(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128917
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】セル及びそれを含む電気機器
(51)【国際特許分類】
H01M 50/595 20210101AFI20240913BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20240913BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20240913BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240913BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20240913BHJP
H01M 10/04 20060101ALN20240913BHJP
【FI】
H01M50/595
H01M50/586
H01M50/107
H01M50/119
H01M50/534
H01M10/04 W
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023148836
(22)【出願日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】202320457378.9
(32)【優先日】2023-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】單 雪燕
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H011BB03
5H011CC06
5H028AA08
5H028BB03
5H028CC08
5H028CC13
5H028EE06
5H028HH05
5H043AA04
5H043BA11
5H043CA03
5H043GA22
5H043GA27
5H043HA07E
5H043HA28E
5H043JA15E
5H043KA28E
5H043LA02E
(57)【要約】 (修正有)
【課題】セル及びそれを含む電気機器を提供する。
【解決手段】セルは、筐体と、第1電極端子と、電極組立体130と、熱収縮性絶縁フィルム140とを含む。筐体は、端壁と、端壁を囲む側壁とを含む。第1電極端子は、絶縁方式にて端壁を貫通して取り付けられる。電極組立体は、筐体内に封止されて取り付けられ、電極組立体の第1端は第1タブを含み、第1タブは第1電極端子に電気接続される。熱収縮性絶縁フィルムは、第1タブを側壁から絶縁分離するように、電極組立体の第1端に近い周面を少なくとも包む。ここで、熱収縮性絶縁フィルムは閉ループとして接続され、熱収縮性絶縁フィルムの周面上に接合領域が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端壁と、前記端壁を囲む側壁とを含む、筐体と、
絶縁方式にて前記端壁を貫通して取り付けられる、第1電極端子と、
前記筐体内に封止されて取り付けられ、第1端に前記第1電極端子と電気接続される第1タブを含む、電極組立体と、
前記第1タブを前記側壁から絶縁分離するように、少なくとも前記電極組立体の前記第1端に近い周面を包む、熱収縮性絶縁フィルムとを含み、
前記熱収縮性絶縁フィルムは閉ループとして接続され、前記熱収縮性絶縁フィルムの周面上に接合領域が提供される、セル。
【請求項2】
前記接合領域は、熱圧着接続領域及び/又は接着接続領域を含む、請求項1に記載のセル。
【請求項3】
前記接合領域は重なり領域を含み、前記重なり領域の重なり幅は3mm以下であり、前記重なり領域以外の前記熱収縮性絶縁フィルムの厚さは0.03mm~0.06mmである、請求項1に記載のセル。
【請求項4】
前記熱収縮性絶縁フィルムの材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンテレフタレートコ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PETG)である、請求項3に記載のセル。
【請求項5】
前記熱収縮性絶縁フィルムは、側壁部と、端壁部とを含み、
前記側壁部は、少なくとも前記電極組立体の前記第1端に近い前記周面を覆い、
前記端壁部は、前記第1端の端面縁部を少なくとも部分的に覆う、請求項1に記載のセル。
【請求項6】
前記側壁部と前記電極組立体との間の接触面の少なくとも一部に粘着層が提供される、請求項5に記載のセル。
【請求項7】
前記粘着層は前記側壁部の内面上に設けられ、前記側壁部の円周方向に沿って配置される、請求項6に記載のセル。
【請求項8】
前記側壁部は、前記電極組立体の周面全体を包み、
前記粘着層は、前記電極組立体の周側壁全体に対応する前記側壁部の領域を覆う、請求項6に記載のセル。
【請求項9】
前記第1タブは正極タブであり、前記正極タブは複数の金属導電シートを含む、請求項1に記載のセル。
【請求項10】
前記第1タブは、集電板を介して前記第1電極端子と電気接続され、
前記熱収縮性絶縁フィルムは、前記集電板の周端面を包み、前記第1電極端子に対応する位置に形成された貫通孔を有して提供され、
前記集電板の電気コネクタは、前記貫通孔を通じて前記第1電極端子と電気接続される、請求項1に記載のセル。
【請求項11】
前記電極組立体の周側壁を覆う前記熱収縮性絶縁フィルムの長さに対する、前記電極組立体の端面を覆う前記熱収縮性絶縁フィルムの長さの比率は、1/3~2/3である、請求項1に記載のセル。
【請求項12】
動作部分と、
請求項1~11のいずれか1項に記載のセルとを含み、
前記動作部分は、電力サポートを得るように前記セルに電気接続される、電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の技術分野に関するものであり、特に、セル及びそれを含む電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全タブ円筒型セルは、その独特の優れた導電性及び超低内部抵抗のため、多くの新エネルギーメーカーの注目を集めている。円筒型セルの筐体は通常、アルミニウム筐体又はスチール筐体などの導電性材料製であり、全タブ円筒型セルにおいてタブの絶縁は重要である。タブと筐体との間の既存の絶縁層は、通常、PET製の絶縁テープである。絶縁テープは、正極タブ及び/又は負極タブを包み、次いで絶縁テープは押圧され、絶縁テープはタブの筐体を向いた端面に接着されて、タブを筐体の側壁から絶縁分離する。しかし、この処理において、電極組立体の外壁に装着されたテープを端面に押圧する必要があることから、絶縁テープには通常、皺が生ずる。そのため、筐体内への干渉が容易に起こり得る。更には、セルが長時間使用された後には、テープが電解液に浸漬されるため、テープの押圧箇所での皺が反り上がりやすく絶縁不良を起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した関連技術の欠点を鑑み、本発明は、既存の電池におけるタブの絶縁テープの皺が反り上がりやすく絶縁不良を起こす、という課題に対処するための、セル及びそれを含む電気機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記及び他の関連する目的を達成するため、本発明の第1の様態は、セルを提供する。筐体は、端壁と、端壁を囲む側壁とを含む。第1電極端子は、絶縁方式にて端壁を貫通して取り付けられる。電極組立体は、筐体内に封止されて取り付けられ、電極組立体の第1端は第1タブを含み、第1タブは第1電極端子に電気接続される。熱収縮性絶縁フィルムは、第1タブを側壁から絶縁分離するように、電極組立体の第1端に近い周面を少なくとも包む。ここで、熱収縮性絶縁フィルムは閉ループとして接続され、熱収縮性絶縁フィルムの周面上に接合領域が提供される。
【0005】
本発明の1つの実施形態により提供されるセルにおいて、接合領域は、熱圧着接続領域及び/又は接着接続領域を含む。
【0006】
本発明の1つの実施形態により提供されるセルにおいて、接合領域は重なり領域を含み、重なり領域の重なり幅は3mm以下であり、重なり領域以外の熱収縮性絶縁フィルムの厚さは0.03mm~0.06mmである。
【0007】
本発明の1つの実施形態により提供されるセルにおいて、熱収縮性絶縁フィルムはポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンテレフタレートコ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PETG)製である。
【0008】
本発明の1つの実施形態により提供されるセルにおいて、熱収縮性絶縁フィルムは、側壁部と、端壁部とを含む。側壁部は少なくとも電極組立体の第1端に近い周面を覆い、端壁部は第1端の端面縁部を少なくとも部分的に覆う。
【0009】
本発明の1つの実施形態により提供されるセルにおいて、側壁部と電極組立体との間の接触面の少なくとも一部に粘着層が提供される。
【0010】
本発明の1つの実施形態により提供されるセルにおいて、粘着層は側壁部の内面上に設けられ、側壁部の円周方向に沿って配置される。
【0011】
本発明の1つの実施形態により提供されるセルにおいて、側壁部は電極組立体の周面全体を包み、粘着層は、電極組立体の周側壁全体に対応する側壁部の領域を覆う。
【0012】
本発明の1つの実施形態により提供されるセルにおいて、第1タブは正極タブであり、正極タブは複数の金属導電シートを含む。
【0013】
本発明の1つの実施形態により提供されるセルにおいて、第1タブは、集電板を介して第1電極端子と電気接続される。熱収縮性絶縁フィルムは、集電板の周端面を包み、第1電極端子に対応する位置に形成された貫通孔を有して提供される。集電板の電気コネクタは、貫通孔を通じて第1電極端子と電気接続される。
【0014】
本発明の1つの実施形態により提供されるセルにおいて、電極組立体の周側壁を覆う熱収縮性絶縁フィルムの長さに対する、電極組立体の端面を覆う熱収縮性絶縁フィルムの長さの比率は、1/3~2/3である。
【0015】
本発明の第2の様態は電気機器を更に提供する。電気機器は、動作部分と、上記に基づくセルとを含む。動作部分は、電力サポートを得るようにセルに電気接続される。
【発明の効果】
【0016】
本発明により提供されるセルにおいて、熱収縮性絶縁フィルムの周面には接合領域が提供される。このため、帯状の熱収縮性絶縁フィルムは両端接続が可能となり、次いで更に加熱されて熱収縮して、第1タブを筐体の側壁から絶縁分離するように電極組立体の第1端の周面を包む。この構造形態において、第1タブが位置する周面上に比較的平滑な被覆層を形成することができる。更に、この種の構造を有する熱収縮性絶縁フィルムは帯状のフィルム体から直接製造することができ、円筒状熱収縮性スリーブの脱型工程の影響を受けない。このため、より薄い厚さが得られ、関連技術における厚い熱収縮性フィルムの課題が解決され、反りが起こりにくく、良好な絶縁信頼性及び実現可能性を提供する。本発明により提供される電気機器は、電力供給のために本発明により提供されるセルを用い、よって向上された信頼性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の実施形態又は関連技術において提供される技術的解決策をより明確に表すため、本明細書にて実施形態又は関連技術に必要とされるいくつかの添付図面を以下に簡単に紹介する。当然ながら、以下の説明における図面は単に本発明のいくつかの実施形態にすぎず、当業者であれば、発明的努力なしにこれらの図面に基づいて他の図面を得ることが可能である。
【0018】
【
図1】本発明の1つの実施形態によるセルの三次元概略図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態による、筐体が外されたセルの三次元概略図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態によるセルにおける熱収縮性絶縁フィルムの接合領域の拡大部である。
【
図4】本発明の1つの実施形態によるセルにおける初期状態の熱収縮性絶縁フィルムの概略構造図である。
【
図5】本発明の1つの実施形態によるセルにおける接合後の熱収縮性絶縁フィルムの概略図である。
【
図6】本発明の1つの実施形態によるセルにおける接合後の電極組立体上に熱収縮性絶縁フィルムを装着する取付けプロセスの概略図である。
【
図7】本発明の1つの実施形態によるセルにおける電極組立体に取り付けられた後の熱収縮性絶縁フィルムの概略図である。
【
図8】本発明の1つの実施形態によるセルにおける熱収縮して電極組立体上に成形された熱収縮性絶縁フィルムの概略図である。
【
図9】本発明のもう1つの実施形態によるセルにおける熱収縮性絶縁フィルムの初期構造の概略図である。
【
図10】本発明のもう1つの実施形態によるセルにおける電極組立体に熱収縮性絶縁フィルムを取り付ける取付けプロセスの概略図である。
【
図11】本発明のもう1つの実施形態によるセルにおける電極組立体に取り付けられた後の熱収縮性絶縁フィルムの概略図である。
【
図12】本発明のもう1つの実施形態によるセルにおける熱収縮して電極組立体上に成形された熱収縮性絶縁フィルムの概略図である。
【
図13】本発明の更にもう1つの実施形態によるセルにおける熱収縮性絶縁フィルムの初期状態の概略図である。
【
図14】本発明の更にもう1つの実施形態によるセルにおける電極組立体に取り付けられた後の熱収縮性絶縁フィルムの概略図である。
【
図15】本発明の更にもう1つの実施形態によるセルにおける熱収縮して電極組立体上に成形された熱収縮性絶縁フィルムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実装を、特定の実施形態により以下に説明する。当業者であれば、本明細書の開示内容から、本発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。本発明は、他の異なる特定の実装方法を通じて実装又は適用することもできる。本明細書の詳細は、本発明の精神から逸脱することなく、異なる観点及び用途に基づいて改変又は変更することもできる。なお、以下の実施形態及び各実施形態の特徴は、矛盾しない場合には互いに組み合わせることができる。また、本発明の実施形態で用いられる用語は、特定の実装を説明するためのものであり、本発明の保護範囲を限定するためのものではないことも理解されたい。以下の実施形態において特に条件を示さない試験方法は、通常、従来の条件又は各メーカーが提示する条件に従うものである。
【0020】
実施形態において数値範囲が与えられる場合、本開示において別段の記載がない限り、各数値範囲の2つの端点及び2つの端点の間の任意の数値が選択され得ることを理解されたい。別段の定義がない限り、本開示で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者による先行技術の理解及び本開示の内容と一致するものである。本発明の実施形態で説明する方法、装置、及び材料と類似又は同等である先行技術の任意の方法、装置、及び材料も、本発明を実施するために使用可能である。
【0021】
なお、本明細書中で述べられる「上」、「下」、「左」、「右」、「中間」、「一方」といった用語は説明の便宜のためのものにすぎず、本発明の適用可能な範囲を限定するために使いられるものではないことに留意されたい。その相対関係の変更又は調整は、技術内容を実質的に変更することのない本発明の適用範囲と見なされるものとする。
【0022】
図1~
図15を参照し、本発明は、セル100と、セル100を含む電気機器を提供する。セル100は、熱収縮性絶縁フィルム140を採用する。このようにして、第1タブ132が位置する側壁上に比較的平坦な被覆層を形成することができ、既存のセル100におけるタブ絶縁テープの皺が反り上がって絶縁不良を起こしやすい問題を解決することができる。熱収縮性絶縁フィルム140の周面上には接合領域141が提供される。熱収縮性絶縁フィルム140は、帯状フィルム体から直接製造することができ、円筒状熱収縮性スリーブの脱型工程の影響を受けず、よって、より薄い厚さを呈することができる。
【0023】
図1~
図3を参照し、セル100は、筐体110と、第1電極端子120と、電極組立体130と、熱収縮性絶縁フィルム140とを含む。筐体110は、電極組立体130を収容する内部空間を形成するために用いられる。ここで、筐体110により形成される内部空間は、電極組立体130、電解液(未図示)、及び他のコンポーネントを収容するために用いられてよい。筐体110は、円柱、直方体、六角柱等といった様々な形状及びサイズであってよい。具体的には、筐体110の形状は、電極組立体130の特定の形状及びサイズに基づいて決定されてよい。筐体110は、銅、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、アルミニウム合金等といった、様々な材料製であってよい。
【0024】
図1~
図3を参照し、本発明の1つの実施形態により提供されるセル100において、筐体110は、端壁111と、端壁111を囲む側壁112とを含む。側壁112と端壁111は共に、円柱を一端を閉鎖しつつ他端を開放するように取り囲む。円柱の開放端は、エンドキャップ160により封止される。1つの実施形態において、第1電極端子120は、集電板150を介して電極組立体130の第1タブ132と電気接続され、筐体110は、直接又は間接的に電極組立体130の第2タブ133と電気接続される。第1電極端子120が位置する側は、第1電極端子120と筐体の端面の両方を有し、このため1つのセル100の一端は正極電極と負極電極の両方を備えてよく、これによりセルモジュール又はバッテリパックを形成するように複数のセル100の間の直列又は並列接続を容易にする。第1電極端子の取付孔が筐体110の端壁111に提供され、第1電極端子120は封止及び絶縁されて第1電極端子の取付孔に取り付けられる。筐体111のこのような構造は、取付け効率を向上させ、両端が開放された筐体110よりも組立て及び封止の点でより優れる。
【0025】
図1~
図3を参照し、電極組立体130は、電気化学反応が起こるセル100内のコンポーネントである。1つ以上の電極組立体130が筐体110内に含まれてよい。電極組立体130は、主に正極電極シートと負極電極シートを巻き付けるか積層することにより形成され、正極電極シートと負極電極シートとの間には、通常、セパレータが提供される。正極シートと負極シートの活物質を含む部分が電極組立体130の主本体を構成し、正極シートと負極シートの活物質を含まない部分はそれぞれのタブを構成する。電極組立体130は筐体110内に封止されて取り付けられ、封止の具体的な形態は限定されない。
【0026】
図1~
図3と
図6を参照し、本発明の1つの実施形態において、電極組立体130は、ベアセル131と、第1タブ132と、第2タブ133とを含む。第1タブ132と第2タブ133は、ベアセル131の2つの端部に位置する。筐体110の電気特性は負極であり、第1タブ132の電気特性は正極であり、電極組立体130の第1タブ132は第1電極端子120に電気接続される。熱収縮性絶縁フィルム140は、第1タブ132を筐体110の側壁112から絶縁分離するように、電極組立体130の第1端に近い周面を少なくとも包む。ここで、熱収縮性絶縁フィルム140は閉ループとして接続され、接合領域141が熱収縮性絶縁フィルム140の周面上に提供される。熱収縮性絶縁フィルム140による被覆構造は、第1タブ132を筐体110の側壁112から絶縁分離するように、帯状の熱収縮性絶縁フィルムを両端で接続し、次いで加熱して熱収縮させて電極組立体130の第1端の周面を包むことにより形成されてよい。本構造において、第1タブ132が位置する周面上に、比較的平滑な被覆層を形成することができる。更に、この種の構造を有する熱収縮性絶縁フィルムは、帯状フィルム体から直接製造することができ、円筒状熱収縮性スリーブの脱型工程の影響を受けず、このためより薄い厚さが得られる。
【0027】
本発明において、熱収縮性絶縁フィルム140が電極組立体130の第1端に近い周面を覆うのみであるとはいえ、
図3と
図8を参照し、本発明の1つの実施形態において、熱収縮性絶縁フィルム140は側壁部143と端面部142とを更に含むことが好ましい。側壁部143は少なくとも電極組立体130の第1端に近い周面を覆い、端面部142は電極組立体130の第1端に近い端面縁部を少なくとも部分的に覆う。このような配置において、第1タブ132と筐体110の側壁112との間の絶縁を向上させることができ、端部が露出する第1タブ132が側壁112に接触するよう露出することを防止する。熱収縮性絶縁フィルム140は電極組立体130の一端の周囲を包み、第1タブ132が位置する第1端面1321を少なくとも部分的に覆い、このため電極組立体130にて電気的に正極である第1タブ132の第1端面1321は、電気的に負極である筐体110から絶縁分離される。熱収縮性絶縁フィルム140は閉ループとして接続され、熱収縮性絶縁フィルム140の側壁部143と端面部142のそれぞれには接合領域141が提供される。本発明のもう1つの実施形態において、上記実施形態とは異なり、筐体110の電気特性は正極であり、第1タブ132の電気特性は負極である。熱収縮性絶縁フィルム140は電極組立体130の一端の周囲を包み、第1タブ132が位置する第1端面1321を少なくとも部分的に覆い、このため電極組立体130にて電気的に負極である第1タブ132の端面は、電気的に正極である端壁111から絶縁分離される。
【0028】
図1~
図3と
図6を参照し、本発明により提供されるセル100において、接合領域141は、熱圧着接続領域、接着接続領域、又は接着接続と熱圧着接続を組み合わせた領域として形成されるといった、様々な方式で形成されてよい。接合領域141は、熱収縮性絶縁フィルム140が電極組立体130に取り付けれる処理の前又は該処理の間に形成されてよい。
【0029】
図4~
図8を参照し、本発明の1つの実施形態により提供されるセル100において、接合領域141は熱圧着接続領域のみを含む。
図4を参照し、具体的には、熱収縮性絶縁フィルム140は電極組立体130を包む前の初期状態において、帯状且つ開ループの外観を有する。帯状の熱収縮性絶縁フィルム140は、高温熱圧着により接合領域141を形成し、
図5に示すような全体として環状の熱収縮性絶縁フィルム140を形成する。環状の熱収縮性絶縁フィルム140は、第1タブ132に対応する電極組立体130の一端に装着される。第1タブ132は、カットタブ形態の正極である。即ち、電極シートが巻かれる前、タブが複数の金属導電性シートとして切り出される。そして、電極シートが巻かれた後、金属導電性シートを電極組立体130の中心に向かって折り重ねてタブの端面を形成する。タブ切断処理により形成されるタブの端面は平滑であり、これは後続のタブと集電板との間の電気接続を容易にする。ただし、カットタブ形態におけるタブの端面は電池がガスを生成したとき緩みやすい。従来の粘着テープの使用形式が採用される場合、緩んだタブは端面上に形成されたテープによる皺を容易に押し開き、短絡するリスクが生じやすい。本実施形態において、熱収縮処理の後、第1タブ132の周面を筐体110から絶縁するため、環状の熱収縮性絶縁フィルム140の側壁部143は第1タブ132の周面を包み、熱収縮性絶縁フィルム140の端面部142は第1タブ132が位置する第1端面1321を覆う。第1端面1321を覆う熱収縮性絶縁フィルムは、熱収縮性フィルム材料自体を収集させることにより形成される、即ち、第1端面1321を覆う熱収縮性絶縁フィルムは、第1端面1321に密接する。熱収縮性絶縁フィルムは、カットタブである複数の金属導電性シートを効果的に位置決めすることができ、タブは緩みにくい。カットタブ形態と熱収縮性絶縁フィルムを組み合わせた使用は、好ましい効果を生む。
【0030】
図1~
図3と
図6を参照し、本発明のもう1つの実施形態により提供されるセル100において、接合領域141は粘着接続領域のみを含む。帯状の熱収縮性絶縁フィルム140は、側辺に提供された粘着帯により接合領域141を形成するよう接着されて、全体として環状の熱収縮性絶縁フィルム140を形成する。環状の熱収縮性絶縁フィルム140、は第1タブ132に対応する電極組立体130の一端に装着され、後続の熱収縮処理の後、電極組立体130の一端を包み、第1タブ132が位置する端面を少なくとも部分的に覆う。当然ながら、必要な場合は、接合領域141は熱圧着接続領域と粘着接続領域の両方を含んでよいが、そのような配置はコストが高いことを、当業者であれば理解することができる。当然ながら、他の実施形態において、粘着接続領域は提供されず、熱圧着接合のみが採用されてよい。この処理において、接合領域は熱圧着接続の継ぎ目のみを有する。
【0031】
図1~
図3を参照し、接合領域141の構造は限定されず、例えば、部分的に重なっていても重なっていなくてもよい。本発明において、本発明の1つの実施形態により提供されるセル100において、接合領域141は重なり領域を含み、重なり領域の重なり幅Dは3mm以下である。重なり領域以外の熱収縮性絶縁フィルム140の厚さは0.03mm~0.06mmであり、例えば、0.03mm、0.04mm、0.05mm、及び0.06mmである。該重なり幅範囲内及び熱収縮性絶縁フィルム140の該厚さ範囲内で、好ましい絶縁効果が達成され、過大な厚さや課題な重なり領域が避けられることから、熱収縮性絶縁フィルム140にとって筐体に進入することが容易であり、セルが動作の間に膨張したときに熱収縮性絶縁フィルムが筐体に接触する部分での応力集中からセルを保護することができる。ただし、他の実施形態において、熱圧着接続が採用された場合、高温溶融及び熱圧着の後に、帯状の熱収縮性絶縁フィルム140の端部は熱溶融した継ぎ目を形成するよう互いに融着され、重なり部分は基本的にゼロに近く無視することができる。
【0032】
図1~
図3と
図9を参照し、本発明において、熱収縮性絶縁フィルム140は、熱収縮後に形成される圧縮力のみにより電極組立体130を包んでよい。ただし、粘着層144が熱収縮性絶縁フィルム140の周側壁と電極組立体130の周側壁との間の接触面の少なくとも一部に提供されることが好ましい。電極組立体130の周側壁は、第1タブ132又はベアセル131の側壁に対応する側壁であってよい。粘着層144は、最初に熱収縮性絶縁フィルム140が取り付けられるとき電極組立体130の巻き芯と位置合わせされてよく、後続の熱収縮及び加熱の間に熱収縮性絶縁フィルム140と電極組立体130の側壁が接着される部分が過度に収縮して全体的な絶縁不良を引き起こすことを防ぐことができる。粘着層144の構成は限定されず、接着剤塗布又は両面粘着層を含むがこれに限定されない。粘着層144の配置位置もやはり限定されず、例えば、粘着層144は電極組立体130上に配置されてよく、熱収縮性絶縁フィルム140が取り付けられるとき、熱収縮性絶縁フィルム140は電極組立体130上の粘着層144に接着されるよう押圧されてよい。粘着層144は、熱収縮性絶縁フィルム140の内壁に配置されてもよく、熱収縮性絶縁フィルム140が取り付けられるとき、電極組立体130の側壁に接着されてよい。或いは、粘着層144は、熱収縮性絶縁フィルム140の内壁と電極組立体130の側壁に互い違いに配置されてよい。ただし、この配置は、熱収縮性絶縁フィルム140の内壁のみ、又は電極組立体130の側壁のみへの配置に比べ、経済性が低く、製造性も劣ると考えられる。
【0033】
本発明において、熱収縮性絶縁フィルム140は、端子を有する側に配置する必要があるのみである。
図9~
図13を参照し、本発明の1つの実施形態により提供されるセル100において、第1タブ132と第2タブ133は電極組立体130の両端に配置される。第1タブ132と第2タブ133は、対応する端子に接続されることを要する。第1タブ132と第2タブ133のそれぞれに、熱収縮性絶縁フィルム140が提供されることを要する。帯状の初期状態において、粘着層144が熱収縮性絶縁フィルム140上に設けられ、粘着層144は熱収縮性絶縁フィルム140の側壁部143の内面に設けられ且つ側壁部143の円周方向に沿って設けられる。電極組立体130に取り付けられた後、粘着層144は熱収縮性絶縁フィルム140の周側壁と電極組立体130の周側壁との間の接触面の少なくとも一部に設けられる。第1タブ132の側に対応する熱収縮性絶縁フィルム140上の粘着層144は、第1タブ132の側壁及び/又はベアセル131の側壁との間に設けられる。第2タブ133の側に対応する熱収縮性絶縁フィルム140上の粘着層144は、第2タブ133の側壁及び/又はベアセル131の側壁との間に設けられる。熱収縮性絶縁フィルム140が接着されて円周方向に沿って包んだ後、接合領域が形成され、こうして接合領域141が形成される。第1タブ132と第2タブ133に接着された2つの熱収縮性絶縁フィルム140は、対応する側のタブから突出する周面を有する。収縮の後、対応する側のタブから突出した周面は、対応するタブの端面を覆う。いくつかの他の実施形態において、先ず熱収縮性絶縁フィルムスリーブが接合により形成され、次いで熱収縮性絶縁フィルムスリーブが電極組立体130上に配置され、次いでベアセル131の側壁に接着されてよい。
【0034】
ほとんどの既存のベアセル131の側壁が巻き芯を束ねるようにブルーグルーで被覆される必要があることを考慮し、
図13~
図15を参照し、本発明の1つの実施形態により提供されるセル100において、側壁部143は電極組立体130の全周面を包む。熱収縮性絶縁フィルム140上の粘着層144は、電極組立体130の周側壁に対応する側壁部143の領域(第1タブ132の側壁領域、第2タブ133の側壁領域、及びベアセル131の側壁領域を含む)を覆う。更に、第1タブ132に面する粘着層144の側に、第1タブ132から突出する第1端面対応領域145が提供され、第2タブ133に面する粘着層144の側に、第2タブ133から突出する第2端面対応領域146が提供される。熱収縮の後、第1端面対応領域145が第1タブ132の第1端面1321を覆い、第2端面対応領域146は第2タブ133の第2端面(未図示)を覆う。このようにして、絶縁被覆層が電極組立体130の両側のタブ上に形成されることができ、絶縁被覆層はまた、ベアセル131の側壁上に一体に形成されることができる。このため、効率を高めることができ、一度の結束及び端部絶縁も実施することができる。更に、熱収縮性絶縁フィルム140とベアセル131の側壁上のブルーグルーが一体に形成されるとき、熱収縮性絶縁フィルム140とブルーグルーが重なって過度な厚さとなることを防止する。セル100が膨張したときに、重なり領域が過度な厚さのため、筐体を圧迫して応力集中が生ずること及びセル100が筐体内に入りづらくなることを避ける。ベアセル131の広い表面上のブルーグルーは電解液に浸漬した後に剥がれやすいという問題も解決することができる。
【0035】
本発明において、熱収縮性絶縁フィルム140は熱収縮性材料製であり、これは高分子形状記憶材料であり、高分子材料の放射線加工処理により得られる材料である。ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等といった一般的な高分子材料は通常、線状構造を有し、高分子材料の線状構造は電子加速器といった放射線源の作用の下で網目構造に変化する。この種の放射線加工処理により得られる網目構造高分子材料は、熱収縮性材料である。熱収縮性材料は独特な形状記憶効果を呈し、拡張されてから冷却された熱収縮性材料は、加熱された後に元の形状に収縮することができる。使用の間に、熱収縮性材料は収縮させるように加熱され、収縮した熱収縮性材料は熱収縮性フィルムを形成し、これは平坦で、物体の外面を緊密に包み、包まれた物体を絶縁、封止、保護する。本発明の1つの実施形態において、熱収縮性フィルムの材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンテレフタレートコ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PETG)を含が、これに限定されない。PET及びPETG熱収縮性フィルムは、SKケミカル社から購入可能な原材料から製造することができる。PET熱可塑性ポリエステルは、より高い融点を有し、良好な機械的特性、好ましい弾性、耐摩耗性と耐衝撃性、低吸水性、優れたサイズ安定性、好ましい成形条件、及び負荷の下での好ましい耐クリープ性を示す結晶性ポリマーの一種である。PETGは、優れた靭性と高い衝撃強度を備えた透明で非晶質のコポリエステルである。PETGの衝撃強度は、変性ポリアクリレートの3~10倍であり、PETGは広い加工範囲、高い機械的強度、優れた柔軟性を有する。PETGは、PVCに比べて透明性が高く光沢が良好であり、印刷が容易で環境保護にも優れる。
【0036】
本発明において、第1タブ132と第1電極端子120との間の電気接続は限定されず、これら2つは直接又は間接的に電気接続されてよい。
図2を参照し、本発明の1つの実施形態により提供されるセル100において、第1タブ132は集電板150を介して第1電極端子120と電気接続される。熱収縮性絶縁フィルム140は、集電板150の周端面を包み、第1電極端子120に対応する位置に貫通孔147が形成される。集電板150上の電気コネクタ151は、貫通孔147を通じて第1電極端子120と電気接続される。電気コネクタ151と第1電極端子120との間の電気接続は、電流伝達を達成可能な溶接方法を含むが、これに限定されない。
【0037】
本発明の1つの実施形態により提供されるセル100において、電極組立体130の周側壁を覆う熱収縮性絶縁フィルム140の長さに対する電極組立体130の端面を覆う熱収縮性絶縁フィルム140の長さの比率は、1/3~2/3である。該比率の範囲は、1/3、1/2、2/3などといった、1/3~2/3の間の任意の数値範囲であってよい。この比例関係にて、比較的安定した設置関係を維持することができ、熱収縮及び成形後の電極組立体130の周側壁の過度に短い長さによる熱収縮性絶縁フィルム140の脱落が起こりにくく、電極組立体130の端面の過度に少ない被覆による絶縁不良が起こりにくい。
【0038】
本発明の第2の様態において、電気機器を提供する。該電気機器は、動作部分と、上記に基づくセルとを含む。動作部分は、電力サポートを得るようにセル100に電気接続される。電気機器は、車両、携帯電話、携帯機器、ノート型コンピュータ、船舶、宇宙船、電動玩具、電動工具等であってよい。車両は、燃料自動車、ガス自動車、又は新エネルギー自動車であってよく、新エネルギー自動車は、純粋な電気自動車、ハイブリッド自動車、航続距離延長自動車等であってよい。宇宙船は、飛行機、ロケット、スペースシャトル、宇宙船等を含む。電動玩具は、例えばゲーム機、電動自動車玩具、電動ボート玩具、電動飛行機玩具等の、据え置き型又は移動型の電動玩具を含む。電動工具は、電動ドリル、電動グラインダー、電動レンチ、電動ドライバー、電動ハンマー、インパクトドリル、コンクリートバイブレーター、電動カンナ等といった、金属切断電動工具、研削電動工具、組立電動工具、及び鉄道用電動工具を含む。上記の電気機器は、本発明の実施形態において特に限定されない。
【0039】
本発明により提供されるセル100において、熱収縮性絶縁フィルム140の周面には接合領域141が提供される。このため、帯状の熱収縮性絶縁フィルム140は第1タブ132に対応する電極組立体130の端部での両端接続が可能となり、更に加熱されて熱収縮して、電極組立体130及びセル100の筐体110の端壁を絶縁分離するように、電極組立体130の一端を包み、第1タブ132が位置する端壁を部分的に覆う。この構造形態において、第1タブ132が位置する端面上に比較的平滑な被覆層を形成することができる。更に、この種の構造を有する熱収縮性絶縁フィルム140は、帯状フィルム体を直接採用することができ、脱型工程の影響を受けない。このため、より薄い厚さが得られ、関連技術における厚い熱収縮性フィルムの課題が解決され、反りが起こりにくく、良好な絶縁信頼性及び実現可能性を提供する。本発明により提供される電気機器は、電力供給のために本発明により提供されるセル100を用い、よって向上された信頼性を提供する。このため、関連技術におけるいくつかの実用上の問題を効果的に解決することができ、高い利用価値と利用意義を発揮することができる。上述した実施形態は、本発明の原理及び効果を表すのみであり、本発明を限定することを意図していない。当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、上述した実施形態を改変又は変更することができる。このため、本発明において開示される精神及び技術的思想から逸脱することなく当業者によって行われる全ての均等な改変又は変更は、やはり本発明の特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
熱収縮性絶縁フィルムの周面には接合領域が提供される。このため、帯状の熱収縮性絶縁フィルムは両端接続が可能となり、次いで更に加熱されて熱収縮して、第1タブを筐体の側壁から絶縁分離するように電極組立体の第1端の周面を包む。この構造形態において、第1タブが位置する周面上に比較的平滑な被覆層を形成することができる。更に、この種の構造を有する熱収縮性絶縁フィルムは帯状フィルム体から直接製造することができ、円筒状熱収縮性スリーブの脱型工程の影響を受けない。このため、より薄い厚さが得られ、関連技術における厚い熱収縮性フィルムの課題が解決され、反りが起こりにくく、良好な絶縁信頼性及び実現可能性を提供する。本発明により提供される電気機器は、電力供給のために本発明により提供されるセルを用い、よって向上された信頼性を提供する。
【符号の説明】
【0041】
100:セル
110:筐体
111:端壁
112:側壁
120:第1電極端子
130:電極組立体
131:ベアセル
132:第1タブ
1321:第1端面
133:第2タブ
140:熱収縮性絶縁フィルム
141:接合領域
142:端面部
143:側壁部
144:粘着層
145:第1端面対応領域
146:第2端面対応領域
147:貫通孔
150:集電板
151:電気コネクタ
160:エンドキャップ
【外国語明細書】