IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ストローグの特許一覧

<>
  • 特開-連結構造 図1
  • 特開-連結構造 図2
  • 特開-連結構造 図3
  • 特開-連結構造 図4
  • 特開-連結構造 図5
  • 特開-連結構造 図6
  • 特開-連結構造 図7
  • 特開-連結構造 図8
  • 特開-連結構造 図9
  • 特開-連結構造 図10
  • 特開-連結構造 図11
  • 特開-連結構造 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128894
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】連結構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240913BHJP
   E04B 1/26 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
E04B1/58 506L
E04B1/58 504L
E04B1/58 511L
E04B1/26 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038172
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】510082053
【氏名又は名称】株式会社ストローグ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100228511
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彩秋
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大倉 憲峰
(72)【発明者】
【氏名】大倉 義邦
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB12
2E125AC23
2E125AF01
2E125AF05
2E125AG03
2E125AG04
2E125AG13
2E125AG23
2E125AG41
2E125BB09
2E125BB22
2E125BD01
2E125BD06
2E125BF03
2E125CA02
2E125CA13
2E125CA14
(57)【要約】
【課題】
木造建築を始めとする各種木構造において、過大な引張荷重が作用した際の粘り強さを確保できるほか、費用面や施工性に優れた連結構造の提供。
【解決手段】
隣接する一方材71と他方材81との連結構造は、連結ボルト21と仲介金物31、32と緩衝体11とを使用し、仲介金物31、32は、連結ボルト21に生じた軸力を受け止めるほか、緩衝体11は、連結ボルト21と仲介金物31、32との間に挟み込むことで、軸力は、緩衝体11を介して仲介金物31、32に向けて伝達させていく。さらに緩衝体11から仲介金物31、32に軸力を伝達させる面は、緩衝体11の外縁部に確保し、その内側は空隙28とすることで、過大な軸力が生じた際は、緩衝体11が変形して空隙28に入り込むことで粘り強さを確保する。また連結ボルト21などは、通常の物を使用できるほか、一方材71などに埋め込む部品は従来と同じであり、費用面や施工性に優れている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する一方材(71)と他方材(81乃至82)との連結構造であって、連結ボルト(21乃至22)と仲介金物(31乃至35)と緩衝体(11乃至17)とを使用しており、
前記連結ボルト(21乃至22)は、前記一方材(71)と前記他方材(81乃至82)が互いに引き寄せ合う状態を維持するように配置し、
前記仲介金物(31乃至35)は、前記連結ボルト(21乃至22)の端部に配置してその軸力を受け止めるほか、該仲介金物(31乃至35)には該連結ボルト(21乃至22)を差し込むための中穴(38)を設けてあり、
前記緩衝体(11乃至17)は、前記連結ボルト(21乃至22)と前記仲介金物(31乃至35)との間に配置し、該連結ボルト(21乃至22)に生じた軸力は、該緩衝体(11乃至17)を介して該仲介金物(31乃至35)に向けて伝達していき、且つ該緩衝体(11乃至17)には該連結ボルト(21乃至22)が差し込まれ、
前記緩衝体(11乃至17)において、前記連結ボルト(21乃至22)に生じた軸力を前記仲介金物(31乃至35)に向けて伝達させていく面は、該緩衝体(11乃至17)の外縁部に確保してあり、且つその内側は空隙(28)としてあり、該連結ボルト(21乃至22)に過大な軸力が生じた際は、該連結ボルト(21乃至22)の変形に先立って該緩衝体(11乃至17)が変形して該空隙(28)に入り込むことを特徴とする連結構造。
【請求項2】
前記緩衝体(14乃至16)は、中空状の筒部(27)と、該筒部(27)の一端側を塞ぐ板部(26)と、で構成してあり、前記連結ボルト(21乃至22)は該板部(26)を貫くほか、該筒部(27)の内側が前記空隙(28)になることを特徴とする請求項1記載の連結構造。
【請求項3】
前記緩衝体(16)には、前記連結ボルト(21乃至22)と螺合するためのメネジ(19)を形成してあることを特徴とする請求項1または2記載の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築を始めとする各種木構造において、部材を据え付けるための連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築の強度を確保するため、その骨格を構成する部材は、他の部材や基礎などと強固に連結する必要がある。そのため部材の連結部では、古くからホゾとホゾ穴を嵌め合わせるなどの技術が導入されているが、近年はその代替としてボルトやシャフトなどの金属部品を使用することがある。このような金属部品に引張荷重が作用した場合、荷重に応じて弾性変形を生じていくことになるが、やがて金属部品に作用する応力が「降伏強さ」を越えると、以降は塑性変形を生じていき、その後、破断に至るまでの間で計測される最大の応力が「引張強さ」になる。さらに「降伏強さ」を「引張強さ」で割った値は、「降伏比」と称される。
【0003】
ボルトなどの金属部品において、「降伏強さ」と「引張強さ」との差が小さい場合、「降伏比」は1に近くなるが、このような金属部品に過大な引張荷重が作用した際は、わずかな塑性変形を生じた段階で直ちに破断に至ることになり、これを木造建築の連結構造で使用したならば、過大な引張荷重に対し、粘り強さを発揮することなく簡単に破断に至ることになり、部材同士が分離して大規模な破損を引き起こす恐れがある。これとは逆に「降伏強さ」と「引張強さ」との差が大きい場合、「降伏比」は0に近くなるが、このような金属部品に過大な引張荷重が作用した際は、塑性変形を生じた後も破断に至るまでの間に粘り強さが確保され、これを木造建築の連結構造で使用したならば、過大な引張荷重に対し、変形を許容しながらも部材同士の分離を防ぎ、大規模な破損を回避できることが期待される。
【0004】
金属部品を変形させて木造建築の大規模な破損を回避する技術は、以前から提案されており、その例として後記の特許文献1が挙げられる。この文献では、柱と梁などの二部材を一体化するための連結構造が開示されており、ここでは二部材のうち一方には埋設軸を埋め込み、残る一方には固着軸を埋め込み、その後、埋設軸と固着軸を同心に揃え、これらを貫くように引張ボルトを差し込み、埋設軸と固着軸を引き寄せている。そしてこの引張ボルトは、その軸部の一部区間に弾性率の小さい変形域を設けてあり、この変形域により、二部材を連結した後に弾塑性変形を誘発することができ、連結構造の破損を防止できる。なお変形域については、建築構造用圧延棒鋼(SNR)を使用することが開示されており、これを摩擦圧接法などで接合することで引張ボルトが完成する。
【0005】
次の特許文献2では、剛性や耐力を調整可能な連結構造が開示されている。この文献についても、柱と梁などの二部材を一体化することに変わりはないが、二部材のうち一方には、いずれも棒状の埋設具と緩衝軸を直列に埋め込んでおり、そのうち埋設具は奥方に配置して部材と一体化させる。また緩衝軸は、その中央部を小径化することで変形が誘発されるほか、緩衝軸には固定ボルトが螺合され、連結される二部材は、緩衝軸を介して互いに引き寄せ合う状態を維持する。その結果、緩衝軸が変形することで衝撃荷重が緩和されるほか、緩衝軸の形状を変えることで剛性や耐力を調整可能である。
【0006】
そのほか特許文献3では、部材同士の連結部において、ラグスクリューが引張荷重に耐えられなくなった場合でも、この二部材の連結を維持することのできる補強具が開示されている。ここでは二部材の双方にラグスクリューを埋め込んでおり、同心に揃えたラグスクリューを貫くようにスタッドボルトを差し込み、スタッドボルトの両端部に螺合させた内ナットを締め付けることで二部材を密着させているが、これらに加え、密着板と冠体と外ナットを使用している。そのうち密着板は、ラグスクリューの端面付近を取り囲むような状態で部材に接触させる。また冠体は、その中心にスタッドボルトを差し込むほか、その端面を密着板に接触させ、さらに外ナットをスタッドボルトに螺合させると、その軸力を冠体が受け止め、密着板が部材を押圧する。このように密着板と冠体と外ナットを使用することで、何らかの事情でラグスクリューが本来の機能を発揮できなくなった場合でも、二部材の連結を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-108893号公報
【特許文献2】特開2021-195861号公報
【特許文献3】特開2013-245477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
木造建築の連結構造で使用するボルトなどの金属部品は、前記のように、過大な引張荷重に対して十分な粘り強さを確保できるよう、降伏比を可能な範囲で0に近づけることが望ましい。この点については特許文献1のように、ボルト(引張ボルト)の一部区間に変形域を設ける技術で対応可能である。ただし、この文献のような専用のボルトを使用することは、費用や調達の面で課題があるため、ボルト以外の部品で粘り強さを確保し、通常のボルトをそのままの状態で使用できる技術も開発することが望ましい。
【0009】
特許文献2では、埋設具と緩衝軸を分離しているため、剛性や耐力の調整が容易であり、しかもボルト(固定ボルト)については、通常の物を使用することができる。ただしこの連結構造では、埋設具の埋め込み位置が深くなるほか、埋設具と緩衝軸との連結など、施工時の作業が増えてしまい、また部材の形状によっては、埋設具と緩衝軸を直列に埋め込むための長さを確保できない場合がある。したがって、金属部品の埋め込みを増やすことなく粘り強さを確保できる技術も開発することが望ましい。
【0010】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、木造建築を始めとする各種木構造において、過大な引張荷重が作用した際の粘り強さを確保できるほか、費用面や施工性に優れた連結構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、隣接する一方材と他方材との連結構造であって、連結ボルトと仲介金物と緩衝体とを使用しており、前記連結ボルトは、前記一方材と前記他方材が互いに引き寄せ合う状態を維持するように配置し、前記仲介金物は、前記連結ボルトの端部に配置してその軸力を受け止めるほか、該仲介金物には該連結ボルトを差し込むための中穴を設けてあり、前記緩衝体は、前記連結ボルトと前記仲介金物との間に配置し、該連結ボルトに生じた軸力は、該緩衝体を介して該仲介金物に向けて伝達していき、且つ該緩衝体には該連結ボルトが差し込まれ、前記緩衝体において、前記連結ボルトに生じた軸力を前記仲介金物に向けて伝達させていく面は、該緩衝体の外縁部に確保してあり、且つその内側は空隙としてあり、該連結ボルトに過大な軸力が生じた際は、該連結ボルトの変形に先立って該緩衝体が変形して該空隙に入り込むことを特徴とする。
【0012】
本発明による連結構造は、柱と梁や、基礎と柱や、梁同士など、木造建築の骨格を構成する部材を据え付けるために開発され、連結される二部材のうち、一方を一方材と称し、残る方を他方材と称するものとする。また一方材と他方材は、互いに面接触する場合もあるが、双方の間に何らかの部品が挟み込まれ、両材が接触しない場合もある。なお一方材については、各種木材であることを前提とするが、他方材については各種木材に限定される訳ではなく、基礎などのコンクリート構造物や鉄骨などの金属部品でも構わない。
【0013】
さらに本発明では、連結ボルトと仲介金物と緩衝体との三要素を使用することを前提としており、そのうち連結ボルトは、一方材と他方材が互いに引き寄せ合う状態を維持する機能を担い、必然的に一方材と他方材を互いに引き寄せ合う方向に沿って配置する。ただし連結ボルトの配置形態は自在であり、一本の連結ボルトが一方材と他方材の双方に差し込まれるとは限らず、一方材側と他方材側で異なる連結ボルトを配置し、双方の連結ボルトを何らかの部品で接続する場合もある。なお連結ボルトは、頭付ボルトのほか、スタッドボルトを使用することもできる。
【0014】
仲介金物は、連結ボルトの端部を拘束する部品であり、連結ボルトを締め付けることで生じた軸力を受け止め、これを一方材または他方材に伝達する機能を担う。そのため仲介金物には、連結ボルトを通すための中穴を設けておく。中穴は、単に連結ボルトを通すための穴であり、連結ボルトと螺合することはない。さらに仲介金物と連結ボルトは、直接的に接触することはないものとする。なお仲介金物は、従来から使用されている各種の金属部品と同様の形態になることが多く、仮に、柱を基礎に据え付けるような連結構造であれば、柱脚金物が仲介金物に相当する。
【0015】
緩衝体は、連結ボルトと仲介金物との間に介在し、連結ボルトに生じた軸力を緩衝体に向けて伝達していく機能を担うほか、緩衝体には連結ボルトが差し込まれるものとする。したがって、仮に連結ボルトが頭付ボルトであり、且つその頭部側に仲介金物を配置する場合、緩衝体は、通常の座金と同様、連結ボルトの頭部に隣接させる。そして緩衝体において、連結ボルトの頭部の反対側は、軸力を伝達させていくため、仲介金物などに接触させており、必然的に緩衝体には圧縮荷重が生じることになる。ただし緩衝体は、その大半を仲介金物などに接触させる訳ではなく、緩衝体の外縁部に限って接触させ、それよりも内側では他の物との接触がないものとする。
【0016】
緩衝体の形状は自在だが、通常の座金と同様、中心に穴を設けた単純な円盤状とすることができる。また仮に連結ボルトとしてスタッドボルトを使用する場合、連結ボルトにナットを螺合させ、このナットと隣接するように緩衝体を配置することで、連結ボルトに生じた軸力の伝達が可能になる。なお連結ボルトが頭付ボルトである場合においても、その先端側に仲介金物を配置する際は、前記のようなスタッドボルトを使用する場合と同様、螺合させたナットと隣接するように緩衝体を配置する。
【0017】
空隙は、緩衝体に隣接する単なる空間であり、緩衝体の弾塑性変形を許容するために確保してある。そのため空隙は緩衝体に隣接させる必要があり、さらに連結ボルトに生じた軸力で緩衝体が変形する方向に配置する。なお前記のように、緩衝体の外縁部に限って仲介金物などに接触させることになるが、この接触する範囲よりも内側が空隙になり、空隙の中を連結ボルトが貫くことになる。ただし空隙の形態は自在であり、仲介金物の中穴に隣接して形成することもあれば、緩衝体の内側に形成することもある。
【0018】
緩衝体には、連結ボルトから荷重が伝達してくる領域と、仲介金物に向けて荷重を伝達させていく領域が存在することになる。そして緩衝体を円滑に変形させるため、この二つの領域は、連結ボルトの長手方向において重なることはなく、仲介金物に向けて荷重を伝達させていく領域は、連結ボルトから荷重が伝達してくる領域よりも外側に位置する必要がある。その結果、連結ボルトに生じた軸力により、緩衝体には圧縮荷重のほか、曲げモーメントやせん断荷重も生じることになり、変形を円滑に誘発することができる。しかも緩衝体の変形量は、その大きさや厚さを変えることで自在に調整可能である。
【0019】
連結ボルトが頭付ボルトである場合、その頭部と緩衝体を直に接触させることも可能だが、双方の間には通常の座金を挟み込んでも構わない。この座金については、緩衝体とは異なり、単に圧縮荷重が生じるだけである。ただし、このように通常の座金を挟み込むことで、緩衝体の変形に影響を与える恐れがある。そこで緩衝体において、仲介金物に向けて荷重を伝達させていく領域は、この座金よりも外側に配置するなどの対応が必要になる。そのほか連結ボルトにおいて、仲介金物の反対側の端部は、何らかの方法で一方材や他方材に取り付けることになる。その具体例としては、一方材や他方材にラグスクリューなどの埋設具を埋め込み、そこに連結ボルトを螺合させる方法が挙げられる。
【0020】
このように一方材と他方材との連結構造において、連結ボルトと仲介金物と緩衝体とを使用し、連結ボルトは、一方材と他方材が互いに引き寄せ合う状態を維持するように配置するほか、連結ボルトを締め付けることで生じた軸力は、緩衝体を介して仲介金物に向けて伝達させていく構成とする。さらに緩衝体に隣接して空隙を確保することで、緩衝体が無理なく変形可能な状態になる。そのため連結構造に過大な引張荷重が作用し、連結ボルトに過大な軸力が生じた際は、連結ボルトなどの変形に先立って緩衝体が変形して空隙に入り込み、十分な粘り強さを確保することができる。なお当然ながら、過大な引張荷重による変形は、緩衝体に集中するよう、連結構造を構成する各部の強度を確保する必要がある。そのほか一つの連結構造において、連結ボルトの使用本数は自在である。
【0021】
請求項2記載の発明は、緩衝体の形状を特定するものであり、緩衝体は、中空状の筒部と、筒部の一端側を塞ぐ板部と、で構成してあり、連結ボルトは板部を貫くほか、筒部の内側が空隙になることを特徴とする。ここでの緩衝体は単純な平面状ではなく、筒部と板部で構成され、高さを有する形態になり、その内側が空隙になるほか、筒部については、板部の反対側が仲介金物などと接触することになる。そして、連結ボルトから過大な軸力が伝達してきた際は、板部の中心が陥没して空隙に入り込む。なおこのような緩衝体は、一本の連結ボルトに対し、複数個を直列で配置することが可能である。
【0022】
請求項3記載の発明は、緩衝体の構成を特定するものであり、緩衝体には、連結ボルトと螺合するためのメネジを形成してあることを特徴とする。連結ボルトとしてスタッドボルトなどを使用する場合を考慮し、連結ボルトに生じた軸力を緩衝体に伝達する手段は、多様化することが望ましい。そこでこの発明では、緩衝体にメネジを形成し、このメネジを連結ボルトに螺合させることで、連結ボルトと緩衝体との間で軸力を直接的に伝達することが可能になる。そのため仮に連結ボルトが頭付ボルトの場合でも、その頭部から離れた場所に緩衝体を配置することができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の発明のように、一方材と他方材との連結構造において、連結ボルトと仲介金物と緩衝体とを使用し、連結ボルトは、一方材と他方材が互いに引き寄せ合う状態を維持するように配置するほか、連結ボルトを締め付けることで生じた軸力は、緩衝体を介して仲介金物に向けて伝達させていく構成とする。さらに緩衝体に隣接して空隙を確保することで、緩衝体が無理なく変形可能な状態になる。そのため連結構造に過大な引張荷重が作用し、連結ボルトに過大な軸力が生じた際は、連結ボルトなどの変形に先立って緩衝体が変形して空隙に入り込み、十分な粘り強さを確保することができる。
【0024】
連結ボルトは、通常の物をそのままの状態で使用可能であり、その入手性に問題がなく、仲介金物についても、従来の物をそのままの状態で使用できる場合がある。また緩衝体は、連結ボルトの頭部などに隣接させるため、一方材や他方材に埋め込む各種の部品は、従来の連結構造と同じになり、費用面や施工性に優れている。そのほか本発明では、緩衝体を弾塑性変形させることで過大な引張荷重を受け止めているため、緩衝体の大きさや厚さなどを変化させることで、荷重と変形量との関係を調整しやすく、個々の連結構造において、最適な特性を付与することが容易である。
【0025】
請求項2記載の発明のように、緩衝体を筒部と板部で構成し、その内側を空隙とすることで、仲介金物には空隙を形成する必要がない。そのため仲介金物については、従来の物をそのままの状態で使用することができ、費用面で優れている。また筒部の大きさや板部の厚さを変化させることで、荷重と変形量との関係を自在に調整可能であり、様々な連結構造において、荷重と変形量との関係を容易に最適化することができる。
【0026】
請求項3記載の発明のように、緩衝体にメネジを形成することで、連結ボルトに生じた軸力は、このメネジを介して緩衝体に伝達していくため、緩衝体の配置についての制約が少なくなり、様々な連結構造に対応することができる。また一本の連結ボルトに対し、複数の緩衝体を直列で配置することが可能になり、緩衝体の配置個数を変えることで軸力と変形量との関係を調整することができ、汎用性や柔軟性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による連結構造の具体例を示す斜視図であり、ここでは二個で一組となる仲介金物を使用して一方材と他方材を連結することを想定している。
図2図1の一方材と他方材を連結していく過程を示す斜視図である。
図3図1の一方材と他方材との連結が完了した状態を示す断面図であり、図の下方では、緩衝体が変形した状態を描いてある。
図4】先の図1と同様の連結構造を示す斜視図だが、ここでは仲介金物の幅を狭くしたほか、埋設具として異形棒鋼を使用している。
図5】本発明による連結構造の具体例を示す斜視図であり、ここでの一方材は直立する柱であり、また他方材は基礎であり、その間に仲介金物を介在させて一方材と他方材を連結することを想定している。
図6図5の一方材と他方材を連結していく過程を示す斜視図である。
図7図5の一方材と他方材との連結が完了した状態を示す断面図であり、図の下方では、緩衝体が変形した状態を描いてある。
図8】先の図5と同様の連結構造を示す斜視図だが、ここでは一本の連結ボルトに対し、直径の異なる二個の緩衝体を組み込んでいる。
図9図8の一方材と他方材との連結が完了した状態を示す断面図であり、図の下方では、緩衝体が変形した状態を描いてある。
図10】先の図5と同様の連結構造を示す斜視図だが、ここでは一本の連結ボルトに対し、同一形状の二個の緩衝体を組み込んでいる。
図11図10の一方材と他方材との連結が完了した状態を示す断面図であり、図の下方では、緩衝体が変形した状態を描いてある。
図12】本発明を構成する部品の形状例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明による連結構造の具体例を示しており、ここでは二個で一組となる仲介金物31、32を使用して一方材71と他方材81を連結することを想定している。そしてこの図の一方材71は直立する柱であり、また他方材81は水平方向に伸びる梁であり、いずれも木造建築の骨格を構成しており、集成材などの各種木材を所定の形状に加工したものである。さらに一方材71の側面に他方材81の端面を接触させるほか、二個の仲介金物31、32を一体化させることで、一方材71と他方材81が連結される。
【0029】
二個の仲介金物31、32はいずれも直立する棒状であり、一方の仲介金物31は一方材71の側面に取り付け、他方の仲介金物32は他方材81の端部に取り付ける。そして一方材71に取り付ける仲介金物31は、長方形断面の棒体42を中心に構成され、その上部にはクサビ状の先鋭部43を形成してあるほか、下部には受け帯44を一体化してある。受け帯44はコの字状に屈曲しており、棒体42の側面から飛び出すように取り付けられ、その内側には閉じた空間が確保される。そのほか棒体42の中央部からは帯状の板が突出しており、そこにピン穴46を設けてある。また他方材81に取り付ける仲介金物32は、一方材71側の仲介金物31を上下反転させたような構成であり、棒体42の上部には受け帯44を一体化してあるほか、下部にはクサビ状の先鋭部43を形成してあり、さらに棒体42の中央部にはピン穴46を設けてある。
【0030】
二個の仲介金物31、32を接近させ、双方の先鋭部43を相手方の受け帯44の内側に嵌め込むと、双方の棒体42が接触し、水平方向の荷重が伝達可能になる。なおその際、双方のピン穴46が同心に揃い、そこに貫通ピン48を打ち込むことで、二個の仲介金物31、32が完全に一体化する。当然ながら先鋭部43と受け帯44は、棒体42同士が隙間なく接触するような形状に仕上げる。そして仲介金物31、32は、埋設具61を介して一方材71や他方材81に取り付ける。そのほか二個の仲介金物31、32は、いずれも収容溝85の中に収容されるため、貫通ピン48は、他方材81の側面を貫くように打ち込む必要がある。そのため他方材81には、仲介金物31、32のピン穴46と同心に揃う位置に横穴86を加工してある。
【0031】
この図の埋設具61は汎用のラグスクリューであり、その側周面には螺旋状に伸びる凸条64を形成してあるほか、施工時に工具を掛けるため、その一端面には六角形の頭部65を形成してあり、さらに頭部65の中心にはメネジ68を形成してある。また埋設具61を埋め込むため、一方材71の側面には上下二箇所に下穴74を加工してあるほか、他方材81の収容溝85の奥面にも上下二箇所に下穴84を加工してある。そして一方材71に埋設具61を埋め込んだ後、それを覆い隠すように仲介金物31を配置し、次に仲介金物31から埋設具61のメネジ68に向けて連結ボルト21を差し込むと、仲介金物31の取り付けが完了する。対する他方材81も同様であり、埋設具61を埋め込んだ後、収容溝85の中に仲介金物32を配置し、連結ボルト21を差し込むことで仲介金物32の取り付けが完了する。
【0032】
図の右下には、仲介金物31、32の断面を描いてあり、いずれも連結ボルト21を差し込むため、上下二箇所に中穴38を設けてある。また棒体42において、中穴38の反対側には、より大径の格納穴47を設けてあり、さらに中穴38と格納穴47との間には、空隙28を確保してある。空隙28は、格納穴47よりも小径だが中穴38よりは大径であり、ここでは大きさの異なる三種類の穴が同心で階段状に並んでいるが、空隙28については、連結ボルト21の頭部が余裕で入り込むことのできる大きさを確保してある。
【0033】
緩衝体11は単純な円盤状であり、その中心には抜け穴18を設けてあり、抜け穴18に連結ボルト21を差し込んだ後、連結ボルト21の頭部に緩衝体11を接触させると、通常の座金と同様の使用形態になる。また緩衝体11は、仲介金物31、32の格納穴47に嵌まり込み、さらに緩衝体11を格納穴47の奥面に接触させる。そのため連結ボルト21の締め付けで生じた軸力は、その全てが緩衝体11を介して仲介金物31、32に伝達していく。なお緩衝体11は空隙28に隣接することから、緩衝体11の外縁部だけが仲介金物31、32に接触し、そこで軸力が伝達されていく。
【0034】
施工時は、一方材71に仲介金物31を取り付け、他方材81にも仲介金物32を取り付けた後、仲介金物31、32同士を接触させ、次に貫通ピン48を打ち込むと、一方材71と他方材81との連結が完了する。以降、一方材71と他方材81を引き離す方向に過大な荷重が作用すると、連結ボルト21に大きな軸力が生じることになり、それによって緩衝体11の中心部が変形して空隙28に入り込む。このような緩衝体11の変形により、連結構造の粘り強さが確保される。
【0035】
図2は、図1の一方材71と他方材81を連結していく過程を示している。この図の上方のように、一方材71の側面に埋設具61を埋め込み、この埋設具61を覆い隠すように仲介金物31を配置するほか、連結ボルト21を緩衝体11に差し込んだ後、この連結ボルト21を仲介金物31から埋設具61に向けて差し込むことで、仲介金物31が一方材71に取り付けられる。他方材81についても、収容溝85の奥面に埋設具61を埋め込み、この埋設具61を覆い隠すように仲介金物32を配置するほか、連結ボルト21を緩衝体11に差し込んだ後、この連結ボルト21を仲介金物32から埋設具61に向けて差し込むことで、仲介金物32が他方材81に取り付けられる。
【0036】
その後、一方材71を直立した状態で据え付け、次に他方材81を吊り上げ、一方材71側の仲介金物31の上方に他方材81側の仲介金物32を配置した後、他方材81を徐々に下降させ、双方の仲介金物31、32の先鋭部43を相手方の受け帯44の内側に嵌め込んでいくと、やがて二個の仲介金物31、32の棒体42同士が接触し、一方材71と他方材81が連結された状態になる。そして最後には、図の下方のように、他方材81の側面から仲介金物31、32のピン穴46に向けて貫通ピン48を打ち込むことで、二個の仲介金物31、32は分離不能になり、一方材71と他方材81との連結が完了する。
【0037】
図3は、図1の一方材71と他方材81との連結が完了した状態を断面で示しており、図の下方では、緩衝体11が変形した状態を描いてある。連結が完了することで、一方材71の側面と他方材81の端面が接触しているほか、二個の仲介金物31、32は、双方の先鋭部43が相手方の受け帯44に嵌めり込んで接触を維持する。なお仲介金物31、32は収容溝85の中に収容され、その大半が他方材81などで覆い隠される。また一方材71と他方材81の双方には埋設具61を埋め込んであり、個々の仲介金物31、32から埋設具61に向けて連結ボルト21を差し込むことで、仲介金物31、32は一方材71や他方材81に取り付けられる。
【0038】
仲介金物31、32には、連結ボルト21を差し込むための中穴38を設けてあり、その隣には空隙28を設けてあり、その隣には格納穴47を設けてある。中穴38と空隙28と格納穴47は、いずれも円断面で同心に揃い、これらがこの順で並んでおり、中穴38から格納穴47に向かうに連れて段階的に大径化していき、格納穴47には緩衝体11が緩みなく嵌まり込んでいる。そして連結ボルト21は、埋設具61に螺合した状態で締め付けられており、連結ボルト21の頭部は、緩衝体11に接触しており、さらに緩衝体11の外縁部は、仲介金物31、32の格納穴47の奥面に接触しているため、連結ボルト21の頭部は、仲介金物31、32と直に接触することはない。なお、連結ボルト21の頭部は格納穴47に埋め込まれるため、仲介金物31、32同士の接触を妨げることはない。
【0039】
緩衝体11は通常の座金と同様、連結ボルト21の頭部と接触しているが、緩衝体11においてその反対側は、空隙28に隣接しているため、緩衝体11の外縁部だけが仲介金物31、32に接触している。しかも空隙28は、意図的に連結ボルト21の頭部よりも大きくしてある。そのため、連結ボルト21に生じた軸力が仲介金物31、32に伝達していく際、緩衝体11には圧縮荷重のほか、曲げモーメントやせん断荷重も発生することになり、加えて緩衝体11は空隙28に隣接しているため、これらの荷重によって緩衝体11が変形して空隙28に入り込むことが可能である。
【0040】
実際に一方材71と他方材81を引き離す方向に過大な荷重が作用すると、図の下方のように、緩衝体11が変形して空隙28に入り込むことになるが、その間、一方材71と他方材81との連結は一貫して維持されるため、連結構造としての粘り強さが確保される。なお空隙28を大径化することで、連結ボルト21の頭部と空隙28の内周面との距離が増大するため、緩衝体11の変形が促進される。また緩衝体11の厚さを削減することでも、緩衝体11の変形が促進される。
【0041】
緩衝体11は単純な形状であるため、その寸法の調整も容易であり、様々な連結構造において、最適な粘り強さを確保することができるほか、費用面でも優れている。なお過大な荷重が作用した際の変形は、緩衝体11に集中するよう、この連結構造を構成する各部の強度を確保する必要がある。またこの図では、二個の仲介金物31、32の両方に緩衝体11を組み込んでいるが、一方だけに限定することも可能である。ただしその場合、変形量が抑制される。
【0042】
図4は、先の図1と同様の連結構造を示しているが、ここでは仲介金物33、34の幅を狭くしたほか、埋設具62として異形棒鋼を使用している。この仲介金物33、34は、図1のものよりも幅を狭くしてあり、それに伴い、空隙28と格納穴47は、上下方向に伸びた長方形断面としてある。また緩衝体13も長方形としてあり、その中心に抜け穴18を設けてあり、緩衝体13を格納穴47に嵌め込んだ際は、緩衝体13の上下両端部だけが格納穴47の奥面に接触し、それよりも内側は空隙28に隣接することになり、連結ボルト21に過大な軸力が生じた際は、緩衝体13の中央部が空隙28に入り込む。なお図の右下には、仲介金物33、34の断面を描いてある。
【0043】
この図の緩衝体13は円形ではなく長方形であるため、その幅が抑制され、必然的に仲介金物33、34の幅を抑制することができる。またここでの埋設具62は、側周面にリブ66が形成された異形棒鋼を所定の長さに切り出したものであり、接着剤で一方材71や他方材81と一体化する。なお埋設具62の一端面にはメネジ68を形成してあり、そこに連結ボルト21を螺合させる点は、図1と同じである。このように、仲介金物33、34を取り付けるための埋設具62は、従来から使用されている様々な物を自在に選択可能である。
【0044】
図5は、本発明による連結構造の具体例を示しており、ここでの一方材71は直立する柱であり、また他方材82は基礎であり、その間に仲介金物35を介在させて一方材71と他方材82を連結することを想定している。したがって一方材71は、集成材などの各種木材を所定の形状に加工したものだが、他方材82は、地盤に打設されたコンクリートであり、その上部を平面状に仕上げてあるほか、内部にはアンカーボルト88を埋め込んであり、その上端部だけが外部に突出している。
【0045】
仲介金物35は、従来の柱脚金物をそのまま流用したものであり、四枚の金属板を溶接で一体化した箱形であり、その底部に位置するものを底板52と称しており、底板52の両端部から壁状に突出するものを側板54と称しており、左右の側板54によって架空に支持されるものを天板55と称している。そして底板52には、アンカーボルト88を差し込むための底穴53を設けてあり、施工時は仲介金物35を他方材82に接近させ、底板52にアンカーボルト88を差し込んだ後、仲介金物35を他方材82に載せ、以降、アンカーボルト88に大ワッシャ59を差し込み、さらにアンカーボルト88に固定ナット58を螺合させることで、仲介金物35が他方材82に固定される。なおアンカーボルト88の位置誤差を考慮し、底穴53は大径化してある。
【0046】
一方材71に仲介金物35を取り付けるため、一方材71の底面には埋設具61を埋め込む。この図の埋設具61は汎用のラグスクリューであり、その側周面には螺旋状に伸びる凸条64を形成してあるほか、施工時に工具を掛けるため、その一端面には六角形の頭部65を形成してあり、さらに頭部65の中心にはメネジ68を形成してある。また一方材71の底面には、埋設具61を埋め込むため、下穴74を二箇所に加工してある。そのほか埋設具61を仲介金物35に引き寄せるため、連結ボルト21を使用しており、仲介金物35の天板55には、連結ボルト21を差し込むための中穴38を設けてあり、連結ボルト21を仲介金物35の内部に配置した後、その先端部を中穴38から埋設具61のメネジ68に向けて差し込んでいく。
【0047】
連結ボルト21は、単に中穴38に差し込む訳ではなく、それに先立ち、緩衝体14に差し込む必要がある。緩衝体14は、単純な円筒形の筒部27と、筒部27の一端側を塞ぐ板部26と、で構成され、板部26の中心には、連結ボルト21を差し込むための抜け穴18を設けてあり、筒部27の内側が空隙28になる。そして緩衝体14を組み込む際は、その板部26を下に向けた後、抜け穴18の下方から連結ボルト21を差し込み、筒部27の上端面を天板55に接触させる。したがって連結ボルト21を締め付けた後は、連結ボルト21の頭部が緩衝体14の板部26に接触するほか、空隙28の中心を連結ボルト21が貫き、連結ボルト21に過大な軸力が生じた際は、板部26が変形して空隙28に入り込む。
【0048】
図6は、図5の一方材71と他方材82を連結していく過程を示している。この図の上方のように、一方材71の底面に埋設具61を埋め込んだ後、一方材71を仲介金物35に載せ、さらに、仲介金物35の内部から埋設具61に向けて連結ボルト21を差し込むことになるが、それに先立ち、連結ボルト21を緩衝体14に差し込む必要がある。そして、埋設具61に螺合した連結ボルト21を締め付けると、その頭部が緩衝体14の板部26に接触するほか、緩衝体14の筒部27が仲介金物35の天板55に接触し、一方材71が仲介金物35に引き寄せられ、連結ボルト21に生じた軸力は、緩衝体14を介して仲介金物35に伝達していく。
【0049】
一方材71に仲介金物35を取り付けた後、仲介金物35を他方材82に載せ、次にアンカーボルト88に大ワッシャ59を差し込み、最後にアンカーボルト88に固定ナット58を螺合させると、仲介金物35が他方材82に固定され、一方材71が他方材82に据え付けられる。このような仲介金物35を使用した柱71の据え付け方法は、従来と同じだが、連結ボルト21に生じた軸力は、緩衝体14を介して仲介金物35に伝達していく点が従来とは異なる。
【0050】
図7は、図5の一方材71と他方材82との連結が完了した状態を断面で示しており、図の下方では、緩衝体14が変形した状態を描いてある。一方材71と他方材82との間には仲介金物35が挟み込まれており、埋設具61や連結ボルト21を介して一方材71と仲介金物35が一体化しているほか、アンカーボルト88や固定ナット58を介して仲介金物35と他方材82が一体化している。そして連結ボルト21は緩衝体14に差し込まれているため、連結ボルト21の頭部は、緩衝体14の板部26に接触しており、さらに緩衝体14の筒部27の上端面は、仲介金物35の天板55に接触しており、空隙28の中心を連結ボルト21が貫いている。
【0051】
連結ボルト21に生じた軸力は、緩衝体14を介して仲介金物35に伝達していく。そのためこの連結構造に過大な引張荷重が作用した際は、それが緩衝体14を経て連結ボルト21に伝達し、その軸力が増大することになり、最終的には図の下方のように、緩衝体14の板部26が変形して空隙28に入り込み、連結ボルト21などの破損を防いで粘り強さが確保される。なお緩衝体14の変形により、一方材71と仲介金物35には隙間ができることになる。そのほか過大な引張荷重が作用した際の変形は、緩衝体14に集中するよう、この連結構造を構成する各部の強度を確保する必要がある。
【0052】
緩衝体14を円滑に変形させるため、その筒部27の内径は、連結ボルト21の頭部よりも大きくしてある。そのため連結ボルト21に生じた軸力により、緩衝体14の板部26には、圧縮荷重のほか、曲げモーメントやせん断荷重も発生し、緩衝体14の弾塑性変形を誘発することになる。必然的に緩衝体14を大形化することで、変形が容易になるほか、板部26の厚さを抑制することでも、変形が容易になる。ただし、板部26が大きく変形して仲介金物35に接触した場合、以降は緩衝体14が機能しなくなる。そこで空隙28の大きさは、荷重条件などに基づいて決める必要がある。
【0053】
図8は、先の図5と同様の連結構造を示しているが、ここでは一本の連結ボルト21に対し、直径の異なる二個の緩衝体14、15を組み込んでいる。したがってこの図では、図5に対して緩衝体14、15だけが異なり、一方材71には埋設具61を埋め込むほか、仲介金物35は柱脚金物である。そしてこの図のように、二個の緩衝体14、15を上下方向に直列で組み込むことで、連結構造の粘り強さを増大させることが可能になるが、下方に配置した緩衝体14の方が小径であり、これが連結ボルト21の頭部に接触する。また下方に配置した緩衝体14の筒部27の上端面は、上方に配置した緩衝体15の板部26に接触する。さらに上方に配置した緩衝体15の筒部27の上端面は、仲介金物35に接触する。
【0054】
図9は、図8の一方材71と他方材82との連結が完了した状態を断面で示しており、図の下方では、緩衝体14、15が変形した状態を描いてある。連結ボルト21の頭部と仲介金物35の天板55との間には、二個の緩衝体14、15が直列で組み込まれており、この連結構造に過大な引張荷重が作用した際は、連結ボルト21との接触により、下方の緩衝体14の板部26が変形するほか、この緩衝体14から荷重が伝達することで、上方の緩衝体15の板部26も変形する。このように複数の緩衝体14、15を同時に変形させることで、一定の荷重に対する変形量を増大させることが可能になる。
【0055】
図10は、先の図5と同様の連結構造を示しているが、ここでは一本の連結ボルト21に対し、同一形状の二個の緩衝体16を組み込んでいる。この緩衝体16は、先の図5と同様、板部26と筒部27で構成されるが、板部26の中心にはメネジ19を形成してあり、緩衝体16が連結ボルト21の頭部と接触しない場合でも、メネジ19が連結ボルト21と螺合することで、その軸力が伝達される。ただし、緩衝体16を何らかの方法で仲介金物35に接触させる点は、これまでと同じである。
【0056】
この図では、一本の連結ボルト21に対し、二個の緩衝体16を直列で組み込んでおり、そのうち下方のものは、小ワッシャ29を介して連結ボルト21の頭部に接触しているほか、そのメネジ19には連結ボルト21が螺合している。対する上方のものは、仲介金物35に接触するほか、そのメネジ19には連結ボルト21が螺合している。そして上下に並ぶ二個の緩衝体16は同一形状であり、双方の筒部27は同心で並んでいる。なお連結ボルト21において、その頭部の近傍ではネジの形成が不完全になり、そこでは緩衝体16との螺合が不可能になる。そこで小ワッシャ29を介在させている。
【0057】
図11は、図10の一方材71と他方材82との連結が完了した状態を断面で示しており、図の下方では、緩衝体16が変形した状態を描いてある。連結ボルト21の頭部と仲介金物35の天板55との間には、二個の緩衝体16が直列で組み込まれており、この連結構造に過大な引張荷重が作用した際は、連結ボルト21と緩衝体16との螺合により、二個の緩衝体16がほぼ同様に変形する。このように、複数の緩衝体16を直列に並べ、その全てが連結ボルト21と螺合している場合、全ての緩衝体16は、ほぼ同様に変形することになり、剛性が向上することから、必然的に荷重に対する変形量が抑制される。
【0058】
この図のような構成は、一本の連結ボルト21に組み込む緩衝体16の個数を変化させることで粘り強さを調整可能であり、汎用性を確保しながら様々な連結構造に対応することができる。なお先の図8においても、連結ボルト21の頭部から離れた場所に配置される緩衝体15については、その中心に抜け穴18でなくメネジ19を形成し、連結ボルト21に生じた軸力を直接的に伝達させることが可能である。
【0059】
図12は、本発明を構成する部品の形状例を示している。まず図の上方は、図1の連結構造などでの使用を想定した緩衝体12の形状例であり、ここでの緩衝体12は十字状にスリットを形成してあり、それによって緩衝体12が柔軟になり、荷重による変形を促進させることができる。また図の左下は、図5の連結構造などで使用する緩衝体17の形状例であり、ここでの緩衝体17はドーム状としてあり、その形状によって剛性が向上するため、荷重による変形を抑制することができる。
【0060】
図の右下は、図5などと同様の連結構造だが、連結ボルト22としてスタッドボルトを使用しており、その下端部に連結ナット24を螺合させることで、一方材71と仲介金物35を一体化する。またここでの緩衝体11は単純な円盤状であり、これに円筒形のスペーサ57を組み合わせて空隙28を確保している。なお、緩衝体11とスペーサ57を溶接などで一体化すると、図5の緩衝体14になる。そのほか連結ボルト22の上部は、何らかの手段で一方材71と一体化させる必要があるが、その手段については自在である。当然ながら本発明は、これまでの各図のような連結構造に限定される訳でなく、各図に描いた部品などを実現可能な範囲で自在に組み合わせ、様々な連結構造を実現可能である。
【符号の説明】
【0061】
11 緩衝体(円盤状)
12 緩衝体(スリットを設けた円盤状)
13 緩衝体(長方形)
14 緩衝体(筒状)
15 緩衝体(大径の筒状)
16 緩衝体(中心にメネジを形成した筒状)
17 緩衝体(ドーム状)
18 抜け穴
19 メネジ
21 連結ボルト(頭付ボルト)
22 連結ボルト(スタッドボルト)
24 連結ナット
26 板部
27 筒部
28 空隙
29 小ワッシャ
31 仲介金物(幅が広いもの)
32 仲介金物(幅が広いもの)
33 仲介金物(幅が狭いもの)
34 仲介金物(幅が狭いもの)
35 仲介金物(柱脚金物)
38 中穴
42 棒体
43 先鋭部
44 受け帯
46 ピン穴
47 格納穴
48 貫通ピン
52 底板
53 底穴
54 側板
55 天板
57 スペーサ
58 固定ナット
59 大ワッシャ
61 埋設具(ラグスクリュー)
62 埋設具(異形棒鋼)
64 凸条
65 頭部
66 リブ
68 メネジ
71 一方材(柱)
74 下穴
81 他方材(梁)
82 他方材(基礎)
84 下穴
85 収容溝
86 横穴
88 アンカーボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12