IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特開2024-128849発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子及び塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128849
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子及び塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240913BHJP
   C08L 27/22 20060101ALI20240913BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20240913BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CET
C08J9/04 CEV
C08L27/22
C08L25/12
C08K3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038103
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田中 克幸
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA33
4F074AA35
4F074AA36
4F074AA48
4F074AA98
4F074AC26
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA39
4F074BA40
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA49
4F074CC04X
4F074CC04Y
4F074CC04Z
4F074CC05X
4F074CC22X
4F074CC47Y
4F074DA02
4F074DA12
4F074DA24
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA34
4J002BC062
4J002BD181
4J002DE237
4J002EA016
4J002EA026
4J002EB026
4J002EB066
4J002EC026
4J002ED026
4J002EE036
4J002EH036
4J002FD017
4J002FD137
4J002FD326
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】難燃性能に優れ、且つ高い発泡倍率を有する塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子及び塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体を与え得る、新規の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を提供すること。
【解決手段】(A)塩素化塩化ビニル系樹脂、(B)芳香族ビニル単位及び不飽和ニトリル単位を有する共重合体、(C)発泡剤、並びに特定量の(D)炭酸カルシウムを含む、発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)塩素化塩化ビニル系樹脂、
(B)芳香族ビニル単位及び不飽和ニトリル単位を有する共重合体、
(C)発泡剤、並びに
(D)炭酸カルシウムを含み、
前記(D)炭酸カルシウムの含有量は、前記(A)塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、5重量部~20重量部である、発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項2】
前記(D)炭酸カルシウムの平均粒子径は、2.0μm~12.0μmである、請求項1に記載の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項3】
前記(C)発泡剤は、物理発泡剤である、請求項1に記載の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項4】
前記(C)発泡剤は、炭素数4~6の飽和炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項3に記載の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項5】
前記炭素数4~6の飽和炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種がペンタンである、請求項4記載の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を発泡してなる、塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子。
【請求項7】
独立気泡率が40%以上である、請求項6に記載の塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子。
【請求項8】
発泡倍率が5倍以上である、請求項6に記載の塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子及び塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡体は、軽量性、断熱性、緩衝性等を有し、住宅等の断熱材及び配管等の保温材として従来より広く使用されている。樹脂発泡体の中でも、発泡剤を含有した発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られるスチレン系樹脂発泡成形体は、形状の自由度が高い。スチレン系樹脂発泡成形体は、断熱材として広く活用されている。
【0003】
スチレン系樹脂は燃えやすい樹脂であるところ、スチレン系樹脂発泡成形体よりも難燃性能に優れる発泡体として、例えば、難燃性能に優れる塩化ビニル系樹脂を基材樹脂とした塩化ビニル系樹脂発泡体(発泡成形体)が知られている。また、塩化ビニル系樹脂よりも難燃性能に優れる塩素化塩化ビニル樹脂を基材樹脂とした塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体も知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-164706
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、断熱材及び保温材について、従来よりも高い難燃性能が要求されている。上述した従来技術は、難燃性の観点から、さらに改善の余地があった。また、軽量性などの観点から、断熱材及び保温材には高い発泡倍率も要求されている。
【0006】
本発明の一実施形態は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、難燃性能に優れ、且つ高い発泡倍率を有する塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子及び塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体を与え得る、新規の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕(A)塩素化塩化ビニル系樹脂、(B)芳香族ビニル単位及び不飽和ニトリル単位を有する共重合体、(C)発泡剤、並びに(D)炭酸カルシウムを含み、前記(D)炭酸カルシウムの含有量は、前記(A)塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、5重量部~20重量部である、発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子。
〔2〕前記(D)炭酸カルシウムの平均粒子径は、2.0μm~12.0μmである、〔1〕に記載の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子。
〔3〕前記(C)発泡剤は、物理発泡剤である、〔1〕または〔2〕に記載の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子。
〔4〕前記(C)発泡剤は、炭素数4~6の飽和炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、〔3〕に記載の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子。
〔5〕前記炭素数4~6の飽和炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種がペンタンである、〔4〕記載の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子。
〔6〕〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を発泡してなる、塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子。
〔7〕独立気泡率が40%以上である、〔6〕に記載の塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子。
〔8〕発泡倍率が5倍以上である、〔6〕または〔7〕に記載の塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、難燃性能に優れ、且つ高い発泡倍率を有する塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子及び塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体を与え得る、新規の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0011】
本明細書において、重合体、共重合体または樹脂に含まれる、「X単量体に由来する構成単位」を「X単位」と称する場合がある。
【0012】
本明細書において特記しない限り、構成単位として、X単位と、X単位と、・・・及びX単位(nは2以上の整数)とを含む共重合体を、「X/X/・・・/X共重合体」とも称する。X/X/・・・/X共重合体としては、明示されている場合を除き、重合様式は特に限定されず、ランダム共重合体であってもよく、交互共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。
【0013】
〔1.本発明の一実施形態の技術的思想〕
上述したように、従来技術には、難燃性の観点から、さらに改善の余地があった。また、軽量性などの観点から、高発泡倍率も求められている。
【0014】
本発明者は、難燃性能に優れ、且つ高い発泡倍率を有する塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子及び塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体を提供すべく、鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、塩素化塩化ビニル系樹脂を含む発泡性樹脂粒子において、炭酸カルシウムを含むとともに、その含有量を特定の範囲内とすることにより、驚くべきことに、難燃性能に優れ、且つ高い発泡倍率を有する塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子及び塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体を提供し得る、発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を得ることができる、という新規知見を独自に見出した。かかる知見に基づき、本発明者は、本発明の一実施形態を完成させるに至った。
【0015】
なお、塩素化塩化ビニル系樹脂を含む発泡性樹脂粒子がさらに炭酸カルシウムを含むことにより、発泡粒子及び発泡成形体の難燃性が優れたものとなる理由としては定かではないが、本発明者は次のように推測している:
塩素化塩化ビニル系樹脂を含む発泡性樹脂粒子が燃焼し、熱分解する際に、塩化水素が発生し得る;その塩化水素と炭酸カルシウムとが化学反応を起こすことにより、二酸化炭素と水が発生し得る;発生した二酸化炭素は、燃焼に必要な酸素を希釈し、いわゆる蒸し焼き状態を作り出す;また、発生した水は、冷却効果を有する;そのため、これら二酸化炭素及び水により、燃焼が低減又は終了し得る。
なお、本発明の一実施形態は、かかる推測になんら限定されるものではない。
【0016】
また、塩素化塩化ビニル系樹脂を含む発泡性樹脂粒子がさらに含む炭酸カルシウムの含有量を特定の範囲内とすることにより、高い発泡倍率を有する発泡粒子及び発泡成形体を得られる理由としては定かではないが、本発明者は次のように推測している:
塩素化塩化ビニル系樹脂と炭酸カルシウムとは、相溶性が非常に悪く、容易に相溶し得ない;それゆえ、塩素化塩化ビニル系樹脂と炭酸カルシウムとの界面の接着性は弱くなり、当該界面から、発泡剤が漏れ、発泡剤が発泡性樹脂粒子から散逸し得る;含有する炭酸カルシウムの量が多いほど、塩素化塩化ビニル系樹脂と炭酸カルシウムとの界面の面積は大きくなり、結果、発泡性樹脂粒子から散逸する発泡剤の量が多くなる;発泡性樹脂粒子から散逸した発泡剤が多いほど、得られる発泡粒子の発泡倍率は低下する。
なお、本発明の一実施形態は、かかる推測になんら限定されるものではない。
【0017】
〔2.発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子〕
本発明の一実施形態に係る発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子は、(A)塩素化塩化ビニル系樹脂、(B)芳香族ビニル単位及び不飽和ニトリル単位を有する共重合体、(C)発泡剤、並びに(D)炭酸カルシウムを含み、前記(D)炭酸カルシウムの含有量は、前記(A)塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、5重量部~20重量部である。
【0018】
発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を発泡することにより、塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子を得ることができる。塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子を成形することにより、塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0019】
本明細書において、「発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子」を「発泡性樹脂粒子」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係る発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子」を「本発泡性樹脂粒子」と称する場合がある。本明細書において、「塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子」を「発泡粒子」と称する場合があり、「塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体」を単に「発泡成形体」と称する場合がある。
【0020】
本発泡性樹脂粒子は、上述した構成を有するため、難燃性能に優れ且つ高い発泡倍率を有する塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子及び塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体を提供できるという利点を有する。具体的に、本発泡性樹脂粒子を発泡することにより、難燃性能に優れ且つ高い発泡倍率を有する発泡粒子を提供できる。また、本発泡性樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子を成形することにより、難燃性能に優れ且つ高い発泡倍率を有する発泡成形体を提供できる。
【0021】
本明細書において、発泡粒子及び発泡成形体の難燃性能の評価は、後述する実施例に記載の「TGA残渣率」の値にもとづき、評価する。TGA残渣率が高いほど、難燃性能に優れることを意味する。
【0022】
(2-1.(A)塩素化塩化ビニル系樹脂)
本発明の一実施形態では、塩素化塩化ビニル系樹脂を用いることにより、優れた難燃性能及び高い発泡倍率を両立した発泡成形体を与え得る発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を得ることができる。
【0023】
本発明の一実施形態で用いられる塩素化塩化ビニル系樹脂は、通常、原料として塩化ビニル系樹脂を用い、以下の(a)及び(b)などの方法により製造される:(a)前記塩化ビニル系樹脂を水性媒体中に分散した状態で、当該水性媒体中に塩素を供給し、(i)得られた混合物に水銀灯を照射し光塩素化するか、あるいは(ii)得られた混合物を加熱塩素化する、など水性媒体中で塩素化する方法;及び(b)前記塩化ビニル系樹脂を気層中、水銀灯の照射下で塩素化を行うなど気層中で塩素化する方法。
【0024】
塩素化塩化ビニル系樹脂としては各種塩化ビニル系樹脂を塩素化したものが使用される。塩素化される塩化ビニル系樹脂としては、(a)塩化ビニルの単独重合体、及び(b)(i)塩化ビニルと、(ii)塩化ビニルと共重合可能な他の単量体と、の共重合体等が挙げられる。塩化ビニルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化アリル、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸エステル、ビニルエーテル等が挙げられる。
【0025】
原料である、塩素化前の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に限定されない。当該平均重合度の下限は300以上が好ましく、400以上がより好ましい。一方、当該平均重合度の上限は3000以下であることが好ましく、より好ましくは1500以下である。当該平均重合度が前記範囲であれば、高い発泡倍率を有する発泡粒子が得られる傾向にある。尚、塩素化塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、塩素化前の塩化ビニル系樹脂の平均重合度と実質的に同一とみなす。塩素化前の塩化ビニル系樹脂の平均重合度はJIS K6720-2に準拠して測定される。
【0026】
塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、30,000以上400,000以下の範囲であることが好ましい。当該重量平均分子量が前記範囲であれば、高い発泡倍率を有する発泡粒子が得られる傾向にある。前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、ポリスチレン換算分子量で評価される。
【0027】
塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有量は、60重量%以上75重量%以下の範囲であることが発泡性を確保する観点から好ましい。当該塩素含有量は、より好ましくは、64重量%以上70重量%以下である。前記塩素含有量が高いほど高い発泡倍率を有する発泡粒子が得られる傾向にある。一方で前記塩素含有量が高すぎると溶融粘度の上昇により、押出時の加工性が著しく損なわれる傾向にある。塩素化塩化ビニル系樹脂及び塩化ビニル系樹脂の塩素含有量は、JIS K7385 B法に準拠して測定される。
【0028】
本発明の一実施形態として、塩素化塩化ビニル系樹脂としては1種のみを使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
(2-2.(B)芳香族ビニル単位及び不飽和ニトリル単位を有する共重合体)
本発明の一実施形態では、芳香族ビニル単位及び不飽和ニトリル単位を有する共重合体(以下、「共重合体(B)」を称することがある。)を塩素化塩化ビニル系樹脂と組み合わせて用いる。これにより、高発泡倍率であり且つ高独立気泡率を有する発泡粒子及び発泡成形体を得ることができる。特に、水蒸気加熱条件での発泡及び発泡成形において、上述した共重合体(B)による効果(利点)が顕著に得られる。共重合体(B)は、「芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体を構成単位に有する共重合体」ともいえる。
【0030】
芳香族ビニル単位の由来となる芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α―メチルスチレン、エチルスチレン、ハロゲン化スチレン等のスチレン誘導体が挙げられる。
【0031】
不飽和ニトリル単位の由来となる不飽和ニトリル単量体としては、アクニロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0032】
本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲で、共重合体(B)は、芳香族ビニル単位及び不飽和ニトリル単位以外の構成単位(例えば、芳香族ビニル単量体及び/又は不飽和ニトリル単量体と共重合可能であり、且つ芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体以外の単量体(その他共重合可能な単量体)に由来する構成単位)を有していても良い。その他共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸N-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、N-置換マレイミドなどが挙げられる。
【0033】
共重合体(B)中における芳香族ビニル単位の含有量としては、特に限定されないが、共重合体(B)100重量%中、55重量%~95重量%であることが好ましく、60重量%~90重量%であることがより好ましく、65重量%~85重量%であることがさらに好ましく、70重量%~80重量%であることが特に好ましい。共重合体(B)中における芳香族ビニル単位の含有量が前記範囲内である場合、高発泡倍率であり且つ高独立気泡率を有する発泡粒子および発泡成形体を得られやすいという利点を有する。
【0034】
共重合体(B)中における不飽和二トリル単位の含有量としては、特に限定されないが、共重合体(B)100重量%中、10重量%~45重量%であることが好ましい。共重合体(B)中における不飽和二トリル単位の含有量が前記範囲内である場合、高発泡倍率であり且つ高独立気泡率を有する発泡粒子及び発泡成形体を得られやすいという利点を有する。
【0035】
共重合体(B)中における、芳香族ビニル単位および不飽和二トリル単位の合計含有量としては、特に限定されないが、共重合体(B)100重量%中、65重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましく、90重量%以上であることが特に好ましい。共重合体(B)中における、芳香族ビニル単位および不飽和二トリル単位の合計含有量が前記範囲内である場合、高発泡倍率であり且つ高独立気泡率を有する発泡粒子および発泡成形体を得られやすいという利点を有する。前記合計量の上限としては特に限定されないが、例えば100重量%であってもよい。換言すれば、共重合体(B)は、芳香族ビニル単位および不飽和二トリル単位のみから構成されていてもよい。
【0036】
好ましい共重合体(B)としては、スチレン単位及びアクリロニトリル単位を含む、スチレン/アクリロニトリル共重合体が挙げられる。共重合体(B)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。共重合体(B)は、少なくともスチレン/アクリロニトリル共重合体を含むことが好ましい。共重合体(B)が少なくともスチレン/アクリロニトリル共重合体を含む場合、発泡粒子及び発泡成形体の発泡倍率及び独立気泡率が高くなるという利点を有する。
【0037】
発泡粒子及び発泡成形体の高発泡倍率及び高独立気泡率を確保しやすいことから、共重合体(B)の重量平均分子量は、使用される塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量よりも高いことが好ましい。尚、共重合体(B)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定され、ポリスチレン換算分子量で求められる値である。共重合体(B)として、例えばGalata製のBlendex869等が使用できる。
【0038】
共重合体(B)の含有量は、本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。本発泡性樹脂粒子における共重合体(B)の含有量は、塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1重量部~50重量部であることが好ましく、5重量部~50重量部がより好ましく、5重量部を超え、30重量部以下であることがさらに好ましい。共重合体(B)の前記含有量が塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、(a)1重量部以上である場合、高発泡倍率であり且つ高独立気泡率を有する発泡粒子及び発泡成形体を得やすくなり、(b)50重量部以下である場合、難燃性能に優れた発泡粒子及び/又は発泡成形体を得ることができる。
【0039】
(2-3.(C)発泡剤)
本発泡性樹脂粒子に含まれる発泡剤は、公知の発泡剤を使用でき、特に限定されないが、例えば下記の発泡剤が挙げられる。当該発泡剤としては、例えば、(a)(a-i)ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、又はシクロヘキサン等の炭化水素、(a-ii)ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2-メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル、(a-iii)ジメチルケトン(アセトン)、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、エチル-n-プロピルケトン、エチル-n-ブチルケトンなどのケトン、(a-iv)メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどの炭素数1~4の飽和アルコール、(a-v)蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルなどのカルボン酸エステル、(a-vi)塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキル、(a-vii)トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランス-HFO-1234e)、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(シス-HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランス-HFO-1234yf)、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zd)、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zd)などのハイドロフルオロオレフィンあるいは塩素化されたハイドロフルオロオレフィン、及び(a-viii)水、二酸化炭素、窒素などの無機系発泡剤、などの物理発泡剤、並びに(b)アゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤を用いることができる。これらの発泡剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
本発泡性樹脂粒子は、発泡剤として、物理発泡剤を含有することが好ましく、物理発泡剤の中でも炭素数4~6(炭素数4、5及び6)の飽和炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。炭素数4~6の飽和炭化水素としては、ブタン(例えば、ノルマルブタン、イソブタン)、ペンタン(例えば、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン)、及びヘキサン(例えば、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン)などが例示される。発泡剤の樹脂への溶解性並びに発泡性樹脂粒子中及び発泡粒子中での発泡剤の保持性の観点から、本発泡性樹脂粒子は、炭素数4~6の飽和炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種として、少なくともペンタンを含有することが好ましい。
【0041】
発泡剤の樹脂への溶解性向上の観点から、本発泡性樹脂粒子は、発泡剤としてケトンを含むことが好ましい。例えば、発泡剤として、炭素数4~6の飽和炭化水素の少なくとも1種とケトンとを組み合わせて使用することにより、炭素数4~6の飽和炭化水素の樹脂への溶解性をさらに向上させることができる。
【0042】
本発明の一実施形態において、発泡剤の含有量は、発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子100重量%中、1重量%~40重量%であることが好ましい。発泡剤の含有量を前記所定の範囲内に制御することにより、高い発泡倍率及び高い独立気泡率を有する発泡粒子及び発泡成形体を得やすい、という効果を奏する。発泡剤の含有量のより好ましい範囲としては、3~25重量%であり、さらに好ましくは5~20重量%である。
【0043】
(2-4.(D)炭酸カルシウム)
炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウム及び膠質炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0044】
膠質炭酸カルシウムは、一般に、生石灰に水を加えてできた石灰乳に、炭酸ガスを反応させて製造され得る。膠質炭酸カルシウムは、均一な粒子の炭酸カルシウムであり、「沈降炭酸カルシウム」、「コロイド炭酸カルシウム」、「軽質炭酸カルシウム」あるいは、「合成炭酸カルシウム」と呼ばれる場合もある。
【0045】
経済性の観点から、炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウムであることが好ましい。
【0046】
炭酸カルシウムは、表面処理剤により表面処理されていてもよく、表面処理されていなくてもよい。表面処理されていない炭酸カルシウムと比較して、表面処理された炭酸カルシウムは、塩素化塩化ビニル系樹脂との親和性がより高い。そのため、得られる発泡成形体の機械物性が低下し難いことから、炭酸カルシウムは、表面処理剤により表面処理されている炭酸カルシウムであることが好ましい。
【0047】
本発明者は、鋭意検討の過程において、炭酸カルシウムの粒子径が、驚くべきことに、発泡粒子及び発泡成形体の発泡倍率及び独立気泡率に影響を与えうるという新規知見を独自に得た。具体的に、本発明者は、炭酸カルシウムの平均粒子径が一定の値以上である場合、発泡粒子及び発泡成形体の発泡倍率及び独立気泡率が低くなりすぎず、換言すれば好適な発泡倍率及び独立気泡率を両立した発泡粒子及び発泡成形体を得ることができる、という新規知見を独自に得た。また、本発明者は、炭酸カルシウムの平均粒子径が一定の値以下である場合、発泡粒子及び発泡成形体の独立気泡率が低くなりすぎない、という新規知見を独自に得た。これらの理由としては定かではないが、本発明者は次のように推測している:
上述したように、塩素化塩化ビニル系樹脂と炭酸カルシウムとの界面から、発泡剤が漏れ、発泡剤が発泡性樹脂粒子から散逸し得る;炭酸カルシウムの粒子径が小さいほど、塩素化塩化ビニル系樹脂と炭酸カルシウムとの界面の面積は大きくなり、結果、発泡性樹脂粒子から散逸する発泡剤の量が多くなる;したがい、炭酸カルシウムの平均粒子径が一定の値以上であれば、得られる発泡粒子及び発泡成形体の発泡倍率は低下しすぎないとの利点を有し得る;また、発泡性樹脂粒子の発泡では、樹脂が伸びるため、発泡倍率が高くなるほど、気泡(セル)の壁が薄くなる;炭酸カルシウムの粒子径が大きい場合、炭酸カルシウムが起点となり、破泡する;したがい、炭酸カルシウムの平均粒子径が一定の値以下であれば、独立気泡率が低くなりすぎないとの利点を有し得る。
なお、本発明の一実施形態は、かかる推測になんら限定されるものではない。
【0048】
上述したように発泡倍率及び独立気泡率の観点から、炭酸カルシウムの平均粒子径は、1.0μm~20.0μmであることが好ましく、1.5μm~15.0μmであることが好ましく、2.0μm~12.0μmであることが好ましく、2.5μm~10.0μmであることが好ましく、2.5μm~9.0μmであることがより好ましく、3.0μm~8.0μmであることがより好ましく、3.5μm~7.0μmであることがさらに好ましく、4.0μm~6.0μmであることが特に好ましい。
【0049】
本明細書において、炭酸カルシウムに関する「平均粒子径」とは、例えばレーザー光回折散乱法により、炭酸カルシウムの粒度分布を体積基準で測定し積算分布で表したとき、累積50%となるところの粒子径を意図する。炭酸カルシウムの「平均粒子径」は「体積平均粒子径」と称される場合もある。
【0050】
本発泡性樹脂粒子における炭酸カルシウムの含有量は、(A)塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、5重量部~20重量部であり、7重量部~15重量部がより好ましく、9重量部~12重量部がさらに好ましい。
【0051】
(2-5.その他添加剤)
本発泡性樹脂粒子は、本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、難燃剤、安定剤、加工助剤、滑剤、造核剤、発泡助剤、帯電防止剤、輻射伝熱抑制剤、可塑剤、溶剤及び顔料・染料などの着色剤等(これらを総称して「その他添加剤」と称する場合がある。)を含有しても良い。
【0052】
難燃剤としては、公知の難燃剤を使用することができる。難燃剤としては、例えば、(a)臭素系難燃剤、(b)リン系難燃剤、(c)ホウ素系難燃剤、(d)ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、メラミンシアヌレートなどのイントメッセント系難燃剤、(e)水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化化合物、及び(f)酸化アンチモン、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛などの難燃助剤が挙げられる。
【0053】
安定剤としては、従来より塩化ビニル系樹脂及び塩素化塩化ビニル系樹脂に用いられるものを使用することができる。安定剤としては、例えば、(a)錫系安定剤、(b)フェノール系化合物、リン系化合物、アミン系化合物などの酸化防止剤、(c)エポキシ系安定剤、(d)ゼオライト等が挙げられる。
【0054】
本発泡性樹脂粒子中の、其々の安定剤の含有量(使用量)は、本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されないが、(A)塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して10重量部以下であることが好ましい。
【0055】
加工助剤としては、(a)ポリメチルメタクリレートを主成分とする塩化ビニル加工性改良剤、(b)メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン系重合体のような耐衝撃改良剤、及び(c)塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。これらの中でも、塩素化塩化ビニル系樹脂の流動性を改善し、且つ成形加工性を改善する観点から、本発泡性樹脂粒子は、塩素化ポリエチレンを含有することが好ましい。本発泡性樹脂粒子中の塩素化ポリエチレンの含有量(使用量)は、本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されないが、(A)塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1重量部~30重量部であることが好ましい。尚、塩素化ポリエチレンの塩素含有量は、JIS K7385 B法に準拠して測定される。
【0056】
滑剤としては、(a)エステルワックス、ポリエチレンワックス等のワックス、(b)ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩などが挙げられる。
【0057】
造核剤としては、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、ゼオライトもしくはタルク等の無機化合物が挙げられる。
【0058】
輻射伝熱抑制剤としては、近赤外又は赤外領域の光を反射、散乱又は吸収する特性を有する物質が挙げられ、例えば、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、膨張黒鉛、酸化チタン、アルミニウムなどがある。
【0059】
本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲で、塩素化塩化ビニル系樹脂と他の樹脂(熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂)とを組み合わせて使用してもよい。当該他の樹脂としては、難燃性能の点から、塩化ビニル系樹脂が好ましい。塩化ビニル系樹脂としては、(a)塩化ビニルの単独重合体、及び(b)(i)塩化ビニル単量体と(ii)塩化ビニルと共重合可能な他の単量体と、の共重合体等が挙げられる。塩化ビニルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化アリル、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸エステル、ビニルエーテル等が挙げられる。塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に限定はされないが、300以上7000以下であることが好ましい。
【0060】
塩素化塩化ビニル系樹脂と他の樹脂とを組み合わせて使用する場合、発泡性樹脂粒子中における他の樹脂の含有量(使用量)は、本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。前記他の樹脂の前記含有量(使用量)は、(A)塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0重量部~99重量部が好ましい。
【0061】
本発泡性樹脂粒子の形状は、発泡性樹脂粒子を後述するような発泡及び成形できる形状の粒子であれば、特に限定されない。本発泡性樹脂粒子には、一般的な粒状物(例えば、球状、略球状、凸レンズ状、紡錘状などの丸みを帯びた小さい粒子)だけでなく、棒状(円柱状)、板状及び扁平状の粒子、並びに凹みのある粒子も含まれるものとする。
【0062】
本発泡性樹脂粒子の粒重量は発泡粒子の成形金型への充填性、ひいては発泡成形体の表面美麗性などの成形性を確保する観点から、0.5mg/粒~10.0mg/粒であることが好ましく、1.0mg/粒~8.0mg/粒がより好ましく、3.0mg/粒~7.0mg/粒がさらに好ましい。
【0063】
本発泡性樹脂粒子は、発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子からの発泡剤の逸散速度を小さくする、あるいは得られる発泡粒子の発泡倍率をより向上させる観点から、真密度が1100kg/m以上であることが好ましく、1150kg/m以上がより好ましく、1200kg/m以上がより好ましく、1250kg/m以上がさらに好ましく、1300kg/m以上が特に好ましい。発泡性樹脂粒子の真密度の測定方法は、後に詳説する。
【0064】
(2-6.発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法)
本発泡性樹脂粒子は、公知の製造方法で得ることができる。本発泡性樹脂粒子の製造方法としては、例えば、以下の2つの製造方法が挙げられる。
【0065】
第1の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法(以下、「第1の製造方法」と称する場合がある。)として、以下の(a-1)~(a-3)の工程を順に行う製造方法が挙げられる:
(a-1)(A)塩素化塩化ビニル系樹脂、(B)芳香族ビニル単位及び不飽和ニトリル単位を有する共重合体、及び(D)炭酸カルシウム、並びに、必要に応じて使用される塩化ビニル系樹脂及びその他添加剤を公知の混練機(例えば、押出機、ロール加工機及びバンバリミキサーなど)にて加熱溶融混合する工程、
(a-2)得られた溶融混練物(樹脂溶融物)を造粒する工程、及び
(a-3)得られた塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を容器(例えば、オートクレーブなどの耐圧容器)に投入し、容器中にて、塩素化塩化ビニル系樹脂粒子に(C)発泡剤を含浸させることにより、発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を得る工程。
【0066】
第2の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法(以下、「第2の製造方法」と称する場合がある。)として、以下の(b-1)~(b-3)の工程を順に行う製造方法が挙げられる:
(b-1)(A)塩素化塩化ビニル系樹脂、(B)芳香族ビニル単位及び不飽和ニトリル単位を有する共重合体、及び(D)炭酸カルシウム、並びに、必要に応じて使用される塩化ビニル系樹脂及びその他添加剤を押出機に供給して、供給された原料を溶融混練する工程、
(b-2)前記押出機または押出機以降の分散設備によって、発泡剤を得られる溶融混練物に溶解及び分散させる工程、
(b-3)押出機以降に取り付けた、ダイ(例えば、小孔を多数有するダイ)を通じて、加圧循環水(加圧循環冷却水)で満たされたカッターチャンバー内に発泡剤含有塩素化塩化ビニル系樹脂組成物の溶融混練物(樹脂溶融物)を押し出す工程、及び
(b-4)溶融混練物(樹脂溶融物)の押し出し直後から、ダイと接する回転カッターにより前記溶融混練物(樹脂溶融物)を切断すると共に加圧循環水により溶融混練物を冷却固化し、発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を得る工程。
【0067】
第2の製造方法によれば、本発明の一実施形態に係る効果の発現される程度が向上する傾向がある。それゆえ、第2の製造方法によれば、より高発泡倍率であり及びより高独立気泡率を有する発泡粒子及び発泡成形体を与え得る発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子が得られるという利点を有する。
【0068】
尚、第1及び第2の製法方法に共通して、塩素化塩化ビニル系樹脂、及び必要に応じて使用される塩化ビニル系樹脂は十分にゲル化させることが好ましい。
塩素化塩化ビニル系樹脂、及び必要に応じて使用される塩化ビニル系樹脂を十分にゲル化することにより、得られる発泡性樹脂粒子において、当該発泡性樹脂粒子からの発泡剤の散逸速度が小さくなり得、発泡に発泡剤が寄与し易い傾向にあるという利点を有するその結果、高発泡倍率であり及び/又は高独立気泡率を有する発泡粒子及び発泡成形体を容易に得ることができるという利点を有する。
【0069】
原料(樹脂)の溶融混練(溶融混合)時の樹脂温度については、塩素化塩化ビニル系樹脂、共重合体(B)、並びに必要により使用される塩化ビニル系樹脂及びその他添加剤の分解に影響を及ぼし得ない温度であることが好ましい。
前記樹脂温度としては、例えば、160℃以上250℃未満が好ましく、160℃以上240℃未満がより好ましい。前記樹脂温度が250℃未満である場合、塩素化塩化ビニル系樹脂、並びに必要により使用される塩化ビニル系樹脂及びその他添加剤の分解の虞がない。そのため、発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の劣化を誘発することがなく、発泡性能の低下に繋がる虞がないという利点を有する。
【0070】
(造粒工程の各条件)
第1の製造方法及び第2の製造方法における、塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の造粒工程の条件について説明する。
【0071】
ダイから溶融混練物を押出す実施形態においては、ダイが有する孔の大きさは特に限定されない。ダイが有する孔の大きさ、例えば、直径0.3mm~2.0mmが好ましく、直径0.4mm~1.5mmがより好ましい。
【0072】
ロール加工機等でシート状の溶融混練物を得る実施形態については、得られたシートを冷却した後、細断設備(例えば、カッター及びシュレッダーなど)で当該シートを細断し、シート状の塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を造粒する例が挙げられる。尚、この際のシート状の塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の厚みは、特に限定されず、混練設備であるロール加工機のクリアランスの調整、及び得られたシートをさらにプレスすること、などで調整できる。
【0073】
第2の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法において、ダイより押出される直前の溶融樹脂(樹脂溶融物)の温度は、発泡剤を含まない状態での樹脂のガラス転移温度をTgとすると、Tg+20℃以上であることが好ましく、Tg+20℃~Tg+130℃がより好ましく、Tg+30℃~Tg+110℃であることがさらに好ましく、Tg+40℃~Tg+90℃であることが特に好ましい。尚、塩素化塩化ビニル系樹脂については、塩素含有量の増加に伴い、ガラス転移温度が上昇する。そのため、使用する塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有量に伴い、ダイより押出される直前の溶融樹脂の温度を適宜調整することが好ましい。ダイより押出される直前の溶融樹脂の温度がTg+20℃以上であれば、押出された溶融樹脂の粘度が低くなり、ダイの小孔詰まりが発生しにくく、ダイの小孔開口率の実質的な低下が起きないという利点を有する。その結果、得られる発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の形状が歪もしくは不揃いとなる事態を避けることができる。一方、ダイより押出される直前の溶融樹脂の温度がTg+130℃以下であれば(特に、Tg+110℃以下であれば)、押出された溶融樹脂が固化し易くなり、回転カッターに溶融樹脂が巻き付き難くなるという利点を有する。その結果、安定的に溶融樹脂(樹脂溶融物)を切断できる。
【0074】
前記「発泡剤を含まない状態での樹脂」とは、(A)塩素化塩化ビニル系樹脂、(B)芳香族ビニル単位及び不飽和ニトリル単位を有する共重合体、及び(D)炭酸カルシウム、並びに必要により使用される塩化ビニル系樹脂及びその他添加剤(但し発泡剤以外)を含む樹脂を意図する。前記「発泡剤を含まない状態での樹脂」とは、後述する基材樹脂ともいえる。
【0075】
第2の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法において、循環加圧冷却水中に押出された溶融樹脂を切断する切断装置としては、特に限定されない。当該切断装置としては、例えば、ダイに接触する回転カッターで溶融樹脂を切断して小球化し、得られた樹脂粒子を加圧循環冷却水中で発泡させることなく、樹脂粒子を遠心脱水機まで移送して脱水及び集約(回収)する装置、等が挙げられる。
【0076】
加圧循環冷却水の条件については、使用する樹脂、添加剤、発泡剤などの種類、及び/又は各成分の含有量に応じて、適宜調整してもよい。加圧循環冷却水の条件としては、ダイより押し出される溶融樹脂の発泡が抑制され、安定的にカッターで溶融樹脂が切断される条件が好ましい。
【0077】
具体的に、加圧循環冷却水の温度条件としては、40℃~99℃が好ましく、60℃~90℃がより好ましい。
【0078】
加圧循環冷却水の圧力条件としては、得られる発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の発泡倍率が1.0~1.2倍となるよう、圧力を調整することが好ましい。尚、前記発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の発泡倍率は、基材樹脂の真密度(kg/m)を発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の真密度(kg/m)で除した値を指す。基材樹脂の真密度及び発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の真密度の測定方法については、後述の実施例にて詳説する。
【0079】
使用する発泡剤の種類にも依存するが、加圧循環冷却水の圧力条件は、0.6MPa~2.0MPaが好ましく、0.7MPa~1.7MPaがより好ましく、0.8MPa~1.5MPaがさらに好ましい。
【0080】
第1の製造方法における発泡剤の含浸条件等は、一般的に行なわれる条件と同様でよく、適宜設定すればよい。
【0081】
〔3.塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子及びその製造方法〕
本発泡性樹脂粒子は、加熱空気及び/又は水蒸気などの加熱媒体により、2倍~110倍まで発泡されて塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子となる。換言すれば、本発明の一実施形態に係る塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子は、前記〔2.発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子〕の項に記載の本発明の一実施形態に係る発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子である。本発明の一実施形態に係る塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子は、難燃性能に優れ、且つ高い発泡倍率を有する、という利点を有する。また、本発明の一実施形態に係る塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子は、難燃性能に優れ且つ高い発泡倍率を有する塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体を、提供できるという利点を有する。
【0082】
さらに、塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子は成形されて塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体となり、使用されうる。発泡性樹脂粒子を最終的に発泡成形体として使用する場合、発泡性樹脂粒子の発泡は、発泡成形体とする前段階として実施されるともいえるため、「予備発泡」と称する場合もあり、この場合の塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子を「塩素化塩化ビニル系樹脂予備発泡粒子」と称する場合もある。
【0083】
発泡性樹脂粒子の発泡において使用できる水蒸気は、飽和水蒸気であってもよいし過熱水蒸気であってもよい。
【0084】
発泡時の加熱温度は、樹脂のガラス転移温度及び融点、さらには発泡剤の含有量によって適宜調整してもよい。発泡時の加熱温度は、90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。一方、発泡粒子間の発泡倍率バラつきの防止又は低減、及び発泡粒子の収縮防止又は低減の観点から、発泡時の加熱温度は、150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。
【0085】
ところで、発泡体を得る方法として、押出発泡法もある。ここで、押出発泡法により発泡体を得る技術と、本発明の一実施形態のように、発泡性樹脂粒子から発泡体を得る技術の相違点について詳細に説明する。押出発泡法は、樹脂が完全に溶融した状態で高圧状態から低圧状態へ圧力を開放させることによって樹脂に溶解及び分散していた発泡剤を膨張させ、発泡体を得る技術である。樹脂を完全に溶融させるため、樹脂及び発泡剤に与えられる温度も比較的高い。押出発泡法により発泡体を製造する場合、一般的には、高温条件下で活性を有する化学発泡剤が用いられる傾向がある。対して、本発明の一実施形態のように発泡性樹脂粒子から発泡粒子を得る方法では、上述の通り、発泡性樹脂粒子を空気及び/または水蒸気等の加熱媒体を用いて加熱することで発泡させる。
【0086】
また本発明の一実施形態のように、発泡性樹脂粒子から発泡体を得るためには、上述の様に空気及び/又は水蒸気などを加熱媒体として用いて、発泡性樹脂粒子を低温から高温へ温度上昇させ、樹脂の状態をガラス状態からゴム状態へ変化させる過程で発泡が実施される。そのため、樹脂の状態が完全溶融したゴム状態で発泡させる押出発泡法と、本発明の一実施形態のように樹脂の状態がガラス状態からゴム状態へ変化する過程で発泡させる方法とでは、発泡時の樹脂粘度は必ずしも一致しないと推測される。以上のように、押出発泡法の技術と、本発明の一実施形態のように加熱媒体を用いて発泡性樹脂粒子から発泡体(発泡粒子)を得る技術とは、全く異なる技術である。そのため、押出発泡法の技術が、本発明の一実施形態のような発泡性樹脂粒子の発泡に適用可能かどうかは、当業者にとっても容易に類推し難いものである。
【0087】
〔4.塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体及びその製造方法〕
本発明の一実施形態に係る塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子は、従来公知の成形機を用い、例えば水蒸気によって成形(例えば型内成形)されて塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体となる。換言すれば、本発明の一実施形態に係る塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体は、前記〔3.塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子及びその製造方法〕の項に記載の本発明の一実施形態に係る塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子を成形してなる発泡成形体である。本発明の一実施形態に係る塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体は、難燃性能に優れ、且つ高い発泡倍率を有する、という利点を有する。使用する金型の形状により、複雑な形の型物成形体及びブロック状の成形体などを得ることができる。
【0088】
(独立気泡率)
本発明の一実施形態に係る塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子及び本発明の一実施形態に係る塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体の独立気泡率は、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。前記独立気泡率は高いほど好ましく、その上限は100%である。本発明の一実施形態に係る発泡粒子及び発泡成形体の独立気泡率が前述の範囲にあることによって、発泡粒子の成形時に発泡粒子が2次発泡しやすく、発泡粒子の成形性が良くなり、結果、得られる発泡成形体の表面性等が良化する等の効果を奏する。また、本発明の一実施形態に係る発泡粒子及び発泡成形体の独立気泡率が前述の範囲にあることによって、発泡成形体の圧縮強度等の強度を高くできる傾向にある。
【0089】
(発泡倍率)
本発明の一実施形態に係る塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子及び本発明の一実施形態に係る塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体の発泡倍率は、5倍以上が好ましく、10倍以上がより好ましく、15倍以上がより好ましく、20倍以上がより好ましく、25倍以上がさらに好ましく、30倍以上がよりさらに好ましく、35倍以上が特に好ましい。前記発泡倍率は、軽量性の観点からは大きいほど好ましい。前記発泡倍率の上限は特に限定されず、例えば60倍以下である。前記発泡倍率が大きいほど、軽量性に優れる塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子及び塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体といえる。
【0090】
(発泡成形体の用途)
本発明の一実施形態によると、難燃性能に優れ、且つ高い発泡倍率を有する塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子及び塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体を与え得る、発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を提供することができる。また、本発明の一実施形態に係る塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体は、難燃性能に優れ、且つ高い発泡倍率を有する。そのため、本発明の一実施形態(例えば、塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体)は、例えば、建築用断熱材、天井材、金属サンドイッチパネルの芯材、食品容器箱、保冷箱、緩衝材、農水産箱、浴室用断熱材及び貯湯タンク用断熱材のような、各種用途に好適である。
【0091】
本発明の一実施形態は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の一実施形態の技術的範囲に含まれる。
【実施例0092】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明の一実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
なお、以下の実施例及び比較例における測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
【0094】
(発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子に含まれる発泡剤量の測定)
発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の重量W(g)を測定した。次に、当該発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を150℃のオーブンで30分加熱し、その後、加熱された発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子をデシケータ内にて室温で30分冷却した。次いで、冷却された発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の重量W(g)を測定した。この加熱前後の重量差(W-W)を発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子中の発泡剤含有量とした。すなわち、下記の式の通りである:
発泡剤含有量(重量%)=(W-W)/W1×100。
【0095】
(塩素化塩化ビニル系樹脂粒子及び発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の粒重量の測定)
0.01mgまで測定できる電子天秤を用いて、ランダムにサンプリングした塩素化塩化ビニル系樹脂粒子及び発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子100粒の重量を測定し、以下の式で粒重量を算出した
粒重量(mg)=[粒子100粒の重量(mg)]/100
(発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の真密度の測定)
重量W(g)の発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を、エタノールの入ったメスシリンダー内に沈め、メスシリンダーの液面上昇分(水没法)から体積V(ml)を求め、以下の式で算出した。
【0096】
発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の真密度=W/V(g/ml)
(発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の最大発泡倍率の測定)
発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を130℃に加熱したオーブン(アズワン株式会社製、強制対流定温乾燥器SOFW-600)に投入し、温度130℃の加熱空気雰囲気下で加熱時間を変更して発泡させ、各加熱時間毎の発泡粒子を得た。加熱時間はオーブン投入後60秒、120秒、180秒の様に60秒間隔で変更し、加熱過多による発泡粒子の収縮(発泡粒子真密度の増加)が確認されるまで加熱した。得られた加熱時間毎の発泡粒子の発泡倍率を測定し、このうちの最も高い発泡倍率を塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子の最大発泡倍率とした。
【0097】
尚、発泡粒子の発泡倍率の測定方法は、下記の通りであった:
加熱後の発泡粒子の重量W(g)を計測した。次いで、重量W(g)の発泡粒子を、エタノールの入ったメスシリンダー内に沈め、メスシリンダーの液面上昇分(水没法)から体積V(ml)を求め、下記の式に沿って密度を求めた:
加熱後の発泡粒子の密度(g/ml)=(W/V);
次いで、下記の式に沿って発泡倍率を求めた:
発泡倍率=発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の真密度/加熱後の発泡粒子の密度。
【0098】
(塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子の独立気泡率の測定)
ASTM D2856に記載の方法に準拠し、エアピクノメータ(東京サイエンス株式会社製空気比較式比重計モデル1000)を用いて、発泡粒子の試験片の体積Vc(cm)測定した。次に測定後の同じ試験片をエタノールの入ったメスシリンダー内に沈め、メスシリンダーの液面上昇分(水没法)から体積Va(cm)を求め、下記の式に従って独立気泡率(%)を算出した:
独立気泡率(%)=(Vc/Va)×100。
【0099】
(TGA残渣率の測定方法)
残渣率は、示差熱熱重量同時測定装置(株式会社ハイテクサイエンス製:STA200RV)を用いて求めた。具体的には、以下の通りであった:(1)5mg~8mgの塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の重量を測定し、得られた値を加熱前の重量とした;(2)重量を測定後の塩素化塩化ビニル系樹脂粒子をアルミ製パン内にいれた;(3)当該パン内に流量100m/minの窒素を吹き込みながら、パン内の温度を10℃/minで35℃から600℃まで昇温した;(4)パン内の温度が600℃に達した後、室温まで冷却し、パン内から燃焼残渣を取り出した;(5)燃焼残差の重量を測定した;(6)加熱前の重量を燃焼残渣の重量で除し、さらに100を乗じて、得られた値を残渣率(%)とした。なお、燃焼後、パン内に燃焼残渣が存在していない場合、残渣率は0%となる。
【0100】
なお、塩素化塩化ビニル系樹脂粒子のTGA残渣率と、当該塩素化塩化ビニル系樹脂粒子に発泡剤を含侵させて得られる発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子のTGA残渣率とは、相関する。すなわち、塩素化塩化ビニル系樹脂粒子のTGA残渣率が小さいほど、発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子のTGA残渣率も小さくなり、塩素化塩化ビニル系樹脂粒子のTGA残渣率が大きいほど、発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子のTGA残渣率も大きくなる。すなわち、塩素化塩化ビニル系樹脂粒子のTGA残渣率の結果に基づき、発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の難燃性の評価を行うことが可能である。
【0101】
以下に、実施例及び比較例で用いた原材料を示す。
【0102】
((A)塩素化塩化ビニル系樹脂)
・塩素化塩化ビニル樹脂[(株)カネカ製、H716S、平均重合度600、塩素含有量67.6重量%]
(塩化ビニル系樹脂)
・塩化ビニル樹脂[(株)カネカ製、平均重合度600、塩素含有量56.8重量%]
((B)芳香族ビニル単位及び不飽和ニトリル単位を有する共重合体)
・スチレン/アクリロニトリル共重合体(Galata製、Blendex869、重量平均分子量286万、共重合体中のアクニロニトリル由来の成分比率;20重量%)
((C)発泡剤)
・ノルマルペンタン[富士フィルム和光純薬(株)製]
((D)炭酸カルシウム)
・スーパーS(丸尾カルシウム社製)
・ホワイトンB(白石工業社製)
・BF200S(備北粉化社製)
・ホワイトンP70(白石工業社製)
・ミクロンカルMC-35W(旭鉱末社製)
・ホワイトンP50(白石工業社製)
・ホワイトンSB赤(白石カルシウム社製)
・NN#200(日東粉化社製)
(なお、上述した炭酸カルシウムは全て、表面処理されてない炭酸カルシウムである。)
(加工性改良剤)
アクリル系樹脂[(株)カネカ製、カネエースPA-40]
(実施例1)
[塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の作製]
塩素化塩化ビニル樹脂(A-1)100重量部に対し、芳香族ビニル単位及び不飽和ニトリル単位を有する共重合体(B)を13重量部、さらにブチル錫メルカプト系安定剤を5重量部、滑剤(エステルワックス及びポリエチレンワックスの混合物)を3重量部、
塩素含有量35重量%の塩素化ポリエチレンを5重量部、及び表1に記載の(D)炭酸カルシウムを表1に記載の量を加え、この配合物をハンドブレンドにてブレンドし均一な配合物を得た。
【0103】
得られたブレンド配合物を、8インチのロールにより195℃で5分間混練し、得たシート状の組成物をカッターにて裁断し、粒重量6mgの塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を得た。
【0104】
[発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の作製]
得られた塩素化塩化ビニル系樹脂粒子100重量部に対して、発泡剤としてノルマルペンタン100重量部を容積100ccの耐圧容器に入れ密封した後、オイルバスにて120℃の条件で4時間加熱し、耐圧容器を冷却し、耐圧容器から発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を取出した。発泡性塩素化塩化ビニル粒子の発泡剤含有量は11重量%、真密度は1430kg/mであった。
【0105】
[塩素化塩化ビニル系樹脂発泡粒子の作製]
得られた発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を10℃で7日保管した後、上述の<加熱空気雰囲気下での発泡評価>にて発泡評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0106】
(実施例2~8)
実施例1における[塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の作製]において、(D)炭酸カルシウムの種類及び量を表1に記載の種類及び量に変更した以外は実施例1と同じ操作を行い、発泡性樹脂粒子を得た。得られた発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を10℃で7日保管した後、上述の<加熱空気雰囲気下での発泡評価>にて発泡評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0107】
(比較例1)
実施例1における[塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の作製]において、(D)炭酸カルシウムを添加しなかった以外は実施例1と同じの操作を行い、発泡性樹脂粒子を得た。得られた発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を10℃で7日保管した後、上述の<加熱空気雰囲気下での発泡評価>にて発泡評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0108】
(比較例2及び3)
実施例1における[塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の作製]において、(D)炭酸カルシウムの種類及び量を表1に記載の種類及び量に変更したこと以外は実施例1と同じ操作を行い、発泡性樹脂粒子を得た。得られた発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を10℃で7日保管した後、上述の<加熱空気雰囲気下での発泡評価>にて発泡評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0109】
【表1】