(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128893
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】排ガスの浄化方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/50 20060101AFI20240913BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240913BHJP
B01D 53/64 20060101ALI20240913BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20240913BHJP
B01D 53/72 20060101ALI20240913BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240913BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20240913BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240913BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20240913BHJP
F23J 15/06 20060101ALI20240913BHJP
F23J 15/02 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B01D53/50 200
B01D53/50 100
B01D53/50 110
B01D53/62 ZAB
B01D53/64 100
B01D53/68 100
B01D53/72
B01D53/78
B01D53/82
B01D53/14 200
B01D53/86 222
B01D53/86 250
F23J15/06
F23J15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038171
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【弁理士】
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】永井 良憲
(72)【発明者】
【氏名】吉村 博之
(72)【発明者】
【氏名】占部 祐
【テーマコード(参考)】
3K070
4D002
4D020
4D148
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】CO
2吸収液の寿命をのばし、排ガスに含まれる有害物質(二酸化窒素、一酸化窒素、硫黄酸化物、二酸化炭素、水銀、ダイオキシン、揮発性有機化合物など)を安価に除去することができる、排ガス浄化方法を提供する。
【解決手段】煤塵、塩化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、水銀、揮発性有機化合物および炭素酸化物からなる群から選ばれる少なくともひとつを含む排ガスを脱硝機能、NO酸化機能、Hg
0酸化機能、脱硫機能および吸着機能からなる群から選ばれる少なくとも一つの機能を有する触媒バグフィルタに通し、触媒バグフィルタを通った排ガスを冷却液に直接接触させて排ガスの温度を下げ、次いで、冷却液に直接接触させた排ガスをCO
2吸収液に直接接触させて排ガス中の二酸化炭素を減らすことを含む、排ガス浄化方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
煤塵、塩化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、水銀、揮発性有機化合物および炭素酸化物からなる群から選ばれる少なくともひとつを含む排ガスを脱硝機能、NO酸化機能、Hg0酸化機能、脱硫機能および吸着機能からなる群から選ばれる少なくとも一つの機能を有する触媒バグフィルタに通し、
触媒バグフィルタを通った排ガスを冷却して排ガスの温度を下げ、
次いで、冷やされた排ガスをCO2吸収液に直接接触させて排ガス中の二酸化炭素を減らすことを含む、排ガス浄化方法。
【請求項2】
排ガスを触媒バグフィルタに通す前に、脱硝処理、集塵処理、脱硫処理および脱塩処理からなる群の少なくとも一つの処理を排ガスに施すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒バグフィルタに通す直前の排ガスの温度が80~250℃である、請求項1に記載の排ガス浄化方法。
【請求項4】
CO2吸収液に直接接触させる直前の排ガスの温度が20~80℃である、請求項1に記載の排ガス浄化方法。
【請求項5】
脱硝機能、NO酸化機能、Hg0酸化機能、脱硫機能および吸着機能からなる群から選ばれる少なくとも一つの機能を有する触媒バグフィルタ、
ガスを冷却してガスの温度を下げることができるように構成されたガス冷却装置、および
ガスとCO2吸収液との直接接触によってガス中の二酸化炭素を減らすことができるように構成されたCO2吸収装置を含み、
煤塵、塩化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、水銀、揮発性有機化合物および炭素酸化物からなる群から選ばれる少なくともひとつを含む排ガスが触媒バグフィルタ、ガス冷却装置およびCO2吸収装置の順に通過できるように構成された、排ガス浄化装置。
【請求項6】
ガス中の塩化水素を減らすことができるように構成された脱塩装置をさらに含み、 煤塵、塩化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、水銀、揮発性有機化合物および炭素酸化物からなる群から選ばれる少なくともひとつを含む排ガスが脱塩装置、触媒バグフィルタ、ガス冷却装置およびCO2吸収装置の順に通過できるように構成された、請求項5に記載の排ガス浄化装置。
【請求項7】
ガス中の窒素酸化物を減らすことができるように構成された脱硝装置、
ガス中の煤塵を減らすことができるように構成された集塵装置、および
ガス中の硫黄酸化物を減らすことができるように構成された脱硫装置をさらに含み、
煤塵、塩化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、水銀、揮発性有機化合物および炭素酸化物からなる群から選ばれる少なくともひとつを含む排ガスが脱硝装置、集塵装置、脱硫装置、触媒バグフィルタ、ガス冷却装置およびCO2吸収装置の順に通過できるように構成された、請求項5に記載の排ガス浄化装置。
【請求項8】
ガス中の塩化水素を減らすことができるように構成された脱塩装置をさらに含み、
煤塵、塩化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、水銀、揮発性有機化合物および炭素酸化物からなる群から選ばれる少なくともひとつを含む排ガスが脱硝装置、集塵装置、脱硫装置、脱塩装置、触媒バグフィルタ、ガス冷却装置およびCO2吸収装置の順に通過できるように構成された、請求項7に記載の排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスに含まれる有害物質(窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、炭素酸化物(COx)、塩化水素(HCl)、水銀(Hg0)などの重金属、揮発性有機化合物(VOC)、ダイオキシン(DXN)、煤塵など)を除去することができる、排ガス浄化方法および排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所、ゴミ焼却炉、セメントキルン、アルミ溶融炉、ボイラ等から排出されるガスには、窒素酸化物、硫黄酸化物、二酸化炭素、塩化水素、重金属、ダイオキシン、揮発性有機化合物などの有害物質が含まれている。このような有害物質の大気中での濃度が高くなると地球環境に悪影響を及ぼすと言われている。そこで、排ガスから有害物質を除去するための装置、例えば、脱硝装置、集塵装置、脱硫装置、脱塩装置、CO2除去装置などが種々提案されている。
【0003】
脱硝装置としては、アンモニア接触還元法を利用した装置が知られている。脱硫装置としては、湿式石灰石膏法を利用した装置、アルカリ溶液吸収法または石灰スラリー吸収法を利用した装置、スプレードライ法を利用した装置、活性炭吸着法を利用した装置が知られている。CO2除去装置としては、アルカノールアミンなどのアミン化合物を含む液(以下、CO2吸収液ということがある。)による二酸化炭素の吸収を利用した装置(CO2吸収装置)が知られている。
【0004】
脱硝装置や脱硫装置などを通過した後の排ガスであっても、数ppm~数十ppmの二酸化窒素、数ppm~数百ppmの二酸化硫黄が含まれており、さらに、微量の一酸化窒素、微量の三酸化硫黄、微量の水銀、微量のダスト、微量の揮発性有機化合物が含まれている。このような排ガスをそのままCO2吸収装置に送ってCO2除去処理を行うと、CO2吸収液に含まれるアミン化合物が二酸化窒素、三酸化硫黄、水銀、煤塵などによって変質して、CO2吸収液のCO2吸収性能が低下する。そのような不具合を解消するために、CO2吸収装置の前段にNOxスクラバ、脱塩脱硫剤噴霧装置、湿式電気集塵機などのCO2吸収前処理装置を設置して、CO2吸収装置に供給される直前の排ガスからアミン化合物を変質される物質を除去することが提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2013/78211A1
【特許文献2】特開2005-40683号公報
【特許文献3】WO2012/14831A1
【特許文献4】特開2015-85310号公報
【特許文献5】WO2011/152550A1
【特許文献6】特開平8-332349号公報
【特許文献7】特開平8-196830号公報
【特許文献8】特開2002-18241号公報
【特許文献9】特開2006-7055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記のような従前のCO2吸収前処理装置は、設備コスト、運転コストなどが高い上に、アミン化合物を変質される物質(特に、Hg0、VOCなど)の除去が不十分であることが多い。
本発明の目的は、CO2吸収液の寿命をのばし、排ガスに含まれる有害物質(二酸化窒素、一酸化窒素、硫黄酸化物、二酸化炭素、水銀、ダイオキシン、揮発性有機化合物など)を安価に良好に除去することができる、排ガス浄化方法および排ガス浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために検討した結果、以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
〔1〕 煤塵、塩化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、水銀、揮発性有機化合物および炭素酸化物からなる群から選ばれる少なくともひとつを含む排ガスを脱硝機能、NO酸化機能、Hg0酸化機能、脱硫機能および吸着機能からなる群から選ばれる少なくとも一つの機能を有する触媒バグフィルタに通し、
触媒バグフィルタを通った排ガスを冷却して排ガスの温度を下げ、
次いで、冷やされた排ガスをCO2吸収液に直接接触させて排ガス中の二酸化炭素を減らすことを含む、排ガス浄化方法。
【0008】
〔2〕 排ガスの冷却を冷却液との直接接触によって行い、冷却液が、普通の水(plain water)、海水またはアルカリ性水溶液である、〔1〕に記載の排ガス浄化方法。
【0009】
〔3〕 排ガスを触媒バグフィルタに通す前に、脱硝処理、集塵処理、脱硫処理および脱塩処理からなる群の少なくとも一つの処理を排ガスに施すことを含む、〔1〕または〔2〕に記載の排ガス浄化方法。
【0010】
〔4〕 CO2吸収液がアミン化合物を含有する水溶液である、〔1〕~〔3〕のいずれかひとつに記載の排ガス浄化方法。
【0011】
〔5〕 触媒バグフィルタに通す直前の排ガスの温度が80~250℃である、〔1〕~〔4〕のいずれかひとつに記載の排ガス浄化方法。
【0012】
〔6〕 CO2吸収液に直接接触させる直前の排ガスの温度が20~80℃である、〔1〕~〔5〕のいずれかひとつに記載の排ガス浄化方法。
【0013】
〔7〕 脱硝機能、NO酸化機能、Hg0酸化機能、脱硫機能および吸着機能からなる群から選ばれる少なくとも一つの機能を有する触媒バグフィルタ、
ガスを冷却してガスの温度を下げることができるように構成されたガス冷却装置、および
ガスとCO2吸収液との直接接触によってガス中の二酸化炭素を減らすことができるように構成されたCO2吸収装置を含み、
煤塵、塩化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、水銀、揮発性有機化合物および炭素酸化物からなる群から選ばれる少なくともひとつを含む排ガスが触媒バグフィルタ、ガス冷却装置およびCO2吸収装置の順に通過できるように構成された、排ガス浄化装置。
【0014】
〔8〕 ガス中の塩化水素を減らすことができるように構成された脱塩装置をさらに含み、 煤塵、塩化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、水銀、揮発性有機化合物および炭素酸化物からなる群から選ばれる少なくともひとつを含む排ガスが脱塩装置、触媒バグフィルタ、ガス冷却装置およびCO2吸収装置の順に通過できるように構成された、〔7〕に記載の排ガス浄化装置。
【0015】
〔9〕 ガス中の窒素酸化物を減らすことができるように構成された脱硝装置、
ガス中の煤塵を減らすことができるように構成された集塵装置、および
ガス中の硫黄酸化物を減らすことができるように構成された脱硫装置をさらに含み、
煤塵、塩化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、水銀、揮発性有機化合物および炭素酸化物からなる群から選ばれる少なくともひとつを含む排ガスが脱硝装置、集塵装置、脱硫装置、触媒バグフィルタ、ガス冷却装置およびCO2吸収装置の順に通過できるように構成された、〔7〕に記載の排ガス浄化装置。
【0016】
〔10〕 ガス中の塩化水素を減らすことができるように構成された脱塩装置をさらに含み、
煤塵、塩化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、水銀、揮発性有機化合物および炭素酸化物からなる群から選ばれる少なくともひとつを含む排ガスが脱硝装置、集塵装置、脱硫装置、脱塩装置、触媒バグフィルタ、ガス冷却装置およびCO2吸収装置の順に通過できるように構成された、〔9〕に記載の排ガス浄化装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る排ガス浄化方法は、排ガス中から二酸化窒素、一酸化窒素、硫黄酸化物、二酸化炭素、水銀、ダイオキシン、揮発性有機化合物などの有害物質を効率良く除去することができる。本発明に係る排ガスの浄化方法によれば、CO2吸収液に直接接触させる前に、CO2吸収液を変質される物質の除去が効率的に行われるので、CO2吸収液の性能劣化が抑制され、CO2吸収液の寿命をのばすことができる。本発明に係る排ガス浄化装置は、本発明に係る排ガス浄化方法を実行するのに最適である。触媒バグフィルタに関わる装置は、設備コスト、運転コストが、NOxスクラバ、脱塩脱硫剤噴霧装置、湿式電気集塵機などの従前のCO2吸収前処理装置に比べて安価である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の排ガス浄化方法を実施するのに適した装置構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の方法および装置の実施形態の一例を説明する。なお、本発明はこれら実施形態によって限定されるものでない。
【0020】
本発明の排ガス浄化方法は、排ガスを触媒バグフィルタに通し、触媒バグフィルタを通った排ガスを冷やし、次いで、排ガスをCO2吸収液に直接接触させて排ガス中の二酸化炭素を減らすことを含む。本発明の排ガス浄化方法は、必要に応じて、排ガスを触媒バグフィルタに通す前に、脱硝処理、集塵処理、脱硫処理および脱塩処理からなる群の少なくとも一つの処理を排ガスに施すことをさらに含むことができる。
【0021】
本発明の排ガス浄化装置は、触媒バグフィルタ1、ガス冷却装置2、およびCO2吸収装置3を含む。本発明の排ガス浄化装置は、必要に応じて、脱硝装置6、集塵装置7、脱硫装置8、または脱塩装置9をさらに含むことができる。本発明の排ガス浄化装置は、必要に応じて、CO2回収装置4をさらに含むことができる。
【0022】
本発明の方法または装置に適用され得る排ガスは、煤塵、塩化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、水銀、揮発性有機化合物および炭素酸化物からなる群から選ばれる少なくともひとつを含む。その他に、ダイオキシン、リン酸化物、ヒ素などの有害物質が含まれていてもよい。または、アンモニア接触還元法による脱硝処理において添加することができる尿素、アンモニアなどが含まれていても良い。
【0023】
本発明に適用され得る排ガスは、火力発電所、ゴミ焼却炉、セメントキルン、アルミ溶融炉、ボイラ等の排ガス発生源5から排出されるガスであることができる。
【0024】
触媒バグフィルタに通す直前の排ガスの温度は、好ましくは80~250℃、さらに好ましくは100~200℃である。また、CO2吸収液に直接接触させる直前の排ガスの温度は、好ましくは20~80℃、より好ましくは30~65℃、さらに好ましくは40~50℃である。
【0025】
本発明に用いられる触媒バグフィルタは、脱硝機能、NO酸化機能、Hg0酸化機能、脱硫機能および吸着機能からなる群から選ばれる少なくとも一つの機能を有する。触媒バグフィルタは、粒子状物質(煤塵、ダストなど)を捕集すること(除塵処理)ができるように構成されたバグフィルタに、様々な機能を付加することができる触媒や機能性物質などを担持したものである。本発明に用いられる触媒バグフィルタの一例として、特許文献6、特許文献7、特許文献9などに記載されているものを挙げることができる。
【0026】
バグフィルタとしては、この例に限定されないが、例えば、織布もしくは不織布からなる一つ以上の基布と、この基布の片面若しくは両面に積層された一つ以上のフェルト層とを含むろ布からなるものを挙げることができる。基布またはフェルト層は、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などの耐熱性有機樹脂からなる繊維材や、グラスファイバ、カーボンファイバ、チタニアファイバ(特開2002-113311号公報)などの耐熱性無機繊維材などによって形成することができる。
【0027】
フェルト層は排ガスの流れ込む側に設けることが好ましいことがある。フェルト層は、例えば、サブミクロンサイズの粒状物質の捕集に役立つことがある。また、基布および/またはフェルト層は、触媒や機能性物質などの担持される担体としての役割をすることがある。
【0028】
バグフィルタは、その外観形状において、特に制限されない。例えば、筒状、有底筒状、袋状などを挙げることができる。筒状、有底筒状または袋状のバグフィルタは、筒状、有底筒状または袋状のろ布と、そのろ布内に組み込まれたゲージ(リテーナ)とを有するものを挙げることができる。バグフィルタ自体は、煤塵、粒子状物質(PM)などを捕集する機能がある。
【0029】
本発明に用いられる触媒バグフィルタは、捕集機能以外に、他の様々な機能を有する。他の機能としては、脱硝機能、NO酸化機能、Hg0酸化機能、脱硫機能および吸着機能からなる群から選ばれる少なくとも一つを挙げることができる。なお、脱硝機能には、NO2還元機能、NO還元機能などのNOx還元機能が含まれる。
【0030】
本発明に用いられる触媒バグフィルタは、消石灰を含むプレコート層を有することができる。プレコート層は排ガスの流れ込む側に設けることが好ましい。プレコート層に含まれる消石灰は、排ガスに含まれる、塩化水素、SOxなどの酸性ガスと中和反応する。また、プレコート層は、未反応の酸性ガス若しくは煤塵の捕集に役立つ。プレコート層は、消石灰を基布および/またはフェルト層の排ガスの流れ込む側から添加して、当該基布および/またはフェルト層上に形成することができる。
【0031】
本発明に用いられる触媒バグフィルタは、活性アルミナ(Al2O3)、珪藻土、活性白土、シリカ(SiO2)、活性炭などの細孔構造を有する粉体を含む吸着層を有することができる。吸着層は排ガスの流れ込む側に近い位置に設けることが好ましい。細孔構造を有する粉体は、排ガスに含まれていることがある、塩化物、硫黄酸化物、酸性硫酸アンモニウム、VOC、ダイオキシンなどを吸着して除去することに役立つ。細孔構造を有する粉体に、亜鉛、硫黄などの単体や、ヨウ化亜鉛、塩化銅などのハロゲン化金属を添加すると、吸着能が向上することがある。吸着層は、細孔構造を有する粉体を、ゲージ(リテーナ)、基布および/またはフェルト層に担持することによって、または基布および/またはフェルト層の間に挟持することによって形成することができる。また、有底筒状のバグフィルタの筒内に活性アルミナ(Al2O3)、珪藻土、活性白土、シリカ(SiO2)、活性炭などの細孔構造を有する粒状体を収納して吸着層としてもよい。さらに、細孔構造を有する繊維を用いて基布若しくはフェルト層を形成しそれ自体を吸着層としてもよい。
【0032】
本発明に用いられる触媒バグフィルタは、触媒層を有することができる。触媒層は、吸着層やプレコート層に比べて、排ガスの流れ込む側から遠い位置に設けることが、触媒の劣化抑制の観点から、好ましい。触媒層に用い得る脱硝触媒は、排ガスに含まれていることがある、窒素酸化物(NOx)を還元して減らすことに役立つ。また、脱硝触媒とNO酸化触媒とを混用してもよい。NO酸化触媒はNOを酸化してNO2に変換しNO2で粒子状物質(PM)を酸化することに役立つことがある。脱硝触媒は組成に応じてHg0酸化能を有することがあるが、Hg0酸化触媒は、排ガスに含まれている、除去が困難なHg0を酸化して除去が容易な水銀化合物(HgO、HgCl2など)に変換することに役立つ。脱硝触媒、Hg0酸化触媒および/またはNO酸化触媒を任意の組み合わせで混用して少なくとも一つの触媒層として設けてもよい。脱硝触媒層、Hg0酸化触媒層および/またはNO酸化触媒層を任意の組み合わせで別個の触媒層として設けてもよい。なお、排ガス中に含まれることがある数十~数百ppmの塩化水素がHg0(融点-38.83℃)の酸化反応を促進させることがあり、また、塩化水素(沸点-85.09℃)は塩化水銀(II)(融点304℃)などに変化することでフィルタなどによる除去が容易になることがある。このような結果、通過する前の排ガスに含まれていたNOx、NOおよび水銀のほとんどが、触媒バグフィルタを通過するだけで、除去される。
【0033】
本発明に用いられる触媒バグフィルタは、ダイオキシン分解触媒層を有することができる。ダイオキシン分解触媒は、排ガスに含まれていることがある、ダイオキシンを分解して減らすことに役立つ。ダイオキシン分解触媒層は、前記触媒層と別個に設けてもよいし、前記触媒とダイオキシン分解触媒とを任意の組み合わせで混用して少なくとも一つの触媒層として設けてもよい。
【0034】
脱硝、NO酸化、Hg0酸化、またはダイオキシン分解に適する触媒の組成や製法は、公知であり、ここでは詳細を説明しない。脱硝、NO酸化、Hg0酸化、またはダイオキシン分解に適する触媒の組成として、例えば、W、MoおよびVからなる群より選ばれる少なくとも一つの碑金属元素を含むもの、Pt、Ru、Pd、Rhなどの貴金属を含むもの、酸化チタン、酸化ケイ素、石膏、アルミナなどを含むもの、アルミノケイ酸塩、ゼオライトなどを含むもの、これらを任意に組み合わせてなるものなどを挙げることができる。触媒層は、上記のような触媒を、基布および/またはフェルト層に担持することによって、または基布および/またはフェルト層の間に挟持することによって形成することができる。
【0035】
触媒バグフィルタをガス流入口とガス流出口を有するバグフィルタハウスに収納し、排ガスをバグフィルタハウスのガス流入口から供給することで、排ガスを触媒バグフィルタに通すことが容易になる。触媒バグフィルタを通った排ガスはバグフィルタハウスのガス流出口から出ていく。触媒バグフィルタに付与する機能を、バランスよく、最適化することによって、触媒バグフィルタを通る直前の排ガス中に含まれていた複数の有害物質を、排ガスが触媒バグフィルタを通過することで、同時に且つ大幅に減らすことができる。触媒バグフィルタに煤塵、ダスト、粒子状物質などが堆積し、圧力損失が所定値よりも高くなったときは、振動によって、またはパルスジェットを用いた逆洗(特許文献8など参照)によって、堆積した物質を払い除くことができる。
【0036】
次に、触媒バグフィルタを通った排ガスを冷却して排ガスの温度を下げる。排ガスの冷却は、熱交換器を介した冷媒との間接接触によって行ってもよいし、冷却液に直接接触させることによって行ってもよい。冷却液としては、普通の水、海水、アルカリ性水溶液(NaOH、KOH、Ca(OH)2などの塩基の水溶液)、還元性物質(亜ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ヨウ化物など)の塩基性水溶液などを好ましく用いることができる。排ガスと冷却液との直接接触は、当技術分野において公知の気液接触操作で行うことができる。気液接触操作に係る装置としては、プレート(棚段、段板、トレー)塔、充填塔、濡壁塔、噴霧塔、スクラバなどを挙げることができる。これらのうち噴霧塔が好ましい。この冷却によって、排ガスは、次の工程であるCO2吸収に適した温度に調節される。気液接触操作後の冷却液は、必要に応じてチラーなどで冷やし、また消費された塩基や還元性物質を必要に応じて補充して、排ガスとの直接接触に再び用いることができる。
【0037】
冷却液としてアルカリ性水溶液を用いた場合、水酸化ナトリウムなどの塩基と排ガス中の二酸化硫黄とが反応して亜硫酸塩を生成する(例えば、SO2 + 2NaOH → Na2SO3 + H2Oなど)。亜硫酸塩と排ガス中の二酸化硫黄とが反応して亜硫酸水素塩が生成する(例えば、SO2 + Na2SO3 + H2O → 2NaHSO3など)。これらの反応によって排ガスから二酸化硫黄が除去される。このとき、アルカリ性水溶液の亜硫酸濃度は、排ガス中の二酸化硫黄との反応によって増加する。しかし、アルカリ性水溶液のpHは排ガス中の二酸化窒素および二酸化硫黄との反応によって低下する。アルカリ性水溶液のpH低下、すなわち塩基の減少は、二酸化硫黄との反応を減らし、亜硫酸塩または亜硫酸水素塩の生成を減らす。よって、アルカリ性水溶液と排ガスとの直接接触はトータルでは亜硫酸濃度を低下させる。
亜硫酸塩または亜硫酸水素塩の水溶液を用いた場合、亜硫酸イオンと排ガス中の二酸化窒素とが反応して窒素または酸化窒素に還元される。この反応によって排ガスから二酸化窒素が除去される。
【0038】
次いで、冷やされた排ガスをCO2吸収液に直接接触させて排ガス中の二酸化炭素を減らす。CO2吸収液としては、アミン化合物を含む水溶液が好ましく用いられる。アミン化合物としては、モノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールのようなアルコール性水酸基含有1級アミン類、ジエタノールアミン、2-メチルアミノエタノールのようなアルコール性水酸基含有2級アミン類、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンのようなアルコール性水酸基含有3級アミン類、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミンのようなポリエチレンポリアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、ピロリジン類のような環状アミン類、キシリレンジアミンのようなポリアミン類、メチルアミノカルボン酸のようなアミノ酸類等及びこれらの混合物を挙げることができる。また、前記CO2吸収液には二酸化炭素吸収促進剤或いは腐食防止剤、更には、その他の媒体としてメタノール、ポリエチレングリコール、スルフォラン等が含まれていてもよい。
【0039】
排ガスとCO2吸収液との直接接触は、当技術分野において公知の気液接触操作で行うことができる。気液接触操作に係る装置としては、プレート(棚段、段板、トレー)塔、充填塔、濡壁塔、噴霧塔、スクラバなどを挙げることができる。これらのうちプレート塔、充填塔が好ましい。排ガスは、例えば、吸収塔の底部から流入し、吸収部を上昇し、水洗部を通って、吸収塔の頂部から浄化済みガス12として放出される。吸収部の上部に、CO2吸収液が降り注がれ、吸収部にて排ガスと向流接触し、排ガス中の二酸化炭素を吸収し、吸収塔の底部に溜まる。
【0040】
吸収塔の底部に溜まったCO2吸収液は、二酸化炭素濃度が高い。このCO2吸収液を、例えば、脱離塔に送り、水蒸気などによる加熱でCO2吸収液から二酸化炭素を脱離させ、二酸化炭素13を脱離塔頂部から排出する。二酸化炭素の脱離したCO2吸収液は脱離塔底部に溜まり、前記の吸収塔に戻し、二酸化炭素の吸収に循環使用する。一方、脱離塔頂部から出た二酸化炭素13は次工程で様々に処理される。例えば、二酸化炭素は、地中や海洋に貯留することができ、または原油増進回収技術、溶接、ドライアイス、化学品(含酸素化合物(ポリカーボネート、ウレタンなど)、汎用物質など)の合成、燃料(メタノール、エタノール、メタンなど)の合成、炭酸塩の合成、コンクリート製品への吸収、海藻、海草、微細藻類への吸収(バイオ燃料合成)などに利用することができる。
【0041】
本発明においては触媒バグフィルタおよび冷却液直接接触によるガス冷却装置にて、二酸化窒素、二酸化硫黄、水銀などの有害物質が効率的に除去される。CO2吸収液に直接接触させる排ガスにはCO2吸収液の二酸化炭素吸収能の低下を引き起こす二酸化窒素、二酸化硫黄などがほとんど含まれていない。その結果、CO2吸収液の二酸化炭素吸収能の低下が抑えられ、CO2吸収液の寿命が大幅にのびる。また、CO2吸収装置の操業を止めて、CO2吸収液から硝酸塩などを除去する操作(リクレーマ)の実施頻度が減るので、経済的である。
【0042】
本発明において、排ガスを触媒バグフィルタに通す前に、必要に応じて、排ガスに施すことができる処理として、脱硝処理、集塵処理、脱硫処理および脱塩処理からなる群の少なくとも一つを挙げることができる。
【0043】
脱硝装置(脱硝処理)は排ガス中の窒素酸化物を減らす。脱硝処理は、脱硝装置に排ガスを通すことによって行うことができる。脱硝装置は、特に限定されないが、酸化チタンを含有する触媒組成物を用いたアンモニア接触還元法脱硝装置が好ましい。触媒には酸化チタン以外に、W、MoおよびVからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素、石膏、シリカなどが含まれていてもよい。脱硝装置に設置する触媒としては、触媒組成物をハニカム状、柱状、円筒状などに成形したもの;メタルラスなどの金属基板またはセラミック製若しくはガラス製網状織布などに触媒組成物を付着させて波板状に成形したものなどを挙げることができる。本発明においては波板状に成形したものが好ましく用いられる。
【0044】
集塵装置(集塵処理)は排ガス中の煤塵(燃焼灰、微粒子物質(PM)など)を減らす。集塵処理は、除塵装置に排ガスを通すことによって行うことができる。本発明に用いられる除塵装置は特に限定されない。例えば、電気集塵機、バグフィルタ装置などを用いることができる。
【0045】
脱硫装置(脱硫処理)は排ガス中の硫黄酸化物を減らす。脱硫処理は、脱硫装置に排ガスを通すことによって行うことができる。本発明に用いられる脱硫装置は特に限定されないが、湿式石灰石膏法または水酸化マグネシウム法を利用した装置が好ましい。
【0046】
脱塩装置(脱塩処理)は排ガス中の塩化水素、硫黄酸化物などの酸性物質を減らす。脱塩処理は、脱塩装置に排ガスを通すことによって行うことができる。本発明に用いられる脱塩装置は、特に限定されないが、排ガスと脱塩脱硫剤とを直接接触させることのできる装置である。脱塩脱硫剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム(重曹)水溶液、消石灰水溶液などのアルカリ性水溶液を用いることができる。脱塩装置に通す直前の排ガスの温度は、ガス温度調節装置にて調節することができる。ガス温度調節装置としては、例えば、熱交換器、ヒータなどを用いることができる。脱塩装置に通す直前の排ガスの温度の調節のための(排ガスに熱を供給する)熱交換器11の媒体として、脱硫装置に通す直前の排ガスの温度の調節のための(排ガスから熱を回収する)熱交換器10から排出される媒体を用いることができる。熱交換器11で排ガスに熱を渡した媒体は、熱交換器10に戻して排ガスからの熱の回収に使用できる。
【0047】
触媒バグフィルタに通す直前の排ガスの温度は、触媒バグフィルタの前段に設置することがある脱硫装置若しくは脱塩装置、またはガス温度調節装置にて調節することができる。ガス温度調節装置としては、例えば、熱交換器、ヒータなどを用いることができる。触媒バグフィルタに通す直前の排ガスの温度の調節のための(排ガスに熱を供給する)熱交換器15の媒体として、脱硫装置に通す直前の排ガスの温度の調節のための(排ガスから熱を回収する)熱交換器10から排出される媒体を用いることができる。熱交換器15で排ガスに熱を渡した媒体は、熱交換器10に戻して排ガスからの熱の回収に使用できる。
【符号の説明】
【0048】
1:触媒バグフィルタ
2:ガス冷却装置
3:CO2吸収装置
4:CO2回収装置
5:排ガス発生源
6:脱硝装置
7:集塵装置
8:脱硫装置
9:脱塩装置
10:ガス温度調節装置(熱回収用の熱交換器)
11:ガス温度調節装置(熱供給用の熱交換器)
12:浄化済み排ガス(煙突へ)
13:二酸化炭素
14:脱硝剤(アンモニア、尿素など)
15:ガス温度調節装置(熱供給用の熱交換器)