(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128829
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20240913BHJP
A61M 25/092 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A61M25/09 520
A61M25/092 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038070
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】599140507
【氏名又は名称】株式会社パイオラックスメディカルデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大宮 由裕
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA02
4C267AA07
4C267AA29
4C267AA41
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB07
4C267BB11
4C267BB16
4C267BB38
4C267BB40
4C267BB52
4C267CC08
4C267CC21
4C267CC22
4C267CC26
4C267EE03
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】先端部を大きく屈曲させることができるガイドワイヤを提供する。
【解決手段】このガイドワイヤ10は、筒状基部21及び筒状先端部23を有する筒状部材20と、基部31及び先端部33を有する操作線30と、筒状先端部23の伸びを抑制する伸長抑制部材40と、筒状先端部23に固定されると共に、操作線30の先端部33が固定される先端固定部25とを有し、先端固定部25は筒状先端部23に固定されており、操作線30は、基部31が先端固定部25に近接するように、筒状部材20に対して押し込みが可能とされている。そして、筒状部材20に対して操作線30が押し込まれると、筒状先端部23に、先端固定部25を介して操作線30からの押し込み力が作用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状基部及び該筒状基部の先端側に配置される筒状先端部を有する、筒状部材と、
基部及び該基部の先端側に配置される先端部を有し、前記筒状部材の内側に挿入される操作線と、
少なくとも前記筒状先端部の周方向の一部に配置されて、前記筒状先端部の軸方向の伸びを抑制する、伸長抑制部材と、
前記筒状先端部に固定されると共に、前記操作線の前記先端部が固定される先端固定部とを有しており、
前記操作線は、前記基部が前記先端固定部に近接するように、前記筒状部材に対して押し込みが可能とされていることを特徴とするガイドワイヤ。
【請求項2】
前記操作線の前記先端部は、所定形状に屈曲する屈曲部分を有している請求項1記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記屈曲部分は、前記伸長抑制部材に対して離間する離間部分と、前記離間部分の先端側において、前記伸長抑制部材に対して近接する近接部分とを有している請求項2記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記伸長抑制部材は、前記先端固定部に固定されている請求項1~3のいずれか1つに記載のガイドワイヤ。
【請求項5】
前記伸長抑制部材は、前記筒状先端部の内側に配置されて、その先端が前記先端固定部に固定され、基端が前記筒状先端部の基端側又は前記筒状基部に固定される線状部材からなる、請求項4記載のガイドワイヤ。
【請求項6】
前記筒状先端部の基端側には、該筒状先端部における内側寸法よりも小さく、且つ、前記操作線の前記先端部における外側寸法よりも大きい挿通孔が形成されており、該挿通孔に前記操作線の前記先端部が挿通されている請求項1~3のいずれか1つに記載のガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、血管、胆管、膵管、尿管、気管等の人体の管状器官や、体腔等の人
体組織の所定位置に、カテーテル等を留置する際に用いられる、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
以前から、胆管や膵管、血管、尿管、気管等の人体の管状器官に、カテーテルを挿入して薬液を注入したり、バルーンカテーテルで閉塞した管状器官を拡径したり、或いは、ステントを留置したりすることが行われている。これらの作業の際には、まず、ガイドワイヤを管状器官に挿入して所定位置まで到達させ、その外周に沿ってカテーテルやバルーンカテーテル、ステントを保持したチューブ等を移動させている。
【0003】
ところで、ガイドワイヤを、屈曲した管状器官内において移動させやすくするためには、例えば、ガイドワイヤの先端部を予め所定形状に付形したり(プリシェイプ)、或いは、管状器官内からガイドワイヤを一旦引き抜いた後、所定形状に付形したり(リシェイプ)することが行われている。
【0004】
ただし、上記のように、ガイドワイヤ先端部をプリシェイプしたりリシェイプしたりしても、管状器官内での移動中に、管状器官の内壁等によって、ガイドワイヤ先端部が押圧される等して、せっかく付形した形状が、付形前の形状に戻りやすかった。
【0005】
そのため、ガイドワイヤを管状器官内に挿入中に、先端部を曲げることが望まれている。
【0006】
このようなガイドワイヤとして、例えば、下記特許文献1には、基端及び先端を有すると共に堅い壁部をそなえた細長い管状の軸と、該軸に連結されると共に軸から先端方向へ伸長し、先端部分が可撓性を有している細長い可撓性の先端部分と、管状の軸を貫通して可撓性の先端部分の中に伸長する引っ張りワイヤとを備えた、ガイドワイヤが記載されている。
【0007】
上記ガイドワイヤは、外側ばね(外側に配置されたコイルばね)と、その内側に配置された内側ばね(内側に配置されたコイルばね)と、ガイドワイヤ先端に配置され、外側ばね及び内側ばねの先端に固着されたキャップとを有している。また、引っ張りワイヤは、外側ばねと内側ばねとの間を通って、ガイドワイヤの軸心に対して偏心した状態で、ガイドワイヤ先端のキャップに固着されている。
【0008】
そして、引っ張りワイヤを、手元側に引っ張ると、外側ばねの径方向所定箇所における、線材間のコイルピッチが狭くなり、反対側が広がるようにして、ガイドワイヤ先端部がJ字形状となるように屈曲するようになっている(特許文献1の
図7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1のガイドワイヤにおいては、上述したように、偏心配置された引っ張りワイヤを引っ張って、外側ばねの径方向所定箇所のコイルピッチが狭くなるような態様で、ガイドワイヤ先端部を屈曲するようにしているので、線材どうしが互いに当接してコイルピッチが詰まってしまうと、ガイドワイヤ先端部を大きく屈曲させにくい。
【0011】
したがって、本発明の目的は、先端部を大きく屈曲させることができる、ガイドワイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係るガイドワイヤは、筒状基部及び該筒状基部の先端側に配置される筒状先端部を有する、筒状部材と、基部及び該基部の先端側に配置される先端部を有し、前記筒状部材の内側に挿入される操作線と、少なくとも前記筒状先端部の周方向の一部に配置されて、前記筒状先端部の軸方向の伸びを抑制する、伸長抑制部材と、前記筒状先端部に固定されると共に、前記操作線の前記先端部が固定される先端固定部とを有しており、前記操作線は、前記基部が前記先端固定部に近接するように、前記筒状部材に対して押し込みが可能とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、筒状先端部は、伸長抑制部材によって伸びが抑制されていると共に、操作線の先端部が先端固定部に固定されているので、操作線を、その基部が先端固定部に近接するように、筒状部材に対して押し込むと、筒状先端部に、先端固定部を介して操作線からの押し込み力が作用して、操作線の先端部が、筒状先端部の内側で張られるような力によって屈曲して、これに追随して筒状先端部が屈曲することになるため、ガイドワイヤの先端部を大きく屈曲させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るガイドワイヤの一実施形態を示しており、その要部拡大断面図である。
【
図3】本発明に係るガイドワイヤにおいて、操作線を押し込み操作する、操作部及びその近傍の拡大断面図である。
【
図4】
図1に示す状態から、筒状部材に対して操作線が押し込まれて、ガイドワイヤの先端部が所定角度に屈曲した状態を示す断面説明図である。
【
図5】
図4に示す状態から、筒状部材に対して更に操作線が押し込まれて、ガイドワイヤの先端部が
図4よりも大きく屈曲した状態を示す断面説明図である。
【
図6】本発明に係るガイドワイヤの他の実施形態を示しており、その要部拡大断面図である。
【
図7】
図6に示す状態から、筒状部材に対して操作線が押し込まれて、ガイドワイヤの先端部が大きく屈曲した状態を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(ガイドワイヤの一実施形態)
以下、
図1~5を参照して、本発明に係るガイドワイヤの一実施形態について説明する。
【0016】
図1に示すように、この実施形態のガイドワイヤ10は、筒状基部21及び筒状先端部23を有する筒状部材20と、基部31及び先端部33を有し、筒状部材20の内側に挿入される操作線30と、少なくとも筒状先端部23の周方向の一部に配置されて、該筒状先端部23の軸方向の伸びを抑制する、伸長抑制部材40と、筒状先端部23に固定されると共に、操作線30の先端部33が固定される先端固定部25とを有している。
【0017】
また、この実施形態におけるガイドワイヤ10は、筒状部材20の外周に配置された樹脂層50と、該樹脂層50の外周に配置された親水性樹脂膜55とを有している。
【0018】
そして、操作線30は、基部31が先端固定部25に近接するように、筒状部材20に対して押し込みが可能とされている。そのため、筒状部材20に対して操作線30が押し込まれると、筒状先端部23に、先端固定部25を介して操作線30からの押し込み力F2が作用するようになっており、筒状先端部23が屈曲可能に構成されている。
【0019】
なお、上記の、筒状部材20に対する操作線30の押し込み方向を、「押し込み方向F1」とする(
図1参照)。
【0020】
更に
図3に示すように、このガイドワイヤ10は、その軸方向の基端側に、操作線30を操作するための、操作部60を有している。
【0021】
なお、筒状部材20、操作線30、伸長抑制部材40、操作部60等)における「先端部」、「先端」、「先端側」とは、ガイドワイヤ操作者の手元側から最も離れた遠位端部、遠位端、遠位端側を意味し、更に、「基端部」、「基端」、「基端側」とは、ガイドワイヤ操作者の手元側に最も近い近位端部、近位端、近位端側を意味する。
【0022】
まず、筒状部材20や伸長抑制部材40等について説明する。
【0023】
筒状部材20は、略円筒状をなした筒状基部21と、該筒状基部21の軸方向の先端側に配置された筒状先端部23とを有しており、基端固定部27を挟んで同軸上に配置されており、全体として一体とされて所定長さで円筒状に延びる構成となっている。
【0024】
この実施形態の場合、筒状基部21は、合成樹脂で形成されたものであって、内周及び外周が円形状で、且つ、内周及び外周に凹凸のない連続した平坦面状をなして、所定長さで延びると共に、基端から先端に亘り一定厚さとされた略円筒状をなしている。また、筒状基部21の内部には、操作線30を挿入配置可能な空洞が形成されている。なお、この実施形態における筒状基部21は、筒状部材20に対して操作線30を押し込んだときに、軸方向に伸びることはないか、又は、伸びにくくなっている。
【0025】
更に
図3に示すように、筒状基部21の基端部22の外周であって、径方向に対向する箇所には、一対のピン嵌合凹部22a,22aが形成されている。
【0026】
一方、筒状先端部23は、所定外径の円形断面の線材24を、間隔を空けずに(ピッチを空けずに)巻回してなる密巻きのコイル状を呈していると共に、所定長さで延びた略円筒状をなしている。この筒状先端部23の内部にも、筒状基部21と同様に、操作線30を挿入配置可能な空洞が形成されている。
【0027】
なお、この筒状先端部23は、コイル状をなしているので伸縮可能となっており、筒状部材20に対して操作線30を押し込んだときに、軸方向に伸びることになるが、その伸びは伸長抑制部材40(これについては後で詳述する)で抑制されるようになっている。
【0028】
また、筒状部材20の内側(ここでは径方向内側)には、操作線30が挿入されて配置されるが、操作線30の外側(径方向外側)に、筒状部材20が配置されている、とも言える。
【0029】
更に、筒状先端部23の軸方向の先端23a側には、同筒状先端部23の先端開口を塞ぐようにして、先端面外周が丸みを帯びた形状とされた、先端固定部25が配置されている。なお、この実施形態における先端固定部25は、筒状先端部23とは別体(別々の部材)となっている。
【0030】
また、上記先端固定部25は、筒状部材20に対して操作線30が押し込まれたときに(押し込み方向F1参照)、操作線30からの押し込み力F2を受け止めて、操作線30の先端部33自体が押し込み方向F1へ移動することを規制(操作線30は、基部31が押されて移動しても、先端部33自体は移動しない)すると共に、操作線30からの押し込み力F2を、筒状先端部23に伝達する役割を果たすものとなっている。
【0031】
そして、先端固定部25の基端面側の外周縁部に、筒状先端部23の先端23aが、その一部を埋設した状態で固着されており、その結果、筒状先端部23と先端固定部25とが固定されるようになっている。
【0032】
なお、先端固定部25には、操作線30の先端部33の最先端35aや、伸長抑制部材40の先端41も、固定されるようになっている。
【0033】
更に、筒状先端部23の軸方向の基端23b側には、筒状先端部23における内側寸法よりも小さく、且つ、操作線30の先端部33における外側寸法よりも大きい挿通孔28が形成されており、該挿通孔28に操作線30の先端部33が挿通されている。
【0034】
この実施形態の場合、筒状先端部23の軸方向の基端23b側に、基端固定部27が配置されている。この基端固定部27は、外周が円形状をなし且つガイドワイヤ10の軸方向に所定厚さで設けられた略円形ブロック状をなしている。なお、この基端固定部27も、先端固定部25と同様に、筒状先端部23とは別体となっている。また、基端固定部27は、筒状基部21と筒状先端部23との間に配置されている、とも言える。
【0035】
そして、基端固定部27の、ガイドワイヤ10の軸心Cに一致する径方向中心に対して、偏心した位置に、円形状をなした前記挿通孔28が、基端固定部27の厚さ方向に貫通して形成されている。上記の挿通孔28は、筒状先端部23の内径寸法)よりも小さく、且つ、操作線30の先端部33を構成する細径部35の外径寸法よりも大きく形成されている。
【0036】
また、基端固定部27の、先端面(筒状先端部23との対向面)であって、その周縁部に、コイル状をなした筒状先端部23の、基端23bを含む基端部が埋設されて固定されている。一方、基端固定部27の、基端面(筒状基部21との対向面)であって、その周縁部に、筒状基部21の先端21aが当接して、接着剤等を介して固定されている。そのため、この実施形態における筒状部材20を構成する筒状基部21及び筒状先端部23は、基端固定部27を介して同軸的に連結されて一体化されている。
【0037】
なお、上記の先端固定部25や基端固定部27は、例えば、SnやAgロウ等のロウ材や、紫外線硬化型のアクリレート樹脂、シリコーン系接着剤、変性シリコーン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、アクリレート系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤等で形成されている。
【0038】
また、少なくとも筒状先端部23の周方向の一部に配置され、筒状先端部23の軸方向の伸びを抑制する伸長抑制部材40は、この実施形態の場合、先端固定部25に固定されている。更に、この伸長抑制部材40は、筒状先端部23の内側に配置されて、その先端41が先端固定部25に固定され、基端43が筒状先端部23の基端23b側に固定される線状部材からなる。
【0039】
具体的に説明すると、この実施形態における伸長抑制部材40は、円形断面(軸方向の断面が円形状)を有する丸線であって(
図2参照)、一定の外径で直線状をなすように所定長さで延びている。また、
図1に示すように、この伸長抑制部材40は、ガイドワイヤ10の軸心Cに対して偏心して、コイル状の筒状先端部23の内周に当接するように配置されている。
【0040】
上記の伸長抑制部材40は、その先端41(一端)が、先端固定部25の基端面側の外周縁部よりもやや内周部分に、筒状先端部23の内周に当接しながら所定深さ埋設された状態で、先端固定部25に固定されている。
【0041】
一方、伸長抑制部材40は、基端43(他端)を含む他端部が、基端固定部27の外周縁部よりもやや内周部分において、筒状先端部23の内周に当接しながら所定深さ埋設されて、筒状先端部23の基端23bごと基端固定部27に固定されるようになっている(すなわち、伸長抑制部材40の基端43は、筒状先端部23の基端23b側に固定されている)。
【0042】
また、
図1に示すように、伸長抑制部材40は、真っ直ぐに引き延ばされた状態(直線状に延ばされた状態)で、その両端41,43が先端固定部25及び基端固定部27に固定されている。
【0043】
なお、上記の筒状先端部23を形成する線材24や、伸長抑制部材40としては、例えば、Ni-Ti系合金,Ni-Ti-X(X=Fe,Cu,V,Co,Cr,Mn,Nb等)合金、Cu-Zn-X(X=Al,Fe等)合金等の超弾性合金や、ステンレス、ピアノ線材などを用いることができ、或いは、W、Pt、Ti、Pd、Rh、Au、Ag、Bi、Ta及びこれらの合金等からなるX線不透過性金属を用いることもできる。上記の中でも、Ni-Ti係合金、Ni-Ti-X合金、ステンレスを用いることが好ましい。
【0044】
次に、操作線30について説明する。
【0045】
この操作線30は、筒状部材20の内側に挿入配置されて、筒状部材20に対してガイドワイヤ10の軸方向にスライド操作可能、特に、
図1の押し込み方向F1に示すように、基部31が先端固定部25に近接するように、筒状部材20に対して押し込みが可能となっている(基部31が先端固定部25に近接する方向に、筒状部材20に対して押し込み操作が可能に構成されている)。
【0046】
なお、
図1に示す状態、すなわち、筒状先端部23が屈曲しておらず真っ直ぐに伸びた状態では、筒状部材20に対して操作線30を押し込み方向F1とは反対の方向(引き込み方向)にスライド操作(引き込み操作)することはできない(筒状先端部23に軸方向の圧縮力が作用して、筒状先端部23の変形が規制されるため)。
【0047】
ただし、
図4や
図5に示すように、筒状先端部23が所定形状に屈曲した状態から、筒状部材20に対して操作線30を引き込み方向にスライド操作することは可能である。
【0048】
この実施形態における操作線30は、全体として円形断面を有する丸線となっており、一定外径にて所定長さで延びる基部31を有している。この基部31の軸方向の先端からは、操作線30の最先端35aに向けて次第に縮径するように所定角度で傾斜して延びるテーパ部34が設けられている。
【0049】
上記テーパ部34の先端部分からは、基部31やテーパ部34の先端以外よりも小径(細径)で、且つ、一定外径の細径部35が直線状をなすように所定長さで延びている。なお、細径部35の外径は、伸長抑制部材40の外径よりも大きくなっている(
図2参照)。この細径部35の軸方向の先端部(後述する屈曲部分)の、最先端部分を「最先端35a」とする。
【0050】
なお、この実施形態の場合、テーパ部34と細径部35とが、操作線30の先端部33をなしている。
【0051】
また、
図3に示すように、前記基部31の基端31aの外周からは、径方向外方に向けて、円環状に広がるストッパ部32が張り出している。
【0052】
更に、操作線30の先端部33は、所定形状に屈曲する屈曲部分を有している。この実施形態の場合、操作線30の先端部33を構成する細径部35の、基端固定部27の挿通孔28の先端開口から挿出されて、筒状部材20の内側に配置された部分が、所定形状に屈曲された屈曲部分をなしている。
【0053】
この実施形態における上記屈曲部分は、伸長抑制部材40に対して離間する離間部分36と、該離間部分36の先端側において、伸長抑制部材40に対して近接する近接部分37とを有している。
【0054】
なお、操作線30の先端部33の屈曲部分は、予め所定形状に屈曲付形された部分(所定形状にプリシェイプされた部分)である、とも言える。また、先端部33における屈曲部分は、筒状部材20に対して操作線30を押し込む前の状態においても、その屈曲した状態が維持されるようになっている。
【0055】
図1に示すように、屈曲部分を構成する離間部分36は、筒状先端部23の内側において、その基端部側から先端部側に向けて、伸長抑制部材40に対して次第に離間するように屈曲しつつ延びる形状となっている。
【0056】
また、離間部分36の先端側には、伸長抑制部材40に近接するように、所定曲率の比較的緩やかなカーブを描いて屈曲しつつ所定長さで延びる、近接部分37が設けられている。
【0057】
更に、上記の屈曲部分は、離間部分36の先端と近接部分37の基端との連結部分(境界部分)において、伸長抑制部材40に対して最も離間しており、この連結部分が、筒状先端部23の、先端23a寄りの箇所の内周に当接している。
【0058】
また、操作線30の最先端35a(屈曲部分をなす近接部分37の先端とも言える)は、先端固定部25の基端面側の径方向中央部に、所定深さ埋設された状態で固定されており、伸長抑制部材40の先端41とは径方向に所定長さ離間した状態となっている。すなわち、操作線30の最先端35aと、伸長抑制部材40の先端41とは、互いに芯ずれしている、とも言える。
【0059】
なお、操作線30の先端部33の屈曲部分をなす近接部分37の先端と、伸長抑制部材40の先端41とが、所定長さ離間した状態は、
図4や
図5に示すように筒状部材20に対して操作線30を押し込んで、筒状先端部23が曲がった状態においても、維持されるようなっている。
【0060】
また、操作線30の先端部33の屈曲部分をなす近接部分37は、ガイドワイヤ10の軸心Cに対して所定角度で傾斜した状態(先端固定部25の基端面の面方向に対して所定角度で傾斜した状態)、先端固定部25に固定されている。ここでは、近接部分37は、その先端(最先端35a)から基端側に向けて、ガイドワイヤ10の軸心Cや伸長抑制部材40に対して次第に離間するように、斜め外方に傾斜した状態で配置されている。
【0061】
そして、筒状基部21の基端部22を把持固定して、操作線30の基部31が先端固定部25に近接するように、筒状部材20に対して操作線30を、
図1の押し込み方向F1に沿った方向に押し込むと、次のようにして筒状先端部23が屈曲するようになる。
【0062】
すなわち、筒状先端部23は、伸長抑制部材40によって伸びが抑制されていると共に、操作線30の先端部33が先端固定部25に固定されて、操作線30からの押し込み力F2が作用したときに、当該押し込み力F2を受け止めて、操作線30の先端部33自体が押し込み方向F1へ移動することを規制されている。
【0063】
そのため、上述したように、筒状部材20に対して操作線30が押し込み方向F1方向に押し込まれると、伸長抑制部材40によって伸びが抑制された筒状先端部23に、先端固定部25によって受け止められた押し込み力F2が、筒状先端部23に伝達されることなる。
【0064】
いわば筒状先端部23の伸びが抑制された部分(ここでは先端固定部25と伸長抑制部材40の先端41とが固定された部分)を支点Pとして、筒状先端部23に押し込み力F2が作用することになるので、先端固定部25に回転モーメントが付与されて、
図4に示すように支点Pを介して先端固定部25が所定方向に回動する(傾動するとも言える)。
【0065】
その結果、
図4に示すように、先端固定部25に固定された操作線30の先端部33が、筒状先端部23の内側において、張るような力(引っ張られるような力であり、張力とも言える)が生じて、操作線30の先端部33が筒状先端部23の外側(径方向外方に向く方向)に膨らむように屈曲する(弓なり状に湾曲するように屈曲するとも言える)。
【0066】
そして、操作線30の先端部33が屈曲することに追随して、筒状先端部23が所定の屈曲方向に屈曲する。この実施形態では、
図4に示すように、操作線30の先端部33が外側に膨らむように屈曲することで、筒状先端部23がその内側から押されることにもなる。
【0067】
そのため、伸長抑制部材40により伸びが抑制された筒状先端部23の内側において、操作線30の先端部33による張る力と、当該張る力で屈曲した操作線30の先端部33が、筒状先端部23を内側から押す力とによって、筒状先端部23も外側に膨らむように屈曲することになる(なお、操作線30の先端部33が、筒状先端部23を内側から押さない態様であってもよい)。
【0068】
その結果、ガイドワイヤ10の先端部全体(筒状先端部23、操作線30の先端部33、樹脂層50の先端部、親水性樹脂膜55の先端部等を含む、ガイドワイヤ10の先端部全体)が、所定のアングル形状をなすように曲がるようになっている(略「へ」の字形状をなすように曲がるとも言える)。
【0069】
この際、
図4に示すように、コイル状をなした筒状先端部23の、伸長抑制部材40側の部分における、線材24,24どうしが当接して、線材24,24どうしが密接した状態に維持される一方、筒状先端部23の、伸長抑制部材40とは径方向反対側、すなわち、操作線30の細径部35側の部分においては、線材24,24どうしが離間するように(線材24,24どうしの隙間が空くように)湾曲するようになっている。
【0070】
また、
図4に示す状態から、更に筒状部材20に対して操作線30を、押し込み方向F1方向に押し込むと、上記と同様にして、
図5に示すように先端固定部25が所定方向に回動して、同先端固定部25を介して、筒状先端部23の内側で操作線30の先端部33が屈曲するので、これに追随して筒状先端部23が更に屈曲して、ガイドワイヤ10の先端部が略U字形状を呈するように大きく曲がるようになっている(ガイドワイヤ先端が基端側に向けて、丸みを帯びた屈曲部分を介して折り返されるように曲がるとも言える)。
【0071】
この際、
図5に示すように、
図4に示す状態と同様に、コイル状をなした筒状先端部23の、伸長抑制部材40側の部分における、線材24,24どうしが当接して、線材24,24どうしが密接した状態に維持される一方、筒状先端部23の、操作線30の細径部35側の部分においては、線材24,24どうしの隙間が更に空くように湾曲するようになっている。
【0072】
このように、本発明における操作線30は、筒状部材20に対して軸方向にスライド操作可能とされて、ガイドワイヤ10の先端部を曲げることが可能となっており、従来周知のガイドワイヤにおける芯線とは機能が異なるものとなっている(操作線と芯線とは、似て非なるものである、とも言える)。
【0073】
また、上記操作線30は、筒状先端部23の線材24や伸長抑制部材40等と同様に、例えば、Ni-Ti系合金,Ni-Ti-X(X=Fe,Cu,V,Co,Cr,Mn,Nb等)合金、Cu-Zn-X(X=Al,Fe等)合金等の超弾性合金や、ステンレス、ピアノ線材などを用いることができ、或いは、W、Pt、Ti、Pd、Rh、Au、Ag、Bi、Ta及びこれらの合金等からなるX線不透過性金属を用いることもできる。上記の中でも、Ni-Ti係合金、Ni-Ti-X合金、ステンレスを用いることが好ましい。
【0074】
次に、樹脂層50及び親水性樹脂膜55について説明する。
【0075】
筒状部材20の外周に配置された樹脂層50は、この実施形態の場合、筒状基部21及び筒状先端部23を含む筒状部材20全体と、先端固定部25との外周を被覆している。
【0076】
この樹脂層50は、例えば、ポリウレタンや、ナイロンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルや、紫外線硬化樹脂、接着剤(アクリレート樹脂、ウレタン系、エポキシ系、シリコーン系)に用いられる樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン-エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂などを採用することができる。
【0077】
また、樹脂層50の外周に配置され親水性樹脂膜55は、樹脂層50全体を被覆するものであって、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体等の親水性樹脂などからなる。
【0078】
次に、
図3を参照して、操作線30を操作するための操作部60について説明する。
【0079】
この実施形態の操作部60は、略筒状をなした本体61と、該本体61の先端部に回転可能に装着された固定部63とを有している。
【0080】
本体61の先端側(固定部63に対向する側)からは、凸部64が軸方向に突設されており、該凸部64の先端外周からは、環状突起状をなした係合部64aが設けられている。一方、固定部63の基端側(本体61に対向する側)には、凸部64を受け入れる凹部65が形成されており、該凹部65の奥側内周には、係合部64aが係合する、環状溝状をなした被係合部65aが形成されている。
【0081】
そして、凹部65に凸部64を受け入れて、係合部64aを被係合部65aに係合させることで、凸部64及び凹部65を介して、本体61と固定部63とが装着されるようになっている。なお、本体61と固定部63とは図示しない回転規制構造によって、互いに相対回転することは不可能となっている。
【0082】
また、固定部63の先端面中央から所定深さで、筒状部材固定孔部66が形成されており、その内周の軸方向所定箇所であって径方向に対向する位置には、一対のピン66a,66aが突設されている。
【0083】
そして、筒状部材固定孔部66に、筒状部材20の筒状基部21の基端部22を挿入し、一対のピン嵌合凹部22a,22aに、一対のピン66a,66aを嵌合させることで、固定部63に対して基端部31bが回転規制状態で固定されるようになっている。なお、
図3においては、説明の便宜上、筒状部材20の外周に配置された樹脂層50や、その外周に被覆された親水性樹脂膜55を省略している。
【0084】
また、本体61及び固定部63には、操作線30の基部31の、軸方向の基端部31bがスライド可能に挿入される、操作線挿入孔部67,68がそれぞれ形成されている。なお、固定部63側の操作線挿入孔部68は、前記凹部65や筒状部材固定孔部66にそれぞれ連通している。
【0085】
一方、操作線挿入孔部67は、本体61の先端部(固定部63側の端部)側に形成されているが、本体61の基端部側であって、操作線挿入孔部67に対して隣接した位置には、操作線挿入孔部67の内径よりも拡径し、且つ、操作線30の基端31aの外周に設けたストッパ部32を収容可能な、ストッパ収容空間69が形成されている。
【0086】
また、本体61の、ストッパ収容空間69よりも先端部側であって、径方向に対向する箇所には、切欠き溝状をなし操作線挿入孔部67に連通する、ローラ配置部70,71が形成されている。
【0087】
一方のローラ配置部70には、所定外径の操作ローラ72が、支軸72aを介して回転可能に支持されている。また、他方のローラ配置部71には、操作ローラ72よりも小径の、一対の従動ローラ73,73が、支軸73a,73aを介して回転可能にそれぞれ支持されている。更に、操作ローラ72及び各従動ローラ73の外周には、シリコンシート等からなる、滑り止め膜74が被覆されている。
【0088】
そして、操作ローラ72と一対の従動ローラ73,73との間に、操作線30の基部31の基端部31bが挟持された状態で配置される(ここでは、各ローラ72,73の外周に被覆された滑り止め膜74を介して、ローラ72,73により挟持される)。よって、操作ローラ72をR1方向に回転させると、操作線30を押し込み方向F1側に押し込み操作が可能となっている。
【0089】
また、
図3に示すように、操作線30の基端部31bは、直線状に延びていて、筒状部材20の筒状基部21の基端開口から、軸方向に所定長さ突出するようになっている。すなわち、この実施形態における操作線30の基端部31bは、後述する変形例(段落0105参照)で示すように、径方向に曲がった態様とはなっていない。
【0090】
このように、この実施形態では、操作線30の基端部31bが径方向に曲がらず直線状に延びた態様となっているため、操作ローラ72によって操作線30を押し込み操作したときに、その押し込み力をダイレクトに筒状先端部23に伝達しやすくなる。
【0091】
なお、操作ローラ72をR2方向に回転させることで、
図4,5に示すような筒状先端部23が所定形状に屈曲した状態から、操作線30を押し込み方向F1とは反対の引き込み方向に、引き込み操作が可能となっている。
【0092】
また、この実施形態では、上記のように、操作ローラ72や従動ローラ73の外周に、滑り止め膜74が被覆されているので、操作線30の押し込み操作や引き込み操作時に、ローラ72,73に対して操作線30が滑りにくくなっており、操作線30の押し込み操作や引き込み操作が安定してなされるようになっている。
【0093】
更に、ストッパ収容空間69に収容されたストッパ部32によって、筒状部材20に対して操作線30を最大限に押し込み操作したときに、ストッパ部32が操作線挿入孔部67の基端外周縁部に係合して引っ掛かるので、操作線30の過度の押し込み操作が規制されるようになっている。
【0094】
(変形例)
以上説明したガイドワイヤを構成する筒状部材、操作線、先端固定部、基端固定部、樹脂層、親水性樹脂膜等の、形状や構造、材質、レイアウトなどは、上記態様に限定されるものではない。
【0095】
この実施形態の筒状部材20は、合成樹脂で形成された筒状基部21と、コイル状をなした筒状先端部23とからなるが、筒状部材としては、例えば、筒状基部及び筒状先端部の両方がコイル状をなしていたり(これについては後述の実施形態で説明する)、筒状基部側がコイル状で、筒状先端部側が合成樹脂製の筒状としたりしてもよい。
【0096】
また、この実施形態における筒状先端部23をなすコイルは、密巻きとなっているが、筒状先端部や筒状基部をなすコイルは、線材間に間隔を空けた疎巻きであってもよい。
【0097】
更に、この実施形態の場合、先端固定部25は、筒状先端部23とは別体で、その先端側に配置固定されるようになっているが、例えば、先端固定部としては、筒状先端部の先端側に、先端側開口を塞ぐように、筒状先端部と一体形成してもよい(先端が閉塞された筒状構造)。
【0098】
また、
図1において二点鎖線で示す操作線の先端部33´のように、操作線の先端部を、例えば、筒状先端部の先端側内周に直接固定してもよい。この場合、筒状先端部の先端側内周の、操作線の先端部が固定される部分が、本発明における「先端固定部」をなすことになる。なお、この場合は、筒状先端部の先端側内周に、先端固定部が一体的に設けられている、とも言える。
【0099】
更に、基端固定部27は、筒状先端部23とは別体で、その基端側に配置固定されるようになっているが、例えば、基端固定部としては、筒状基部の基端側に、基端側開口を塞ぐように、筒状基部と一体形成してもよい(有底筒状構造)。
【0100】
また、この実施形態の場合、基端固定部27の基端面の周縁部に、筒状基部21の先端21aが固定されるようになっているが、筒状基部21の先端21aは、基端固定部27の基端面に当接しているだけで固定されていなくてもよい。
【0101】
更に、この実施形態における伸長抑制部材40は、筒状先端部23の内側に配置されて、両端41,43が先端固定部25及び基端固定部27に固定された線状部材からなるが、伸長抑制部材としては、例えば、所定長さで伸びる薄肉の板状片等であってもよく、少なくとも筒状先端部23の周方向の一部に配置されて、筒状先端部23の伸びを抑制可能であればよい。
【0102】
また、この実施形態の伸長抑制部材40は、線状部材となっており、その基端43が、筒状先端部23の基端側に配置された基端固定部27に固定されているが、基端を、筒状基部に固定してもよい。
【0103】
更に、この実施形態における操作線30は、基部31と、テーパ部34及び細径部35からなる先端部33とから構成されているが、操作線の先端部としては、例えば、(1)2個以上のテーパ部と細径部との組み合わせとしたり、(2)1個又は複数のテーパ部のみの組み合わせとしたり、(3)一定径且つ一定長さで延びる大径部と、該大径部よりも小径で一定径且つ一定長さで延びる小径部とを有し、芯線の先端部外周が階段状に変化するような形状としたりしてもよい。
【0104】
また、この実施形態の操作線30の先端部33を構成する細径部35は、屈曲形成された屈曲部分を有しているが、例えば、操作線の先端部を屈曲付形させずに、真っ直ぐに伸ばした状態で、先端固定部に固定してもよい。
【0105】
また、この実施形態における操作部60は、複数のローラ72,73等からなる、操作線30を押し引き操作可能な構造となっているが(
図3参照)、例えば、本体の軸方向に切欠き溝を設けると共に、操作線の基端部を径方向に曲げて前記切欠き溝から挿出させて、当該挿出部分を操作することで、操作線を押し引き操作したり、或いは、操作線の基端部に直接又は間接的に取付けたレバーを、本体の前記切欠き溝から本体外側に挿出させて、当該レバーを操作することで、操作線を押し引き操作したりしてもよく、操作部の構造は、特に限定されない。
【0106】
(作用効果)
次に、上記構造からなる本発明のガイドワイヤの使用方法等について説明する。
【0107】
この実施形態におけるガイドワイヤ10は、例えば、血管や、胆管、膵管、尿管、気管等の各種の管状器官や、体腔等の人体組織の所定位置に、カテーテルを配置したりステントを留置したりする際に用いることができ、使用箇所については特に限定されない。なお、以下の説明では、管状器官にガイドワイヤを適用した例について説明する。
【0108】
使用に際しては、ガイドワイヤ10を、その先端側から管状器官内に挿入していき、所望の箇所に至るまで押し込んでいく。この際、大きく屈曲したり湾曲したりした管状器官や、屈曲角度・湾曲角度が急な管状器官、更には複雑に屈曲・湾曲した管状器官に、ガイドワイヤ10を挿入したい場合がある。
【0109】
このような場合であっても、このガイドワイヤ10においては、操作線30は、基部31が先端固定部25に近接するように、筒状部材20に対して押し込みが可能とされており、筒状部材20に対して操作線30が押し込まれると、筒状先端部23に、先端固定部25を介して操作線30からの押し込み力F2が作用するようになっており、筒状先端部23が屈曲可能に構成されているので、上記の場合に柔軟に対応することが可能となる。
【0110】
すなわち、
図3に示すように、操作部60の操作ローラ72をR1方向に回転させる。すると、操作線30の基部31が先端固定部25に近接するように、筒状部材20に対して操作線30が押し込まれる。
【0111】
このとき、筒状先端部23は、伸長抑制部材40によって伸びが抑制されていると共に、操作線30の先端部33が先端固定部25に固定されているので、上記のように、操作線30の基部31が先端固定部25に近接するように、筒状部材20に対して操作線30を押し込むと、筒状先端部23に、先端固定部25を介して操作線30からの押し込み力F2が作用して、操作線30の先端部33が、筒状先端部23の内側において張る力によって屈曲すると共に、屈曲した操作線30の先端部33によって筒状先端部23が内側から押されることになる。
【0112】
その結果、操作線30の先端部33の屈曲に追随して筒状先端部23が屈曲するため、ガイドワイヤ10の先端部を大きく屈曲させることができる(段落0061~0071参照)。
【0113】
したがって、大きく屈曲したり湾曲したりした管状器官や、屈曲角度・湾曲角度が急な管状器官、更には複雑に屈曲・湾曲した管状器官等であっても、管状器官からガイドワイヤ10を引き抜くことなく、施術中にガイドワイヤ10の先端部を大きく屈曲させて柔軟に対応することができる。
【0114】
また、筒状部材20に対する操作線30の押し込み量を調整することで、
図4に示すようにガイドワイヤ10の先端部を比較的小さく屈曲させたり、
図5に示すようにガイドワイヤ10の先端部を大きく屈曲させたりすることができ、ガイドワイヤ10の先端部を所望の屈曲角度や屈曲形状等にしやすい。
【0115】
更に、このガイドワイヤ10においては、操作線30は、基部31が先端固定部25に近接するように、筒状部材20に対して押し込み操作が可能とされており、
図1に示すような筒状先端部23が屈曲しておらず真っ直ぐに伸びた状態では、筒状部材20に対して操作線30を引き込み操作(引っ張り操作)することはできない構成となっている。
【0116】
そのため、特許文献1のガイドワイヤのように引っ張りワイヤを引っ張るような動作、すなわち、操作線30を筒状部材20に対して引き込むような操作によって、ガイドワイヤ先端部を屈曲させることは、本発明のガイドワイヤ10ではなされないので、操作線30の先端部33が先端固定部25から外れにくい。
【0117】
更に、特許文献1のガイドワイヤのように引っ張りワイヤを引っ張るような動作を行う場合は、ガイドワイヤ先端部における部材が、特許文献1における外側ばねのように疎巻きのコイルである必要があり、その形状が限定されるが、本発明のガイドワイヤ10においては、筒状先端部の形状は、特に限定はされず自由に設定することができる。
【0118】
また、この実施形態においては、操作線30の先端部33は、所定形状に屈曲する屈曲部分を有している。
【0119】
上記態様によれば、操作線30の先端部33は、所定形状に屈曲する屈曲部分を有しているので、筒状部材20に対して操作線30を押し込んだときに、先端部33を屈曲させやすくすることができる。
【0120】
すなわち、操作線30の先端部33が屈曲部分を有することで、この屈曲部分を介して先端部33が屈曲することになるため、先端部33に、そのような屈曲部分がない場合に比べて、先端部33を屈曲させやすくすることができ、筒状先端部23を屈曲させやすくすることができる。
【0121】
更に、この実施形態においては、屈曲部分は、伸長抑制部材40に対して離間する離間部分36と、該離間部分36の先端側において、伸長抑制部材40に対して近接する近接部分37とを有している。
【0122】
上記態様によれば、屈曲部分は、伸長抑制部材40に対して離間する離間部分36を有しているので、伸長抑制部材40の影響を受けることなく、筒状部材20に対して操作線30を押し込んだときに、その押し込み時の初期段階から(押し込みはじめから)、屈曲部分の近接部分37に押し込み力を迅速に伝達して、先端部33を応答性良く屈曲させることができ、筒状先端部23を迅速に屈曲させることができる。
【0123】
なお、操作線30の先端部33が上記のような離間部分36を有さず、操作線30の先端部33が、筒状部材20の内側において、伸長抑制部材40に対して離間せずに接触している場合には、筒状部材20に対して操作線30を押し込んだときに、まず、操作線30の先端部33と伸長抑制部材40との間に摩擦抵抗が生じることになるので、操作線30の押し込み時の初期段階から、操作線30の先端部33を屈曲させにくい(応答性が良くない)。
【0124】
また、この実施形態では、上記の屈曲部分は、離間部分36の先端と近接部分37の基端との連結部分が伸長抑制部材40に対して最も離間しており、この連結部分が筒状先端部23の内周に当接している。そのため、筒状部材20に対して操作線30を押し込んだときに、
図4に示すように、操作線30の屈曲部分における上記連結部分を起点として、先端部33が屈曲することになるため、先端部33をより屈曲させやすくすることができる。
【0125】
また、この実施形態においては、伸長抑制部材40は、先端固定部25に固定されている。
【0126】
上記態様によれば、伸長抑制部材40は、先端固定部25に固定されているので、筒状部材20に対して操作線30を押し込んだときに、その押し込み時の初期段階から、筒状先端部23の伸びが確実に抑制されるので(伸長抑制部材40が筒状先端部23に固定されていない態様では、操作線30を押し込みはじめてから、伸長抑制部材40による筒状先端部23の伸長抑制機能が発揮するまでの間は、操作線30の先端部33が曲がらない)、操作線30の先端部33を応答性良く屈曲させることができ、筒状先端部23を迅速に屈曲させることができる。
【0127】
更に、この実施形態においては、筒状先端部23の基端23b側には、該筒状先端部23における内側寸法よりも小さく、且つ、操作線30の先端部33における外側寸法よりも大きい挿通孔28が形成されており、該挿通孔28に操作線30の先端部33が挿通されている。
【0128】
上記態様によれば、筒状部材20に対して操作線30を押し込み操作する際に、挿通孔28によって操作線30の先端部33がガイドされるので、操作線30の先端部33のブレを抑制することができ、操作線30の先端部33の屈曲動作を安定させることでき、筒状先端部23の屈曲動作や屈曲方向を安定させることができる。
【0129】
また、この実施形態においては、伸長抑制部材40は、筒状先端部23の内側に配置されて、その先端41が先端固定部25に固定され、基端43が筒状先端部23の基端23b側又は筒状基部21に固定される線状部材からなる。
【0130】
上記態様によれば、伸長抑制部材40が上記構成となっているので、筒状部材20の外側寸法の大きさの増大を抑制しながらも、簡単な構成で、筒状先端部23の伸長の抑制を確実に図ることができる。
【0131】
(ガイドワイヤの他の実施形態)
図6及び
図7には、本発明に係るガイドワイヤの、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0132】
図6に示すように、この実施形態のガイドワイヤ10Aは、筒状部材20Aの構造が前記実施形態と異なっている。
【0133】
すなわち、この実施形態における筒状部材20Aを構成する筒状基部21Aは、コイル状をなした筒状先端部23と同様に、コイル状をなしている。
【0134】
より具体的には、この筒状基部21Aは、筒状先端部23の線材24よりも大径とされた線材23cを、間隔を空けずに巻回してなる密巻きのコイル状を呈していると共に、所定長さで延びた略円筒状をなしている。また、筒状基部21Aの外径は、筒状先端部23の外径よりもやや大きくなっている。
【0135】
この実施形態の場合も、前記実施形態と同様に、操作線30の基部31が先端固定部25に近接するように、筒状部材20Aに対して操作線30を押し込むことで、ガイドワイヤ10Aの先端部を大きく屈曲させることができるようになっている。
【0136】
この際、筒状基部21Aはコイル状をなしているので、筒状部材20Aに対する操作線30の押し込み操作に伴って伸びて、筒状先端部23が曲がりにくくなることが懸念されるが、筒状基部21Aの線材23cの外径(線径)を、筒状先端部23の線材24の外径よりも大きくしたので、筒状基部21Aの伸びが抑制されるようになっている。
【0137】
その結果、筒状部材20Aに対して操作線30を押し込んだときには、筒状基部21Aは筒状先端部23よりも伸びにくくなるので、筒状基部21Aよりも筒状先端部23が先に曲がることになり、ガイドワイヤ10Aの先端部を大きく曲げることが可能となる。
【0138】
なお、筒状部材20Aの外周に配置された樹脂層50の、筒状基部21Aの外周に被覆される部分の厚さを、筒状先端部23の外周に被覆される部分の厚さよりも肉厚とすることで、筒状基部21Aを、より伸びにくくすることができる。
【0139】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0140】
10,10A ガイドワイヤ
20,20A 筒状部材
21,21A 筒状基部
23 筒状先端部
25 先端固定部
27 基端固定部
28 挿通孔
30 操作線
31 基部
33 先端部
36 離間部分
37 近接部分
40 伸長抑制部材
50 樹脂層
55 親水性樹脂膜
60 操作部