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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012885
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】電気回路
(51)【国際特許分類】
   H02H 9/02 20060101AFI20240124BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240124BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240124BHJP
   B60L 50/60 20190101ALN20240124BHJP
   B60L 58/10 20190101ALN20240124BHJP
   B60L 58/27 20190101ALN20240124BHJP
【FI】
H02H9/02 D
H02J7/00 302B
H02J1/00 309R
B60L50/60
B60L58/10
B60L58/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114667
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】松田 英亮
【テーマコード(参考)】
5G013
5G165
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G013AA02
5G013BA01
5G013CA07
5G165BB05
5G165EA02
5G165GA09
5G165NA02
5G165NA04
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503BB02
5G503DA17
5G503FA17
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC01
5H125BC19
5H125CD04
5H125CD09
5H125DD05
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】プリチャージ回路を削減することで、部品点数および重量を削減することが可能な電気回路を提供する。
【解決手段】電源と、負荷回路とを接続可能な電気回路であって、前記電源の第1端と、前記負荷回路の第1端とを接続および遮断する第1断接装置と、前記電源の第2端と、前記負荷回路の第2端とを接続および遮断する第2断接装置と、前記第1断接装置と並列に前記電源の第1端と前記負荷回路の第1端とを接続するヒーターと、を備え、前記ヒーターは、抵抗器と、前記抵抗器と直列に接続された少なくとも1つ以上のスイッチ素子とを備え、前記抵抗器および前記スイッチ素子を介して、前記電源の第1端と、前記負荷回路の第2端または前記電源の第2端とを接続し、前記電源により前記ヒーターを介して前記負荷回路が充電された後、前記第1断接装置が接続状態にされる、電気回路。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、負荷回路とを接続可能な電気回路であって、
前記電源の第1端と、前記負荷回路の第1端とを接続および遮断する第1断接装置と、
前記電源の第2端と、前記負荷回路の第2端とを接続および遮断する第2断接装置と、
前記第1断接装置と並列に前記電源の第1端と前記負荷回路の第1端とを接続するヒーターと、
を備え、
前記ヒーターは、
抵抗器と、前記抵抗器と直列に接続された少なくとも1つ以上のスイッチ素子とを備え、
前記抵抗器および前記スイッチ素子を介して、前記電源の第1端と、前記負荷回路の第2端または前記電源の第2端とを接続し、
前記電源により前記ヒーターを介して前記負荷回路が充電された後、前記第1断接装置が接続状態にされる、
電気回路。
【請求項2】
前記ヒーターは、前記抵抗器を介して、前記電源の第1端と、前記負荷回路の第2端とを接続する、
請求項1に記載の電気回路。
【請求項3】
前記抵抗器と、前記負荷回路の第1端との間に、前記充電と逆方向に流れる電流を阻止するダイオードが設けられている、
請求項2に記載の電気回路。
【請求項4】
前記電源は、二次電池であり、
前記ヒーターは、前記二次電池を加温する装置である、
請求項2に記載の電気回路。
【請求項5】
前記ヒーターは、
前記抵抗器と、前記電源の第1端との間に設けられた電磁開閉器と、
前記抵抗器と、前記負荷回路の第2端との間に設けられた半導体スイッチ素子と、
を備える、
請求項2に記載の電気回路。
【請求項6】
前記第1断接装置が遮断状態且つ前記第2断接装置が接続状態において前記電源により前記ヒーターを介して前記負荷回路が充電された後、前記第1断接装置が接続状態にされる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の電気回路。
【請求項7】
前記第1断接装置は、前記電源の第1端と前記ヒーターの一端とを接続する第1ノードと、前記負荷回路との間に設けられる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の電気回路。
【請求項8】
前記第2断接装置は、前記電源の第2端と、前記電源の第2端と前記ヒーターの他端とを接続する第2ノードとの間に設けられる、
請求項7に記載の電気回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境上の悪影響の軽減や自然災害の抑制の観点から、全エネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を拡大すること、汚染を生じる化石発電所を段階的に廃止することが要求されている。自動車の分野においては、特に、気候関連災害の観点からCO削減のために、電気自動車への関心が高まっている。電気自動車のバッテリシステムにおいては、例えば、電源投入時等、バッテリを負荷回路に接続する際に生じる突入電流を抑制するために、バッテリと負荷回路とを接続する電気回路内に、プリチャージ抵抗およびプリチャージコンタクタにより構成されるプリチャージ回路が設けられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-63159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電気自動車のバッテリシステムにおいて、プリチャージ回路は電源投入時等に生じる突入電流を抑制するためだけに設けられている。このような使用目的および使用タイミングが限定的なプリチャージ回路が存在することで、部品点数および重量の増大につながり、またコスト増の要因となっていた。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、プリチャージ回路を削減することで、部品点数および重量を削減することが可能な電気回路を提供することを目的の一つとする。そして、延いては、バッテリシステム全体を小型軽量化し、エネルギー効率の改善を図ることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電気回路は、以下の構成を採用した。
(1)この発明の一態様の電気回路は、電源と、負荷回路とを接続可能な電気回路であって、前記電源の第1端と、前記負荷回路の第1端とを接続および遮断する第1断接装置と、前記電源の第2端と、前記負荷回路の第2端とを接続および遮断する第2断接装置と、前記第1断接装置と並列に前記電源の第1端と前記負荷回路の第1端とを接続するヒーターと、を備え、前記ヒーターは、抵抗器と、前記抵抗器と直列に接続された少なくとも1つ以上のスイッチ素子とを備え、前記抵抗器および前記スイッチ素子を介して、前記電源の第1端と、前記負荷回路の第2端または前記電源の第2端とを接続し、前記電源により前記ヒーターを介して前記負荷回路が充電された後、前記第1断接装置が接続状態にされるものである。
【0007】
(2)の態様は、上記(1)の態様に係る電気回路において、前記ヒーターは、前記抵抗器を介して、前記電源の第1端と、前記負荷回路の第2端とを接続するものである。
【0008】
(3)の態様は、上記(2)の態様に係る電気回路において、前記抵抗器と、前記負荷回路の第1端との間に、前記充電と逆方向に流れる電流を阻止するダイオードが設けられているものである。
【0009】
(4)の態様は、上記(2)の態様に係る電気回路において、前記電源は、二次電池であり、前記ヒーターは、前記二次電池を加温する装置であるものである。
【0010】
(5)の態様は、上記(2)の態様に係る電気回路において、前記ヒーターは、前記抵抗器と、前記電源の第1端との間に設けられた電磁開閉器と、前記抵抗器と、前記負荷回路の第2端との間に設けられた半導体スイッチ素子と、を備えるものである。
【0011】
(6)の態様は、上記(1)から(5)のいずれかの態様に係る電気回路において、前記第1断接装置が遮断状態且つ前記第2断接装置が接続状態において前記電源により前記ヒーターを介して前記負荷回路が充電された後、前記第1断接装置が接続状態にされるものである。
【0012】
(7)の態様は、上記(1)から(5)のいずれかの態様に係る電気回路において、前記第1断接装置は、前記電源の第1端と前記ヒーターの一端とを接続する第1ノードと、前記負荷回路との間に設けられるものである。
【0013】
(8)の態様は、上記(7)の態様に係る電気回路において、前記第2断接装置は、前記電源の第2端と、前記電源の第2端と前記ヒーターの他端とを接続する第2ノードとの間に設けられるものである。
【発明の効果】
【0014】
上記(1)~(8)の態様によれば、プリチャージ回路を削減することで、部品点数および重量を削減することができる。また、ヒーターは、従来のプリチャージ抵抗と比較すると電力容量が大きいため、負荷回路側のプリチャージに必要な電力が大きい場合でもサイズの増大なくプリチャージが可能となる。ヒーターは、プリチャージ後は本来の加温処理を実現するヒーターとして動作することができる。
上記(2)の態様によれば、第1断接装置が遮断状態である場合はヒーターに通電しないため、安全性を保つことができる。
上記(3)の態様によれば、負荷回路側から電源側または負荷回路側での短絡を防止することができる。
上記(4)の態様によれば、始動時に適温よりも低いバッテリを始動処理時の発熱で加温することができる。
上記(5)の態様によれば、負荷回路側と電源側が絶縁され安全性が保たれるとともに、ヒーターを2つの異なるスイッチで制御および保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る車両Mの構成の一例を示す図である。
図2】第1実施形態に係る電気回路ECの構成の一例を示す図である。
図3】第1実施形態に係る制御部40により実行されるプリチャージ処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る電気回路EC-1の構成の一例を示す図である。
図5】第2実施形態に係る制御部40により実行されるプリチャージ処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態に係る電気回路のプリチャージ処理の動作例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の電気回路の実施形態について説明する。実施形態の電気回路は、電動車両(以下、「車両M」)に設けられる電源と、電源により供給される電力を利用する各種負荷(例えば、電力を消費する機器、装置、設備)との間に設けられる。この電気回路は、プリチャージ回路を備えておらず、車載の各種ヒーターに備えられる抵抗器をプリチャージ回路の代わりに利用する(すなわち、ヒーター回路の抵抗をプリチャージ抵抗と兼用する)。これにより、部品点数および重量を削減することができる。
【0017】
尚、車両Mは、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いはバッテリの放電電力を使用して動作する。以下、車両Mは、例えば、BEV(Battery Electric Vehicle:電気自動車)やHEV(Hybrid Electric Vehicle:ハイブリッド電気自動車)等、車載のバッテリから供給される電力によって駆動される電動モータによって走行する電動車両であるものとする。
【0018】
<第1実施形態>
[車両M]
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る車両Mの構成の一例を示す図である。車両Mは、例えば、モータ10と、駆動輪12と、ブレーキ装置14と、車両センサ20と、PCU(Power Control Unit)30と、制御部40と、バッテリ50と、バッテリヒーター52と、空調装置60とを備える。車両Mは、「車両」の一例である。
【0019】
モータ10は、例えば、三相交流電動機である。モータ10のロータは、駆動輪12に連結される。モータ10は、バッテリ50から供給される電力を用いて動力を駆動輪12に出力する。また、モータ10は、車両の減速時に車両の運動エネルギーを用いて発電する。
【0020】
ブレーキ装置14は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータとを備える。ブレーキ装置14は、ブレーキペダルの操作によって発生した油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。ブレーキ装置14は、上記説明した構成に限らず、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0021】
車両センサ20は、アクセル開度センサと、車速センサと、ブレーキ踏量センサと、を備える。アクセル開度センサは、運転者による加速指示を受け付けるアクセルペダルに取り付けられる。アクセル開度センサは、アクセルペダルの操作量を検出し、検出された操作量をアクセル開度として制御部40に出力する。車速センサは、例えば、各車輪に取り付けられた車輪速センサと速度計算機とを備える。車速センサは、車輪速センサにより検出された車輪速を統合して車両の速度(車速)を導出し、導出された速度情報を制御部40に出力する。ブレーキ踏量センサは、ブレーキペダルに取り付けられる。ブレーキ踏量センサは、ブレーキペダルの操作量を検出し、検出された操作量をブレーキ踏量として制御部40に出力する。
【0022】
PCU30は、例えば、変換器32と、VCU(Voltage Control Unit)34とを備える。変換器32は、バッテリ50とモータ10との間に接続される。変換器32は、VCU34により出力された電力をモータ10に対応する電力に変換してモータ10に供給する。変換器32は、例えば、AC-DC変換器である。変換器32の直流側端子は、直流リンクDLに接続されている。直流リンクDLには、VCU34を介してバッテリ50が接続される。変換器32は、モータ10により発電された交流を直流に変換して直流リンクDLに出力する。
【0023】
VCU34は、バッテリ50とモータ10との間に接続される。VCU34は、バッテリ50から供給される電力を昇圧または降圧して、直流リンクDLに出力する。VCU34は、例えば、DC―DCコンバータである。
【0024】
制御部40は、車両Mの全体の動作を制御する。制御部40は、例えば、車両Mの始動時等にバッテリ50を負荷に接続する際に、負荷のプリチャージのための制御を行う。その他、制御部40は、例えば、車両センサ20により出力された情報に基づいて、モータ10およびブレーキ装置14を制御する。また、制御部40は、例えば、車両センサ20により出力された情報に基づいて、モータ10に対して供給される電力を調整するために、VCU34を制御する。また、制御部40は、例えば、入力インターフェース(図示しない)を介して車両Mの乗員により入力された指示に基づいて、空調装置60を制御する。
【0025】
制御部40の機能部の各々は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)やCPU(Central Processing Unit)等のコンピュータプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。制御部40の機能部の各々は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。制御部40の機能の各々は、それぞれ別体の制御装置、例えば、モータECU、ブレーキECU、バッテリ・VCUECUといった制御装置に組み込まれてもよい。
【0026】
バッテリ50は、車両Mに搭載された各種部品に電力を供給する。バッテリ50は、例えば、車両Mが走行するために用いる電力を蓄える蓄電部(不図示)を備えるバッテリパックである。バッテリ50は、例えば、カセット式のバッテリパックなど、車両Mに対して容易に着脱可能な構成であってもよいし、車両Mに対する着脱が容易ではない据付式の構成であってもよい。バッテリ50が備える蓄電部(不図示)は、例えば、リチウムイオン電池など、充放電可能な二次電池である。バッテリ50が備える二次電池としては、例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ナトリウムイオン電池などの他、電気二重層キャパシタなどのキャパシタ、または二次電池とキャパシタとを組み合わせた複合電池なども考えられる。二次電池は、車両Mの外部の充電器(不図示)から導入される電力によって充電可能であってもよい。バッテリ50は、FCS(Fuel Cell Stack)であってもよい。バッテリ50は、「電源」の一例である。
【0027】
バッテリヒーター52は、例えば、制御部40の制御に基づいて、バッテリ50を加温するための高電圧ヒーターである。バッテリヒーター52は、例えば、バッテリ起動時や冬場等の低温時に、バッテリ50の性能を保証することを目的として設けられる。
【0028】
空調装置60は、例えば、入力インターフェース(図示しない)を介して車両Mの乗員により入力された指示に基づく制御部40の制御に応じて、車両Mの車室内の気温を調節する。空調装置60は、例えば、車両Mの車室内の気温を上昇させるための暖房用ヒーター62を備える。
【0029】
[電気回路ECの構成]
【0030】
図2は、第1実施形態に係る電気回路ECの構成の一例を示す図である。電気回路ECは、バッテリ50と、バッテリ50により供給される電力を利用する各種負荷Lとの間に接続可能であり、この両者間の接続を制御する。電気回路ECは、プリチャージ回路を備えておらず、車載の各種ヒーターに備えられる抵抗器をプリチャージ回路の代わりに利用する。車載の各種ヒーターには、例えば、バッテリヒーター52、暖房用ヒーター62等が含まれる。負荷Lには、例えば、モータ10、車両センサ20、PCU30、制御部40等が含まれる。以下においては、プリチャージ回路の代わりに利用するヒーターとして、バッテリヒーター52を利用する場合を例に挙げて説明する。負荷Lは、「負荷回路」の一例である。
【0031】
電気回路ECは、例えば、第1コンタクタCNT1、第2コンタクタCNT2、およびバッテリヒーター52により構成される。第1コンタクタCNT1は、制御部40の制御に基づいて、バッテリ50の第1端BT1(例えば、正極端)と、負荷Lの第1端LT1(例えば、正極端)とを接続および遮断する。第2コンタクタCNT2は、制御部40の制御に基づいて、バッテリ50の第2端BT2(例えば、負極端)と、負荷Lの第2端LT2(例えば、負極端)とを接続および遮断する。バッテリヒーター52は、第1コンタクタCNT1と並列にバッテリ50の第1端BT1と負荷Lの第1端LT1とを接続する。第1コンタクタCNT1は、「第1断接装置」の一例である。第2コンタクタCNT1は、「第2断接装置」の一例である。
【0032】
バッテリヒーター52は、例えば、抵抗器R、および抵抗器Rと直列に接続された少なくとも1つ以上のスイッチ素子(第1トランジスタTR1、第2トランジスタTR2)を備える。バッテリヒーター52は、抵抗器Rおよびスイッチ素子(第1トランジスタTR1、第2トランジスタTR2)を介して、バッテリ50の第1端BT1と、負荷Lの第2端LT2またはバッテリ50の第2端BT2とを接続する。バッテリヒーター52は、抵抗器Rを介して、バッテリ50の第1端BT1と、負荷Lの第2端LT2とを接続する。第1コンタクタCNT1が遮断状態且つ第2コンタクタCNT2が接続状態においてバッテリ50によりバッテリヒーター52を介して負荷Lが充電された後、第1コンタクタCNT1が接続状態となるように制御される。抵抗器Rと、負荷Lの第1端LT1との間に、ダイオードDが設けられる、ダイオードDは、バッテリ50によるバッテリヒーター52を介した負荷Lの充電と逆方向に流れる電流を阻止する。
【0033】
バッテリヒーター52の一端(例えば、正極端)は、バッテリ50の第1端BT1と、第1コンタクタCNT1との間に設けられた第1ノードN1に接続される。バッテリヒーター52の他端(例えば、負極端)は、第2コンタクタCNT2と、負荷Lの第2端LT2との間に設けられた第2ノードN2に接続される。第1ノードN1と、バッテリヒーター52の一端との間には、過大電流が流れたときに回路を遮断するための保護部品であるヒューズFが設けられている。バッテリヒーター52の抵抗器Rと第2トランジスタTR2との間に設けられた第3ノードN3は、ダイオードDを介して、第1コンタクタCNT1と、負荷Lの第1端LT1との間に設けられた第4ノードN4に接続される。第4ノードN4と、第2ノードN2との間において、負荷Lと並列にコンデンサCが設けられている。バッテリヒーター52は、抵抗器Rを介して、バッテリ50の第1端BT1と、負荷Lの第2端LT2とを接続する。第1コンタクタCNT1は、バッテリ50の第1端BT1とバッテリヒーター52の一端とを接続する第1ノードN1と、負荷Lとの間に設けられる。第2コンタクタCNT2は、バッテリ50の第2端BT2と、バッテリ50の第2端BT2または負荷Lの第2端LT2とバッテリヒーター52の他端とを接続する第2ノードN2との間に設けられる。
【0034】
[プリチャージ処理]
以下、プリチャージ処理における電気回路ECの動作の一例について説明する。図3は、第1実施形態に係る制御部40により実行されるプリチャージ処理の流れの一例を示すフローチャートである。図3に示すプリチャージ処理は、例えば、車両Mの始動時(イグニッションON時)等、バッテリシステムが起動される際に実行される。尚、このプリチャージ処理の開始時点において、第1コンタクタCNT1および第2コンタクタCNT2は遮断状態(OFF)に設定されているものとする。
【0035】
まず、制御部40は、第1コンタクタCNT1および第2コンタクタCNT2に異常が生じているか否かを判定する(ステップS101)。例えば、制御部40は、第1コンタクタCNT1および第2コンタクタCNT2の溶接に異常が生じているか否かを判定する。制御部40は、第1コンタクタCNT1および第2コンタクタCNT2に異常が生じていると判定した場合(ステップS101;Yes)、例えば、車両Mの車内に設けられた表示装置(図示しない)に異常が発生している旨の通知を表示させる等、異常対応を行う(ステップS113)。
【0036】
一方、制御部40は、第1コンタクタCNT1および第2コンタクタCNT2に異常が生じていないと判定した場合(ステップS101;No)、バッテリヒーター52の回路に異常が生じているか否かを判定する(ステップS103)。例えば、制御部40は、バッテリヒーター52の回路に断線が生じているか否かを判定する。制御部40は、バッテリヒーター52の回路に異常が生じていると判定した場合(ステップS103;Yes)、例えば、車両Mの車内に設けられた表示装置(図示しない)に異常が発生している旨の通知を表示させる等、異常対応を行う(ステップS113)。
【0037】
一方、制御部40は、バッテリヒーター52の回路に異常が生じていないと判定した場合(ステップS103;No)、バッテリヒーター52(例えば、Hi側)をONにし、且つ、第2コンタクタCNT2を接続状態(ON)にする(ステップS105)。尚、この時点で、第1コンタクタCNT1は遮断状態(OFF)のままである。この状態において、バッテリ50の第1端BT1は、第1ノードN1、第1トランジスタTR1、抵抗器R,第3ノードN3、ダイオードD、および第4ノードN4を介して、負荷Lの第1端LT1と接続され、プリチャージ用の経路が形成される。これにより、抵抗器Rを介して、負荷Lのプリチャージが開始される。
【0038】
次に、制御部40は、プリチャージ処理に異常が生じているか否かを判定する(ステップS107)。例えば、制御部40は、バッテリ50の第1端BT1から負荷Lの第1端LT1に至るプリチャージ用の経路における電流値が閾値以上となっているか否か(大電流となっているか否か)を判定する。電流値が閾値以上となっている場合、ヒューズFが遮断されるようにしてもよい。制御部40は、プリチャージ処理に異常が生じていると判定した場合(ステップS107;Yes)、例えば、車両Mの車内に設けられた表示装置(図示しない)に異常が発生している旨の通知を表示させる等、異常対応を行う(ステップS113)。
【0039】
一方、制御部40は、プリチャージ処理に異常が生じていないと判定した場合(ステップS107;No)、プリチャージ処理の終了条件が満たされているか否かを判定する(ステップS109)。例えば、制御部40は、負荷Lに印加されている電圧値、プリチャージ用の経路を流れる電流値、プリチャージ処理開始後の経過時間等に基づいて、プリチャージ処理の終了条件が満たされているか否かを判定する。制御部40は、プリチャージ処理の終了条件が満たされていないと判定した場合(ステップS109;No)、ステップS107に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0040】
一方、制御部40は、プリチャージ処理の終了条件が満たされていると判定した場合(ステップS109;Yes)、第1コンタクタCNT1を接続状態(ON)とする(ステップS111)。この状態において、バッテリ50の第1端BT1は、第1ノードN1、第1コンタクタCNT1、および第4ノードN4を介して、負荷Lの第1端LT1と接続され、メインの電力供給を行う経路(メインコンタクタ)が形成される。これにより、プリチャージ処理が終了する。尚、プリチャージ処理後は、バッテリヒーター52は、本来のバッテリ50を加温するヒーターとして動作することができる。以上により、本フローチャートの処理が終了する。
【0041】
上記のような第1実施形態の電気回路によれば、プリチャージ回路を削減することで、部品点数および重量を削減することができる。すなわち、ヒーター回路の抵抗をプリチャージ抵抗と兼用することで、プリチャージ回路(プリチャージ抵抗、コンタクタ)の削減が可能となる。また、従来、プリチャージ回路で消費されていたエネルギーをヒーターの動力源として利用することができる(例えば、バッテリヒーター52の場合、バッテリ50の昇温に利用することができる)。これにより、エネルギー効率を向上させることが可能となる。また、ヒーターはkWオーダーの通電が可能であるため、従来のプリチャージ抵抗では通電できないような大規模な並列システムへの適用が可能となる。
【0042】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、ヒーターの回路構成のみが、第1実施形態と異なる。このため、構成等については第1実施形態で説明した図および関連する記載を援用し、詳細な説明を省略する。
【0043】
[電気回路EC-1の構成]
【0044】
図4は、第2実施形態に係る電気回路EC-1の構成の一例を示す図である。電気回路EC-1は、例えば、第1コンタクタCNT1、第2コンタクタCNT2、およびバッテリヒーター52-1により構成される。バッテリヒーター52-1は、例えば、互いに直列に接続された第3コンタクタCNT3、抵抗器R、および第2トランジスタTR2を備える。バッテリヒーター52-1は、第3コンタクタCNT3、抵抗器R、および第2トランジスタTR2を介して、バッテリ50の第1端BT1と、負荷Lの第2端LT2またはバッテリ50の第2端BT2とを接続する。バッテリヒーター52-1は、抵抗器Rを介して、バッテリ50の第1端BT1と、負荷Lの第1端LT1とを接続する。第1コンタクタCNT1が遮断状態且つ第2コンタクタCNT2および第3コンタクタCNT3が接続状態においてバッテリ50によりバッテリヒーター52-1を介して負荷Lが充電された後、第1コンタクタCNT1が接続状態となるように制御される。第3コンタクタCNT3は、「電磁開閉器」の一例である。第2トランジスタTR2は、「半導体スイッチ素子」の一例である。第2トランジスタTR2は、抵抗器Rと、負荷Lの第2端LT2との間に設けられる。
【0045】
[プリチャージ処理]
以下、プリチャージ時における電気回路EC-1の動作の一例について説明する。図5は、第2実施形態に係る制御部40により実行されるプリチャージ処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5に示すプリチャージ処理は、例えば、車両Mの始動時(イグニッションON時)等、バッテリシステムが起動される際に実行される。尚、このプリチャージ処理の開始時点において、第1コンタクタCNT1、第2コンタクタCNT2、および第3コンタクタCNT3は、遮断状態(OFF)に設定されているものとする。
【0046】
まず、制御部40は、第1コンタクタCNT1、第2コンタクタCNT2、および第3コンタクタCNT3に異常が生じているか否かを判定する(ステップS201)。例えば、制御部40は、第1コンタクタCNT1、第2コンタクタCNT2、および第3コンタクタCNT3の溶接に異常が生じているか否かを判定する。制御部40は、第1コンタクタCNT1、第2コンタクタCNT2、および第3コンタクタCNT3に異常が生じていると判定した場合(ステップS201;Yes)、例えば、車両Mの車内に設けられた表示装置(図示しない)に異常が発生している旨の通知を表示させる等、異常対応を行う(ステップS213)。
【0047】
一方、制御部40は、第1コンタクタCNT1、第2コンタクタCNT2、および第3コンタクタCNT3に異常が生じていないと判定した場合(ステップS201;No)、バッテリヒーター52-1の回路に異常が生じているか否かを判定する(ステップS203)。例えば、制御部40は、バッテリヒーター52-1の回路に断線が生じているか否かを判定する。制御部40は、バッテリヒーター52-1の回路に異常が生じていると判定した場合(ステップS203;Yes)、例えば、車両Mの車内に設けられた表示装置(図示しない)に異常が発生している旨の通知を表示させる等、異常対応を行う(ステップS213)。
【0048】
一方、制御部40は、バッテリヒーター52-1の回路に異常が生じていないと判定した場合(ステップS203;No)、バッテリヒーター52-1(例えば、Hi側)をONにし、且つ、第2コンタクタCNT2および第3コンタクタCNT3を接続状態(ON)にする(ステップS205)。尚、この時点で、第1コンタクタCNT1は遮断状態(OFF)のままである。この状態において、バッテリ50の第1端BT1は、第1ノードN1、第3コンタクタCNT3、抵抗器R,第3ノードN3、ダイオードD、および第4ノードN4を介して、負荷Lの第1端LT1と接続され、プリチャージ用の経路が形成される。これにより、抵抗器Rを介して、負荷Lのプリチャージが開始される。
【0049】
次に、制御部40は、プリチャージ処理に異常が生じているか否かを判定する(ステップS207)。例えば、制御部40は、バッテリ50の第1端BT1から負荷Lの第1端LT1に至るプリチャージ用の経路における電流値が閾値以上となっているか否か(大電流となっているか否か)を判定する。電流値が閾値以上となっている場合、ヒューズFが遮断されるようにしてもよい。制御部40は、プリチャージ処理に異常が生じていると判定した場合(ステップS207;Yes)、例えば、車両Mの車内に設けられた表示装置(図示しない)に異常が発生している旨の通知を表示させる等、異常対応を行う(ステップS213)。
【0050】
一方、制御部40は、プリチャージ処理に異常が生じていないと判定した場合(ステップS207;No)、プリチャージ処理の終了条件が満たされているか否かを判定する(ステップS209)。例えば、制御部40は、負荷Lに印加されている電圧値、プリチャージ用の経路を流れる電流値、プリチャージ処理開始後の経過時間等に基づいて、プリチャージ処理の終了条件が満たされているか否かを判定する。制御部40は、プリチャージ処理の終了条件が満たされていないと判定した場合(ステップS209;No)、ステップS207に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0051】
一方、制御部40は、プリチャージ処理の終了条件が満たされていると判定した場合(ステップS209;Yes)、第1コンタクタCNT1を接続状態(ON)とする(ステップS211)。この状態において、バッテリ50の第1端BT1は、第1ノードN1、第1コンタクタCNT1、および第4ノードN4を介して、負荷Lの第1端LT1と接続され、メインの電力供給を行う経路(メインコンタクタ)が形成される。これにより、プリチャージ処理が終了する。尚、プリチャージ処理後は、バッテリヒーター52-1は、本来のバッテリ50を加温するヒーターとして動作することができる。以上により、本フローチャートの処理が終了する。
【0052】
上記のような第2実施形態の電気回路によれば、プリチャージ回路を削減することで、部品点数および重量を削減することができる。すなわち、ヒーター回路の抵抗をプリチャージ抵抗と兼用することで、プリチャージ回路(プリチャージ抵抗、コンタクタ)の削減が可能となる。また、従来、プリチャージ回路で消費されていたエネルギーをヒーターの動力源として利用することができる(例えば、バッテリヒーター52-1の場合、バッテリ50の昇温に利用することができる)ため、エネルギー効率を向上させることが可能となる。また、ヒーターはkWオーダーの通電が可能であるため、従来のプリチャージ抵抗では通電できないような大規模な並列システムへの適用が可能となる。
【0053】
<動作例>
次に、図2および図4に示すような実施形態の電気回路におけるプリチャージ処理の動作例について説明する。図6は、実施形態に係る電気回路のプリチャージ処理の動作例を説明する図である。図6(a)は、第1コンタクタCNT1(メインコンタクタ)の制御信号Q1の時間変化を示すグラフである。図6(b)は、バッテリ50のバッテリ電圧V1および負荷Lの負荷電圧V2の時間変化を示すグラフである。図6(c)は、バッテリヒーター52(52-1)の消費電力Phの時間変化を示すグラフである。図6(d)は、第1コンタクタCNT1に流れる電流I2の時間変化を示すグラフである。図6(a)に示すように、プリチャージ区間Tの後、制御信号Q1に応じて第1コンタクタCNT1が接続状態(ON)となる。図6(b)に示すように、プリチャージ区間Tの間、負荷Lに印加される負荷電圧V2の電圧値が徐々に上昇し、プリチャージ区間Tの後は、その電圧値が一定となる。また、図6(c)に示すように、バッテリヒーター52(52-1)の消費電力Phはプリチャージ後に上昇し、本来のヒーターとして動作可能となる。また、図6(d)に示すように、プリチャージ後の突入電流(電流I2)は、突入許容値よりも低い値に抑えられ、プリチャージ処理が正常に動作していることがわかる。
【0054】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0055】
10…モータ、12…駆動輪、14…ブレーキ装置、20…車両センサ、30…PCU、32…変換器、34…VCU、40…制御部、50…バッテリ、52,52-1…バッテリヒーター、60…空調装置、62…暖房用ヒーター、EC,EC-1…電気回路、バッテリの第1端…BT1、バッテリの第2端…BT2、負荷…L、負荷の第1端…LT1、負荷の第2端…LT2、CNT1…第1コンタクタ、CNT2…第2コンタクタ、CNT3…第3コンタクタ、F…ヒューズ、TR1…第1トランジスタ、TR2…第2トランジスタ、R…抵抗器、D…ダイオード、C…コンデンサ、N1…第1ノード、N2…第2ノード、N3…第3ノード、N4…第4ノード、M…車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6