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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128834
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】出力電圧保持装置および電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
H02M3/155 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038080
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】谷野 光平
(72)【発明者】
【氏名】長野 昌明
(72)【発明者】
【氏名】鶴口 祐規
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智紀
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730BB14
5H730BB86
5H730CC01
5H730DD04
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
(57)【要約】
【課題】出力電圧を保持する時間を装置の大型化を防ぎつつ延長する。
【解決手段】AC-DCコンバータ(1)は、コンデンサ(5)により保持される保持電圧(Vc)に基づいて出力電圧(Vout1)を出力し、出力電圧(Vout1)を保持する出力電圧保持部(11)を備える。出力電圧保持部(11)は、保持電圧(Vc)または出力電圧(Vout1)が所定電圧以下であることを検知する電圧検知部(6)と、保持電圧(Vc)または出力電圧(Vout1)が所定電圧以下であることが検知されると、出力電圧(Vout1)を規定電圧に昇圧する昇圧部(7)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサにより保持される保持電圧に基づいて出力電圧を出力する電源装置の前記出力電圧を保持する出力電圧保持装置であって、
前記保持電圧または前記出力電圧が所定電圧以下であることを検知する電圧検知部と、
前記保持電圧または前記出力電圧が前記所定電圧以下であることが検知されると、前記出力電圧を規定電圧に昇圧する昇圧部と、を備える出力電圧保持装置。
【請求項2】
前記コンデンサの高電位側端子に接続されるアノードと、前記出力電圧が出力される出力点に接続されるカソードとを有するダイオードをさらに備える請求項1に記載の出力電圧保持装置。
【請求項3】
前記電圧検知部は、前記出力電圧が前記所定電圧以下であることを検知し、
前記昇圧部は、前記出力電圧を前記所定電圧より低い電圧に昇圧する請求項2に記載の出力電圧保持装置。
【請求項4】
前記電圧検知部は、前記保持電圧が前記所定電圧以下であることを検知し、
前記昇圧部は、前記出力電圧を前記所定電圧以上の電圧に昇圧する請求項2に記載の出力電圧保持装置。
【請求項5】
前記電圧検知部により前記保持電圧または前記出力電圧が前記所定電圧以下であることが検知されないときに、前記ダイオードの前記アノードおよび前記カソードの間を接続するリレーをさらに備える請求項2に記載の出力電圧保持装置。
【請求項6】
入力電圧が前記電源装置に入力されていることを検知する入力検知部をさらに備え、
前記昇圧部は、前記入力電圧が前記電源装置に入力されていることが検知されると、前記出力電圧を昇圧しない請求項1に記載の出力電圧保持装置。
【請求項7】
交流電圧を整流する整流部と、
整流された電圧を平滑するコンデンサと、
請求項1から6のいずれか1項に記載の出力電圧保持装置と、を備える電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置の出力電圧を保持する出力電圧保持装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、交流入力電圧の低下時に出力電圧を保持する時間を延長するために、出力保持コンデンサと、出力保持時間延長ユニットとを備える電源装置が開示されている。出力保持時間延長ユニットは、出力保持コンデンサの電圧により充電される複数の電解コンデンサを含む蓄電器を有している。
【0003】
このような電源装置では、停電時に出力保持コンデンサの放電電圧により出力電圧を保持するが、出力保持コンデンサの放電電圧がある程度低下すると、出力保持時間延長ユニットの蓄電器からの電力により出力保持時間を延長する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-353015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような電源装置では、複数の電解コンデンサを有する出力保持時間延長ユニットを備えることにより大型化するという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、出力電圧を保持する時間を装置の大型化を防ぎつつ延長することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る出力電圧保持装置は、コンデンサにより保持される保持電圧に基づいて出力電圧を出力する電源装置の前記出力電圧を保持する出力電圧保持装置であって、前記保持電圧または前記出力電圧が所定電圧以下であることを検知する電圧検知部と、前記保持電圧または前記出力電圧が前記所定電圧以下であることが検知されると、前記出力電圧を規定電圧に昇圧する昇圧部と、を備える。
【0008】
上記の構成によれば、保持電圧または出力電圧が大きく低下しても出力電圧が昇圧されるので、出力電圧を保持する時間を延長することができる。また、コンデンサの容量を増大させることがない。
【0009】
本発明の態様2に係る出力電圧保持装置は、上記態様1において、前記コンデンサの高電位側端子に接続されるアノードと、前記出力電圧が出力される出力点に接続されるカソードとを有するダイオードをさらに備える。
【0010】
上記の構成によれば、昇圧された保持電圧を入力電圧とする後段の回路に対し、昇圧部が出力電圧を昇圧しているときに、当該回路への入力電圧が一時的に不安定になることを防止できる。
【0011】
本発明の態様3に係る出力電圧保持装置は、上記態様2において、前記電圧検知部が、前記出力電圧が前記所定電圧以下であることを検知し、前記昇圧部は、前記出力電圧を前記所定電圧より低い電圧に昇圧する。
【0012】
上記の構成では、昇圧された出力電圧が所定電圧より高い電圧であるために、出力電圧が所定電圧以下であることが電圧検知部により検知されなくなり、昇圧部が出力電圧を昇圧しなくなるという事態を回避することができる。
【0013】
本発明の態様4に係る出力電圧保持装置は、上記態様2において、前記電圧検知部が、前記保持電圧が前記所定電圧以下であることを検知し、前記昇圧部が、前記出力電圧を前記所定電圧以上の電圧に昇圧する。
【0014】
上記の構成では、昇圧部により出力電圧が昇圧されても、保持電圧は出力電圧の昇圧に影響されて変化しない。これにより、昇圧部が所定電圧以上に出力電圧を昇圧しても、保持電圧が所定電圧以下であることが検知されていれば、出力電圧の昇圧状態を維持することができる。
【0015】
本発明の態様5に係る出力電圧保持装置は、上記態様2から4のいずれかにおいて、前記電圧検知部により前記保持電圧または前記出力電圧が前記所定電圧以下であることが検知されないときに、前記ダイオードの前記アノードおよび前記カソードの間を接続するリレーをさらに備える。
【0016】
上記の構成によれば、保持電圧または出力電圧が所定電圧を超えることにより、昇圧部が保持電圧を昇圧しない状態では、ダイオードのアノード側からカソード側へはリレーを介して電流が流れる。これにより、昇圧部が昇圧動作をしない通常の状態では、ダイオードに電流を流れないようにして、ダイオードの発熱による損失を低減することができる。
【0017】
本発明の態様6に係る出力電圧保持装置は、上記態様1から5のいずれかにおいて、入力電圧が前記電源装置に入力されていることを検知する入力検知部をさらに備え、前記昇圧部が、前記入力電圧が前記電源装置に入力されていることが検知されると、前記出力電圧を昇圧しない。
【0018】
入力電圧の立ち上がり直後の保持電圧または出力電圧が所定電圧以下である状態では、極めて短い期間ではあるが、昇圧部が動作してしまう。これに対し、上記の構成によれば、入力電圧が入力されていれば、昇圧部に昇圧動作をさせないようにすることができる。
【0019】
本発明の態様7に係る電源装置は、交流電圧を整流する整流部と、整流された電圧を平滑するコンデンサと、上記態様1から6のいずれかの出力電圧保持装置と、を備える。
【0020】
上記の構成によれば、電源装置の大型化を抑えつつ出力電圧を保持する時間を延長することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、出力電圧を保持する時間を装置の大型化を防ぎつつ延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態の適用例に係る電源システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の構成例に係る電源システムの詳細構成を示す回路図である。
図3】上記第1の構成例に係る電源システムの動作を示すタイムチャートである。
図4】本発明の第2の構成例に係る電源システムの詳細構成を示す回路図である。
図5】上記第2の構成例に係る電源システムの動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔実施形態〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。
【0024】
§1 適用例
図1を用いて、本発明が適用される場面の一例について説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る電源システム100の概略構成を示すブロック図である。
【0026】
図1に示すように、電源システム100は、AC-DCコンバータ1と、DC-DCコンバータ2とを備えている。AC-DCコンバータ1は、交流電源10からの交流の入力電圧Vin1を直流の出力電圧Vout1に変換する。DC-DCコンバータ2は、AC-DCコンバータ1の出力電圧Vout1(入力電圧Vin2)を昇圧または降圧することにより、直流の所定の出力電圧Vout2に変換する。
【0027】
DC-DCコンバータ2は、入力電圧Vin2が停止時保持電圧Vinstpまで低下すると、出力電圧Vout2を低下させるか、あるいは出力を停止する。停止時保持電圧Vinstpは、DC-DCコンバータ2が定格出力を維持できなくなる、AC-DCコンバータ1の後述する保持電圧Vcの最低値である。
【0028】
AC-DCコンバータ1は、本発明の電源装置の一例であり、整流部3と、電圧変換部4と、コンデンサ5と、出力電圧保持部11とを有している。
【0029】
整流部3は、上記の入力電圧Vin1を全波整流して出力する。電圧変換部4は、全波整流された電圧を昇圧または降圧して所定の電圧に変換する。コンデンサ5は、電圧変換部4により変換された全波整流波形の電圧を平滑することにより直流電圧に変換する。また、コンデンサ5は、当該直流電圧を保持電圧Vcとして保持する。
【0030】
ここで、保持電圧Vcは、AC-DCコンバータ1の出力電圧Vout1と同じであるとする。なお、後述する第1の構成例(図2参照)および第2の構成例(図4参照)においては、昇圧部7が動作する期間のみ、保持電圧Vcと出力電圧Vout1とが異なる。
【0031】
出力電圧保持部11は、本発明の出力電圧保持装置の一例であり、コンデンサ5により保持される保持電圧Vcに基づいて出力電圧Vout1を規定電圧にまで昇圧して保持する。出力電圧保持部11は、電圧検知部6と、昇圧部7とを有している。
【0032】
電圧検知部6は、保持電圧Vcすなわち出力電圧Vout1が所定の第1電圧以下であることを検知する。昇圧部7は、保持電圧Vcが第1電圧以下であることが検知されると、出力電圧Vout1を上記の規定電圧に昇圧する。
【0033】
出力電圧保持部11は、保持電圧Vcまたは出力電圧Vout1が第1電圧以下であることが電圧検知部6により検知されると、昇圧部7により出力電圧Vout1を規定電圧に昇圧する。これにより、入力電圧Vin1が停止することで、保持電圧Vcまたは出力電圧Vout1が第1電圧以下に低下しても、出力電圧Vout1を規定電圧に保持することができる。
【0034】
なお、AC-DCコンバータ1において、電圧変換部4を省略することが可能である。電圧変換部4を含まないAC-DCコンバータ1は、交流の入力電圧Vin1を直流の出力電圧Vout1に変換するのみであり、電圧値の変換を行わない。
【0035】
§2 構成例
〈第1の構成例〉
図2および図3を用いて、実施形態に係る電源システム100の第1の構成例について説明する。図2は、本発明の第1の構成例に係る電源システム100Aの詳細構成を示す回路図である。
【0036】
図2に示すように、電源システム100Aは、AC-DCコンバータ1と、DC-DCコンバータ2とを備えている。AC-DCコンバータ1は、上述した、整流部3と、電圧変換部4と、コンデンサ5と、出力電圧保持部11とを有する他、ダイオードD6と、リレーRLYと、リレー駆動部8と、入力検知部9とを有している。
【0037】
整流部3は、4つのダイオードD1~D4により構成されるダイオードブリッジを有している。ダイオードD1のアノードおよびダイオードD3のカソードは、交流電源10の一方の出力端子に接続されている。ダイオードD2のアノードおよびダイオードD4のカソードは、交流電源10の他方の出力端子に接続されている。ダイオードD1,D2のカソード同士は接続され、ダイオードD3,D4のアノードはAC-DCコンバータ1のグランドラインに接続されている。
【0038】
電圧変換部4は、PFC(power factor correction;力率改善)回路により昇圧を行う回路として構成されている。電圧変換部4は、コイルL1と、トランジスタTR1と、ダイオードD5とを有している。
【0039】
コイルL1の一端は、ダイオードD1,D2のカソードに接続されている。トランジスタTR1は、例えばNチャネルのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)により構成されている。トランジスタTR1のドレインは、コイルL1の他端およびダイオードD5のアノードに接続されている。トランジスタTR1のソースは、グランドラインに接続されている。トランジスタTR1は、図示しない制御部により、スイッチング制御される。
【0040】
電圧変換部4は、トランジスタTR1のON・OFFを、コイルL1に流れる電流のピーク値が正弦波状に変化するようにトランジスタTR1をスイッチング制御することにより、コイルL1に流れる電流の平均値を正弦波にする。これにより、入力電流の高調波成分を低減することができる。
【0041】
なお、電圧変換部4は、電圧を昇圧または降圧できればよく、PFC回路以外の回路で構成されていてもよい。また、電圧変換部4は、省略することも可能である。
【0042】
コンデンサ5は、電圧変換部4から出力される電圧を平滑化するとともに、電圧を保持する。コンデンサ5は、電圧を保持するために、比較的大きい容量を有することができる電解コンデンサにより構成されている。コンデンサ5の一端(正極)は、ダイオードD5のカソードに接続されている。コンデンサ5の他端(負極)は、グランドラインに接続されている。
【0043】
ダイオードD6は、アノードがコンデンサ5の一端に接続され、カソードがAC-DCコンバータ1の正極側の出力端子T1に接続されている。出力端子T1は、本発明の出力点の一例である。後述するように、昇圧部7は、出力端子T1の出力電圧Vout1を昇圧する。ダイオードD6は、昇圧部7により出力電圧Vout1が昇圧されている間に、出力電圧Vout1がコンデンサ5の保持電圧Vcより高くなったときに、出力端子T1からコンデンサ5に電流が流れることを阻止する。これにより、DC-DCコンバータ2への入力電圧Vin2が一時的に不安定になることを防止できる。
【0044】
リレーRLYは、昇圧部7が出力電圧Vout1を昇圧しない期間(非昇圧期間)にダイオードD6のアノードおよびカソードの間を接続し、昇圧部7が出力電圧Vout1を昇圧する期間(昇圧期間)にダイオードD6のアノードおよびカソードの間を開放する。リレーRLYは、接触機構SWと、コイルL3とを有する。接触機構SWは、非昇圧期間にコイルL3により駆動されて閉じる一方、昇圧期間にコイルL3により駆動されずに開く常時開路接点構造を有する。コイルL3は、後述するリレー駆動部8によって駆動される。
【0045】
なお、上述したようにDC-DCコンバータ2への入力電圧Vin2が一時的に不安定になることに不都合がなければ、ダイオードD6を省略してもよい。ただし、ダイオードD6を省略する場合でも、リレーRLYおよび後述するリレー駆動部8は、後段の回路との切り離しのために省略できない。
【0046】
電圧検知部6は、抵抗R1~R3と、コンパレータU1と、基準電圧源RPW1とを有している。抵抗R1,R2は直列に接続されている。抵抗R1の一端は出力端子T1(ダイオードD6のカソード)に接続され、抵抗R2の一端はグランドラインに接続されている。
【0047】
コンパレータU1の反転入力端子は、抵抗R1,R2の接続点に接続されている。これにより、コンパレータU1の反転入力端子には、出力電圧Vout1が抵抗R1,R2により分圧された検出電圧Vdet1が入力される。コンパレータU1の非反転入力端子には、基準電圧源RPW1が発生する基準電圧Vref1が入力される。コンパレータU1の出力端子には、抵抗R3の一端が接続されている。
【0048】
このように構成される電圧検知部6は、出力電圧Vout1が所定の第1電圧より高いときに、検出電圧Vdet1が基準電圧Vref1より高くなって、コンパレータU1がLレベルの判定値を出力する。第1電圧は、本発明の所定電圧の一例である。また、電圧検知部6は、出力電圧Vout1が第1電圧以下であるときに、検出電圧Vdet1が基準電圧Vref1以下となって、コンパレータU1がHレベルの判定値を出力する。
【0049】
昇圧部7は、トランジスタTR2と、コイルL2と、ダイオードD7と、コンデンサC1と、抵抗R4,R5と、制御回路71とを有している。
【0050】
コイルL2の一端は、コンデンサ5の正極端子およびダイオードD6のアノードに接続されている。トランジスタTR2は、例えばNチャネルのMOSFETにより構成されている。トランジスタTR2のドレインは、コイルL2の他端およびダイオードD7のアノードに接続されている。
【0051】
トランジスタTR2のソースは、グランドライン(AC-DCコンバータ1の負極側の出力端子T2)に接続されている。トランジスタTR2は、制御回路71によりスイッチング制御される。
【0052】
ダイオードD7のカソードは、出力端子T1に接続されている。コンデンサC1の一端はダイオードD7のカソードに接続され、コンデンサC1の他端は出力端子T2に接続されている。
【0053】
トランジスタTR2、コイルL2、ダイオードD7およびコンデンサC1は、昇圧回路を構成している。この昇圧回路は、トランジスタTR2のONによりコイルL2に電流を流すことで磁気エネルギーを蓄積し、トランジスタTR2のOFFによりコイルL2の磁気エネルギーを電気エネルギーとして放出することで、コンデンサC1に昇圧された電圧を保持する。ダイオードD7は、コンデンサC1からコイルL2側に電流が流れるのを阻止する。
【0054】
抵抗R4,R5は、直列に接続されている。抵抗R4の一端は出力端子T1に接続され、抵抗R5の一端はグランドラインに接続されている。
【0055】
制御回路71は、トランジスタTR2の動作を制御する回路である。制御回路71は、出力端子GDと、フィードバック端子FBと、イネーブル端子ENと、グランド端子GNDとを有している。
【0056】
出力端子GDは、トランジスタTR2へパルス状の制御信号を出力する端子であり、トランジスタTR2のゲートに接続されている。フィードバック端子FBは、抵抗R4,R5の接続点に接続されており、出力電圧Vout1が抵抗R4,R5により分圧された電圧が入力される。イネーブル端子ENは、電圧検知部6の抵抗R3の他端に接続されており、コンパレータU1の判定値および後述するコンパレータU2の判定値が入力される。グランド端子GNDは、出力端子T2に接続されている。
【0057】
制御回路71は、イネーブル端子ENに入力される判定値がLレベルであるとき動作せず、イネーブル端子ENに入力される判定値がHレベルであるとき動作する。制御回路71は、動作時に、出力電圧Vout1を規定電圧に維持するように、フィードバック端子FBに入力される電圧に応じて制御信号のパルス幅を制御する。
【0058】
リレー駆動部8は、抵抗R6~R8と、トランジスタTR3,TR4とを有している。トランジスタTR3,TR4は、例えば、NチャネルのMOSFETにより構成されている。
【0059】
トランジスタTR3のゲートは、電圧検知部6の抵抗R3の他端に接続されている。トランジスタTR3のソースはグランドラインに接続されている。抵抗R6は、トランジスタTR3のゲートとソースとの間に接続されている。抵抗R7,R8は直列に接続されている。抵抗R7の一端には電源電圧Vccが印加され、抵抗R8の一端はグランドラインに接続されている。トランジスタTR3のドレインおよびトランジスタTR4のゲートは、抵抗R7,R8の接続点に接続されている。トランジスタTR4のドレインは、リレーRLYのコイルL2の一端に接続されている。トランジスタTR4のソースはグランドラインに接続されている。コイルL2の他端には、電源電圧Vccが印加されている。
【0060】
上記のように構成されるリレー駆動部8は、電圧検知部6のコンパレータU1および入力検知部9の判定値のうち一方がLレベルであるとき、トランジスタTR3がOFFし、TR4がONし、コイルL2に電流を流す。また、リレー駆動部8は、コンパレータU1,U3の判定値の双方がHレベルであるとき、トランジスタTR3がONし、TR4がOFFし、コイルL2に電流を流さない。換言すれば、リレー駆動部8は、AC-DCコンバータ1の非昇圧期間に、コイルL2に電流を流してリレーRLYを閉成動作させる一方、AC-DCコンバータ1の昇圧期間に、コイルL2に電流を流さずにリレーRLYを開成動作させる。
【0061】
入力検知部9は、入力電圧Vin1がAC-DCコンバータ1に入力されていることを検知する。入力検知部9は、ダイオードD8~D10と、抵抗R9,R10と、コンデンサC2と、コンパレータU2と、基準電圧源RPW2とを有している。
【0062】
ダイオードD7のアノードは、交流電源10の一方の出力端子に接続されている。ダイオードD9のアノードは、交流電源10の他方の出力端子に接続されている。抵抗R9,R10は直列に接続されている。抵抗R9の一端は、ダイオードD8,D9のカソードに接続されている。抵抗R10の一端は、グランドラインに接続されている。直列接続される抵抗R9,R10の間にはコンデンサC2が接続されている。
【0063】
コンパレータU2の反転入力端子は、抵抗R9,R10の接続点に接続されている。これにより、コンパレータU2の反転入力端子には、入力電圧Vin1が抵抗R9,R10により分圧された検出電圧Vdet2が入力される。コンパレータU2の非反転入力端子には、基準電圧源RPW2が発生する基準電圧Vref2が入力される。コンパレータU2の出力端子は、ダイオードD10のカソードが接続されている。ダイオードD10のアノードは、制御回路71のイネーブル端子ENに接続されている。
【0064】
このように構成される入力検知部9では、入力電圧Vin1がダイオードD8,D9により整流され、整流された電圧がコンデンサC2により平滑されて抵抗R9,R10により分圧される。分圧された電圧は、検出電圧Vdet2としてコンパレータU2の反転入力端子に入力される。
【0065】
入力電圧Vin1が所定の第2電圧より高いときに、検出電圧Vdet2が基準電圧Vref2より高くなって、コンパレータU2がLレベルの判定値を出力する。また、入力検知部9は、入力電圧Vin1が第2電圧以下であるときに、検出電圧Vdet2が基準電圧Vref2以下となって、コンパレータU1がHレベルの判定値を出力する。
【0066】
ここで、第2電圧がごく低い電圧、例えば数Vであり、基準電圧Vref2が当該電圧に対応した電圧に設定されている。これにより、入力検知部9は、AC-DCコンバータ1の起動時における入力電圧Vin1が低い状態では、検出電圧Vdet2が基準電圧Vref2以下となって、コンパレータU2の判定値がHレベルとなる。しかしながら、この期間は極めて短いので、ほぼHレベルの判定値が出力されないと見なすことができる。入力検知部9は、それ以降、検出電圧Vdet2が基準電圧Vref2より高くなって、コンパレータU2の判定値がLレベルとなると、入力電圧Vin1が入力されていると検知する。
【0067】
これに対し、電圧検知部6は、AC-DCコンバータ1の起動時における入力電圧Vin1が低く、出力電圧Vout1が第1電圧以下であるときに、コンパレータU1の判定値がHレベルとなる。しかしながら、この期間では、上記のように、入力検知部9のコンパレータU2の判定値がLレベルとなる。これにより、昇圧部7は、イネーブル端子ENに入力される、コンパレータU2のLレベルの判定値により起動しないので、出力電圧Vout1を昇圧しない。
【0068】
なお、昇圧部7が、AC-DCコンバータ1の起動時における入力電圧Vin1が低い状態で起動して出力電圧Vout1を昇圧しても特段の不都合はないため、入力検知部9は省略されてもよい。
【0069】
続いて、電源システム100Aの動作例について説明する。図3は、当該動作例を示すタイムチャートである。
【0070】
まず、AC-DCコンバータ1は、100Vの交流の入力電圧Vin1を直流電圧に変換し、390Vの出力電圧Vout1に昇圧する。DC-DCコンバータ2は、出力電圧Vout1を入力電圧Vin2として、当該入力電圧Vin2を24Vの出力電圧Vout2に降圧して出力する。
【0071】
DC-DCコンバータ2の停止時保持電圧Vinstpは40Vである。停止時保持電圧Vinstpは、DC-DCコンバータ2の出力電圧Vout2が低下し始める、またはDC-DCコンバータ2が出力を停止するときの保持電圧Vcである。
【0072】
また、電圧検知部6が判定値をLレベルからHレベルに切り替える判定の基準となる第1電圧は340Vである。また、昇圧部7は、出力電圧Vout1が340Vを超えることにより昇圧部7の動作を停止しないように、出力電圧Vout1を第1電圧より低い320Vに保持するように昇圧する。
【0073】
図3に示すように、AC-DCコンバータ1は、入力電圧Vin1が定格値で入力されている状態では、390Vの出力電圧Vout1を出力するとともに、390Vの保持電圧Vcを維持している。これにより、DC-DCコンバータ2は、24Vの出力電圧Vout2を出力している。
【0074】
この状態では、電圧検知部6におけるコンパレータU1の判定値がLレベルであるとともに、入力検知部9におけるコンパレータU2の判定値がLレベルである。これにより、昇圧部7は動作していない。また、リレー駆動部8は、コンパレータU1の判定値がLレベルであることから動作しない。これにより、リレーRLYは、コイルL3に電流が流れているのでON状態を維持する。
【0075】
入力電圧Vin1が停止すると、入力検知部9におけるコンパレータU2の判定値がHレベルに変化する。この時点では、電圧検知部6におけるコンパレータU1の判定値がLレベルのままであるので、昇圧部7は起動していない。
【0076】
そして、出力電圧Vout1および保持電圧Vcがともに低下していき、出力電圧Vout1が340Vに達すると、コンパレータU1の判定値がHレベルに変化するので、昇圧部7は起動する。これにより、出力電圧Vout1は、320Vにまで昇圧される。また、リレー駆動部8が動作することにより、リレーRLYは、コイルL3に電流が流れないためにOFF状態に切り替わる。
【0077】
さらに、保持電圧Vcが低下していき、停止時保持電圧Vinstpの40Vに達すると、DC-DCコンバータ2は出力を停止する。これにより、コンデンサ5の電荷が移動できなくなるので、保持電圧Vcが40Vのまま維持される。また、出力電圧Vout1は、320Vから300Vに低下して一定値を保持する。300Vは、DC-DCコンバータ2が動作できない、またはDC-DCコンバータ2を動作させないようにするための入力電圧Vin2として設定されている。
【0078】
これに対し、AC-DCコンバータ1が電圧検知部6および昇圧部7を備えていない場合、DC-DCコンバータ2の停止時保持電圧Vinstpが300V程度となる。ここで、電圧検知部6および昇圧部7を備えていないAC-DCコンバータを比較例として、出力電圧Vout1を保持する保持時間を、当該比較例のAC-DCコンバータと第1の構成例のAC-DCコンバータ1とで比較する。
【0079】
上記の保持時間Tholdは、次式のように表される。
【0080】
Thold=C(Vin-Vinstp)/2Pin
上式において、Cはコンデンサ5の容量であり、Vinは入力電圧Vin1が停止する前のコンデンサ5への入力電圧であり、Pinは入力電力(出力電圧Vout1を効率で除した値)である。
【0081】
上式から、AC-DCコンバータ1の保持時間Thold1と、比較例のAC-DCコンバータの保持時間Thold2は、次のように表される。ここで、比較例のAC-DCコンバータの停止時保持電圧Vinstpを300Vとする。また、Vinは390Vであるとする。
【0082】
Thold1/Thold2=390-40/390-300=2.42
このように、AC-DCコンバータ1は、比較例のAC-DCコンバータの保持時間Thold2に対して2倍以上の保持時間Thold1を確保することができる。
【0083】
停止時保持電圧Vinstpが高い(入力レンジが狭い)LLC共振回路などの一部の高効率の回路でDC-DCコンバータ2を構成する場合、昇圧部7を設けなければ、保持時間を長くすることはできない。これに対し、上記のような場合でも、昇圧部7を設けることにより、長い保持時間Thold1を得ることができる。
【0084】
また、コンデンサC1は、その容量が保持時間に影響するコンデンサ5に比べて容量が小さくても差し支えない。したがって、コンデンサC1が設けられてもAC-DCコンバータ1を大型化することはない。
【0085】
〈第2の構成例〉
図4および図5を用いて、実施形態に係る電源システム100の第2の構成例について説明する。図4は、本発明の第2の構成例に係る電源システム100Bの詳細構成を示す回路図である。
【0086】
図4に示すように、電源システム100Bは、第1の構成例に係る電源システム100Aと同じく、AC-DCコンバータ1と、DC-DCコンバータ2とを備えている。
【0087】
ただし、AC-DCコンバータ1においては、電圧検知部6が検知する電圧が、出力端子T1の出力電圧Vout1ではなく、コンデンサ5の保持電圧Vcである。具体的には、電圧検知部6の抵抗R1の一端と、昇圧部7の抵抗R4の一端とが、ともにダイオードD5のカソードおよびコンデンサ5の正極端子に接続されている。これにより、電圧検知部6は、保持電圧Vcが第1電圧以下であるときに、検出電圧Vdet1が基準電圧Vref1以下となって、コンパレータU1がHレベルの判定値を出力する。
【0088】
続いて、電源システム100Bの動作例について説明する。図5は、当該動作例を示すタイムチャートである。
【0089】
図5に示すように、電源システム100Bにおいては、出力電圧Vout1および保持電圧Vcがともに低下していき、出力電圧Vout1が340Vに達すると、昇圧部7が起動して、リレーRLYがOFF状態となる。この状態では、出力電圧Vout1が保持電圧Vcより高くなると、ダイオードD6により、保持電圧Vcと出力電圧Vout1とが異なる。これにより、昇圧部7が340Vを超えて出力電圧Vout1を昇圧しても、保持電圧Vcがその影響を受けなくなる。したがって、出力電圧Vout1を390Vまで昇圧することができる。
【0090】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1 AC-DCコンバータ(電源装置)
5 コンデンサ
6 電圧検知部
7 昇圧部
9 入力検知部
11 出力電圧保持部(出力電圧保持装置)
D6 ダイオード
T1 出力端子(出力点)
Vc 保持電圧
Vin1 入力電圧
Vout1 出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5