(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128859
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】接合体、接合体を製造する方法および接合体を製造する装置
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
B23K20/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038120
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】505295684
【氏名又は名称】ヒノデホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】長▲崎▼ 怜
(72)【発明者】
【氏名】黒川 貴大
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 信博
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA04
4E167AA06
4E167AA29
4E167AB00
4E167AD07
4E167BF02
(57)【要約】
【課題】接合体全体の強度特性を確保することができる、鋳鉄とアルミニウム合金との接合体を提供する。
【解決手段】接合体1は、鋳鉄製立体状部10とアルミニウム合金製立体状部20とが摩擦圧接により接合されることにより形成される。鋳鉄製立体状部10は、金属組織中に複数の黒鉛粒子15が点在する本体部11と、複数の黒鉛粒子15を覆うように本体部11の表層の一部に形成されたコーティング層12とを含む。鋳鉄製立体状部10のコーティング層12は、硬質脆性特性を有するセメンタイト組織であって、摩擦圧接により組織状態が変化することなく硬質脆性特性を維持した状態で残存するセメンタイト組織を含む。アルミニウム合金製立体状部20は、コーティング層12の層厚方向の端面に接合された接合面32を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳鉄製立体状部とアルミニウム合金製立体状部とが摩擦圧接により接合された接合体であって、
前記鋳鉄製立体状部は、金属組織中に複数の黒鉛粒子が点在する本体部と、
前記複数の黒鉛粒子を覆うように前記本体部の表層の一部に形成されたコーティング層とを含み、
前記コーティング層は、硬質脆性特性を有するセメンタイト組織であって、摩擦圧接により組織状態が変化することなく前記硬質脆性特性を維持した状態で残存するセメンタイト組織を含み、
前記アルミニウム合金製立体状部は、前記コーティング層の層厚方向の端面に接合された接合面を含む、接合体。
【請求項2】
前記コーティング層は、前記端面の外周縁を規定する円形状の外周縁部と、
前記外周縁部から前記層厚方向に延びる外周側面部とを含む、請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記外周側面部は、外周側に向けて露出する外周側露出側面部を含む、請求項2に記載の接合体。
【請求項4】
前記コーティング層は、前記端面の内周縁を規定する円形状の内周縁部と、
前記内周縁部から前記層厚方向に延びる内周側面部とを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の接合体。
【請求項5】
前記内周側面部は、内周側に向けて露出する内周側露出側面部を含む、請求項4に記載の接合体。
【請求項6】
金属組織中に複数の黒鉛粒子が点在する本体部を有する鋳鉄製立体状部と、アルミニウム合金製立体状部との接合体を製造する方法であって、
前記複数の黒鉛粒子を覆うように前記本体部の表層の一部に、硬質脆性特性を有するセメンタイト組織を含むコーティング層を形成することと、
前記セメンタイト組織が組織状態を変化させることなく前記硬質脆性特性を維持した状態で残存するように、前記コーティング層の層厚方向の端面と前記アルミニウム合金製立体状部とを摩擦圧接することとを含む、方法。
【請求項7】
前記コーティング層を形成することは、前記端面の外周縁を規定する円形状の外周縁部を形成することと、
前記外周縁部から前記層厚方向に延びる外周側面部を形成することとを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記外周側面部を形成することは、外周側に向けて露出する外周側露出側面部を形成することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティング層を形成することは、前記端面の内周縁を規定する円形状の内周縁部を形成することと、
前記内周縁部から前記層厚方向に延びる内周側面部を形成することとを含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記内周側面部を形成することは、内周側に向けて露出する内周側露出側面部を形成することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
金属組織中に複数の黒鉛粒子が点在する本体部を有する鋳鉄製立体状部と、アルミニウム合金製立体状部との接合体を製造する装置であって、
前記複数の黒鉛粒子を覆うように前記本体部の表層の一部に、硬質脆性特性を有するセメンタイト組織を含むコーティング層を形成するユニットを含む、装置。
【請求項12】
前記セメンタイト組織が組織状態を変化させることなく前記硬質脆性特性を維持した状態で残存するように、前記コーティング層の層厚方向の端面と前記アルミニウム合金製立体状部とを摩擦圧接するユニットをさらに含む、請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体、接合体を製造する方法および接合体を製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、耐熱性の補強部材を効率的かつ強固にピストン本体の上部に結合固着するとともに、必要に応じて内部に冷却用空洞を形成するようにした内燃機関用ピストンとその製造方法とを提供することを目的に、例えばニレジスト鋳鉄から成る耐熱性の補強部材をピストン本体とは別体に作製しておき、このような補強部材を摩擦圧接の方法によってアルミニウム合金から成るピストン本体の上部に結合固着することと、このときにピストン本体の上部側に設けられている周溝を補強部材によって閉塞することにより冷却用空洞を形成することとが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鋳鉄製立体状部とアルミニウム合金製立体状部との摩擦圧接において、接合体の強度特性を確保することは重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、鋳鉄製立体状部とアルミニウム合金製立体状部とが摩擦圧接により接合された接合体である。鋳鉄製立体状部は、金属組織中に複数の黒鉛粒子が点在する本体部と、複数の黒鉛粒子を覆うように本体部の表層の一部に形成されたコーティング層とを含む。コーティング層は、硬質脆性特性を有するセメンタイト組織であって、摩擦圧接により組織状態が変化することなく硬質脆性特性を維持した状態で残存するセメンタイト組織を含む。アルミニウム合金製立体状部は、コーティング層の層厚方向の端面に接合された接合面を含む。
【0006】
この接合体においては、鋳鉄製立体状部における本体部の表層の一部にコーティング層が形成されており、このコーティング層のセメンタイト組織が、摩擦圧接により組織状態を変化させることなく硬質脆性特性を維持した状態で残存している。このため、鋳鉄製立体状部の金属組織中に点在する複数の黒鉛粒子は、摩擦圧接中はもとより摩擦圧接後においても、硬質なコーティング層により覆われた状態で保護されている。すなわち、鋳鉄製立体状部の黒鉛粒子が、硬質なコーティング層を介して接合面に対して隔離されているため、黒鉛粒子が接合面に混入している確率を低減することができる。その結果、両立体状部の接合強度の低下を抑制することができる。さらに、鋳鉄製立体状部の黒鉛粒子が、硬質なコーティング層を介して接合面に対して隔離されているため、摩擦圧接に伴う熱や圧力が黒鉛粒子に作用している確率を低減することができる。その結果、黒鉛粒子の形状、大きさ、分布状態等(以下「黒鉛形態」という。)の変化に起因する鋳鉄製立体状部の強度特性の低下を抑制することができる。したがって、この接合体によれば、鋳鉄製立体状部とアルミニウム合金製立体状部との接合面のみならず、母材となる鋳鉄製立体状部も含めた、接合体全体の強度特性を確保することができる。
【0007】
コーティング層は、端面の外周縁を規定する円形状の外周縁部と、外周縁部から層厚方向に延びる外周側面部とを含むことが好ましい。コーティング層の端面の外周縁が円形状であるため、典型的には、鋳鉄製立体状部と中実状のアルミニウム合金製立体状部との摩擦圧接において、接合体全体の強度特性を確保することができる。
【0008】
外周側面部は、外周側に向けて露出する外周側露出側面部を含むことが好ましい。硬質なコーティング層を外周側に向けて露出させることができるため、黒鉛粒子がコーティング層の外周側を経由して接合面に混入している確率を低減することができる。したがって、両立体状部の接合強度の低下を一層抑制することができる。
【0009】
コーティング層は、端面の内周縁を規定する円形状の内周縁部と、内周縁部から層厚方向に延びる内周側面部とを含むことが好ましい。コーティング層の端面の内周縁が円形状であるため、典型的には、鋳鉄製立体状部と中空状のアルミニウム合金製立体状部との摩擦圧接において、接合体全体の強度特性を確保することができる。
【0010】
内周側面部は、内周側に向けて露出する内周側露出側面部を含むことが好ましい。硬質なコーティング層を内周側に向けて露出させることができるため、黒鉛粒子がコーティング層の内周側を経由して接合面に混入している確率を低減することができる。したがって、両立体状部の接合強度の低下を一層抑制することができる。
【0011】
本発明の他の態様は、金属組織中に複数の黒鉛粒子が点在する本体部を有する鋳鉄製立体状部と、アルミニウム合金製立体状部との接合体を製造する方法である。当該方法は、複数の黒鉛粒子を覆うように本体部の表層の一部に、硬質脆性特性を有するセメンタイト組織を含むコーティング層を形成することと、セメンタイト組織が組織状態を変化させることなく硬質脆性特性を維持した状態で残存するように、コーティング層の層厚方向の端面とアルミニウム合金製立体状部とを摩擦圧接することとを含む。
【0012】
コーティング層を形成することは、端面の外周縁を規定する円形状の外周縁部を形成することと、外周縁部から層厚方向に延びる外周側面部を形成することとを含むことが好ましい。外周側面部を形成することは、外周側に向けて露出する外周側露出側面部を形成することを含むことが好ましい。コーティング層を形成することは、端面の内周縁を規定する円形状の内周縁部を形成することと、内周縁部から層厚方向に延びる内周側面部を形成することとを含むことが好ましい。内周側面部を形成することは、内周側に向けて露出する内周側露出側面部を形成することを含むことが好ましい。
【0013】
本発明の他の態様は、金属組織中に複数の黒鉛粒子が点在する本体部を有する鋳鉄製立体状部と、アルミニウム合金製立体状部との接合体を製造する装置である。当該装置は、複数の黒鉛粒子を覆うように本体部の表層の一部に、硬質脆性特性を有するセメンタイト組織を含むコーティング層を形成するユニットを含む。当該装置は、セメンタイト組織が組織状態を変化させることなく硬質脆性特性を維持した状態で残存するように、コーティング層の層厚方向の端面とアルミニウム合金製立体状部とを摩擦圧接するユニットをさらに含むことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態における接合体を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す接合体のうち鋳鉄製立体状部の一部のみを拡大して示す斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、
図1に示す接合体を製造する工程を説明するための縦断面図である。
【
図4B】
図4Bは、
図1に示す接合体を製造する工程を説明するための縦断面図である。
【
図4C】
図4Cは、
図1に示す接合体を製造する工程を説明するための縦断面図である。
【
図4D】
図4Dは、
図1に示す接合体を製造する工程を説明するための縦断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態における接合体を模式的に示す縦断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施形態における接合体を模式的に示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第4の実施形態における接合体を模式的に示す縦断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第5の実施形態における接合体を模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明に係る接合体を製造する装置の一例を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る接合体、接合体を製造する方法(製造方法)および接合体を製造する装置(製造装置)の実施形態について、
図1から
図9を参照して詳細に説明する。
図1から
図9において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図9においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0016】
図1は本発明の第1の実施形態における接合体1を模式的に示す斜視図、
図2は縦断面図である。
図1および
図2に示すように、本実施形態の接合体1は、鋳鉄製立体状部10と、アルミニウム合金製立体状部20と、鋳鉄製立体状部10とアルミニウム合金製立体状部20とが摩擦圧接されることによりこれらの立体状部10,20の境界面に形成された接合界面30とを含むものである。接合界面30は、鋳鉄製立体状部10の側の接合面31と、この接合面31と固相接合(固相拡散接合)されたアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32とから構成されている。なお、本実施形態における鋳鉄製立体状部10は、例えば、材料として球状黒鉛鋳鉄を用いて鋳造されたものである。
【0017】
鋳鉄製立体状部10は、本体部11と、本体部11の表層の一部に形成されたコーティング層12とを含んでいる。本体部11は、円柱状の台座部13と、台座部13から軸方向に延びる円筒状の柱部14とを含んでいる。台座部13の外径は柱部14の外径よりも大きい。
図2に示すように、鋳鉄製立体状部10の本体部11の金属組織中には、球状黒鉛鋳鉄の成分元素である炭素(C)が黒鉛として晶出した複数の黒鉛粒子15が点在している。
【0018】
図3は、
図1に示す接合体1のうち鋳鉄製立体状部10の一部のみを拡大して示す斜視図である。
図3においては、接合体1のアルミニウム合金製立体状部20を点線にて示している。
図3に示すように、鋳鉄製立体状部10のコーティング層12は、柱部14の表層の一部に円環をなすように形成されており、本体部11の柱部14における金属組織中の黒鉛粒子15(
図2参照)を覆っている。このコーティング層12は、摩擦圧接する前の本体部11の柱部14の表層の一部を、例えばレーザを照射して加熱することにより、硬質脆性特性を有するセメンタイト組織(Fe
3C)とよばれる鉄と炭素の化合物に変化させることにより形成することができる。例えば、コーティング層12の層厚方向における厚さは10mm以下である。なお、鋳鉄製立体状部10のコーティング層12は、本体部11の柱部14の表層の一部に限定して形成している。これにより、アルミニウム合金製立体状部20との摩擦圧接に必要な箇所のみにコーティング層12を確保しつつ、硬質脆性特性を有するコーティング層12を形成する範囲を最小限に留めている。したがって、母材となる鋳鉄製立体状部10の強度低下を抑制することができる。
【0019】
図3に示すように、コーティング層12は、上述した接合界面30を構成する鋳鉄製立体状部10の側の接合面31と、接合面31の外周縁を規定する円形状の外周縁部12Aと、この外周縁部12Aから層厚方向に延びる外周側面部12Bと、接合面31の内周縁を規定する円形状の内周縁部12Cと、内周縁部12Cから層厚方向に延びる内周側面部12Dとを含んでいる。本実施形態では、コーティング層12の外周側面部12Bは、全面が外周側に向けて露出する外周側露出側面部16となっている。また、コーティング層12の内周側面部12Dは、全面が内周側に向けて露出する内周側露出側面部17となっている。
【0020】
本実施形態におけるアルミニウム合金製立体状部20は、円筒状の部材であり、上述した接合界面30を構成する鋳鉄製立体状部10の側の接合面31に摩擦圧接により固相接合(固相拡散接合)されている。アルミニウム合金製立体状部20を鋳鉄製立体状部10に摩擦圧接する過程において上述したコーティング層12のセメンタイト組織は、摩擦圧接により組織状態を変化させることなく、硬質脆性特性を維持した状態で残存している。このため、鋳鉄製立体状部10の柱部14の金属組織中に点在する複数の黒鉛粒子15は、摩擦圧接中はもとより摩擦圧接後においても硬質なコーティング層12により覆われた状態で保護されている。
【0021】
このように、本実施形態の接合体1においては、接合強度を低下させる要因の1つと言われている鋳鉄製立体状部10の本体部11中の黒鉛粒子15が、硬質なコーティング層12を介してアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32から隔離されている。したがって、鋳鉄製立体状部10の本体部11中の黒鉛粒子15がアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32、ひいては接合界面30に混入している確率を低減することができる。その結果、鋳鉄製立体状部10とアルミニウム合金製立体状部20の接合強度の低下を抑制することができるため、接合体1の強度特性を良好に維持することができる。
【0022】
さらに、鋳鉄製立体状部10の本体部11中の黒鉛粒子15が、硬質なコーティング層12を介してアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32から隔離されているため、摩擦圧接に伴う熱や圧力が黒鉛粒子15に作用している確率を低減することができる。その結果、黒鉛粒子15の黒鉛形態の変化に起因する鋳鉄製立体状部10の強度特性の低下を抑制することができるため、接合体1の強度特性を良好に維持することができる。
【0023】
このように、本実施形態の接合体1によれば、鋳鉄製立体状部10とアルミニウム合金製立体状部20との接合界面30だけではなく、母材となる鋳鉄製立体状部10を含めた、接合体1全体の強度特性を確保することができる。
【0024】
また、本実施形態では、硬質なコーティング層12の外周側面部12Bは、外周側に向けて露出する外周側露出側面部16を含んでいるため、鋳鉄製立体状部10の本体部11中の黒鉛粒子15がコーティング層12の外周側を経由してアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32、ひいては接合界面30に混入している確率を低減することができる。同様に、硬質なコーティング層12の内周側面部12Dは、内周側に向けて露出する内周側露出側面部17を含んでいるため、鋳鉄製立体状部10の本体部11中の黒鉛粒子15がコーティング層12の内周側を経由してアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32、ひいては接合界面30に混入している確率を低減することができる。この結果、鋳鉄製立体状部10とアルミニウム合金製立体状部20の接合強度の低下を抑制することができるため、接合体1の強度特性を良好に維持することができる。
【0025】
次に、このような接合体1を製造する方法について説明する。本実施形態における接合体1の製造に際しては、まず、
図4Aに示すように、円柱状の鋳鉄部材110を用意する。この鋳鉄部材110は、例えば、材料として球状黒鉛鋳鉄を用いて鋳造されたもの(素材/鋳放し材)である。なお、最初から円柱状に鋳造してもよいし、鋳造された素材を切削加工により円柱状に形成してもよい。この鋳鉄部材110の金属組織中には、球状黒鉛鋳鉄の成分元素である炭素(C)が黒鉛として晶出した複数の黒鉛粒子15が点在している。
【0026】
そして、
図4Bに示すように、鋳鉄部材110の表層110Aの一部の領域を加熱し、コーティング層12を形成する。このコーティング層12は、硬質脆性特性を有するセメンタイト組織を含んでいる。鋳鉄部材110の表層110Aの一部の領域を加熱する方法としては、例えば、レーザを照射して当該領域を加熱するなどの方法が挙げられる。レーザであれば必要最小限の箇所のみを加熱することができ、硬くて脆いセメンタイト組織を鋳鉄部材110の表層110Aの一部の領域のみに形成することができるため、金属組織の変化による鋳鉄部材110の強度低下を抑制することができる。
図4Bに示す例では、鋳鉄部材110の表層110Aの一部の領域にレーザを照射し、円環状のコーティング層12を形成している。このコーティング層12は、層厚方向の端面131の外周縁を規定する円形状の外周縁部112Aと、外周縁部112Aから層厚方向に延びる外周側面部112Bと、層厚方向の端面131の内周縁を規定する円形状の内周縁部112Cと、内周縁部112Cから層厚方向に延びる内周側面部112Dとを形成している。なお、
図4Bに示す例では、コーティング層12を形成する方法としてレーザを用いているが、これに限定されず、鋳鉄部材110の表層110Aの一部の領域に、硬質脆性特性を有するセメンタイト組織を含むように形成できる方法であれば、他の方法を用いてもよい。
【0027】
次に、
図4Cに示すように、鋳鉄部材110の一部を切削加工装置(例えば、エンドミルなどの切削工具を備えたフライス盤や旋盤)などを用いて切削する。
図4Cに示す例では、コーティング層12の外周側に位置する鋳鉄部材110の部分151を、鋳鉄部材110の表層110Aから軸方向に沿って所定の深さまで切削している。このとき、コーティング層12の外周側の一部112Pを一緒に除去し、コーティング層の外周側面部の全面が外周側に向けて露出する外周側露出側面部16を形成している。また、
図4Cに示す例では、コーティング層12の内周側に位置する鋳鉄部材110の部分152を、鋳鉄部材110の表層110Aから軸方向に沿って所定の深さまで切削している。このとき、コーティング層12の内周側の一部112Qを一緒に除去し、コーティング層の内周側面部の全面が内周側に向けて露出する内周側露出側面部17を形成している。
【0028】
このように、鋳鉄部材110の一部を切削することで、円柱状の台座部13と円筒状の柱部14とを含む本体部11と、柱部14の表層の一部に円環状に形成されたコーティング層12とを有する、接合前の鋳鉄製立体状部10が得られる。
【0029】
なお、鋳鉄部材110の一部を切削する際に、コーティング層12の外周側の一部112Pを除去することにより、コーティング層12の層厚方向の端面131の外周縁を円形状の外周縁部12Aにより規定することができる。
【0030】
また、コーティング層12の内周側の一部112Qを除去することにより、コーティング層12の層厚方向の端面131の内周縁を円形状の内周縁部12Cにより規定することができる。
【0031】
なお、
図4Cに示す例では、コーティング層12の外周側の一部112P、内周側の一部112Qを除去し、それぞれ外周側露出側面部16、内周側露出側面部17を形成したが、コーティング層12の外周側の一部112P、内周側の一部112Qを除去せずに、コーティング層12の外周側面部112B(
図4B参照)、コーティング層12の内周側面部112D(
図4B参照)が露出するように切削して、外周側露出側面部16、内周側露出側面部17を形成するようにしてもよい。また、
図4Cに示す例では、コーティング層12の外周側面部の全面が外周側に向けて露出する外周側露出側面部16と、コーティング層12の内周側面部の全面が内周側に向けて露出する内周側露出側面部17を形成したが、外周側側面部または内周側側面部の一部の面だけを露出するようにしてもよい。また、鋳鉄部材110の表層110Aの一部に形成したコーティング層12の層厚方向の端面131が平滑ではない場合、必要に応じてコーティング層12の層厚方向の端面131から層厚方向に沿ってコーティング層12の一部を切削し、層厚方向の端面を形成するようにしてもよい。
【0032】
次に、
図4Dに示すように、円筒状のアルミニウム合金製立体状部20を用意する。この接合前のアルミニウム合金製立体状部20の軸方向の端面132と、接合前の鋳鉄製立体状部10のコーティング層12の層厚方向の端面131とを接触させ、アルミニウム合金製立体状部20と鋳鉄製立体状部10とを摩擦圧接により固相接合(固相拡散接合)し、
図2に示す接合体1を作製する。
【0033】
この摩擦圧接によって、接合前の鋳鉄製立体状部10におけるコーティング層12の端面131が接合体1における鋳鉄製立体状部10の側の接合面31となり、接合前のアルミニウム合金製立体状部20の軸方向の端面132が接合体1におけるアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32となる。また、接合前のコーティング層12の外周側露出側面部16が接合体1におけるコーティング層12の外周側露出側面部16となり、接合前のコーティング層12の内周側露出側面部17が接合体1におけるコーティング層12の内周側露出側面部17となる。なお、本例では、接合前の鋳鉄製立体状部10におけるコーティング層12の層厚方向の端面131の組織状態はそのまま変化することなく鋳鉄製立体状部10の側の接合面31となり、接合前のアルミニウム合金製立体状部20の端面132が摩擦圧接により変化してアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32となる。
【0034】
本製造方法においては、鋳鉄製立体状部10とアルミニウム合金製立体状部20とを摩擦圧接する際に、接合体を製造する装置の鋳鉄製立体状部10またはアルミニウム合金製立体状部20を回転可能に保持する回転ホルダの回転数や、鋳鉄製立体状部10とアルミニウム合金製立体状部20とを押し付け合う圧力や、摩擦圧接する時間などを制御し、両立体状部10,20が接触する箇所の温度が200℃から400℃となるようにしている。このように、鋳鉄製立体状部10とアルミニウム合金製立体状部20とが接触する箇所の温度を、鋳鉄製立体状部10の融点(約1200℃)およびアルミニウム合金製立体状部20の融点(約600℃)よりも低くすることにより、鋳鉄製立体状部10よりも低融点のアルミニウム合金製立体状部20が摩擦圧接の際に大きく変形したり、溶けて飛び散ったりすることを防止することができる。これにより、鋳鉄製立体状部10の側の接合面31とアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32とが固相接合された接合界面30を形成することができる。
【0035】
また、鋳鉄製立体状部10とアルミニウム合金製立体状部20とが接触する箇所の温度を、鋳鉄製立体状部10の融点(約1200℃)およびアルミニウム合金製立体状部20の融点(約600℃)よりも低くすることにより、鋳鉄製立体状部10のコーティング層12のセメンタイト組織の組織状態は、摩擦圧接により組織状態を変化させることなく硬質脆性特性を維持した状態で残存している。このため、鋳鉄製立体状部10の本体部11の金属組織中に点在する複数の黒鉛粒子15は、摩擦圧接中はもとより摩擦圧接後においても、硬質なコーティング層12により覆われた状態で保護されている。すなわち、鋳鉄製立体状部10の本体部11の黒鉛粒子15が、硬質なコーティング層12を介してアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32に対して隔離されているため、黒鉛粒子15がアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32、ひいては接合界面30に混入している確率を低減することができる。その結果、両立体状部10,20の接合強度の低下を抑制することができる。さらに、鋳鉄製立体状部10の本体部11の黒鉛粒子15が、硬質なコーティング層12を介してアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32に対して隔離されているため、摩擦圧接に伴う熱や圧力が黒鉛粒子15に作用している確率を低減することができる。その結果、黒鉛形態の変化に起因する鋳鉄製立体状部10の強度特性の低下を抑制することができる。したがって、この接合体によれば、鋳鉄製立体状部10とアルミニウム合金製立体状部20との接合界面30のみならず、母材となる鋳鉄製立体状部10も含めた、接合体全体の強度特性を確保することができる。
【0036】
また、本製造方法においては、
図4Cに示すように、摩擦圧接に先立ち、コーティング層12の外周側に位置する鋳鉄部材110の部分151を切削して、コーティング層12の外側の一部112Pを除去することにより、外周側に向けて露出する外周側露出側面部16を形成しているので、硬質なコーティング層12を外周側に向けて露出させることができる。このため、摩擦圧接中に鋳鉄製立体状部10の本体部11中の黒鉛粒子15がコーティング層12の外周側を経由してアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32、ひいては接合界面30に混入する確率を低減することができる。また、摩擦圧接に先立ち、コーティング層12の内周側に位置する鋳鉄部材110の部分152を切削して、コーティング層12の外側の一部112Qを除去することにより、内周側に向けて露出する内周側露出側面部17を形成しているので、硬質なコーティング層12を内周側に向けて露出させることができる。このため、摩擦圧接中に鋳鉄製立体状部10の本体部11中の黒鉛粒子15がコーティング層12の内周側を経由してアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32、ひいては接合界面30に混入する確率を低減することができる。この結果、鋳鉄製立体状部10とアルミニウム合金製立体状部20の接合強度の低下を抑制することができ、良好な強度特性を有する接合体を得ることができる。
【0037】
図5は、本発明の第2の実施形態における接合体201を模式的に示す縦断面図である。本実施形態の接合体201は、鋳鉄製立体状部210と、アルミニウム合金製立体状部20と、鋳鉄製立体状部210とアルミニウム合金製立体状部20とが摩擦圧接されることによりこれらの立体状部210,20の境界面に形成された接合界面30とを含むものである。この接合体201と本発明の第1の実施形態における接合体1とは、鋳鉄製立体状部の形状が異なっている。本発明の第2の実施形態の鋳鉄製立体状部210は、本体部211と、本体部211の表層の一部に形成されたコーティング層12とを含んでいる。本体部211は、円柱状の台座部213と、台座部213から軸方向に延びる円筒状の柱部214とを含んでいる。このような鋳鉄製立体状部210は、接合体201を製造する過程において、
図4Bに示す鋳鉄部材110を切削する際に、コーティング層12の外周側の部分151(
図4C参照)を除去せずに、コーティング層12の内周側の部分152(
図4C参照)のみを除去することで得られる。この場合においても、硬質なコーティング層12(内周側露出側面部17)を内周側に向けて露出させることができるため、摩擦圧接により鋳鉄製立体状部210の本体部211中の黒鉛粒子15がコーティング層12の内周側を経由してアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32、ひいては接合界面30に混入している確率を低減することができる。
【0038】
図6は、本発明の第3の実施形態における接合体301を模式的に示す縦断面図である。本実施形態の接合体301は、鋳鉄製立体状部310と、アルミニウム合金製立体状部20と、鋳鉄製立体状部310とアルミニウム合金製立体状部20とが摩擦圧接されることによりこれらの立体状部310,20の境界面に形成された接合界面30とを含むものである。この接合体301と本発明の第1の実施形態における接合体1とは、鋳鉄製立体状部の形状が異なっている。本発明の第3の実施形態の鋳鉄製立体状部310は、本体部311と、本体部311の表層の一部に形成されたコーティング層12とを含んでいる。本体部311は、円柱状の台座部313と、台座部313から軸方向に延びる円柱状の柱部314とを含んでいる。このような鋳鉄製立体状部310は、接合体301を製造する過程において、
図4Bに示す鋳鉄部材110を切削する際に、コーティング層12の内周側の部分152(
図4C参照)を除去せずに、コーティング層12の外周側の部分151(
図4C参照)のみを除去することで得られる。したがって、本発明の第3の実施形態の鋳鉄製立体状部310においては、円柱状の柱部314が形成されている。この場合においても、硬質なコーティング層12(外周側露出側面部16)を外周側に向けて露出させることができるため、摩擦圧接により鋳鉄製立体状部310の本体部311中の黒鉛粒子15がコーティング層12の外周側を経由してアルミニウム合金製立体状部20の側の接合面32、ひいては接合界面30に混入している確率を低減することができる。
【0039】
また、本発明の第3の実施形態における接合体301におけるコーティング層12は、鋳鉄製立体状部310の柱部314の表層の一部に円環状に形成されているが、例えば
図7に示すように、円形状のコーティング層312を鋳鉄製立体状部310Aの柱部314の表層全体に形成してもよい。このような円形状のコーティング層312は、典型的には、中実状のアルミニウム合金製立体状部20Aを鋳鉄製立体状部310Aに摩擦圧接する際に利用することができ、円形状のコーティング層312を介して中実状のアルミニウム合金製立体状部20Aと鋳鉄製立体状部310Aとを摩擦圧接することで強度特性を確保することが可能である。
【0040】
また、上述した実施形態における接合体1,201,301では、鋳鉄製立体状部10,210,310,310Aが円筒状または円柱状の柱部14,214,314を含むものとして説明したが、鋳鉄製立体状部10,210,310,310Aの形状はこれらに限られるものではない。例えば、
図8に示すように、直方体状の鋳鉄製立体状部410の本体部411の表層の一部に円形状のコーティング層412を形成してもよい。あるいは、このような直方体状の鋳鉄製立体状部410の本体部411の表層の一部に円環状のコーティング層を形成してもよい。
【0041】
図9は、本発明に係る接合体を製造する装置500の一例を模式的に示すブロック図である。
図9に示すように、この装置500は、上述した鋳鉄部材110を保持するホルダ520と、レール530上を滑動可能なベース540とを備えている。ベース540上には、鋳鉄部材110の金属組織中に点在している複数の黒鉛粒子を覆うように鋳鉄部材110の表層110Aの一部に、硬質脆性特性を有するセメンタイト組織を含むコーティング層を形成する第1のユニット510と、セメンタイト組織が組織状態を変化させることなく硬質脆性特性を維持した状態で残存するように、接合前の鋳鉄部材110の表層110Aの一部に形成したコーティング層の層厚方向の端面と、接合前のアルミニウム合金製立体状部20の端面132とを摩擦圧接する第2のユニット570とが搭載されている。第1のユニット510は、ホルダ520に保持された鋳鉄部材110の表層110Aの一部の領域の組織状態を変化させる組織状態変化部550と、ホルダ520に保持された鋳鉄部材110を切削する切削部560とを含んでいる。図示はしないが、ベース540上の各ユニット510,570は、ホルダ520に保持された鋳鉄部材110に対して処理を行う際に鋳鉄部材110に近接可能に構成されている。
【0042】
組織状態変化部550としては、例えばホルダ520に保持された鋳鉄部材110の表層110Aの一部の領域にレーザ光を照射するレーザ光照射ユニットを用いることができる。このような組織状態変化部550を用いて、照射時間、照射エネルギー量などを制御することにより、鋳鉄部材110の表層110Aの一部の領域に硬質脆性特性を有するセメンタイト組織を含むコーティング層を形成し、鋳鉄部材110の金属組織中に点在している複数の黒鉛粒子を硬質なコーティング層により覆うことができる。
【0043】
図9に示すように、組織状態変化部550から照射されるレーザ光がホルダ520に保持された鋳鉄部材110の表層110Aの一部の領域に当たる位置にベース540を移動させ、組織状態変化部550からレーザ光を鋳鉄部材110の表層110Aの一部の領域に照射することで、鋳鉄部材110の表層110Aの一部にコーティング層を形成することができる。
【0044】
切削部560としては、例えばホルダ520に保持された鋳鉄部材110を切削するエンドミルなどの切削工具565を備えた工作機械を用いることができる。本例では、組織状態変化部550により鋳鉄部材110の表層110Aの一部の領域にコーティング層を形成した後、切削部560がホルダ520に保持された鋳鉄部材110を切削できる位置にベース540を移動させ、鋳鉄部材110の所望の部分を切削することにより、所望の形状の鋳鉄製立体状部10(
図4C参照)に変形(鋳鉄製立体状部10を作製)することができる。
【0045】
図9に示す例では、第2のユニット570は、アルミニウム合金製立体状部20を回転可能に保持する回転ホルダ575を有している。切削部560により鋳鉄製立体状部10を作製した後、第2のユニット570の回転ホルダ575に保持されたアルミニウム合金製立体状部20がホルダ520に保持された鋳鉄製立体状部10に対向するようにベース540を移動させ、第2のユニット570の回転ホルダ575を回転させながら、回転するアルミニウム合金製立体状部20をホルダ520に保持された鋳鉄製立体状部10に接触させて摩擦圧接することができる。なお、鋳鉄製立体状部10を保持するホルダ520を回転可能な回転ホルダにして回転させ、アルミニウム合金製立体状部20を保持する回転ホルダ575は回転させずに、両立体状部10,20を摩擦圧接するようにしてもよい。
【0046】
鋳鉄製立体状部10とアルミニウム合金製立体状部20とを摩擦圧接する際には、第2のユニット570の回転ホルダ575の回転数、第2のユニット570がアルミニウム合金製立体状部20を鋳鉄製立体状部10に対して押し付ける圧力、および摩擦圧接する時間などを制御し、両立体状部10,20が接触する箇所の温度が200℃から400℃となるようにして、鋳鉄製立体状部10のコーティング層のセメンタイト組織の組織状態が摩擦圧接中も摩擦圧接後も変化しないようにしている。
【0047】
このような装置500によれば、例えば、摩擦圧接前に、第1のユニット510によって、鋳鉄部材110の表層110Aの一部の領域に、鋳鉄部材110の金属組織中に点在する複数の黒鉛粒子を覆う、硬質なコーティング層を形成することができる。このため、第2のユニット570による摩擦圧接の際に黒鉛粒子が、鋳鉄製立体状部10とアルミニウム合金製立体状部20との接合界面へ混入する確率を低減することができる。したがって、装置500により製造される接合体においては高い接合強度が得られやすい。また、第2のユニット570による摩擦圧接前に、鋳鉄部材110がホルダ520に装着されたままの状態で、第1のユニット510の組織状態変化部550により鋳鉄部材110の表層110Aの一部の領域に硬質なコーティング層を形成でき、切削部560により所望の形状の鋳鉄製立体状部10を作製できるので、装置500への鋳鉄部材110の装着作業ならびに鋳鉄部材110の表層110Aの一部の領域へのコーティング層の形成、所望の形状の鋳鉄製立体状部10の作製、第2のユニット570による摩擦圧接を含む、接合体を製造する一連のプロセスを効率よく実施することができる。
【0048】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
1,201,301:接合体、10,210,310,310A:鋳鉄製立体状部、11,211,311,411:本体部、12,312,412:コーティング層、12A:外周縁部、12B:外周側面部、12C:内周縁部、12D:内周側面部、15:黒鉛粒子、16:外周側露出側面部、17:内周側露出側面部、20:アルミニウム合金製立体状部、500:装置、510:第1のユニット、570:第2のユニット