(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012893
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】着脱式定水位給水装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20240124BHJP
E03C 1/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
E03C1/042 Z
E03C1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114683
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】503294120
【氏名又は名称】大分クリーンマット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 正寛
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【弁理士】
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】宮本 清太
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060AA01
2D060AA03
2D060AA10
2D060BA10
2D060BC09
2D060BD01
2D060BE01
2D060BE15
2D060BF00
(57)【要約】
【課題】 通常のバケツなどでは一定水位で自動的に給水を停止できる給水具は存在しない。屋外の給水などでの好便な給水具を提供する。水資源の有効利用を促進する。
【解決手段】 貯水容器の側壁にクランプ部材によりボールタップ機構付き給水装置を固定する。クランプ部材で側壁を挟み込むため、その着脱が容易、簡便、スピーディである。クランプ部材はC型クランプと類似の構成とし、例えばボールジョイントを介しての本体の固定により、給水具本体の取り付けを如何なる構造の貯水槽に対しても後付け可能とする。多くのバケツなどに屋外で一定水量の給水が簡便とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その一端に給水管に接続される給水口を、その他端に貯水容器に対して給水を行うための吐出口をそれぞれ備えた通水路が設けられた本体と、
この本体に固定され、この本体を上記貯水容器に対して着脱自在に固定するクランプ手段と、
上記通水路を開閉する弁部材と、
上記貯水容器内の水面の上下動に対応して上記弁部材を開閉駆動する弁駆動手段とを備えた着脱式定水位給水装置。
【請求項2】
上記弁駆動手段は、その先端にフロートを有した作動リンクを備え、この作動リンクを介してフロートの上下動を上記弁部材に伝達するボールタップ機構である請求項1に記載の着脱式定水位給水装置。
【請求項3】
上記クランプ手段は、上記貯水容器の側壁を挟み込むクランプ部材で構成した請求項1または請求項2に記載の着脱式定水位給水装置。
【請求項4】
上記クランプ部材は、上記本体の外面にボールジョイントを介して取り付けられた請求項3に記載の着脱式定水位給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は着脱式定水位給水装置、詳しくはクランプ部材によりバケツなどの貯水容器に着脱容易とした着脱式定水位給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器内に注水したとき定水位を確保する目的で開発された、例えば以下の登録実用新案公報に記載の装置が知られている。このものは、水位調整用ボールタップ装置であって、浮き球を弁体作動部材に取り付けるに際して浮き球高さ位置調整部材により容易に取り付け、調整を可能としたものである。なお、弁体は装置本体に格納されており、この本体は貯水タンク(壁面の所定高さ位置)に一体的に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の水位調整用ボールタップ装置にあっては、以下のような不都合が生じていた。すなわち、このようなボールタップ装置は貯水タンクに固有の構成であって、貯水タンクの側壁に一体的に固定されて、永年の使用に耐えるものである。つまりボールタップ装置の貯水タンクからの取り外し、取り付けなどは想定されていなかった。
【0005】
そこで、発明者は、このようなボールタップ装置を用いて屋外などでの給水作業において便利なように、貯水容器(バケツなど)に一定量の貯水を自動的に行え、溢水による水資源の無駄を排除すること可能とした、着脱式定水位給水装置を発明したものである。多数個のバケツに順に一定量の貯水を行う場合には、この給水装置によれば、オーバフローによる水の無駄をなくしこれら全てのバケツに一定量ずつの注水を行うことを可能とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、その一端に給水管に接続される給水口を、その他端に貯水容器に対して給水を行うための吐出口をそれぞれ備えた通水路が設けられた本体と、この本体に固定され、この本体を上記貯水容器に対して着脱自在に固定するクランプ手段と、上記通水路を開閉する弁部材と、上記貯水容器内の水面の上下動に対応して上記弁部材を開閉駆動する弁駆動手段とを備えた着脱式定水位給水装置である。
この給水装置にあっては、いわゆる水道水、河川水などの他、海水、雨水など、さらには、ある種の液体(清酒、ビール、その他の液体)を含む給水(給液)装置として適用することができる。
装置本体には通水路が形成されている。通水路の一端(給水口)は例えば水道からのホースに連通可能であり、その他端は吐出口である。吐出口から吐出される水は、タンク、水槽、コンテナ、バケツなどの貯水容器に注水される。この通水路の途中には開閉弁が配設されている。開閉弁の開閉は、例えばボールタップ(フロート型の開閉弁駆動材)による。
さらに、この本体に固定されており、本体を、注水対象の貯水容器のその一部(バケツの側壁上縁など)に挟み込み、固定するクランプ手段を備えている。
例えば上記給水具本体にはクランプ部材(C型クランプ、ばねクランプなど)を連結し、このクランプ部材により、この本体を上記容器の一部に挟み込み、固定した。クランプ手段の一部には例えば吸盤、磁石盤、ベルクロ(登録商標)の一方側などを取り付けることも固定には有効である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、上記弁駆動手段は、その先端にフロートを有した作動リンクを備え、この作動リンクを介してフロートの上下動を弁部材に伝達するボールタップ機構である請求項1に記載の着脱式定水位給水装置である。
ボールタップ機構とは、貯水容器内の水面の上下変動により上記通水路途中の開閉弁を自動的に開閉させる機構である。
具体的には、支持棒(シャフト)の先端に浮き玉(ボール)が付いており、水位が下がると浮き玉が下がることにより、レバーつけ根の開閉弁が開き給水が始まる。満水になると浮き玉が浮力によって上昇し、開閉弁(給水弁)が閉止し、給水が止まる。浮き玉の材質はポリエチレンPE玉、銅玉、ステンレス玉などである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、上記クランプ手段は、上記貯水容器の側壁を挟み込むクランプ部材で構成した請求項1または請求項2に記載の着脱式定水位給水装置である。
クランプ部材とは、上部開口の貯水容器の一部を構成する側壁を、特にその上端部を挟み込む形状のC型クランプ、バネクランプが適用可能とされる。C型クランプまたはC字クランプは、そのC字形状の本体は鍛造を基本とし、強度のある鋼製・軽いアルミニウム製、鋳造品やプレス製がある。充分な締付力が得られる。C字型の本体の上下の腕の先端(内側面)であるアゴの間に側壁を挟み込む。ハンドルで回転するボルトを上下動させてアゴの間隔を調整して締め付けることとなる。
この他、G型クランプ、F型クランプもこのクランプ部材として同様に採用することができる。
さらに、ばねクランプについては、洗濯ばさみとほぼ同じ構造であり、はさみの一対のグリップの一方を上記装置本体に固定することで本体より下方でクランプが開閉できる構成とすることもできる。これはスプリング力で挟み込むことができるが、特に早く脱着できるメリットがある。
要は、クランプ手段としてのクランプ部材は、貯水容器の側辺(側壁)を上側から、または容器の一部突出片を挟み込むことで、貯水容器に本体を取り付け、固定するものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、上記クランプ部材は、上記本体の外面にボールジョイントを介して取り付けられた請求項3に記載の着脱式定水位給水装置である。
例えばC型クランプを本体外壁に固定する場合、クランプの腕の一部(例えば屈曲部)をピンジョイントで固定することも考えられるが、貯水、給水の対象となる貯水容器(例えばバケツ、タンク、水槽、樽などの他にも池も含む)の外部形状に応じて固定する必要がある場合、その固定対象部位の位置、形状により本体に対してクランプ部材がその角度を有して固定する必要がある。この場合、ボールジョイントを介してクランプ本体が給水装置の本体との間で所望の角度を有して、これは垂直面内だけでなく、傾斜面内での所定角度をなして固定される場合に対応するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、開閉弁(弁部材)を弁駆動手段(水位により上下動する手段)にて開閉することで給水およびその停止を行う構成の装置にあって、この装置の本体をクランプ手段により貯水容器に対して着脱自在に固定することとしたため、貯水容器内の水面を一定水位に保持することができる。このとき、一定水位まで貯水が完了した後(当該容器への給水終了後)は装置本体を容器から取り外し、装置本体を別の貯水容器に固定することで、別の容器にも一定水位での給水ができる。このように複数の貯水容器に連続して一定水位での給水を容易に行うことができる。すなわち、特別の給水装置を有しない貯水容器(例えばバケツ、コンテナ)に対して簡単に一定水位での給水、貯水を可能としたものである。もちろん、これは給水源(例えば上水道管)の給水コックをON・OFFすることなく(常にONとして)、貯水容器への貯水が可能であることを意味する。
また、装置本体を貯水容器に挟み込み固定するためのクランプ手段は、C型クランプ、ばねクランプなどのクランプ部材で構成したことにより、貯水容器の側壁などに容易に、また強固に固定し、かつその取り外しが容易となる。
さらに、クランプ部材は、給水装置の本体の外壁面にボールジョイントを介して取り付けられた構成のため、装置本体は垂直姿勢を保持しつつ、クランプ部材自体の取り付け角度を垂直に限られず多様な角度として(例えば水平として)固定とすることができる。これは特別な外観形状を有する容器に対応した取り付け、取り外しを容易にすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の実施例1に係る着脱式定水位給水装置を示す正面図である。
【
図2】この発明の実施例2に係る着脱式定水位給水装置を示す斜視図である。
【
図3】この発明の実施例2に係る着脱式定水位給水装置の通水路を示す断面図である。
【
図4】この発明の実施例3に係る着脱式定水位給水装置を示す分解斜視図(a)および一部断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明に係る着脱式定水位給水装置の一実施例を説明する。
図1は実施例1に係る着脱式定水位給水装置を説明するための図である。
この図において示すように、着脱式定水位給水装置11は、通水路が内部に形成された金属製の本体12と、通水路内の弁を開閉駆動するボールタップ機構13と、本体12を貯水容器14に固定するクランプ部材15とを備えている。
本体12は円筒体で形成され、垂直方向に延びる通水路の上端部に水平方向に開口する給水口を有し、この給水口にキャップ16が装着されている。このキャップ16は水平方向に突出しており、その突出端部にはホース17がそのアダプタキャップ18を介して接続されている。
上下方向に延びる通水路の下端は吐出口とされ、この吐出口へ連通する通水路には弁が内装されており、弁の弁座に対しての上下動により通水路、すなわち吐出口からの給水を連続し、または停止することとなる。
この弁の開閉作動は、本体12の上端部側方に配置されたボールタップ機構13により行われる。ボールタップ機構13は、フロート(浮き玉)20と、これを先端に支持する作動シャフト21と、作動シャフト21の基端部を本体耳部22に垂直面内で回動自在に支持される水平ピン23と、この作動シャフト21の上下動(水平ピンを支点とした所定角度範囲での揺動)に対応して上記弁を通水路内で上下動させるリンク機構24とを備えている。
一方、本体12の円筒体の下端部側面にはクランプ部材15が固着されている。クランプ部材15はボールタップ機構13のフロート20とは反対側に配置されている。クランプ部材15は、全体としてはC字クランプを模した形状であって、上下方向に平行して延びる同じ長さの一対の支持片32,33を有している。支持片32が上記円筒状の本体12の下端部外側に例えば溶接などで固定されており、これと所定の間隔を有して支持片33が上下に延設されている。側面視して逆U字型でその下端が開口した支持片32,33間に、一定幅の隙間が上下方向に延びて画成されている。水平なボルト34は支持片33の下端部に螺合してこれら支持片32,33間でボルト先端と支持片対応部(対向面)との間隔を調整可能である。ボルト34とともにT字形状を呈するハンドル35は、ボルト34のボルト孔(支持片33に形成されている)へのねじ込み量を調節可能としてある。
すなわち、ハンドル35によりこの間隔を調節し、この支持片32とボルト先端との間に貯水容器14の側壁141(その上端縁部)を挟み込むことにより、本体12を容器14に強固に固定するものである。
なお、ハンドル35を逆方向に回転すると当然にこの間隔が拡がり簡単に本体12を容器14から上向きに取り外すことができる。
【0013】
次に、着脱式定水位給水装置11における使用方法について説明する。給水の対象となる貯水容器14にあっては上側に開口した例えばバケツ、水槽などではその貯水容器14の側壁141の上端縁部に、この装置を固定する。
具体的には、クランプ部材15のアゴの間に、つまり支持片32とボルト34の先端(略平面としてある)との間に貯水容器14の側壁141を挟み込み、挟圧して本体12を固定する。この結果、ボールタップ機構13、特にそのフロート20は貯水容器14の内方に配設されることとなる。フロート20の位置はシャフト21の長さ調整による。
そして、給水口側のキャップ16に接続されたホース17から例えば水道水を通水路に供給すると、ボールタップ機構13により弁は通水路を開いているため、吐出口から容器14内に給水されることとなる。給水が進み、容器14内での水面が上昇する。所定時間経過後、水面が一定高さ位置まで上昇すると、フロート20によりボールタップ機構13が機能し、弁(図示省略)が通水路を閉じる。すなわち、貯水容器14内の水量が一定とされて、給水は自動的に停止される。
この後、クランプ部材15は取り外されて(ハンドル35で挟み込みを解除して)本体12が容器14から取り除かれることとなる。同じ容器に対して再度の給水が必要となる場合、また、他の容器への注水が必要となる場合は、クランプ部材15での挟み込み固定からフロート長さ調節で目標水位を調整して給水を行う。
なお、クランプ部材15にあっては、その支持片32は水中に没することもあるため、ステンレス材などが好ましく、さらには、当該挟圧部分(ボルト先端との対向部位32)には例えば滑り止めを配置することもできる。さらには当該挟圧部分にあっては硬質ゴムの弾性変形可能とし、強固な固定に資するとともに、支持片32のボルト先端との対向面に固設した硬質ゴム(薄いチップまたは円板形状)のその表面に上下(およびまたは左右)に延びて水を排出する溝を延設してもより効果的であり、挟圧面での水分による滑り、緩みなどの発生を防止することができる。
【0014】
図2および
図3はこの発明に係る着脱式定位給水装置の実施例2を示す。これらの図において示すように、本装置は、通水路内設の本体51と、ボールタップ機構52と、クランプ部材53とを備えて構成されている。
本体51に形成された通水路54の垂直部分には弁座55およびこれに対向して通水路54の開閉を行う例えば逆円錐台形状の弁体56が配置されている。弁体56の上下動はボールタップ機構52を構成するリンク57、58およびフロートシャフト59によってフロート60の水面高さ位置を反映する。
また、クランプ部材53の構成は、以下の通りである。すなわち、本体51の外側面(フロートの反対側の側面)に固着された、下方に向かって開口する側面視コの字形状の本体部531を有し、挟持片532,533の間に容器61の側壁を挟み込む構成である。垂直な挟持片533にはネジ孔に水平ボルト535がねじ込まれ、その先端(平坦面)と挟持片532のゴムパッド536との間に側壁61を挟み込む。534は水平ボルト535の操作ヘッドである。
ボールタップ機構52にあっては、フロート60の支持シャフト59は基端部が水平ピン62により垂直面内で回動自在に支持されている。
したがって、装置の容器への装着後は、フロート60で水面高さを検出し、自動的に弁56を弁座55に押し付けることにより、通水路54を閉止することができる。一定の水位を容器に保持させるのである。
その他の構成、例えばホースからの給水などは上記実施例と同等であり、省略する。
【0015】
図4はこの発明の実施例3を示す。この
図4においては、(a)は装置本体76およびボールタップ機構70、さらにクランプ材72を示す。(b)はクランプ材72を本体に固定する場合、ボールジョイント機構を介して取り付けられている点が上記各実施例とは異なる。
ボールジョイント機構71はクランプ材72の一部から水平に突出した突出棒73とその先端の球体74と、球体74を嵌合して包持する球状空間75とを有して構成されている。当該球状空間75は給水装置本体76に形成されており、空間75内面に回動自在に支持された球体74によりクランプ材72が本体76に対して任意の方向(角度をなして)において自在に回転可能な構成とされている。
したがって、容器側壁が水平にオーバハングされた形状である場合、例えば水平面に対して45度の角度を有して形成されている場合、これら側壁に対応した角度にて本体76を固定し、一定水位での給水停止を可能とする。
その他の構成および作用については各実施例からの類推可能範囲であり、説明は省略している。
【産業上の利用可能性】
【0016】
この発明は、着脱式定水位給水装置の技術として有用である。
【符号の説明】
【0017】
11 着脱式定水位給水装置、
12 本体、
13 ボールタップ機構、
14 貯水容器、
15 クランプ部材。