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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128826
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】自動車の冷却風排気ガイド
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20240913BHJP
   F01P 11/10 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B60K11/04 K
F01P11/10 G
F01P11/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038062
(22)【出願日】2023-03-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本郷 匡彦
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC12
3D038AC15
3D038AC17
(57)【要約】
【課題】冷却風排気ガイド内にガイドベーンを設けなくても、自動車の空気抵抗を低減できるようにする。
【解決手段】排気ガイド21の流出口21cを、流入口21bの後方で下方に向かって斜め後方に開放させ、排気ガイド21の後側の内面における流出口21c側の端部に、下側程後方に位置し、かつ前方に凸の形状を有するように湾曲する後側第1湾曲面部21jを形成し、排気ガイド21の後側の内面における後側第1湾曲面部21jの上側に、下側程後方に位置し、かつ前方に凹の形状を有するように湾曲する後側第2湾曲面部21kを形成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開放する流入口(21b)と、該流入口(21b)の後方で開放する流出口(21c)とを有し、前記流入口(21b)と流出口(21c)との間には、前記流入口(21b)から流入した冷却空気(CA)を後方に向かって下方に案内する排気流路(21d)が形成され、前記流入口(21b)は、冷却対象(13)の収容空間(AS)とその後側とを仕切る隔壁(23a)に形成されたエア放出口(23c)に接続され、前記流入口(21b)には、車体(5)の前端から取り入れられて前記冷却対象(13)の冷却に使用された冷却空気(CA)が流入し、かつ前記流出口(21c)から、前記冷却空気(CA)が前記車体(5)の底面の下方に向けて放出される自動車の冷却風排気ガイドであって、
前記流出口(21c)は、前記流入口(21b)の後方で下方に向かって斜め後方に開放し、
前記排気ガイド(21)の後側の内面における前記流出口(21c)側の端部には、下側程後方に位置し、かつ前方に凸の形状を有するように湾曲する第1湾曲面部(21j)が形成され、
前記排気ガイド(21)の後側の内面における前記第1湾曲面部(21j)の上側には、下側程後方に位置し、かつ前方に凹の形状を有するように湾曲する第2湾曲面部(21k)が形成されていることを特徴とする自動車の冷却風排気ガイド。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車の冷却風排気ガイドにおいて、
前記排気ガイド(21)の前側の内面は、後方に向けて斜め下方に傾斜していることを特徴とする自動車の冷却風排気ガイド。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車の冷却風排気ガイドにおいて、
前記排気ガイド(21)の前側の内面には、流出口(21c)側に向けて徐々に幅広となる形状の凹部(21g)が、前後方向全体に亘って形成されていることを特徴とする自動車の冷却風排気ガイド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の自動車の冷却風排気ガイドにおいて、
前記収容空間(AS)には、前記エア放出口(23c)に前記冷却空気(CA)を送る冷却ファン(27)が収容され、
前記隔壁(23a)のエア放出口(23c)は、円形であり、
前記排気ガイド(21)の流入口(21b)は、円形であり、
前記排気ガイド(21)の流入口(21b)側端部は、前記エア放出口(23c)の外周に該エア放出口(23c)の外周縁に沿って接続されていることを特徴とする自動車の冷却風排気ガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流入口に、車体の前端から取り入れられて冷却対象の冷却に使用された冷却空気が流入し、かつ流出口から、前記冷却空気が前記車体の底面の下方に向けて放出される自動車の冷却風排気ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前方に開放する流入口と、該流入口の後方で開放する流出口とを有し、前記流入口と流出口との間には、前記流入口から流入した空気を後方に向かって下方に案内する排気流路が形成され、前記流入口は、冷却対象の収容空間とその後側とを仕切る隔壁に形成されたエア放出口に接続され、前記流入口には、車体の前端から取り入れられて前記冷却対象の冷却に使用された冷却空気が流入し、かつ前記流出口から、前記冷却空気が前記車体の底面の下方に向けて放出される自動車の冷却風排気ガイドが開示されている。この 自動車の冷却風排気ガイドでは、排気流路内に3つのガイドベーンを設け、4つの部分ダクトを形成することで、流入口から流入した空気が排気ガイドの後側の内面に衝突することによる空気流量及び冷却容量の低減を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平8-13606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、冷却空気と排気ガイドの内面及びガイドベーンとの接触面積が大きいので、冷却空気の流入口への流入速度が高くなると、排気ガイド内で冷却空気に粘性抵抗が作用し冷却空気の通気抵抗が大きくなる。これが自動車の高速走行時に生じる空気抵抗の一部となる。したがって、高速走行時には冷却空気の流入口への流入量が多くなるので排気ガイド内での通気抵抗が大きくなり、自動車の空気抵抗を十分低減できない場合がある。また、ガイドベーンを設けることにより構造が複雑となり重量が増すことになる。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排気ガイド内にガイドベーンを設けなくても、自動車の空気抵抗を低減できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、排気ガイドの後側の内面における流出口側の端部を、前方に凸の形状を有するように湾曲させたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、第1の発明は、前方に開放する流入口と、該流入口の後方で開放する流出口とを有し、前記流入口と流出口との間には、前記流入口から流入した冷却空気を後方に向かって下方に案内する排気流路が形成され、前記流入口は、冷却対象の収容空間とその後側とを仕切る隔壁に形成されたエア放出口に接続され、前記流入口には、車体の前端から取り入れられて前記冷却対象の冷却に使用された冷却空気が流入し、かつ前記流出口から、前記冷却空気が前記車体の底面の下方に向けて放出される自動車の冷却風排気ガイドを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、前記流出口は、前記流入口の後方で下方に向かって斜め後方に開放し、前記排気ガイドの後側の内面における前記流出口側の端部には、下側程後方に位置し、かつ前方に凸の形状を有するように湾曲する第1湾曲面部が形成され、前記排気ガイドの後側の内面における前記第1湾曲面部の上側には、下側程後方に位置し、かつ前方に凹の形状を有するように湾曲する第2湾曲面部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記排気ガイドの前側の内面は、後方に向けて斜め下方に傾斜していることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記排気ガイドの前側の内面には、流出口側に向けて徐々に幅広となる形状の凹部が、前後方向全体に亘って形成されていることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記収容空間には、前記エア放出口に前記冷却空気を送る冷却ファンが収容され、前記隔壁のエア放出口は、円形であり、前記排気ガイドの流入口は、円形であり、前記排気ガイドの流入口側端部は、前記エア放出口の外周に該エア放出口の外周縁に沿って接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、排気ガイドを流れる冷却空気が、第1湾曲面部に引き寄せられる現象(コアンダ効果)が生じる。これにより、流入口の上部から流入して排気ガイドの第2湾曲面部及び第1湾曲面部に沿って流れる冷却空気が、流出口に向かって加速するとともに、流入口の下部から流入した冷却空気も、第1湾曲面部に沿って流れる冷却空気に引っ張られ、流出口に向かって加速する。したがって、排気ガイド内にガイドベーンを設けなくても、排気ガイドの通気抵抗を下げ、自動車の空気抵抗を低減できる。
【0013】
第2の発明によれば、排気ガイドの前側の内面を鉛直上方に向けた場合に比べ、排気流路の下部で生じる乱流を低減できる。したがって、排気ガイドの通気抵抗を下げ、自動車の空気抵抗を低減できる。
【0014】
第3の発明によれば、流入口から冷却空気が凹部内に流入すると、凹部内の車幅方向両端部で渦が発生し、これらの渦によって冷却空気が凹部内に引き込まれる。したがって、排気流路の下部で生じる乱流をさらに低減し、排気ガイドの通気抵抗を下げ、自動車の空気抵抗をさらに低減できる。
【0015】
第4の発明によれば、排気ガイドの流入口をエア放出口の外周縁に沿わない形状とした場合に比べ、エア放出口を覆う隔壁の領域を小さくできるので、流入口付近に生じる乱流を低減できる。したがって、排気ガイドの通気抵抗を下げ、自動車の空気抵抗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】自動車のエンジンルーム周りを示す概略図である。
図2】ラジエータの斜視図である。
図3図5のIII-III線に対応する概略断面図である。
図4】冷却ファンユニットの背面図である。
図5】実施形態1に係る排気ガイドの正面図である。
図6】実施形態1に係る排気ガイドの側面図である。
図7】実施形態1に係る排気ガイドの背面図である。
図8】実施形態2に係る排気ガイドの斜視図である。
図9】実施形態2の図6相当図である。
図10】実施形態3の図8相当図である。
図11】実施形態3の図6相当図である。
図12】比較例1の図8相当図である。
図13】比較例1の図6相当図である。
図14】比較例2の図8相当図である。
図15】比較例2の図6相当図である。
図16】排気ガイド内における冷却空気の流れを示す図5対応図である。
図17】排気ガイド内における冷却空気の流れを示す図6対応図である。
図18】実施形態2の図16相当図である。
図19】実施形態2の図17相当図である。
図20】実施形態3の図16相当図である。
図21】実施形態3の図17相当図である。
図22】比較例1の図16相当図である。
図23】比較例1の図17相当図である。
図24】比較例2の図16相当図である。
図25】比較例2の図17相当図である。
図26】実施形態1~3及び比較例1,2における冷却空気の風速と排気ガイドの通気抵抗との関係を示すグラフである。
図27】実施形態1~3及び比較例1,2における冷却空気の風速と排気ガイドの通気抵抗との関係、及び冷却空気の風速が44.4m/sであるときの通気抵抗の低減効果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1は、自動車1のエンジンルーム3周りを示す。この自動車1の車体5の内部には、エンジンルーム3と、車室7とが前方から順に設けられている。エンジンルーム3と車室7とは、ダッシュパネル9で仕切られている。
【0019】
車体5の前端面の下端部近傍には、吸気口5aが形成されている。エンジンルーム3の前後方向中途部の車体5の底面には、下方に向かって斜め後方に開放する排気口5bが形成されている。排気口5bの後側の車体には、排気口5bの後端縁から下方に向かって斜め後方に延びる傾斜面5cが形成されている。
【0020】
エンジンルーム3の前端部近傍には、冷却ユニット11が収容されている。冷却ユニット11は、冷却対象と、冷却風導入ガイド部15と、シャッタグリル部17と、冷却ファンユニット19と、本発明の実施形態1に係る排気ガイド21とを備えている。なお、上記冷却対象は、ラジエータまたはコンデンサの少なくともどちらか一方を含む。本実施形態1での冷却対象はラジエータ13である。
【0021】
ラジエータ13は、図2に示すように、略矩形板状に形成され、その板面を前後方向に向けている。ラジエータ13のラジエータ水は、後述するモータ29と、バッテリ(図示せず)の冷却に使用される。また、ラジエータ水は、高負荷走行時におけるモータ29の熱、及び急速充電時におけるバッテリ(図示せず)の熱の少なくとも一方により高温になったとき、外気温が低い条件でのバッテリ(図示せず)の昇温に使用できる。
【0022】
冷却風導入ガイド部15は、ラジエータ13全体を前方から覆っている。冷却風導入ガイド部15は、ラジエータ13を前方から覆う略浅皿状のガイド部本体15aと、ガイド部本体15aから前方に突出する筒状のダクト部15bとを有している。このダクト部15bは、車体5の吸気口5aに接続されている。ガイド部本体15aは、車体5前方から吸気口5a及びダクト部15bを介して取り入れられた冷却空気CAを、外部に漏出させることなく、ラジエータ13全体に案内する。ダクト部15bには、当該ダクト部15bを開閉するシャッタグリル部17が取り付けられている。
【0023】
冷却ファンユニット19は、図3及び図4に示すように、ファンハウジング23と、整流部品25と、冷却ファン27と、図示しないファンモータとを有している。なお、図3中、整流部品25の図示を省略している。
【0024】
ファンハウジング23は、ラジエータ13に後方から対向する略矩形板状の主壁部23aと、該主壁部23aの外周端縁から前方に突出する周壁部23bとを有している。主壁部23aには、円(真円)形のエア放出口23cが形成されている。ファンハウジング23と、前記冷却風導入ガイド部15との間には、ラジエータ13の収容空間ASが形成される。ファンハウジング23の主壁部23aは、ラジエータ13の収容空間ASとその後側とを仕切る隔壁を構成している。
【0025】
整流部品25は、円形のファンモータハウジング25aと、ファンモータハウジング25aから周方向に互いに等しい間隔を空けて径方向外側に向けて放射状に突設された長板状の8枚の整流板25bと、整流板25bの外周端に接続されたシュラウド25cとを有している。シュラウド25cは、エア放出口23cの外周端縁に周方向全体に亘って固定されている。整流板25bは、エア放出口23cを通過する冷却空気CAを整流する。ファンモータハウジング25aには、図示しないファンモータが取り付けられている。
【0026】
冷却ファン27は、円柱状の回転ハブ27aと、回転ハブ27aから周方向に互いに等しい間隔を空けて径方向外側に向けて放射状に突設された回転羽根27bとを有している。回転ハブ27aには、図示しないモータの回転軸が固定されている。冷却ファン27は、ファンハウジング23の内側、すなわち収容空間ASに収容されている。
【0027】
排気ガイド21は、図5~7に示すように、管状のダクト部21aを有している。ダクト部21aは、前方に開放する円(真円)形状の流入口21bと、流入口21bの後方で下方に向かって斜め後方に開放する車幅方向に長い略長円形状の流出口21cとを有している。流入口21bと流出口21cとの間には、流入口21bから流入した冷却空気CAを後方に向かって下方に案内する排気流路21dが形成されている。ダクト部21aの流入口21b側端部には、環状のフランジ部21eが張出形成されている。
【0028】
排気ガイド21は、ポリプロピレン等の樹脂材やケナフ等の天然素材からなり、全体に亘って略一定の厚さで構成されている。排気ガイド21は、射出成形、圧縮成形又はブロー成形により成形できる。排気ガイド21を射出成形又は圧縮成形により成形する場合、排気ガイド21を構成する2つの半割体を成形し、互いに接合するようにしてもよい。また、排気ガイド21の断熱性や遮音性を高め、さらに軽量化するために、排気ガイド21を発泡体で構成してもよい。
【0029】
ダクト部21aは、流入口21bの下半部分の外周縁と、流出口21cの下半部分(前半部分)の外周縁との間で後方に向けて斜め下方に傾斜する前壁部21fを有している。前壁部21fは略一定の厚さで形成されているので、前壁部21fの内面(ダクト部21aの前側の内面)も、後方に向けて斜め下方に傾斜している。この前壁部21fの内面の車幅方向中央には、流出口21c側に向けて徐々に幅広となる左右対称な略台形状の凹部21gが前後方向全体に亘って形成されている。凹部21gは、いわゆるNACA(エヌエーシーエー)ダクトを構成している。凹部21gの底面は、平坦に形成されている。前壁部21fの内面における凹部21gの車幅方向両外側には、車幅方向外側程上方に位置し、かつ車幅方向内側及び上方に凹の形状を有するように湾曲する前側湾曲面部21hが形成されている。本明細書において、「車幅方向内側及び上方に凹の形状を有する」とは、その面上の2点を結ぶ線分が常に面の車幅方向内側及び上方に位置することを意味する。
【0030】
また、ダクト部21aは、流入口21bの上半部分の外周縁と、流出口21cの上半部分(後半部分)の外周縁との間で、下側程後方に位置するように湾曲する後壁部21iを有している。後壁部21iも略一定の厚さで形成されているので、後壁部21iの内面も、下側程後方に位置するように湾曲している。後壁部21iの内面(ダクト部21aの後側の内面)における略下半部(流出口21c側の端部)には、下側程後方に位置し、かつ前方に凸の形状を有するように湾曲する後側第1湾曲面部21jが形成されている。ここで、本明細書において、「前方に凸の形状を有する」とは、その面上の2点を結ぶ線分が常に面の後方に位置することを意味する。後壁部21iの内面における略上半部(後側第1湾曲面部21jの上側)には、下側程後方に位置し、かつ前方に凹の形状を有するように湾曲する後側第2湾曲面部21kが形成されている。図3中、後側第1湾曲面部21jの形成範囲を符号L、後側第2湾曲面部21kの形成範囲を符号Uで示す。ここで、本明細書において、「前方に凹の形状を有する」とは、その面上の2点を結ぶ線分が常に面の前方に位置することを意味する。後壁部21iの内面の車幅方向中央部には、横断面直線状の(車幅方向の位置に応じて前後方向の位置が変化しない)中央面部21mが形成されている。後壁部21iの内面における中央面部21mの車幅方向両外側には、車幅方向外側程前側に位置し、車幅方向内側及び下方に凹の形状を有するように湾曲する側面部21nが形成されている。本明細書において、「車幅方向内側及び下方に凹の形状を有する」とは、その面上の2点を結ぶ線分が常に面の車幅方向内側及び下方に位置することを意味する。
【0031】
上述のように構成された排気ガイド21のフランジ部21e(流入口21b側端部)は、ファンハウジング23の円形のエア放出口23cの外周に該エア放出口23cの外周縁に沿って接続されている。また、排気ガイド21の流出口21cは、車体5の底面の排気口5bに対向している。
【0032】
エンジンルーム3における冷却ユニット11の後側には、モータ29が収容されている。モータ29の上方には、空きスペースFSが形成されている。
【0033】
シャッタグリル部17を開けた状態で、上述のように構成された自動車1を走行させるとともに、冷却ファン27を回転させると、冷却空気CAが、車体5の前端から車体5の吸気口5a及び冷却風導入ガイド部15のダクト部15bを介して、ラジエータ13の収容空間ASに取り入れられ、ラジエータ13を冷却する。ラジエータ13の冷却に使用された冷却空気CAは、特に図3に示すように、走行風又は必要に応じて冷却ファン27の回転によりファンハウジング23のエア放出口23cに送られ、排気ガイド21の流入口21bに流入し、排気流路21dで後方に向かって下方に案内されて流出口21cから車体5の底面の下方に向けて斜め後方に放出される。このとき、排気ガイド21内の排気流路21dを流れる冷却空気CAが、後側第1湾曲面部21jに引き寄せられる現象(コアンダ効果)が生じる。これにより、流入口21bの上部から流入して排気ガイド21の後側第2湾曲面部21k及び後側第1湾曲面部21jに沿って流れる冷却空気CAが、流出口21cに向かって加速するとともに、流入口21bの下部から流入した冷却空気CAも、後側第1湾曲面部21jに沿って流れる冷却空気CAに引っ張られ、流出口21cに向かって加速する。したがって、排気ガイド21内にガイドベーンを設けなくても、排気ガイド21の通気抵抗を下げ自動車1の空気抵抗を低減できる。また、排気ガイド21内の排気流路21dを通過する冷却空気CAの量が多くなるので、ラジエータ13の冷却水の冷却効率を向上できる。また、冷却空気CAが、前壁部21fの内面と後側第1湾曲面部21jとによって、下方に向けて斜め後方、すなわち流出口21cの開放方向と略等しい方向(流出口21cに対して略垂直な方向)に流れるように案内されるので、排気ガイド21は、流出口21cの開口面積を最大限有効に使って冷却空気CAを放出でき、流出口21c付近での通気抵抗が小さくなる。また、排気ガイド21の前側の内面を後方に向けて斜め下方に傾斜させているので、排気ガイド21の前側の内面を鉛直上方に向けた場合に比べ、排気流路21dの下部で生じる乱流を低減できる。さらに、流入口21bから冷却空気CAが凹部21g内に流入すると、凹部21g内の車幅方向両端部で渦が発生し、これらの渦によって冷却空気CAが凹部21g内に引き込まれるので、排気流路21dの下部で生じる乱流をさらに低減できる。また、排気ガイド21のフランジ部21e(流入口21b側端部)を、ファンハウジング23のエア放出口23cの外周縁に沿って接続するので、エア放出口23cを覆うファンハウジング23の主壁部23aの領域を小さくでき、流入口21b付近に生じる乱流を低減できる。したがって、排気ガイド21の通気抵抗を下げ自動車1の空気抵抗を低減できる。また、排気ガイド21内の排気流路21dを通過する冷却空気CAの通気抵抗を下げ、冷却空気CAを多く流通させることができるので、ラジエータ13の冷却水の冷却効率を向上できる。
【0034】
排気ガイド21の流出口21cから放出された冷却空気CAは、車体5の排気口5bから傾斜面5cに沿って流れ、車体5の下側で後方に向かって吹く走行風Wと合流する。このとき、排気ガイド21の流出口21cが、下方に向かって斜め後方に開放し、冷却空気CAを下方に向けて斜め後方に放出するので、当該冷却空気CAが、車体5の下側の走行風Wに引っ張られて加速しやすい。したがって、排気ガイド21の流出口21cを鉛直下方に向けた場合に比べ、自動車1の空気抵抗を低減できる。
【0035】
また、本実施形態1によれば、排気ガイド21の後壁部21iが、ラジエータ13を後方から覆っているので、モータ29を一旦停止してから再始動させるまでの間に、ラジエータ13のラジエータ水の温度が外気温の影響を受けにくい。したがって、外気温が低い条件でモータ29の再始動時にバッテリ(図示せず)の昇温に必要となる電力を削減できる。
【0036】
また、排気ガイド21の後壁部21iが、冷却ファン27を後方から覆っているので、冷却ファン27のノイズが後方に漏れにくい。
【0037】
また、車体5の吸気口5aからエンジンルーム3内に取り入れられて排気口5bに至るまでの冷却空気CAの流路が、冷却風導入ガイド部15、ファンハウジング23、及び排気ガイド21によって囲まれているので、冷却空気CAの熱気及び湿気、及び冷却空気CA中の塵がエンジンルーム3の空きスペースFSに侵入しにくい。したがって、エンジンルーム3の空きスペースFSを、フロントトランク等に活用しやすい。
【0038】
(実施形態2)
図8及び図9は、本発明の実施形態2に係る排気ガイド21を示す。本実施形態2では、流入口21bの下端縁が略直線状、流入口21bの車幅方向両端縁及び上端縁が反U字状をなし、流出口21cの下端縁も略直線状をなしている。前壁部21fが、流入口21bの下端縁全体から後方に向けて斜め下方に傾斜して延びる下壁部21pと、下壁部21pの車幅方向両端縁から上方に向かって立ち上がる平坦な側壁部21qとで構成されている。下壁部21pに凹部21gが形成されている。下壁部21pの凹部21gを除く領域は、平坦に形成されている。ファンハウジング23におけるフランジ部21eの接続箇所は、図4中、線Bで示すようになる。
【0039】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
(実施形態3)
図10及び図11は、本発明の実施形態3に係る排気ガイド21を示す。本実施形態3では、前壁部21fに凹部21gが形成されてない。
【0041】
その他の構成は、実施形態2と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0042】
(比較例1)
図12及び図13は、比較例1に係る排気ガイド21を示す。比較例1では、流出口21cが略半月形状に形成されている。さらに、後壁部21iの上端部が球を4等分した形状をなしている。また、前壁部21fが、下壁部21pだけで構成され、後壁部21iに後側第1湾曲面部21jが形成されていない。後壁部21iの上端部を除く部分は、車幅方向内側程後方に位置するように断面半円弧状で上下方向に延び、下壁部21pの車幅方向両端縁に接続されている。
【0043】
その他の構成は、実施形態2と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
(比較例2)
図14及び図15は、比較例2に係る排気ガイド21を示す。比較例2では、下壁部21pが水平に設けられている。したがって、下壁部21pの内面が、鉛直上方を向いている。ファンハウジング23におけるフランジ部21eの接続箇所は、図4中、線Cで示すようになる。
【0045】
その他の構成は、比較例1と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0046】
ここで、上記実施形態1~3の効果について、実施形態1~3、比較例1、2のCFD(Computational Fluid Dynamics)解析の結果を比較して説明する。
【0047】
図16及び図17は、実施形態1に係る排気ガイド21内における冷却空気CAの流れを示し、図18及び図19は、実施形態2に係る排気ガイド21内における冷却空気CAの流れを示し、図20及び図21は、実施形態3に係る排気ガイド21内における冷却空気CAの流れを示し、図22及び図23は、比較例1に係る排気ガイド21内における冷却空気CAの流れを示し、図24及び図25は、比較例2に係る排気ガイド21内における冷却空気CAの流れを示す。図16図25により示される冷却空気CAの流れは、CFD解析により特定されたものである。図16~25において、破線で示す冷却空気CAの流れは、実線で示す流れよりも速い。
【0048】
ここで、図26は、実施形態1~3及び比較例1,2に係る排気ガイド21を装着した自動車1でエア放出口23cより排気ガイド21に流入する冷却空気CAの風速と通気抵抗との関係を示す。また、図27は、実施形態1~3及び比較例1,2に係る排気ガイド21を装着した自動車1で冷却空気CAを、風速2.1m/s、5.6m/s、27.8m/s、44.4m/sでエア放出口23cより排気ガイド21に流入させたときの通気抵抗を示す。図26及び図27において示される通気抵抗は、CFD解析により特定されたものである。
【0049】
実施形態1では、風速2.1m/sでの通気抵抗は、21.41Pa、風速5.6m/sでの通気抵抗は、149.25Pa、風速27.8m/sでの通気抵抗は、3693.53Pa、風速44.4m/sでの通気抵抗は、9437.23Paとなっている。
【0050】
実施形態2では、風速2.1m/sでの通気抵抗は、20.99Pa、風速5.6m/sでの通気抵抗は、149.87Pa、風速27.8m/sでの通気抵抗は、3716.57Pa、風速44.4m/sでの通気抵抗は、9490.40Paとなっている。
【0051】
実施形態3では、風速2.1m/sでの通気抵抗は、20.95Pa、風速5.6m/sでの通気抵抗は、151.33Pa、風速27.8m/sでの通気抵抗は、3755.95Pa、風速44.4m/sでの通気抵抗は、9599.68Paとなっている。
【0052】
比較例1では、風速2.1m/sでの通気抵抗は、25.26Pa、風速5.6m/sでの通気抵抗は、181.38Pa、風速27.8m/sでの通気抵抗は、4514.28Pa、風速44.4m/sでの通気抵抗は、11547.30Paとなっている。
【0053】
比較例2では、風速2.1m/sでの通気抵抗は、25.59Pa、風速5.6m/sでの通気抵抗は、186.19Pa、風速27.8m/sでの通気抵抗は、4654.46Pa、風速44.4m/sでの通気抵抗は、11952.66Paとなっている。
【0054】
比較例1と比較例2を比較すると、比較例2では、下壁部21pの内面が鉛直上方を向いているので、図25に一点鎖線で囲んで示すように、下壁部21p付近、すなわち流入口21bの下端部付近に冷却空気CAが滞留し、乱流が生じやすくなっている。これに対し、比較例1では、図23に一点鎖線で囲んで示すように、下壁部21pの内面(ダクト部21aの前側の内面)が、後方に向けて斜め下方に傾斜しているので、流入口21bの下端部付近から流入した冷却空気CAが当該内面に沿って流れやすい。したがって、比較例2に比べ、流入口21bの下端部付近(排気流路21dの下部)で生じる乱流を低減できる。図27の表において、比較例1において冷却空気CAを風速44.4m/sでエア放出口23cより排気ガイド21に流入させたときの通気抵抗は、比較例2から約3.39%低減している。
【0055】
実施形態3と比較例1とを比較すると、比較例1では、図23に二点鎖線で囲んで示すように、流出口21cが下方に向かって斜め後方に開放しているのに対し、後壁部21iの下端部の内面が冷却空気CAを鉛直下方に案内するので、流出口21cに対し冷却空気CAの流出方向が傾斜する。そのため流出口21cの有効面積が狭くなり、流出口21c付近での通気抵抗が大きくなる。これに対し、実施形態3では、図21に二点鎖線で囲んで示すように、冷却空気CAは、後側第1湾曲面部21jによって、下方に向けて斜め後方、すなわち流出口21cの開放方向と略等しい方向(流出口21cに対して略垂直な方向)に流れるように案内されるので、流入口21bの開口面積を最大限有効に使って冷却空気CAを放出でき、流出口21c付近での通気抵抗が小さくなる。また、実施形態3では、図21に二点鎖線で囲んで示すように、排気ガイド21内の排気流路21dを流れる冷却空気CAが、後側第1湾曲面部21jに引き寄せられる現象(コアンダ効果)が生じる。これにより、流入口21bの上部から流入して排気ガイド21の後側第2湾曲面部21k及び後側第1湾曲面部21jに沿って流れる冷却空気CAが、流出口21cに向かって加速するとともに、流入口21bの下部から流入した冷却空気CAも、後側第1湾曲面部21jに沿って流れる冷却空気CAに引っ張られ、流出口21cに向かって加速する。したがって、後側第1湾曲面部21jを設けない比較例1に比べ、通気抵抗を低減できる。図27の表において、実施形態3において冷却空気CAを風速44.4m/sでエア放出口23cより排気ガイド21に流入させたときの通気抵抗は、比較例1から約16.87%低減している。
【0056】
実施形態2と実施形態3とを比較すると、実施形態2では、流入口21bから冷却空気CAが凹部21g内に流入すると、凹部21g内の車幅方向両端部で渦が発生し、図18及び図19に二点鎖線で囲んで示すように、これらの渦によって多くの冷却空気CAが凹部21g内に引き込まれる。したがって、排気流路21dの下部で生じる乱流を低減できる。図27の表において、実施形態2において冷却空気CAを風速44.4m/sでエア放出口23cより排気ガイド21に流入させたときの通気抵抗は、実施形態3から約1.14%低減している。
【0057】
実施形態1と実施形態2,3とを比較すると、実施形態2では、排気ガイド21の流入口21bの下端部の比較的広い領域が、ファンハウジング23の主壁部23aと対向するので、図18及び図19に一点鎖線で囲んで示すように、流入口21bの下端部近傍に乱流が発生している。実施形態3でも、図21に一点鎖線で示すように、流入口21bの下端部近傍に乱流が発生している。これに対し、実施形態1では、排気ガイド21のフランジ部21e(流入口21b側端部)を、ファンハウジング23のエア放出口23cの外周縁に沿って接続したので、図16及び図17に一点鎖線で囲んで示すように、流入口21bの下端部近傍の乱流が低減している。図27の表において、実施形態1において自動車1を車速160km/で走行させたときの通気抵抗は、実施形態2から約0.56%低減している。実施形態1において冷却空気CAを風速44.4m/sでエア放出口23cより排気ガイド21に流入させたときの通気抵抗は、比較例2から約21.04%低減している。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、流入口に、車体の前端から取り入れられて冷却対象の冷却に使用された冷却空気が流入し、かつ流出口から、前記冷却空気が前記車体の底面の下方に向けて放出される自動車の排気ガイドとして有用である。
【符号の説明】
【0059】
5 車体
13 ラジエータ(冷却対象)
21 排気ガイド
21b 流入口
21c 流出口
21d 排気流路
21g 凹部
21j 後側第1湾曲面部
21k 後側第2湾曲面部
23a 主壁部(隔壁)
23c エア放出口
27 冷却ファン
AS 収容空間
CA 冷却空気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【手続補正書】
【提出日】2024-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流入口に、車体の前端から取り入れられて冷却対象の冷却に使用された冷却空気が流入し、かつ流出口から、前記冷却空気が前記車体の底面の下方に向けて放出される自動車の冷却風排気ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前方に開放する流入口と、該流入口の後方で開放する流出口とを有し、前記流入口と流出口との間には、前記流入口から流入した空気を後方に向かって下方に案内する排気流路が形成され、前記流入口は、冷却対象の収容空間とその後側とを仕切る隔壁に形成されたエア放出口に接続され、前記流入口には、車体の前端から取り入れられて前記冷却対象の冷却に使用された冷却空気が流入し、かつ前記流出口から、前記冷却空気が前記車体の底面の下方に向けて放出される自動車の冷却風排気ガイドが開示されている。この 自動車の冷却風排気ガイドでは、排気流路内に3つのガイドベーンを設け、4つの部分ダクトを形成することで、流入口から流入した空気が排気ガイドの後側の内面に衝突することによる空気流量及び冷却容量の低減を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平8-13606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、冷却空気と排気ガイドの内面及びガイドベーンとの接触面積が大きいので、冷却空気の流入口への流入速度が高くなると、排気ガイド内で冷却空気に粘性抵抗が作用し冷却空気の通気抵抗が大きくなる。これが自動車の高速走行時に生じる空気抵抗の一部となる。したがって、高速走行時には冷却空気の流入口への流入量が多くなるので排気ガイド内での通気抵抗が大きくなり、自動車の空気抵抗を十分低減できない場合がある。また、ガイドベーンを設けることにより構造が複雑となり重量が増すことになる。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排気ガイド内にガイドベーンを設けなくても、自動車の空気抵抗を低減できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、排気ガイドの後側の内面における流出口側の端部を、前方に凸の形状を有するように湾曲させたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、第1の発明は、前方に開放する流入口と、該流入口の後方で開放する流出口とを有し、前記流入口と流出口との間には、前記流入口から流入した冷却空気を後方に向かって下方に案内する排気流路が形成され、前記流入口は、冷却対象の収容空間とその後側とを仕切る隔壁に形成されたエア放出口に接続され、前記流入口には、車体の前端から取り入れられて前記冷却対象の冷却に使用された冷却空気が流入し、かつ前記流出口から、前記冷却空気が前記車体の底面の下方に向けて放出される自動車の冷却風排気ガイドを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、前記流出口は、前記流入口の後方で下方に向かって斜め後方に開放し、前記排気ガイドの後側の内面における前記流出口側の端部には、下側程後方に位置し、かつ前方に凸の形状を有するように湾曲する第1湾曲面部が形成され、前記排気ガイドの後側の内面における前記第1湾曲面部の上側には、下側程後方に位置し、かつ前方に凹の形状を有するように湾曲する第2湾曲面部が形成され、前記排気ガイドの前側の内面は、後方に向けて斜め下方に傾斜し、前記排気ガイドの前側の内面には、流出口側に向けて徐々に幅広となる形状の凹部が、前後方向全体に亘って形成されていることを特徴とする
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記収容空間には、前記エア放出口に前記冷却空気を送る冷却ファンが収容され、前記隔壁のエア放出口は、円形であり、前記排気ガイドの流入口は、円形であり、前記排気ガイドの流入口側端部は、前記エア放出口の外周に該エア放出口の外周縁に沿って接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、排気ガイドを流れる冷却空気が、第1湾曲面部に引き寄せられる現象(コアンダ効果)が生じる。これにより、流入口の上部から流入して排気ガイドの第2湾曲面部及び第1湾曲面部に沿って流れる冷却空気が、流出口に向かって加速するとともに、流入口の下部から流入した冷却空気も、第1湾曲面部に沿って流れる冷却空気に引っ張られ、流出口に向かって加速する。したがって、排気ガイド内にガイドベーンを設けなくても、排気ガイドの通気抵抗を下げ、自動車の空気抵抗を低減できる。
【0011】
また、排気ガイドの前側の内面を鉛直上方に向けた場合に比べ、排気流路の下部で生じる乱流を低減できる。したがって、排気ガイドの通気抵抗を下げ、自動車の空気抵抗を低減できる。
【0012】
また、流入口から冷却空気が凹部内に流入すると、凹部内の車幅方向両端部で渦が発生し、これらの渦によって冷却空気が凹部内に引き込まれる。したがって、排気流路の下部で生じる乱流をさらに低減し、排気ガイドの通気抵抗を下げ、自動車の空気抵抗をさらに低減できる。
【0013】
の発明によれば、排気ガイドの流入口をエア放出口の外周縁に沿わない形状とした場合に比べ、エア放出口を覆う隔壁の領域を小さくできるので、流入口付近に生じる乱流を低減できる。したがって、排気ガイドの通気抵抗を下げ、自動車の空気抵抗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】自動車のエンジンルーム周りを示す概略図である。
図2】ラジエータの斜視図である。
図3図5のIII-III線に対応する概略断面図である。
図4】冷却ファンユニットの背面図である。
図5】実施形態1に係る排気ガイドの正面図である。
図6】実施形態1に係る排気ガイドの側面図である。
図7】実施形態1に係る排気ガイドの背面図である。
図8】実施形態2に係る排気ガイドの斜視図である。
図9】実施形態2の図6相当図である。
図10】実施形態3の図8相当図である。
図11】実施形態3の図6相当図である。
図12】比較例1の図8相当図である。
図13】比較例1の図6相当図である。
図14】比較例2の図8相当図である。
図15】比較例2の図6相当図である。
図16】排気ガイド内における冷却空気の流れを示す図5対応図である。
図17】排気ガイド内における冷却空気の流れを示す図6対応図である。
図18】実施形態2の図16相当図である。
図19】実施形態2の図17相当図である。
図20】実施形態3の図16相当図である。
図21】実施形態3の図17相当図である。
図22】比較例1の図16相当図である。
図23】比較例1の図17相当図である。
図24】比較例2の図16相当図である。
図25】比較例2の図17相当図である。
図26】実施形態1~3及び比較例1,2における冷却空気の風速と排気ガイドの通気抵抗との関係を示すグラフである。
図27】実施形態1~3及び比較例1,2における冷却空気の風速と排気ガイドの通気抵抗との関係、及び冷却空気の風速が44.4m/sであるときの通気抵抗の低減効果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1は、自動車1のエンジンルーム3周りを示す。この自動車1の車体5の内部には、エンジンルーム3と、車室7とが前方から順に設けられている。エンジンルーム3と車室7とは、ダッシュパネル9で仕切られている。
【0017】
車体5の前端面の下端部近傍には、吸気口5aが形成されている。エンジンルーム3の前後方向中途部の車体5の底面には、下方に向かって斜め後方に開放する排気口5bが形成されている。排気口5bの後側の車体には、排気口5bの後端縁から下方に向かって斜め後方に延びる傾斜面5cが形成されている。
【0018】
エンジンルーム3の前端部近傍には、冷却ユニット11が収容されている。冷却ユニット11は、冷却対象と、冷却風導入ガイド部15と、シャッタグリル部17と、冷却ファンユニット19と、本発明の実施形態1に係る排気ガイド21とを備えている。なお、上記冷却対象は、ラジエータまたはコンデンサの少なくともどちらか一方を含む。本実施形態1での冷却対象はラジエータ13である。
【0019】
ラジエータ13は、図2に示すように、略矩形板状に形成され、その板面を前後方向に向けている。ラジエータ13のラジエータ水は、後述するモータ29と、バッテリ(図示せず)の冷却に使用される。また、ラジエータ水は、高負荷走行時におけるモータ29の熱、及び急速充電時におけるバッテリ(図示せず)の熱の少なくとも一方により高温になったとき、外気温が低い条件でのバッテリ(図示せず)の昇温に使用できる。
【0020】
冷却風導入ガイド部15は、ラジエータ13全体を前方から覆っている。冷却風導入ガイド部15は、ラジエータ13を前方から覆う略浅皿状のガイド部本体15aと、ガイド部本体15aから前方に突出する筒状のダクト部15bとを有している。このダクト部15bは、車体5の吸気口5aに接続されている。ガイド部本体15aは、車体5前方から吸気口5a及びダクト部15bを介して取り入れられた冷却空気CAを、外部に漏出させることなく、ラジエータ13全体に案内する。ダクト部15bには、当該ダクト部15bを開閉するシャッタグリル部17が取り付けられている。
【0021】
冷却ファンユニット19は、図3及び図4に示すように、ファンハウジング23と、整流部品25と、冷却ファン27と、図示しないファンモータとを有している。なお、図3中、整流部品25の図示を省略している。
【0022】
ファンハウジング23は、ラジエータ13に後方から対向する略矩形板状の主壁部23aと、該主壁部23aの外周端縁から前方に突出する周壁部23bとを有している。主壁部23aには、円(真円)形のエア放出口23cが形成されている。ファンハウジング23と、前記冷却風導入ガイド部15との間には、ラジエータ13の収容空間ASが形成される。ファンハウジング23の主壁部23aは、ラジエータ13の収容空間ASとその後側とを仕切る隔壁を構成している。
【0023】
整流部品25は、円形のファンモータハウジング25aと、ファンモータハウジング25aから周方向に互いに等しい間隔を空けて径方向外側に向けて放射状に突設された長板状の8枚の整流板25bと、整流板25bの外周端に接続されたシュラウド25cとを有している。シュラウド25cは、エア放出口23cの外周端縁に周方向全体に亘って固定されている。整流板25bは、エア放出口23cを通過する冷却空気CAを整流する。ファンモータハウジング25aには、図示しないファンモータが取り付けられている。
【0024】
冷却ファン27は、円柱状の回転ハブ27aと、回転ハブ27aから周方向に互いに等しい間隔を空けて径方向外側に向けて放射状に突設された回転羽根27bとを有している。回転ハブ27aには、図示しないモータの回転軸が固定されている。冷却ファン27は、ファンハウジング23の内側、すなわち収容空間ASに収容されている。
【0025】
排気ガイド21は、図5~7に示すように、管状のダクト部21aを有している。ダクト部21aは、前方に開放する円(真円)形状の流入口21bと、流入口21bの後方で下方に向かって斜め後方に開放する車幅方向に長い略長円形状の流出口21cとを有している。流入口21bと流出口21cとの間には、流入口21bから流入した冷却空気CAを後方に向かって下方に案内する排気流路21dが形成されている。ダクト部21aの流入口21b側端部には、環状のフランジ部21eが張出形成されている。
【0026】
排気ガイド21は、ポリプロピレン等の樹脂材やケナフ等の天然素材からなり、全体に亘って略一定の厚さで構成されている。排気ガイド21は、射出成形、圧縮成形又はブロー成形により成形できる。排気ガイド21を射出成形又は圧縮成形により成形する場合、排気ガイド21を構成する2つの半割体を成形し、互いに接合するようにしてもよい。また、排気ガイド21の断熱性や遮音性を高め、さらに軽量化するために、排気ガイド21を発泡体で構成してもよい。
【0027】
ダクト部21aは、流入口21bの下半部分の外周縁と、流出口21cの下半部分(前半部分)の外周縁との間で後方に向けて斜め下方に傾斜する前壁部21fを有している。前壁部21fは略一定の厚さで形成されているので、前壁部21fの内面(ダクト部21aの前側の内面)も、後方に向けて斜め下方に傾斜している。この前壁部21fの内面の車幅方向中央には、流出口21c側に向けて徐々に幅広となる左右対称な略台形状の凹部21gが前後方向全体に亘って形成されている。凹部21gは、いわゆるNACA(エヌエーシーエー)ダクトを構成している。凹部21gの底面は、平坦に形成されている。前壁部21fの内面における凹部21gの車幅方向両外側には、車幅方向外側程上方に位置し、かつ車幅方向内側及び上方に凹の形状を有するように湾曲する前側湾曲面部21hが形成されている。本明細書において、「車幅方向内側及び上方に凹の形状を有する」とは、その面上の2点を結ぶ線分が常に面の車幅方向内側及び上方に位置することを意味する。
【0028】
また、ダクト部21aは、流入口21bの上半部分の外周縁と、流出口21cの上半部分(後半部分)の外周縁との間で、下側程後方に位置するように湾曲する後壁部21iを有している。後壁部21iも略一定の厚さで形成されているので、後壁部21iの内面も、下側程後方に位置するように湾曲している。後壁部21iの内面(ダクト部21aの後側の内面)における略下半部(流出口21c側の端部)には、下側程後方に位置し、かつ前方に凸の形状を有するように湾曲する後側第1湾曲面部21jが形成されている。ここで、本明細書において、「前方に凸の形状を有する」とは、その面上の2点を結ぶ線分が常に面の後方に位置することを意味する。後壁部21iの内面における略上半部(後側第1湾曲面部21jの上側)には、下側程後方に位置し、かつ前方に凹の形状を有するように湾曲する後側第2湾曲面部21kが形成されている。図3中、後側第1湾曲面部21jの形成範囲を符号L、後側第2湾曲面部21kの形成範囲を符号Uで示す。ここで、本明細書において、「前方に凹の形状を有する」とは、その面上の2点を結ぶ線分が常に面の前方に位置することを意味する。後壁部21iの内面の車幅方向中央部には、横断面直線状の(車幅方向の位置に応じて前後方向の位置が変化しない)中央面部21mが形成されている。後壁部21iの内面における中央面部21mの車幅方向両外側には、車幅方向外側程前側に位置し、車幅方向内側及び下方に凹の形状を有するように湾曲する側面部21nが形成されている。本明細書において、「車幅方向内側及び下方に凹の形状を有する」とは、その面上の2点を結ぶ線分が常に面の車幅方向内側及び下方に位置することを意味する。
【0029】
上述のように構成された排気ガイド21のフランジ部21e(流入口21b側端部)は、ファンハウジング23の円形のエア放出口23cの外周に該エア放出口23cの外周縁に沿って接続されている。また、排気ガイド21の流出口21cは、車体5の底面の排気口5bに対向している。
【0030】
エンジンルーム3における冷却ユニット11の後側には、モータ29が収容されている。モータ29の上方には、空きスペースFSが形成されている。
【0031】
シャッタグリル部17を開けた状態で、上述のように構成された自動車1を走行させるとともに、冷却ファン27を回転させると、冷却空気CAが、車体5の前端から車体5の吸気口5a及び冷却風導入ガイド部15のダクト部15bを介して、ラジエータ13の収容空間ASに取り入れられ、ラジエータ13を冷却する。ラジエータ13の冷却に使用された冷却空気CAは、特に図3に示すように、走行風又は必要に応じて冷却ファン27の回転によりファンハウジング23のエア放出口23cに送られ、排気ガイド21の流入口21bに流入し、排気流路21dで後方に向かって下方に案内されて流出口21cから車体5の底面の下方に向けて斜め後方に放出される。このとき、排気ガイド21内の排気流路21dを流れる冷却空気CAが、後側第1湾曲面部21jに引き寄せられる現象(コアンダ効果)が生じる。これにより、流入口21bの上部から流入して排気ガイド21の後側第2湾曲面部21k及び後側第1湾曲面部21jに沿って流れる冷却空気CAが、流出口21cに向かって加速するとともに、流入口21bの下部から流入した冷却空気CAも、後側第1湾曲面部21jに沿って流れる冷却空気CAに引っ張られ、流出口21cに向かって加速する。したがって、排気ガイド21内にガイドベーンを設けなくても、排気ガイド21の通気抵抗を下げ自動車1の空気抵抗を低減できる。また、排気ガイド21内の排気流路21dを通過する冷却空気CAの量が多くなるので、ラジエータ13の冷却水の冷却効率を向上できる。また、冷却空気CAが、前壁部21fの内面と後側第1湾曲面部21jとによって、下方に向けて斜め後方、すなわち流出口21cの開放方向と略等しい方向(流出口21cに対して略垂直な方向)に流れるように案内されるので、排気ガイド21は、流出口21cの開口面積を最大限有効に使って冷却空気CAを放出でき、流出口21c付近での通気抵抗が小さくなる。また、排気ガイド21の前側の内面を後方に向けて斜め下方に傾斜させているので、排気ガイド21の前側の内面を鉛直上方に向けた場合に比べ、排気流路21dの下部で生じる乱流を低減できる。さらに、流入口21bから冷却空気CAが凹部21g内に流入すると、凹部21g内の車幅方向両端部で渦が発生し、これらの渦によって冷却空気CAが凹部21g内に引き込まれるので、排気流路21dの下部で生じる乱流をさらに低減できる。また、排気ガイド21のフランジ部21e(流入口21b側端部)を、ファンハウジング23のエア放出口23cの外周縁に沿って接続するので、エア放出口23cを覆うファンハウジング23の主壁部23aの領域を小さくでき、流入口21b付近に生じる乱流を低減できる。したがって、排気ガイド21の通気抵抗を下げ自動車1の空気抵抗を低減できる。また、排気ガイド21内の排気流路21dを通過する冷却空気CAの通気抵抗を下げ、冷却空気CAを多く流通させることができるので、ラジエータ13の冷却水の冷却効率を向上できる。
【0032】
排気ガイド21の流出口21cから放出された冷却空気CAは、車体5の排気口5bから傾斜面5cに沿って流れ、車体5の下側で後方に向かって吹く走行風Wと合流する。このとき、排気ガイド21の流出口21cが、下方に向かって斜め後方に開放し、冷却空気CAを下方に向けて斜め後方に放出するので、当該冷却空気CAが、車体5の下側の走行風Wに引っ張られて加速しやすい。したがって、排気ガイド21の流出口21cを鉛直下方に向けた場合に比べ、自動車1の空気抵抗を低減できる。
【0033】
また、本実施形態1によれば、排気ガイド21の後壁部21iが、ラジエータ13を後方から覆っているので、モータ29を一旦停止してから再始動させるまでの間に、ラジエータ13のラジエータ水の温度が外気温の影響を受けにくい。したがって、外気温が低い条件でモータ29の再始動時にバッテリ(図示せず)の昇温に必要となる電力を削減できる。
【0034】
また、排気ガイド21の後壁部21iが、冷却ファン27を後方から覆っているので、冷却ファン27のノイズが後方に漏れにくい。
【0035】
また、車体5の吸気口5aからエンジンルーム3内に取り入れられて排気口5bに至るまでの冷却空気CAの流路が、冷却風導入ガイド部15、ファンハウジング23、及び排気ガイド21によって囲まれているので、冷却空気CAの熱気及び湿気、及び冷却空気CA中の塵がエンジンルーム3の空きスペースFSに侵入しにくい。したがって、エンジンルーム3の空きスペースFSを、フロントトランク等に活用しやすい。
【0036】
(実施形態2)
図8及び図9は、本発明の実施形態2に係る排気ガイド21を示す。本実施形態2では、流入口21bの下端縁が略直線状、流入口21bの車幅方向両端縁及び上端縁が反U字状をなし、流出口21cの下端縁も略直線状をなしている。前壁部21fが、流入口21bの下端縁全体から後方に向けて斜め下方に傾斜して延びる下壁部21pと、下壁部21pの車幅方向両端縁から上方に向かって立ち上がる平坦な側壁部21qとで構成されている。下壁部21pに凹部21gが形成されている。下壁部21pの凹部21gを除く領域は、平坦に形成されている。ファンハウジング23におけるフランジ部21eの接続箇所は、図4中、線Bで示すようになる。
【0037】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0038】
(実施形態3)
図10及び図11は、本発明の実施形態3に係る排気ガイド21を示す。本実施形態3では、前壁部21fに凹部21gが形成されてない。
【0039】
その他の構成は、実施形態2と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
(比較例1)
図12及び図13は、比較例1に係る排気ガイド21を示す。比較例1では、流出口21cが略半月形状に形成されている。さらに、後壁部21iの上端部が球を4等分した形状をなしている。また、前壁部21fが、下壁部21pだけで構成され、後壁部21iに後側第1湾曲面部21jが形成されていない。後壁部21iの上端部を除く部分は、車幅方向内側程後方に位置するように断面半円弧状で上下方向に延び、下壁部21pの車幅方向両端縁に接続されている。
【0041】
その他の構成は、実施形態2と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0042】
(比較例2)
図14及び図15は、比較例2に係る排気ガイド21を示す。比較例2では、下壁部21pが水平に設けられている。したがって、下壁部21pの内面が、鉛直上方を向いている。ファンハウジング23におけるフランジ部21eの接続箇所は、図4中、線Cで示すようになる。
【0043】
その他の構成は、比較例1と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
ここで、上記実施形態1~3の効果について、実施形態1~3、比較例1、2のCFD(Computational Fluid Dynamics)解析の結果を比較して説明する。
【0045】
図16及び図17は、実施形態1に係る排気ガイド21内における冷却空気CAの流れを示し、図18及び図19は、実施形態2に係る排気ガイド21内における冷却空気CAの流れを示し、図20及び図21は、実施形態3に係る排気ガイド21内における冷却空気CAの流れを示し、図22及び図23は、比較例1に係る排気ガイド21内における冷却空気CAの流れを示し、図24及び図25は、比較例2に係る排気ガイド21内における冷却空気CAの流れを示す。図16図25により示される冷却空気CAの流れは、CFD解析により特定されたものである。図16~25において、破線で示す冷却空気CAの流れは、実線で示す流れよりも速い。
【0046】
ここで、図26は、実施形態1~3及び比較例1,2に係る排気ガイド21を装着した自動車1でエア放出口23cより排気ガイド21に流入する冷却空気CAの風速と通気抵抗との関係を示す。また、図27は、実施形態1~3及び比較例1,2に係る排気ガイド21を装着した自動車1で冷却空気CAを、風速2.1m/s、5.6m/s、27.8m/s、44.4m/sでエア放出口23cより排気ガイド21に流入させたときの通気抵抗を示す。図26及び図27において示される通気抵抗は、CFD解析により特定されたものである。
【0047】
実施形態1では、風速2.1m/sでの通気抵抗は、21.41Pa、風速5.6m/sでの通気抵抗は、149.25Pa、風速27.8m/sでの通気抵抗は、3693.53Pa、風速44.4m/sでの通気抵抗は、9437.23Paとなっている。
【0048】
実施形態2では、風速2.1m/sでの通気抵抗は、20.99Pa、風速5.6m/sでの通気抵抗は、149.87Pa、風速27.8m/sでの通気抵抗は、3716.57Pa、風速44.4m/sでの通気抵抗は、9490.40Paとなっている。
【0049】
実施形態3では、風速2.1m/sでの通気抵抗は、20.95Pa、風速5.6m/sでの通気抵抗は、151.33Pa、風速27.8m/sでの通気抵抗は、3755.95Pa、風速44.4m/sでの通気抵抗は、9599.68Paとなっている。
【0050】
比較例1では、風速2.1m/sでの通気抵抗は、25.26Pa、風速5.6m/sでの通気抵抗は、181.38Pa、風速27.8m/sでの通気抵抗は、4514.28Pa、風速44.4m/sでの通気抵抗は、11547.30Paとなっている。
【0051】
比較例2では、風速2.1m/sでの通気抵抗は、25.59Pa、風速5.6m/sでの通気抵抗は、186.19Pa、風速27.8m/sでの通気抵抗は、4654.46Pa、風速44.4m/sでの通気抵抗は、11952.66Paとなっている。
【0052】
比較例1と比較例2を比較すると、比較例2では、下壁部21pの内面が鉛直上方を向いているので、図25に一点鎖線で囲んで示すように、下壁部21p付近、すなわち流入口21bの下端部付近に冷却空気CAが滞留し、乱流が生じやすくなっている。これに対し、比較例1では、図23に一点鎖線で囲んで示すように、下壁部21pの内面(ダクト部21aの前側の内面)が、後方に向けて斜め下方に傾斜しているので、流入口21bの下端部付近から流入した冷却空気CAが当該内面に沿って流れやすい。したがって、比較例2に比べ、流入口21bの下端部付近(排気流路21dの下部)で生じる乱流を低減できる。図27の表において、比較例1において冷却空気CAを風速44.4m/sでエア放出口23cより排気ガイド21に流入させたときの通気抵抗は、比較例2から約3.39%低減している。
【0053】
実施形態3と比較例1とを比較すると、比較例1では、図23に二点鎖線で囲んで示すように、流出口21cが下方に向かって斜め後方に開放しているのに対し、後壁部21iの下端部の内面が冷却空気CAを鉛直下方に案内するので、流出口21cに対し冷却空気CAの流出方向が傾斜する。そのため流出口21cの有効面積が狭くなり、流出口21c付近での通気抵抗が大きくなる。これに対し、実施形態3では、図21に二点鎖線で囲んで示すように、冷却空気CAは、後側第1湾曲面部21jによって、下方に向けて斜め後方、すなわち流出口21cの開放方向と略等しい方向(流出口21cに対して略垂直な方向)に流れるように案内されるので、流入口21bの開口面積を最大限有効に使って冷却空気CAを放出でき、流出口21c付近での通気抵抗が小さくなる。また、実施形態3では、図21に二点鎖線で囲んで示すように、排気ガイド21内の排気流路21dを流れる冷却空気CAが、後側第1湾曲面部21jに引き寄せられる現象(コアンダ効果)が生じる。これにより、流入口21bの上部から流入して排気ガイド21の後側第2湾曲面部21k及び後側第1湾曲面部21jに沿って流れる冷却空気CAが、流出口21cに向かって加速するとともに、流入口21bの下部から流入した冷却空気CAも、後側第1湾曲面部21jに沿って流れる冷却空気CAに引っ張られ、流出口21cに向かって加速する。したがって、後側第1湾曲面部21jを設けない比較例1に比べ、通気抵抗を低減できる。図27の表において、実施形態3において冷却空気CAを風速44.4m/sでエア放出口23cより排気ガイド21に流入させたときの通気抵抗は、比較例1から約16.87%低減している。
【0054】
実施形態2と実施形態3とを比較すると、実施形態2では、流入口21bから冷却空気CAが凹部21g内に流入すると、凹部21g内の車幅方向両端部で渦が発生し、図18及び図19に二点鎖線で囲んで示すように、これらの渦によって多くの冷却空気CAが凹部21g内に引き込まれる。したがって、排気流路21dの下部で生じる乱流を低減できる。図27の表において、実施形態2において冷却空気CAを風速44.4m/sでエア放出口23cより排気ガイド21に流入させたときの通気抵抗は、実施形態3から約1.14%低減している。
【0055】
実施形態1と実施形態2,3とを比較すると、実施形態2では、排気ガイド21の流入口21bの下端部の比較的広い領域が、ファンハウジング23の主壁部23aと対向するので、図18及び図19に一点鎖線で囲んで示すように、流入口21bの下端部近傍に乱流が発生している。実施形態3でも、図21に一点鎖線で示すように、流入口21bの下端部近傍に乱流が発生している。これに対し、実施形態1では、排気ガイド21のフランジ部21e(流入口21b側端部)を、ファンハウジング23のエア放出口23cの外周縁に沿って接続したので、図16及び図17に一点鎖線で囲んで示すように、流入口21bの下端部近傍の乱流が低減している。図27の表において、実施形態1において自動車1を車速160km/で走行させたときの通気抵抗は、実施形態2から約0.56%低減している。実施形態1において冷却空気CAを風速44.4m/sでエア放出口23cより排気ガイド21に流入させたときの通気抵抗は、比較例2から約21.04%低減している。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、流入口に、車体の前端から取り入れられて冷却対象の冷却に使用された冷却空気が流入し、かつ流出口から、前記冷却空気が前記車体の底面の下方に向けて放出される自動車の排気ガイドとして有用である。
【符号の説明】
【0057】
5 車体
13 ラジエータ(冷却対象)
21 排気ガイド
21b 流入口
21c 流出口
21d 排気流路
21g 凹部
21j 後側第1湾曲面部
21k 後側第2湾曲面部
23a 主壁部(隔壁)
23c エア放出口
27 冷却ファン
AS 収容空間
CA 冷却空気
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開放する流入口(21b)と、該流入口(21b)の後方で開放する流出口(21c)とを有し、前記流入口(21b)と流出口(21c)との間には、前記流入口(21b)から流入した冷却空気(CA)を後方に向かって下方に案内する排気流路(21d)が形成され、前記流入口(21b)は、冷却対象(13)の収容空間(AS)とその後側とを仕切る隔壁(23a)に形成されたエア放出口(23c)に接続され、前記流入口(21b)には、車体(5)の前端から取り入れられて前記冷却対象(13)の冷却に使用された冷却空気(CA)が流入し、かつ前記流出口(21c)から、前記冷却空気(CA)が前記車体(5)の底面の下方に向けて放出される自動車の冷却風排気ガイドであって、
前記流出口(21c)は、前記流入口(21b)の後方で下方に向かって斜め後方に開放し、
前記排気ガイド(21)の後側の内面における前記流出口(21c)側の端部には、下側程後方に位置し、かつ前方に凸の形状を有するように湾曲する第1湾曲面部(21j)が形成され、
前記排気ガイド(21)の後側の内面における前記第1湾曲面部(21j)の上側には、下側程後方に位置し、かつ前方に凹の形状を有するように湾曲する第2湾曲面部(21k)が形成され
前記排気ガイド(21)の前側の内面は、後方に向けて斜め下方に傾斜し、
前記排気ガイド(21)の前側の内面には、流出口(21c)側に向けて徐々に幅広となる形状の凹部(21g)が、前後方向全体に亘って形成されていることを特徴とする自動車の冷却風排気ガイド。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車の冷却風排気ガイドにおいて、
前記収容空間(AS)には、前記エア放出口(23c)に前記冷却空気(CA)を送る冷却ファン(27)が収容され、
前記隔壁(23a)のエア放出口(23c)は、円形であり、
前記排気ガイド(21)の流入口(21b)は、円形であり、
前記排気ガイド(21)の流入口(21b)側端部は、前記エア放出口(23c)の外周に該エア放出口(23c)の外周縁に沿って接続されていることを特徴とする自動車の冷却風排気ガイド。