(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128902
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】デスロラタジン固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4545 20060101AFI20240913BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240913BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240913BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240913BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240913BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61P43/00 113
A61P37/08
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023054333
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000169880
【氏名又は名称】高田製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 美幸
(72)【発明者】
【氏名】高木 佑理子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 馨
(72)【発明者】
【氏名】望月 萌
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC07
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4C076DD29Q
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4C076FF01
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4C086AA01
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4C086BC27
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4C086MA03
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4C086MA35
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZB13
4C086ZC45
(57)【要約】
【課題】経時的な類縁物質の増加が抑制され、安定性に優れるデスロラタジン固形製剤の提供を課題とする。
【解決手段】デスロラタジンと、酸化マグネシウムとを含有することを特徴とするデスロラタジン固形製剤により解決される。デスロラタジン固形製剤として、口腔内崩壊錠であることが好適である。酸化マグネシウムの含有量は、好ましくはデスロラタジン固形製剤100質量%中、3~20質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デスロラタジンと、酸化マグネシウムとを含有することを特徴とするデスロラタジン固形製剤。
【請求項2】
前記酸化マグネシウムが、第十八改正日本薬局方粒度測定法第2法ふるい分け法(機械的振とう法)記載の方法において、日本薬局方によるふるい番号30の篩を通過し、日本薬局方によるふるい番号83の篩を通過しない粉末を70%以上含む、請求項1に記載のデスロラタジン固形製剤。
【請求項3】
前記酸化マグネシウムの含有量が、デスロラタジン固形製剤100質量%中、3~20質量%である、請求項1に記載のデスロラタジン固形製剤。
【請求項4】
さらにヒプロメロースを含有する、請求項1に記載のデスロラタジン固形製剤。
【請求項5】
口腔内崩壊錠である、請求項1に記載のデスロラタジン固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デスロラタジン固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
デスロラタジン、すなわち、8-クロロ-6,11-ジヒドロ-11-(4-ピペリジリデン)-5H-ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2-b]ピリジンは抗ヒスタミン薬であり、これを含む錠剤が「デザレックス(登録商標)錠」という名称で販売されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】デザレックス(登録商標)錠5mg添付文書(2023年1月改訂(第3版)、2021年6月改訂(第2版))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者がデスロラタジンを含有する製剤について検討を進めていくなかで、当該製剤は経時的に類縁物質が増加しやすく、安定性に関する課題を有していることが判明した。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、経時的な類縁物質の増加が抑制され、安定性に優れるデスロラタジン固形製剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、酸化マグネシウムを配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
〔1〕デスロラタジンと、酸化マグネシウムとを含有することを特徴とするデスロラタジン固形製剤。
〔2〕前記酸化マグネシウムが、日本薬局方粒度測定法第2法ふるい分け法(機械的振とう法)記載の方法において、第十八改正日本薬局方によるふるい番号30の篩を通過し、日本薬局方によるふるい番号83の篩を通過しない粉末を70%以上含む、〔1〕に記載のデスロラタジン固形製剤。
〔3〕前記酸化マグネシウムの含有量が、デスロラタジン固形製剤100質量%中、3~20質量%である、〔1〕に記載のデスロラタジン固形製剤。
〔4〕さらにヒプロメロースを含有する、〔1〕に記載のデスロラタジン固形製剤。
〔5〕口腔内崩壊錠である、〔1〕に記載のデスロラタジン固形製剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、経時的な類縁物質の増加が抑制され、安定性に優れるデスロラタジン固形製剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のデスロラタジン固形製剤(以下、単に固形製剤という場合もある。)は、デスロラタジンと、酸化マグネシウムとを含有する。酸化マグネシウムを配合することにより、経時的な総類縁物質の増加が抑制され、安定性に優れる固形製剤とすることができる。すなわち、本発明においては、酸化マグネシウムを製剤の安定化剤として添加する。
【0009】
デスロラタジンとしては、特に制限はなく、市場より入手可能なものを使用でき、結晶形態でも、アモルファス形態でもよい。
【0010】
酸化マグネシウムとしては、市場より医薬品用途として入手可能なもの(例えば銘柄が「重質」、「細粒状」等の酸化マグネシウム)を制限なく使用できるが、第十八改正日本薬局方粒度測定法第2法ふるい分け法(機械的振とう法)記載の方法において、日本薬局方によるふるい番号30の篩を通過し、日本薬局方によるふるい番号83の篩を通過しない粉末を酸化マグネシウム100質量%中、70質量%以上含むものが好ましく、さらには70~80質量%含むものが好ましい。ここで上記ふるい番号30の篩は目開き寸法が500μmであり、上記ふるい番号83の篩は目開き寸法が180μmである。
また、酸化マグネシウムとしては、5gの容積が5~20mLのものが好ましく、より好ましくは6.5~19.0mLのものが好ましく、さらには6.5mLのものが好ましい。
酸化マグネシウムを配合することにより、固形製剤の経時的な総類縁物質の増加を抑制できるが、特に上記のような粉末を用いることにより、経時的な総類縁物質の増加がより一層抑制され、安定性がさらに改善されるとともに、溶出挙動も良好なデスロラタジン固形製剤とすることができる。市販の酸化マグネシウムとしては、「細粒状」との銘柄で協和化学工業株式会社より販売されている日本薬局方酸化マグネシウムが上記条件に適合し好適に使用できる。
【0011】
本発明の固形製剤は、デスロラタジンおよび酸化マグネシウム以外に、医薬品分野で使用可能な賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、着色剤、甘味剤、香料等の添加剤をいずれも必要に応じて含有することができる。
【0012】
賦形剤としては、例えば、D-マンニトール、結晶セルロース、乳糖水和物、無水乳糖、精製白糖、バレイショデンプン、アルファー化デンプン等が挙げられ、これらのうちの1種以上を必要に応じて使用できるが、味や造粒等のしやすさの点でD-マンニトールを使用することが好ましい。また、他の成分との反応性が低い点、成形性に優れる点、崩壊性に優れた固形製剤が得られやすい点等で結晶セルロースを使用することも好ましい。より好ましくはこれらを併用する。
【0013】
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ステアリルアルコール、アンモニオメタクリレート・コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、デキストリン、水アメ等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できるが、ヒプロメロースを使用すると、デスロラタジン固形製剤の安定性がより優れ、類縁物質の生成をより抑制できる点で好ましい。
【0014】
崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できるが、崩壊性がより優れる点で少なくとも低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを使用することが好ましく、さらにトウモロコシデンプンも併用することが好ましい。
【0015】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
着色剤としては、例えば黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
【0016】
甘味剤としては、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロース、ソーマチン、スクロース、サッカリン又はその塩、グリチルリチン酸又はその塩、ステビア又はその塩等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できるが、デスロラタジン固形製剤においては、スクラロースとステビアを併用することが味の点で好ましい。
香料としては、オレンジエッセンス、オレンジ油、カラメル、カンフル、ケイヒ油、スペアミント油、ストロベリーエッセンス、チョコレートエッセンス、チェリーフレーバー、トウヒ油、パインオイル、ハッカ油、バニラフレーバー、ビターエッセンス、フルーツフレーバー、ペパーミントエッセンス、ミックスフレーバー、ミントフレーバー、l-メントール、レモンパウダー、レモン油、ローズ油等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
【0017】
その他の添加剤としては、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、フマル酸ステアリルナトリウム,タルク等)、コーティング基剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースナトリウム等)、コーティング可塑剤(クエン酸トリエチル等)、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、カルナウバロウ等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
【0018】
なお、添加剤としては、複数種の添加剤があらかじめ造粒された造粒物を使用してもよく、たとえば、D-マンニトール(賦形剤)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(崩壊剤)およびポリビニルアルコール完全けん化物(結合剤)が造粒された市販の造粒物(SmartEx(登録商標)、信越化学工業株式会社製)等を使用してもよい。
SmartEx(登録商標)は、D-マンニトール90.0~95.0質量%、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース5.0~7.0質量%、ポリビニルアルコール完全けん化物0.1~0.3質量%からなる造粒物であり、粒子径が異なる「QD-50」または「QD-100」をいずれも使用できる。
【0019】
本発明の固形製剤は、デスロラタジンおよび酸化マグネシウムを含有する限り、その態様には制限はなく、顆粒状製剤(顆粒剤、ドライシロップ剤、細粒剤等)、錠剤(即放性錠剤、口腔内崩壊錠等)等が挙げられるが、デスロラタジンは苦味を有することから、デスロラタジンを含有する核粒子にコーティング層が設けられた顆粒を含む顆粒状製剤や錠剤が好ましい。
具体的には、顆粒に必要に応じて添加剤を添加した顆粒状製剤や、顆粒に必要に応じて添加剤を混合し、得られた打錠用組成物を打錠した錠剤が好ましい。錠剤の表面には任意の材料を用いたコーティングを行って最外コーティング層を設けることもできる。
【0020】
このように顆粒を含む態様である場合、酸化マグネシウムは核粒子に含まれることが好ましい。
デスロラタジンを含有する核粒子の形態としては、デスロラタジンと酸化マグネシウムと添加剤を含む造粒物、添加剤粒子の表面にデスロラタジンおよび酸化マグネシウムを含む原薬層が形成されたレイヤリング粒子等が挙げられるが、デスロラタジンと酸化マグネシウムと添加剤を含む造粒物であることが好ましい。
【0021】
核粒子に設けられるコーティング層には、公知のコーティング基剤を使用できるが、少なくともアミノアルキルメタクリレートコポリマーを用いることが好ましい。アミノアルキルメタクリレートコポリマーを用いると、デスロラタジンの苦味を効果的に抑制でき、デスロラタジンの安定性、溶出挙動等にも影響を与えにくく好ましい。コーティング層は、必要に応じて他のコーティング基剤やコーティング可塑剤等の添加剤を含むことができる。また、コーティング層の外側には、目的に応じたオーバーコート層を設けてもよい。オーバーコート層を設けることにより、例えば顆粒同士の固着を防止する等、特定の機能を付与することができる。
【0022】
アミノアルキルメタクリレートコポリマーとしては、市場より医薬品用途として入手可能なアミノアルキルメタクリレートコポリマーEタイプを使用できる。アミノアルキルメタクリレートコポリマーEタイプとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体である、市販のオイドラギット(登録商標)E100、オイドラギット(登録商標)EPO、コリコート(登録商標)スマートシール30D、コリコート(登録商標)スマートシール100P等を使用できる。
【0023】
本発明の固形製剤中のデスロラタジンの含有量は適宜設定でき、固形製剤100質量%中、例えば0.5~10質量%とすることができ、好ましくは1~8質量%、より好ましくは1~5質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中のデスロラタジンの含有量は例えば1~13質量%とすることができ、好ましくは4~10質量%、より好ましくは5~9質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中のデスロラタジンの含有量は例えば3~15質量%とすることができ、好ましくは5~11質量%、より好ましくは7~9質量%である。
【0024】
酸化マグネシウムの含有量も適宜設定でき、固形製剤100質量%中、例えば1~20質量%とすることができ、好ましくは3~20質量%、より好ましくは5~15質量%であり、特に5~10質量%が好ましい。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中の酸化マグネシウムの含有量は例えば2~45質量%とすることができ、好ましくは6~45質量%、より好ましくは8~35質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中の酸化マグネシウムの含有量は例えば3~55質量%とすることができ、好ましくは9~55質量%、より好ましく12~40質量%である。
また、酸化マグネシウムのデスロラタジンに対する質量割合は、酸化マグネシウム/デスロラタジンが1~10であることが好ましく、より好ましくは2~5、さらに好ましくは2~3である。
酸化マグネシウムの含有量が上記範囲であると、経時的な類縁物質の増加をより抑制でき、溶出挙動も良好な範囲に維持できる。
【0025】
本発明の固形製剤が、デスロラタジンおよび酸化マグネシウムを含有する核粒子に、アミノアルキルメタクリレートコポリマーを含有するコーティング層が設けられた顆粒を含有するものである場合、核粒子に設けるコーティング層中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は適宜設定できるが、固形製剤を100質量%とした場合、コーティング層中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は例えば1~12質量%とすることができ、好ましくは1~10質量%、より好ましくは2~8質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、コーティング層中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は例えば6~20質量%とすることができ、好ましくは8~18質量%、より好ましくは10~16質量%である。
コーティング層を100質量%とした場合、コーティング層中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0026】
顆粒における核粒子とコーティング層の質量比率は、核粒子を100質量部とした場合、コーティング層は5~25質量部とすることができ、10~20質量部が好ましく、12~18質量部がより好ましい。
【0027】
固形製剤を100質量%とした場合、固形製剤中の賦形剤の含有量は例えば40~85質量%とすることができ、好ましくは45~80質量%、より好ましくは50~75質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中の賦形剤の含有量は例えば30~70質量%とすることができ、好ましくは35~65質量%、より好ましくは40~60質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中の賦形剤の含有量は例えば40~80質量%とすることができ、好ましくは45~75質量%、より好ましくは50~70質量%である。
【0028】
ここで固形製剤が錠剤であって、該錠剤が顆粒に添加剤を混合して得られた打錠用組成物を打錠した錠剤である場合、賦形剤は、顆粒(好ましくは核粒子)と、顆粒に加えられる添加剤との両方に含まれることが好ましく、両方にD-マンニトールが含まれることが固形製剤の味、安定性の点で好ましい。
【0029】
固形製剤を100質量%とした場合、固形製剤中の結合剤の含有量は例えば0.5~10質量%とすることができ、好ましくは1~8質量%、より好ましくは1~5質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中の結合剤の含有量は例えば1~13質量%とすることができ、好ましくは4~10質量%、より好ましくは5~8質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中の結合剤の含有量は例えば3~13質量%とすることができ、好ましくは5~11質量%、より好ましくは7~9質量%である。
ここで結合剤としては、上述のとおり固形製剤の安定性の点でヒプロメロースが好ましく、固形製剤が錠剤であって、該錠剤が顆粒に添加剤を混合して得られた打錠用組成物を打錠した錠剤である場合、結合剤は少なくとも顆粒の核粒子に含まれることが安定性に加えて成形面でも好ましい。
【0030】
固形製剤を100質量%とした場合、固形製剤中の崩壊剤の含有量は例えば5~40質量%とすることができ、好ましくは5~35質量%、より好ましくは5~30質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、崩壊剤の含有量は例えば1~13質量%とすることができ、好ましくは4~10質量%、より好ましくは5~9質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中の崩壊剤の含有量は例えば3~13質量%とすることができ、好ましくは5~11質量%、より好ましくは7~9質量%である。
【0031】
ここで固形製剤が錠剤であって、該錠剤が顆粒に添加剤を混合して得られた打錠用組成物を打錠した錠剤である場合、崩壊剤は、顆粒と、顆粒に加えられる添加剤との両方に含まれることが好ましく、顆粒を構成する核粒子に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが含まれ、顆粒に加えられる添加剤には低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびトウモロコシデンプンの少なくとも一方が含まれること好ましい。これにより固形製剤の崩壊性をより高めることができる。
【0032】
甘味剤は、固形製剤を100質量%とした場合、0.1~1質量%の範囲で含まれることが好ましく、滑沢剤は、固形製剤を100質量%とした場合、0.1~3質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0033】
本発明の固形製剤は、デスロラタジンと酸化マグネシウムを含有する限り、公知の方法で製造できるが、顆粒を含む製剤である場合、まずは次のような方法で顆粒を製造することが好適である。
デスロラタジンおよび酸化マグネシウムと、賦形剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤とを混合して造粒用組成物とし、精製水等の溶媒を造粒用組成物に加え、流動層造粒、転動流動層造粒、攪拌造粒等の公知方法で造粒する。この際、結合剤は溶媒に溶解してもよい。ついで、得られた造粒物(核粒子)に対して、好ましくはアミノアルキルメタクリレートコポリマーと必要に応じて使用される添加剤をエタノール等の溶媒に溶解した液を噴霧、乾燥し、造粒物の外側にコーティング層を形成する。このようにして顆粒を製造できる。
また、D-マンニトール、乳糖水和物等の賦形剤からなる粒子を用意し、その表面にデスロラタジンおよび酸化マグネシウムを含む液を噴霧して原薬層を形成してレイヤリング粒子とし、これを核粒子としてその表面にコーティング層を形成してもよい。
【0034】
このようにして得られた顆粒に、必要に応じて添加剤を配合して顆粒状製剤(顆粒剤、ドライシロップ剤、細粒剤等)としてもよいし、得られた顆粒に対して必要に応じて添加剤を加え打錠することにより、錠剤(即放性錠剤、口腔内崩壊錠等)としてもよい。なお、得られた錠剤には、最外コーティング層を必要に応じて形成してもよい。
【0035】
以上説明したように、本発明の固形製剤は、デスロラタジンと、酸化マグネシウムとを含有するため、経時的な総類縁物質の増加が抑制され、安定性に優れる。また、溶出挙動も良好な範囲に維持できる。
【実施例0036】
[試験例]
デスロラタジンを含む固形製剤の処方を検討するにあたり、デスロラタジンと各種結合剤を混合して下記の方法にて純度試験を行った。具体的には、デスロラタジンと表1に示す結合剤とを質量比1:2で混合し、下記の条件1~4で保存した際の総類縁物質量を測定した。結果を表1に示す。
条件1:40℃、75%RHにおいて4週間保存
条件2:25℃、85%RHにおいて4週間保存
条件3:60℃開放系にて4週間保存
条件4:光苛酷条件で保存(積算照度120万lx・h)
【0037】
<純度試験(総類縁物質量)>
アセトニトリルと緩衝液(ラウリル硫酸ナトリウム0.865gに0.5mLのトリフルオロ酢酸と水とを加えて1000mLとした液)との43:57混液に、デスロラタジンと表1に記載の結合剤との混合物24mgを加えて100mLとし溶解液を得た。これを遠心して上澄み液を採取して試料溶液とし、高速液体クロマトグラフィーを用いた自動分析法で試料溶液を分析した。
表1に記載の総類縁物質量の数値は、デスロラタジン由来のピーク面積に対する、観測された類縁物質によるピーク面積の総和の割合を百分率で示したものである。
【0038】
【0039】
表1に示すように、デスロラタジンとヒプロメロースの混合物は、いずれの条件においても、固化が生じず、かつ、総類縁物質量が少なく、安定性に優れていた。
【0040】
[例1~例4]
上記試験例の結果に基づき、結合剤としてヒプロメロースを用い、下記の表2の処方の口腔内崩壊錠を製造した。
具体的には、まず、表2の造粒物の欄に記載の各成分のうち、ヒプロメロース以外の成分を混合して造粒用組成物とし、ヒプロメロースを水に溶解させた液を造粒用組成物に噴霧して転動流動層にて造粒し、造粒物(核粒子)を得た。ついで、得られた造粒物に対して、表2のコーティング層の欄に記載の成分を溶媒(エタノール)に溶解させた液を噴霧、乾燥してコーティング層を形成し、顆粒を得た。
その後、スクリーンを通過させて整粒した顆粒に表2の後添加物の欄に記載の成分を加えて打錠用組成物とし、これを打錠して例1~4の口腔内崩壊錠(質量180mg、直径8mm)を得た。
得られた各口腔内崩壊錠について、以下の方法により、純度試験と溶出試験を行った。
結果を表3および4に示す。
【0041】
<純度試験(総類縁物質量)>
各例で得られた口腔内崩壊錠(無包装)について、以下の条件5および条件6で保存したときの2週後と1ヶ月後の総類縁物質量を測定することにより、純度試験を実施した。
条件5:25℃、60%RH
条件6:40℃、75%RH
具体的には、緩衝液(リン酸二水素カリウム2.72gに水を加えて2000mLとした液をろ過(セルロースアセテート)し、ろ液1000mLにトリエチルアミン10mLを加え、更にリン酸を加えてpH2.0に調製した液)、アセトニトリルとメタノールとの850:50:100混液に、口腔内崩壊錠2錠を加えて50mLとした溶解液を遠心して上澄み液を採取して試料溶液とし、高速液体クロマトグラフィーを用いた自動分析法で試料溶液を分析した。
表3に記載の総類縁物質量の数値は、デスロラタジン由来のピーク面積に対する、観測された類縁物質によるピーク面積の総和の割合を百分率で示したものである。
【0042】
<溶出試験>
各例で得られた口腔内崩壊錠と試験液(pH6.8)を用い、パドル法により毎分75回転で溶出試験を行った。試験開始から所定時間後に、溶出液10mL以上を採取し、孔径0.45μm以下のメンブランフィルターでろ過した。初めに採取されたろ液5mLを除き、次のろ液1mLを正確に量り、溶出試験第1液1mLを正確に加え、試料溶液とした。
別に定量用デスロラタジン約28mgを精密に量り、溶出試験第1液に溶かして正確に50mLとする。この液5mLを正確に量り、溶出試験第1液を加えて正確に50mLとする。さらに、この液5mLを正確に量り、溶出試験第1液を加えて正確に50mLとする。この液1mLを正確に量り、試験液1mLを正確に加え、標準溶液とした。
試料溶液及び標準溶液について、HPLC法により試験を行い、波長258nmにおける紫外吸収を測定しクロマトグラムを得た。各試料溶液の溶出試験開始後30分における溶出率(%)を標準溶液のピーク面積を基準として求めた。
以上の試験を各例の口腔内崩壊錠1錠について2回(n=2)行い、平均(平均溶出率)を算出し、表4に記載した。
なお、上記の移動相は、リン酸二水素カリウム6.8gを水に溶かして1000mLとした液600mLに、液体クロマトグラフィー用アセトニトリル:メタノール=4:1の混液400mLを加えて調製した。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
表3および4に示すように、酸化マグネシウムを添加することにより、総類縁物質の増加が抑制され、溶出挙動も良好な範囲内とすることができた。