(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128874
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20240913BHJP
G07G 1/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G06K7/10 268
G06K7/10 240
G06K7/10 144
G07G1/00 311D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038141
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】井上 和奏
(72)【発明者】
【氏名】三平 哲也
【テーマコード(参考)】
3E142
【Fターム(参考)】
3E142CA20
3E142GA04
3E142GA35
3E142HA03
3E142JA01
(57)【要約】
【課題】RFIDタグによるゲートの通過を、RSSIを利用することにより判定する際に、適切に判定を行う。
【解決手段】情報処理システム1は、複数のアンテナ2と、前記アンテナ2毎に、読み取られたRFIDタグの数とRSSIレンジの総和とに基づいて重み値を算出する重み算出部3と、対象タグについての前記アンテナ2毎のRSSIレンジを前記アンテナ2に対応する前記重み値により重み付けした値と当該対象タグの情報を受信した前記アンテナ2の数とに基づいてスコアを算出するスコア算出部4と、前記対象タグが前記ゲートを通過したか否かを前記スコアと所定の閾値との比較の結果を用いて判定する通過判定部5とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートに分散して設けられ、RFIDタグの情報を読み取るために前記RFIDタグからの信号を受信する複数のアンテナと、
前記アンテナ毎に、特定の期間において当該アンテナを介して読み取られた前記RFIDタグの数と、前記特定の期間において当該アンテナを介して読み取られたそれぞれの前記RFIDタグのRSSIレンジの総和とに基づいて、当該アンテナの重み値を算出する重み算出部と、
判定対象の前記RFIDタグについての前記アンテナ毎のRSSIレンジを前記アンテナに対応する前記重み値により重み付けした値と、当該判定対象の前記RFIDタグの情報を受信した前記アンテナの数とに基づいて、スコアを算出するスコア算出部と、
前記判定対象の前記RFIDタグが前記ゲートを通過したか否かを、前記スコアと所定の第一の閾値との比較の結果を用いて判定する通過判定部と
を有する情報処理システム。
【請求項2】
前記判定対象の前記RFIDタグが読み取られた回数についての前記特定の期間における総数に応じて第二の閾値を設定する閾値設定部を有し、
前記通過判定部は、前記判定対象の前記RFIDタグについての前記特定の期間におけるRSSIレンジと前記第二の閾値との比較の結果も用いて、前記判定対象の前記RFIDタグが前記ゲートを通過したか否かを判定する
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記通過判定部は、前記判定対象の前記RFIDタグが読み取られた回数と所定の第三の閾値との比較の結果、又は、前記判定対象の前記RFIDタグの平均RSSIレンジと所定の第四の閾値との比較の結果の少なくともいずれか一方も用いて、前記判定対象の前記RFIDタグが前記ゲートを通過したか否かを判定する
請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記判定対象の前記RFIDタグの種類に応じて第五の閾値を設定する閾値設定部を有し、
前記通過判定部は、前記判定対象の前記RFIDタグの前記特定の期間に含まれる注目期間における最大のRSSIと前記第五の閾値との比較の結果も用いて、前記判定対象の前記RFIDタグが前記ゲートを通過したか否かを判定する
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記アンテナは、前記ゲートの入口と出口とに分散して配置されており、
前記特定の期間は、第1の時点から第2の時点までの期間であり、前記第1の時点は、人が前記ゲートの入口を通過した時点から所定の第1の時間だけ遡った時点であり、前記第2の時点は、前記人が前記ゲートの出口を通過した時点から所定の第2の時間だけ経過した時点である
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記RSSIレンジは、前記特定の期間内の部分期間における最大のRSSIと、前記特定の期間の最小のRSSIとにより定義され、
前記部分期間は、人が前記ゲートの入口を通過した時点に対応する所定期間及び前記人が前記ゲートの出口を通過した時点に対応する所定期間である
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記注目期間は、前記特定の期間内の部分期間であって、人が前記ゲートの入口を通過した時点に対応する所定期間及び前記人が前記ゲートの出口を通過した時点に対応する所定期間である
請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記重み算出部は、前記特定の期間において前記アンテナを介して読み取られたそれぞれの前記RFIDタグの前記RSSIレンジの総和を、前記特定の期間において前記アンテナを介して読み取られた前記RFIDタグの数で除算することにより、当該アンテナの前記重み値を算出する
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項9】
ゲートに分散して設けられ、RFIDタグの情報を読み取るために前記RFIDタグからの信号を受信する複数のアンテナのそれぞれについて、特定の期間において当該アンテナを介して読み取られた前記RFIDタグの数と、前記特定の期間において当該アンテナを介して読み取られたそれぞれの前記RFIDタグのRSSIレンジの総和とに基づいて、当該アンテナの重み値を算出し、
判定対象の前記RFIDタグについての前記アンテナ毎のRSSIレンジを前記アンテナに対応する前記重み値により重み付けした値と、当該判定対象の前記RFIDタグの情報を受信した前記アンテナの数とに基づいて、スコアを算出し、
前記判定対象の前記RFIDタグが前記ゲートを通過したか否かを、前記スコアと所定の第一の閾値との比較の結果を用いて判定する
情報処理方法。
【請求項10】
ゲートに分散して設けられ、RFIDタグの情報を読み取るために前記RFIDタグからの信号を受信する複数のアンテナのそれぞれについて、特定の期間において当該アンテナを介して読み取られた前記RFIDタグの数と、前記特定の期間において当該アンテナを介して読み取られたそれぞれの前記RFIDタグのRSSIレンジの総和とに基づいて、当該アンテナの重み値を算出する重み算出ステップと、
判定対象の前記RFIDタグについての前記アンテナ毎のRSSIレンジを前記アンテナに対応する前記重み値により重み付けした値と、当該判定対象の前記RFIDタグの情報を受信した前記アンテナの数とに基づいて、スコアを算出するスコア算出ステップと、
前記判定対象の前記RFIDタグが前記ゲートを通過したか否かを、前記スコアと所定の第一の閾値との比較の結果を用いて判定する通過判定ステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は情報処理システム、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(radio frequency identifier)タグに関する様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1は、RFIDタグからの信号のRSSI(Received Signal Strength Indicator)を利用して、当該RFIDタグがゲートを通過したか否かを判定する技術について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
RFIDタグによるゲートの通過を、RSSIを利用して判定する場合、ゲートの周辺に存在するに過ぎず実際にはゲートを通過していないRFIDタグがあると、誤判定が生じる恐れがある。電波吸収体を用いたり進入禁止エリアを設けたりするなどの物理的な環境の整備を行うことにより、このような誤判定を抑制しうるが、そのような環境を設けるには、ゲートが設置されるエリアとして十分な広さが必要となる。このため、上述した環境の整備以外の方法で、RFIDタグによるゲートの通過を適切に判定することが求められている。そこで、本明細書に開示される実施形態が達成しようとする目的の1つは、RFIDタグによるゲートの通過を、RSSIを利用することにより判定する際に、適切に判定を行うための新規な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様にかかる情報処理システムは、
ゲートに分散して設けられ、RFIDタグの情報を読み取るために前記RFIDタグからの信号を受信する複数のアンテナと、
前記アンテナ毎に、特定の期間において当該アンテナを介して読み取られた前記RFIDタグの数と、前記特定の期間において当該アンテナを介して読み取られたそれぞれの前記RFIDタグのRSSIレンジの総和とに基づいて、当該アンテナの重み値を算出する重み算出部と、
判定対象の前記RFIDタグについての前記アンテナ毎のRSSIレンジを前記アンテナに対応する前記重み値により重み付けした値と、当該判定対象の前記RFIDタグの情報を受信した前記アンテナの数とに基づいて、スコアを算出するスコア算出部と、
前記判定対象の前記RFIDタグが前記ゲートを通過したか否かを、前記スコアと所定の第一の閾値との比較の結果を用いて判定する通過判定部と
を有する。
【0006】
第2の態様にかかる情報処理方法では、
ゲートに分散して設けられ、RFIDタグの情報を読み取るために前記RFIDタグからの信号を受信する複数のアンテナのそれぞれについて、特定の期間において当該アンテナを介して読み取られた前記RFIDタグの数と、前記特定の期間において当該アンテナを介して読み取られたそれぞれの前記RFIDタグのRSSIレンジの総和とに基づいて、当該アンテナの重み値を算出し、
判定対象の前記RFIDタグについての前記アンテナ毎のRSSIレンジを前記アンテナに対応する前記重み値により重み付けした値と、当該判定対象の前記RFIDタグの情報を受信した前記アンテナの数とに基づいて、スコアを算出し、
前記判定対象の前記RFIDタグが前記ゲートを通過したか否かを、前記スコアと所定の第一の閾値との比較の結果を用いて判定する。
【0007】
第3の態様にかかるプログラムは、
ゲートに分散して設けられ、RFIDタグの情報を読み取るために前記RFIDタグからの信号を受信する複数のアンテナのそれぞれについて、特定の期間において当該アンテナを介して読み取られた前記RFIDタグの数と、前記特定の期間において当該アンテナを介して読み取られたそれぞれの前記RFIDタグのRSSIレンジの総和とに基づいて、当該アンテナの重み値を算出する重み算出ステップと、
判定対象の前記RFIDタグについての前記アンテナ毎のRSSIレンジを前記アンテナに対応する前記重み値により重み付けした値と、当該判定対象の前記RFIDタグの情報を受信した前記アンテナの数とに基づいて、スコアを算出するスコア算出ステップと、
前記判定対象の前記RFIDタグが前記ゲートを通過したか否かを、前記スコアと所定の第一の閾値との比較の結果を用いて判定する通過判定ステップと
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
上述の態様によれば、RFIDタグによるゲートの通過を、RSSIを利用することにより判定する際に、適切に判定を行うための新規な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態の概要にかかる情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態にかかる情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】センサについて説明する模式図であり、ゲートを上から見た図である。
【
図5】情報処理装置が用いるデータの期間について示す模式図である。
【
図6】ゲートを通過するRFIDタグのRSSIの典型的な推移の一例と、ゲートを通過していないタグRFIDのRSSIの典型的な推移の一例を比較したグラフである。
【
図7】情報処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】データ取得期間に読取装置によって読み取られた10個のRFIDタグのRSSIのデータと、データ取得期間に読取装置によって読み取られた回数とをまとめた表である。
【
図9】アンテナ毎に、タグ数と、RSSIレンジの総和と、これらから算出されるアンテナの重み値をまとめた表である。
【
図10】データ取得期間に読取装置によって読み取られた10個のRFIDタグの重み付きレンジ値、その総和、検出アンテナ数、スコア、及び、スコアと所定の閾値との比較結果をまとめた表である。
【
図11A】実施の形態にかかる情報処理システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図11B】実施の形態にかかる情報処理システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図11BのステップS110の処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図13】
図11BのステップS112の処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図14】
図11BのステップS113の処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図15】
図11BのステップS114の処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図16】情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態の概要>
実施の形態の詳細な説明に先立って、実施の形態の概要を説明する。
図1は、実施の形態の概要にかかる情報処理システム1の構成の一例を示すブロック図である。情報処理システム1は、RFIDタグがゲートを通過したか否かを判定するシステムであり、
図1に示すように、複数のアンテナ2、重み算出部3、スコア算出部4、及び通過判定部5を有する。
【0011】
複数のアンテナ2は、ゲートに分散して設けられている。各アンテナ2は、RFIDタグの情報を読み取るために、RFIDタグからの信号を受信する。各アンテナ2は、複数のRFIDタグの情報を読み取りうる。
【0012】
重み算出部3は、各アンテナ2に対する重み値を算出する。重み算出部3は、アンテナ2毎に、特定の期間において当該アンテナ2を介して読み取られたRFIDタグの数と、この特定の期間において当該アンテナ2を介して読み取られたそれぞれのRFIDタグのRSSIレンジの総和とに基づいて、重み値を算出する。ここで、RSSIレンジとは、一つのアンテナ2が受信した、一つのRFIDタグの信号のRSSIの最大値と最小値の差である。つまり、RSSIレンジとは、注目するRFIDタグについての注目するアンテナ2における最大RSSIと最小RSSIの差である。
【0013】
スコア算出部4は、判定対象のRFIDタグについてのアンテナ2毎のRSSIレンジをアンテナ2に対応する重み値により重み付けした値と、当該判定対象のRFIDタグの情報を受信したアンテナ2の数とに基づいて、スコアを算出する。
【0014】
通過判定部5は、判定対象のRFIDタグがゲートを通過したか否かを、スコアと所定の第一の閾値との比較の結果を用いて判定する。
【0015】
このように、情報処理システム1では、RFIDタグのRSSIレンジを単純に閾値と比較することでRFIDタグのゲートの通過が判定されるのではなく、アンテナ2に応じた重み値により重み付けされたRSSIレンジを閾値と比較することで判定される。これにより、ゲートを通過しないRFIDタグがゲートの周辺に存在する場合であっても、RFIDタグによるゲートの通過が、本判定方法を採用しない場合に比較して適切に判定される。
【0016】
<実施の形態の詳細>
次に、実施の形態の詳細について説明する。
図2は、実施の形態にかかる情報処理システム10の構成の一例を示すブロック図である。なお、
図2では、情報処理システム10に加え、RFIDタグ80も図示されている。
【0017】
情報処理システム10は、アンテナ102とRFIDタグ80との間の信号の送受信の結果を利用して、RFIDタグ80がゲート90を通過したか否かを判定するシステムである。
図3は、ゲート90を横から見た模式図である。なお、
図3では、ゲート90の他に、ゲート90を通過する人70(RFIDタグ80)も図示されている。例えば、ゲート90は、商品81を販売する店舗に設置されている。商品81には、識別情報などが記録されたRFIDタグ80が付けてあり、客である人70は、購入したい商品81とともにゲート90を通過する。これにより、ゲート90をRFIDタグ80が通過する。
図3に示した例では、人70は、RFIDタグ80が付いた一以上の商品81が入れられたカゴ82を携帯して、矢印で示す方向に移動して、ゲート90を通過する。そして、情報処理システム10は、いずれのRFIDタグ80が、ゲート90を通過したかを特定する。このようなユースケースの場合、情報処理システム10がRFIDタグ80によるゲート90の通過を判定することで、客である人70が購入しようとしている商品81を特定することが可能になる。ただし、上述したユースケースは、一例に過ぎず、他の用途で、情報処理システム10が用いられてもよい。例えば、RFIDタグ80が取り付けられる対象は、商品に限らず、任意の物品でもよい。また、RFIDタグ80は、必ずしも物品に付けられなくてもよい。
【0018】
図2に示すように、情報処理システム10は、読取装置100、センサ200、及び情報処理装置300を有する。
【0019】
読取装置100は、RFIDタグ80と通信して当該RFIDタグ80に記憶された情報を読み取るための装置であり、RFIDリーダー101とアンテナ102とを有する。読取装置100は、情報処理装置300と有線又は無線により通信可能に接続されている。RFIDタグ80は、例えばパッシブ型のRFIDタグである。RFIDタグ80には、EPC(Electronic Product Code)とTID(Tag identifier)が予め記録されている。EPCは、RFIDタグ80に付与されたユニークな番号であり、EPCによりRFIDタグ80を一意に特定することができる。このため、EPCは、タグ識別情報と称されてもよい。また、TIDは、RFIDタグ80の種類を識別することが可能な情報であり、タグ種類識別情報と称されてもよい。読取装置100はRFIDタグ80に記憶されたこれらの情報を読み取る。なお、読取装置100はRFIDタグ80に記憶された更なる他の情報を読み取ってもよい。
【0020】
RFIDリーダー101は、予め定められた通信プロトコルに従って、RFIDタグ80との間でアンテナ102を介して通信し、RFIDタグ80に記憶された情報を読み取る制御回路である。また、RFIDリーダー101は、アンテナ102が受信したRFIDタグ80からの信号のRSSIを測定する。RFIDリーダー101は、RFIDタグ80から読み取った情報と、RFIDタグ80からの信号のRSSIを情報処理装置300に出力する。これにより、情報処理装置300は、RFIDタグ80の読み取りのために受信された信号のRSSIを取得する。
【0021】
本実施の形態では、ゲート90は、一例として、第1の側面91aと第2の側面91bとにより構成されており、第1の側面91aと第2の側面91bの間を人70がRFIDタグ80とともに通過する。ゲート90の通過方向の長さ、すなわちゲート90の通路の長さは、例えば、120cmであるが、これに限られない。第1の側面91aと第2の側面91bとの間の距離、すなわち、通路の幅は、例えば90cmであるが、これに限られない。
【0022】
ゲート90には、複数のアンテナ102が分散して設けられている。アンテナ102は、RFIDタグ80の情報を読み取るためにRFIDタグ80からの信号を受信する。具体的には、アンテナ102は、RFIDタグ80に向けて電波を送信し、RFIDタグ80が送信した電波を受信する。アンテナ102からの電波の送信は、繰り返し実行される。このため、同一のRFIDタグ80からの応答が複数回発生しうる。すなわち、アンテナ102は、同一のRFIDタグ80から複数回、電波(信号)を受信しうる。このため、同一のRFIDタグ80について、RFIDリーダー101は、複数回、読み取り処理及びRSSIの測定処理を実行しうる。
【0023】
本実施の形態では、具体的には、ゲート90には、アンテナ102_1、アンテナ102_2、アンテナ102_3、及びアンテナ102_4が設けられている。なお、アンテナ102の数は、一例に過ぎず、必ずしも4つでなくてもよい。以下、アンテナ102_1、アンテナ102_2、アンテナ102_3、及びアンテナ102_4について、特に区別することなく言及する場合、アンテナ102と称す。
【0024】
本実施の形態では、アンテナ102は、ゲート90の入口と出口とに分散して配置されている。より詳細には、
図3に示すように、アンテナ102は、ゲート90の入口の両脇と、ゲート90の出口の両脇とに分散して配置されている。アンテナ102_1は、ゲート90の入口側の所定の第1地点の一方の脇(具体的には、第1の側面91a)に設けられており、アンテナ102_2は、ゲート90の入口の当該第1地点の他方の脇(具体的には、第2の側面91b)に設けられている。同様に、アンテナ102_3は、ゲート90の出口側の所定の第2地点の一方の脇(具体的には、第1の側面91a)に設けられており、アンテナ102_4は、ゲート90の出口側の当該第2地点の他方の脇(具体的には、第2の側面91b)に設けられている。
【0025】
また、ゲート90には、人70の通過を検出するセンサ200が設けられている。本実施の形態では、具体的には、センサ200_1及びセンサ200_2が設けられている。以下、センサ200_1及びセンサ200_2について、特に区別することなく言及する場合、センサ200と称す。
【0026】
センサ200_1は、人70がゲート90の入口を通過した時点を検出するセンサである。また、センサ200_2は、人70がゲート90の出口を通過した時点を検出するセンサである。より詳細には、センサ200_1は、ゲート90の通路において、入口側のアンテナ102_1、102_2に最も接近する地点(つまり、上述した第1の地点)を人70が通過した時点を検出する。また、センサ200_2は、ゲート90の通路において、出口側のアンテナ102_3、102_4に最も接近する地点(つまり、上述した第2の地点)を人70が通過した時点を検出する。なお、
図3では、一例として、センサ200_1は第2の側面91bの上部であってアンテナ102_2の直上に設けられており、センサ200_2は第2の側面91bの上部であってアンテナ102_4の直上に設けられている。ただし、センサ200の設置位置は、これに限られない。センサ200は、情報処理装置300と有線又は無線により通信可能に接続されており、人70が通過した時点を示す情報を、情報処理装置300に送信する。
【0027】
図4は、本実施の形態にかかるセンサ200について説明する模式図であり、ゲート90を上から見た図である。
図4に示すように、本実施の形態では、センサ200は、赤外線センサであり、ゲート90における人70の通過経路と交差する方向に赤外線210を照射し、その反射光により、人70の通過タイミングを検知する。なお、
図4では、破線の矢印が示されているが、この破線の矢印は、センサ200が検出した人70の通過時点に基づいて定まる後述する最大RSSI取得期間T
Bにおける人70(RFIDタグ80)の移動範囲の例を示している。
【0028】
なお、センサ200は、人70の動線を検知することにより、人70が特定の地点を通過した時点を検出してもよい。この場合、センサ200は、ゲート90が設けられた領域における部分領域毎に、赤外線を照射し、各赤外線の反射光により、どの部分領域を人70が通過したかを特定することにより、人70の動線を検知してもよい。なお、センサ200は、ゲート90における所定の地点を人70が通過した時点を特定することが可能な公知の任意のセンサであってもよく、具体的な構成は、上述した構成に限られない。例えば、ゲート90を撮影するカメラがセンサ200として用いられてもよい。
【0029】
情報処理装置300は、読取装置100及びセンサ200と通信可能に接続されている。情報処理装置300は、センサ200の検出結果及び読取装置100により測定されたRSSIに基づいて、読取装置100により読み取られたRFIDタグ80がゲート90を通過したタグであるか、そうではないタグであるかを判定する装置である。
【0030】
ゲート90を通過するRFIDタグ80は、アンテナ102に近づき、その後、アンテナ102から遠ざかるため、ゲート90を通過するRFIDタグ80は、基本的に、比較的高いRSSIが測定される傾向とRSSIレンジが比較的大きくなる傾向がある。これに対して、ゲート90を通過しないRFIDタグ80は、通過するRFIDタグ80のような動きはしないため、比較的低いRSSIが測定される傾向とRSSIレンジが比較的小さくなる傾向がある。このような特性を利用すれば、判定対象のRFIDタグ80が通過したか否かを判定することができる。しかしながら、無線信号のRSSIは、様々な要因により変動しうるため、上述した特性を必ずしも示さない恐れがある。このため、単純に、最大RSSIと閾値とを比較したり、RSSIレンジと閾値とを比較したりしただけでは、適切に判定できず、誤判定が生じる恐れがある。そこで、本実施の形態では、そのような誤判定を抑制するため、情報処理装置300は、以下で説明される処理により判定を行う。
【0031】
まず、本実施の形態で情報処理装置300が、どのような期間のデータを用いるかについて説明する。本実施の形態では、情報処理装置300は、次のように定義される期間であるデータ取得期間T
Aのデータを用いる。また、特に、最大RSSIについては、情報処理装置300は、次のように定義される期間である最大RSSI取得期間T
BにおけるRSSIを用いる。
図5は、情報処理装置300が用いるデータの期間について示す模式図である。
【0032】
図5に示すように、本実施の形態において、データ取得期間T
Aは、時点t
1から所定の時間αだけ遡った時点である第1の時点から、時点t
2から所定の時間βだけ経過した時点である第2の時点までの期間である。ここで、時点t
1は、入口側のセンサ200_1により人70の通過が検出された時点であり、時点t
2は、出口側のセンサ200_2により人70の通過が検出された時点である。このような期間のデータを用いることにより、人70及びRFIDタグ80がゲート90を通過した際のデータを適切に取得することができる。
【0033】
また、最大RSSI取得期間T
Bは、データ取得期間T
A内の部分期間として定義される期間であって、時点t
1又は時点t
2に対応する所定期間である。最大RSSI取得期間T
Bは、時点t
1又は時点t
2を中心とする所定時間(2γ)の期間である。なお、
図5に示すように、時点t
1により定義される最大RSSI取得期間T
Bを最大RSSI取得期間T
B1と称し、時点t
2により定義される最大RSSI取得期間T
Bを最大RSSI取得期間T
B2と称すこととする。本実施の形態では、一例として、α=1秒、β=0.5秒、γ=0.25秒(2γ=0.5秒)であるが、これらは例に過ぎず、他の値が用いられてもよい。
【0034】
データ取得期間T
Aと最大RSSI取得期間T
Bのこのような定義により、データ取得期間T
Aは、人70(RFIDタグ80)がゲート90の入口の近傍に進入したタイミングからゲート90の出口の近傍から離れるタイミングまでの期間に相当する期間となる。また、最大RSSI取得期間T
Bは、人70(RFIDタグ80)がアンテナ102に最接近した期間(
図4の破線矢印を参照)に相当する期間となる。
【0035】
図6は、ゲート90を通過するRFIDタグ80のRSSIの典型的な推移の一例と、ゲート90を通過していないRFIDタグ80のRSSIの典型的な推移の一例を比較したグラフである。以下、ゲート90を実際に通過したRFIDタグ80を通過タグと称し、ゲート90を実際には通過していないRFIDタグ80を非通過タグと称すことがある。なお、
図6に示したグラフは、各アンテナ102を介して測定された各RSSIのうち最大のRSSIに注目して、その時間変化を示したグラフである。
図6において、実線で示されたグラフが通過タグのRSSIの推移の例を示し、破線で示されたグラフが非通過タグのRSSIの推移の例を示す。
【0036】
図6に示されるように、ゲート90を実際に通過するRFIDタグ80は、アンテナ102の位置を通過する時点t
1、t
2において、RSSIがピークとなる傾向がある。これに対して、通過しないRFIDタグ80においては、そのような傾向はなく、不規則にRSSIが変化する。このため、最大RSSI取得期間T
B1又はT
B2のデータから最大RSSIを抽出することにより、通過しないRFIDタグ80について、最大RSSIとして大きな値が抽出される可能性を低減することができる。その結果、
図6に示すように、非通過タグについてRSSIレンジの値として、大きな値が算出される可能性も低減することができる。つまり、実際にはゲート90を通過していないRFIDタグ80がゲート90を通過したタグであると誤って判定されることを抑制することができる。このように、本実施の形態では、RSSIレンジは、特定の期間(データ取得期間T
A)内の部分期間(最大RSSI取得期間T
B)における最大のRSSIと、当該特定の期間(データ取得期間T
A)の最小のRSSIとにより定義される。
【0037】
図7は、情報処理装置300の機能構成の一例を示すブロック図である。
図7に示すように、情報処理装置300は、通信制御部301、読取制御部302、データ取得部303、重み算出部304、閾値設定部305、スコア算出部306、及び通過判定部307を有する。
【0038】
通信制御部301は、他の装置と通信し、他の装置との間で情報の送受信を行なう。具体的には、通信制御部301は、読取装置100のRFIDリーダー101から、RFIDタグ80に記憶されている情報を取得する。また、通信制御部301は、読取装置100のRFIDリーダー101から、RSSIを取得する。なお、上述した通り、同一のRFIDタグ80について、記憶されている情報の取得とRSSIの取得は、読取装置100が動作している間、繰り返される。また、通信制御部301は、センサ200から検出結果を取得する。
【0039】
読取制御部302は、読取装置100の起動と動作の終了を制御する。例えば、読取制御部302は、制御信号を読取装置100に送信することにより、読取装置100を起動させたり、動作を終了させたりする。読取装置100が起動すると、アンテナ102による電波の送受信が開始される。なお、本実施の形態では、情報処理装置300から遠隔により、読取装置100の動作が制御されるが、必ずしも、遠隔により動作が制御されなくてもよい。この場合、情報処理装置300において、読取制御部302は省略されてもよい。
【0040】
データ取得部303は、通信制御部301が他の装置から受信した情報から、後述する処理に必要とされるデータを取得する処理を行う。具体的には、データ取得部303は、時点t1、t2に基づいて、データ取得期間TAのデータを取得する。また、データ取得部303は、最大RSSIを特定するために、時点t1、t2に基づいて、データ取得期間TAのデータから、最大RSSI取得期間TBにおけるRSSIのデータを抽出する。また、データ取得部303は、読み取られたRFIDタグ80のそれぞれについて、データ取得期間TAにおける最小RSSIと、最大RSSI取得期間TBにおける最大RSSIからRSSIレンジを算出する。また、データ取得部303は、読み取られたRFIDタグ80のそれぞれについて、データ取得期間TAにおける平均RSSIを算出する。ここで、平均RSSIとは、各アンテナ102において測定されたRSSIの平均値である。以上、データ取得部303の処理について説明したが、上述した処理の一部又は全てが、情報処理装置300が有する他の構成要素のいずれかにおいて行なわれてもよい。
【0041】
重み算出部304は、各アンテナ102に対する重み値を算出する。具体的には、重み算出部304は、タグ数Niと、RSSIレンジの総和Siとに基づいて、アンテナ102_iの重み値Wiを算出する。ここで、本実施の形態では、i=1,2,3,4である。また、タグ数Niは、上述したデータ取得期間TAにおいて当該アンテナ102_iを介して読み取られたRFIDタグ80の数である。また、RSSIレンジの総和Siは、上述したデータ取得期間TAにおいて当該アンテナ102_iを介して読み取られたそれぞれのRFIDタグ80のRSSIレンジの総和である。より詳細には、重み算出部304は、RSSIレンジの総和Siを、タグ数Niで除算することにより、当該アンテナ102_iの重み値Wiを算出する。すなわち、各アンテナ102_iの重み値Wiは、以下の式(1)により算出される。
【0042】
Wi=Si/Ni ・・・(1)
【0043】
このように、重み算出部304は、RSSIレンジの総和Siを、タグ数Niで除算することにより、アンテナ102_iの重み値を算出する。なお、重み値の算出は、人70がゲート90を通過する度に行われる。
【0044】
ここで、重み値の算出の具体例を示す。
図8は、データ取得期間T
Aに読取装置100によって読み取られた10個のRFIDタグ80のRSSIのデータと、データ取得期間T
Aに読取装置100によって読み取られた回数とをまとめた表である。ここで示した例では、5個のRFIDタグ80(表におけるNo.1のタグからNo.5のタグ)がゲート90を実際に通過したタグである。また、残りの5個のRFIDタグ80(表におけるNo.6のタグからNo.10のタグ)がゲート90を実際には通過していないタグである。
図8に示した表では、各RFIDタグ80について、アンテナ102_iにおける最大RSSI、最小RSSI、及びそれらから算出されるRSSIレンジが示されている。なお、上述したとおり、
図8における最小RSSIは、データ取得期間T
A内のデータから抽出されるRSSIの最小値であるが、最大RSSIは、データ取得期間T
A内の最大RSSI取得期間T
Bのデータだけに注目して抽出されるRSSIの最大値である。また、
図8に示す表において、アンテナ102_iを介して検出された最大RSSI及び最小RSSIの値がいずれも0であるRFIDタグ80は、アンテナ102_iを介した読み取りができなかったことを示す。したがって、例えば、No.10のタグからの信号は、アンテナ102_1とアンテナ102_4では、受信できたが、アンテナ102_2とアンテナ102_3では受信できていない。
【0045】
図8に示すようなデータが得られた場合、重み算出部304は、
図9に示す表のように、各アンテナ102に対する重み値を算出する。
図9は、アンテナ102毎に、タグ数N
iと、RSSIレンジの総和S
iと、これらから算出されるアンテナ102_iの重み値W
iをまとめた表である。この例の場合では、アンテナ102_3に対して、最も大きな重み値が算出されている。
【0046】
次に、閾値設定部305について説明する。なお、本開示においては、ゲート90を通過したか否かについての判定対象のRFIDタグ80を、対象タグとも称すこととする。
【0047】
閾値設定部305は、対象タグの種類に応じて最大RSSI用閾値を設定する。ここで、最大RSSI用閾値は、対象タグについての最大RSSIとの比較に用いる閾値である。RFIDタグ80は、当該RFIDタグ80を構成するチップの消費電力及び当該RFIDタグ80が有するアンテナの構成などに応じて読み取り距離が異なっている。すなわち、RFIDタグ80は、タグの種類に応じて、読み取り距離が異なっている。ここで、読み取り距離とは、所定の送信電力で読取装置100のアンテナ102からRFIDタグ80に信号を出力した際に、RFIDタグ80が応答可能な、RFIDタグ80とこのRFIDタグ80からの応答信号を受信するアンテナ102間の最大距離を言う。読み取り距離は、通信可能距離もしくは応答可能距離とも称すことができる。
【0048】
RFIDタグ80が読み取り距離についてどのような特性を有するタグであるかは、このRFIDタグ80に記憶されているTIDにより特定することができる。したがって、本実施の形態では、閾値設定部305は、対象タグから読み取ったTIDに基づいて、この対象タグの最大RSSI用閾値を設定する。情報処理装置300には、TID毎に、最大RSSI用閾値が記憶されている。例えば、各TIDに対する最大RSSI用閾値は、情報処理装置300の後述するメモリ351などの記憶装置に記憶されている。ここで、TIDに基づいて特定されるRFIDタグ80の読み取り距離が長いほど、高い値の最大RSSI用閾値が、TIDに対応付けられて記憶されている。したがって、閾値設定部305は、読み取り距離が長いRFIDタグ80ほど高い値を最大RSSI用閾値として設定する。なお、各TIDに対する最大RSSI用閾値の具体的な値は、ゲート90の設置環境に応じて、実験的に予め定められている。
【0049】
また、閾値設定部305は、対象タグが読み取られた回数についてのデータ取得期間TAにおける総数nに応じて、RSSIレンジ用閾値を設定する。ここで、RSSIレンジ用閾値は、対象タグについてのRSSIレンジとの比較に用いる閾値である。また、あるRFIDタグ80についてのデータ取得期間TAにおける読み取れた回数の総数nは、このRFIDタグ80がアンテナ102_iを介してデータ取得期間TAに読み取られた回数niの総和である。すなわち、本実施の形態では、n=n1+n2+n3+n4である。以下、あるRFIDタグ80についてのデータ取得期間TAにおける読み取れた回数の総数を、単に、読取回数とも称す。
【0050】
より詳細には、閾値設定部305は、対象タグが読み取られた回数についてのデータ取得期間TAにおける総数nが基準値Rを超える場合、この基準値Rを超えない場合に比べて高い閾値を、RSSIレンジ用閾値として用いることを決定する。具体的には、閾値設定部305は、対象タグについての総数nが基準値Rを超える場合、予め定められた2つの異なる閾値のうち、より高い閾値を、RSSIレンジ用閾値として用いることを決定する。逆に、閾値設定部305は、対象タグについての総数nが基準値Rを超えない場合、予め定められた2つの異なる閾値のうち、より低い閾値を、RSSIレンジ用閾値として用いることを決定する。情報処理装置300には、これら2つの閾値が予め記憶されている。例えば、RSSIレンジ用閾値として用いられる2つの閾値は、情報処理装置300の後述するメモリ351などの記憶装置に記憶されている。なお、これら2つの閾値の具体的な値は、ゲート90の設置環境に応じて、実験的に予め定められている。
【0051】
本実施の形態では、上述した基準値Rは、一例として次の式(2)のように定義される基準値である。
【0052】
R=nMAX/2 ・・・(2)
【0053】
ここで、nMAXは、データ取得期間TAにおいて読み取られた全てのRFIDタグ80のうち、読み取られた回数が最も多いRFIDタグ80の読み取られた回数である。
【0054】
ここで、RSSIレンジ用閾値の設定についての具体例を示す。データ取得期間T
Aに
図8に示したデータが得られたものとする。
図8においては、各RFIDタグ80が読取装置100によって何回読み取られたかが示されている。この場合において、対象タグが
図8の表においてNo.3のRFIDタグ80であるときに用いられるRSSIレンジ用閾値を考える。
図8に示した例では、最も読取回数が多いRFIDタグ80は、
図8の表においてNo.1のタグであり、その回数は180回である。したがって、この場合、n
MAX=180である。よって、R=180/2=90である。また、対象タグの読取回数は、50である。したがって、n=50である。よって、この場合、n<Rであるため、閾値設定部305は、No.3のRFIDタグ80に対するRSSIレンジ用閾値として、予め定められた2つの異なる閾値のうち、より低い閾値を用いることを決定する。
【0055】
なお、上述した例では、基準値Rを式(2)にしたがって定義したが、基準値Rは、対象タグの読取回数nが多いか少ないかを判定するための基準値であればよく、その定義は、式(2)に限定されない。例えば、基準値Rは、データ取得期間TAに読み取られた各タグの読取回数の平均値を用いて定義されてもよいし、実験的に特定された固定値が用いられてもよい。
【0056】
次に、スコア算出部306について説明する。スコア算出部306は、対象タグがゲート90を通過したか否かを判定するためのスコアを対象タグ毎に算出する。本実施の形態では、スコア算出部306は、重み算出部304が算出した重み値Wiを用いて、スコアSwを算出する。具体的には、スコア算出部306は、対象タグについてのアンテナ102毎のRSSIレンジをアンテナ102に対応する重み値により重み付けした値と、当該対象タグの情報を受信したアンテナ102の数とに基づいて、スコアSwを算出する。より詳細には、スコア算出部306は、まず、対象タグのアンテナ102_iについてのRSSIレンジと、このアンテナ102_iに対して算出された重み値Wiとの積を、全てのアンテナ102に対して算出する。これにより、対象タグについてのアンテナ102毎のRSSIレンジをアンテナ102に対応する重み値により重み付けした値である、重み付きレンジ値が算出される。そして、スコア算出部306は、各アンテナ102の重み付きレンジ値の総和を、当該対象タグの情報を受信したアンテナ102の数で除算することにより、スコアSwを算出する。すなわち、スコア算出部306は、各アンテナ102の重み付きレンジ値の総和を、当該対象タグの情報を受信したアンテナ102の数を用いて正規化することにより、スコアSwを算出する。つまり、以下の式(3)によりスコアSwは定義される。ここで、対象タグのアンテナ102_iについてのRSSIレンジをriとし、アンテナ102_iに対する重み値をWiとし、対象タグのアンテナ102_iについての重み付きレンジ値をRiとし、対象タグの情報を受信したアンテナ102の数をnaとする。また、ΣRiは、iについてのRiの総和を示す。
【0057】
Sw=(ΣRi)/na ・・・(3)
ただし、Ri=ri×Wi
【0058】
ここで、スコアS
wの算出についての具体例を示す。データ取得期間T
Aに
図8に示したデータが得られたものとする。上述した通り、各アンテナ102に対する重み値は、重み算出部304によって
図9に示す表のように算出される。この場合、各RFIDタグ80に対するスコアS
wは、
図10に示す表のように算出される。
図10は、データ取得期間T
Aに読取装置100によって読み取られた10個のRFIDタグ80の重み付きレンジ値R
i、R
iの総和ΣR
i、アンテナ102の数n
a、スコアS
w、及び、スコアS
wと所定の閾値との比較結果をまとめた表である。なお、
図10で示した例では、所定の閾値の値は、45である。
【0059】
次に、通過判定部307について説明する。通過判定部307は、対象タグがゲート90を通過したか否かを判定する。本実施の形態では、通過判定部307は、対象タグがゲート90を通過したか否かの判定に、第一の比較の結果と、第二の比較の結果と、第三の比較の結果と、第四の比較の結果とを用いる。
【0060】
ここで、第一の比較は、タグの種類に応じて閾値設定部305により設定された最大RSSI用閾値と、対象タグの最大RSSIとの比較である。なお、ここでいう対象タグの最大RSSIとは、注目期間において当該対象タグについて各アンテナ102を介して測定された各RSSIのうち最大のRSSIをいう。すなわち、次のようにして定義されるM1、M2、M3、M4のうち、最大値である。ここで、Mi(ただし、i=1,2,3,4)は、注目期間においてアンテナ102_iを介して測定された当該対象タグについてのRSSIの最大値である。なお、ここでいう注目期間は、本実施の形態では、具体的には、上述した最大RSSI取得期間TBである。ただし、注目期間は特定の期間(例えばデータ取得期間TA)内の期間であればよく、当該特定の期間に一致する期間であってもよい。このように、本実施の形態では、通過判定部307は、対象タグの特定の期間に含まれる注目期間における最大のRSSIと、タグの種類に応じて設定された閾値との比較の結果を用いて、対象タグがゲート90を通過したか否かを判定する。第一の比較によれば、対象タグの読み取り距離に対応する閾値を用いて、対象タグがゲート90を通過したか否かを判定することができる。このため、読み取り距離が異なる様々なRFIDタグ80が用いられる場合であっても、対象タグがゲート90を通過したか否かを適切に判定することができる。
【0061】
第二の比較は、スコア算出部306が算出したスコアと所定の閾値との比較である。なお、この所定の閾値は、ゲート90の設置環境に応じて、実験的に予め定められている。このように、本実施の形態では、通過判定部307は、各アンテナ102の重み値に基づいてスコア算出部306が算出したスコアと、所定の閾値との比較の結果を用いて、対象タグがゲート90を通過したか否かを判定する。
【0062】
本実施の形態において、このような判定が行われる理由について説明する。発明者らは、RFIDタグ80がゲート90を通過する際のデータから、次のことを発見した。すなわち、発明者らは、データ取得期間T
Aにおいて、非通過タグの読み取りが比較的少ないアンテナ102に対しては、非通過タグについて検出されるRSSIレンジが大きくなりにくいという傾向が存在することを発見した。つまり、例えば
図8から
図10に示されるアンテナ102_3のように、非通過タグの読み取りが比較的少ないアンテナ102に対しては、非通過タグとして理想的なRSSIレンジが得られる傾向があることを発見した。このため、非通過タグの読み取りが比較的少ないアンテナ102に対応するRSSIレンジに着目して、閾値とRSSIレンジの比較を行うことで、通過タグと非通過タグの区別をより適切に行うことができる。つまり、非通過タグの読み取りが比較的少ないアンテナ102に対応するRSSIレンジに大きな重み値を適用した上で、閾値とRSSIレンジの比較を行うことで、通過タグと非通過タグの区別をより適切に行うことができる。したがって、本実施の形態では、重み算出部304は、各アンテナ102に対して、上記式(1)で示されるような重み値を算出している。式(1)におけるRSSIレンジの総和S
iは、上述した通り、データ取得期間T
Aにおいて当該アンテナ102_iを介して読み取られたそれぞれのRFIDタグ80のRSSIレンジの総和である。また、上述した通り、通過タグにはRSSIレンジが比較的大きくなる傾向があるのに対し、非通過タグはその逆の傾向がある。このため、アンテナ102_iが読み取ったタグのうち、通過タグが占める割合が多いほど総和S
iは、大きな値になる。換言すると、アンテナ102_iが読み取ったタグのうち、非通過タグが占める割合が少ないほど総和S
iは、大きな値になる。非通過タグの読み取りが少ないアンテナ102_iでは、総和S
iが大きくなる。したがって、本実施の形態で算出される重み値W
iは、非通過タグの読み取りが少ないアンテナ102ほど大きくなる。その結果、第二の比較の結果を用いた判定では、非通過タグの読み取りが少ないアンテナ102に対応するRSSIレンジの検出結果を重視して対象タグの判定が行われ、誤った判定が行われる可能性が低減される。
【0063】
第二の比較の結果を用いることにより、例えば、通過タグとしての理想的なRSSIレンジが得られなかった通過タグ、すなわち、実際にはゲート90を通過したRFIDタグ80であるものの検出されたRSSIレンジが比較的小さいものを、非通過タグと区別することができる。通過タグとしての理想的なRSSIレンジが得られなかった通過タグと、非通過タグ(特に非通過タグとしての理想的なRSSIレンジとは異なるRSSIレンジが得られた非通過タグ)とを、RSSIレンジにより区別することは難しい。すなわち、両者を区別する閾値を設定することは一般的に難しい。これに対し、重み値を用いて算出されるスコアと閾値の比較を行う場合、非通過タグに対して理想的なRSSIレンジが得られるアンテナによる検出結果に大きな重みが与えられるので、両者を区別しうる閾値を設定することが容易となる。
【0064】
ここで、
図8から
図10に示した例を参照して、第二の比較について説明する。
図8及び
図9に示した表からわかるように、アンテナ102_3は、あるデータ取得期間T
Aにおいて、通過タグの読み取りが多く、非通過タグの読み取りが少ない。そのため、このデータ取得期間T
Aにおいて取得されたデータに対する判定において、アンテナ102_3に対する重み値が他のアンテナ102に比べて最も大きく設定される。その結果、No.1からNo.10の各RFIDタグ80に対するスコアは、
図10のように算出される。これらスコアと、所定の閾値(具体的には、45)とを比較すると、通過タグであるNo.1からNo.5のタグを通過タグとして適切に判定可能である一方、非通過タグであるNo.6からNo.10のタグを非通過タグとして適切に判定可能である。特に、通過タグとしての理想的なRSSIレンジが得られなかったNo.3のタグと、非通過タグとを、適切に区別することができる。
【0065】
次に、上述した第三の比較について説明する。第三の比較は、対象タグが読み取られた回数に応じて閾値設定部305により設定されたRSSIレンジ用閾値と、対象タグについての特定の期間におけるRSSIレンジとの比較である。なお、本実施の形態では、上述した通り、対象タグについての特定の期間におけるRSSIレンジは、具体的には、データ取得期間TAにおけるRSSIの最小値と、最大RSSI取得期間TBにおけるRSSIの最大値とから算出されるRSSIレンジである。また、ここでいう対象タグについてのRSSIレンジとは、対象タグについてのアンテナ102毎のRSSIレンジのうち最大のRSSIレンジをいう。すなわち、r1、r2、r3、r4のうち、最大値である。ここで、ri(ただし、i=1,2,3,4)は、対象タグのアンテナ102_iについてのRSSIレンジである。このように、本実施の形態では、通過判定部307は、対象タグについての特定の期間におけるRSSIレンジと、読み取られた回数に応じて設定された閾値との比較の結果を用いて、対象タグがゲート90を通過したか否かを判定する。
【0066】
本実施の形態において、このような判定が行われる理由について説明する。発明者らは、RFIDタグ80がゲート90を通過する際のデータから、次のことを発見した。すなわち、発明者らは、通過タグは、読み取り回数が多いと、RSSIレンジとして大きな値が得られる傾向にあることを発見した。このため、読み取り回数に応じた閾値と、RSSIレンジとを比較することで、通過タグと非通過タグの区別をより適切に行うことができる。具体的には、閾値設定部305は、読み取り回数が基準値Rよりも多い対象タグに対しては、厳しい閾値(比較的大きな値の閾値)を設定し、そうではない対象タグに対しては緩い閾値(比較的小さな値の閾値)を設定する。第二の比較の結果を用いることにより、例えば、読み取り回数が少ないものの、ある程度のRSSIレンジが取得された通過タグに対して、適切な判定を行うことが期待できる。また、読み取り回数は多いものの、十分なRSSIレンジが取得されていない非通過タグに対して、適切な判定を行うことも期待できる。
【0067】
本実施の形態では、通過判定部307は、第一の比較において、対象タグの最大RSSIが最大RSSI用閾値よりも高いという比較結果が得られた場合、対象タグは通過タグであると判定する。また、通過判定部307は、第一の比較において、そのような比較結果が得られなかった場合、当該対象タグに対して第二の比較を実施する。通過判定部307は、第二の比較において、スコア算出部306が算出したスコアが所定の閾値よりも大きいという比較結果が得られた場合、当該対象タグは通過タグであると判定する。また、通過判定部307は、第二の比較において、そのような比較結果が得られなかった場合、当該対象タグに対して第三の比較を実施する。そして、通過判定部307は、第三の比較において、当該対象タグについてのRSSIレンジが、RSSIレンジ用閾値よりも大きいという比較結果が得られなかった場合、当該対象タグは非通過タグであると判定する。
【0068】
通過判定部307は、第三の比較において、当該対象タグについてのRSSIレンジが、RSSIレンジ用閾値よりも大きいという比較結果が得られた場合、当該対象タグは通過タグであると判定してもよい。しかしながら、この場合、実際には非通過タグである対象タグを誤って通過タグと判定しうることがある。このため、本実施の形態では、このような誤判定を少なくするために第四の比較が行われる。
【0069】
第四の比較は、対象タグが読み取られた回数と、所定の閾値ThAとの比較である。また、第四の比較は、対象タグの平均RSSIと、所定の閾値ThBとの比較である。なお、第四の比較に用いられる閾値は、ゲート90の設置環境に応じて、実験的に予め定められている。本実施の形態では、通過判定部307は、第三の比較において、当該対象タグについてのRSSIレンジが、RSSIレンジ用閾値よりも大きいという比較結果が得られた場合、当該対象タグに対して第四の比較を実施する。そして、通過判定部307は、対象タグが読み取られた回数が所定の閾値ThAよりも多く、かつ、対象タグの平均RSSIが所定の閾値ThBよりも高い場合、通過タグと判定し、そうではない場合、非通過タグと判定する。
【0070】
通過タグは、各アンテナ102の付近を通過するため、基本的に、アンテナ102に読み取られる回数は多くなり、また、検出されるRSSIは大きくなる傾向がある。したがって、第四の比較によって、読み取られた回数が閾値を超えていない対象タグ、又は、平均RSSIが閾値を超えていない対象タグを、非通過タグに分類することにより、通過タグへと分類される条件を厳しくすることができる。このため、非通過タグを通過タグと誤判定する可能性を低減することができる。
【0071】
なお、第四の比較では、対象タグが読み取られた回数についての比較と、平均RSSIについての比較のいずれか一方だけが行なわれてもよい。また、より正確な判定を行うために第四の比較が行われることが好ましいが、上述した通り、第三の比較で非通過タグと判定されなかった場合には、第四の比較を経ずに、当該対象タグが通過タグであると判定されてもよい。また、第四の比較が第三の比較の結果にかかわらず行なわれてもよい。また、通過判定部307は、第一から第四の比較を任意に組み合わせて、判定を行なってもよいし、これらの比較のうちの一部の比較だけを行って判定を行なってもよい。また、第一から第四の比較のうち一部の比較だけを行って判定が行われる場合、用いられない比較に関する処理もしくは当該処理を行う情報処理システム10の構成要素は省略されてもよい。
【0072】
なお、本実施の形態では、重み算出部304が算出した重み値は、第二の比較のためのスコアの算出に用いられるが、他の用途に利用されてもよい。上述したように、アンテナ102_iが読み取ったタグのうち、通過タグが占める割合が多いほど総和Siは、大きな値になる。また、アンテナ102_iが読み取ったタグのうち、非通過タグが占める割合が多いほど総和Siは、小さな値になる。このため、通過タグを多く読んでいるアンテナ102に対する重み値は大きく、非通過タグを多く読むアンテナ102に対する重み値は小さくなる。ここで、重み値が小さすぎるアンテナ102が存在する場合、アンテナ102の設置についてミスが発生していることや、ゲート90の直近の場所又はゲート90の内部に、RFIDタグ80が置き去りになっている可能性などが考えられる。すなわち、算出された重み値が小さすぎる場合には、異常が発生している可能性がある。したがって、異常を検出するために、重み値が算出されてもよい。この場合、例えば、重み算出部304は、算出された重み値が所定の閾値以下である場合、異常の発生を知らせる通知を出力してもよい。
【0073】
次に、情報処理システム10の動作の流れについて説明する。
図11A及び
図11Bは、情報処理システム10の動作の一例を示すフローチャートである。以下、フローチャートに沿って、動作の流れを説明する。
【0074】
ステップS100において、情報処理装置300の読取制御部302が読取装置100を起動し、RFIDタグ80の読み取りが開始される。具体的には、アンテナ102から電波が送信され、RFIDタグ80からの応答信号がアンテナ102により受信される。そして、情報処理装置300の通信制御部301は、読取装置100から、RFIDタグ80に記憶されている情報及びRSSIを受信する。
【0075】
RFIDタグ80とともに人70がゲート90に進入すると、ステップS101において、ゲート90の入口側のセンサ200_1が人70の通過を検出し、人70が入口側の地点を通過した時点を示す情報を、情報処理装置300に送信する。そして、この情報を、情報処理装置300の通信制御部301が受信する。
【0076】
その後、ステップS102において、ゲート90の出口側のセンサ200_2が人70の通過を検出し、人70が出口側の地点を通過した時点を示す情報を、情報処理装置300に送信する。そして、この情報を、情報処理装置300の通信制御部301が受信する。このように、本実施の形態では、情報処理システム10がセンサ200を有するため、人70がゲート90の特定の地点を通過した時点を容易に検出することができる。
【0077】
次に、ステップS103において、情報処理装置300のデータ取得部303は、ステップS101及びステップS102で取得した情報に基づいて、ステップS100で取得されたデータから、データ取得期間TAのデータを取得する。
【0078】
次に、ステップS104において、データ取得部303は、ステップS101及びステップS102で取得した情報に基づいて、データ取得期間TAのデータから最大RSSI取得期間TBにおけるデータを抽出する。
【0079】
次に、ステップS105からステップS109において、データ取得部303は、データ取得期間TAにおいて読み取られたRFIDタグ80のそれぞれ対して、RSSIレンジを算出する。すなわち、ステップS105からステップS109として示されるループ処理が、各RFIDタグ80に対して実行される。
【0080】
まず、ステップS106において、データ取得部303は、RSSIレンジの算出対象であるRFIDタグ80の最大RSSIを、最大RSSI取得期間TBのデータから抽出する。
次に、ステップS107において、データ取得部303は、RSSIレンジの算出対象であるRFIDタグ80の最小RSSIを、データ取得期間TAのデータから抽出する。
そして、ステップS108において、データ取得部303は、ステップS106で得られた最大RSSIと、ステップS107で得られた最小RSSIの差分を算出することにより、RSSIレンジを算出する。
データ取得期間TAにおいて読み取られたRFIDタグ80の全てに対してRSSIレンジが算出されると(すなわち、ステップS105からステップS109のループ処理が終了すると)、処理は、ステップS110へ移行する。
【0081】
ステップS110において、重み算出部304は、各アンテナ102に対する重み値を算出する。
図12は、ステップS110の処理の詳細を示すフローチャートである。
図11Bに示したステップS110では、
図12に示すステップS200からステップS202の処理が行われる。
【0082】
まず、ステップS200において、重み算出部304は、データ取得期間TAのデータから、アンテナ102毎に、検出したタグ数Niを特定する。
次に、ステップS201において、重み算出部304は、アンテナ102毎に、検出したRFIDタグ80のそれぞれのRSSIレンジの総和Siを算出する。
次に、ステップS202において、重み算出部304は、検出したタグ数NiとRSSIレンジの総和Siとに基づいて、アンテナ102毎に、重み値Wiを算出する。
【0083】
ステップS110の処理の後、すなわち、上述したステップS200からステップS202の処理の後、データ取得期間T
Aに読み取られた全てのRFIDタグ80について、順番に、通過タグであるか非通過タグであるかを分類する処理が行われる。すなわち、
図11Bにおいて、ステップS111からステップS118として示されるループ処理が、各RFIDタグ80に対して実行される。
【0084】
まず、ステップS112において、通過判定部307は、上述した第一の比較を行う。すなわち、通過判定部307は、対象タグの最大RSSIが閾値より高いか否かを判定する。
図13は、ステップS112の処理の詳細を示すフローチャートである。ステップS112では、
図13に示すステップS300からステップS302の処理が行われる。
【0085】
まず、ステップS300において、閾値設定部305が、対象タグから受信した情報に基づいて、当該対象タグのTIDを特定する。
次に、ステップS301において、閾値設定部305が、当該対象タグに対して用いる閾値(最大RSSI用閾値)を、TIDに基づいて設定する。
次に、ステップS302において、通過判定部307は、ステップS301で設定された閾値と、当該対象タグの最大RSSIとを比較する。最大RSSIが閾値より高い場合、処理はステップS116へ移行し、それ以外の場合、処理はステップS113へ移行する。
【0086】
ステップS113では、通過判定部307は、上述した第二の比較を行う。すなわち、通過判定部307は、対象タグのスコアが閾値より大きいか否かを判定する。
図14は、ステップS113の処理の詳細を示すフローチャートである。ステップS113では、
図14に示すステップS400からステップS403の処理が行われる。
【0087】
まず、ステップS400において、スコア算出部306は、対象タグのアンテナ102_iについてのRSSIレンジと、このアンテナ102_iに対して算出された重み値Wiとの積を算出することにより、各アンテナ102について、重み付きレンジ値を算出する。
次に、ステップS401において、スコア算出部306は、対象タグを検出したアンテナ102の数を特定する。
そして、ステップS402において、スコア算出部306は、各アンテナ102の重み付きレンジ値の総和を、当該対象タグを検出したアンテナ102の数を用いて正規化することにより、当該対象タグのスコアを算出する。
次に、ステップS403において、通過判定部307は、所定の閾値と、対象タグのスコアとを比較する。スコアが閾値より大きい場合、処理はステップS116へ移行し、それ以外の場合、処理はステップS114へ移行する。
【0088】
ステップS114では、通過判定部307は、上述した第三の比較を行う。すなわち、通過判定部307は、対象タグのRSSIレンジが閾値より大きいか否かを判定する。
図15は、ステップS114の処理の詳細を示すフローチャートである。ステップS114では、
図15に示すステップS500からステップS503の処理が行われる。
【0089】
まず、ステップS500において、閾値設定部305は、データ取得期間TAのデータから、データ取得期間TAにおいて対象タグが読み取られた回数を特定する。
次に、ステップS501において、閾値設定部305は、対象タグが読み取られた回数に基づいて、当該対象タグに対して用いる閾値(RSSIレンジ用閾値)を設定する。具体的には、閾値設定部305は、対象タグが読み取られた回数が基準値を超える場合、この基準値を超えない場合に比べて高い閾値を、該対象タグに対して用いる閾値として設定する。なお、上述した通り、本実施の形態では、閾値設定部305は、データ取得期間TAにおいて読み取られた全てのRFIDタグ80のうち、読み取られた回数が最も多いRFIDタグ80の読み取られた回数の半分の値を、基準値として算出する。
次に、ステップS502において、通過判定部307は、対象タグについてのアンテナ102毎のRSSIレンジのうち最大のRSSIレンジを特定する。
そして、ステップS503において、通過判定部307は、ステップS502で特定されたRSSIレンジである最大RSSIレンジと、ステップS501で設定された閾値とを比較する。最大RSSIレンジが閾値より大きい場合、処理はステップS115へ移行し、それ以外の場合、処理はステップS117へ移行する。
【0090】
ステップS115では、通過判定部307は、上述した第四の比較を行う。すなわち、通過判定部307は、対象タグが読み取られた回数及び平均RSSIが閾値より大きいか否かを判定する。具体的には、ステップS115において、通過判定部307は、対象タグが読取装置100に読み取られた回数と所定の閾値ThAとを比較し、対象タグの平均RSSIと所定の閾値ThBとを比較する。読み取られた回数が閾値より多く、かつ、対象タグの平均RSSIが閾値より高い場合、処理はステップS116へ移行し、それ以外の場合、処理はステップS117へ移行する。
【0091】
ステップS116及びステップS117において、通過判定部307は、対象タグが通過タグであるか非通過タグであるかを確定する。ステップS116において、通過判定部307は、対象タグが通過タグであると判定する。すなわち、通過判定部307は、対象タグがゲート90を通過したタグであると判定する。これに対し、ステップS117において、通過判定部307は、対象タグが非通過タグであると判定する。すなわち、通過判定部307は、対象タグがゲート90を通過していないタグであると判定する。
【0092】
]以上、実施の形態について説明した。本実施の形態によれば、ゲート90を通過しないRFIDタグ80がゲート90の周辺に存在する場合であっても、RFIDタグ80によるゲート90の通過が、本実施の形態の判定方法を採用しない場合に比較して適切に判定される。
【0093】
なお、上述した実施の形態で説明された情報処理装置300は、コンピュータとして構成されていてもよい。
図16は、情報処理装置300のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
図16に示すように、情報処理装置300は、通信インタフェース350、メモリ351、及びプロセッサ352を含む。
【0094】
通信インタフェース350は、他の装置と通信するために使用される。例えば、通信インタフェース350は、読取装置100と通信するためのインタフェース、センサ200と通信するためのインタフェースを備える。
【0095】
メモリ351は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ351は、プロセッサ352により実行される、1以上の命令を含むソフトウェア(コンピュータプログラム)、及び情報処理装置300の各種処理に用いるデータなどを格納するために使用される。
【0096】
プロセッサ352は、メモリ351からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、
図7に示した各構成要素の処理を行う。プロセッサ352は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processor Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などであってもよい。プロセッサ352は、複数のプロセッサを含んでもよい。
【0097】
このように、情報処理装置300は、コンピュータとしての機能を備えていてもよい。なお、情報処理システム10における他の装置、例えば、読取装置100などについても、プロセッサ及びメモリを備え、コンピュータとしての機能を備えていてもよい。このように、情報処理システム10の機能がハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0098】
プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0099】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述した実施の形態では、データ取得期間TA内のデータが用いられたが必ずしもそのような期間のデータが用いられなくてもよい。また、最大RSSIは、最大RSSI取得期間TBのデータだけに注目して抽出されたが、必ずしもそのような期間からRSSIの最大値が特定されてなくてもよい。
【0100】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0101】
(付記1)
ゲートに分散して設けられ、RFIDタグの情報を読み取るために前記RFIDタグからの信号を受信する複数のアンテナと、
前記アンテナ毎に、特定の期間において当該アンテナを介して読み取られた前記RFIDタグの数と、前記特定の期間において当該アンテナを介して読み取られたそれぞれの前記RFIDタグのRSSIレンジの総和とに基づいて、当該アンテナの重み値を算出する重み算出部と、
判定対象の前記RFIDタグについての前記アンテナ毎のRSSIレンジを前記アンテナに対応する前記重み値により重み付けした値と、当該判定対象の前記RFIDタグの情報を受信した前記アンテナの数とに基づいて、スコアを算出するスコア算出部と、
前記判定対象の前記RFIDタグが前記ゲートを通過したか否かを、前記スコアと所定の第一の閾値との比較の結果を用いて判定する通過判定部と
を有する情報処理システム。
(付記2)
前記判定対象の前記RFIDタグが読み取られた回数についての前記特定の期間における総数に応じて第二の閾値を設定する閾値設定部を有し、
前記通過判定部は、前記判定対象の前記RFIDタグについての前記特定の期間におけるRSSIレンジと前記第二の閾値との比較の結果も用いて、前記判定対象の前記RFIDタグが前記ゲートを通過したか否かを判定する
付記1に記載の情報処理システム。
(付記3)
前記通過判定部は、前記判定対象の前記RFIDタグが読み取られた回数と所定の第三の閾値との比較の結果、又は、前記判定対象の前記RFIDタグの平均RSSIレンジと所定の第四の閾値との比較の結果の少なくともいずれか一方も用いて、前記判定対象の前記RFIDタグが前記ゲートを通過したか否かを判定する
付記2に記載の情報処理システム。
(付記4)
前記判定対象の前記RFIDタグの種類に応じて第五の閾値を設定する閾値設定部を有し、
前記通過判定部は、前記判定対象の前記RFIDタグの前記特定の期間に含まれる注目期間における最大のRSSIと前記第五の閾値との比較の結果も用いて、前記判定対象の前記RFIDタグが前記ゲートを通過したか否かを判定する
付記1から3のいずれか一項に記載の情報処理システム。
(付記5)
前記アンテナは、前記ゲートの入口と出口とに分散して配置されており、
前記特定の期間は、第1の時点から第2の時点までの期間であり、前記第1の時点は、人が前記ゲートの入口を通過した時点から所定の第1の時間だけ遡った時点であり、前記第2の時点は、前記人が前記ゲートの出口を通過した時点から所定の第2の時間だけ経過した時点である
付記1から4のいずれか一項に記載の情報処理システム。
(付記6)
前記アンテナは、前記入口の両脇と、前記出口の両脇とに分散して配置されている
付記5に記載の情報処理システム。
(付記7)
人が前記ゲートの前記入口又は前記出口を通過した時点を検出するセンサを有する
付記5又は6に記載の情報処理システム。
(付記8)
前記RSSIレンジは、前記特定の期間内の部分期間における最大のRSSIと、前記特定の期間の最小のRSSIとにより定義され、
前記部分期間は、人が前記ゲートの入口を通過した時点に対応する所定期間及び前記人が前記ゲートの出口を通過した時点に対応する所定期間である
付記1から7のいずれか一項に記載の情報処理システム。
(付記9)
前記注目期間は、前記特定の期間内の部分期間であって、人が前記ゲートの入口を通過した時点に対応する所定期間及び前記人が前記ゲートの出口を通過した時点に対応する所定期間である
付記4に記載の情報処理システム。
(付記10)
前記重み算出部は、前記特定の期間において前記アンテナを介して読み取られたそれぞれの前記RFIDタグの前記RSSIレンジの総和を、前記特定の期間において前記アンテナを介して読み取られた前記RFIDタグの数で除算することにより、当該アンテナの前記重み値を算出する
付記1から9のいずれか一項に記載の情報処理システム。
(付記11)
前記閾値設定部は、前記判定対象の前記RFIDタグが読み取られた回数についての前記特定の期間における総数が基準値を超える場合、前記基準値を超えない場合に比べて高い閾値を前記第二の閾値として設定する
付記2に記載の情報処理システム。
(付記12)
前記閾値設定部は、読み取り距離が長い前記RFIDタグほど高い値を前記第五の閾値として設定する
付記4に記載の情報処理システム。
(付記13)
ゲートに分散して設けられ、RFIDタグの情報を読み取るために前記RFIDタグからの信号を受信する複数のアンテナのそれぞれについて、特定の期間において当該アンテナを介して読み取られた前記RFIDタグの数と、前記特定の期間において当該アンテナを介して読み取られたそれぞれの前記RFIDタグのRSSIレンジの総和とに基づいて、当該アンテナの重み値を算出し、
判定対象の前記RFIDタグについての前記アンテナ毎のRSSIレンジを前記アンテナに対応する前記重み値により重み付けした値と、当該判定対象の前記RFIDタグの情報を受信した前記アンテナの数とに基づいて、スコアを算出し、
前記判定対象の前記RFIDタグが前記ゲートを通過したか否かを、前記スコアと所定の第一の閾値との比較の結果を用いて判定する
情報処理方法。
(付記14)
ゲートに分散して設けられ、RFIDタグの情報を読み取るために前記RFIDタグからの信号を受信する複数のアンテナのそれぞれについて、特定の期間において当該アンテナを介して読み取られた前記RFIDタグの数と、前記特定の期間において当該アンテナを介して読み取られたそれぞれの前記RFIDタグのRSSIレンジの総和とに基づいて、当該アンテナの重み値を算出する重み算出ステップと、
判定対象の前記RFIDタグについての前記アンテナ毎のRSSIレンジを前記アンテナに対応する前記重み値により重み付けした値と、当該判定対象の前記RFIDタグの情報を受信した前記アンテナの数とに基づいて、スコアを算出するスコア算出ステップと、
前記判定対象の前記RFIDタグが前記ゲートを通過したか否かを、前記スコアと所定の第一の閾値との比較の結果を用いて判定する通過判定ステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0102】
1 情報処理システム
2 アンテナ
3 重み算出部
4 スコア算出部
5 通過判定部
10 情報処理システム
70 人
80 RFIDタグ
81 商品
82 カゴ
90 ゲート
91a 第1の側面
91b 第2の側面
100 読取装置
101 RFIDリーダー
102 アンテナ
200 センサ
210 赤外線
300 情報処理装置
301 通信制御部
302 読取制御部
303 データ取得部
304 重み算出部
305 閾値設定部
306 スコア算出部
307 通過判定部
350 通信インタフェース
351 メモリ
352 プロセッサ