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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128862
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】積層体の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20240913BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20240913BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H02K15/02 F
B21D28/02 C
B21D28/02 D
B21D28/02 F
H01F41/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038126
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 健史
(72)【発明者】
【氏名】田村 達二
(72)【発明者】
【氏名】平間 道信
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 健史
【テーマコード(参考)】
5E062
5H615
【Fターム(参考)】
5E062AA06
5E062AC05
5H615AA01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS05
5H615SS10
5H615SS13
5H615SS15
(57)【要約】
【課題】金属片間の接合を円滑に実施することが可能な積層体の製造装置を提供すること。
【解決手段】本開示の積層体の製造装置は、金属片本体とカシメ部を備える仮片部とを含む複数枚の金属片を互いに積層するように搬送可能な搬送路と、金属片を搬送路内へ順次供給する供給機構であって、金属片のうち供給機構により搬送路内へ供給される第1の金属片のカシメ部は、供給機構により第1の金属片が搬送路内へ供給されたときに、搬送路内を搬送されている1乃至複数枚の金属片のうち最も上流側に位置する第2の金属片のカシメ部にカシメ接合される、供給機構と、搬送路を搬送される複数枚の金属片の少なくとも一部の仮片部の移動をガイドするものであって、少なくとも第2の金属片の仮片部及び第2の金属片に隣接する1乃至複数枚の金属片の仮片部の、金属片の搬送方向に沿って延びる軸を中心とした周方向への移動を制限する仮片部ガイドと、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状の金属片本体と、前記金属片本体の外周縁の複数箇所に形成されたカシメ部を備える仮片部と、を備える複数枚の金属片を、互いに積層するように搬送可能な搬送路と、
前記金属片を前記搬送路の上流側から前記搬送路内へ順次供給する供給機構であって、前記金属片のうち前記供給機構により前記搬送路内へ供給される第1の金属片の前記カシメ部は、前記供給機構により前記第1の金属片が前記搬送路内へ供給されたときに、前記搬送路内を搬送されている1乃至複数枚の前記金属片のうち最も上流側に位置する第2の金属片の前記カシメ部にカシメ接合される、前記供給機構と、
前記搬送路を搬送される複数枚の前記金属片のうちの少なくとも一部の前記仮片部の移動をガイドするものであって、少なくとも前記第2の金属片の前記仮片部及び前記搬送路内を搬送され前記第2の金属片に隣接する1乃至複数枚の前記金属片の前記仮片部の、前記金属片の搬送方向に沿って延びる軸を中心とした周方向への移動を制限する仮片部ガイドと、を備える、
積層体の製造装置。
【請求項2】
前記搬送路は、前記金属片の側面の少なくとも一部に接触して前記金属片を積層状態で保持するスクイズを備え、
前記仮片部ガイドは、前記スクイズの前記金属片の側面に対向する面に形成された前記搬送方向に沿って延びる第1のガイド溝を備える、
請求項1に記載の積層体の製造装置。
【請求項3】
前記搬送路は、前記金属片の側面の少なくとも一部に接触して前記金属片を積層状態で保持するスクイズを備え、
前記供給機構は、帯状の薄板から所定形状の前記金属片を打ち抜くパンチとダイとを備える打ち抜き機構を備え、且つ前記ダイは、前記スクイズの前記搬送方向上流側の端部に連結され、前記スクイズに連結した部分の近傍が前記搬送路の一部を構成しており、
前記仮片部ガイドは、前記スクイズの前記金属片の側面に対向する面に形成された前記搬送方向に沿って延びる第1のガイド溝と、前記ダイの前記スクイズに連結した部分に隣接する位置の内壁面に形成された前記搬送方向に沿って延びる第2のガイド溝の少なくともいずれか一方を備える、
請求項1に記載の積層体の製造装置。
【請求項4】
前記仮片部は、前記金属片本体の前記外周縁に分離可能な脆弱部を介して一体に形成された小片からなり、
前記仮片部ガイドは、前記第1のガイド溝と前記第2のガイド溝とを備える、
請求項3に記載の積層体の製造装置。
【請求項5】
前記仮片部は、前記金属片本体の前記外周縁に分離可能に取り付けられた小片からなり、
前記仮片部ガイドは、前記第1のガイド溝を備える、
請求項3に記載の積層体の製造装置。
【請求項6】
前記供給機構は、所定形状に成形された前記金属片を前記搬送路の前記搬送方向上流側の端部へ押し込む押圧装置を備える、
請求項1に記載の積層体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機、例えば電気自動車に搭載されるモータに用いられるモータコア(ロータコアあるいはステータコア)を得るために、打ち抜き成形された薄板状の金属片を複数枚積層した積層体を製造することが行われている。
【0003】
下記特許文献1には、金属片同士を固着させるために金属片にカシメ用突起を形成し、且つ、先行して打ち抜かれている金属片を求心方向に押圧する押圧体で押圧支持することで、金属片の打ち抜きと同時に金属片同士の固着を行うものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01-241332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された押圧体を用いると、金属片同士のカシメ接合に必要な支持力を確保でき、金属片の打ち抜きと金属片同士の固着とを同時に実施することができる。一方、上記押圧体は金属片の側部を求心方向に押圧することで金属片を支持しているため、金属片の、金属片の搬送方向に沿って延びる軸を中心とした周方向への保持力は、押圧体と金属片の側部との間の摩擦力のみで構成される。そのため、上記特許文献1のものでは、プレス機に押し下げられた際などに先行して打ち抜かれている金属片が意図せず回転し、周方向のずれが生じる可能性がある。先行して打ち抜かれている金属片にこのような周方向のずれが生じると、次に打ち抜いた金属片のカシメ接合の際にカシメ用突起の位置にズレが生じ、当該接合が円滑に行えなくなる恐れがある。カシメ接合が円滑に行えないと、カシメ接合時に生じる応力等に起因して金属片が傾斜あるいは湾曲してしまい、積層体にねじれが生じたり、積層体搬出時にカシメ接合が外れて金属片間が分断され、積層体の一部が落下したりする可能性がある。
【0006】
本開示は、上述した課題に鑑み、金属片間の接合を円滑に実施することが可能な積層体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様に係る積層体の製造装置は、薄板状の金属片本体と、前記金属片本体の外周縁の複数箇所に形成されたカシメ部を備える仮片部と、を含む複数枚の金属片を、互いに積層するように搬送可能な搬送路と、前記金属片を前記搬送路の上流側から前記搬送路内へ順次供給する供給機構であって、前記金属片のうち前記供給機構により前記搬送路内へ供給される第1の金属片の前記カシメ部は、前記供給機構により前記第1の金属片が前記搬送路内へ供給されたときに、前記搬送路内を搬送されている1乃至複数枚の前記金属片のうち最も上流側に位置する第2の金属片の前記カシメ部にカシメ接合される、前記供給機構と、前記搬送路を搬送される複数枚の前記金属片のうちの少なくとも一部の前記仮片部の移動をガイドするものであって、少なくとも前記第2の金属片の前記仮片部及び前記搬送路内を搬送され前記第2の金属片に隣接する1乃至複数枚の前記金属片の前記仮片部の、前記金属片の搬送方向に沿って延びる軸を中心とした周方向への移動を制限する仮片部ガイドと、を含む。
【0008】
上記のような積層体の製造装置においては、仮片部ガイドによって搬送路内の金属片の周方向の移動が制限された状態で、供給機構から供給される金属片の接合が実施される。そのため、金属片同士の周方向の位置ズレが抑制されることでカシメ部の位置ズレが抑制でき、円滑なカシメ接合を実現することができる。これにより、カシメ接合時に上述の位置ズレに起因して金属片が傾斜あるいは湾曲してしまうことがなくなり、積層体のねじれや金属片間の分断が抑制できる。
【0009】
本開示の第2の態様に係る積層体の製造装置は、上記本開示の第1の態様に係る積層体の製造装置において、前記搬送路は、前記金属片の側面の少なくとも一部に接触して前記金属片を積層状態で保持するスクイズを含み、前記仮片部ガイドは、前記スクイズの前記金属片の側面に対向する面に形成された、前記搬送方向に沿って延びる第1のガイド溝を含む。
【0010】
上記のような積層体の製造装置においては、金属片をスクイズ内で保持した状態で第1のガイド溝による周方向の移動の制限を行うため、安定した接合及び搬送を実現できる。また、カシメ接合時における金属片間及びカシメ部間の位置ズレが抑制されているため、スクイズからの保持力が開放された際にカシメ接合時に発生していた残留応力等によって金属片間が剥離するといったことも抑制できる。
【0011】
本開示の第3の態様に係る積層体の製造装置は、上記本開示の第1の態様に係る積層体の製造装置において、前記搬送路は、前記金属片の側面の少なくとも一部に接触して前記金属片を積層状態で保持するスクイズを含み、前記供給機構は、帯状の薄板から所定形状の前記金属片を打ち抜くパンチとダイとを備える打ち抜き機構を備え、且つ前記ダイは、前記スクイズの前記搬送方向上流側の端部に連結され、前記スクイズに連結した部分の近傍が前記搬送路の一部を構成しており、前記仮片部ガイドは、前記スクイズの前記金属片の側面に対向する面に形成された前記搬送方向に沿って延びる第1のガイド溝と、前記ダイの前記スクイズに連結した部分に隣接する位置の内壁面に形成された、前記搬送方向に沿って延びる第2のガイド溝の少なくともいずれか一方を含む。
【0012】
上記のような積層体の製造装置においては、金属片の打ち抜き動作と搬送路への供給動作を一括して実行することができる。
【0013】
本開示の第4の態様に係る積層体の製造装置は、上記本開示の第3の態様に係る積層体の製造装置において、前記仮片部は、前記金属片本体の前記外周縁に分離可能な脆弱部を介して一体に形成された小片からなり、前記仮片部ガイドは、前記第1のガイド溝と前記第2のガイド溝とを含む。
【0014】
上記のような積層体の製造装置においては、2つのガイド溝によって、第2の金属片とその下流側に隣接する1乃至複数の金属片に加えて、第1の金属片の周方向への移動も制限されるため、金属片同士の周方向の位置ズレをより効果的に抑制できる。
【0015】
本開示の第5の態様に係る積層体の製造装置は、上記本開示の第3の態様に係る積層体の製造装置において、前記仮片部は、前記金属片本体の前記外周縁に分離可能に取り付けられた小片からなり、前記仮片部ガイドは、前記第1のガイド溝を含む。
【0016】
上記のような積層体の製造装置においては、いわゆるプッシュバック構造を含む金属片においても、周方向の位置ズレのない積層を実現できる。また、第1の金属片の仮片部が第2の金属片に接合される前に他の部材、例えば第2のガイド溝に接触して意図せず金属片本体から分離してしまうことがない。
【0017】
本開示の第6の態様に係る積層体の製造装置は、上記本開示の第1又は第2の態様に係る積層体の製造装置において、前記供給機構は、所定形状に成形された前記金属片を前記搬送路の前記搬送方向上流側の端部へ押し込む押圧装置を含む。
【0018】
上記のような積層体の製造装置においては、既に所定の形状に成型された金属片に対しても周方向の位置ズレを抑制した積層を実施できる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の積層体の製造装置によれば、金属片間の接合を円滑に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の第1の実施の形態に係る積層体の製造装置で製造される積層体の一例を示す図である。
図2】本開示の第1の実施の形態に係る積層体の製造装置の一例を示した概略構造図である。
図3図3(A)は図2のB-B線で切断した断面図であり、図3(B)は図3(A)のC部拡大図である。
図4】第1のガイド溝のいくつかの変形例を示した拡大図である。
図5図2に示す積層体の製造装置における金属片の搬送プロセスの一部を示した図である。
図6図2に示す積層体の製造装置における金属片の搬送プロセスの一部を示した図である。
図7図2に示す積層体の製造装置における金属片の搬送プロセスの一部を示した図である。
図8】仮片部ガイドの一変形例を示した、図3(A)に対応する断面図である。
図9】本開示の第2の実施の形態に係る積層体の製造装置で製造される積層体の一例を示す図である。
図10】本開示の第2の実施の形態に係る積層体の製造装置の一例を示した概略構造図である。
図11図10のF-F線で切断した断面図である。
図12図10に示す積層体の製造装置における金属片の搬送プロセスの一部を示した図である。
図13図10に示す積層体の製造装置における金属片の搬送プロセスの一部を示した図である。
図14図10に示す積層体の製造装置における金属片の搬送プロセスの一部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本開示を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本開示の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本開示の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。また、図中の互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。さらに、一の図面中に互いに同一又は相当する部材が複数個含まれている場合には、図を見易くするために、そのうちのいくつかにのみ符号を付している場合がある。
【0022】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態に係る積層体の製造装置1(図2参照)の説明を行う前に、積層体2とこの積層体2を構成する複数の金属片10について簡単に説明を行う。本実施の形態において製造される積層体2は、ブロックコアを構成するものであってよく、このブロックコアは、単独であるいは複数個が積層されてモータコア(鉄心)、例えばインナーロータ型の回転電機のロータコア(回転子鉄心)を構成するものとすることができる。上述したモータコアは、分割式のロータコア及び非分割式のロータコアのいずれであってもよく、また、ロータコアではなくステータコア(固定子鉄心)を構成するものであってもよい
【0023】
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る積層体の製造装置で製造される積層体の一例を示す図であって、図1(A)は平面図であり、図1(B)は図1(A)のA-A線で切断した断面図である。積層体2は、図1(A)に示すように、その中心部に回転電機のシャフトが挿通可能な貫通穴を有する実質的に円環状の本体3と、本体3の外周面に沿って所定の間隔を空けて配設されたスロット部4と、本体3の外周面から放射状に突出するように形成された連結部5とを含んでいてよい。このうち、スロット部4には図示しない磁石を挿入することができる。また、連結部5は、後に本体3から分離可能となっていてよい。
【0024】
また、積層体2は、図1(B)に示すように、比較的薄い所定肉厚を有する薄板状の金属片10が複数枚(図1(B)では7枚)接合されて構成され得る。なお、積層体2を構成する金属片10の枚数は特に限定されず、例えば数十枚から数百枚程度の範囲で適宜調整され得る。
【0025】
金属片10は、図1(A)に示すように、薄板状の電磁鋼板で構成することができる。この金属片10は、略円環状の金属片本体11と、金属片本体11の外周縁の複数箇所に分離可能に形成された仮片部12と、を含む。このうち、金属片本体11には、所定の位置にスロット部4を構成するための貫通穴が設けられていてよい。
【0026】
仮片部12は、金属片本体11の外周縁の複数箇所(図1(A)では4箇所)に、嵌合部13を介して分離可能に取り付けられた小片で構成することができる。本実施の形態の仮片部12は、後述する金属板6を打ち抜き又は半抜きした後にノックアウトで押圧して元の位置に戻す、いわゆるプッシュバック処理によって金属片本体11の外周縁に仮止めされていてよい。これに関連して、嵌合部13は、金属片本体11の外周縁に形成された窪みに嵌合されたものであってよい。
【0027】
この仮片部12の中央部分には、カシメ部15が形成されていてよい。カシメ部15は、金属片10の裏面側に突出するカシメ用突起及び金属片10の表面側に形成され他の金属片のカシメ用突起が圧入され得るカシメ用凹部の少なくとも一方で構成されていてよい。図1(B)には、積層体2の最下部に位置する金属片10の仮片部12にはカシメ用凹部のみが形成され、それ以外の金属片10にはカシメ用突起とカシメ用凹部とが形成されたものが例示されている。一の積層体2を構成する複数枚の金属片10同士は、仮片部12に形成されたカシメ部15同士を加締めることで、積層状態で接合される。
【0028】
図2は、本開示の第1の実施の形態に係る積層体の製造装置の一例を示した概略構造図である。また、図3は、図2に示す積層体の製造装置の要部を示したものであって、図3(A)は図2のB-B線で切断した断面図であり、図3(B)は図3(A)のC部拡大図である。なお、図2では、構造の理解を容易にするために、積層体の製造装置1の一部(具体的には、後述するダイ22及びスクイズ30部分)と金属片10とを断面で示している。また、図2においては、仮片部12及び後述する仮片部ガイド40の構造が理解しやすいように、仮片部12の寸法のみを実際の寸法より大きく示し、且つ金属片10の中央に形成されている貫通穴やカシメ部15等の図示を省略している。
【0029】
本実施の形態に係る積層体の製造装置1は、図2及び図3に示すように、金属片10を搬送路の上流側から搬送路内へ順次供給する供給機構の一例としての打ち抜き機構20と、複数の金属片10を積層しつつ搬送することが可能な搬送路の少なくとも一部を構成するスクイズ30と、搬送路を搬送される複数枚の金属片10のうちの少なくとも一部の仮片部12の移動をガイドするものであって、金属片10の搬送方向に沿って延びる軸を中心とした周方向(以下、単に「周方向」という)への移動を制限可能な仮片部ガイド40と、を含む。なお、以下においては、図2に示す矢印Xが示す方向を左右方向とし、以下同様に、矢印Yが示す方向を前後方向、矢印Zが示す方向を上下方向として説明を行うものとする。また、本実施の形態において、「搬送路」とは、金属片10が積層するように搬送される、上下方向に延在した通路を指すものとする。
【0030】
打ち抜き機構20は、帯状の薄板の一例としての長尺な金属板6から、所定の形状の金属片10を打ち抜くことが可能なものであってよい。この打ち抜き機構20は、例えば順送型のプレス機で実現することができ、図2に示すように、少なくともパンチ21とダイ22を含むものとすることができる。
【0031】
パンチ21は、左右方向に搬送される金属板6の上部に配設され、ダイ22に近接するあるいは離間するように上下に移動することで、金属板6から金属片10を打ち抜くことが可能な、略柱状又は略筒状の部材で構成することができる。このパンチ21は、その基端部が上型23に固定されていてよい。また、この上型23は上下方向に移動可能なスライド(図示せず)に連結されていてよく、スライドを動作させることで、パンチ21を上下方向に移動させることができるものであってよい。
【0032】
パンチ21の周囲には、パンチ21を下降させて金属板6を打ち抜いた際に、パンチ21に食いついた金属板6を除去するためのストリッパ25が設けられていてよい。ストリッパ25は、上型23に取り付けられることでパンチ21と共に上下動し、パンチ21の先端がダイ22の内部に挿入された状態の時には、金属板6の上面に当接して金属板6を支持することができるものであってよい。また、スライドは、例えばモータ駆動式のクランク機構といった図示しない駆動源が接続されていてよい。
【0033】
ダイ22は、パンチ21に対してその間に金属板6を挟んで対向配置し、下降したパンチ21の先端部が挿入可能な孔を含む環状の部材で構成することができる。このダイ22は、主に打ち抜かれる金属片10の外径部分を成形する機能を有するものである。このダイ22は、下型27に固定されていてよい。なお、ダイ22のサイズや形状については、パンチ21に合わせて調整するとよい。
【0034】
加えて、金属板6の搬送方向におけるパンチ21及びダイ22が配設された位置よりも上流側の任意の位置には、仮片部12を形成するためのプッシュバック部26が設けられていてよい。このプッシュバック部26は、金属板6の所定の位置を半抜きすることが可能なパンチ及びダイに加えて、パンチに対向配置され金属板6の裏面側を押圧可能なノックアウトを含んでいてよい。プッシュバック部26の詳細な構造やプッシュバック処理の具体的な動作等は周知のものと同様のものを採用することができるので、ここでは説明を省略する。
【0035】
スクイズ30は、図2及び図3に示すように、打ち抜き機構20により打ち抜き成形されダイ22の下方へ押し出された金属片10を、順次積層しつつ下方へ搬送するものであってよい。このスクイズ30は、中央部分に貫通穴31が設けられた環状、より詳しくは上下方向に所定の長さを有する略円筒状の部材で構成することができる。また、スクイズ30は、その搬送方向上流側の端部がダイ22に連結した状態で、ダイホルダ27に取り付けられていてよい。貫通穴31は、金属片10の外径寸法と同一か、金属片10の外径寸法よりも僅かに小さい内径を有する穴で構成することができる。本実施の形態では、この貫通穴31の内径を金属片10の外径寸法と実質的に同一としたものを例示している。この貫通穴31は、金属片10を積層しつつ上方から下方へ搬送する搬送路の一部として機能し得るものであってよい。なお、本実施の形態においては、スクイズ30として略円筒状の部材を採用した場合を例示しているが、スクイズ30の形状は搬送する金属片10の形状等に合わせて適宜変更することができる。例えば、スクイズ30を、円弧状の部材を周方向に組み合わせたものとすることもできる。
【0036】
貫通穴31の内壁は、図3に示すように、スクイズ30内を搬送される金属片10の外周縁の形状に合わせて湾曲していてよい。これにより、スクイズ30の内壁面全体で金属片10を支持することができる。なお、スクイズ30の内壁には仮片部ガイド40の一例としての第1のガイド溝41が設けられているが、第1のガイド溝41に関する説明は後述する。また、図2においては、構造の理解を容易にするためにスクイズ30内を搬送される金属片10の枚数を比較的少なくしているが、スクイズ30内を搬送される金属片10は、数十枚から数百枚単位であってよい。そして、積層体2を構成する金属片10の総枚数も、数十枚から数百枚単位であってよい。結果として、スクイズ30内には、2~5個程度の積層体2が搬送されている状態となり得る。
【0037】
また、スクイズ30の搬送方向下流側端部に対向する位置には、スクイズ30から搬出される積層体2を受けることが可能な受け部材35が設けられていてよい。受け部材35は、積層体2を所望の位置に搬送可能なもの、例えば図2に示すような端部に治具が取り付けられた搬送アームで構成されていてよい。なお、受け部材35は上述の構造に限定されるものではなく、コンベヤやスロープといった他の搬送手段で構成することもできる。
【0038】
仮片部ガイド40は、搬送路内の金属片10の少なくとも一部の周方向への移動を制限するものである。詳しくは、搬送路内の金属片10の少なくとも一部の仮片部12の周方向位置を規制することで、金属片10の周方向への移動を制限するものであってよい。本実施の形態においては、仮片部ガイド40が、スクイズ30の金属片10の側面に対向する面、すなわち内壁面の複数箇所(図3においては周方向に沿って等間隔に4箇所)に、搬送方向に沿って延びる第1のガイド溝41で構成されているものが例示されている。
【0039】
第1のガイド溝41は、スクイズ30の内壁面のうち、スクイズ30内に搬入された金属片10の仮片部12が挿入される位置に設けられた溝で構成することができる。本実施の形態の第1のガイド溝41は、図3(B)に示すように、仮片部12の周方向の移動を制限するために、仮片部12を周方向の両端部から挟むようにその寸法が調整されていてよい。このとき、第1のガイド溝41の壁面と仮片部12の端部とは当接していてもよいし、例えば金属片10の板厚の半分以下の僅かな隙間を介して対向していてもよい。他方、第1のガイド溝41の深さは、仮片部12の搬送方向と交差する方向(詳しくは、スクイズ30の径方向)の長さ以上であればよく、図3に示した仮片部12の先端に当接する構成に代えて、当接しない構成としてもよい。
【0040】
また、第1のガイド溝41は、スクイズ30の搬送方向上端から搬送方向に沿って所定の長さ位置まで延在していてよく、本実施の形態においてはスクイズ30の搬送方向下端まで延在しているものを例示している。なお、第1のガイド溝41は、搬送路を搬送される複数枚の金属片10の少なくとも一部の仮片部12の移動をガイドすることができればよい。したがって、第1のガイド溝41を、例えばスクイズ30内の一部、より具体的には搬送方向における中間部及び下端部の少なくとも一方に部分的に形成されていてもよい。これは、スクイズ30内を搬送中の金属片10はカシメ部15によって互いにカシメ接合した状態で搬送されるため、第1のガイド溝41がスクイズ30内を搬送中の金属片10の一部の仮片部12の移動をガイドすることで周方向の移動を制限すれば、当該一部の金属片10に接合した他の金属片10に周方向の位置ズレは実質的に生じず、同様に周方向の移動が制限できるためである。第1のガイド溝41が周方向の移動を制限する金属片10は、より具体的には、少なくともスクイズ30の最上流位置を搬送中の金属片10と、当該金属片10に隣接して搬送されている1枚以上の金属片10であってよい。
【0041】
本実施の形態では、第1のガイド溝41として、図3(B)に示した通り、仮片部12の周囲3辺を包囲する形状のものを例示したが、第1のガイド溝41の形状はこれに限定されない。具体的には、仮片部12の周方向の移動を制限することができる構造であれば、適宜変更することができる。
【0042】
図4(A)及び図4(B)は、第1のガイド溝の変形例をそれぞれ示したものであって、図3(B)に対応する拡大図である。一変形例としての第1のガイド溝41Xは、図4(A)に示すように、その壁面の幅が深さ方向に向かうにしたがって小さくなったテーパ状に形成することができる。そして、この第1のガイド溝41Xに挿入される仮片部12Xは、金属片本体11の外周縁に嵌合部13Xにて嵌合されると共に、この嵌合部13Xからスクイズの径方向に向かうにしたがって周方向の長さが短くなった略台形状に形成されていてよい。上述した形状の第1のガイド溝41Xに挿入された仮片部12Xは、その周方向の両端部が第1のガイド溝41Xの壁面に当接するあるいは僅かな隙間を介して対向することにより、周方向の移動が制限されている。
【0043】
また、他の変更例としての第1のガイド溝41Yは、図4(B)に示すように、仮片部12Yの周方向長さ及び径方向長さよりも長い周方向長さ及び深さを有し、且つ溝の底面位置に金属片10に向かって立設した突条が形成されていてよい。そして、この第1のガイド溝41Yに挿入される仮片部12Yは、金属片本体11の外周縁に嵌合する嵌合部13Yに対向する位置に窪みが形成されていてよい。上述した形状の第1のガイド溝41Yに挿入された仮片部12Yは、第1のガイド溝41Yの突条と仮片部12Yの窪みとが噛み合うことにより、周方向の移動が制限されている。
【0044】
上述した各構成要素を制御するために、本実施の形態に係る積層体の製造装置1は、制御装置7をさらに含むことができる。この制御装置7は、例えば図2中に点線で示すように、各構成要素に有線又は無線通信を介して通信可能に接続されていてよい。制御装置7には、シーケンサ(Programmable Logic Controller、PLC)を含むコンピュータを採用することができる。周知のコンピュータは、プロセッサと、揮発性及び不揮発性のメモリと、各種インタフェースとを含むものであってよい。
【0045】
図5乃至図7は、図2に示す積層体の製造装置における金属片の搬送プロセスの一部を示した図である。このうち、図5(A)、図6(A)及び図7(A)は、図2のD1部拡大図であり、図5(B)、図6(B)及び図7(B)は、図3に示すD2-D2線で切断した断面図である。ここで、第1のガイド溝41を含む仮片部ガイド40は、金属片10同士の接合を円滑に行うために、打ち抜き機構20から供給される金属片10が接合される直前に搬送路に供給された複数枚の金属片10の周方向の位置決めを行うことができる。より具体的には、仮片部ガイド40は、打ち抜き機構20から供給される金属片10(以下、説明の都合上この金属片を「第1の金属片10-1」とも呼ぶ)の、先行して打ち抜かれ搬送路内を搬送されている複数枚の金属片10のうちの最も上流側に支持された金属片10(以下、説明の都合上この金属片を「第2の金属片10-2」とも呼ぶ)へのカシメ接合をスムーズに実行するためのものである。そこで以下には、打ち抜き機構20から搬送路へ第1の金属片10-1が供給され第2の金属片10-2に接合される過程について、主に図2図5乃至図7とを参照して説明する。
【0046】
積層体の製造装置1の動作が開始されると、金属板6の搬送が開始されると共に打ち抜き機構20による打ち抜き動作が開始され、搬送路、すなわちスクイズ30への金属片10の搬入が実行される。図5は、スクイズ30への金属片10の搬入が開始された後、所定の時間が経過した後の状態を示している。スクイズ30内を搬送される複数枚の金属片10は、それぞれの仮片部12が第1のガイド溝41内に挿入された状態で積層されていてよい。そして、搬送方向の最も上流側に位置する第2の金属片10-2は、ダイ22内の任意の高さ位置に支持されていてよい。なお、第2の金属片10-2は、この第2の金属片10-2の搬送方向下流側に隣接する金属片10にカシメ接合されているため、搬送路内の他の金属片10と同様にその周方向の移動が制限されている。
【0047】
ここで、本実施の形態の打ち抜き機構20は、上述の通りプッシュバック部26を備えており、このプッシュバック部26において、パンチ21及びダイ22により金属片10として金属板6打ち抜かれる前に、仮片部12を構成する部分が成型される。これに関連して、ダイ22は、金属片10が打ち抜かれた際に仮片部12と接触しないように、仮片部12が通過する部分の寸法が仮片部12の周方向長さ及び径方向長さよりも大きく調整されていてよい。これにより、ダイ22とダイ22を通過する仮片部12との間には隙間dが形成され得る。隙間dは、例えば仮片部12と第1ガイド溝41間より大きい隙間であってよい。上述した隙間dを設けるのは、パンチ21で下方向に移動する金属片10の仮片部12がダイ22に接触すると、嵌合部13の嵌合が上下方向にずれたり、金属片本体11と仮片部12とが分離してしまったりする可能性があるためである。
【0048】
図6は、図5に示す状態から、パンチ21が動作することで金属板6から金属片10が打ち抜かれて搬送路へ第1の金属片10-1として供給され、且つこの第1の金属片10-1と第2の金属片10-2とが接合する前の状態を示したものである。パンチ21が下降すると、金属板6はダイ22に押し付けられ、パンチ21がさらに下降することで、金属板6から金属片10が打ち抜かれる。打ち抜かれた金属片10は、図6に示すように、パンチ21に押圧されてダイ22の内部を搬送方向に沿って移動する。
【0049】
パンチ21がさらに下降すると、第1の金属片10-1の仮片部12-1に形成されたカシメ部15-1が、第2の金属片10-2の仮片部12-2のカシメ部15-2に圧入される。このとき、第2の金属片10-2の仮片部12-2と、第2の金属片10-2の搬送方向下流側に隣接する1乃至複数の金属片10の仮片部12とが、第1のガイド溝41によって周方向の移動が制限されていることは、特に留意すべき事項である。この第1のガイド溝41により、スクイズ30内の特に上流側を搬送されている金属片の周方向の位置ズレが抑制されているため、第1の金属片10-1は、傾斜や湾曲が生じることなく第2の金属片10-2と接合できる。
【0050】
第1の金属片10-1のカシメ部15-1と第2の金属片10-2のカシメ部15-2とが接合された後、さらにパンチ21が下降すると、図7に示すように、スクイズ30内に第2の金属片10-2が搬入される。このとき、第2の金属片10-2の仮片部12-2は第1のガイド溝41内に挿入され、その周方向への移動が(直接)制限されることになる。また、スクイズ30内を搬送される複数枚の金属片10は、第2の金属片10-2の肉厚分だけ搬送方向に沿って移動する。なお、パンチ21は、その下死点がダイ22内の任意の高さ位置に設定されている。
【0051】
以上説明した通り、本実施の形態に係る積層体の製造装置1によれば、搬送路に新たに第1の金属片10-1が供給され、先行して供給された第2の金属片10-2と接合する際、スムーズな接合を実現できる。詳しくは、仮片部ガイド40が、先行して搬送路に供給された第2の金属片10-2と第2の金属片の搬送方向下流側に隣接する1乃至複数枚の金属片10の周方向の移動を制限していることで、第1の金属片10-1と第2の金属片10-2との接合を安定して実施できる。これにより、カシメ接合した第1の金属片10-1が傾斜あるいは湾曲することを防止できる。そして、積層体にねじれが生じたり、積層体搬出時にカシメ接合が外れて金属片間が分断され、積層体の一部が落下したりすることも抑制することができる。
【0052】
さらには、本実施の形態に係る積層体の製造装置1を用いて積層体2を製造した後に積層体2に実施される後工程における位置決めや、連結部5の除去工程における悪影響を抑制することもできる。したがって、完成品(詳しくは回転電機)の精度が低下することを抑制することができる。
【0053】
図8は、仮片部ガイドの一変形例を示した、図3(A)に対応する断面図である。上述した第1の実施の形態においては、仮片部ガイド40として、スクイズ30の内壁面に直接形成された第1のガイド溝41を含むものを例示したが、第1のガイド溝41は、上述の構造に限定されない。例えば、一変形例としての仮片部ガイド40Bは、図8に示すように、第1のガイド溝41を、スクイズ30Aとは別部材で構成されたガイドブロック43に形成し、且つこのガイドブロック43が金属片10を押圧支持するようにしてもよい。ガイドブロック43は、スクイズ30Aの内壁面に設けられた収容溝36内に配設されていてよい。上述の構成により、第1のガイド溝41は、金属片10-1の側面に当接するため、周方向の位置ズレを確実に抑制できることに加え、スクイズ30A内の金属片10の姿勢の維持を補助することができる。
【0054】
<第2の実施の形態>
上述した第1の実施の形態に係る積層体の製造装置1では、積層体2を構成する金属片10として、プッシュバック部26により金属片本体11に分離可能に取り付けられた小片からなる仮片部12を含むものを例示したが、金属片の構造はこれに限定されない。そこで、以下には本開示の第2の実施の形態として、上述した金属片10とは異なる構造の金属片10Aで構成された積層体2Aを製造するための積層体の製造装置1Aについて説明を行う。なお、以下の説明においては、第1の実施の形態において説明した構造と同様の構造のものには同様の符号を付してその説明を省略し、第1の実施の形態とは異なる構造を中心に説明を行うものとする。
【0055】
図9は、本開示の第2の実施の形態に係る積層体の製造装置で製造される積層体の一例を示す図であって、図9(A)は平面図、図9(B)は図9(A)のE-E線で切断した断面図である。積層体2Aは、図9(A)に示すように、その中心部に回転電機のシャフトが挿通可能な貫通穴を有する実質的に円環状の本体3Aと、本体3Aの外周面に沿って所定の間隔を空けて配設されたスロット部4と、本体3Aの外周面から放射状に突出するように形成された連結部5Aとを含んでいてよい。この積層体2Aは、連結部5Aの構成以外は上述した積層体2と同様の構成であってよい。
【0056】
また、積層体2Aは、図9(B)に示すように、比較的薄い所定肉厚を有する薄板状の金属片10Aが複数枚(図9(B)では7枚)接合されて構成され得る。金属片10Aは、図9(A)に示すように、薄板状の電磁鋼板で構成することができ、略円環状の金属片本体11Aと、金属片本体11Aの外周縁の複数箇所に形成された仮片部12Aと、を含む。また、仮片部12Aの中央部分には、カシメ部15が形成されていてよい。
【0057】
仮片部12Aは、金属片本体11Aの外周縁の複数箇所(図9(A)では4箇所)に、脆弱部16を介して一体に形成された小片で構成することができる。脆弱部16は、仮片部12Aに比して周方向の長さが短く、小さな力で破断し得るものであってよい。したがって、仮片部12A及びこの仮片部12Aが複数枚積層されて形成される連結部5Aは、金属片本体11Aの外縁又は本体3Aの外縁から分離可能であるといえる。本実施の形態においては、脆弱部16として、周方向の長さが短い構造を例示したが、小さな力で破断し得る程度に低い強度の構造であればこれに限定されない。例えば、仮片部と金属片本体とを一体で形成すると共に、仮片部に半抜き加工を行うことで脆弱部を形成してもよい。
【0058】
図10は、本開示の第2の実施の形態に係る積層体の製造装置の一例を示した概略構造図である。この図10は、図2に対応する構造図である。本実施の形態に係る積層体の製造装置1Aは、図10に示すように、金属片10Aを搬送路の上流側から搬送路内へ順次供給する打ち抜き機構20Aと、スクイズ30と、金属片10Aの周方向への移動を制限可能な仮片部ガイド40Aと、を含む。なお、本実施の形態に係る積層体の製造装置1Aに含まれるスクイズ30は、第1の実施の形態に係る積層体の製造装置1に含まれるものと同様のものであってよい。したがって、このスクイズ30の内壁面には、第1のガイド溝41が形成されていてよい。
【0059】
打ち抜き機構20Aは、金属板6から、所定の形状の金属片10Aを打ち抜くことが可能なものであってよい。この打ち抜き機構20Aは、図10に示すように、少なくともパンチ21Aとダイ22Aを含むものとすることができる。
【0060】
パンチ21Aは、左右方向に搬送される金属板6の上部に配設され、ダイ22Aに近接するあるいは離間するように上下に移動することで、金属板6から金属片10Aを打ち抜くことが可能な部材で構成することができる。このパンチ21Aは、その基端部が上型23に固定され、上型23はスライドに連結されていてよい。また、このパンチ21Aの周囲には、ストリッパ25が設けられていてよい。パンチ21Aは、打ち抜く金属片10Aの形状が異なる点以外は第1の実施の形態のパンチ21と同様の構造を備えていてよい。
【0061】
ダイ22Aは、パンチ21Aに対してその間に金属板6を挟んで対向配置し、下降したパンチ21Aの先端部が挿入可能な孔を含む環状の部材で構成することができる。本実施の形態に係るダイ22Aは、主に打ち抜かれる金属片10Aの外径部分に加えて、仮片部12Aを成形する機能を有するものであってよい。また、このダイ22Aは、スクイズ30の搬送方向上流側にその下端が連結していてよい。さらに、ダイ22Aのスクイズ30に連結する部分の近傍、換言すると、ダイ22Aの金属片10Aの搬送方向下流側の一部は、搬送路の一部を構成し得るものである。
【0062】
加えて、金属板6の搬送方向におけるパンチ21A及びダイ22Aが配設された位置よりも上流側の任意の位置には、脆弱部16を形成するための脆弱部成形部28が設けられていてよい。この脆弱部成形部28には、金属板6の所定の位置に少なくとも脆弱部16を成形することが可能なパンチ及びダイが含まれ得る。脆弱部成形部28の具体的な構造は特に限定されないが、例えば、脆弱部16を形成する箇所に、所定の間隔を空けて配設された一対のパンチ及びダイで構成することができる。なお、本実施の形態では、パンチ21A及びダイ22Aが配設された位置よりも上流側に脆弱部形成部28を別途設けたものを例示しているが、この脆弱部形成部28を省略し、パンチ21A及びダイ22Aで脆弱部16が打ち抜き成形されるようにしてもよい。
【0063】
仮片部ガイド40Aは、搬送路内の金属片10Aの少なくとも一部の周方向への移動を制限するものである。詳しくは、搬送路内の金属片10Aの少なくとも一部の仮片部12Aの周方向位置を規制することで、金属片10Aの周方向への移動を制限するものであってよい。本実施の形態の仮片部ガイド40Aは、上述したスクイズ30の内壁面に形成された第1のガイド溝41に加えて、ダイ22Aのスクイズ30に連結した部分に隣接する位置の内壁面に形成された、搬送方向に沿って延びる第2のガイド溝42を含む。なお、仮片部ガイド40Aの一部を構成する第1のガイド溝41は、上述した第1の実施の形態において説明したものと同様のものとすることができる。
【0064】
図11は、図10のF-F線で切断した断面図である。上述した通り、本実施の形態に係るダイ22Aの内壁面には、図10及び図11に示すように、ダイ22Aの下流側の少なくとも一部に第2のガイド溝42を形成することができる。第2のガイド溝42は、ダイ22Aの内壁面に搬送方向に沿って延在するように形成され、その下端部はダイ22Aの下端部まで延びているとよい。第2のガイド溝42の下端部は、スクイズ30に形成された第1のガイド溝41に連通していてよい。これに関連して、第2のガイド溝42の形状は、第1のガイド溝41と同一の形状とすることができる。
【0065】
ダイ22Aの上端部は、下降したパンチ21Aに噛合うことで金属片10Aの打ち抜き動作を行う部分であるが、本実施の形態に係るパンチ21A及びダイ22Aでは、金属片10Aの外径部分に加えて仮片部12Aの打ち抜きも行う。したがって、ダイ22Aの上端部の内壁面は、仮片部12Aの形状に合致する溝が形成されていてよい。そしてこの溝は、第2のガイド溝42に連通していてよい。
【0066】
本実施の形態に係る仮片部ガイド40Aは、第1のガイド溝41に加えて上述した第2のガイド溝42を含むため、ダイ22Aの下流側を通過する金属片10Aも、当該仮片部ガイド40Aによって周方向の移動が制限されることになる。
【0067】
図12乃至図14は、図10に示す積層体の製造装置における金属片の搬送プロセスの一部を示した図である。このうち、図12(A)、図13(A)及び図14(A)は、図10のG1部拡大図であり、図12(B)、図13(B)及び図14(B)は、図11に示すG2-G2線で切断した断面図である。ここで、第1のガイド溝41と第2のガイド溝42を含む仮片部ガイド40Aは、金属片10A同士の接合を円滑に行うために、打ち抜き機構20Aから供給される金属片10Aが接合される金属片10A、すなわち直前に搬送路に供給された金属片10Aの周方向の位置決めを行うことができる。より具体的には、仮片部ガイド40Aは、打ち抜き機構20Aから供給される金属片10A(以下、第1の実施の形態の説明と同様に、この金属片を「第1の金属片10A-1」とも呼ぶ)の、先行して打ち抜かれ搬送路内を搬送されている複数枚の金属片10Aのうちの最も上流側に支持された金属片10A(第1の金属片10A-1と同様に、この金属片を「第2の金属片10A-2」とも呼ぶ)へのカシメ接合をスムーズに実行するためのものである。そこで以下には、打ち抜き機構20Aから搬送路へ第1の金属片10A-1が供給され第2の金属片10A-2に接合される過程について、主に図10図12乃至図14とを参照して説明する。
【0068】
積層体の製造装置1Aの動作が開始されると、金属板6の搬送が開始されると共に打ち抜き機構20Aによる打ち抜き動作が開始され、搬送路、具体的にはスクイズ30への金属片10Aの搬入が実行される。図12は、スクイズ30への金属片10Aの搬入が開始された後、所定の時間が経過した後の状態を示している。スクイズ30内を搬送される複数枚の金属片10Aは、それぞれの仮片部12Aが第1のガイド溝41内に挿入された状態で積層されていてよい。そして、搬送方向の最も上流側に位置する第2の金属片10A-2は、ダイ22A内の任意の高さ位置に支持されていてよい。
【0069】
ここで、本実施の形態の打ち抜き機構20Aのパンチ21A及びダイ22Aは、上述の通り金属片10Aの外径部分に加えて仮片部12Aの打ち抜きをも行う。また、ダイ22Aの下流側部分には、金属片10Aの打ち抜きに用いられるダイ22Aの上流側部分に繋がるように第2のガイド溝42が設けられている。したがって、パンチ21A及びダイ22Aにより打ち抜かれた金属片10Aの仮片部12Aは、打ち抜かれた直後から第2のガイド溝42によってその周方向の移動が制限される。また、第2の金属片10A-2も、第2のガイド溝42によってその周方向の移動が(直接)制限される。
【0070】
図13は、図12に示す状態から、パンチ21Aが動作することで金属板6から金属片10Aが打ち抜かれて搬送路へ第1の金属片10A-1として供給され、且つこの第1の金属片10A-1がダイ22Aの内部を搬送されている状態を示したものである。パンチ21Aが下降すると、金属板6はダイ22Aに押し付けられ、パンチ21Aがさらに下降することで、金属板6から第1の金属片10A-1が打ち抜かれる。打ち抜かれた第1の金属片10A-1は、図13に示すように、その仮片部12A-1が第2のガイド溝42に沿うように移動することで第1の金属片10A-1の周方向の移動が制限された状態で、パンチ21Aに押圧されてダイ22Aの内部を搬送方向に沿って移動する。
【0071】
パンチ21Aがさらに下降すると、第1の金属片10A-1の仮片部12A-1に形成されたカシメ部15-1が、第2のガイド溝42に支持された第2の金属片10A-2の仮片部12A-2のカシメ部15-2に圧入される。このとき、第1の金属片10A-1の仮片部12A-1と第2の金属片10A-2の仮片部12A-2とは第2のガイド溝42によって周方向の移動が制限され、第2の金属片10A-2の搬送方向下流側に隣接する1乃至複数の金属片10Aの仮片部12は、第1のガイド溝41によって周方向の移動が制限されていることは、特に留意すべき事項である。この第1及び第2のガイド溝41、42を含む仮片部ガイド40Aにより、ダイ22A内を通過している金属片及びスクイズ30内の特に上流側を搬送されている金属片の周方向の位置ズレはいずれも効果的に抑制されている。そのため、第1の金属片10A-1と第2の金属片10A-2とは、周方向の位置ズレが生じることなく安定して接合され得る。
【0072】
第1の金属片10A-1のカシメ部15-1と第2の金属片10A-2のカシメ部15-2とが接合された後、さらにパンチ21が下降すると、図14に示すように、スクイズ30内に第2の金属片10A-2が搬入される。このとき、第2の金属片10A-2の仮片部12-2は第2のガイド溝42に連通する第1のガイド溝41内に挿入され、その周方向への移動の制限が維持されることになる。また、スクイズ30内を搬送される第2の金属片10A-2の搬送方向下流側に隣接する複数枚の金属片10Aは、第1の金属片10A-1の肉厚分だけ搬送方向に沿って移動する。なお、本実施の形態におけるパンチ21Aの下死点も、上述した第1の実施の形態と同様に、ダイ22Aの下流側の任意の高さ位置に設定されたものが例示されている。
【0073】
なお、本実施の形態ではパンチ21Aの下死点をダイ22Aの下流側の任意の高さ位置とした場合を例示しているが、本実施の形態の構造においては、パンチ21Aの下死点をスクイズ30内の任意の高さ位置に設定することもできる。本実施の形態のものにおいては、ダイ22Aのパンチ21Aの下死点よりも搬送方向下流側に位置する領域の長さによっては、第1のガイド溝41を省略することもできる。
【0074】
以上説明した通り、本実施の形態に係る積層体の製造装置1によれば、第1の実施の形態において述べたのと同様の効果が期待できる。加えて、本実施の形態においては、仮片部ガイド40Aが第2のガイド溝42を含んでいることで、第2の金属片10A-2にカシメ接合される前の第1の金属片10A-1の周方向の移動が制限されるため、金属片10A同士の接合を位置ズレを抑制しつつより安定して実行することができる。
【0075】
上記各実施の形態においては、供給機構として打ち抜き機構20、20Aを含むものを例示し、金属板6から金属片10、10Aを打ち抜き成形と同時に搬送路へ搬入しているものを例示したが、金属片10、10Aの成形プロセスと搬送路への搬入プロセスとを別々に実行することもできる。その場合、供給機構としては、例えば事前に実施された打ち抜き成形プロセスによって所定形状に成形された金属片を搬送路の搬送方向上流側の端部へ押し込む押圧装置(図示省略)を採用することができる。押出装置としては、金属片を水平方向に搬送する水平搬送装置と、搬送路の上流側に水平搬送装置を介して配設され上下方向に動作するラムを含むプレス機とを含むものを採用することができる。
【0076】
本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0077】
1、1A 積層体の製造装置
2、2A 積層体
6 金属板
10、10A 金属片
11、11A 金属片本体
12、12A、12X、12Y 仮片部
13 嵌合部
15 カシメ部
16 脆弱部
20、20A 打ち抜き機構
21、21A パンチ
22、22A ダイ
30、30A スクイズ
40、40A、40B 仮片部ガイド
41 第1のガイド溝
42 第2のガイド溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14