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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128899
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ウインドシールド
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20240913BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
B60J1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038177
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】千葉 和喜
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA03
4G061BA02
4G061CB05
4G061CB16
4G061CB19
4G061CD03
4G061CD18
4G061DA23
4G061DA29
4G061DA30
4G061DA32
4G061DA38
(57)【要約】
【課題】車外からの衝撃を受けたときの耐衝撃性を向上することができる、ウインドシールドを提供する。
【解決手段】本発明は、車内側に配置される内側ガラス板と、前記内側ガラス板と対向して配置され、車外側に配置される外側ガラス板と、前記外側ガラス板と内側ガラス板とを接着する中間膜と、を備え、前記中間膜は、機能層を備え、車外側からの衝撃に対する耐衝撃性を有する、ウインドシールド。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内側に配置される内側ガラス板と、
前記内側ガラス板と対向して配置され、車外側に配置される外側ガラス板と、
前記外側ガラス板と内側ガラス板とを接着する中間膜と、
を備え、
前記中間膜は、機能層を備え、
車外側からの衝撃に対する耐衝撃性を有する、ウインドシールド。
【請求項2】
前記中間膜は、
前記機能層と、
前記機能層よりも前記外側ガラス板側に配置される第1接着層と、
前記機能層よりも前記内側ガラス板側に配置される第2接着層と、
を備え、
前記第1接着層の厚みが、0.9mm以上である、請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項3】
前記中間膜は、
前記機能層と、
前記機能層よりも前記外側ガラス板側に配置される第1接着層と、
前記機能層よりも前記内側ガラス板側に配置される第2接着層と、
を備え、
前記第1接着層は、少なくとも、コア層と、前記コア層よりも剛性が高く、当該コア層を挟む一対のアウター層と、を備える、請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項4】
前記コア層のヤング率は、周波数100Hz,温度20℃において、25MPa以下である、
請求項3に記載のウインドシールド。
【請求項5】
前記アウター層のヤング率は、周波数100Hz,温度20℃において、560MPa以上である、
請求項3また4に記載のウインドシールド。
【請求項6】
前記第1接着層の厚みは、0.76mm以上である、請求項3に記載のウインドシールド。
【請求項7】
前記中間膜は、
前記機能層と、
前記機能層よりも前記外側ガラス板側に配置される第1接着層と、
前記機能層よりも前記内側ガラス板側に配置される第2接着層と、
を備え、
前記外側ガラス板の厚みが2.3mm以上であり、前記内側ガラス板の厚みが2.0mm以下である、請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項8】
前記外側ガラス板の厚みは、前記内側ガラス板厚みより大きい、
請求項2また3に記載のウインドシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のウインドシールドは、一般的に合わせガラスが用いられている。合わせガラスは、外側ガラス板と、内側ガラス板と、これらガラス板を接着する樹脂製の中間膜とを有している。この構成により、例えば車外からの物体の衝突による衝撃を中間膜で受け止めることができる。また、近年、中間膜には種々の機能が要求されており、例えば、熱反射フィルム、反射防止フィルム等の機能膜を中間膜内に配置することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-223883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウインドシールドに、車外から衝撃が加わった場合には、その衝撃を十分に受け止めることができず、内側ガラス板が破断して中間膜から剥離するおそれがあるため、車外からの衝撃に対する耐衝撃性が高いウインドシールドが要望されていた。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、車外からの衝撃を受けたときの耐衝撃性を向上することができる、ウインドシールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
項1.車内側に配置される内側ガラス板と、
前記内側ガラス板と対向して配置され、車外側に配置される外側ガラス板と、
前記外側ガラス板と内側ガラス板とを接着する中間膜と、
を備え、
前記中間膜は、機能層を備え、
車外側からの衝撃に対する耐衝撃性を有する、ウインドシールド。
車内側に配置される内側ガラス板と、
前記内側ガラス板と対向して配置され、車外側に配置される外側ガラス板と、
前記外側ガラス板と内側ガラス板とを接着する中間膜と、
を備え、
前記中間膜は、機能層を備え、
車外側からの衝撃に対する耐衝撃性を有する、ウインドシールド。
【0007】
項2.前記中間膜は、
前記機能層と、
前記機能層よりも前記外側ガラス板側に配置される第1接着層と、
前記機能層よりも前記内側ガラス板側に配置される第2接着層と、
を備え、
前記第1接着層の厚みが、0.9mm以上である、項1に記載のウインドシールド。
【0008】
項3.前記中間膜は、
前記機能層と、
前記機能層よりも前記外側ガラス板側に配置される第1接着層と、
前記機能層よりも前記内側ガラス板側に配置される第2接着層と、
を備え、
前記第1接着層は、少なくとも、コア層と、前記コア層よりも剛性が高く、当該コア層を挟む一対のアウター層と、を備える、項1に記載のウインドシールド。
【0009】
項4.前記コア層のヤング率は、周波数100Hz,温度20℃において、25MPa以下である、
項3に記載のウインドシールド。
【0010】
項5.前記アウター層のヤング率は、周波数100Hz,温度20℃において、560MPa以上である、
項3また4に記載のウインドシールド。
【0011】
項6.前記第1接着層の厚みは、0.76mm以上である、項3から5のいずれかに記載のウインドシールド。
【0012】
項7.前記中間膜は、
前記機能層と、
前記機能層よりも前記外側ガラス板側に配置される第1接着層と、
前記機能層よりも前記内側ガラス板側に配置される第2接着層と、
を備え、
前記外側ガラス板の厚みが2.3mm以上であり、前記内側ガラス板の厚みが2.0mm以下である、項1に記載のウインドシールド。
【0013】
項8.前記外側ガラス板の厚みは、前記内側ガラス板厚みより大きい、
項2から6のいずれかに記載のウインドシールド。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るウインドシールドによれば、車外からの衝撃を受けたときの耐衝撃性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る自動車用合わせガラスをウインドシールドに適用した一実施形態を示す平面図である。
図2図1の断面図である。
図3】中間膜の断面図である。
図4】車載システムのブロック図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のウインドシールドの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1はウインドシールドの平面図、図2図1の断面図である。なお、説明の便宜のため、図1の上下方向を「上下」、「垂直」、「縦」と、図1の左右方向を「左右」と称することとする。図1は、車内側から見たウインドシールドを例示している。すなわち、図1の紙面奥側が車外側であり、図1の紙面手前側が車内側である。
【0017】
図1及び図2に示すように、このウインドシールドは、略矩形状の合わせガラス10を備えており、傾斜状態で車体に設置されている。そして、この合わせガラス10の車内側を向く内面には、車外からの視野を遮蔽するマスク層110が積層されている。また、このマスク層110には、車外の状況を撮影するためのカメラが内蔵された撮影装置2がブラケット(図示省略)を介して取り付けられている。マスク層110には撮影装置2と対応する位置に撮影窓113が設けられ、この撮影窓113を介して、撮影装置2は、車外の状況を撮影可能となっている。
【0018】
撮影装置2には画像処理装置3が接続しており、撮影装置2により取得された撮影画像はこの画像処理装置3で処理される。撮影装置2及び画像処理装置3は車載システム5を構成しており、この車載システム5は、画像処理装置3の処理に応じて様々な情報を乗車者に提供することができる。以下、各構成要素について説明する。
【0019】
<1.合わせガラス>
<1-1.ガラス板>
まず、外側ガラス板11及び内側ガラス板12から説明する。外側ガラス板11及び内側ガラス板12は、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラス、グリーンガラス、ダークグリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することもできる。但し、これらのガラス板11、12は、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、外側ガラス板11により必要な日射吸収率を確保し、内側ガラス板12により可視光線透過率が安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラス、熱線吸収ガラス、及びソーダ石灰系ガラスの一例を示す。
【0020】
(クリアガラス)
SiO2:70~73質量%
Al23:0.6~2.4質量%
CaO:7~12質量%
MgO:1.0~4.5質量%
2O:13~15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe23に換算した全酸化鉄(T-Fe23):0.08~0.14質量%
【0021】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe23に換算した全酸化鉄(T-Fe23)の比率を0.4~1.3質量%とし、CeO2の比率を0~2質量%とし、TiO2の比率を0~0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO2やAl23)をT-Fe23、CeO2およびTiO2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0022】
(ソーダ石灰系ガラス)
SiO2:65~80質量%
Al23:0~5質量%
CaO:5~15質量%
MgO:2質量%以上
NaO:10~18質量%
2O:0~5質量%
MgO+CaO:5~15質量%
Na2O+K2O:10~20質量%
SO3:0.05~0.3質量%
23:0~5質量%
Fe23に換算した全酸化鉄(T-Fe23):0.02~0.03質量%
【0023】
各ガラス板11,12においては、可視光透過率を調整することもできる。そのためには、例えば、Fe23の含有量を調整することで、ガラス板に着色を行い、これによって、可視光透過率を調整することができる。例えば、Fe23の含有量が多くなると、緑色に着色され、上述したグリーンガラス、またはダークグリーンガラスとなる。一方、Fe23の含有量が少ないと、上述したクリアガラスとなる。
【0024】
本実施形態に係る合わせガラス10の厚みは特には限定されないが、外側ガラス板11と内側ガラス板12の厚みの合計を、例として2.1~6mmとすることができ、軽量化の観点からは、外側ガラス板11と内側ガラス板12の厚みの合計を、2.4~3.8mmとすることが好ましく、2.6~3.4mmとすることがさらに好ましく、2.7~3.2mmとすることが特に好ましい。
【0025】
外側ガラス板11は、主として、外部からの障害に対する耐久性、耐衝撃性が必要であり、自動車のウインドシールドとしては、小石などの飛来物に対する耐衝撃性能が必要である。他方、厚みが大きいほど重量が増し好ましくない。この観点から、外側ガラス板11の厚みは1.8~2.5mmとすることが好ましく、1.9~2.4mmとすることがさらに好ましい。何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
【0026】
内側ガラス板12の厚みは、外側ガラス板11と同等にすることができるが、例えば、合わせガラス10の軽量化のため、外側ガラス板11よりも厚みを小さくすることができる。内側ガラス板12の厚みを小さくした分、外側ガラス板11の厚みを軽量化の観点で許容する限りにおいて厚くすることができる。これにより、車外側からの衝撃を緩和できる。その結果、外側からの衝撃によって、機能フィルム、ガラス板間での接着層の剥離防止効果を高めることができる。具体的には、ガラスの強度を考慮すると、0.6~2.3mmであることが好ましく、0.8~1.6mmであることが好ましく、1.0~1.4mmであることが特に好ましい。更には、0.8~1.3mmであることが好ましい。これにより、例えば、外側ガラス板11の厚みを2.3mm以上とすることができ、耐衝撃性を向上することができる。
【0027】
また、この合わせガラス10は、車外側に凸となるように湾曲しているが、その場合の厚みの測定位置は、合わせガラス10の左右方向の中央を上下方向に延びる中央線の上下2箇所である。測定機器は、特には限定されないが、例えば、株式会社テクロック製のSM-112のようなシックネスゲージを用いることができる。測定時には、平らな面に合わせガラス10の湾曲面が載るように配置し、上記シックネスゲージで合わせガラス10の端部を挟持して測定する。
【0028】
<1-2.中間膜>
図3に示すように、第1態様の中間膜13は、外側ガラス板11に接着される透明の第1接着層131と、内側ガラス板12に接着される透明の第2接着層132と、これら両接着層131,132の間に配置される機能層135と、を備えている。
【0029】
<1-2-1.接着層>
第1接着層131及び第2接着層132は、融着により各ガラス板11,12に接着されるものであれば、特には限定されないが、例えば、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA)などによって形成することができる。一般に、ポリビニルアセタール樹脂の硬度は、(a)出発物質であるポリビニルアルコールの重合度、(b)アセタール化度、(c)可塑剤の種類、(d)可塑剤の添加割合などにより制御することができる。
【0030】
各ガラス板11,12への接着前の第1接着層131及び第2接着層132には、機能層135と接着する際、あるいは各ガラス板11,12と接着する際に、空気を容易に押し出すために、その表面にエンボス加工を行うことがある。
【0031】
第2接着層132は、製造時に、単独で準備することができるが、例えば、機能層135の車内側の面に予め積層しておくこともできる。この場合、中間膜13は、第1接着層131、及び第2接着層132付きの機能層135の2層を重ねることで、製造される。
【0032】
第1接着層131及び第2接着層132の厚みは、特には限定されないが、例えば、0.001~2.0mmであることが好ましく、0.1~1.0mmであることがさらに好ましい。但し、両接着層131,132の厚みは同じであっても、相違していてもよい。例えば、上述したように、第2接着層132を予め機能層135に積層しておく場合には、第2接着層132の厚みは、0.001~0.100mmとすることができる。
【0033】
また、両接着層131,132の厚みの合計は、0.76mm以上であることが好ましい。これは、ウインドシールドにおいて、例えば、JIS R3211,R3212で規定するような耐貫通性能等を確保するためである。
【0034】
但し、衝撃時の耐剥離性の観点からは、少なくとも一方の接着層131,132の厚みを0.9mm以上とすることが好ましく、1.1mm以上とすることがさらに好ましく、2.0mm以上とすることがより好ましい。例えば、第1接着層131の厚みを1.1μm以上、第2接着層132の厚みを25μm以上とすることができる。これにより、車外からの衝撃を受けた場合に、その衝撃を第1接着層131によって吸収することができ、内側ガラス板12が中間膜13から離脱して車内に散乱するのを抑制することができる。
【0035】
また、中間膜13全体の厚み上限は特に限定されないが、軽量化の観点から中間膜13厚みは10.0mm以下が好ましい。
【0036】
<1-2-2.機能層>
機能層135としては、用途に応じて、種々の機能を有するフィルムを用いることができる。例えば、公知の遮熱フィルム、発熱フィルム、投影フィルム、発光フィルム、アンテナ用フィルム、遮音フィルム、調光フィルムなどを用いることができる。
【0037】
遮熱フィルムは、車内の温度上昇を抑制するため、主に赤外線を反射したり、あるいは吸収するように構成されたフィルムである。例えば、車内の温度上昇を抑制するため、主に赤外線を反射する公知の赤外線反射フィルム(IR反射フィルム)を採用することができる。
【0038】
発熱フィルムは、曇りを除去したり、解氷するためのものであり、電圧を印加することにより熱を発する複数の細線を基材フィルムにより支持したものとすることができる。
【0039】
投影フィルムは、ヘッドアップディスプレイ装置から照射される光によって情報が投影されるものである。投影フィルムは、例えば、両接着層131,132とは屈折率が相違し、光を反射するフィルムであれば、特には限定されない。投影フィルムの大きさは特には限定されないが、情報が投影される領域よりも大きいことが好ましい。
【0040】
発光フィルムは、LED等が内蔵され、所定の文字、図形などを示す光が発光されるものである。
【0041】
アンテナ用フィルムは、発熱フィルムと同様に、基材フィルムにFM,AM,DTV,DAB等のアンテナを配置したフィルムである。なお、以上は機能層133の例であり、これらに限定されるものではない。
【0042】
遮音フィルムは、剛性の低い軟質のコア層を、これよりも剛性の高い一対のスキン層(アウター層ともいう)で挟持した3層で構成することができる。但し、この構成に限定されるものではなく、軟質のコア層を有する複数層で形成されていればよい。例えば、コア層を含む2層(コア層が1層と、スキン層が1層)、またはコア層を中心に配置した5層以上の奇数の層(コア層が1層と、スキン層が4層)、あるいはコア層を内側に含む偶数の層(コア層が1層と、他の層がスキン層)で形成することもできる。
【0043】
コア層はスキン層よりも軟質であれば、特には限定されないが、この点については、ヤング率を基準として材料を選択することができる。例えば、コア層のヤング率を、周波数100Hz,温度20度において、1MPa以上25MPa以下とすることが好ましい。特に、上限については、20MPa以下であることが好ましく、16MPa以下であることがさらに好ましく、10MPa以下であることが特に好ましい。
【0044】
測定方法としては、例えば、Metravib社製固体粘弾性測定装置DMA 50を用い、ひずみ量0.05%にて周波数分散測定を行うことができる。以下、本明細書においては、特に断りのない限り、ヤング率は上記方法での測定値とする。但し、周波数が200Hz以下の場合の測定は実測値を用いるが、200Hzより大きい場合には実測値に基づく算出値を用いる。この算出値とは、実測値からWLF法を用いることで算出されるマスターカーブに基づくものである。
【0045】
一方、スキン層のヤング率は、特には限定されず、コア層より大きければよい。例えば、周波数100Hz,温度20度において400MPa以上、440MPa以上、560MPa以上、650MPa以上、1300MPa以上、1764MPa以上の順で好ましい。一方、スキン層のヤング率の上限は特には限定されない。
【0046】
また、コア層を挟む一対のスキン層を設ける場合、外側ガラス板11側のスキン層のヤング率を、内側ガラス板12側のスキン層のヤング率よりも大きくすることが好ましい。また、コア層とスキン層のヤング率の差を大きくすることにより、車外からの衝撃によるショックを吸収し、耐衝撃性を高めることができる。
【0047】
また、コア層及びスキン層の構成する材料は、特には限定されないが、少なくともヤング率が上記のような範囲とすることができる材料であることが必要であり、例えば、樹脂材料を用いることができる。具体的には、例えば、スキン層は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)によって構成することができる。ポリビニルブチラール樹脂は、各ガラス板との接着性や耐貫通性に優れるので好ましい。一方、コア層は、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA)、またはスキン層を構成するポリビニルブチラール樹脂よりも軟質なポリビニルアセタール樹脂によって構成することができる。軟質なコア層を間に挟むことにより、単層の樹脂中間膜と同等の接着性や耐貫通性を保持しながら、遮音性能を大きく向上させることができる。
【0048】
このような遮音フィルムは、機能層として用いる以外に、第1接着層131または第2接着層132として用いることもできる。例えば、第1接着層131として、厚みが760μm以上の上述した遮音フィルムを採用することができる。上記のように遮音フィルムは複数層で構成され、またコア層が軟質であるため、これによって車外からの衝撃を吸収することができ、内側ガラス板12が中間膜13から離脱して車内に散乱するのを抑制することができる。
【0049】
調光フィルム(エレクトロクロミックシート)は、電圧を印加することにより光の透過率が変化する性質を有する。これにより、透過性や着色性を変化させることができる。調光フィルムは、例えば、エレクトロクロミック化合物と、金属アルコキシ化合物とを含有する。金属アルコキシ化合物を含有することにより、導電膜との接着性に優れる。
【0050】
以上のような機能層133を構成するフィルムの厚みは、特には、限定されないが、例えば、0.01~2.0mmとすることが好ましく、0.03~0.6mmであることがさらに好ましい。このように、フィルムの周縁の端面の厚みの上限は、2.0mmであることが好ましい。これは、フィルムの端面の厚みが大きいと、機能層133は両接着層131,132よりも小さいため、中間膜13に段差が生じ、この段差によって、中間膜13を両ガラス板11,12の間に挟んだときに、空気が含まれ、泡が生じるおそれがあることによる。
【0051】
その他、機能層としては、ホログラム層、導電層、および紫外線反射層等の特定波長域電磁波反射層、色補正層、赤外線吸収層および紫外線吸収層等の特定波長域光吸収層、蛍光層等の発光層、サーモクロミック層、フォトクロミック層、意匠層、および高弾性率層等の各種機能を有する層を用いることができる。また、機能が同一のまたは異なる複数の機能層133を有してもよい。また、フィルムの表面に微細凹凸パターンを有する機能層であってもよい。
【0052】
また、両ガラス板11,12のガラス板210とガラス板220との間に、後述する本実施形態の効果を損なわない範囲で、中間膜13のほかに、あるいは中間膜13の内部に、赤外線反射、発光、発電、調光、可視光反射、散乱、加 飾、吸収、電熱等の機能を持つフィルムやデバイスを有していてもよい。また、少なくとも一方のガラス板11,12の表面に防曇、撥水、遮熱、低反射等の機能を有する膜を配置してもよい。
【0053】
上述した接着層131,132及び機能層135は、適宜組み合わせることができる。
【0054】
<2.マスク層>
次に、マスク層110について説明する。図1及び図2に例示されるように、本実施形態では、マスク層110は、合わせガラス10の車内側の内面(内側ガラス板12の内面)130に積層され、合わせガラス10の周縁部に沿って形成されている。具体的には、図1に示すように、このマスク層110は、合わせガラス10の周縁部に沿う周縁領域111と、合わせガラス10の上辺部から下方に矩形状に突出した突出領域112とに分けることができる。周縁領域111は、ウインドシールドの周縁部からの光の入射を遮蔽する。また、機能層135が、ガラス板11,12よりも小さい場合には、その周縁部分を周縁領域111によって隠すことができる。一方、突出領域112は、車内に配置される撮影装置2を車外から見えないようにする。
【0055】
但し、撮影装置2の撮影範囲をマスク層110が遮蔽してしまうと、撮影装置2によって車外前方の状況を撮影することができなくなってしまう。そのため、本実施形態では、マスク層110の突出領域112に、撮影装置2が車外の状況を撮影可能なように、当該撮影装置2に対応する位置に矩形状の撮影窓113が設けられている。
【0056】
マスク層110は、上記のように、内側ガラス板12の内面に積層する以外に、例えば、外側ガラス板11の内面、内側ガラス板12の外面に積層することもできる。また、外側ガラス板11の内面と内側ガラス板12の内面の2箇所に積層することもできる。
【0057】
次に、マスク層110の材料について説明する。このマスク層110の材料は、車外からの視野を遮蔽可能であれば、実施の形態に応じて適宜選択されても良く、例えば、黒色、茶色、灰色、濃紺等の濃色のセラミックを用いてもよい。
【0058】
マスク層110の材料に黒色のセラミックが選択された場合、例えば、内側ガラス板12の内面130上の周縁部にスクリーン印刷等で黒色のセラミックを積層し、内側ガラス板12と共に積層したセラミックを加熱する。これによって、内側ガラス板12の周縁部にマスク層110を形成することができる。また、黒色のセラミックを印刷する際に、黒色のセラミックを部分的に印刷しない領域を設ける。これによって、撮影窓113を形成することができる。なお、マスク層110に利用するセラミックは、種々の材料を利用することができる。例えば、以下の表1に示す組成のセラミックをマスク層110に利用することができる。
【0059】
【表1】
*1,主成分:酸化銅、酸化クロム、酸化鉄及び酸化マンガン
*2,主成分:ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛
【0060】
<3.車載システム>
次に、図4を参照しつつ、撮影装置2及び画像処理装置3を備える車載システム5について説明する。図4は、車載システム5の構成を例示する。図4に示すように、本実施形態に係る車載システム5は、上記撮影装置2と、当該撮影装置2に接続される画像処理装置3と、を備えている。
【0061】
画像処理装置3は、撮影装置2により取得された撮影画像を処理する装置である。この画像処理装置3は、例えば、ハードウェア構成として、バスで接続される、記憶部31、制御部32、入出力部33等の一般的なハードウェアを有している。ただし、画像処理装置3のハードウェア構成はこのような例に限定されなくてよく、画像処理装置3の具体的なハードウェア構成に関して、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の追加、省略及び追加が可能である。
【0062】
記憶部31は、制御部32で実行される処理で利用される各種データ及びプログラムを記憶する(不図示)。記憶部31は、例えば、ハードディスクによって実現されてもよいし、USBメモリ等の記録媒体により実現されてもよい。また、記憶部31が格納する当該各種データ及びプログラムは、CD(Compact Disc)又はDVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体から取得されてもよい。更に、記憶部31は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。
【0063】
上記のとおり、合わせガラス10は、垂直方向に対して傾斜姿勢で配置され、かつ、湾曲している。そして、撮影装置2は、そのような合わせガラス10を介して車外の状況を撮影する。そのため、撮影装置2により取得される撮影画像は、合わせガラス10の姿勢、形状、屈折率、光学的欠陥等に応じて、変形している。また、撮影装置2のカメラレンズに固有の収差も加わる。そこで、記憶部31には、このような合わせガラス10およびカメラレンズの収差によって変形した画像を補正するための補正データが記憶されていてもよい。
【0064】
制御部32は、マイクロプロセッサ又はCPU(Central Processing Unit)等の1又は複数のプロセッサと、このプロセッサの処理に利用される周辺回路(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、インタフェース回路等)と、を有する。ROM、RAM等は、制御部32内のプロセッサが取り扱うアドレス空間に配置されているという意味で主記憶装置と呼ばれてもよい。制御部32は、記憶部31に格納されている各種データ及びプログラムを実行することにより、画像処理部321として機能する。
【0065】
画像処理部321は、撮影装置2により取得される撮影画像を処理する。撮影画像の処理は、実施の形態に応じて適宜選択可能である。例えば、画像処理部321は、パターンマッチング等によって当該撮影画像を解析することで、撮影画像に写る被写体の認識を行ってもよい。本実施形態では、撮影装置2は車両前方の状況を撮影するため、画像処理部321は、更に、当該被写体認識に基づいて、車両前方に人間等の生物が写っていないかどうかを判定してもよい。そして、車両前方に人物が写っている場合には、画像処理部321は、所定の方法で警告メッセージを出力してもよい。また、例えば、画像処理部321は、所定の加工処理を撮影画像に施してもよい。そして、画像処理部321は、画像処理装置3に接続されるディスプレイ等の表示装置(不図示)に当該加工した撮影画像を出力してもよい。
【0066】
入出力部33は、画像処理装置3の外部に存在する装置とデータの送受信を行うための1又は複数のインタフェースである。入出力部33は、例えば、ユーザインタフェースと接続するためのインタフェース、又はUSB(Universal Serial Bus)等のインタフェースである。なお、本実施形態では、画像処理装置3は、当該入出力部33を介して、撮影装置2と接続し、当該撮影装置2により撮影された撮影画像を取得する。
【0067】
このような画像処理装置3は、提供されるサービス専用に設計された装置の他、PC(Personal Computer)、タブレット端末等の汎用の装置が用いられてもよい。
【0068】
また、上記情報取得装置は、図示を省略するブラケットに取り付けられ、このブラケットが、マスク層110に取り付けられる。したがって、この状態で、情報取得装置のカメラの光軸が撮影窓113を通過するように、情報取得装置のブラケットへの取付、及びブラケットのマスク層への取付を調整する。また、ブラケットには撮影装置2を覆うように、図示を省略するカバーが取り付けられる。したがって、撮影装置2は、合わせガラス10、ブラケット、及びカバーで囲まれた空間内に配置され、車内側から見えないようなるとともに、車外側からも撮影窓113を通して撮影装置2の一部しか見えないようになっている。そして、撮影装置2と上述した入出力部33とは、図示を省略するケーブルで接続され、このケーブルはカバーから引き出され、車内の所定の位置に配置された画像処理装置3に接続されている。
【0069】
<4.ウインドシールドの製造方法>
次に、上記のように構成されたウインドシールドの製造方法の一例について説明する。まず、合わせガラス10の製造方法について説明する。
【0070】
まず、平板状の外側ガラス板11及び内側ガラス板12の少なくとも一方、上述したマスク層110を積層する。次に、これらのガラス板11,12が湾曲するように成形する。成形の方法は、特には限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、平板状のガラス板が加熱炉を通過した後、上型と下型によってプレスすることで、湾曲した形状に成形することができる。あるいは、平板状の外側ガラス板と内側ガラス板とを重ね、枠型の成形型上に配置し、加熱炉を通過させる。これにより、両ガラス板が軟化し、自重によって湾曲した形状に成形される。
【0071】
こうして、外側ガラス板11及び内側ガラス板12が湾曲状に成形されると、これに続いて、上述した中間膜13を外側ガラス板11及び内側ガラス板12の間に挟み、これをゴムバッグに入れ、減圧吸引しながら約70~110℃で予備接着する。予備接着の方法は、これ以外でも可能である。例えば、中間膜13を外側ガラス板11及び内側ガラス板12の間に挟み、オーブンにより45~65℃で加熱する。続いて、この合わせガラスを0.45~0.55MPaでロールにより押圧する。次に、この合わせガラスを、再度オーブンにより80~105℃で加熱した後、0.45~0.55MPaでロールにより再度押圧する。こうして、予備接着が完了する。
【0072】
次に、本接着を行う。予備接着がなされた合わせガラスを、オートクレーブにより、例えば、8~15気圧で、100~150℃によって、本接着を行う。具体的には、例えば、14気圧で145℃の条件で本接着を行うことができる。こうして、本実施形態に係る合わせガラス10が製造される。
【0073】
<5.特徴>
以上説明したウインドシールドによれば、耐衝撃性を向上することができる。すなわち、外部から衝撃を受けたとき、内側ガラス板12が中間膜から剥離した社内に散乱するのを抑制することができる。
【0074】
<6.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0075】
<6-1>
マスク層110の形状は、一例であり、構成は特には限定されず、設けられる機器などによって適宜形状を変更することができる。
【0076】
<6-2>
上記実施形態では、マスク層110に撮影窓113を形成し、撮影装置2を配置しているが、このような撮影窓113や撮影装置2が設けられていなくてもよい。
【実施例0077】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例には限定されない。
【0078】
以下では、実施例1~17に係るウインドシールドを作製した。具体的には、以下の表2に示すとおりである。
【0079】
表2に示すように、実施例1、7~17では、第1接着層(車外側接着層)として、上述した遮音フィルムを用いた。すなわち、ヤング率が低いコア層と、ヤング率が高い一対のスキン層を有する遮音フィルムを用いている。実施例2~6では、第1接着層は、単層のフィルムで構成した。また、実施例1~16では、機能層として、赤外線反射フィルムを用い、実施例17では、エレクトロクロミックシートを用いた。
【0080】
なお、コア層はエチレンビニルアセテート樹脂(EVA)で形成し、スキン層はポリビニルブチラール樹脂(PVB)で形成した。また、第2接着層(車内側の接着層)はポリビニルブチラール樹脂(PVB)で形成した。
【0081】
実施例2では、車外側のガラス板を厚くすることによって機能フィルムの剥離を防止している。同様に、実施例7,8では、車内側のガラス板を薄くすることによって軽量化しつつ、車外側のガラス板を厚くすることによってことによって中間膜からの内側ガラス板の剥離を抑制している。
【0082】
実施例3~6では、第1接着層の厚みを0.9mm以上とすることで、中間膜からの内側ガラス板の剥離を抑制している。
【0083】
実施例9~11では、第1接着層として、コア層を厚くした遮音フィルムを用いることによって中間膜からの内側ガラス板の剥離を抑制している。
【0084】
実施例12~15では、第1接着層として、コア層のヤング率を低くし、スキン層のヤング率を高めた遮音フィルムを用いている。このようにコア層とスキン層のヤング率の差を大きくすることにより、車外からの衝撃によるショックを吸収し、耐衝撃性を高めることで、中間膜からの内側ガラス板の剥離を抑制している。
【0085】
実施例16では、第1接着層として、コア層を厚くした遮音フィルムを用いている。このような遮音効果の高い中間膜を用いることによって、中間膜からの内側ガラス板の剥離を抑制している。
【0086】
実施例17では、機能層としてエレクトロクロミックフィルムを用いた。このようなフィルムを用いた場合も同様の効果が認められる。
【0087】
以上の実施例1~17に対し、JIS 3212(2021)5.4項に定める耐衝撃性試験を行ったところ、実施例1~17は、すべてこの試験における基準すなわち、JIS3211(2021)5.3項に規定する基準を満たした。したがって、実施例1~17に係るウインドシールドは、車外側からの衝撃に対する耐衝撃性を有するといえる。
【表2】
【符号の説明】
【0088】
1 ウインドシールド
11 外側ガラス板
12 内側ガラス板
13 中間膜
131 第1接着層
132 第2接着層
135 機能層
図1
図2
図3
図4