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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128901
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】デスロラタジン固形製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4545 20060101AFI20240913BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20240913BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240913BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240913BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240913BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240913BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61K9/50
A61P37/08
A61P43/00 113
A61K47/32
A61K47/38
A61K9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023054332
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000169880
【氏名又は名称】高田製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 美幸
(72)【発明者】
【氏名】高木 佑理子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 馨
(72)【発明者】
【氏名】望月 萌
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA61
4C076AA64
4C076BB01
4C076CC07
4C076CC29
4C076DD38
4C076DD38A
4C076DD41
4C076DD41C
4C076DD47L
4C076DD67
4C076DD67T
4C076DD69
4C076DD69T
4C076EE12
4C076EE12H
4C076EE13
4C076EE13H
4C076EE16
4C076EE16B
4C076EE31
4C076EE31A
4C076EE32
4C076EE32B
4C076EE45
4C076EE45B
4C076EE48
4C076EE48H
4C076EE48T
4C076FF01
4C076FF52
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC27
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA38
4C086MA52
4C086NA09
4C086ZB13
4C086ZC45
(57)【要約】
【課題】コーティング層を設けた場合でも、溶出挙動が良好なデスロラタジン固形製剤を提供することを課題とする。
【解決手段】デスロラタジンを含有する核粒子に、アミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーの少なくとも一方を含有するコーティング層が設けられた顆粒を含有するデスロラタジン固形製剤により解決される。デスロラタジン固形製剤として、錠剤、特に口腔内崩壊錠であることが好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デスロラタジンを含有する核粒子に、アミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーの少なくとも一方を含有するコーティング層が設けられた顆粒を含有することを特徴とするデスロラタジン固形製剤。
【請求項2】
ヒプロメロースを前記核粒子に含有する、請求項1に記載のデスロラタジン固形製剤。
【請求項3】
錠剤である、請求項1に記載のデスロラタジン固形製剤。
【請求項4】
口腔内崩壊錠である、請求項3に記載のデスロラタジン固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デスロラタジン固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
デスロラタジン、すなわち、8-Chloro-11-(piperidin-4-ylidene)-6,11-dihydro-5H-benzo[5,6]cyclohepta[1,2-b]pyridineは抗ヒスタミン薬であり、これを含む錠剤が「デザレックス(登録商標)錠」という名称で販売されている。
【0003】
デスロラタジンは苦味を有することが知られている。苦味を有する有効成分を製剤化する場合には、患者の服薬アドヒアランスの観点から、苦味をマスキングすることが求められる。有効成分の不快な味をマスキングする方法としては、有効成分を含む顆粒や錠剤を水不溶性高分子でコーティングする方法があり、例えば特許文献1には、有効成分を含むコア粒子の表面に、水不溶性高分子であるエチルセルロースをコーティングする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021―138775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エチルセルロースでコーティングを行うと、不快な味をマスキングできたとしても、医薬品に要求される他の特性に影響が生じる傾向があり、特にデスロラタジンの場合には、溶出挙動に課題が生じることを本発明者らは見出した。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、コーティング層を設けた場合でも、溶出挙動が良好なデスロラタジン固形製剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、エチルセルロースに代えて、アミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーの少なくとも一方を使用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
〔1〕デスロラタジンを含有する核粒子に、アミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーの少なくとも一方を含有するコーティング層が設けられた顆粒を含有することを特徴とするデスロラタジン固形製剤。
〔2〕ヒプロメロースを前記核粒子に含有する、〔1〕に記載のデスロラタジン固形製剤。
〔3〕錠剤である、〔1〕に記載のデスロラタジン固形製剤。
〔4〕口腔内崩壊錠である、〔3〕に記載のデスロラタジン固形製剤
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コーティング層を設けた場合でも、溶出挙動が良好なデスロラタジン固形製剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のデスロラタジン固形製剤(以下、単に固形製剤という場合もある。)は、デスロラタジンを含有する核粒子に、アミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーの少なくとも一方を含有するコーティング層が設けられた顆粒を含有する。このようなコーティング層であれば、固形製剤の溶出挙動を良好とすることができる。また、固形製剤の崩壊性も優れる。
【0010】
デスロラタジンとしては、特に制限はなく、市場より入手可能なものを使用でき、結晶形態でも、アモルファス形態でもよい。
アミノアルキルメタクリレートコポリマーとしては、市場より医薬品用途として入手可能なアミノアルキルメタクリレートコポリマーEタイプを使用できる。アミノアルキルメタクリレートコポリマーEタイプとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体である、市販のオイドラギット(登録商標)E100、オイドラギット(登録商標)EPO、コリコート(登録商標)スマートシール30D、コリコート(登録商標)スマートシール100P等を使用できる。
アンモニオアルキルメタクリレートコポリマーとしても、市場より医薬品用途として入手可能なものを使用でき、市販のオイドラギット(登録商標)RL-30D等を使用できる。オイドラギット(登録商標)RL-30Dは分散液として流通しており、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマーを30質量%含有する。
コーティング層は、アミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーの少なくとも一方を含んで形成されていればよく、いずれか一方を含んでも両方を含んでもよいが、アミノアルキルメタクリレートコポリマーを含むことが固形製剤の崩壊性の点で特に好ましい。
【0011】
デスロラタジンを含有する核粒子の形態としては、デスロラタジンと添加剤を含む造粒物、添加剤粒子の表面にデスロラタジンを含む原薬層が形成されたレイヤリング粒子等が挙げられ、デスロラタジンを含有する粒子状物であればその具体的な態様に制限はないが、デスロラタジンと添加剤を含む造粒物であることが好ましい。
コーティング層は、必要に応じてアミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー以外のコーティング基剤や可塑剤、崩壊剤等の添加剤を含むことができる。コーティング層の外側には、目的に応じたオーバーコート層を設けてもよい。オーバーコート層を設けることにより、例えば顆粒同士の固着を防止する等、特定の機能を付与することができる。
【0012】
固形製剤の形態としては、核粒子の表面にアミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーの少なくとも一方を含有するコーティング層が設けられた顆粒を含有するものであれば、その具体的な態様に制限はなく、顆粒に必要に応じて添加剤を添加した顆粒状製剤(顆粒剤、ドライシロップ剤、細粒剤等)、顆粒に必要に応じて添加剤を混合し、得られた打錠用組成物を打錠した錠剤(即放性錠剤、口腔内崩壊錠等)等が挙げられる。錠剤の場合、その表面にも任意の材料を用いたコーティングを行って最外コーティング層を設けてもよい。
【0013】
添加剤としては、医薬品分野で使用可能な賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、着色剤、甘味剤、香料等の添加剤をいずれも必要に応じて含有することができる。
【0014】
賦形剤としては、例えば、D-マンニトール、結晶セルロース、乳糖水和物、無水乳糖、精製白糖、バレイショデンプン、アルファー化デンプン等が挙げられ、これらのうちの1種以上を必要に応じて使用できるが、味や造粒等のしやすさの点でD-マンニトールを使用することが好ましく、また、他の成分との反応性が低い点、成形性に優れる点、崩壊性に優れた固形製剤が得られやすい点等で結晶セルロースを使用することも好ましい。より好ましくはこれらを併用する。
【0015】
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ステアリルアルコール、アンモニオメタクリレート・コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、デキストリン、水アメ等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できるが、ヒプロメロースを使用すると、デスロラタジン固形製剤の安定性が優れ、類縁物質の生成を抑制できる点で好ましい。
【0016】
崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できるが、崩壊性がより優れる点で少なくとも低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを使用することが好ましく、さらにトウモロコシデンプンおよびクロスポビドンの少なくとも一方を併用することが好ましい。
【0017】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
着色剤としては、例えば黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
【0018】
甘味剤としては、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロース、ソーマチン、スクロース、サッカリン又はその塩、グリチルリチン酸又はその塩、ステビア又はその塩等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できるが、デスロラタジン固形製剤においては、スクラロースとステビアを併用することが味の点で好ましい。
香料としては、オレンジエッセンス、オレンジ油、カラメル、カンフル、ケイヒ油、スペアミント油、ストロベリーエッセンス、チョコレートエッセンス、チェリーフレーバー、トウヒ油、パインオイル、ハッカ油、バニラフレーバー、ビターエッセンス、フルーツフレーバー、ペパーミントエッセンス、ミックスフレーバー、ミントフレーバー、l-メントール、レモンパウダー、レモン油、ローズ油等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
【0019】
その他の添加剤としては、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、フマル酸ステアリルナトリウム,タルク等)、コーティング層または最外コーティング層に用いる任意のコーティング基剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)や可塑剤(クエン酸トリエチル等)、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、カルナウバロウ等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
【0020】
本発明の固形製剤中のデスロラタジンの含有量は適宜設定できるが、固形製剤を100質量%とした場合、固形製剤中のデスロラタジンの含有量は例えば0.5~10質量%とすることができ、好ましくは1~8質量%、より好ましくは1~5質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中のデスロラタジンの含有量は例えば1~13質量%とすることができ、好ましくは4~10質量%、より好ましくは5~9質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中のデスロラタジンの含有量は例えば3~13質量%とすることができ、好ましくは5~11質量%、より好ましくは7~9質量%である。
【0021】
核粒子に設けるコーティング層中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は適宜設定できるが、固形製剤を100質量%とした場合、固形製剤中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は例えば1~12質量%とすることができ、好ましくは1~10質量%、より好ましくは2~8質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、コーティング層中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は例えば6~20質量%とすることができ、好ましくは8~18質量%、より好ましくは10~16質量%である。
コーティング層を100質量%とした場合、コーティング層中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は80質量%以上が好ましく、アミノアルキルメタクリレートコポリマーの場合は、溶出挙動に加え崩壊性も優れる点で、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。
【0022】
顆粒における核粒子とコーティング層の質量比率は、核粒子を100質量部とした場合、コーティング層は5~25質量部とすることができ、10~20質量部が好ましく、12~18質量部がより好ましい。
【0023】
固形製剤は、先に例示したような添加剤を必要に応じて含むことができ、賦形剤と、結合剤と、崩壊剤を少なくとも含むことが好ましい。また、必要に応じて、賦形剤と、結合剤と、崩壊剤とがあらかじめ造粒された添加剤を使用してもよい。
【0024】
固形製剤を100質量%とした場合、固形製剤中の賦形剤の含有量は例えば40~95質量%とすることができ、好ましくは45~90質量%、より好ましくは50~85質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中の賦形剤の含有量は例えば40~80質量%とすることができ、好ましくは45~75質量%、より好ましくは50~70質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中の賦形剤の含有量は例えば45~90質量%とすることができ、好ましくは50~85質量%、より好ましくは55~80質量%である。
【0025】
ここで固形製剤が錠剤であって、該錠剤が顆粒に添加剤を混合して得られた打錠用組成物を打錠した錠剤である場合、賦形剤は、顆粒(好ましくは核粒子)と、顆粒に加えられる添加剤との両方に含まれることが好ましく、両方にD-マンニトールが含まれることが固形製剤の味、安定性の点で好ましい。また、顆粒に加えられる添加剤には結晶セルロースが含まれることが固形製剤の崩壊性や成形性の点で好ましい。
【0026】
固形製剤を100質量%とした場合、固形製剤中の結合剤の含有量は例えば0.5~10質量%とすることができ、好ましくは1~8質量%、より好ましくは1~5質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中の結合剤の含有量は例えば1~13質量%とすることができ、好ましくは4~10質量%、より好ましくは5~8質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中の結合剤の含有量は例えば3~13質量%とすることができ、好ましくは5~11質量%、より好ましくは7~9質量%である。
ここで結合剤としては、上述のとおり固形製剤の安定性の点でヒプロメロースが好ましく、結合剤は少なくとも核粒子に含まれることが安定性に加えて成形面でも好ましい。
【0027】
固形製剤を100質量%とした場合、固形製剤中の崩壊剤の含有量は例えば5~40質量%とすることができ、好ましくは5~35質量%、より好ましくは5~30質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、崩壊剤の含有量は例えば1~13質量%とすることができ、好ましくは4~10質量%、より好ましくは5~9質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中の崩壊剤の含有量は例えば3~13質量%とすることができ、好ましくは5~11質量%、より好ましくは7~9質量%である。
【0028】
ここで固形製剤が錠剤であって、該錠剤が顆粒に添加剤を混合して得られた打錠用組成物を打錠した錠剤である場合、崩壊剤は、顆粒と、顆粒に加えられる添加剤との両方に含まれることが好ましく、顆粒を構成する核粒子には低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが含まれ、顆粒に加えられる添加剤にはクロスポビドンおよびトウモロコシデンプンの少なくとも一方が含まれることが好ましい。これにより固形製剤の崩壊性をより高めることができる。
【0029】
甘味剤は、固形製剤を100質量%とした場合、0.1~1質量%の範囲で含まれることが好ましく、滑沢剤は、固形製剤を100質量%とした場合、0.1~3質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0030】
顆粒は、次のような方法で製造できる。
まず、デスロラタジンと賦形剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤とを混合して造粒用組成物とし、精製水等の溶媒を造粒用組成物に加え、流動層造粒、転動流動層造粒、攪拌造粒等の公知方法で造粒する。この際、結合剤は溶媒に溶解してもよい。ついで、得られた造粒物(核粒子)に対して、アミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーの少なくとも一方と必要に応じて使用される添加剤とをエタノール等の溶媒に溶解した液を噴霧、乾燥し、造粒物の外側にコーティング層を形成する。このようにして顆粒を製造できる。
あるいは、D-マンニトール、乳糖水和物等の賦形剤からなる粒子を用意し、その表面にデスロラタジンを含む液を噴霧して原薬層を形成してレイヤリング粒子とし、これを核粒子としてその表面にコーティング層を形成してもよい。
【0031】
このようにして得られた顆粒に、必要に応じて添加剤を配合して顆粒状製剤(顆粒剤、ドライシロップ剤、細粒剤等)としてもよいし、得られた顆粒に対して必要に応じて添加剤を加え打錠することにより、錠剤(即放性錠剤、口腔内崩壊錠等)としてもよい。なお、得られた錠剤には、最外コーティング層を必要に応じて形成してもよい。
【0032】
以上説明したように、本発明の固形製剤は、デスロラタジンを含有する核粒子に、アミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーの少なくとも一方を含有するコーティング層が設けられた顆粒を含有するため、苦味を抑制するコーティング層を設けた場合でも、溶出挙動が良好なデスロラタジン固形製剤とすることができる。
【実施例0033】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[試験例]
デスロラタジンを含む固形製剤の処方を検討するにあたり、デスロラタジンと各種結合剤を混合して下記の方法にて純度試験を行った。具体的には、デスロラタジンと表1に示す結合剤とを質量比1:2で混合し、下記の条件1~4で保存した際の総類縁物質量を測定した。結果を表1に示す。
条件1:40℃、75%RHにおいて4週間保存
条件2:25℃、85%RHにおいて4週間保存
条件3:60℃開放系にて4週間保存
条件4:光苛酷条件で保存(積算照度120万lx・h)
【0034】
<純度試験(総類縁物質量)>
アセトニトリルと緩衝液(ラウリル硫酸ナトリウム0.865gに0.5mLのトリフルオロ酢酸と水とを加えて1000mLとした液)との43:57混液に、デスロラタジンと表1に記載の結合剤との混合物24mgを加えて100mLとし溶解液を得た。これを遠心して上澄み液を採取して試料溶液とし、高速液体クロマトグラフィーを用いた自動分析法で試料溶液を分析した。
表1に記載の総類縁物質量の数値は、デスロラタジン由来のピーク面積に対する、観測された類縁物質によるピーク面積の総和の割合を百分率で示したものである。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示すように、デスロラタジンとヒプロメロースの混合物は、いずれの条件においても、固化が生じず、かつ、総類縁物質量が少なく、安定性に優れていた。
【0037】
[例1~例4]
上記試験例の結果に基づき、結合剤としてヒプロメロースを用い、下記の表2の処方の口腔内崩壊錠を製造した。
具体的には、まず、表2の造粒物の欄に記載の各成分のうち、ヒプロメロース以外の成分を混合して造粒用組成物とし、ヒプロメロースを水に溶解させた液を造粒用組成物に噴霧して転動流動層にて造粒し、造粒物(核粒子)を得た。ついで、得られた造粒物に対して、表2のコーティング層の欄に記載の成分を溶媒に溶解させた液を噴霧、乾燥してコーティング層を形成し、顆粒を得た。ここで溶媒として、例1ではエタノールを、例2では精製水を、例3および4ではエタノールと水の混合物(質量比がエタノール:水=約5:1)を用いた。
その後、スクリーンを通過させて整粒した顆粒に表2の後添加物の欄に記載の成分を加えて打錠用組成物とし、これを打錠して例1~4の口腔内崩壊錠(例1~例3は質量180mg、直径8mm、例4は質量100mg、直径6mm)を得た。
なお、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEとしては、オイドラギット(登録商標)E100を用い、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマーとしては、オイドラギット(登録商標)RL-30Dを用いた。オイドラギット(登録商標)RL-30Dは分散液であるが、表2に記載の質量%はアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーの正味量である。
得られた各口腔内崩壊錠について、以下の方法により、溶出試験と崩壊性の評価を行った。
結果を表3に示す。
【0038】
<溶出試験>
各例で得られた口腔内崩壊錠と試験液(pH6.8)を用い、パドル法により毎分75回転で溶出試験を行った。試験開始から5、10、15分後に、溶出液10mL以上を採取し、孔径0.45μm以下のメンブランフィルターでろ過した。初めに採取されたろ液5mLを除き、次のろ液1mLを正確に量り、溶出試験第1液1mLを正確に加え、試料溶液とした。
別に定量用デスロラタジン約28mgを精密に量り、溶出試験第1液に溶かして正確に50mLとした。この液5mLを正確に量り、溶出試験第1液を加えて正確に50mLとした。さらに、この液5mLを正確に量り、溶出試験第1液を加えて正確に50mLとした。この液1mLを正確に量り、試験液1mLを正確に加え、標準溶液とした。
試料溶液及び標準溶液について、HPLC法により試験を行い、波長258nmにおける紫外吸収を測定しクロマトグラムを得た。各試料溶液の溶出試験開始後5、10、15分における溶出率(%)を標準溶液のピーク面積を基準として求めた。
以上の試験を各例の口腔内崩壊錠について2回(n=2)行い、平均(平均溶出率)を算出し、表3に記載した。
なお、上記の移動相は、リン酸二水素カリウム6.8gを水に溶かして1000mLとした液600mLに、液体クロマトグラフィー用アセトニトリル:メタノール=4:1の混液400mLを加えて調製した。
【0039】
<崩壊性(崩壊時間)の評価>
崩壊試験器(NT-400、富山産業社製)を用い第十八改正日本薬局方の崩壊試験法に則して、各例について崩壊時間を6回(n=6)測定し、その平均値を崩壊時間として表3に記載した。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
表3に示すように、コーティング層にアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(例1)、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(例2)を用いた口腔内崩壊錠は、試験開始後10分で十分な平均溶出率に達し、溶出挙動に優れ、崩壊性も良好であった。特にアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(例1)を用いた場合、崩壊性がより優れていた。