(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128851
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】報知制御装置、および、報知制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20240913BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B3/00 R
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038107
(22)【出願日】2023-03-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】谷口 友宏
(72)【発明者】
【氏名】玉置 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】廣畑 圭司朗
【テーマコード(参考)】
3F303
3F304
【Fターム(参考)】
3F303BA01
3F303DB13
3F303DB21
3F303DC02
3F304BA02
3F304BA22
3F304BA24
3F304EA05
3F304ED06
3F304ED07
(57)【要約】
【課題】保守作業員の油断による不注意を抑制し、安全性を向上させることができる報知制御装置を提供する。
【解決手段】報知制御装置(1)は、保守作業空間の高さ位置と塔内設備の高さ位置との距離である設備接近距離を認知する接近認知部(112)と、設備接近距離が所定値以内となった場合に、保守作業員に対して塔内設備の接近を報知する制御を行う報知制御部(115)と、を備え、第1塔内設備の次に乗りかごに接近する第2塔内設備と第1塔内設備との間隔が所定の設備間距離以内である場合に、第1塔内設備に対する接近の報知期間と、第2塔内設備に対する接近の報知期間との間も報知を継続する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塔内におけるエレベータの乗りかごの外側上部で保守作業員が作業する保守作業空間の高さ位置と、前記保守作業空間に近接する可能性がある塔内設備の高さ位置との距離である設備接近距離を認知する接近認知部と、
前記設備接近距離が所定値以内となった場合に、前記保守作業員に対して前記塔内設備の接近を報知する制御を行う報知制御部と、を備え、
前記報知制御部は、前記設備接近距離が所定値以内となった第1塔内設備の次に前記乗りかごに接近する第2塔内設備と、前記第1塔内設備との高さ方向の間隔が所定の設備間距離以内である場合に、前記第1塔内設備に対する接近の報知期間と、前記第2塔内設備に対する接近の報知期間との間も報知を継続する、報知制御装置。
【請求項2】
前記報知制御部は、前記塔内設備の水平面に対する投影位置が存在しうる領域を複数の部分領域に分割するとともに、前記第1塔内設備の前記投影位置を含む前記部分領域と、前記第2塔内設備の前記投影位置を含む前記部分領域とが異なる場合、前記第1塔内設備と前記第2塔内設備との高さ方向の間隔が前記所定の設備間距離以内であっても、前記第1塔内設備に対する接近の報知期間と、前記第2塔内設備に対する接近の報知期間との間は報知を継続しない、請求項1に記載の報知制御装置。
【請求項3】
前記報知制御部は、前記第1塔内設備と前記第2塔内設備との高さ方向の間隔が前記所定の設備間距離以内であっても、前記第1塔内設備に対する接近の報知期間と、前記第2塔内設備に対する接近の報知期間との間で前記乗りかごの移動が停止された場合には、報知を継続しない、請求項1に記載の報知制御装置。
【請求項4】
前記報知制御部は、前記設備接近距離が第1報知距離以内でかつ第2報知距離より大きい場合での第1報知内容と、前記設備接近距離が第2報知距離以内でかつ第3報知距離より大きい場合での第2報知内容と、を互いに異ならせる、請求項1に記載の報知制御装置。
【請求項5】
前記報知制御部は、前記塔内設備の水平面に対する投影位置が存在しうる領域を複数の部分領域に分割するとともに、前記塔内設備の前記投影位置を含む前記部分領域に応じて、報知内容を異ならせる、請求項1に記載の報知制御装置。
【請求項6】
塔内におけるエレベータの乗りかごの高さ位置と、前記乗りかごの外側上部で保守作業員が作業する保守作業空間に近接する可能性がある塔内設備の高さ位置との距離である設備接近距離を認知する接近認知ステップと、
前記設備接近距離が所定値以内となった場合に、前記保守作業員に対して前記塔内設備の接近を報知する制御を行う報知制御ステップと、を含み、
前記報知制御ステップは、前記設備接近距離が所定の報知距離以内となった第1塔内設備の次に前記乗りかごに接近する第2塔内設備と、前記第1塔内設備との高さ方向の間隔が所定の設備間距離以内である場合に、前記第1塔内設備に対する接近の報知期間と、前記第2塔内設備に対する接近の報知期間との間も報知を継続する、報知制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータの保守業務を行う保守作業員に対して報知を行う報知制御装置、および、報知制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、エレベータの保守業務を行う保守作業員は乗りかごの上に乗り、乗りかごを昇降させることで塔内を移動し保守作業を行う。そのため、乗りかごを昇降させる際、乗りかごの上に乗った保守作業員が塔内の機器などの塔内設備に接触するおそれがある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、複数のエレベータを備えるエレベータシステムにおいて、保守対象のエレベータに隣接するエレベータの乗りかご等の接近を保守作業員に報知する技術が開示されている。この例では、各乗りかごの位置から保守対象のエレベータの乗りかごと、保守対象のエレベータに隣接するエレベータの乗りかごとの距離を演算し、当該隣接するエレベータの乗りかごおよび当該隣接するエレベータの釣合い錘の接近を保守作業員に報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乗りかごの移動に伴って、複数の塔内設備が連続して乗りかごに近づいてくる場合、各塔内設備の接近ごとに報知する手法が考えられる。この場合、1つ目の塔内設備の接近に伴う報知が終わると、保守作業員は塔内設備の通過が完了したと認識して油断し、次に接近する塔内設備への対応が遅れることが考えられる。また、報知の切り替わり頻度が高くなることにより、報知に対する保守作業員の注意が散漫になるおそれもある。
【0006】
本発明の一態様は、保守作業員の油断による不注意を抑制し、安全性を向上させることができる報知制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係る報知制御装置は、塔内におけるエレベータの乗りかごの外側上部で保守作業員が作業する保守作業空間の高さ位置と、前記保守作業空間に近接する可能性がある塔内設備の高さ位置との距離である設備接近距離を認知する接近認知部と、前記設備接近距離が所定値以内となった場合に、前記保守作業員に対して前記塔内設備の接近を報知する制御を行う報知制御部と、を備え、前記報知制御部は、前記設備接近距離が所定値以内となった第1塔内設備の次に前記乗りかごに接近する第2塔内設備と、前記第1塔内設備との高さ方向の間隔が所定の設備間距離以内である場合に、前記第1塔内設備に対する接近の報知期間と、前記第2塔内設備に対する接近の報知期間との間も報知を継続する。
【0008】
上記の構成によれば、連続して乗りかごに接近する2つの塔内設備同士の高さ位置の間隔が所定の設備間距離以内である場合には、塔内設備の接近の報知が継続して行われる。よって、一時的に塔内設備の接近がなくなる場合でも、保守作業員の注意を継続させ、油断による不注意を抑制し、安全性を向上させることができる。
【0009】
本発明の態様2にかかる報知制御装置は、上記態様1において、前記報知制御部は、前記塔内設備の水平面に対する投影位置が存在しうる領域を複数の部分領域に分割するとともに、前記第1塔内設備の前記投影位置を含む前記部分領域と、前記第2塔内設備の前記投影位置を含む前記部分領域とが異なる場合、前記第1塔内設備と前記第2塔内設備との高さ方向の間隔が前記所定の設備間距離以内であっても、前記第1塔内設備に対する接近の報知期間と、前記第2塔内設備に対する接近の報知期間との間は報知を継続しなくてもよい。
【0010】
保守作業員は、第1塔内設備に関する報知が行われると、その塔内設備の接近方向に注意を向けることになる。この際に、第2塔内設備が異なる方向から連続して接近してくる場合、第1塔内設備の接近方向のみに気を取られてしまい、第2塔内設備に対する注意が不十分になることが考えられる。
【0011】
これに対して、上記の構成によれば、連続して乗りかごに接近する2つの塔内設備の、乗りかごから保守作業員が見た際の方向が互いに異なる場合、第1塔内設備と第2塔内設備との高さ方向の間隔が所定の設備間距離以内であっても報知が継続されないことになる。すなわち、方向が異なる場合には報知が分断されることになるので、保守作業員は、1回目の報知と2回目の報知との切り替わりを認識することができる。よって、2回目の報知により別の方向から塔内設備が接近する可能性を保守作業員に認識させることができる。
【0012】
本発明の態様3にかかる報知制御装置は、上記態様1または2において、前記報知制御部は、前記第1塔内設備と前記第2塔内設備との高さ方向の間隔が前記所定の設備間距離以内であっても、前記第1塔内設備に対する接近の報知期間と、前記第2塔内設備に対する接近の報知期間との間で前記乗りかごの移動が停止された場合には、報知を継続しなくてもよい。
【0013】
保守作業員は、第1塔内設備に関する報知が行われた後に乗りかごの移動が停止し、報知が継続した状態で移動が再開された場合、第1塔内設備に対する報知が継続していると認識する可能性がある。この場合、第1塔内設備が通過することで注意が不要になったと認識し、第2塔内設備の接近に対する注意が不足する可能性がある。
【0014】
これに対して、上記の構成によれば、第1塔内設備と第2塔内設備との高さ方向の間隔が所定の設備間距離以内であっても、途中で乗りかごの停止が行われた場合には報知が継続されないことになる。すなわち、乗りかごの移動停止時に報知が分断されることになるので、保守作業員は、1回目の報知と2回目の報知との切り替わりを認識することができる。よって、2回目の報知により別の塔内設備が接近する可能性を保守作業員に認識させることができる。
【0015】
本発明の態様4にかかる報知制御装置は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記報知制御部は、前記設備接近距離が第1報知距離以内でかつ第2報知距離より大きい場合での第1報知内容と、前記設備接近距離が第2報知距離以内でかつ第3報知距離より大きい場合での第2報知内容と、を互いに異ならせてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、設備接近距離が長い期間と短い期間とで報知内容が変更されるので、保守作業員に対して、塔内設備が近づいている程度を認識させることができる。
【0017】
本発明の態様5にかかる報知制御装置は、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記報知制御部は、前記塔内設備の水平面に対する投影位置が存在しうる領域を複数の部分領域に分割するとともに、前記塔内設備の前記投影位置を含む前記部分領域に応じて、報知内容を異ならせてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、保守作業員が乗りかごから見た際の塔内設備の方向に応じて、異なる報知内容が保守作業員に報知されるので、保守作業員は報知内容によって塔内設備の接近方向を認識することができる。
【0019】
本発明の態様6に係る報知制御方法は、塔内におけるエレベータの乗りかごの高さ位置と、前記乗りかごの外側上部で保守作業員が作業する保守作業空間に近接する可能性がある塔内設備の高さ位置との距離である設備接近距離を認知する接近認知ステップと、前記設備接近距離が所定値以内となった場合に、前記保守作業員に対して前記塔内設備の接近を報知する制御を行う報知制御ステップと、を含み、前記報知制御ステップは、前記設備接近距離が所定の報知距離以内となった第1塔内設備の次に前記乗りかごに接近する第2塔内設備と、前記第1塔内設備との高さ方向の間隔が所定の設備間距離以内である場合に、前記第1塔内設備に対する接近の報知期間と、前記第2塔内設備に対する接近の報知期間との間も報知を継続する。
【0020】
上記の構成によれば、上記態様1と同様の効果を奏する。
【0021】
本発明の各態様に係る報知制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記報知制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記報知制御装置をコンピュータにて実現させる報知制御装置の報知制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、保守作業員の油断による不注意を抑制し、安全性を向上させることができる報知制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る報知制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】報知制御システムにおいて行われる報知制御を説明するための概略図である。
【
図3】報知制御システムにおいて行われる報知制御を説明するための概略図である。
【
図4】乗りかごを上面視した状態を示す概略図である。
【
図5】2つの塔内設備が乗りかごに接近および通過している状態を示す図である。
【
図6】2つの塔内設備が乗りかごに接近および通過している状態を示す図である。
【
図7】2つの塔内設備が異なる方向から接近している状態を示す概略図である。
【
図8】報知制御装置が行う処理(報知制御方法)の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】報知制御部が報知の内容を決定し、報知制御を行うときの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】変形例に係る報知制御システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔実施形態1〕
<報知制御システム100の構成>
以下、本発明の一実施形態に係る報知制御システム100について、詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る報知制御システム100の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、報知制御システム100は、報知制御装置1およびエレベータ2を備える。
【0025】
報知制御システム100において、エレベータ2は、塔内Eに存在する乗りかご24を移動させる。エレベータ2の保守点検作業を行う保守作業員Cは、乗りかご24の上に乗り、塔内Eにおいて作業を行う。乗りかご24が移動することで、保守作業員Cは塔内Eの所望の位置で作業を行うことができる。また、エレベータ2は、報知制御装置1の制御に従い報知を行う報知部25を備える。
【0026】
報知制御装置1は、塔内Eにおいて乗りかご24上で作業を行う保守作業員Cに対して塔内設備Xの接近を報知する報知制御機能を備えている。具体的には、報知制御装置1は、塔内Eにおけるエレベータ2の乗りかご24の外側上部で保守作業員Cが作業する保守作業空間の高さ位置と、保守作業空間に近接する可能性がある塔内設備Xの高さ位置との距離である設備接近距離を認知する。設備接近距離が所定値以内となった場合、報知制御装置1は、保守作業員Cに対して塔内設備Xの接近を報知する報知制御を行う。
【0027】
例えば、報知制御装置1は、塔内設備Xが保守作業員Cに接近中であり、保守作業員Cの注意が疎かになる可能性が比較的高い位置に存在する場合には、塔内設備Xが接近していることを警告する警告報知を行うよう報知部25を制御する。また、報知制御装置1は、塔内設備Xが保守作業員Cの近くを通過中である場合には、塔内設備Xが保守作業員Cの近くを通過中であり、該塔内設備Xに注意を払う必要があることを示す注意報知を行うよう報知部25を制御する。
【0028】
また、報知制御システム100は、設備接近距離が所定値以内となった第1塔内設備XAの次に乗りかご24に接近する第2塔内設備XBと、第1塔内設備XAとの高さ方向の間隔Zが所定の設備間距離以内である場合に、第1塔内設備XAに対する接近の報知期間と、第2塔内設備XBに対する接近の報知期間との間も報知を継続するよう制御を行う。
【0029】
これにより、報知制御システム100では、連続して乗りかご24に接近する2つの塔内設備X同士の高さ位置の間隔Zが所定の設備間距離以内である場合には、塔内設備Xの接近の報知が継続して行われる。よって、一時的に塔内設備Xの接近がなくなる場合でも、保守作業員Cの注意を継続させ、油断による不注意を抑制し、安全性を向上させることができる。また、2つの塔内設備Xが連続して接近する場合、報知の内容が切り替わる頻度が低減されているため、過剰な警告が行われて保守作業員Cの注意力を低下させる可能性を低減することができる。
【0030】
<報知制御の概要>
以下、
図2および
図3を用いて、報知制御システム100において行われる基本的な報知制御の概要について説明する。
図2および
図3は、報知制御システム100において行われる報知制御を説明するための概略図である。
図2は乗りかご24が上方向に移動している状態を示し、
図3は乗りかご24が下方向に移動している状態を示す。
【0031】
報知制御システム100では、乗りかご24の上に位置する保守作業員Cに塔内設備Xが接近し、当該塔内設備Xが予め設定された警告範囲A1に進入すると、報知制御システム100は、塔内設備Xの接近を警告する警告報知が行われる。警告報知では、接近する塔内設備Xが存在すること、および水平面において塔内設備Xが存在する方向をLEDライトの点滅、音声案内、およびブザー音等によって警告する。
【0032】
その後、塔内設備Xがさらに接近し、当該塔内設備Xが予め設定された注意範囲A2に進入すると、報知制御システム100は、塔内設備Xが保守作業員Cの付近を通過していることを注意する注意報知が行われる。注意報知では、接近する塔内設備Xが存在すること、および水平面において塔内設備Xが存在する方向をLEDライトの点灯等によって注意する。
【0033】
(乗りかご24が上方向に移動する場合における報知制御)
以下、
図2を用いて、乗りかご24が上方向に移動する場合における報知制御について説明する。
図2に示す基準線B1は乗りかご24の上端の高さを示す線であり、乗りかご24が上方向に移動している場合の警告範囲A1、注意範囲A2および設備接近距離を特定するための基準線である。
【0034】
警告範囲A1は、保守作業員Cに塔内設備Xが接近しつつあり、かつ該塔内設備Xが保守作業員Cの頭上または頭付近に存在すると考えられる範囲である。例えば、警告範囲A1は、保守作業員Cの肩程度の高さから、保守作業員Cが接近する塔内設備Xを警戒するのに十分な距離を加算した高さまでの範囲(
図2において斜め格子網掛けで示す範囲)であってよい。具体的には、警告範囲A1は、基準線B1を基準として上方向に1.5m程度の高さから、当該高さを基準として、人の頭の大きさ(0.3m)および保守作業員Cが接近する塔内設備Xを警戒するのに十分な距離(1.5m)を加算した高さまでの範囲、すなわち基準線B1から3.3m程度の高さまでの範囲であってよい。この場合、第1報知距離D1は3.3mとなり、第2報知距離D2は1.5mとなる。
【0035】
注意範囲A2は、警告範囲A1よりも接近した塔内設備Xが保守作業員Cの付近に存在すると考えられる範囲である。例えば、注意範囲A2は、保守作業員Cの足元から肩程度の高さまでの範囲(
図2において斜線網掛けで示す範囲)であってよい。具体的には、注意範囲A2は、基準線B1を基準として上方向に0.3m程度の高さから、基準線B1を基準として上方向に1.5m程度の高さまでの範囲であってよい。この場合、第3報知距離D3は0.3mとなる。
【0036】
設備接近距離は、保守作業空間と塔内設備Xとの間の距離である。設備接近距離は、保守作業空間の高さの基準となる基準線と塔内設備Xの先端との間の距離である第1設備接近距離、および基準線と塔内設備Xの後端との間の距離である第2設備接近距離を含む。なお、塔内設備Xのうち、乗りかご24および保守作業員Cに先に接近する側の端部を「先端」、反対側の端部を「後端」と称する。また、設備接近距離を特定する際、塔内設備Xのうち基準線を通過した部分は基準線に対する距離を0またはマイナスとして計算される。
【0037】
乗りかご24が上方向に移動している場合、設備接近距離は、保守作業空間の下端の高さ位置を示す基準線B1と塔内設備Xとの間の距離である。塔内設備X1のように、第1設備接近距離(基準線B1と先端Y1との間の距離)が第1報知距離D1よりも大きい場合、塔内設備X1は保守作業員Cから十分に離れているため報知は行われない。
【0038】
図2に示すように、第1設備接近距離(基準線B1と先端Y2との間の距離)が第1報知距離D1以内であり、第2報知距離D2よりも大きい場合、塔内設備X2は保守作業員Cに接近しつつあり、警告範囲A1内に存在する。
【0039】
塔内設備Xが警告範囲A1に存在する場合、接近する該塔内設備Xが保守作業員Cに接触する可能性がある。また、塔内設備Xが警告範囲A1に存在する場合、該塔内設備Xが保守作業員Cの視界外に存在する可能性が高く、保守作業員Cが該塔内設備Xの接近に気づかない可能性がある。そのため、塔内設備X2のように、塔内設備Xが警告範囲A1内に存在する場合、塔内設備Xの接近を警告する警告報知が行われる。
【0040】
図2に示すように、第1設備接近距離(基準線B1と先端Y3との間の距離)が第2報知距離D2以内であり、第3報知距離D3よりも大きい場合、塔内設備X3は保守作業員Cの付近を通過中であり、注意範囲A2内に存在する。また、第2設備接近距離(基準線B1と塔内設備Xの後端との間の距離)が第3報知距離D3よりも大きい場合も、塔内設備Xは保守作業員Cの付近を通過中であり、注意範囲A2内に存在する。
【0041】
塔内設備Xが注意範囲A2に存在する場合、塔内設備Xが警告範囲A1に存在するときよりも保守作業員Cは該塔内設備Xに気づきやすいものの、該塔内設備Xが保守作業員Cに接触する可能性は依然として存在する。そのため、塔内設備X3のように、塔内設備Xの少なくとも一部が注意範囲A2内に存在する場合、塔内設備Xの通過を注意する注意報知が行われる。
【0042】
図2に示すように、第2設備接近距離(基準線B1と後端Y4)との間の距離が第3報知距離D3以下である場合、塔内設備X4は警告範囲A1および注意範囲A2のいずれにも存在せず、保守作業員Cの近くをほとんど通過し終えている、または完全に通過し終えている。この場合、塔内設備X4が保守作業員Cに接触する可能性は低く、保守作業員Cに対して塔内設備X4に注意を払わせる必要がない。そのため、塔内設備X4が警告範囲A1および注意範囲A2のいずれにも存在しない場合、報知は行われない。
【0043】
(乗りかご24が下方向に移動する場合における報知制御)
以下、
図3を用いて、乗りかご24が下方向に移動する場合における報知制御について説明する。乗りかご24が下方向に移動している場合、塔内設備Xは、乗りかご24の下側から乗りかご24および保守作業員Cに接近する。従って、乗りかご24が下方向に移動している場合、注意範囲A2は乗りかご24が上方向に移動しているときの範囲と変わらないものの、警告範囲A1は乗りかご24が上方向に移動しているときとは異なる範囲となる。
【0044】
基準線B2は、乗りかご24が下方向に移動している場合の警告範囲A1、注意範囲A2、および設備接近距離を特定するための基準線である。基準線B2は乗りかご24の上端から所定の高さ、例えば乗りかご24の上端から1.8mの高さを示す線であり、保守作業空間の上端の高さ位置を示している。乗りかご24が下方向に移動している場合、設備接近距離は、基準線B2と塔内設備Xとの間の距離となる。
【0045】
図3に示すように、注意範囲A2は乗りかご24が上方向に移動している範囲と同様に、保守作業員Cの肩から足元までの範囲(
図3において斜線網掛けで示す範囲)であってよい。乗りかご24が下方向に移動している場合、保守作業員Cは、下から接近する塔内設備Xに対して注意を払う必要がある。従って、乗りかご24が下方向に移動している場合の警告範囲A1は、乗りかご24が上方向に移動している場合の範囲とは異なる。この場合、警告範囲A1は、
図3に示すように、保守作業員Cの足元から下方向に所定の距離までの範囲(
図3において斜め格子網掛けで示す範囲)であってよい。
【0046】
図3に示すように、第1設備接近距離(基準線B2と先端Y5との間の距離)が第1報知距離D1よりも大きい場合、塔内設備X5は保守作業員Cから十分に離れているため報知は行われない。
【0047】
図3に示すように、第1設備接近距離(基準線B2と先端Y6との間の距離)が第1報知距離D1以内であり、第2報知距離D2よりも大きい場合、塔内設備X6は保守作業員Cに接近しつつあり、警告範囲A1内に存在する。この場合、塔内設備X6の接近を警告する警告報知が行われる。
【0048】
図3に示すように、第1設備接近距離(基準線B2と先端Y7との間の距離)が第2報知距離D2以内であり、第3報知距離D3よりも大きい場合、塔内設備X7は保守作業員Cの付近を通過中であり、注意範囲A2内に存在する。また、第2設備接近距離(基準線B2と塔内設備Xの後端との間の距離)が第3報知距離D3よりも大きい場合も、塔内設備Xは保守作業員Cの付近を通過中であり、注意範囲A2内に存在する。この場合、注意報知が行われる。
【0049】
図3に示すように、第2設備接近距離(基準線B2と後端Y8との間の距離)が第3報知距離D3以下である場合、塔内設備X8は警告範囲A1および注意範囲A2のいずれにも存在せず、保守作業員Cの近くをほとんど通過し終えている、または完全に通過し終えている。このように、塔内設備X8が警告範囲A1および注意範囲A2のいずれにも存在しない場合、報知は行われない。
【0050】
(報知の継続)
また、報知制御システム100は、設備接近距離が所定値以内となった第1塔内設備XAの次に乗りかご24に接近する第2塔内設備XBと、第1塔内設備XAとの高さ方向の間隔Zが所定の設備間距離以内である場合に、第1塔内設備XAに対する接近の報知期間と、第2塔内設備XBに対する接近の報知期間との間も報知を継続するよう制御を行う。
【0051】
例えば、報知制御システム100は、第1塔内設備XAに対する注意報知を行っており、間隔Zが所定の設備間距離以内である場合、第1塔内設備XAが注意範囲A2を通過した後も、第2塔内設備XBが注意範囲A2を通過し終えるまで、注意報知を継続するよう制御を行う。
【0052】
また、報知制御システム100は、第1塔内設備XAに対する注意報知を行っており、間隔Zが所定の設備間距離以内である場合、第2塔内設備XBが警告範囲A1に進入したとしても、第2塔内設備XBに関する警告報知を行うのではなく、注意報知を継続する。
【0053】
[エレベータ2]
以下、報知制御システム100が備える各構成の詳細について説明する。エレベータ2は、乗りかご24の上面に保守作業員Cを乗せて塔内Eを移動可能な装置である。
図1に示すように、エレベータ2は、操作部21、制御部22、駆動部23、乗りかご24、および報知部25を備える。
【0054】
操作部21は、保守作業員C等による操作を受け付け、エレベータ2の乗りかご24の移動を指示する信号を出力可能な操作盤である。制御部22は、操作部21に対して行われた操作に基づき駆動部23を駆動させ、乗りかご24を移動させる。また、制御部22は、乗りかご24の高さ方向における位置を示すかご位置情報を、報知制御装置1に送信する。また、制御部22は、報知制御装置1から受信した指示に従い報知部25を制御し、各種報知を行わせる。駆動部23は、乗りかご24を移動させるための駆動部材であり、制御部22の制御に従い動作する。
【0055】
報知部25は、乗りかご24に設けられ、制御部22の制御に従って報知動作を行う。報知部25は、塔内設備Xの接近または通過を光、音、またはその両方によって報知する。
【0056】
例えば、報知部25は、光を出力可能なLEDライトであってよい。また、当該LEDライトは、接近する塔内設備Xが存在する方向を案内可能に設けられる。例えば、報知部25としてのLEDライトは、乗りかご24の上面の4方に設けられていてもよい。また、報知部25は、音声およびブザー音を出力可能なスピーカ等であってもよい。この場合、報知部25は制御部22の制御に従い、接近する塔内設備Xが存在すること、およびその方向を案内する音声を出力する。また、報知部25は、報知内容を画像や文字で表示する表示装置であってもよい。
【0057】
[報知制御装置1]
報知制御装置1は、エレベータ2が設けられる塔内Eで作業を行う保守作業員Cに対して塔内設備Xの接近および通過を報知する制御を行う装置である。
図1に示すように、報知制御装置1は、制御部11、記憶部12、および通信部13を備える。
【0058】
制御部11は、報知制御装置1において行われる各種制御を実行する。制御部11の詳細については後述する。記憶部12は、報知制御装置1において用いられる各種情報を記憶している。
図1に示すように、記憶部12は、少なくとも設備位置データベース121を記憶している。設備位置データベース121は、塔内Eに存在する塔内設備Xと、該塔内設備Xの高さ位置を示す情報と、該塔内設備Xの部分領域F(後述)を示す情報と、が塔内設備Xごとに記憶されているデータベースである。
【0059】
なお、塔内設備Xの高さ位置を示す情報には、該塔内設備Xの最も高い位置と最も低い位置を示す情報が含まれる。通信部13は、報知制御装置1がエレベータ2と通信を行うための通信モジュールである。報知制御装置1とエレベータ2との間における通信方法は特に限定されず、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。
【0060】
図1に示すように、制御部11は、位置特定部111、接近認知部112、部分領域特定部113、設備間距離特定部114、および報知制御部115を備える。
【0061】
位置特定部111は、乗りかご24の高さ方向における位置を特定する。具体的には、位置特定部111は、乗りかご24の位置を示すかご位置情報を要求する信号をエレベータ2に送信し、エレベータ2からかご位置情報を受信することで乗りかご24の位置を特定する。
【0062】
位置特定部111は、乗りかご24の位置の特定を、システム稼動中に亘って所定時間ごとに行ってもよい。これにより、乗りかご24の位置の特定の後に行われる報知に関する処理もシステム稼動中の所定時間ごとに行われる。または、位置特定部111は、乗りかご24の位置の特定を、乗りかご24が移動している間にのみ行ってもよい。
【0063】
位置特定部111は、エレベータ2から取得するかご位置情報を補正してもよい。具体的には、位置特定部111は、エレベータ2から取得するかご位置情報に、直近10回分のかご位置情報の加重平均結果を加算して補正する。かご位置情報の取得処理において遅延が生じたとしても、位置特定部111がかご位置情報を補正することで、乗りかご24の位置をより正確に特定することができる。
【0064】
接近認知部112は、塔内Eにおけるエレベータ2の乗りかご24の保守作業空間の高さ位置と、保守作業空間に近接する可能性がある塔内設備Xの高さ位置との距離である設備接近距離を認知する。
【0065】
接近認知部112は、位置特定部111からかご位置情報および乗りかご24の移動方向を示す情報を取得する。また、接近認知部112は、記憶部12の設備位置データベース121から、塔内Eに存在する塔内設備Xの高さ方向における位置を示す情報を取得する。接近認知部112は、取得した情報に基づき、乗りかご24の進行方向に存在する塔内設備Xを特定する。
【0066】
具体的には、接近認知部112は、乗りかご24の保守作業空間の高さ位置と進行方向に存在する塔内設備Xの高さ位置との間の距離である設備接近距離を算出する。進行方向に存在する塔内設備Xが複数存在する場合、接近認知部112は、複数の塔内設備Xの各々と、乗りかご24の保守作業空間の高さ位置との設備接近距離をそれぞれ算出する。接近認知部112は、算出した設備接近距離を示す情報を報知制御部115に出力する。
【0067】
部分領域特定部113は、塔内設備Xの水平面に対する投影位置が存在する領域である部分領域Fを特定する。具体的には、部分領域特定部113は、塔内設備Xの水平面に対する投影位置が存在しうる領域を複数の部分領域F(F1~F4)に分割する。
【0068】
図4は、乗りかご24を上面視した状態を示す概略図である。
図4に示すように、例えば、複数の部分領域Fは、乗りかご24を上面視した状態において、中央の点と4方の辺によって構成される三角形の形状を有する4つの領域であってよい。部分領域特定部113は、記憶部12の設備位置データベース121から、複数の部分領域F(F1~F4)のうち、塔内設備Xの水平面に対する投影位置が存在する部分領域Fを示す情報を取得する。部分領域特定部113は、取得した塔内設備Xの部分領域Fを示す情報を報知制御部115に出力する。
【0069】
図5および
図6は、2つの塔内設備Xが乗りかご24に接近および通過している状態を示す図である。
図5は乗りかご24が上方向に移動している状態を示し、
図6は乗りかご24が下方向に移動している状態を示す。
【0070】
設備間距離特定部114は、第1塔内設備XAの次に乗りかご24に接近する第2塔内設備XBと、第1塔内設備XAとの高さ方向の間隔Z(
図5および
図6において符号Zで示す間隔)を特定する。具体的には、後述する報知制御部115が、塔内設備Xの接近を報知する制御を行っている場合、設備間距離特定部114は、報知対象となっている塔内設備Xである第1塔内設備XAの次に乗りかご24に接近する塔内設備Xである第2塔内設備XBが存在するか否かを判定する。
【0071】
第2塔内設備XBが存在する場合、設備間距離特定部114は、記憶部12の設備位置データベース121を参照し、第1塔内設備XAの後端と第2塔内設備XBの先端との間の間隔Zを特定する。例えば、設備間距離特定部114は、
図5に示す第1塔内設備XAの後端Y9と第2塔内設備XBの先端Y10との間の間隔Z、または
図6に示す第1塔内設備XAの後端Y12と第2塔内設備XBの先端Y13との間の間隔Zを特定する。設備間距離特定部114は、特定した間隔Zを示す情報を報知制御部115に出力する。
【0072】
報知制御部115は、報知部25を制御することで、保守作業員Cに対する各種報知を報知部25に行わせる。
【0073】
報知制御部115は、設備接近距離が所定値以内となった場合に、保守作業員Cに対して塔内設備Xの接近を報知する制御を行う。以下、報知制御部115が報知部25に行わせる報知の内容について説明する。
【0074】
(警告報知)
塔内設備Xの先端が警告範囲A1に進入すると、報知制御部115は、保守作業員Cに対して塔内設備Xが接近していることを示す警告報知を行うよう報知部25を制御する。なお、報知制御部115は、塔内設備Xの先端が警告範囲A1を通過し、注意範囲A2に進入した時点で警告報知を終了する。
【0075】
報知制御部115は、塔内設備Xの部分領域Fに基づき、該塔内設備Xが存在する方向を示すように報知部25を制御することで警告報知を行わせる。
【0076】
例えば、報知制御部115は、報知部25としてのLEDライトを、塔内設備Xが存在する方向毎に点滅させる制御を行う。具体的には、報知制御部115は、複数の部分領域Fごとに設けられたLEDライトのうち、塔内設備Xが存在する部分領域Fに対応するLEDライトを点滅させる。
【0077】
または、報知制御部115は、報知部25としてのスピーカから、塔内設備Xが存在する方向を示す音声を出力させる制御を行う。具体的には、例えば、報知制御部115は、乗りかご24の上に乗った保守作業員Cが乗りかご24の中央から扉(不図示)が存在する方向に向いた状態において塔内設備Xが存在する方向(前後左右など)を示す音声を出力するよう制御する。または、報知制御部115は、報知部25としてのスピーカから、塔内設備Xが存在する方向毎に異なる音色のブザー音を出力させる制御を行う。また、報知部25としてのスピーカを、部分領域の方向に応じた位置に配置し、報知制御部115は、塔内設備Xが存在する方向に応じて音声を出力させるスピーカを変更する制御を行ってもよい。
【0078】
(注意報知)
塔内設備Xの先端が注意範囲A2に進入すると、報知制御部115は、保守作業員Cに対して塔内設備Xが該保守作業員Cの付近を通過していることを示す注意報知を行うよう報知部25を制御する。なお、報知制御部115は、塔内設備Xの少なくとも一部が注意範囲A2内に存在する期間中に亘って注意報知を行い、塔内設備Xの後端が注意範囲A2を退出した時点で注意報知を終了する。
【0079】
報知制御部115は、塔内設備Xの部分領域Fに基づき、該塔内設備Xが存在する方向を示すように報知部25を制御することで注意報知を行わせる。なお、報知制御部115は、報知部25に注意報知を行わせる際、警告報知とは異なる内容の報知を行わせる。
【0080】
例えば、報知制御部115は、報知部25としてのLEDライトを、塔内設備Xが存在する方向毎に点灯させる制御を行う。具体的には、報知制御部115は、複数の部分領域Fごとに設けられたLEDライトのうち、塔内設備Xが存在する部分領域Fに対応するLEDライトを点灯させる。
【0081】
(システム稼動通知)
報知制御システム100の稼働中であって、警告報知および注意報知を行う必要がない状況である場合、報知制御部115は、報知制御システム100が正常動作中であることを知らせるシステム稼動通知を行うよう報知部25を制御する。
【0082】
例えば、報知制御部115は、警告報知時と異なる長さおよび音色のブザー音を鳴らすよう報知部25としてのスピーカを制御する。
【0083】
このように、システム稼働報知のブザー音を警告報知のブザー音と異ならせることで、保守作業員Cは、警告報知および注意報知と間違えることなく、報知制御システム100が正常稼働中であることを把握できる。また、警告報知および注意報知のときにのみライトを点滅または点灯させ、報知が不要な状況ではライトを消灯させるため、塔内設備Xが接近または通過するときに、保守作業員Cに対してより確実に注意を促すことができる。
【0084】
以上のように、報知制御部115は、設備接近距離が第1報知距離D1以内でかつ第2報知距離D2より大きい場合での第1報知内容と、設備接近距離が第2報知距離D2以内でかつ第3報知距離D3より大きい場合での第2報知内容と、を互いに異ならせる。
【0085】
具体的には、報知制御部115は、設備接近距離を示す情報を取得し、当該設備接近距離に応じた制御を行う。例えば、設備接近距離が第1報知距離D1以内でかつ第2報知距離D2より大きい場合(塔内設備Xが警告範囲A1内に存在する場合)、報知制御部115は、報知部25に第1報知として警告報知を行わせる。また、設備接近距離が第2報知距離D2以内でかつ第3報知距離D3より大きい場合(塔内設備Xが注意範囲A2内に存在する場合)、報知制御部115は、報知部25に第2報知として注意報知を行わせる。
【0086】
これにより、設備接近距離が長い期間と短い期間とで報知内容が変更されるので、保守作業員Cに対して、塔内設備Xが近づいている程度を認識させることができる。特に、最も注意が必要な接近時のみLEDライトを点滅させることで強い注意喚起(警告報知)を行うことが可能になると共に、塔内設備Xが目の前を通過中もLEDライトを点灯させることで注意喚起(注意報知)することができる。
【0087】
また、報知制御部115は、塔内設備Xの水平面に対する投影位置が存在しうる領域を複数の部分領域F(F1~F4)に分割するとともに、塔内設備Xの投影位置を含む部分領域Fに応じて、報知内容を異ならせる。
【0088】
具体的には、報知制御部115は、塔内設備Xが存在する部分領域Fを示す情報を取得する。報知制御部115は、取得した部分領域Fを示す情報に基づき、接近する塔内設備Xが存在する、水平面における方向を示す報知を行うよう報知部25を制御する。
【0089】
これにより、保守作業員Cが乗りかご24から見た際の塔内設備Xの方向に応じて、異なる報知内容が保守作業員Cに報知されるため、保守作業員Cは報知内容によって塔内設備Xの接近方向を認識することができる。
【0090】
(報知の継続)
報知制御部115は、設備接近距離が所定値以内となった第1塔内設備XAの次に乗りかご24に接近する第2塔内設備XBと、第1塔内設備XAとの高さ方向の間隔Zが所定の設備間距離以内である場合に、第1塔内設備XAに対する接近の報知期間と、第2塔内設備XBに対する接近の報知期間との間も報知を継続する。所定の設備間距離は、例えば1mであってよい。保守作業員Cが第1塔内設備XAのみに対して注意を払っていると、第1塔内設備XAに関する警告報知が行われなくなったとき、次に接近する第2塔内設備XBに対する注意が疎かになる可能性がある。所定の設備間距離は、第1塔内設備XAに関する警告報知が終わった後、油断した保守作業員Cが、第1塔内設備XAに対して所定の設備間距離以下の間隔Zを有する第2塔内設備XBに接触する状況が発生し得るような距離であってよい。
【0091】
報知制御部115は、設備間距離特定部114から、第1塔内設備XAの次に乗りかご24に接近する第2塔内設備XBが存在するか否かを示す判定結果を取得する。第2塔内設備XBが存在する場合、報知制御部115は、設備間距離特定部114から、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとの間の間隔Zを示す情報をさらに取得する。
【0092】
第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとの間の間隔Zが、予め設定された所定の設備間距離以内である場合、報知制御部115は、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとを1つの塔内設備Xと見なし、以降の制御を行う。
【0093】
具体的には、報知制御部115は、第1塔内設備XAの先端が警告範囲A1に進入すると、警告報知を開始させ、第1塔内設備XAの先端が注意範囲A2に進入すると、注意報知を開始させる。第1塔内設備XAとの間隔Zが所定の設備間距離以内である第2塔内設備XBの先端が警告範囲A1に進入した場合、報知制御部115は、第2塔内設備XBに関する警告報知を行わず、注意報知を継続させる。報知制御部115は、第1塔内設備XAの後端が注意範囲A2を通過した後、第2塔内設備XBの後端が注意範囲A2を通過し終えるまで注意報知を継続させ、第2塔内設備XBの後端が注意範囲A2を通過し終えると、注意報知を終了させる。
【0094】
上記の構成によれば、連続して乗りかご24に接近する2つの塔内設備X同士の高さ位置の間隔Zが所定の設備間距離以内である場合には、塔内設備Xの接近の報知が継続して行われる。よって、一時的に塔内設備Xの接近がなくなる場合でも、保守作業員Cの注意を継続させ、油断による不注意を抑制し、安全性を向上させることができる。また、2つの塔内設備Xの接近の報知が継続して行われることで、報知の内容が切り替わる頻度を抑制することができる。これにより、保守作業員Cに対して過剰に警告が行われ、保守作業員Cの注意力が低下する可能性を低減することができる。
【0095】
報知制御部115は、塔内設備Xの水平面に対する投影位置が存在しうる領域を複数の部分領域F(F1~F4)に分割するとともに、第1塔内設備XAの投影位置XCを含む部分領域Fと、第2塔内設備XBの投影位置XDを含む部分領域Fとが異なる場合、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとの高さ方向の間隔Zが設備間距離以内であっても、第1塔内設備XAに対する接近の報知期間と、第2塔内設備XBに対する接近の報知期間との間は報知を継続しない。
【0096】
第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとの間の間隔Zが所定の設備間距離以内である場合、報知制御部115は、第1塔内設備XAおよび第2塔内設備XBの投影位置が存在する部分領域Fが一致するか否かを判定し、判定結果に基づき報知制御を行う。
【0097】
報知制御部115は、部分領域特定部113から、第1塔内設備XAの投影位置(
図4の符号XCで示す位置)を含む部分領域Fを示す情報および第2塔内設備XBの投影位置(
図4の符号XDで示す位置)を含む部分領域Fを示す情報を取得する。
【0098】
報知制御部115は、第1塔内設備XAの投影位置を含む部分領域Fを示す情報と第2塔内設備XBの投影位置を含む部分領域Fを示す情報とが一致するか否かを判定する。第1塔内設備XAの投影位置XCを含む部分領域Fを示す情報と第2塔内設備XBの投影位置XDを含む部分領域Fを示す情報とが一致する場合、報知制御部115は、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとを1つの塔内設備Xと見なし、報知制御を行う。この場合の制御は、上述したものと同様であるため説明を省略する。
【0099】
図7は、2つの塔内設備Xが異なる方向から接近している状態を示す概略図である。部分領域Fが一致しない場合、
図7に示すように、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとが異なる方向から接近する。第1塔内設備XAの投影位置XCを含む部分領域Fを示す情報と第2塔内設備XBの投影位置XDを含む部分領域Fを示す情報とが一致しない場合、報知制御部115は、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとを異なる塔内設備Xと見なして報知制御を行う。
【0100】
具体的には、第1塔内設備XAに関する報知を行っている状態において、部分領域Fが異なる第2塔内設備XBが警告範囲A1に進入したとき、報知制御部115は、第1塔内設備XAに関する報知とは別に、第2塔内設備XBに関する警告報知を行う。また、第2塔内設備XBが注意範囲A2に存在している期間中に第1塔内設備XAが注意範囲A2から退出した場合、報知制御部115は、第2塔内設備XBに関する注意報知を継続する一方、第1塔内設備XAに関する注意報知を終了する。
【0101】
保守作業員Cは、第1塔内設備XAに関する報知が行われると、その塔内設備Xの接近方向に注意を向けることになる。この際に、
図7に示すように、第2塔内設備XBが異なる方向から連続して接近してくる場合、保守作業員Cは、第1塔内設備XAの接近方向のみに気を取られてしまい、第2塔内設備XBに対する注意が不十分になることが考えられる。
【0102】
これに対して、上記の構成によれば、連続して乗りかご24に接近する2つの塔内設備X(第1塔内設備XAおよび第2塔内設備XB)の、乗りかご24から保守作業員Cが見た際の方向が互いに異なる場合、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとの高さ方向の間隔Zが所定の設備間距離以内であっても報知が継続されないことになる。すなわち、方向が異なる場合には報知が分断されることになるので、保守作業員Cは、1回目の報知と2回目の報知との切り替わりを認識することができる。よって、2回目の報知により別の方向から塔内設備Xが接近する可能性を保守作業員Cに認識させることができる。
【0103】
また、報知制御部115は、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとの高さ方向の間隔Zが所定の設備間距離以内であっても、第1塔内設備XAに対する接近の報知期間と、第2塔内設備XBに対する接近の報知期間との間で乗りかご24の移動が停止された場合には、報知を継続しない。
【0104】
具体的には、第1塔内設備XAが注意範囲A2内に存在している状態であり、第1塔内設備XAに対して所定の設備間距離以下の間隔Zを有する第2塔内設備XBが警告範囲A1に進入している状態では、報知制御部115は、注意報知を行わせる。この状態において、乗りかご24が停止した時点、または乗りかご24が停止してから所定時間経過した時点で、報知制御部115は、第1塔内設備XAに関する注意報知を終了させる。その後、乗りかご24の移動が再開した場合、報知制御部115は、第2塔内設備XBに関する警告報知を開始させる。
【0105】
保守作業員Cは、第1塔内設備XAに関する報知が行われた後に乗りかご24の移動が停止し、報知が継続した状態で移動が再開された場合、第1塔内設備XAに対する報知が継続していると認識する可能性がある。この場合、第1塔内設備XAが通過することで注意が不要になったと認識し、第2塔内設備XBの接近に対する注意が不足する可能性がある。
【0106】
これに対して、上記の構成によれば、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとの高さ方向の間隔Zが所定の設備間距離以内であっても、途中で乗りかご24の停止が行われた場合には報知が継続されないことになる。すなわち、乗りかご24の移動停止時に報知が分断されることになるので、保守作業員Cは、1回目の報知と2回目の報知との切り替わりを認識することができる。よって、2回目の報知により別の塔内設備Xが接近する可能性を保守作業員Cに認識させることができる。また、乗りかご24の移動停止中は報知が終了している。これにより、危険度合の変化がないのに報知が継続されることを抑制することができ、保守作業員Cは作業に集中することができる。
【0107】
<報知制御装置1が行う処理の流れの一例>
図8は、報知制御装置1が行う処理(報知制御方法)の流れの一例を示すフローチャートである。以下、
図8を用いて、報知制御装置1が行う処理の流れの一例について説明する。なお、報知制御装置1は、当該処理を所定時間ごと、例えば0.2秒毎に実行する。
【0108】
以下の説明では、乗りかご24の進行方向に、当該乗りかご24に接近する可能性がある塔内設備Xが存在する場合を例示する。乗りかご24に接近しうる塔内設備Xが存在しない場合、報知制御装置1は、システム稼動通知を行うよう報知部25を制御する。
【0109】
まず、位置特定部111は、乗りかご24の位置を示すかご位置情報および乗りかご24の移動方向を示す情報を要求する信号をエレベータ2に送信し、エレベータ2からかご位置情報および乗りかご24の移動方向を示す情報を受信することで乗りかご24の位置および移動方向を特定する(S1)。位置特定部111は、特定したかご位置情報および移動方向を示す情報を接近認知部112に出力する。
【0110】
接近認知部112は、位置特定部111からかご位置情報および乗りかご24の移動方向を示す情報を取得する。また、接近認知部112は、記憶部12の設備位置データベース121から、塔内Eに存在し、乗りかご24に接近し得る塔内設備Xの高さ方向における位置を示す情報を取得する。
【0111】
接近認知部112は、乗りかご24の保守作業空間の高さ位置と、進行方向に存在し、保守作業空間に近接する可能性がある塔内設備Xの高さ位置と、に基づき、設備接近距離を認知する(S2:接近認知ステップ)。接近認知部112は、算出した設備接近距離を示す情報を報知制御部115に出力する。なお、設備接近距離には、基準線Bと塔内設備Xの先端との間の距離である第1設備接近距離および基準線Bと塔内設備Xの後端との間の距離である第2設備接近距離を示す情報が含まれる。
【0112】
部分領域特定部113は、塔内設備Xの水平面に対する投影位置が存在する領域である部分領域Fを特定し(S3)、特定した部分領域Fを示す情報を報知制御部115に出力する。
【0113】
続いて、設備間距離特定部114は、最も接近している塔内設備Xである第1塔内設備XAの次に接近する第2塔内設備XBが存在するか否かを判定する(S4)。
【0114】
第2塔内設備XBが存在しない場合(S4でNO)、設備間距離特定部114は、第2塔内設備XBが存在しないことを示す判定結果を報知制御部115に出力する。
【0115】
第2塔内設備XBが存在しない場合、報知制御部115は、第1塔内設備XAの設備接近距離および部分領域Fに基づき報知内容を決定する(S5)。報知内容を決定するときの処理の流れの詳細については後述する。
【0116】
第2塔内設備XBが存在する場合(S4でYES)、設備間距離特定部114は、第2塔内設備XBと、第1塔内設備XAとの高さ方向の間隔Zを特定する(S6)。設備間距離特定部114は、第2塔内設備XBが存在することを示す判定結果を部分領域特定部113および報知制御部115に出力する。また、設備間距離特定部114は、特定した間隔Zを示す情報を報知制御部115に出力する。部分領域特定部113は、第2塔内設備XBが存在することを示す判定結果を取得すると、第2塔内設備XBの部分領域Fを特定し、報知制御部115に出力する。
【0117】
第2塔内設備XBが存在する場合、報知制御部115は、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとの位置関係に基づき報知内容を決定する。具体的には、報知制御部115は、間隔Zが所定の設備間距離以内である場合(S7でYES)、部分領域特定部113から、第2塔内設備XBの部分領域Fを示す情報を取得することで、第2塔内設備XBの部分領域Fを特定する(S8)。
【0118】
第2塔内設備XAの部分領域Fと第2塔内設備XBの部分領域Fと、が一致する場合(S9でNO)、であって、乗りかご24が移動中である場合(S10でNO)、報知制御部115は、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとを1つの塔内設備Xと見なして報知内容を決定する(S11)。
【0119】
S7でNOの場合、すなわち間隔Zが所定の設備間距離以内でない場合(第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとが所定の設備間距離よりも離れている場合)、報知制御部115は、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとを異なる塔内設備Xと見なして報知内容を決定する(S12)。
【0120】
また、間隔Zが所定の設備間距離以内であっても、第1塔内設備XAの部分領域Fと第2塔内設備XBの部分領域Fとが一致しない場合(S9でYES)、または間隔Zが所定の設備間距離以内であり、第1塔内設備XAの部分領域Fと第2塔内設備XBの部分領域Fとが一致しても、乗りかご24が停止している状態である場合(S10でYES)も、報知制御部115は、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとを異なる塔内設備Xと見なして報知内容を決定する(S12)。
【0121】
S11またはS12の後、報知制御部115は、決定した内容の報知を行うよう制御を行う(S13:報知制御ステップ)。ここで、報知制御部115は、設備接近距離が所定値以内となった場合に、保守作業員Cに対して塔内設備Xの接近を報知する制御を行う。これにより、報知制御部115は、設備接近距離が所定値以内となった場合に、保守作業員Cに対して塔内設備Xの接近を報知する制御を行うことができる。
【0122】
例えば、間隔Zが所定の設備間距離以内であり、部分領域が一致し、かつ乗りかご24が移動中である場合、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとが1つの塔内設備Xと見なされる。これにより、報知制御部115は、設備接近距離が所定の報知距離以内となった第1塔内設備XAの次に乗りかご24に接近する第2塔内設備XBと、第1塔内設備XAとの高さ方向の間隔Zが所定の設備間距離以内である場合に、第1塔内設備XAに対する接近の報知期間と、第2塔内設備XBに対する接近の報知期間との間も報知を継続することができる。
【0123】
<報知制御装置1が行う処理の流れの一例>
図9は、報知制御部115が報知の内容を決定し、報知制御を行う処理(報知制御ステップ)の流れの一例を示すフローチャートである。以下、
図9を用いて、報知制御部115が報知の内容を決定し、報知制御を行なう処理(S5、S11~S13)の一例について説明する。
【0124】
まず、報知制御部115は、塔内設備Xが報知の対象となる範囲まで接近しているかを判定する。具体的には、報知制御部115は、第1設備接近距離が第1報知距離D1以内であるか否かを判定する(S21)。
【0125】
第1設備接近距離が第1報知距離D1以内である場合(S21でYES)、報知制御部115は、第1設備接近距離が第2報知距離D2以内であるか否かを判定する(S22)。
【0126】
S22でNOの場合、すなわち第1設備接近距離が第1報知距離D1以内であり、かつ第2報知距離D2よりも大きい場合、塔内設備Xは、警告範囲A1内に存在し、注意範囲A2には進入していない。この場合、報知制御部115は、塔内設備Xの部分領域Fを特定する。報知制御部115は、特定した塔内設備Xの部分領域Fに基づき報知部25を制御し、塔内設備Xが接近することおよび塔内設備Xが接近する方向を示す警告報知を行わせる(S23)。
【0127】
S22でYESの場合、報知制御部115は、第2設備接近距離が第3報知距離D3以内であるか否かを判定する(S24)。
【0128】
S24でNOの場合、すなわち第1設備接近距離が第2報知距離D2以内であり、かつ第2設備接近距離が第3報知距離D3よりも大きい場合、塔内設備Xは、注意範囲A2内に存在し、注意範囲A2から退出していない。この場合、報知制御部115は、塔内設備Xの部分領域Fを特定する。報知制御部115は、特定した塔内設備Xの部分領域Fに基づき報知部25を制御し、塔内設備Xが保守作業員Cの付近を通過していることおよび塔内設備Xが通過している方向を示す注意報知を行わせる(S25)。
【0129】
第1設備接近距離が第1報知距離D1よりも大きい場合(S21でNO)、または第2設備接近距離が第3報知距離D3以内である場合(S24でYES)、塔内設備Xが報知を行う対象となる範囲(警告範囲A1および注意範囲A2)には存在していない。この場合、報知制御部115は、報知部25を制御し、システム稼動通知を行わせる。
【0130】
以上のようにして、報知制御部115は、乗りかご24に対する塔内設備Xの位置に応じた報知を行うよう報知部25を制御することができる。ここで、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとが所定の設備間距離以内の間隔Zを有する場合、報知制御部115は、第1塔内設備XAと第2塔内設備XBとを1つの塔内設備Xと見なして報知内容を決定する。これにより、第1塔内設備XAに対する接近の報知期間と、第2塔内設備XBに対する接近の報知期間との間も報知を継続することができる。
【0131】
<変形例>
上述の実施形態では、接近認知部112が、塔内設備Xの位置を示す情報を、設備位置データベース121から取得する構成を例に挙げて説明したが、塔内設備Xの位置を特定する方法はこれに限られない。例えば、塔内設備Xの位置は、該塔内設備Xの位置を検知可能なセンサによって検知されてもよい。
【0132】
図10は、変形例に係る報知制御システム100Aの構成の一例を示すブロック図である。報知制御システム100Aでは、エレベータ2Aが、乗りかご24に接近する塔内設備Xの存在および該塔内設備Xの位置を検知可能なセンサ26を備えている。エレベータ2Aの制御部22は、センサ26が検知した塔内設備Xの位置を示す情報を報知制御装置1Aに送信する。報知制御装置1Aの接近認知部112Aは、センサ26が検知した塔内設備Xの位置を示す情報に基づき、塔内設備Xの設備接近距離を認知する。
【0133】
〔ソフトウェアによる実現例〕
報知制御装置1、1A(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部11、11Aに含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0134】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0135】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0136】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0137】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0138】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る報知制御装置は、塔内におけるエレベータの乗りかごの外側上部で保守作業員が作業する保守作業空間の高さ位置と、前記乗りかごの外側上部で保守作業員が作業する保守作業空間に近接する可能性がある塔内設備の高さ位置との距離である設備接近距離を認知する接近認知部と、前記設備接近距離が所定値以内となった場合に、前記保守作業員に対して前記塔内設備の接近を報知する制御を行う報知制御部と、を備え、前記報知制御部は、前記設備接近距離が所定値以内となった第1塔内設備の次に前記乗りかごに接近する第2塔内設備と、前記第1塔内設備との高さ方向の間隔が所定の設備間距離以内である場合に、前記第1塔内設備に対する接近の報知期間と、前記第2塔内設備に対する接近の報知期間との間も報知を継続する。
【0139】
本発明の態様2にかかる報知制御装置は、上記態様1において、前記報知制御部は、前記塔内設備の水平面に対する投影位置が存在しうる領域を複数の部分領域に分割するとともに、前記第1塔内設備の前記投影位置を含む前記部分領域と、前記第2塔内設備の前記投影位置を含む前記部分領域とが異なる場合、前記第1塔内設備と前記第2塔内設備との高さ方向の間隔が前記設備間距離以内であっても、前記第1塔内設備に対する接近の報知期間と、前記第2塔内設備に対する接近の報知期間との間は報知を継続しなくてもよい。
【0140】
本発明の態様3にかかる報知制御装置は、上記態様1または2において、前記報知制御部は、前記第1塔内設備と前記第2塔内設備との高さ方向の間隔が前記所定の設備間距離以内であっても、前記第1塔内設備に対する接近の報知期間と、前記第2塔内設備に対する接近の報知期間との間で前記乗りかごの移動が停止された場合には、報知を継続しなくてもよい。
【0141】
本発明の態様4にかかる報知制御装置は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記報知制御部は、前記設備接近距離が第1報知距離以内でかつ第2報知距離より大きい場合での第1報知内容と、前記設備接近距離が第2報知距離以内でかつ第3報知距離より大きい場合での第2報知内容と、を互いに異ならせてもよい。
【0142】
本発明の態様5にかかる報知制御装置は、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記報知制御部は、前記塔内設備の水平面に対する投影位置が存在しうる領域を複数の部分領域に分割するとともに、前記塔内設備の前記投影位置を含む前記部分領域に応じて、報知内容を異ならせてもよい。
【0143】
本発明の態様6に係る報知制御方法は、塔内におけるエレベータの乗りかごの高さ位置と、前記乗りかごの外側上部で保守作業員が作業する保守作業空間に近接する可能性がある塔内設備の高さ位置との距離である設備接近距離を認知する接近認知ステップと、前記設備接近距離が所定値以内となった場合に、前記保守作業員に対して前記塔内設備の接近を報知する制御を行う報知制御ステップと、を含み、前記報知制御ステップは、前記設備接近距離が所定の報知距離以内となった第1塔内設備の次に前記乗りかごに接近する第2塔内設備と、前記第1塔内設備との高さ方向の間隔が所定の設備間距離以内である場合に、前記第1塔内設備に対する接近の報知期間と、前記第2塔内設備に対する接近の報知期間との間も報知を継続する。
【0144】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0145】
1、1A 報知制御装置
2、2A エレベータ
24 乗りかご
112、112A 接近認知部
115 報知制御部
100、100A 報知制御システム
C 保守作業員
D1 第1報知距離
D2 第2報知距離
D3 第3報知距離
F 部分領域
X 塔内設備
XA 第1塔内設備
XB 第2塔内設備
Z 間隔