入りの防振継手が設けられてもよい。なお図示及び説明を省略しているが、西側の下側ワイヤ部材722の壁側(機械室42の側壁42a側)の接続構造も同様に構成される。
【0059】
こうして、設置部70は、増幅部60の内側において、風力発電機50の風車51等を例えば屋上40に載置した支持台に直接的に設置するのではなく、吊設した状態で設置することができる。
【0060】
上述の如く構成されたマンション1においては、例えば南側から北側へ風が吹いている場合、南側増幅部160に取り込んだ風を当該南側増幅部160により増幅し、増幅した風により風力発電機50の風車51を回転させることができる。こうして、マンション1においては、屋上40の風がそれ程強くない場合であっても、風力発電機50による発電量の増加を図ることができる。
【0061】
また太陽光パネルの設置が難しい高層マンションであっても、比較的強い風が吹いている屋上40を利用して、再生可能エネルギー(風力)による発電を行うことができる。したがって、マンション1において、年間の一次エネルギー消費量の低減を図ることができる。
【0062】
本実施形態において、風力発電機50によって発電された電力は、住戸30やマンション1の共用部分において使用することができる。風力発電機50によって発電された電力は、例えば屋上40に設けられた意匠壁43のライト部44や、ヘリポート41の夜間照明45に使用することができる。
【0063】
また、風力発電機50は夜間でも発電することができるので、蓄電池がなくても、夜間において再生可能エネルギーによる発電電力を使用することができる。このため、マンション1を災害に強いマンションとすることができる。また、夜間における購入電力の増加を抑制できるため、電力の需要供給のバランスが崩れることを抑制することができる。
【0064】
また設置部70により、風力発電機50の風車51等を、吊設した状態で設置することができるため、風車51の回転等に伴う振動によるマンション1への影響を低減できる。また設置部70においては、風車51等を支持する上側ワイヤ部材721が、梁712及び防振ゴム713を介して機械室42の側壁42aに接続されると共に、下側ワイヤ部材722が、バネ725を介して機械室42の側壁42a及び意匠壁43に接続される。これにより、風車51の回転等に伴う振動によるマンション1への影響を、より効果的に低減できる。
【0065】
また本実施形態に係る設置部70によれば、
図6に示すように、風力発電機50の風車51の向きを容易に変更することができる。例えば、作業者は、まず東側及び西側の下側ワイヤ部材722のフック723を、それぞれの壁部のリングRから外して、集風体52を上側ワイヤ部材721に吊った状態のまま平面視で180度回転させる。あるいは、ターンバックル724及びバネ725の代わりに、ゴム入りの防振継手が設けられている場合、例えば当該防振継手のフランジのボルトを外すと下部の固定が解除され、集風体52を上側ワイヤ部材721に吊った状態のまま平面視で180度回転できる。
【0066】
そして、作業者は、東側及び西側の下側ワイヤ部材722のフック723を、それぞれ当初の(回転前の)壁部とは反対側の壁部のリングRに引っ掛ける。これにより、風車51は、集風体52と共に平面視で180度回転し、風を受ける正面側を南側から北側へと変更することができる。
【0067】
こうして、マンション1においては、例えば季節の変化により風向きが南側から北側ではなく、北側から南側へと変わった場合、北側増幅部260に取り込んだ風を当該北側増幅部260により増幅し、増幅した風により風力発電機50の風車51を回転させることができる。こうして、マンション1においては、年間を通して風力発電機50による発電量の増加を図ることができる。
【0068】
以上の如く、本実施形態に係るマンション1(建物)は、
屋上40に設けられ、複数の壁部により風の流通方向に沿って風の流路面積を狭めて前記屋上40に吹く風を増幅させる増幅部60と、
前記増幅部60に設けられた回転可能な風車51を有し、前記風車51の回転によって発電可能な風力発電機50を具備するものである。
【0069】
このような構成により、太陽光パネルを設置し難い建物であっても、再生可能エネルギーを利用して発電することができる。
【0070】
また、マンション1において、
前記増幅部60は、
前記流通方向の一側にある南側増幅部160(一側部)と他側にある北側増幅部260(他側部)とを有し、
前記風車51は、前記南側増幅部160(一側部)と前記北側増幅部260(他側部)との境界部分において、風を受ける正面側を前記一側及び前記他側のうち任意の一方に変更可能に設けられるものである。
【0071】
このような構成により、例えば風向きが異なる季節に応じて風車51の向きを変更できるため、風力発電機50の発電を効果的に行うことができる。
【0072】
また、マンション1において、
前記南側増幅部160(一側部)と前記北側増幅部260(他側部)とが、前記流通方向において対称形状に形成されるものである。
【0073】
このような構成により、風力発電機の発電を効果的に行うことができる。
【0074】
また、マンション1において、
前記複数の壁部には、
前記屋上40に設けられる塔屋の壁部が含まれるものである。
【0075】
このような構成により、塔屋の壁部を用いて、再生可能エネルギー(風力)を利用して発電することができる。
【0076】
また、マンション1において、
前記マンション1(建物)の塔屋には、
前記マンション1(建物)のエレベータの機械室42が含まれるものである。
【0077】
このような構成により、エレベータの機械室42の側壁42aを用いて、再生可能エネルギー(風力)を利用して発電することができる。
【0078】
また、マンション1において、
前記複数の壁部には、
意匠面を有する意匠壁43が含まれるものである。
【0079】
このような構成により、意匠壁43を用いて、再生可能エネルギー(風力)を利用して発電することができる。
【0080】
また、マンション1において、
前記風車51を前記増幅部60の内側に設置するための設置部70を具備し、
前記設置部70は、
前記増幅部60の複数の壁部に架設される梁部710と、
前記梁部710を用いて前記風車51を吊設する吊設部720と、
を有するものである。
【0081】
このような構成により、風車51を吊設するため、風力発電機50による振動が建物に伝わるのを抑制できる。
【0082】
また、マンション1において、
前記設置部70は、
前記風車51の振動を吸収可能な抑制部(防振ゴム713及びバネ725)を有するものである。
【0083】
このような構成により、抑制部(防振ゴム713及びバネ725)を有するため、風力発電機50による振動が建物に伝わるのを抑制できる。
【0084】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0085】
例えば、本発明に係る建物はマンション1に限定されるものではなく、アパート等の他の集合住宅であってもよい。また、本発明に係る建物は、集合住宅に限定されるものではなく、デパート、ショッピングモール、学校、ビル等の他の建物であってもよい。この場合、本発明における「住戸」は、必ずしも人が住んでいる必要はなく、例えばテナント、教室、オフィス等であってもよい。
【0086】
また本実施形態においては、マンション1(建物)の塔屋として、エレベータの機械室42を用いたが、これに限定されない。マンション1(建物)の塔屋として、階段室や、倉庫、空調・給水設備室、高架水槽等を用いてもよい。
【0087】
また増幅部60は、主として機械室42の側壁42a及び意匠壁43により構成されるものとしたが、これに限定されない。すなわち、増幅部60は、例えば意匠壁を用いずに塔屋の壁部だけを用いて構成してもよく、また例えば塔屋の壁部を用いずに意匠壁だけを用いて構成してもよい。また増幅部60の形状としては、本実施形態のものに限定されない。すなわち、増幅部60の形状としては、風を取り込む側の開口部(本実施形態では、第二開口部62)が風を通過(増幅)させる側の開口部(本実施形態では、第一開口部61)よりも大きな種々の形状を採用できる。
【0088】
また本実施形態においては、エレベータの機械室42の側壁42a(すなわち、1つの側壁)により増幅部60を構成したが、これに限定されない。例えば、
図7に示す別例に係るマンション1のように、機械室42の側壁42aに加えて、平面視において当該側壁42aと隣接する側壁42bを用いて(すなわち、機械室42の2つの側壁により)増幅部60を構成してもよい。これによれば、増幅部60の風を取り込む側の開口部(第二開口部62)の大きさを大きく形成し易くできる。
【0089】
このように、第二開口部62を大きく形成することで、より多くの風を取り込めるようになり、風を効果的に増幅させることができる。こうして、風力発電機50による発電量の増加を図ることができる。なおこのような手法に限らず、増幅部60の風を取り込む側の開口部の大きさは、任意の大きさに設定できる。
【符号の説明】
【0090】
1 マンション
40 屋上
42 機械室
42a 側壁
43 意匠壁
51 風車
60 増幅部