(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128867
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】3次元点群位置合わせ装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
G06T1/00 500A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038131
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大城 篤志
【テーマコード(参考)】
5B057
【Fターム(参考)】
5B057BA24
5B057CA13
5B057CB13
5B057CD02
5B057CD03
5B057CE02
5B057DA07
5B057DB03
5B057DC19
5B057DC40
(57)【要約】
【課題】複数の3次元点群データ同士の位置合わせの精度を向上させる。
【解決手段】取得部32が、周辺環境の各点の3次元位置を検出する複数のカメラの各々によるセンシング結果である複数の3次元点群データを取得し、受付部34が、複数の3次元点群データの各々を示す3次元画像の各々を画面に表示すると共に、3次元画像の各々において、複数の3次元点群データ間の位置合わせの基準となる領域の指定を受け付け、調整部が、複数の3次元点群データの各々の領域に対応する部分3次元点群データ同士の位置合わせを行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺環境の各点の3次元位置を検出する複数のセンサの各々によるセンシング結果である複数の3次元点群データを取得する取得部と、
前記複数の3次元点群データの各々を示す3次元画像の各々を画面に表示すると共に、前記3次元画像の各々において、前記複数の3次元点群データ間の位置合わせの基準となる領域の指定を受け付ける受付部と、
前記複数の3次元点群データの各々の前記領域に対応する部分3次元点群データ同士の位置合わせを行う調整部と、
を含む3次元点群位置合わせ装置。
【請求項2】
前記受付部は、位置と、3次元の各方向のサイズとをそれぞれ変更可能な3次元枠を前記画面に表示し、前記3次元枠に対する変更操作を受け付けることにより、前記領域の指定を受け付ける請求項1に記載の3次元点群位置合わせ装置。
【請求項3】
前記受付部は、前記3次元画像の各々及び前記3次元枠を、拡大、縮小、及び回転可能に前記画面に表示する請求項2に記載の3次元点群位置合わせ装置。
【請求項4】
3次元点群データに含まれる物体の領域を抽出するように訓練された機械学習モデルにより抽出される領域を、前記基準となる物体を示す領域の候補として提示する提示部を含み、
前記受付部は、前記候補に対応付けて前記画面に表示された前記3次元枠に対する変更操作を受け付ける
請求項2に記載の3次元点群位置合わせ装置。
【請求項5】
前記調整部は、前記部分3次元点群データ同士の同次変換行列を算出する請求項1に記載の3次元点群位置合わせ装置。
【請求項6】
前記調整部による位置合わせ結果に基づいて、前記複数の3次元点群データを統合する統合部を含む請求項1に記載の3次元点群位置合わせ装置。
【請求項7】
前記調整部は、ノイズ除去後の前記部分3次元点群データ同士の位置合わせを行う請求項1に記載の3次元点群位置合わせ装置。
【請求項8】
前記調整部による位置合わせ済みの複数のセンサに、新たなセンサを追加する場合、
前記受付部は、前記複数のセンサのいずれか1つについての前記3次元画像と、前記新たなセンサについての3次元画像とに対する前記領域の指定を受け付け、
前記調整部は、前記複数のセンサのいずれか1つについての3次元点群データと、前記新たなセンサについての3次元点群データとの前記領域に対応する部分3次元点群データ同士の位置合わせを行う
請求項1に記載の3次元点群位置合わせ装置。
【請求項9】
取得部と、受付部と、調整部とを含む3次元点群位置合わせ装置が実行する3次元点群位置合わせ方法であって、
前記取得部が、周辺環境の各点の3次元位置を検出する複数のセンサの各々によるセンシング結果である複数の3次元点群データを取得し、
前記受付部が、前記複数の3次元点群データの各々を示す3次元画像の各々を画面に表示すると共に、前記3次元画像の各々において、前記複数の3次元点群データ間の位置合わせの基準となる領域の指定を受け付け、
前記調整部が、前記複数の3次元点群データの各々の前記領域に対応する部分3次元点群データ同士の位置合わせを行う
3次元点群位置合わせ方法。
【請求項10】
コンピュータを、
周辺環境の各点の3次元位置を検出する複数のセンサの各々によるセンシング結果である複数の3次元点群データを取得する取得部、
前記複数の3次元点群データの各々を示す3次元画像の各々を画面に表示すると共に、前記3次元画像の各々において、前記複数の3次元点群データ間の位置合わせの基準となる領域の指定を受け付ける受付部、及び、
前記複数の3次元点群データの各々の前記領域に対応する部分3次元点群データ同士の位置合わせを行う調整部
として機能させるための3次元点群位置合わせプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元点群位置合わせ装置、3次元点群位置合わせ方法、及び3次元点群位置合わせプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ等の複数のセンサによるセンシング結果の位置合わせを行う技術が提案されている。例えば、クラスタ毎に、共通視野を利用して設定したクラスタ座標系における各カメラの位置及び姿勢を求め、クラスタ毎に複数のカメラの画像からローカル座標系での物体位置を算出するカメラシステムが提案されている。このシステムは、各共通カメラの位置及び姿勢について隣接クラスタ間にて所定の誤差を持たせることによりクラスタ座標系の相互の配置関係を調整した統合座標系を設定し、クラスタ座標系での物体位置を統合座標系に変換する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ある環境を複数のセンサでセンシングした複数の3次元点群データ同士の位置合わせを行う場合、一般的には、各3次元点群データ内から特徴点を抽出し、3次元点群データ間で特徴点の対応付けを行う。しかし、環境内に、机、ディスプレイ等、同一の物体が複数存在する場合、特徴点の対応付けに誤りが生じ、位置合わせが失敗する場合がある。特に工場では同じ製品を大量に生産する関係上、同一の物体が複数存在する環境になることが多い。
【0005】
本発明は、複数の3次元点群データ同士の位置合わせの精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る3次元点群位置合わせ装置は、周辺環境の各点の3次元位置を検出する複数のセンサの各々によるセンシング結果である複数の3次元点群データを取得する取得部と、前記複数の3次元点群データの各々を示す3次元画像の各々を画面に表示すると共に、前記3次元画像の各々において、前記複数の3次元点群データ間の位置合わせの基準となる領域の指定を受け付ける受付部と、前記複数の3次元点群データの各々の前記領域に対応する部分3次元点群データ同士の位置合わせを行う調整部と、を含んで構成される。
【0007】
また、前記受付部は、位置と、3次元の各方向のサイズとをそれぞれ変更可能な3次元枠を前記画面に表示し、前記3次元枠に対する変更操作を受け付けることにより、前記領域の指定を受け付けてもよい。
【0008】
また、前記受付部は、前記3次元画像の各々及び前記3次元枠を、拡大、縮小、及び回転可能に前記画面に表示してもよい。
【0009】
また、本発明に係る3次元点群位置合わせ装置は、3次元点群データに含まれる物体の領域を抽出するように訓練された機械学習モデルにより抽出される領域を、前記基準となる物体を示す領域の候補として提示する提示部を含み、前記受付部は、前記候補に対応付けて前記画面に表示された前記3次元枠に対する変更操作を受け付けてもよい。
【0010】
また、前記調整部は、前記部分3次元点群データ同士の同次変換行列を算出してもよい。
【0011】
また、本発明に係る3次元点群位置合わせ装置は、前記調整部による位置合わせ結果に基づいて、前記複数の3次元点群データを統合する統合部を含んでもよい。
【0012】
また、前記調整部は、ノイズ除去後の前記部分3次元点群データ同士の位置合わせを行うようにしてもよい。
【0013】
また、前記調整部による位置合わせ済みの複数のセンサに、新たなセンサを追加する場合、前記受付部は、前記複数のセンサのいずれか1つについての前記3次元画像と、前記新たなセンサについての3次元画像とに対する前記領域の指定を受け付け、前記調整部は、前記複数のセンサのいずれか1つについての3次元点群データと、前記新たなセンサについての3次元点群データとの前記領域に対応する部分3次元点群データ同士の位置合わせを行うようにしてもよい。
【0014】
本発明に係る3次元点群位置合わせ方法は、取得部と、受付部と、調整部とを含む3次元点群位置合わせ装置が実行する3次元点群位置合わせ方法であって、前記取得部が、周辺環境の各点の3次元位置を検出する複数のセンサの各々によるセンシング結果である複数の3次元点群データを取得し、前記受付部が、前記複数の3次元点群データの各々を示す3次元画像の各々を画面に表示すると共に、前記3次元画像の各々において、前記複数の3次元点群データ間の位置合わせの基準となる領域の指定を受け付け、前記調整部が、前記複数の3次元点群データの各々の前記領域に対応する部分3次元点群データ同士の位置合わせを行う方法である。
【0015】
また、本発明に係る3次元点群位置合わせプログラムは、コンピュータを、周辺環境の各点の3次元位置を検出する複数のセンサの各々によるセンシング結果である複数の3次元点群データを取得する取得部、前記複数の3次元点群データの各々を示す3次元画像の各々を画面に表示すると共に、前記3次元画像の各々において、前記複数の3次元点群データ間の位置合わせの基準となる領域の指定を受け付ける受付部、及び、前記複数の3次元点群データの各々の前記領域に対応する部分3次元点群データ同士の位置合わせを行う調整部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る3次元点群位置合わせ装置、方法、及びプログラムによれば、複数の3次元点群データ同士の位置合わせの精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態が適用される作業環境の一例を示す図である。
【
図2】3次元点群位置合わせ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】3次元点群位置合わせ装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図4】3次元点群データの計測の一例を示す図である。
【
図5】カメラ毎の3次元点群データの一例を示す図である。
【
図6】領域指定時の受付画面の一例を示す図である。
【
図7】候補表示時の受付画面の一例を示す図である。
【
図8】統合3次元画像表示時の受付画面の一例を示す図である。
【
図9】3次元点群位置合わせ処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法及び比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
本実施形態では、例えば、
図1に示すような作業環境を、複数の視点の各々からカメラで撮影し、各カメラで3次元点群データが計測される場合を想定する。なお、本実施形態では、センサが3次元点群データを取得可能なカメラである場合を例に説明するが、センサはレーザレーダ等であってもよい。複数の視点から3次元点群データを計測して統合することにより、1台のカメラでは死角となって3次元点群データが欠損してしまう部分を補間することができる。
【0020】
複数の3次元点群データを統合するためには、3次元点群データ同士を精度良く位置合わせする必要がある。一般的な位置合わせの手法では、各3次元点群データ内から特徴点を抽出し、3次元点群データ間で特徴点の対応付けを行う。しかしこの場合、環境内に、机、ディスプレイ等、同一又は類似の外観を有する物体が複数存在する場合、特徴点の対応付けに誤りが生じ、位置合わせが失敗する場合がある。
【0021】
また、例えば、椅子の座面と背もたれとのように、回転対象な形状の物体から特徴点が抽出された場合、一方のカメラの3次元点群データにおける座面の特徴点と、他方のカメラの3次元点群データにおける背もたれの特徴点とが対応付けられる可能性がある。この場合、位置合わせの際に、一方の3次元点群データの上下が反転してしまう場合もある。
【0022】
さらに、繰り返し処理により位置合わせの調整を行う場合において、上記のように位置合わせの精度が低い場合には、繰り返し回数が多くなるなど、位置合わせに要する時間が増大する。
【0023】
そこで、本実施形態では、簡易な方法で3次元点群データの位置合わせの精度を向上させる手法を提案する。以下、本実施形態に係る3次元点群位置合わせ装置について説明する。
【0024】
図2は、本実施形態に係る3次元点群位置合わせ装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2に示すように、3次元点群位置合わせ装置10は、CPU(Central Processing Unit)12、メモリ14、記憶装置16、入力装置18、出力装置20、記憶媒体読取装置22、及び通信I/F(Interface)24を有する。各構成は、バス26を介して相互に通信可能に接続されている。
【0025】
記憶装置16には、3次元点群位置合わせ処理を実行するための3次元点群位置合わせプログラムが格納されている。CPU12は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各構成を制御したりする。すなわち、CPU12は、記憶装置16からプログラムを読み出し、メモリ14を作業領域としてプログラムを実行する。CPU12は、記憶装置16に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0026】
メモリ14は、RAM(Random Access Memory)により構成され、作業領域として一時的にプログラム及びデータを記憶する。記憶装置16は、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0027】
入力装置18は、例えば、キーボードやマウス等の、各種の入力を行うための装置である。出力装置20は、例えば、ディスプレイやプリンタ等の、各種の情報を出力するための装置である。出力装置20として、タッチパネルディスプレイを採用することにより、入力装置18として機能させてもよい。
【0028】
記憶媒体読取装置22は、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、ブルーレイディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の各種記憶媒体に記憶されたデータの読み込みや、記憶媒体に対するデータの書き込み等を行う。通信I/F24は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0029】
次に、本実施形態に係る3次元点群位置合わせ装置10の機能構成について説明する。
図3は、3次元点群位置合わせ装置10の機能構成の例を示すブロック図である。
図3に示すように、3次元点群位置合わせ装置10は、機能構成として、取得部32と、受付部34と、提示部36と、調整部38と、統合部40とを含む。また、3次元点群位置合わせ装置10の所定の記憶領域には、候補抽出モデル42が記憶される。各機能構成は、CPU12が記憶装置16に記憶された3次元点群位置合わせプログラムを読み出し、メモリ14に展開して実行することにより実現される。
【0030】
取得部32は、周辺環境の各点の3次元位置を検出する複数のカメラの各々によるセンシング結果である複数の3次元点群データを取得する。例えば、
図4に示すような環境を、カメラ1とカメラ2とがそれぞれ異なる視点から撮影して、それぞれ3次元点群データを計測するとする。この場合、取得部32は、例えば、
図5に示すように、カメラ1及びカメラ2の各々についての3次元点群データを取得する。
【0031】
受付部34は、複数の3次元点群データの各々を示す3次元画像の各々を画面に表示する。そして、受付部34は、3次元画像の各々において、周辺環境に含まれる物体のうち、複数の3次元点群データ間の位置合わせの基準となる物体(以下、「ターゲット」という)を示す領域の指定を受け付ける。
【0032】
例えば、受付部34は、
図6に示すような受付画面50を、出力装置20の一例であるディスプレイに表示する。
図6の例では、受付画面50は、表示領域52と、領域指定枠54と、候補表示ボタン56と、領域指定ボタン58と、値指定領域60と、カメラ選択領域62と、位置合わせボタン64とを含む。受付部34は例えばCPU12により実現される。
【0033】
表示領域52には、各カメラの3次元点群データを示す3次元画像、領域指定枠54、後述する候補枠66、複数の3次元点群データを統合した統合3次元点群データを示す統合3次元画像等が表示される。
【0034】
領域指定枠54は、表示領域52内での位置と、3次元の各方向のサイズとをそれぞれ変更可能な3次元枠である。受付部34は、ドラッグ操作、又は値指定領域60への値の入力により、領域指定枠54に対する変更操作を受け付ける。ユーザは、領域指定枠54を、拡大、縮小、回転等させることにより、ターゲットを囲むように領域指定枠54を変形させる。また、3次元点群データを示す3次元画像の方を拡大、縮小、回転等させてもよい。受付部34は、領域指定枠54の内部の3次元の領域を、ターゲットの領域として受け付ける。受付部34は、領域指定枠54で指定された最新の領域の位置情報をいったん所定の記憶領域に記憶しておき、再度、領域指定を行う場合に、記憶しておいた位置情報に基づいて、領域指定枠54を表示する。なお、
図6では、キューブ形状の領域指定枠54の例を示しているが、これに限定されず、領域指定枠54は、球形状、カプセル形状等であってもよい。
【0035】
候補表示ボタン56は、ターゲットの候補を表示する場合に選択されるボタンである。候補表示ボタン56が選択されると、後述する提示部36により、候補に対応する部分を囲む候補枠66が表示領域52に表示される。
図7に、候補表示ボタン56が選択された場合の受付画面50の一例を示す。
図7では、候補枠66を破線で示している。
図7では、領域指定枠54と同様、キューブ形状の候補枠66の例を示しているが、これに限定されず、候補枠66は、球形状、カプセル形状等であってもよい。
【0036】
受付部34は、1又は複数の候補枠66が選択されると、選択された候補枠66を領域指定枠54に変更し、上記の領域指定枠54に対する変更操作を受け付ける。このように、いったん候補を表示することで、ユーザによるターゲットの選択を容易にすることができる。また、物体を囲む候補枠66から変更された領域指定枠54に対して変更操作を行えばよいため、微調整程度の簡易な操作で、ターゲットの領域を指定することができる。
【0037】
領域指定ボタン58は、領域指定を行う際に選択されるボタンである。受付部34は、領域指定ボタン58が選択されると、
図6に示すように、カメラ選択領域62で選択されたカメラの3次元点群データを示す3次元画像を表示領域52に表示すると共に、変更操作可能な領域指定枠54を表示領域52に表示する。
【0038】
値指定領域60は、領域指定枠54の表示領域52内での位置と、3次元の各方向のサイズとをそれぞれ変更するために、値を直接指定するための領域である。すなわち、領域指定枠54は、ドラッグ操作による変更操作も可能であるし、値指定領域60への値の入力によっても変更操作が可能である。
【0039】
カメラ選択領域62は、処理対象の3次元点群データに対応するカメラを選択するための領域である。ユーザは、領域指定ボタン58を選択している場合には、領域指定を行う対象の3次元点群データに対応するカメラを選択する。また、ユーザは、位置合わせボタン64を選択している場合には、位置合わせを行う対象の3次元点群データに対応するカメラを選択する。
【0040】
位置合わせボタン64は、複数の3次元点群データの位置合わせを行う際に選択されるボタンである。受付部34は、位置合わせボタン64が選択されると、カメラ選択領域62で選択されているカメラに対応する複数の3次元点群データの各々について、領域指定枠54で指定されたターゲットの領域に対応する部分3次元点群データの情報を調整部38へ受け渡す。
【0041】
提示部36は、受付画面50で候補表示ボタン56が選択されると、3次元点群データを候補抽出モデル42に入力し、3次元点群データから候補を抽出する。候補抽出モデル42は、3次元点群データから物体の領域を抽出するように予め訓練された機械学習モデルとしてよい。なお、候補として抽出する物体を、ターゲットに適した物体、例えば、同一又は類似の外観を持つ複数の物体が環境内に存在しない物体に絞り込んで、候補抽出モデル42を訓練しておいてもよい。提示部36は、3次元画像において、抽出された候補に対応する部分を囲む候補枠66を表示領域52に表示する。
【0042】
調整部38は、各カメラに対応する部分3次元点群データ同士の位置合わせを行う。具体的には、調整部38は、複数のカメラのうちの1つを基準とし、基準のカメラに対する他のカメラの位置及び回転の変位を示す同次変換行列を算出する。例えば、調整部38は、各部分3次元点群データからFPFH(Fast Point Feature Histograms)により特徴点を抽出して対応付けを行うことにより、同次変換行列を算出する。さらに、調整部38は、ICP(Iterative Closest Point)を適用して、FPFHにより算出された同次変換行列の精度を上げるようにしてもよい。
【0043】
なお、調整部38は、各部分3次元点群データからノイズを除去した後に、位置合わせを行うようにしてもよい。これにより、誤った特徴点の対応付けが行われることをより抑制することができる。
【0044】
統合部40は、調整部38による位置合わせ結果に基づいて、複数の3次元点群データを統合する。具体的には、統合部40は、基準となるカメラの3次元点群データと、他のカメラの3次元点群データに調整部38で算出された同次変換行列を適用した3次元点群データとを統合し、統合3次元点群データを生成する。統合部40は、
図8に示すように、統合3次元点群データを示す統合3次元画像を、受付画面50の表示領域52に表示する。
【0045】
次に、本実施形態に係る3次元点群位置合わせ装置10の作用について説明する。
図9は、3次元点群位置合わせ装置10のCPU12により実行される3次元点群位置合わせ処理の流れを示すフローチャートである。CPU12が記憶装置16から3次元点群位置合わせプログラムを読み出して、メモリ14に展開して実行することにより、CPU12が3次元点群位置合わせ装置10の各機能構成として機能し、
図9に示す3次元点群位置合わせ処理が実行される。
【0046】
ステップS10で、取得部32が、カメラ毎の3次元点群データを取得する。次に、ステップS12で、受付部34が、例えば、
図6に示すような受付画面50を表示する。次に、ステップS14で、受付部34が、受付画面50の候補表示ボタン56が選択されたか否かを判定する。候補表示ボタン56が選択された場合には、ステップS16へ移行し、選択されていない場合には、ステップS18へ移行する。
【0047】
ステップS16では、受付部34が、カメラ選択領域62で選択されたカメラの3次元点群データを示す3次元画像を表示領域52に表示する。そして、提示部36が、3次元点群データを候補抽出モデル42に入力し、3次元点群データからターゲットの候補を抽出し、3次元画像において、抽出された候補に対応する部分を囲む候補枠66を、表示領域52に表示する。
【0048】
次に、ステップS18で、受付部34が、領域指定ボタン58が選択されたか否かを判定する。領域指定ボタン58が選択された場合には、ステップS20へ移行し、選択されていない場合には、ステップS22へ移行する。ステップS20では、受付部34が、1又は複数の候補枠66の選択を受け付け、選択された候補枠66を領域指定枠54に変更し、領域指定枠54に対する変更操作を受け付けることにより、ターゲットの領域の指定を受け付ける。受付部34は、カメラ選択領域62でのカメラの選択を受け付け、各カメラについての3次元点群データに対するターゲットの領域の指定を受け付ける。
【0049】
次に、ステップS22で、受付部34が、位置合わせボタン64が選択されたか否かを判定する。位置合わせボタン64が選択された場合には、ステップS24へ移行し、選択されていない場合には、ステップS14に戻る。
【0050】
ステップS24では、受付部34が、各カメラに対応する複数の3次元点群データの各々について指定されたターゲットの領域に対応する部分3次元点群データの情報を調整部38へ受け渡す。そして、調整部38が、複数のカメラのうちの1つを基準とし、基準のカメラに対する他のカメラの位置及び回転の変位を示す同次変換行列を算出する。
【0051】
次に、ステップS26で、統合部40が、基準となるカメラの3次元点群データと、他のカメラの3次元点群データに上記ステップS24で算出された同次変換行列を適用した3次元点群データとを統合して、統合3次元点群データを生成する。そして、統合部40が、統合3次元点群データを示す統合3次元画像を表示領域52に表示して、3次元点群位置合わせ処理は終了する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る3次元点群位置合わせ装置は、周辺環境の各点の3次元位置を検出する複数のセンサの各々によるセンシング結果である複数の3次元点群データを取得する。また、3次元点群位置合わせ装置は、複数の3次元点群データの各々を示す3次元画像の各々を画面に表示すると共に、3次元画像の各々において、周辺環境に含まれる物体のうち、複数の3次元点群データ間の位置合わせの基準となる物体を示す領域の指定を受け付ける。そして、複数の3次元点群データの各々の領域に対応する部分3次元点群データ同士の位置合わせを行う。このように、本実施形態に係る3次元点群位置合わせ装置は、ユーザによる簡易な操作で指定されたターゲットの領域に含まれる3次元点群データのみを使って、複数の3次元点群同士の位置合わせを行う。そのため、対応付けの誤りがなく、複数の3次元点群データ同士の位置合わせの精度を向上させることができる。
【0053】
また、例えば、椅子の座面と背もたれとのように、回転対象な形状を含む物体をターゲットとする場合でも、脚部分も含めて領域指定を行うことで、3次元点群データ同士の位置合わせの際に上下が反転するような状況を抑制することができる。
【0054】
また、繰り返し処理により3次元点群データ同士の位置合わせの調整を行う場合、本実施形態では、精度の高い位置合わせにより調整の収束が早まり、位置合わせに要する時間を削減することができる。
【0055】
また、位置合わせ済みの複数のカメラに、新たなカメラを追加する場合、位置合わせ調整済みの複数のカメラのいずれか1つについての3次元画像と、新たなカメラについての3次元画像とに対する領域の指定を受け付ければよい。この場合、複数のカメラのいずれか1つについての3次元点群データと、新たなカメラについての3次元点群データとで、指定された領域に対応する部分3次元点群データ同士の位置合わせが行われる。これにより、新たにカメラを追加する場合に、再度全てのカメラの位置合わせを行う必要がなく、改変後の設備を早期に立ち上げることができる。
【0056】
また、本実施形態に係る3次元点群データ位置合わせ装置は、
図1に示すような、人とロボットとが協働して作業を行うような環境に適用することができる。複数のカメラで得られた複数の3次元点群データを統合することで、死角のない3次元点群データが得られる。この3次元点群データを用いて作業環境を認識し、ロボットの制御に反映することで、ロボットの作業空間を適切に生成することができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、位置合わせの基準となる物体をターゲットとして、その領域を指定する場合について説明したが、基準となる領域は必ずしも物体を含まなくてもよい。
【0058】
また、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した3次元点群位置合わせ処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、3次元点群位置合わせ処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0059】
また、上記実施形態では、3次元点群位置合わせプログラムが記憶装置に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、ブルーレイディスク、USBメモリ等の記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0060】
以下に、本開示に関する付記項を記載する。
【0061】
(付記項1)
周辺環境の各点の3次元位置を検出する複数のセンサの各々によるセンシング結果である複数の3次元点群データを取得する取得部と、
前記複数の3次元点群データの各々を示す3次元画像の各々を画面に表示すると共に、前記3次元画像の各々において、前記複数の3次元点群データ間の位置合わせの基準となる領域の指定を受け付ける受付部と、
前記複数の3次元点群データの各々の前記領域に対応する部分3次元点群データ同士の位置合わせを行う調整部と、
を含む3次元点群位置合わせ装置。
【0062】
(付記項2)
前記受付部は、位置と、3次元の各方向のサイズとをそれぞれ変更可能な3次元枠を前記画面に表示し、前記3次元枠に対する変更操作を受け付けることにより、前記領域の指定を受け付ける付記項1に記載の3次元点群位置合わせ装置。
【0063】
(付記項3)
前記受付部は、前記3次元画像の各々及び前記3次元枠を、拡大、縮小、及び回転可能に前記画面に表示する付記項2に記載の3次元点群位置合わせ装置。
【0064】
(付記項4)
3次元点群データに含まれる物体の領域を抽出するように訓練された機械学習モデルにより抽出される領域を、前記基準となる物体を示す領域の候補として提示する提示部を含み、
前記受付部は、前記候補に対応付けて前記画面に表示された前記3次元枠に対する変更操作を受け付ける
付記項2又は付記項3に記載の3次元点群位置合わせ装置。
【0065】
(付記項5)
前記調整部は、前記部分3次元点群データ同士の同次変換行列を算出する付記項1~付記項4のいずれか1項に記載の3次元点群位置合わせ装置。
【0066】
(付記項6)
前記調整部による位置合わせ結果に基づいて、前記複数の3次元点群データを統合する統合部を含む付記項1~付記項5のいずれか1項に記載の3次元点群位置合わせ装置。
【0067】
(付記項7)
前記調整部は、ノイズ除去後の前記部分3次元点群データ同士の位置合わせを行う付記項1~付記項6のいずれか1項に記載の3次元点群位置合わせ装置。
【0068】
(付記項8)
前記調整部による位置合わせ済みの複数のセンサに、新たなセンサを追加する場合、
前記受付部は、前記複数のセンサのいずれか1つについての前記3次元画像と、前記新たなセンサについての3次元画像とに対する前記領域の指定を受け付け、
前記調整部は、前記複数のセンサのいずれか1つについての3次元点群データと、前記新たなセンサについての3次元点群データとの前記領域に対応する部分3次元点群データ同士の位置合わせを行う
付記項1~付記項7のいずれか1項に記載の3次元点群位置合わせ装置。
【符号の説明】
【0069】
10 3次元点群位置合わせ装置
12 CPU
14 メモリ
16 記憶装置
18 入力装置
20 出力装置
22 記憶媒体読取装置
24 通信I/F
26 バス
32 取得部
34 受付部
36 提示部
38 調整部
40 統合部
42 候補抽出モデル
50 受付画面
52 表示領域
54 領域指定枠
56 候補表示ボタン
58 領域指定ボタン
60 値指定領域
62 カメラ選択部
64 位置合わせボタン
66 候補枠