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特開2024-128828X線CT装置、放射線検出装置、X線CT装置のデータ処理方法、及びX線CT装置のデータ処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128828
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】X線CT装置、放射線検出装置、X線CT装置のデータ処理方法、及びX線CT装置のデータ処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
A61B6/03 310Z
A61B6/03 340Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038064
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 寛裕
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 博明
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093FA32
4C093FC04
(57)【要約】
【課題】被検体のFOVの中の領域に応じて、ビューレートを変更できるようにする。
【解決手段】一実施形態に係るX線CT装置は、X線を放射するX線管と、被検体を透過した前記X線に応じた電荷を蓄積する検出単位が、チャネル方向に複数配列されたエネルギ積分型の検出器と、前記検出器に蓄積された電荷が所定の閾値に達したタイミングの時刻データを生成する時刻データ生成部と、前記時刻データと前記閾値に対応するエネルギとを用いて投影データを生成する投影データ生成部と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を放射するX線管と、
被検体を透過した前記X線に応じた電荷を蓄積する検出単位が、チャネル方向に複数配列されたエネルギ積分型の検出器と、
前記検出器に蓄積された電荷が所定の閾値に達したタイミングの時刻データを生成する時刻データ生成部と、
前記時刻データと前記閾値に対応するエネルギとを用いて投影データを生成する投影データ生成部と、
を備えるX線CT装置。
【請求項2】
前記時刻データ生成部が生成する前記時刻データは、前記X線管及び前記検出器の回転角度に対応付けられる、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記投影データ生成部は、前記被検体のFOV(Field of View)の中の位置に応じてビューレートが異なる投影データを生成する、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記時刻データ生成部は、
前記検出器に蓄積された前記電荷が前記閾値を超えたとき、前記検出器に蓄積された前記電荷をリセットするトリガ信号を生成する比較器と、
前記比較器で生成された前記トリガ信号を入力し、前記トリガ信号が入力されたタイミングで前記時刻データを生成するTDC(Time to Digital Converter)と、
備えて構成される、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記時刻データ生成部は、複数の前記検出単位の夫々に対して前記時刻データを生成し、
前記投影データ生成部は、
前記検出単位のそれぞれに蓄積された電荷が前記所定の閾値に達したことを示すイベントに関連したイベントデータであって、前記イベントが発生した時刻を示す前記時刻データと、当該イベントが発生した前記検出単位の識別情報とが対応付けられたイベントデータ、を生成するイベント生成部、を備える、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記投影データ生成部は、
前記X線管及び前記検出器が回転するとき、前記X線管から出射された前記X線が、前記被検体のFOV(Field of View)の中に設定された特定領域を通過して前記検出器に入射する第1のパスと、前記特定領域を通過せずに前記検出器に入射する第2のパスを特定するパス特定部と、
前記第1のパスに対応するイベントデータに対しては、前記イベントの発生頻度が第1のビューレートに維持された第1のイベントデータとする一方、前記第2のパスに対応するイベントデータに対しては、前記イベントの発生を集約して集約後のイベントの発生頻度が前記第1のビューレートよりも低い第2のビューレートになるように第2のイベントデータを生成し、前記第1のイベントデータと前記第2のイベントデータとを組み合わせて転送用イベントデータを生成する、転送データ生成部、
をさらに備える請求項5に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記第1のイベントデータの前記第1のビューレートは、所定のビュー間隔が複数に分割された微小角度に対応する分解能を有するビューレートであり、
前記第2のイベントデータの前記第2のビューレートは、ビュー毎に、前記第2のパスに対応するイベントデータにおけるイベントの発生回数を積算することで、前記第1のビューレートよりも低減されたビューレートである、
請求項6に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記投影データ生成部は、
前記第1のイベントデータに関しては、前記閾値に対応するエネルギを、隣接する2つのイベントの発生時刻に対応する時刻データの間隔で除算することにより、前記特定領域を通過する前記第1のパスに対応する投影データが、前記微小角度に対応する第1のビューレートにアップサンプリングされた第1の投影データを生成し、
前記第2のイベントデータに関しては、前記イベントの発生回数の積算値に基づいて、前記ビュー間隔に対応する前記第2のビューレートを有する第2の投影データを生成する、投影データ算出部、
をさらに備える、請求項7に記載のX線CT装置。
【請求項9】
回転筐体と固定筐体とを備え、
前記転送データ生成部は前記回転筐体に収容され、前記投影データ算出部は前記固定筐体に収容され、
前記転送用イベントデータは、前記回転筐体と前記固定筐体との間に設けられた伝送路を介して転送される、
請求項8に記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記FOVの中に設定される前記特定領域は、
(a)前記FOVの周辺部の領域、
(b)前記被検体を事前に撮影された画像から部分容積効果が発生しやすいと判定される、微細な構造を有している領域、及び、
(c)前記被検体を事前に撮影された画像からアーチファクトが発生しやすいと判定される、高密度の物質の周辺領域、
の少なくとも1つの領域である、
請求項6に記載のX線CT装置。
【請求項11】
前記第1の投影データと前記第2の投影データとを用いて再構成処理することにより、断層画像を生成する再構成処理部、
をさらに備える、請求項8に記載のX線CT装置。
【請求項12】
被検体を透過した放射線に応じた電荷を蓄積する検出単位が、チャネル方向に複数配列されたエネルギ積分型の検出器と、
前記検出器に蓄積された電荷が所定の閾値に達したタイミングの時刻データを生成する時刻データ生成部と、
を備える放射線検出装置。
【請求項13】
X線を放射するX線管と、被検体を透過した前記X線に応じた電荷を蓄積する検出単位が、チャネル方向に複数配列されたエネルギ積分型の検出器と、を少なくとも備えるX線CT装置のデータ処理方法であって、
前記検出器に蓄積された電荷が所定の閾値に達したタイミングの時刻データを生成し、
前記時刻データと前記閾値に対応するエネルギとを用いて投影データを生成する、
X線CT装置のデータ処理方法。
【請求項14】
X線を放射するX線管と、被検体を透過した前記X線に応じた電荷を蓄積する検出単位が、チャネル方向に複数配列されたエネルギ積分型の検出器と、を少なくとも備えるX線CT装置のデータ処理プログラムであって、
前記検出器に蓄積された電荷が所定の閾値に達したタイミングの時刻データを生成するステップと、
前記時刻データと前記閾値に対応するエネルギとを用いて投影データを生成するステップと、
をコンピュータに実行させるX線CT装置のデータ処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線CT装置、放射線検出装置、X線CT装置のデータ処理方法、及びX線CT装置のデータ処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(Computed Tomography)装置は、被検体にX線を照射することでX線検出器が検出したX線に基づいて、被検体の断層画像を生成する医用画像診断装置である。X線CT装置では、X線CT装置では、被検体の周りをX線管とX線検出器の対を高速で回転させながら被検体を連続的に撮影して多数の投影データを収集し、この多数の投影データ
を再構成することによって断層画像を生成している。
【0003】
X線管とX線検出器の対が被検体の周りを1回転する間に多数の投影データが収集されるが、1回転の間の角度毎に収集される投影データはビュー(view)とも呼ばれる。そして、単位時間当たりのビュー数はビューレート(view rate)呼ばれる。
一般に、ビューレートが高い程、空間分解能が高くなり、解像度の高い断層画像を生成することができる。
【0004】
一方、被検体の撮影対象領域であるFOV(Field of View)では、FOVの中心部とFOVの辺縁部とでは必要となる空間分解能が異なる。また、FOVの中の領域の位置や特定の領域の性質よっても必要となる空間分解能が異なる。
【0005】
従来のX線CT装置では、ビューレートは通常一定である。ビューレートを一律に高く設定することにより、空間分解能を高めることができるが、データ量が増加する。上述したように、被検体のFOVの中には高い空間分解能が必要な領域と必要ではない領域がある。このため、ビューレートを一律に高める方法は、本来必要でないデータの量を増加させることを意味し、データの伝送量に制約を加えることになって合理性に欠ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2012-51139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の1つは、被検体のFOVの中の領域に応じて、ビューレートを変更できるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限らない。後述する各実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るX線CT装置は、X線を放射するX線管と、被検体を透過した前記X線に応じた電荷を蓄積する検出単位が、チャネル方向に複数配列されたエネルギ積分型の検出器と、前記検出器に蓄積された電荷が所定の閾値に達したタイミングの時刻データを生成する時刻データ生成部と、前記時刻データと前記閾値に対応するエネルギとを用いて投影データを生成する投影データ生成部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す概略図。
図2】本実施形態に係る検出器、DAS、及び、コンソールの処理回路の詳細な構成及び機能を示すブロック図。
図3】実施形態に係るX線CT装置の動作例を示すフローチャート。
図4】特定領域と第1及び第2のパスの概念を説明する図。
図5】実施形態に係るX線CT装置における、検出器の出力からイベントデータ生成までの動作を説明するタイミングチャート。
図6】統合イベントデータの概念を説明する図。
図7】統合イベントデータから転送用イベントデータを生成する処理概念を示す図。
図8】転送用イベントデータから第1及び第2の投影データを生成する処理概念を説明する第1の図。
図9】転送用イベントデータから第1及び第2の投影データを生成する処理概念を説明する第2の図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係るX線CT装置について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0011】
図1は、実施形態に係るX線CT装置1の構成例を示す概略図である。図1に示すように、X線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。図1において、説明の便宜上、架台装置10を左側の上下に、向きを変えて複数描画しているが、実際の構成としては、架台装置10は1つである。
【0012】
なお、図1では、天板33の長手方向をz軸方向、z軸方向に直交し、床面に対して平行である軸方向をx軸方向、z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をy軸方向と定義している。
【0013】
寝台装置30は、基台31、寝台駆動機構32、天板33及び支持フレーム34を備える。寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(y軸方向)に移動可能に支持する筐体である。天板33は、支持フレーム34の上面に設けられ、被検体Pが載置される板である。
【0014】
寝台駆動機構32は、制御装置15による制御の下、被検体Pが載置された天板33を移動するモータ又はアクチュエータである。寝台駆動機構32により、天板33は、天板33の長手方向(z軸方向)、及び鉛直方向(y軸方向)に移動可能である。
【0015】
架台装置10は、X線管11、X線検出器12、回転フレーム13、X線高電圧装置14、架台基台19、及びデータ収集回路(DAS:Data Acquisition System)18を備える。
X線管11は、例えば、X線高電圧装置14から高電圧の電力供給を受けてフィラメントからターゲットに向けて熱電子を照射する。
【0016】
X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列を備え、X線管11から照射されて被検体Pを通過したX線を検出し、電気信号に変換してDAS18(データ収集回路18)に出力する。
【0017】
回転フレーム13は、その中心を回転軸として回転自在に支持されており、コンソール装置40等からの制御に基づいて回転駆動され、X線管11、X線検出器12を架台装置10及び寝台装置30に対して回転させる。
【0018】
X線高電圧装置14は、トランス等の電気回路を備え、X線管11に印加される高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置を備える。
【0019】
架台基台19は、架台装置10の開口部を鉛直方向(y軸方向)に支持する筐体である。架台基台19は、寝台装置30に対向するその開口部を鉛直方向(y軸方向)から前方に又は後方にチルト可能にする架台チルト機構を備えていてもよい。
【0020】
DAS(Data Acquisition System)18は、X線検出器12の各X線検出素子から出力される電気信号に対して後述する処理を行うことにより、イベントデータを生成し、生成したイベントデータをコンソール装置40に転送する。DAS18のより詳しい構成及び動作については、後述する。
【0021】
コンソール装置40は、メモリ41、ディスプレイ42、入力インターフェース43、及び、処理回路44を備える。
メモリ41は、処理回路44において用いられる各種処理プログラムや、プログラムの実行に必要な各種のデータ、処理回路44で生成される断層画像等の画像データ等を記憶する。メモリ41は、磁気的若しくは光学的記憶媒体、又は、半導体メモリ等の、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体を含んだ構成を有する。
【0022】
処理回路44は、専用、又は、汎用のプロセッサを有し、メモリ41に記憶されているプログラムを実行することにより、後述する各種の機能を実現するプロセッサである。ここで、プロセッサという用語は、例えば、専用、又は、汎用のCPU(Central Processing Unit)の他、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサを含む。
【0023】
処理回路44は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、或いは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等のハードウェア素子を備えて構成されてもよい。処理回路44が、例えばASICで構成される場合、メモリ41にプログラムを保存するかわりに、当該プログラムに相当する機能がASIC内に論理回路として直接組み込まれる。処理回路44は、プロセッサを用いたソフトウェア処理と、ASIC等のハードウェア素子を用いたハードウェア処理とを組み合わせて各種機能を実現することもできる。
【0024】
処理回路44がプロセッサによって構成される場合、単一のプロセッサによって各機能を実現してもよいし、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶するメモリ41は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つのメモリ41が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0025】
図2は、図1に示した構成のうち、本実施形態に係る検出器12、DAS18、及び、コンソールの処理回路44の、より詳細な構成及び機能を示すブロック図である。
【0026】
前述したように、X線CT装置1は、X線管11の焦点を中心とする円弧に沿って配置される複数の検出単位12aを備えて構成される。なお、検出単位12aの数がMの場合、X線CT装置1はM個の検出単位12a1~検出単位12aMを備えて構成され、これらの総称を検出単位12aとする。円弧に沿った複数の検出単位12aの配列方向は、チャネル方向と呼ばれ、複数の検出単位12aの夫々をチャネル番号で識別することができる。例えば、X線CT装置1は、図2に例示したように、チャネル1(ch 1)からチャネルM(ch M)までのM個の検出単位12aを備えて構成される。
なお、複数の検出単位12aは、チャネル方向と、チャネル方向に直交するスライス方向(図1におけるZ軸方向)に2次元に配列されてもよい。
【0027】
各検出単位12aは、被検体を透過したX線に応じた電荷を蓄積するエネルギ積分型の検出器として構成されている。より具体的には、複数の検出単位12aの夫々は、検出素子120と積分器121を備えて構成されている。検出素子120は、例えば、X線から変換された光を検出し、被検体を透過したX線に応じた電荷を積分器121に出力する。
【0028】
積分器121は、検出素子120から出力された電荷を積分(即ち、蓄積)する。積分器121の構成は特に限定するものではないが、例えば、図2に例示したように、オペアンプ122とキャパシタ123とで構成できる。また、積分器121は、キャパシタ123に蓄積された電荷をリセットするためのリセットスイッチ124を備えている。
【0029】
DAS18は、複数の検出単位12aのそれぞれに対応する複数の時刻データ生成回路180、イベント生成回路183、転送データ生成回路184、及び、制御回路185を備えて構成される。
【0030】
時刻データ生成回路180は、検出単位12aに蓄積された電荷が所定の閾値に達したタイミングの時刻データを生成する。例えば、時刻データ生成回路180の夫々は、比較器181と、TDC(Time to Digital Converter)を備えて構成される。
【0031】
比較器181は、検出単位12aに蓄積された電荷が所定の閾値を超えたとき、トリガ信号を生成する。このトリガ信号は、検出単位12aに蓄積された電荷をリセットするために用いられる。具体的には、トリガ信号は検出単位12aの積分器121に送られて、積分器121のリセットスイッチ124を閉じることにより、キャパシタ123に蓄積された電荷をリセットする。
【0032】
比較器181における閾値判定に用いられる閾値は、例えば、DAS18内に設けられてている制御回路185から送出される。閾値は制御回路185の内部に設けられた記憶回路に予め記録されていてもよいし、コンソール装置40等の外部から変更できるように構成されてもよい。
【0033】
TDC182は、電気的なパルス信号の入力時刻をデジタル量としての時刻データに変換するデバイスである。本実施形態では、TDC182は、比較器181で生成されたトリガ信号を入力し、トリガ信号が入力されたタイミングで時刻データを生成する。
【0034】
TDC182には、トリガ信号の他、例えば、クロック信号と、リセット信号としてのビュートリガが入力される。クロック信号のクロック周期によって時刻データの最小単位が規定される。また、ビュートリガによって、時刻データのカウントアップ値がゼロにリセットされる。ビュートリガによるリセットにより、時刻データのデータ幅(ビット数)が過剰に大きくなることを抑制することができる。比較器181とTDC182の詳しい動作については後述する。
【0035】
イベント生成回路183は、イベントに関連したイベントデータを生成する。本実施形態における「イベント」とは、検出単位12aのそれぞれに蓄積された電荷が所定の閾値に達したことを示す事象のことをいう。そして、本実施形態における「イベントデータ」とは、上記のイベントが発生した時刻を示す時刻データと、このイベントが発生した検出単位12aのチャネル番号等のチャネル識別情報とが対応付けられたデータセットのことをいう。イベントデータの具体例については、後述する。
【0036】
転送データ生成回路184は、第1のパスに対応するイベントデータに対しては、イベントの発生頻度が第1のビューレートに維持された第1のイベントデータとする一方、第2のパスに対するイベントデータに対しては、イベントの発生を集約して集約後のイベントの発生頻度が第1のビューレートよりも低い第2のビューレートになるように低減して第2のイベントデータを生成し、第1のイベントデータと前記第2のイベントデータとを組み合わせて転送用イベントデータを生成する。
【0037】
ここで、上述した第1のイベントデータの第1のビューレートは、所定のビュー間隔、例えば、通常のビュー間隔(即ち、隣接する通常のビューの間の角度)が複数に分割された微小角度に対応する分解能を有するビューレートである。また、上述した第2のイベントデータの第2のビューレートは、所定のビュー毎に(例えば、通常のビュー毎に)、第2のパスに対応するイベントデータにおけるイベントの発生回数を積算することで、第1のビューレートよりも低減されたビューレートである。
【0038】
なお、ビューレートとは、前述したように単位時間あたりのビュー数のことであり、X線管11と検出器12の回転中の時間を回転角に置き換えて、単位角度あたりのビュー数と言い換えることもできる。また、ビューとは、X線管11と検出器12の回転中に、1つの角度方向において検出器12で収集されるデータセット(即ち、投影データ)のことである。
【0039】
なお、本明細書において、単に「ビュー」と記載している場合は、「通常のビューレートを有するビュー」を意味している。また、本明細書において、「通常の」ビューレート、「通常の」空間分解能、「通常の」ビュー間隔と記載している場合は、実施形態のX線CT装置1で実施される時刻データを用いたアップサンプリング処理が施されていない、従来のX線CT装置におけるビューレート、空間分解能、ビュー間隔のことを意味している。
【0040】
また、上述した第1のパスとは、X線管11及び検出器12が回転するとき、X線管11から出射されたX線が、被検体のFOV(Field of View)の中に設定された特定領域を通過して検出器12に入射するパスのことである。また、第2のパスとは、X線管11から出射されたX線が、特定領域を通過せずに検出器に入射するパスのことである。
【0041】
特定領域の設定や、第1のパスおよび第2のパスの特定に関する処理は、例えば、コンソール装置40内の処理回路44が実行するパス特定機能F01によって行われる。
処理回路44は、上記のパス特定機能F01の他、投影データ算出機能F02、及び、再構成処理機能F03の各機能を実現する。
【0042】
投影データ算出機能F02は、前述した第1のイベントデータに基づいて、所定のビューレートである第2のビューレート(例えば、従来の通常のビューレート)よりも高いビューレートである第1のビューレートにアップサンプリングされた第1の投影データを生成する。例えば、投影データ算出機能F02は、前述した第1のイベントデータに関しては、閾値に対応するエネルギを、隣接する2つのイベントの時刻データの間隔で除算することにより、特定領域を通過する第1のパスに対応する投影データが、微小角度に対応する第1のビューレートにアップサンプリングされた第1の投影データを生成する。
【0043】
また、投影データ算出機能F02は、第2のイベントデータに関しては、イベントの発生回数の積算値に基づいて、通常のビューレートに対応する第2のビューレートを有する第2の投影データを生成する。
【0044】
再構成処理機能F03は、第1の投影データと前記第2の投影データに対して、逆投影法等を用いた再構成処理を施すことにより、2次元又は3次元のCT画像を生成する。
【0045】
図3は、実施形態に係るX線CT装置1の動作例を示すフローチャートである。以下、このフローチャートと、図4乃至図9の各説明図を用いて、X線CT装置1のより具体的な動作例を説明する。
【0046】
まず、図3のステップST10で、位置決めスキャンなどの事前撮影を、例えば、X線CT装置1を用いて行う。そして、事前撮影によって生成された事前撮影画像は、例えば、X線CT装置1のディスプレイ42に表示される。
【0047】
ディスプレイ42に表示された事前撮影画像は、医師や撮影技師等のユーザによって評価され、ユーザによって、被検体の本撮影領域のFOV(Field of View)内に特定領域が設定される。本実施形態における特定領域とは、通常の空間分解能よりも高い分解能が必要である、或いは、望ましい領域として設定される領域のことである。
ステップST20で、ユーザによって設定された特定領域、即ち、高ビューレートが必要、或いは、望ましい領域に関する情報を入力する、
【0048】
ステップST30では、特定領域を通過する第1のパス(即ち、高ビューレートが必要なパス)を特定する。なお、第1のパス以外のパスは、特定領域を通過しない第2のパスであり、高ビューレートが必ずしも必要ではないパスである。ステップST20及びステップST30の処理は、処理回路44のパス特定機能F01が行う。
【0049】
図4は、ステップST20及びステップST30の処理の概念を説明する図である。図4に例示するように、ステップST20では、本スキャンで撮影される被検体の撮影領域であるFOVの中に特定領域が設定される。
【0050】
ここで、特定領域は、例えば、(a)FOVの周辺部の領域、(b)被検体を事前に撮影された画像から部分容積効果が発生しやすいと判定される、微細な構造を有している領域、及び、(c)被検体を事前に撮影された画像からアーチファクトが発生しやすいと判定される高密度の物質の周辺領域、の少なくとも1つの領域である。
【0051】
通常、FOVの周辺部の領域はFOVの中央領域よりも空間分解能が低くなるため、FOVの周辺部の領域の空間分解能を高めることにより、FOVの全体をより均一な空間分解能にすることができる。
【0052】
部分容積効果とは、ボクセル内に複数の組織が存在するときに、画素値が複数組織の平均値を表すことをいう。部分容積効果によって微細の構造の分離が困難となるが、空間分解能を高めることによって、部分容積効果を抑制し、微細の構造の分離が可能となる。
また、高密度の物質の周辺領域の空間分解能を高めることによって、高密度の物質に起因するアーチファクトを抑制することできる。
【0053】
なお、空間分解能は空間周波数と言い換えることもでき、特に、X線CT装置1における空間分解能はビューレートと言い換えることもできる。
【0054】
ステップST30では、ビュー毎に(言い換えると、各ビューに対応する回転角毎に)第1のパスと第2のパスが特定される。
【0055】
例えば、X線管11の回転角が0度のビューでは、X線管11からチャネル14、15、16の3つの検出単位12a(ハッチングされている検出単位12a)に至るパスが第1のパスとして特定され、上記以外の検出単位12aに至るパスは第2のパスとして特定される。
【0056】
また、例えば、X線管11の回転角が90度のビューでは、X線管11からチャネル3、4、5の3つの検出単位12a(ハッチングされている検出単位12a)に至るパスが第1のパスとして特定され、上記以外の検出単位12aに至るパスは第2のパスとして特定される。
【0057】
図4では、図が煩雑になるのを避けるために、X線管の回転角が0度と、90度の2つのビューのみを例示しているが、実際には、360度の回転角の全ビューに対して、第1のパスと第2のパスが特定される。
上記のように、ビュー毎に特定された第1のパスおよび第2のパスは、適宜のメモリに一時的に記憶される。
【0058】
図3に戻り、ステップST40では、本撮影を行うための本スキャンが実施される。ステップST50からステップST90までの処理は、本スキャンの実施中に行われる処理である。
【0059】
ステップST50では、検出単位12aに蓄積された電荷が所定の閾値に達したタイミングの時刻データを生成すると共に、検出単位12aに蓄積された電荷をリセットする。
【0060】
ステップST60では、検出単位12aに蓄積された電荷が所定の閾値に達したことを示すイベントの発生時刻である時刻データと、イベントが発生したチャネルの識別情報とを対応付けてイベントデータを生成する。言い換えると、ステップST60では、イベントが発生した時刻を示す時刻データと、当該イベントが発生した検出単位12aの識別情報とが対応付けられたイベントデータが生成される。
図5及び図6は、ステップST50及びステップST60の処理概念を説明する図である。
【0061】
図5(a)は、実施形態に対する比較例として、従来のエネルギ積分型の検出単位の出力信号の一例を示すタイミングチャートである。例えば、チャネル番号m(chm)の検出単位の出力信号は、ビューとビューとの切り替わりタイミングに生成されるビュートリガの直後から電荷が蓄積され、次のビュートリガで電荷がリセットされ、これをビュー毎に繰り返す。従来のエネルギ積分型の検出単位では、1つのビューの期間に蓄積され電荷に対応するエネルギが、ビュー毎、チャネル毎に出力される。例えば、図5(a)に例示するように、チャネルmの検出単位からは、ビュー(n)の期間に蓄積された電荷に対応するエネルギE(n)や、ビュー(n+1)の期間に蓄積された電荷に対応するエネルギE(n+1)が、ビュー毎に順次出力される。
【0062】
一方、図5(b)から図5(f)は、実施形態の動作に対応するタイミングチャートである。図5(b)は、あるチャネル、例えば、チャネルm(chm)の検出単位12aから出力される信号の波形を模式的に示した図である。実施形態における検出単位12aも、エネルギ積分型の検出器として構成されるが、検出単位12aに蓄積された電荷は、従来のようにビュートリガでリセットされるのではなく、検出単位12aの後段に設けられた比較器181から出力されるトリガ信号によってリセットされる。
【0063】
図5(c)は、積分器121のリセットに用いられるトリガ信号を示している。このトリガ信号は比較器181から出力される。比較器181は、所定のエネルギに対応する閾値Eと、検出単位12aの出力信号とを比較し、検出単位12aの出力信号が閾値Eを超えると、図5(c)に示すようなトリガ信号を発生する。この結果、検出単位12aの出力信号の波形は、図5(b)に示したように、トリガ信号のタイミングでゼロとなり、その後単調に増加し、閾値Eに達するとゼロに戻る波形となる。
【0064】
なお、検出単位12aに入力されるX線の強度が大きい場合は、検出単位12a1に蓄積される電荷の増分が大きく、この結果、トリガ信号の間隔は短くなる。逆に、検出単位12aに入力されるX線の強度が小さい場合は、積分器121に蓄積される電荷の増分が小さく、この結果、トリガ信号の間隔は長くなる。このように、実施形態のX線CT装置1では、検出単位12aに入力されるX線の強度を、トリガ信号の間隔に置き換えて評価することが可能な構成となっている。
【0065】
図5(c)に示したトリガ信号は、TDC182に入力され、TDC182によって、トリガ信号の入力時刻がデジタルデータの時刻データに変換される。TDC182には、図5(d)に示したクロック信号とビュートリガも入力される。TDC182の内部では、クロック信号の各クロックに対応した時刻が、時刻tから、ビュートリガによってリセットされる時刻tまで順次カウントアップされる。ビュートリガによってリセットすることにより、時刻データの大きさを制限することが可能となり、時刻データのデータ幅(ビット数)を、例えば、10ビット程度に制限することができる。
【0066】
図5(e)は、イベントの発生状況を示す図である。前述したように、実施形態のイベントは、検出単位12aのそれぞれに蓄積された電荷が所定の閾値に達したことを示す事象のことである。図5(e)では、イベントの発生を「1」で示し、イベントの非発生を「0」で示している。
【0067】
前述したように、TDC182では、比較器181からのトリガ信号が入力されたとき、イベントが発生したと判定する。そして、TDC182は、入力したトリガ信号の時刻に対応した時刻データと、イベントが発生したチャネルの識別情報との組み合わせを、イベントデータとして生成する。
【0068】
図5(f)は、TDC182で生成されるイベントデータの例を示す図であり、イベントが発生する都度、イベントの発生チャネル番号とイベントの発生時刻との組み合わせであるイベントデータ、例えば、(ch 3, t2)、(ch 3, t4)、(ch 3, t8)等のイベントデータを順次生成する。
【0069】
図5(a)乃至図5(f)では、ビュー(n)とビュー(n+1)の2つのビューのみを図示しているが、実際には、1回転分、又は、複数回転分の複数ビューに対応するイベントデータ生成される。
【0070】
各チャネルのTDC182で生成されたイベントデータは、イベント生成回路183に送られる。イベント生成回路183では、各チャネルから送られてきたイベントデータを統合して統合イベントデータを生成する。
【0071】
図6は、統合イベントデータの一例を示す図である。統合イベントデータは、例えば、(ch 3, t2)、(ch 3, t4)、(ch 3, t8)等のチャネル毎のイベントデータを、全チャネル分及び全ビュー分だけ集めたイベントデータの集合である。図6に示す統合イベントデータを示す表記では、横方向に検出単位12aのチャネル番号を配列し、縦方向にビュー番号とそのビュー内における時刻を配列している。図6においても、縦方向にはビュー(n)とビュー(n+1)の2つのビューのみを配列しているが、実際には、1回転分、又は、複数回転分の複数ビューに対応するビューとそのビュー内における時刻が配列されることになる。
【0072】
図6に示した表記では、横方向のチャネル番号と縦方向の時刻で規定される各セルのうち、「1」で示されるセルは、対応するチャネル番号と対応する時刻においてイベントが発生したことを示している。したがって、当該セルは、対応するチャネル番号と対応する時刻データの組み合わせからなるイベントデータが存在することを意味している。
【0073】
一方、「0」で示されるセルは、対応するチャネル番号と対応する時刻においてイベントが発生しなかったことを示している。したがって、当該セルは、対応するチャネル番号と対応する時刻データには、イベントデータが存在しないことを意味している。
【0074】
図3に戻り、ステップST70では、高ビューレートが必要な第1のパスについてはイベントデータのデータを維持する一方、それ以外の第2のパスについてはイベントデータのデータを集約して、転送用イベントデータを生成する。
【0075】
図7は、ステップST70の処理の概念を説明する図である。図7(a)は図6と同じ図であり、ステップST60で生成された統合イベントデータを示している。図7(b)は、ステップST70の処理によって、統合イベントデータから生成される転送用イベントデータの概念を示している。
【0076】
前述したように、図7(a)に示した統合イベントデータ中の「1」で示されるセルには、対応するチャネル番号と対応する時刻データの組み合わせからなるイベントデータが存在することを意味している。したがって、統合イベントデータの全体では、「1」の数だけ、つまり、イベントの発生回数だけのイベントデータが含まれることになり、データ転送の観点からは、無視できない程度の大きなデータ量となっている。
【0077】
そこで、ステップST70では、ステップST30で特定された第1のパスと第2のパスの情報に基づいて、統合イベントデータのデータ量を削減する処理を行っている。ステップST70の処理は、DAS18の転送データ生成回路184が行っている。
【0078】
具体的には、前述したように、第1のパスに対応するイベントデータに対しては、イベントの発生頻度が第1のビューレートに維持された第1のイベントデータとしている。一方、第2のパスに対するイベントデータに対しては、イベントの発生を集約して集約後のイベントの発生頻度が第1のビューレートよりも低い第2のビューレートになるように低減して第2のイベントデータを生成している。具体的には、第2のパスに関しては、ビュー毎に、第2のパスに対応するイベントデータにおけるイベントの発生回数を積算し、その積算数を第2のイベントデータとしている。
【0079】
たとえば、図7(b)に示した例では、ビュー(n)においては、チャネル3とチャネル4の各検出単位12aに至るパスが第1のパスに該当し、それ以外のパスは第2のパスに該当する。また、ビュー(n+1)においては、チャネル4とチャネル5の各検出単位12aに至るパスが第1のパスに該当し、それ以外のパスは第2のパスに該当する。
【0080】
そして、第2のパスについては、L1(350)、L2(700)、L3(400)等のように、イベントの発生回数の積算数自体を第2のイベントデータとしている。例えば、ビュー内の時刻の総数Nを1000とし、そのうちイベントが発生した回数(即ち、ビュー内の「1」の個数)が、350、700、400等であった場合、イベントの発生回数である350、700、400等の数自体が第2のイベントデータとなる。この結果、転送用イベントデータのデータ量が大幅に削減されることになる。
図3のステップST80では、ステップST70で生成された転送用イベントデータを、固定部である架台基台19を経由してコンソール装置40に転送する。
【0081】
X線CT装置1は、回転フレーム13に収容される回転筐体と、固定部である架台基台19やコンソール装置40に収容される固定筐体とを備えている。そして、回転筐体と固定筐体の間のデータ伝送路には、スリップリングや、非接触の光伝送路等が介在する。このため、データ伝送量に制限があり、比較的狭い伝送路となっている。
【0082】
一般にビューレートを高めるとデータ量は増加するが、実施形態のX線CT装置1では、統合イベントデータのデータ量を削減する転送データ生成回路184を、回転筐体のひとつであるDAS18の筐体内に設けている。この結果、DAS18から再構成処理を行うコンソール装置40へ至る、狭い伝送路を経由するデータ転送を可能にしている。
【0083】
次に、図3のステップST90では転送用イベントデータから、通常の空間分解能よりもアップサンプリングされた第1の投影データと、通常の空間分解能を有する第2の投影データを生成する。より具体的には、転送用イベントデータのうち、上述した第1のイベントデータに関しては、閾値に対応するエネルギを、隣接する2つの時刻データの間隔で除算することにより、特定領域を通過する第1のパスに対応する第1の投影データを生成する。この第1の投影データは、上述した微小角度に対応する第1のビューレートにアップサンプリングされた投影データである。
【0084】
一方、転送用イベントデータのうち、第2のイベントデータに関しては、各ビュー内のイベントの発生回数の積算値に基づいて、上述した通常のビューに対応する前記第2のビューレートを有する第2の投影データを生成する。ステップST90の処理は、投影データ算出機能F02が行う。
【0085】
図8および図9は、ステップST90の処理概念を説明する図である。図8(a)は、第1のイベントデータから算出される第1の投影データに対応する空間領域をハッチングで示している。なお、図8(a)では、複数のチャネルのうち、特定の1つのチャネル(ch m)に着目した空間領域をハッチングで示している。
【0086】
図8(a)において、「ビュー始め」から「ビュー終わり」で示されている角度範囲が通常のビューの間隔である(図8(b)参照)。これに対して、第1の投影データに対応する空間領域は、通常のビュー間隔がアップサンプリングされ、通常の空間分解能よりも高い空間分解能が得られることを示している。
【0087】
前述したように、第1の投影データの値(E)は、例えば、閾値に対応するエネルギ(E)を、隣接する2つの時刻データの間隔で除算することにより算出することができる。具体的には、以下の式で算出することができる。
E=E/(Tn+1-T) (式1)
【0088】
ここで、Tn+1、Tは、夫々、TDC182から出力されるイベントが発生した時刻データであり、(Tn+1-T)は、隣接したイベントの発生時刻の間隔を示している。
【0089】
図8(b)は、第2のイベントデータから算出される第2の投影データに対応する空間領域をハッチングで示している。なお、図8(b)においても、図8(a)と同様に、複数の検出単位12aのうち、特定の1つの検出単位12a(ch m)に着目した空間領域をハッチングで示している。
図8(b)に示したように、第2の投影データは通常のビューレートを有しており、第2の投影データに対応する空間領域は通常の空間分解能を有している。
【0090】
また、前述したように、第2の投影データの値(E)は、ビュー内のイベントの発生回数を積算に基づいて算出することができる。例えば、あるビュー内においてイベントがL回発生したとすると、第2の投影データの値(E)は以下の式で算出することができる。
E=L*E (式2)
【0091】
なお、図8(a)及び図8(b)は、実施形態に係るX線CT装置1によって得られる技術的効果の理解を容易にするために、「ビュー始め」から「ビュー終わり」までの間隔(ビュー間隔)を、実際に運用されているX線CT装置のビュー間隔よりも極端に大きくして図示している。実際のX線CT装置では、例えば、1回転でのビュー数は数百以上である。説明を判り易くするために、ビュー数を実際よりも少ない360と仮定したとしても、「ビュー始め」から「ビュー終わり」までのビュー間隔は1°となる。
【0092】
一方、第1のイベントデータでは、1つのビューを、例えば、図6及び図7に例示したように、1000個の時刻(t~t:N=1000)に分割することも不可能ではない。この場合、第1の投影データは、最も高い空間分解能として、0.001°に相当する空間分解能が得られることになる。
【0093】
図9は、ステップST90の処理概念を時間軸上で説明する図である。図9(a)乃至図9(d)は、図5(b)乃至図5(e)と同じ図であるので説明を省略する。図9(e)は、ステップST90で生成される投影データの一例を時間軸方向に図示したものである。図5(e)の前半はビュー(n)に対応する第1の投影データを例示し、図5(e)の後半はビュー(n+1)に対応する第2の投影データを例示している。
【0094】
前述したように、第1の投影データは、ビュー内が複数に分割された投影データとして生成される。即ち、第1の投影データは、1つのビューが複数にアップサンプリングされた投影データとして生成される。具体的には、第1の投影データは、イベントの発生毎に、前述した(式1)に基づいて算出される。そして、第1のイベントとその直後の第2のイベントとの間の時刻は、例えば、第2のイベントに対して算出された第1の投影データの値によって補完することができる。
【0095】
一方、第2の投影データは、ビュー内に1つの、通常のビューレートを有する投影データとして生成される。具体的には、第2の投影データは、前述した(式2)に基づいて算出される。例えば、ビュー(n+1)内におけるイベントの発生回数が300の場合、第2の投影データは、E=300*E、として算出される。
【0096】
なお、図9(a)乃至図9(e)から理解できるように、第1の投影データの空間分解能は、TDC182に入力されるクロック信号のクロック周波数を変えることによって変更できる他、比較器181に入力される閾値の値を変えることによっても変更できる。
【0097】
図3に戻り、ステップST100では、第1の投影データと前記第2の投影データに対して、逆投影法等を用いた再構成処理を施すことにより、2次元又は3次元のCT画像を生成する。
【0098】
実施形態の記載における時刻データ生成回路、イベント生成回路、及び、転送データ生成回路は、夫々、特許請求の範囲の記載における、時刻データ生成部、イベント生成部、及び、転送データ生成部の一例である。また、実施形態の記載におけるパス特定機能、投影データ算出機能、及び、再構成処理機能は、夫々、特許請求の範囲の記載における、パス特定部、投影データ算出部、及び、再構成処理部の一例である。また、実施形態の記載における、イベント生成回路、転送データ生成回路、パス特定機能、及び、投影データ算出機能の組み合わせは、特許請求の範囲の記載における投影データ生成部の一例である。
また、特許請求の範囲の記載における放射線検出装置は、実施形態の記載における検出器と時刻データ生成回路とを組みわせた構成の一例である。
【0099】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、被検体のFOVの中の領域に応じて、ビューレートを変更できる。
【0100】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0101】
1…X線CT装置 10…架台装置(架台) 11…X線管 12…検出器 120…検出素子 121…積分器 18…DAS 180…時刻データ生成回路 181…比較器 182…TDC 183…イベント生成回路 184…転送データ生成回路 185…制御回路 40…コンソール装置 42…ディスプレイ 44…処理回路 F01…パス特定機能 F02…投影データ算出機能 F03…再構成処理機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9