(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128820
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ウエハ加熱装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240913BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20240913BHJP
H05B 3/02 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H05B3/20 310
H05B3/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038055
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】北林 桂児
(72)【発明者】
【氏名】木村 功一
(72)【発明者】
【氏名】先田 成伸
(72)【発明者】
【氏名】板倉 克裕
【テーマコード(参考)】
3K034
3K092
5F131
【Fターム(参考)】
3K034AA02
3K034AA03
3K034AA06
3K034AA20
3K034AA21
3K034BB06
3K034CA02
3K034CA39
3K034JA10
3K092QC02
3K092QC42
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131BA23
5F131CA03
5F131EA03
5F131EA04
5F131EA05
5F131EB81
(57)【要約】
【課題】電極端子からの熱逃げを効果的に抑制できるウエハ加熱装置を提供する。
【解決手段】ウエハが載置される上面、および前記上面に向かい合う下面を有するウエハ保持台と、前記上面と前記下面との間で前記上面に平行な面内に配置された発熱体と、前記発熱体の一部に接する端面を有する電極端子と、を備え、前記電極端子の少なくとも一部が金属多孔体で構成されている、ウエハ加熱装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハが載置される上面、および前記上面に向かい合う下面を有するウエハ保持台と、
前記上面と前記下面との間で前記上面に平行な面内に配置された発熱体と、
前記発熱体の一部に接する端面を有する電極端子と、を備え、
前記電極端子の少なくとも一部が金属多孔体で構成されている、
ウエハ加熱装置。
【請求項2】
前記金属多孔体の気孔率が75%以上である、請求項1に記載のウエハ加熱装置。
【請求項3】
前記金属多孔体は、三次元網目状の骨格構造を有する、請求項1または請求項2に記載のウエハ加熱装置。
【請求項4】
前記電極端子の熱抵抗が1K/W以上である、請求項1または請求項2に記載のウエハ加熱装置。
【請求項5】
前記電極端子の電気抵抗が0.003Ω以下である、請求項1または請求項2に記載のウエハ加熱装置。
【請求項6】
前記電極端子は、前記端面を有する第一端部を備え、
前記第一端部が前記金属多孔体で構成されており、
前記電極端子における前記第一端部以外の領域が金属棒で構成されている、請求項1または請求項2に記載のウエハ加熱装置。
【請求項7】
前記金属棒を前記金属多孔体に押し付けるバネを備える、請求項6に記載のウエハ加熱装置。
【請求項8】
前記金属多孔体は、前記金属棒が嵌め込まれた凹部を備える、請求項6に記載のウエハ加熱装置。
【請求項9】
前記電極端子の全域が前記金属多孔体で構成されている、請求項1または請求項2に記載のウエハ加熱装置。
【請求項10】
前記電極端子の構成金属の主成分がニッケルである、請求項1または請求項2に記載のウエハ加熱装置。
【請求項11】
前記ウエハ保持台は、前記上面を有するトッププレート、前記発熱体を有するヒータプレート、および前記下面を有するバックプレートを備える、請求項1または請求項2に記載のウエハ加熱装置。
【請求項12】
前記電極端子は、前記電極端子の外周を囲む絶縁製の筒体をさらに備える、請求項1または請求項2に記載のウエハ加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウエハ加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、載置台と発熱体層と配線とを備えるヒータユニットが開示されている。載置台は、被処理物を載置する上面を有する。発熱体層は、載置台における上面とは反対側の下面または載置台の内部に配置されている。配線は、発熱体層に接続され、発熱体層に電力を供給している。配線は熱伝導路でもある。そのため、配線からの熱逃げにより、載置台における配線と発熱体層との接続箇所がクールスポットになり得る。特許文献1のヒータユニットでは、配線は、載置台の下面から引き出され、載置台の下面に接着剤によって固定されている。配線が載置台の下面に固定されていると、配線からの熱逃げが少ない。その結果、上記ヒータユニットにクールスポットが形成され難い。以下、ヒータユニットをウエハ加熱装置、配線を電極端子と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極端子からの熱逃げをさらに抑制することが望まれている。
【0005】
本開示は、電極端子からの熱逃げを効果的に抑制できるウエハ加熱装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のウエハ加熱装置は、ウエハが載置される上面、および前記上面に向かい合う下面を有するウエハ保持台と、前記上面と前記下面との間で前記上面に平行な面内に配置された発熱体と、前記発熱体の一部に接する端面を有する電極端子と、を備え、前記電極端子の少なくとも一部が金属多孔体で構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示のウエハ加熱装置は、電極端子からの熱逃げを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態のウエハ加熱装置を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態のウエハ加熱装置に備わる電極端子の別例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の実施形態に係るウエハ加熱装置は、ウエハが載置される上面、および前記上面に向かい合う下面を有するウエハ保持台と、前記上面と前記下面との間で前記上面に平行な面内に配置された発熱体と、前記発熱体の一部に接する端面を有する電極端子と、を備え、前記電極端子の少なくとも一部が金属多孔体で構成されている。
【0011】
上記ウエハ加熱装置において、金属多孔体の気孔が断熱材の機能を有する。電極端子の少なくとも一部が金属多孔体で構成されていることで、電極端子の熱抵抗を大きくすることができる。電極端子の熱抵抗が大きいと、電極端子からの熱逃げを効果的に抑制することができる。金属多孔体の骨格が電気伝導路の機能を有する。電極端子の少なくとも一部が金属多孔体で構成されていることで、必要な導電性を確保しつつ、電極端子の熱抵抗を大きくすることができる。
【0012】
(2)上記(1)のウエハ加熱装置において、前記金属多孔体の気孔率が75%以上であってもよい。
【0013】
金属多孔体の気孔率が75%以上であれば、金属多孔体に占める気孔の割合が十分に大きく、断熱材の機能がより効果的に発揮される。よって、上記(2)のウエハ加熱装置では、電極端子からの熱逃げをより効果的に抑制することができる。
【0014】
(3)上記(1)または上記(2)のウエハ加熱装置において、前記金属多孔体は、三次元網目状の骨格構造を有していてもよい。
【0015】
三次元網目状の骨格構造を有する金属多孔体では、金属からなる骨格が三次元的につながっており、電気伝導路が十分に確保されている。三次元網目状の骨格構造を有する金属多孔体では、導電性を十分に確保することができる。
【0016】
(4)上記(1)から(3)のいずれかのウエハ加熱装置において、前記電極端子の熱抵抗が1K/W以上であってもよい。
【0017】
電極端子の熱抵抗が1K/W以上であれば、電極端子からの熱逃げを効果的に抑制することができる。
【0018】
(5)上記(1)から(4)のいずれかのウエハ加熱装置において、前記電極端子の電気抵抗が0.003Ω以下であってもよい。
【0019】
電極端子の電気抵抗が0.003Ω以下であれば、発熱体に電力を良好に供給することができる。
【0020】
(6)上記(1)から(5)のいずれかのウエハ加熱装置において、前記電極端子は、前記端面を有する第一端部を備え、前記第一端部が前記金属多孔体で構成されており、前記電極端子における前記第一端部以外の領域が金属棒で構成されていてもよい。
【0021】
第一端部は、発熱体の一部に接する端面を有する。この第一端部が金属多孔体で構成されていると、発熱体近傍での電極端子からの熱逃げを効果的に抑制することができる。発熱体近傍での電極端子からの熱逃げが抑制できれば、ウエハ保持台を均熱化し易い。第一端部以外の領域が金属棒で構成されていると、電極端子の強度が十分に確保される。
【0022】
(7)上記(6)のウエハ加熱装置は、前記金属棒を前記金属多孔体に押し付けるバネを備えてもよい。
【0023】
金属棒を金属多孔体に押し付けることで、金属多孔体を発熱体に押し付けることができ、金属多孔体と発熱体とが良好に接触し易い。
【0024】
(8)上記(6)または上記(7)のウエハ加熱装置において、前記金属多孔体は、前記金属棒が嵌め込まれた凹部を備えてもよい。
【0025】
金属棒が凹部に嵌め込まれていると、金属多孔体と金属棒とが位置ずれし難い。
【0026】
(9)上記(1)から(5)のいずれかのウエハ加熱装置において、前記電極端子の全域が前記金属多孔体で構成されていてもよい。
【0027】
電極端子の全域が金属多孔体で構成されていると、電極端子の全域を断熱材として機能させることができる。
【0028】
(10)上記(1)から(9)のいずれかのウエハ加熱装置において、前記電極端子の構成金属の主成分がニッケルであってもよい。
【0029】
ニッケルを主成分とする電極端子は、熱抵抗が大きくなり易い。
【0030】
(11)上記(1)から(10)のいずれかのウエハ加熱装置において、前記ウエハ保持台は、前記上面を有するトッププレート、前記発熱体を有するヒータプレート、および前記下面を有するバックプレートを備えてもよい。
【0031】
ヒータプレートがバックプレートで支持されていると、トッププレートの平面度が良好に保たれ、トッププレートの均熱性が高められる。
【0032】
(12)上記(1)から(10)のいずれかのウエハ加熱装置において、前記電極端子は、前記電極端子の外周を囲む絶縁製の筒体をさらに備えてもよい。
【0033】
電極端子が絶縁性の筒体で囲まれていることで、電極端子を外部から適切に絶縁することができる。
【0034】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のウエハ加熱装置の具体例を、図面を参照して説明する。図中の同一符号は同一または相当部分を示す。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。図面における各部の寸法比も実際と異なる場合がある。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0035】
<概要>
実施形態のウエハ加熱装置1は、
図1および
図2に示すように、ウエハ保持台2と発熱体3と電極端子4とを備える。ウエハ保持台2は、ウエハ9を下方から支持する。発熱体3は、ウエハ保持台2に配置されており、ウエハ9を加熱する。電極端子4は、発熱体3に電力を供給する。実施形態のウエハ加熱装置1は、電極端子4の少なくとも一部が金属多孔体5で構成されている点にある。
図1は、電極端子4の第一端部41のみが金属多孔体5で構成されている例を示す。
図2は、電極端子4の全域が金属多孔体5で構成されている例を示す。
【0036】
実施形態のウエハ加熱装置1は、ウエハ9を上面に載置して加熱する種々の用途の加熱装置に用いることができる。
【0037】
<ウエハ保持台>
ウエハ保持台2は、ウエハ9が載置される上面21、および上面21に向かい合う下面22を有する。本実施形態のウエハ保持台2は、トッププレート25とヒータプレート26とバックプレート27とを備える。
【0038】
トッププレート25は、ウエハ9が載置される上面21を有する。上面21は、ウエハ保持台2の上面21を構成する。トッププレート25は、ウエハ9の形状に対応した形状を有する。本例のトッププレート25は円板である。トッププレート25は、熱伝導性に優れ、かつ熱によって変形し難い材料で構成されている。トッププレート25の構成材料は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金である。トッププレート25の構成材料は、窒化アルミニウム、炭化珪素、酸化アルミニウム、または窒化珪素などのセラミックスであってもよい。トッププレート25の構成材料は、上記セラミックスとシリコンとの複合体であってもよい。トッププレート25の表面は、例えばニッケルめっき層、またはアルマイト処理層を備えていてもよい。
【0039】
ヒータプレート26は、板状の基材261と後述する発熱体3とを備える。基材261は、絶縁体によって構成されている。基材261は、ヒータプレート26の外形を構成する。本例の基材261は、トッププレート25と同等の外径を有する円板である。基材261の構成材料は、例えば、耐熱性に優れる樹脂である。上記樹脂は、例えばポリイミドである。基材261の構成材料は、セラミックスであってもよい。基材261は、例えば樹脂を含浸したマイカシートであってもよい。基材261は、例えば、後述する発熱体3を挟み込むように配置されている。ヒータプレート26は、発熱体3の一部を露出する穴260を備える。発熱体3の一部が穴260の底面を構成している。
【0040】
バックプレート27は、ヒータプレート26を下方から支持する。バックプレート27によってトッププレート25の平面度が良好に保たれ、その結果、トッププレート25の均熱性が高められる。バックプレート27は、上面21に向かい合う下面22を有する。本例の下面22は、ウエハ保持台2の下面22を構成する。本例のバックプレート27は、トッププレート25と同じ外径を有する円板である。バックプレート27の構成材料は、例えばセラミックスである。トッププレート25とヒータプレート26とバックプレート27とは、例えば、図示しない連結ねじによって一体化されている。バックプレート27は、ヒータプレート26に設けられた穴260に対応した箇所に孔270を備える。穴260および孔270によって連通した開口が形成されている。この開口には、後述する電極端子4が配置されている。バックプレート27は必須ではない。バックプレート27がない場合、ヒータプレート26がウエハ保持台2の下面22を有する。
【0041】
ウエハ保持台2は、
図1および
図2の構成には限られない。ウエハ保持台2が1枚のプレートであり、この1枚のプレートの内部に発熱体3が埋め込まれていてもよい。すなわち、トッププレート25とヒータプレート26の基材261とバックプレート27とが一体に構成されていてもよい。
【0042】
<発熱体>
発熱体3は、ウエハ保持台2の上面21と下面22との間で上面21に平行な面内に配置されている。発熱体3は、ヒータプレート26の基材261内に配置されている。発熱体3は、例えば通電によって発熱する金属製の薄膜によって構成されている。発熱体3は、例えばステンレス鋼の箔を部分的にエッチングすることによって構成されている。発熱体3の一部は、穴260および孔270によってウエハ保持台2の構成材料で覆われていない。
【0043】
<電極端子>
電極端子4は、発熱体3の一部に接する端面410を有する。端面410は、穴260および孔270によってウエハ保持台2から露出された発熱体3に接している。端面410は、上記露出された発熱体3に面接触しているとよい。電極端子4は、穴260および孔270を通じてウエハ保持台2の下方に引き出されている。電極端子4は、第一端部41および第二端部42を備える。第一端部41は上記端面410を有する。第二端部42には、図示しない配線が接続されている。
【0044】
電極端子4は、例えば
図1に示すように、第一端部41が金属多孔体5で構成され、第一端部41以外の領域が金属棒6で構成されている。発熱体3の一部に接する端面410を有する第一端部41が金属多孔体5で構成されていると、発熱体3近傍での電極端子4からの熱逃げを効果的に抑制することができる。発熱体3近傍での電極端子4からの熱逃げが抑制できれば、ウエハ保持台2を均熱化し易い。電極端子4は、
図2に示すように、第一端部41から第二端部42にいたる全域が金属多孔体5で構成されていてもよい。電極端子4の途中が金属多孔体5で構成されていてもよい。この場合、例えば、第一端部41が金属板で構成されており、第二端部42が金属棒6で構成されている。
【0045】
≪金属多孔体≫
金属多孔体5は、金属からなる骨格で構成されており、複数の気孔を有する。金属多孔体5において、骨格が電気伝導路の機能を有し、複数の気孔が断熱材の機能を有する。
【0046】
金属多孔体5は、例えば、一定の形状を維持しつつ内部に複数の気孔を有する板状体または棒状体である。金属多孔体5は、例えば、三次元網目状の骨格構造を有する。三次元網目状の骨格構造を有する金属多孔体5では、金属からなる骨格が三次元的につながっており、電気伝導路が十分に確保されている。三次元網目状の骨格構造を有する金属多孔体5では、導電性を十分に確保することができる。金属多孔体5は、発泡金属体または穴あき金属板であってもよい。発泡金属体および穴あき金属体は、連続気孔または独立気孔を有する。
【0047】
三次元網目状の骨格構造を有する金属多孔体5の具体例は、セルメットである。セルメットは住友電気工業株式会社の登録商標である。
【0048】
金属多孔体5の気孔率は、例えば75%以上である。気孔率は、金属多孔体5の全体積に占める空間の体積の割合のことである。金属多孔体5の気孔率は、[1-{M/(V×d)}]×100の式で求められる。記号Mは金属多孔体5の質量(g)であり、記号Vは金属多孔体における外観の形状の体積(cm3)であり、記号dは金属多孔体5を構成する金属の密度(g/cm3)である。金属多孔体5の気孔率が75%以上であれば、金属多孔体5に占める気孔の割合が十分に大きく、断熱材の機能がより効果的に発揮される。断熱材の機能を有する金属多孔体5は、電極端子4からの熱逃げを効果的に抑制することができる。金属多孔体5の気孔率は、80%以上、85%以上、88%以上、または90%以上であってもよい。気孔率が大きいほど、断熱材の気孔がより効果的に発揮される。金属多孔体5の気孔率は、例えば98%以下である。気孔率が98%以下であれば、電気抵抗が大きくなり過ぎることを抑制することができる。金属多孔体5の気孔率は、例えば75%以上98%以下、85%以上95%以下、または88%以上93%以下であってもよい。
【0049】
三次元網目状の骨格構造を有する金属多孔体5であれば、圧縮後も75%以上の気孔率を保つことができる。例えば、圧縮前に98%の気孔率を有する金属多孔体5を圧縮して厚さを半分にしても、圧縮後の金属多孔体5は、90%以上の気孔率を有することができる。
【0050】
金属多孔体5の比表面積は、例えば1250m2/m3以上5800m2/m3以下である。比表面積は、単位体積当たりの表面積のことである。比表面積が1250m2/m3以上であれば、金属多孔体5の端面410と発熱体3との接触面積が確保され易い。比表面積が5800m2/m3以下であれば、骨格によって構成される各気孔の大きさが小さくなり過ぎず、気孔による断熱材の機能が発揮され易い。金属多孔体5の比表面積は、1850m2/m3以上5800m2/m3以下、2800m2/m3以上5800m2/m3以下、または3750m2/m3以上5800m2/m3以下であってもよい。
【0051】
三次元網目状の骨格構造を有する金属多孔体5は、各気孔が12枚の正五角形で囲まれた正十二面体にモデル化される。このモデル化された金属多孔体5において、正十二面体に外接する球の直径が孔径である。
【0052】
金属多孔体5の平均孔径は、例えば0.45mm以上0.55mm以下である。平均孔径が0.45mm以上であれば、気孔による断熱材の機能が発揮され易い。平均孔径が0.55mm以下であれば、金属多孔体5の端面410と発熱体3との接触面積が確保され易い。金属多孔体5の平均孔径は、金属多孔体5の表面を顕微鏡で観察し、任意に引いた1インチ(25.4mm)の直線に交わる気孔数をセル数として計測し、平均孔径=25.4mm/セル数として算出できる。
【0053】
図1に示す金属多孔体5は、板状の形状を有する。板状の金属多孔体5の厚さは、例えば1.2mm以上3mm以下である。厚さが1.2mm以上であれば、金属多孔体5の強度が確保され易い。厚さが3mm以下であれば、金属多孔体5の大型化が抑制される。金属多孔体5が薄いと、金属多孔体5を容易に作製することができる。板状の金属多孔体5の厚さは、1.4mm以上2mm以下であってもよい。板状の金属多孔体5の厚さは、端面410から後述する金属棒6との接触面までの最小長さである。
【0054】
図1に示す金属多孔体5は、後述する金属棒6が嵌め込まれた凹部50を備える。凹部50の形状は、金属棒6の上端面の形状に対応している。凹部50の形状とは、凹部50を電極端子4の軸に沿った方向から見た凹部50の形状のことである。金属棒6が凹部50に嵌め込まれていると、金属多孔体5と金属棒6とが位置ずれし難い。金属多孔体5が凹部50を備える場合、金属多孔体5の上記厚さは、端面410から凹部50の底面までの最小長さである。金属多孔体5が凹部50を備える場合、上述した金属多孔体5の気孔率、比表面積、および平均孔径の上記各値は、凹部50の底面と端面410との間の箇所の値である。
【0055】
金属多孔体5の構成金属の主成分は、例えばニッケルである。主成分は、金属多孔体5の構成金属のうち最も多く含まれる成分である。金属多孔体5の構成金属の含有量を100質量%とするとき、ニッケルの含有量は50質量%超である。ニッケルを主成分とする金属多孔体5は、熱抵抗が大きくなり易い。金属多孔体5の構成金属に占めるニッケルの含有量は、70質量%以上、または90質量%以上であってもよい。金属多孔体5の構成金属は、ニッケルに加えて、クロムまたはスズを含んでいてもよい。金属多孔体5の構成金属の主成分は銅であってもよい。金属多孔体5の構成金属の主成分が銅である場合、金属多孔体5が表面にニッケルからなる被覆層を有していてもよい。被覆層は酸化防止の機能を有する。
【0056】
≪金属棒≫
金属棒6は、金属多孔体5と共に電極端子4を構成する主要部材である。金属棒6は、第一端部41以外の電極端子4の大部分を構成している。金属棒6は第二端部42を有する。
【0057】
本例の金属棒6は、バネ機構を備える。このバネ機構によって、金属棒6を金属多孔体5に押し付けている。金属棒6を金属多孔体5に押し付けることで、金属多孔体5を発熱体3に押し付けることができ、金属多孔体5と発熱体3とが良好に接触し易い。金属多孔体5と発熱体3との接触は、金属棒6による押し付けのみで行われている。
【0058】
本例の金属棒6は、棒状部61と筒状部62と固定部63とバネ7とを備える。棒状部61は、大径部611と小径部612とを備える。大径部611と小径部612は同軸である。大径部611と小径部612とで段差が構成されている。大径部611は、第一端部41の近位に位置し、金属多孔体5に接する端面を有する。本例の大径部611は、凹部50に嵌まり込んだ部分を有する。小径部612は、第二端部42の近位に位置する。小径部612は大径部611よりも長い。小径部612は、筒状部62に挿入された部分を有する。筒状部62は、上方に開口した有底の部材である。筒状部62の開口に小径部612の一部が挿入されている。固定部63は、筒状部62の下端に設けられている。本例の固定部63は、筒状部62の下端に一体に設けられている。本例の固定部63は雄ねじである。固定部63は、例えば図示しない基板に固定されている。バネ7は、大径部611と小径部612とで構成された段差と筒状部62の上端面との間に配置されている。本例のバネ7は、小径部612の軸周りに配置された圧縮コイルバネである。筒状部62が上方に押し上げられると、バネが圧縮しながら大径部611を上方に押し上げ、大径部611が金属多孔体5に押し付けられる。
【0059】
金属棒6が金属多孔体5に押し付けられると、金属多孔体5が圧縮されて凹部50を形成する場合がある。本例では、金属多孔体5における凹部50の底面と端面410との間の箇所が圧縮される。上述した金属多孔体5の気孔率、比表面積、および平均孔径の上記各値は、上記箇所の値である。上記箇所は、圧縮されたとしても、断熱材の機能を有する。
【0060】
金属棒6は、市販されているコンタクトピンであってもよい。
【0061】
金属棒6の構成金属の主成分は、例えばニッケルである。金属棒6と金属多孔体5とは、同じ構成金属で構成されていてもよいし、異なる構成金属で構成されていてもよい。金属多孔体5および金属棒6の双方がニッケルを主成分として構成されていると、電極端子4全体の熱抵抗が大きくなり易い。
【0062】
<筒体>
本例の電極端子4は、絶縁性の筒体8で囲まれている。筒体8は、電極端子4を外部から絶縁する機能を有する。
図2に示すように、電極端子4の全域が金属多孔体5で構成されている場合、筒体8は電極端子4のほぼ全域を囲むとよい。電極端子4の全域が金属多孔体5で構成されている場合には、筒体8は、金属多孔体5を補強する機能、および金属多孔体5の形状を保つ機能を有する。電極端子4の全域が金属多孔体5で構成されていると、電極端子4の全域を断熱材として機能させることができる。
【0063】
≪特性≫
電極端子4の熱抵抗は、例えば1K/W以上である。電極端子4の熱抵抗が1K/W以上であれば、電極端子4からの熱逃げを効果的に抑制することができる。電極端子4の熱抵抗は、1.4K/W以上、2K/W以上、4K/W以上、または5K/W以上であってもよい。
【0064】
電極端子4の電気抵抗は、例えば0.003Ω以下である。電極端子4の電気抵抗が0.003Ω以下であれば、発熱体3に電力を良好に供給することができる。電極端子4の電気抵抗は、0.001Ω以下、0.0008Ω以下、0.0007Ω以下、または0.0006Ω以下であってもよい。
【0065】
[試算例]
ウエハ加熱装置の電極端子として5つの試験体を模擬し、各試験体における熱抵抗および電気抵抗を調べた。各試験体は、熱抵抗及び電気抵抗の試算のための仮想モデルである。
【0066】
いずれの試験体も、ウエハ保持台および発熱体の構成は同じである。ウエハ保持台は、
図1に示すように、トッププレートとヒータプレートとバックプレートとを備える。発熱体は、ヒータプレートの内部に配置されている。発熱体の一部は、ウエハ保持台の構成材料で覆われておらず、下方に露出している。
【0067】
<試験体1>
試験体1では、電極端子は銅線で構成されている。銅線は、断面積が約0.005mm2の撚り線である。銅線の第一端部は、発熱体に溶接されている。銅線の第二端部は、ウエハ保持台の下面から引き出されている。銅線の一部は、ウエハ保持台の下面に溶接されている。試験体1では、銅線の長さのうち、第一端部から0.5cmの部分を試験対象とする。
【0068】
<試験体2>
試験体2では、電極端子は金属棒で構成されている。金属棒の構成金属の主成分は銅である。金属棒の直径は0.5cmである。金属棒は、第一端部から第二端部まで一様な直径を有する。金属棒の第一端部は発熱体に押し付けられている。金属棒の第二端部は、ウエハ保持台の下面から引き出されている。試験体2では、金属棒の長さのうち、第一端部から0.5cmの部分を試験対象とする。
【0069】
<試験体3>
試験体3では、電極端子は金属棒で構成されている。金属棒の構成金属の主成分はニッケルである。試験体3の金属棒は、試験体2の金属棒と構成金属の主成分が異なり、その他の構成は同じである。
【0070】
<試験体4>
試験体4では、電極端子は金属多孔体および金属棒で構成されている。金属多孔体の構成金属の主成分はニッケルである。金属多孔体の気孔率は95%である。金属多孔体の平均孔径は0.51mmである。金属多孔体の形状は円板状である。金属多孔体のサイズは、直径0.6cm、長さ0.2cmである。金属多孔体の第一面が発熱体に接する端面である。金属多孔体の第二面には、直径0.5cmの凹部が設けられている。金属棒の構成金属の主成分はニッケルである。金属棒の直径は0.5cmである。金属棒は、第一端部から第二端部まで一様な直径を有する。金属棒の一部は、金属多孔体の凹部に嵌め込まれている。金属棒は金属多孔体に押し付けられている。その結果、金属多孔体の第一面は発熱体に押し付けられている。金属棒は、ウエハ保持台の下面から引き出されている。試験体4では、電極端子の長さのうち、金属多孔体の第一面から0.5cmの部分を試験対象とする。また、試験体4では、金属多孔体のうち、金属棒の軸に沿った方向から見て金属棒に重複する箇所を試験対象とする。つまり、試験体4では、電極端子の長さのうち、金属多孔体の全長および金属棒の0.3cmの部分の合計を試験対象とする。
【0071】
<試験体5>
試験体5では、電極端子は金属多孔体および金属棒で構成されている。金属多孔体の構成金属の主成分は銅である。金属多孔体の気孔率は95%である。金属多孔体の平均孔径は0.51mmである。試験体5の金属多孔体は、試験体4の金属多孔体と主に構成金属の主成分が異なり、その他の構成は同じである。試験体5の金属棒は、試験体4の金属棒と構成が同じである。
【0072】
<熱抵抗>
熱抵抗は式αにより求めた。式αは、L/(S×A)である。記号Lは電極端子の長さである。記号Sは電極端子の断面積である。記号Aは電極端子の熱伝導率である。試験体1では、電極端子は銅線で構成されているため、銅線における各値を用いて熱抵抗を求めた。試験体2および試験体3では、電極端子は金属棒で構成されているため、金属棒における各値を用いて熱抵抗を求めた。試験体4および試験体5の各々では、電極端子は金属多孔体および金属棒で構成されているため、金属多孔体における各値を用いて熱抵抗を求め、かつ金属棒における各値を用いて熱抵抗を求めた。そして、それぞれ求めた熱抵抗の合算値を電極端子の熱抵抗とした。金属棒を構成するニッケルの熱伝導率は90W/m・Kである。金属棒を構成する銅の熱伝導率は391W/m・Kである。金属多孔体を構成するニッケルの熱伝導率は2.261W/m・Kである。金属多孔体を構成する銅の熱伝導率は9.786W/m・Kである。各試験体の熱抵抗を表1に示す。
【0073】
<電気抵抗>
電気抵抗は式βにより求めた。式βは、(B×L)/Sである。記号Lと記号Sは式αと同じである。記号Bは電極端子の比抵抗である。試験体1では、電極端子は銅線で構成されているため、銅線における各値を用いて電気抵抗を求めた。試験体2および試験体3では、電極端子は金属棒で構成されているため、金属棒における各値を用いて電気抵抗を求めた。試験体4および試験体5の各々では、電極端子は金属多孔体および金属棒で構成されているため、金属多孔体における各値を用いて電気抵抗を求め、かつ金属棒における各値を用いて電気抵抗を求めた。そして、それぞれ求めた電気抵抗の合算値を電極端子の電気抵抗とした。金属棒を構成するニッケルの比抵抗は6.84×10-6μΩ・cmである。金属棒を構成する銅の比抵抗は1.60×10-6μΩ・cmである。金属多孔体を構成するニッケルの比抵抗は7.41×10-4μΩ・cmである。金属多孔体を構成する銅の比抵抗は1.60×10-4μΩ・cmである。各試験体の電気抵抗を表1に示す。
【0074】
【0075】
表1に示すように、試験体4および試験体5は、試験体1から試験体3よりも熱抵抗が非常に大きい。試験体4および試験体5の各熱抵抗は1K/W以上であり、電極端子からの熱逃げを効果的に抑制できると期待される。試験体4および試験体5の各熱抵抗が大きい理由は、電極端子の一部が金属多孔体で構成されており、金属多孔体の気孔が断熱材の機能を発揮したからと考えられる。試験体4の熱抵抗は6K/W以上であり、試験体5よりもさらに大きい。試験体4の金属多孔体がニッケルからなるため、金属多孔体の気孔による断熱材の気孔に加えて、さらに熱抵抗が大きくなったと考えられる。
【0076】
試験体5の電気抵抗は、試験体2および試験体3よりも大きいものの、試験体1よりも小さい。試験体2および試験体3の電気抵抗が非常に小さい理由は、電極端子の全域が金属棒で構成されているからである。試験体2および試験体3の電気抵抗は、十分すぎるほど小さい。ウエハ加熱装置における電極端子としては、試験体1の電気抵抗であれば十分である。試験体4の電気抵抗は、試験体1の電気抵抗よりも大きいものの、試験体1の電気抵抗の約2倍である。試験体4の電気抵抗は、ウエハ加熱装置における電極端子として十分である。
【0077】
試験体4および試験体5は、ウエハ加熱装置における電極端子として十分な電気抵抗を有し、かつ非常に大きい熱抵抗を有する。よって、試験体4および試験体5は、発熱体に適切に電力を供給することができ、かつ電極端子からの熱逃げを効果的に抑制することができると考えられる。
【符号の説明】
【0078】
1 ウエハ加熱装置
2 ウエハ保持台
21 上面
22 下面
25 トッププレート
26 ヒータプレート
260 穴
261 基材
27 バックプレート
270 孔
3 発熱体
4 電極端子
41 第一端部
410 端面
42 第二端部
5 金属多孔体
50 凹部
6 金属棒
61 棒状部
611 大径部
612 小径部
62 筒状部
63 固定部
7 バネ
8 筒体
9 ウエハ