(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128932
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 1/00 20060101AFI20240913BHJP
B60C 5/14 20060101ALI20240913BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20240913BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20240913BHJP
C08L 61/34 20060101ALI20240913BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20240913BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240913BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240913BHJP
C08K 3/011 20180101ALI20240913BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B60C1/00 C
B60C5/14 Z
B60C9/00 L
C08K5/3415
C08L61/34
C08L21/00
C08K3/013
C08K3/04
C08K3/011
C08K3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023205434
(22)【出願日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2023037774
(32)【優先日】2023-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】松本 典大
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 僚太
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA08
3D131AA14
3D131AA15
3D131AA33
3D131AA34
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3D131AA45
3D131BA18
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3D131BB01
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3D131DA54
3D131EB11X
3D131EB27V
4J002AB013
4J002AC001
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002AC111
4J002AH003
4J002BB151
4J002BB181
4J002BB241
4J002BD121
4J002CC282
4J002CD181
4J002DA037
4J002DA048
4J002DE147
4J002DE237
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002EU026
4J002FA043
4J002FD017
4J002FD148
4J002FD342
4J002FD346
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】湿熱劣化後における接着性能に優れたタイヤを提供する。
【解決手段】スチールコードがスチールコード被覆用ゴム組成物で被覆されたタイヤ部材と、インナーライナーとを備えたタイヤであって、
前記タイヤ部材の下記式(1)で定義されるコード表面積S[mm2]と、前記インナーライナーの40℃における空気透過係数K[cc・cm/cm2・sec・cmHg]との比(S/K)が、70×10-11以上であり、
式(1)
コード表面積S[mm2]=単線コード直径[mm]×π×撚りコード本数×タイヤ部材のタイヤ幅方向1m当たりの撚りコード本数×1[mm]
前記スチールコード被覆用ゴム組成物が、所定の化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むタイヤに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチールコードがスチールコード被覆用ゴム組成物で被覆されたタイヤ部材と、インナーライナーとを備えたタイヤであって、
前記タイヤ部材の下記式(1)で定義されるコード表面積S[mm
2]と、前記インナーライナーの40℃における空気透過係数K[cc・cm/cm
2・sec・cmHg]との比(S/K)が、70×10
-11以上であり、
式(1)
コード表面積S[mm
2]=単線コード直径[mm]×π×撚りコード本数×タイヤ部材のタイヤ幅方向1m当たりの撚りコード本数×1[mm]
前記スチールコード被覆用ゴム組成物が、下記式(2)で示される化合物及び下記式(3)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むタイヤ。
【化1】
(式中、Aは、炭素数2~4のアルキレン基、フェニレン基、又は芳香族環を1~4個有する炭素数6~29の2価の炭化水素基を表す。R
11~R
14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、-NH
2基又は-NO
2基を表す。)
【化2】
(式中、R
21は、飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はこれらの基を2個以上組み合わせた基を表す。R
22~R
23は、それぞれ独立に炭素原子数1~10の炭化水素基であり、前記炭化水素基は置換基を有してもよい。R
22~R
23は、同一であっても異なっていてもよい。nは、それぞれ独立に0~4の整数である。複数のR
22、複数のR
23は、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記スチールコード被覆用ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が90質量%以上である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記スチールコード被覆用ゴム組成物は、有機酸コバルトの含有量が、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記タイヤ部材が、カーカス及びベルト層からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記S/Kが80×10-11以上である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記コード表面積Sが1200mm2以上である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記空気透過係数Kが15×10-11[cc・cm/cm2・sec・cmHg]以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記タイヤ部材の厚みT(mm)が0.6~3.2mmである請求項1に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記タイヤ部材の前記式(1)で定義されるコード表面積S[mm2]と、前記タイヤ部材の厚みT[mm]との比(S/T)が、1000~10000である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記タイヤ部材の厚みT[mm]と、前記インナーライナーの空気透過係数K[cc・cm/cm2・sec・cmHg]との比(T/K)が、0.03×10-11~0.30×10-11である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記スチールコード被覆用ゴム組成物において、前記式(2)で示される化合物の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、1.0~4.0質量部である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記スチールコード被覆用ゴム組成物において、前記式(3)で示される化合物の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、1.0~4.0質量部である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記スチールコード被覆用ゴム組成物において、充填剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、35~70質量部である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記スチールコード被覆用ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量が、ゴム成分100質量部に対して、35~70質量部である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記スチールコード被覆用ゴム組成物において、可塑剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項16】
前記スチールコード被覆用ゴム組成物において、硫黄の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、6質量部以上である請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤに使用されるスチールコード被覆用ゴム組成物は、スチールコードとゴムとの接着、特に湿熱劣化における接着性能を担保するため、コバルト化合物、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂などを含んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、コバルト化合物は、欧州における環境規制の可能性がある、その産地のほとんどがコンゴ民主共和国に限られ入手難易度が高い、などの問題がある。また、レゾルシン化合物も環境規制リスクがあり、更にフェノール樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂は共に、加硫工程で重合する際に脱水縮合を起こして水を放出するため、湿熱劣化における接着性能の低下が懸念される。
【0004】
本発明は、前記課題を解決し、湿熱劣化後における接着性能に優れたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、スチールコードがスチールコード被覆用ゴム組成物で被覆されたタイヤ部材と、インナーライナーとを備えたタイヤであって、
前記タイヤ部材の下記式(1)で定義されるコード表面積S[mm
2]と、前記インナーライナーの40℃における空気透過係数K[cc・cm/cm
2・sec・cmHg]との比(S/K)が、70×10
-11以上であり、
式(1)
コード表面積S[mm
2]=単線コード直径[mm]×π×撚りコード本数×タイヤ部材のタイヤ幅方向1m当たりの撚りコード本数×1[mm]
前記スチールコード被覆用ゴム組成物が、下記式(2)で示される化合物及び下記式(3)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むタイヤに関する。
【化1】
(式中、Aは、炭素数2~4のアルキレン基、フェニレン基、又は芳香族環を1~4個有する炭素数6~29の2価の炭化水素基を表す。R
11~R
14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、-NH
2基又は-NO
2基を表す。)
【化2】
(式中、R
21は、飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はこれらの基を2個以上組み合わせた基を表す。R
22~R
23は、それぞれ独立に炭素原子数1~10の炭化水素基であり、前記炭化水素基は置換基を有してもよい。R
22~R
23は、同一であっても異なっていてもよい。nは、それぞれ独立に0~4の整数である。複数のR
22、複数のR
23は、同一であっても異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0006】
本発明は、スチールコードがスチールコード被覆用ゴム組成物で被覆されたタイヤ部材と、インナーライナーとを備えたタイヤであって、前記タイヤ部材の前記式(1)で定義されるコード表面積S[mm2]と、前記インナーライナーの40℃における空気透過係数K[cc・cm/cm2・sec・cmHg]との比(S/K)が、70×10-11以上であり、前記スチールコード被覆用ゴム組成物が、前記式(2)で示される化合物及び前記式(3)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むタイヤであるので、湿熱劣化後における接着性能に優れたタイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明のタイヤのタイヤ子午線断面図である。
【
図2】
図1のタイヤのベルト層及びバンド層の拡大断面図である。
【
図3】
図1のトレッド部の近辺が示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、スチールコードがスチールコード被覆用ゴム組成物で被覆されたタイヤ部材とインナーライナーとを備え、該タイヤ部材の上記式(1)で定義されるコード表面積S[mm2]と該インナーライナーの40℃における空気透過係数K[cc・cm/cm2・sec・cmHg]との比(S/K)が70×10-11以上であり、該スチールコード被覆用ゴム組成物が上記式(2)で示される化合物及び上記式(3)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むタイヤである。
【0009】
上記タイヤにより前述の効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
上記式(2)、(3)で示される化合物を用いることで、加硫工程における重合の際に水分を放出することを抑制し、湿熱劣化条件下でも接着性能を担保できる。
更に、式(1)で示されるコードとの接触面積を担保して接着力を向上させると共に、タイヤ内面からの水分透過を抑制し、タイヤ内面に備えられたインナーライナーの空気透過係数との比(S/K)を70×10-11以上とすることで、湿熱劣化条件下でもスチールコードとゴムとの接着力を向上できる。
従って、湿熱劣化後における接着性能に優れたタイヤを提供できると推察される。
【0010】
このように、本発明は、「S/Kが70×10-11以上」の関係を満たす構成にすることにより、湿熱劣化後における接着性能を向上するという課題(目的)を解決するものである。すなわち、「S/Kが70×10-11以上」のパラメータは課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、湿熱劣化後における接着性能を向上することであり、そのための解決手段として当該パラメータを満たすような構成にしたものである。
【0011】
本発明のタイヤは、上記タイヤ部材内のスチールコードについて下記式(1)で定義されるコード表面積S[mm2]と、上記インナーライナーの40℃における空気透過係数K[cc・cm/cm2・sec・cmHg]との比(S/K)が、70×10-11以上である。
式(1)
コード表面積S[mm2]=単線コード直径[mm]×π×撚りコード本数×タイヤ部材のタイヤ幅方向1m当たりの撚りコード本数×1[mm](1[mm]=単位長さ)
S/Kは、好ましくは75×10-11以上、より好ましくは80×10-11以上、更に好ましくは85×10-11以上、より更に好ましくは101×10-11以上、より更に好ましくは113×10-11以上、より更に好ましくは132×10-11以上、より更に好ましくは134×10-11以上、より更に好ましくは151×10-11以上、より更に好ましくは201×10-11以上、より更に好ましくは302×10-11以上、より更に好ましくは402×10-11以上、より更に好ましくは603×10-11以上である。S/Kの上限は特に限定されないが、好ましくは1000×10-11以下、より好ましくは900×10-11以下、更に好ましくは850×10-11以下、より更に好ましくは750×10-11以下、より更に好ましくは650×10-11以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0012】
上記タイヤ部材は、上記コード表面積Sが、好ましくは1000mm2以上、より好ましくは1100mm2以上、更に好ましくは1131mm2以上、より更に好ましくは1200mm2以上、より更に好ましくは1319mm2以上、より更に好ましくは1508mm2以上、より更に好ましくは2011mm2以上、より更に好ましくは6032mm2以上である。Sの上限は特に限定されないが、好ましくは10000mm2以下、より好ましくは9000mm2以下、更に好ましくは7000mm2以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0013】
コード表面積Sを所定以上に調整した場合、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、コードとの接触面積を担保して接着力が向上し、湿熱劣化条件下でもスチールコードとゴムとの接着力を向上できる。従って、湿熱劣化後における接着性能が向上すると推察される。
【0014】
上記タイヤ部材内のスチールコードについて、上記単線コード直径(スチールワイヤの線径)は、好ましくは0.10mm以上、より好ましくは0.13mm以上、更に好ましくは0.15mm以上、より更に好ましくは0.20mm以上、より更に好ましくは0.30mm以上、より更に好ましくは0.40mm以上であり、また、好ましくは0.60mm以下、より好ましくは0.50mm以下、更に好ましくは0.45mm以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0015】
上記タイヤ部材内のスチールコードについて、撚りコード本数は、好ましくは1本以上、より好ましくは2本以上、更に好ましくは4本以上であり、また、好ましくは30本以下、より好ましくは20本以下、更に好ましくは10本以下、より更に好ましくは6本以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0016】
上記タイヤ部材内のスチールコードについて、タイヤ部材のタイヤ幅方向1m当たりの撚りコード本数は、好ましくは200本/m以上、より好ましくは300本/m以上、更に好ましくは400本/m以上、より更に好ましくは500本/m以上、より更に好ましくは600本/m以上、より更に好ましくは700本/m以上、より更に好ましくは800本/m以上、より更に好ましくは1200本/m以上であり、また、好ましくは2000本/m以下、より好ましくは1500本/m以下、更に好ましくは1300本/m以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0017】
上記インナーライナー(インナーライナー用ゴム組成物)は、上記空気透過係数K[cc・cm/cm2・sec・cmHg]が、好ましくは25×10-11以下、より好ましくは15×10-11以下、更に好ましくは12×10-11以下、特に好ましくは10×10-11以下である。Kの下限は特に限定されないが、好ましくは1×10-11以上、より好ましくは3×10-11以上、更に好ましくは5×10-11以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0018】
コード表面積Sを所定以上に調整した場合、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、タイヤ内面からの水分透過をより抑制できると考えられる。従って、湿熱劣化後における接着性能が向上すると推察される。
【0019】
なお、本明細書において、「単線コード直径」とは、単線コード(単線フィラメント)の長さ方向に垂直な断面で測定された単線コードの外径を意味する。また、単線コードの長さ方向に垂直な方向での断面形状が扁平形状など、外径を一義的に決定することが難しい場合には単線コードの長径と、長径に対して垂直方向の径の最大値の平均値を単線コードの外径(単線コード直径)として取り扱う。
「π」とは、円周率を意味する。
「撚りコード本数」とは、単線コード(単線フィラメント)を1本又は2本以上撚り合わせたコードを構成する単線コード(単線フィラメント)の本数を意味し、単線からなるコードの場合、撚りコード本数は1、単線コードを2本撚り合わせたコードの場合、撚りコード本数は2である。
「タイヤ部材のタイヤ幅方向1m当たりの撚りコード本数」とは、タイヤ部材のタイヤ幅方向1m当たりに、打ち込まれている撚りコードの本数を意味する。
具体的には、単線コード直径(単線フィラメント径)が0.30mm、撚りコード本数(単線フィラメントの本数)が2本撚り、タイヤ部材のタイヤ幅方向1m当たりの撚りコード本数が600の場合、コード表面積[mm2]は、0.30×π×2×600×1=1131mm2である。
【0020】
なお、本明細書において、「単線コード直径」は、コード材料を光学顕微鏡で観察し、その直径を測定することにより測定される。
「撚りコード本数」は、コード材料を光学顕微鏡で観察し、その本数を数えることにより測定される。
「タイヤ部材のタイヤ幅方向1m当たりの撚りコード本数」は、タイヤ部材に埋め込まれているコード材料の本数およびその部材の長さを測定し、1mあたりの本数に換算することにより測定される。
【0021】
上記コード表面積Sは、単線コード直径、撚りコード本数、タイヤ部材のタイヤ幅方向1m当たりの撚りコード本数を適宜選択することで調整できる。具体的には、単線コード直径を小さくしたり、撚りコード本数を多くしたり、タイヤ部材のタイヤ幅方向1m当たりの撚りコード本数を多くすると、コード表面積Sが大きくなる傾向がある。
【0022】
なお、本明細書において、「空気透過係数」とは、JIS K 7126-1:2006に準拠して測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定される値である。
空気透過係数は、加硫ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)の値である。
【0023】
上記40℃における空気透過係数Kは、ゴム成分、充填剤や可塑剤の種類や配合量を変更することにより調整できる。具体的には、ブチル系ゴムを所定以上用いたり、所定の充填剤量を増加したりすると、空気透過係数Kが小さくなる傾向がある。
【0024】
上記スチールコードは、ブラスめっきが施されたスチールワイヤの複数本を撚り合わせたスチールコード、又はスチールワイヤの単線からなるスチールコードである。スチールワイヤは、鋼、すなわち鉄を主成分(金属鋼線の全質量に対する鉄の質量が50質量%を超える)とする線状の金属である。該金属は、鉄以外の金属を含んでもよい。
【0025】
上記スチールワイヤの軸線に対して垂直の断面形状は、特に限定されず、円状、楕円状、矩形状、三角形状、多角形状等が挙げられる。なかでも、円状が望ましい。
【0026】
カーカスやベルト層に該スチールワイヤを撚り合わせた金属製補強コードであるスチールコードを用いる場合は、該スチールワイヤの断面形状は円状であることが望ましい。
【0027】
上記スチールワイヤは、その表面に上記組成となるブラス(真鍮)めっき層を有することが好ましく、該めっき層の厚みは、特に限定されないが、例えば、一般に100~300nmである。
【0028】
例えば、上記ブラスめっきを周面に施したスチールワイヤ等の金属ワイヤーを複数本撚り合わせ、例えば、1×3構造、1×5構造等に撚り合わせることにより、常法によりスチールコードからなる金属コードを得ることができる。
【0029】
上記スチールコードは、タイヤ用のベルトコード、カーカスコードであることが望ましい。
【0030】
本発明のタイヤは、スチールコードがスチールコード被覆用ゴム組成物で被覆されたタイヤ部材と、インナーライナーとを備えている。
【0031】
上記タイヤ部材は、スチールコードを含む部材であれば特に限定されないが、より効果が得られる観点から、カーカス、ベルト層であることが望ましい。カーカスの場合はカーカス内のスチールコードを被覆するカーカス用ゴム組成物、ベルト層の場合はベルト層内のスチールコードを被覆するベルト層用ゴム組成物が、上記スチールコード被覆用ゴム組成物に相当する。上記ベルト層は、1層の補強層からなるものでも、2層以上の補強層からなるものでもよく、上記タイヤ部材がベルト層の場合、ベルト層を構成する補強層の少なくとも1層が上記スチールコード被覆用ゴム組成物で被覆されたものであればよい。
【0032】
特にカーカス、ベルト層に適用した場合、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、カーカス、ベルト層においてS/Kを70×10-11以上とすることで、コードとの接触面積を担保して接着力が向上し、湿熱劣化条件下でもスチールコードとゴムとの接着力を向上できる。従って、湿熱劣化後における接着性能が向上すると推察される。
【0033】
上記インナーライナーは、インナーライナー用ゴム組成物で構成される。
【0034】
上記タイヤにおいて、上記スチールコード被覆用ゴム組成物は、下記式(2)で示される化合物及び下記式(3)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【化3】
(式中、Aは、炭素数2~4のアルキレン基、フェニレン基、又は芳香族環を1~4個有する炭素数6~29の2価の炭化水素基を表す。R
11~R
14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、-NH
2基又は-NO
2基を表す。)
【化4】
(式中、R
21は、飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はこれらの基を2個以上組み合わせた基を表す。R
22~R
23は、それぞれ独立に炭素原子数1~10の炭化水素基であり、前記炭化水素基は置換基を有してもよい。R
22~R
23は、同一であっても異なっていてもよい。nは、それぞれ独立に0~4の整数である。複数のR
22、複数のR
23は、同一であっても異なっていてもよい。)
【0035】
上記式(2)において、Aの炭素数2~4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、プロパン-2,2-ジイル基などが挙げられる。
芳香族環を1~4個有する炭素数6~29の2価の炭化水素基の芳香族環数は、好ましくは1~2個である。芳香族環を1~4個有する炭素数6~29の2価の炭化水素基の具体例としては、メチレンビス(フェニレン)基、フェニレンビス(メチレン)基、フェノキシフェニル基等が挙げられる。該芳香族環は、-O-、-S-、-SS-、-SO2-等により結合されていてもよい。
なかでも、Aは、フェニレン基、芳香族環を1又は2個有する炭素数8~17の炭化水素基が望ましく、フェニレン基又は芳香族環を1又は2個有する炭素数8~13の炭化水素基がより好ましい。
Aは、置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、炭素数1~3のアルキル基、-NH2、-NO2、-F、-Cl、-Br等が挙げられる。
【0036】
上記式(2)において、R11~R14の炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。なかでも、R11~R14は、水素原子が望ましい。
【0037】
上記式(2)で示される化合物の具体例としては、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-1,2-エチレンビスマレイミド、N,N’-1,2-プロピレンビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,2’-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、m-フェニレンビス(メチレン)ビスマレイミド、m-フェニレンビス(メチレン)ビスシトラコンイミド、1,1’-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミド等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、より効果が得られる観点から、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミドが好ましく、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドがより好ましい。
【0038】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物において、上記式(2)で示される化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上であり、また、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0039】
上記式(3)において、R21の飽和脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等を挙げることができる。
R21の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
R21は、これらの飽和脂肪族炭化水素基、これらの芳香族炭化水素基を2個以上組み合わせた基が例示される。
【0040】
上記式(3)において、R22~R23の炭素原子数1~10の炭化水素基は特に制限されない。また、炭化水素基は置換基を有することができる。
【0041】
上記炭素原子数1~10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基のような分岐していてもよい鎖状のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基のような脂環族炭化水素基;ベンジル基、フェネチル基のようなアリール基置換アルキル基;メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基のようなアルコキシ基置換アルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基のようなアルケニル基;フェニル基、ナフチル基のようなアリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、t-ブチルフェニル基のようなアルキル基置換アリール基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、t-ブトキシフェニル基のようなアルコキシ基置換アリール基などが挙げられる。
【0042】
上記炭素原子数1~10の炭化水素基が有することができる置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基のようなアルコキシ基;ビニル基、アリル基、ブテニル基のようなアルケニル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基のようなアリール基;メチル基、エチル基、ブチル基、t-ブチル基のようなアルキル基;エーテル結合、エステル結合が挙げられる。
【0043】
上記式(3)において、nは、それぞれ独立に0~4の整数であり、なかでも、0、1、2が好ましく、0がより好ましい。
【0044】
上記式(3)で示される化合物として、より効果が得られる観点から、例えば、下記式(3-1)で示される化合物が望ましい。
【化5】
(式中、R
31~R
34は、それぞれ独立に炭素原子数1~10の炭化水素基であり、前記炭化水素基は置換基を有してもよい。R
31~R
34は、同一であっても異なっていてもよい。nは、それぞれ独立に0~4の整数である。複数のR
31、複数のR
32、複数のR
33、複数のR
34は、同一であっても異なっていてもよい。)
【0045】
上記式(3-1)において、R31~R34の炭素原子数1~10の炭化水素基は特に制限されない。また、炭化水素基は置換基を有することができる。
上記炭素原子数1~10の炭化水素基としては、例えば、上記R22~R23の炭素原子数1~10の炭化水素基と同様のものが挙げられる。
上記炭素原子数1~10の炭化水素基が有することができる置換基としては、上記R22~R23の炭素原子数1~10の炭化水素基が有することができる置換基と同様のものが挙げられる。
【0046】
上記式(3-1)において、nは、それぞれ独立に0~4の整数であり、なかでも、0、1、2が好ましく、0がより好ましい。
【0047】
上記式(3)で示される化合物のなかでも、より効果が得られる観点から、下記式(3-2)で示される化合物が特に好ましい。
【化6】
【0048】
上記式(3-2)で示される化合物の市販品は、例えば、P-d型ベンゾオキサジン(商品名P-d型ベンゾオキサジン、四国化成工業社製)が挙げられる。
【0049】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物において、上記式(3)で示される化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上であり、また、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、上記式(3-1)で示される化合物の含有量、上記式(3-2)で示される化合物の含有量も同様の範囲が望ましい。
【0050】
以下、上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物に使用可能な薬品について、上記式(2)、(3)で示される化合物以外の薬品を説明する。薬品は、上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物に共通して使用可能な材料である。
【0051】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物は、ゴム成分を含む。
ここで、ゴム成分は、架橋に寄与する成分であり、一般的に、重量平均分子量(Mw)が1万以上のポリマーで、アセトンにより抽出されないポリマー成分がゴム成分に該当する。前記ゴム成分は、常温(25℃)で固体状態である。
【0052】
ゴム成分の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上、特に好ましくは27万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0053】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0054】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物に使用するゴム成分は、非変性ゴムでもよいし、変性ゴムでもよい。
変性ゴムとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するゴムなどが挙げられる。例えば、ゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ゴム等が挙げられる。
【0055】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0056】
上記ゴム成分としては特に限定されず、例えば、ジエン系ゴムなどが挙げられる。ジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、ゴム成分としては、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなども挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのゴム成分は変性処理、水素添加処理が行われていても良く、オイル、樹脂、液状ゴム成分などにより伸展された、伸展ゴムを用いても良い。
【0057】
なかでも、上記スチールコード被覆用ゴム組成物は、イソプレン系ゴム、BR、SBRの少なくとも1種を含むことが好ましく、少なくともイソプレン系ゴムを含むことがより好ましい。
また、上記インナーライナー用ゴム組成物は、ブチル系ゴム、イソプレン系ゴムの少なくとも1種を含むことが好ましく、ブチル系ゴムを少なくとも含むことがより好ましい。
【0058】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
ブチル系ゴムとしては、例えば、ブチルゴムや、塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)、臭素化ブチルゴム(Br-IIR)、フッ素化ブチルゴム(F-IIR)などのハロゲン化ブチルゴムが挙げられる。また、ブチル系ゴムの市販品として、エクソンモービル社製のエクスプロ、クロロブチルHT1068などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、ハロゲン化ブチルゴムを含むことが望ましい。
【0060】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、BRは、シス含量が90質量%以上のハイシスBRを含むことが好ましい。該シス含量は、95質量%以上がより好ましい。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0061】
BRのシス量は、BRが1種である場合、当該BRのシス量を意味し、複数種である場合、平均シス量を意味する。
BRの平均シス量は、{Σ(各BRの含有量×各BRのシス量)}/全BRの合計含有量で算出でき、例えば、ゴム成分100質量%中、シス量:90質量%のBRが20質量%、シス量:40質量%のBRが10質量%である場合、BRの平均シス量は、73.3質量%(=(20×90+10×40)/(20+10))である。
【0062】
また、BRは、非変性BR、変性BRのいずれも使用可能である。変性BRとしては、変性ゴムと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。また、BRは、水素添加ブタジエン重合体(水添BR)も使用可能である。
【0063】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。該スチレン含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、1H-NMR測定によって測定できる。
【0065】
SBRのスチレン量は、SBRが1種である場合、当該SBRのスチレン量を意味し、複数種である場合、平均スチレン量を意味する。
SBRの平均スチレン量は、{Σ(各SBRの含有量×各SBRのスチレン量)}/全SBRの合計含有量で算出でき、例えば、ゴム成分100質量%中、スチレン量40質量%のSBRが85質量%、スチレン量25質量%のSBRが5質量%である場合、SBRの平均スチレン量は、39.2質量%(=(85×40+5×25)/(85+5))である。
【0066】
SBRのビニル結合量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。該ビニル結合量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0067】
SBRのビニル量(1,2-結合ブタジエン単位量)はSBR中におけるブタジエン部の総質量を100としたときのビニル結合の割合であり(単位:質量%)、ビニル量[質量%]+シス量[質量%]+トランス量[質量%]=100[質量%]となる。SBRが1種である場合、当該SBRのビニル量を意味し、複数種である場合、平均ビニル量を意味する。
SBRの平均ビニル量は、Σ{各SBRの含有量×(100[質量%]-各SBRのスチレン量[質量%])×各SBRのビニル量[質量%]}/Σ{各SBRの含有量×(100[質量%]-各SBRのスチレン量[質量%])}で算出でき、例えば、ゴム成分100質量部中、スチレン量40質量%、ビニル量30質量%のSBRが75質量部、スチレン量25質量%、ビニル量20質量%のSBRが15質量部、残り10質量部がSBR以外である場合、SBRの平均ビニル量は、28質量%(={75×(100[質量%]-40[質量%])×30[質量%]+15×(100[質量%]-25[質量%])×20[質量%])}/{75×(100[質量%]-40[質量%])+15×(100[質量%]-25[質量%])}である。
【0068】
SBRは、非変性SBR、変性SBRのいずれも使用可能である。変性SBRとしては、変性ゴムと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。また、SBRとして、水素添加スチレン-ブタジエン共重合体(水添SBR)も使用可能である。
【0069】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、100質量%でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0070】
イソプレン系ゴムの含有量を所定以上、特に90質量%以上に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、イソプレン系ゴムの含有量を多量にすることで、コードとの接着力を向上すると考えられる。従って、湿熱劣化後における接着性能が向上すると推察される。
【0071】
上記インナーライナー用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のブチル系ゴムの含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。上限は特に限定されず、100質量%でもよく、また、例えば、97質量%以下、95質量%以下、85質量%以下でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0072】
上記インナーライナー用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。下限は特に限定されず、0質量%でもよく、また、例えば、1質量%以上、5質量%以上、7質量%以上でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0073】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物は、充填剤を含むことが望ましい。
上記充填剤としては特に限定されず、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー、バイオ炭(BIO CHAR);難分散性フィラー等が挙げられる。なかでも、より効果が得られる観点から、カーボンブラックなどの炭素由来フィラー(炭素含有フィラー)、シリカが好ましい。充填剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物において、使用可能なカーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N660、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、従来の鉱物油などを原料としたカーボンブラックのほか、リグニンなどのバイオマス材料を原料としたカーボンブラックを用いても良い。また、タイヤなどのカーボンブラックを含むゴム製品、プラスチック製品などを分解して得られたリサイクルカーボンブラック、熱分解カーボンブラック、リカバードカーボンブラックを用いても良い。
【0075】
カーボンブラックの統計的厚さ比表面積(STSA)は、20m2/g以上が好ましく、25m2/g以上がより好ましく、30m2/g以上が更に好ましく、36m2/g以上がより更に好ましい。また、上記STSAは、150m2/g以下が好ましく、130m2/g以下がより好ましく、120m2/g以下が更に好ましく、100m2/g以下がより更に好ましく、84m2/g以下がより更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの統計的厚さ比表面積(STSA)は、JIS K6217-7:2001によって求められる。
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)の好ましい範囲も、上記STSAについて述べたものと同様である。カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、JIS K6217-2 :2001によって求められる。
【0076】
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、好ましくは40ml/100g以上、より好ましくは60ml/100g以上、更に好ましくは70ml/100g以上である。また、上記DBPは、好ましくは200ml/100g以下、より好ましくは180ml/100g以下、更に好ましくは150ml/100g以下である上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K6217-4:2001の測定方法によって求められる。
【0077】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物において、使用可能なシリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
シリカとして、植物由来シリカも好適に使用できる。
植物由来シリカとしては、シリカ分を含有する植物に由来するシリカなどが挙げられる。シリカ分を含有する植物としては、イネ、トウモロコシ、サトウキビ、トクサ、コムギ、オオムギ、ライムギ、ハトムギ、キビ、アワ、ヒエ、ススキ、エリアンサスなどが挙げられる。また、前記シリカ分を含有する植物の糖化処理残渣も使用できる。なかでも、シリカ含有量が高いイネのもみ殻や藁などが好ましく、さらにはもみ殻が好ましい。また、シリカ分を含有する植物は、燃焼処理によって灰になったものでも、炭化処理を施されたものでもよい。
【0079】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは100m2/g以上、更に好ましくは150m2/g以上である。また、シリカのN2SAの上限は特に限定されないが、好ましくは350m2/g以下、より好ましくは300m2/g以下、更に好ましくは250m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0080】
難分散性フィラーとしては、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維、短繊維状セルロース、ゲル状化合物等が挙げられる。なかでも、ミクロフィブリル化植物繊維が好ましい。
【0081】
上記ミクロフィブリル化植物繊維としては、良好な補強性が得られるという点から、セルロースミクロフィブリルが好ましい。セルロースミクロフィブリルとしては、天然物由来のものであれば特に制限されず、例えば、果実、穀物、根菜などの資源バイオマス、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、及びこれらを原料として得られるパルプや紙、布、農作物残廃物、食品廃棄物や下水汚泥などの廃棄バイオマス、稲わら、麦わら、間伐材などの未使用バイオマスの他、ホヤ、酢酸菌等の生産するセルロースなどに由来するものが挙げられる。これらのミクロフィブリル化植物繊維は、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
なお、本明細書において、セルロースミクロフィブリルとは、典型的には、平均繊維径が10μm以下の範囲内であるセルロース繊維、より典型的には、セルロース分子の集合により形成されている平均繊維径500nm以下の微小構造を有するセルロース繊維を意味する。典型的なセルロースミクロフィブリルは、例えば、上記のような平均繊維径を有するセルロース繊維の集合体として形成されている。
【0083】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物において、充填剤の含有量(カーボンブラック、シリカなどのフィラーの総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは35質量部以上、更に好ましくは40質量部以上、より更に好ましくは50質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下、より更に好ましくは60質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0084】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは35質量部以上、更に好ましくは40質量部以上、より更に好ましくは50質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下、より更に好ましくは60質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0085】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下であり、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0086】
上記インナーライナー用ゴム組成物において、充填剤の含有量(カーボンブラック、シリカなどのフィラーの総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、より更に好ましくは60質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0087】
上記インナーライナー用ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、より更に好ましくは60質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0088】
上記インナーライナー用ゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下であり、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0089】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物は、更にシランカップリング剤を含んでもよい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、ゴム分野で公知のものが使用可能であり、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、特に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0091】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物は、可塑剤を含んでもよい。
本明細書において、可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、常温(25℃)において液体であっても、固体であっても良い。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
可塑剤としては、オイル、液状ポリマー、樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
上記オイルとしては、特に限定されず、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイル、TDAE、MES等の低PCA(多環式芳香族)プロセスオイル、植物由来オイル、及びこれらの混合物等、従来公知のオイルを使用できる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ライフサイクルアナリシスの観点から、ゴム混合用ミキサーや自動車エンジンなどで使用されたあとの潤滑油や廃食油などを適宜用いても良い。
【0094】
上記植物由来のオイル(植物油とも称する)としては、例えば、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。
【0095】
上記オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。
【0096】
上記液状ポリマーとしては、例えば、25℃で液状ジエン系ポリマー(液状ゴム)や液状ファルネセン系ポリマーなどが挙げられる。液状ゴムとしては液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0097】
上記液状ジエン系ポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1.0×103~5.0×104であることが好ましく、3.0×103~1.5×104であることがより好ましい。また、該液状ジエン系ポリマーのMwの下限又は上限は、4500、8500でもよい。
なお、本明細書において、液状ジエン系ポリマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
【0098】
上記液状ジエン系ポリマーとしては、例えば、サートマー社、(株)クラレ等の製品を使用できる。
【0099】
上記樹脂としては、タイヤ配合物として、通常用いられる樹脂(レジン)を使用でき、常温(25℃)において液体であっても固体であっても良い。例えば芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、樹脂は、水素添加された樹脂(水素添加樹脂)でもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、樹脂自体が複数の由来のモノマー成分を共重合したものでもよい。なかでも、フェノール樹脂が望ましい。
【0100】
上記樹脂の軟化点は、常温において固体である樹脂を用いる場合は50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましく、85℃以上が特に好ましい。また、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、140℃以下が更に好ましく、100℃以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
樹脂が常温において液体である場合には軟化点は20℃以下が好ましく、10℃以下が好ましく、0℃以下であることが好ましい。
水素添加樹脂の場合も上記と同様の軟化点であることが望ましい。
なお、上記樹脂の軟化点は、JIS K6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0101】
上記芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニルモノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
【0102】
上記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0103】
上記クマロン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
【0104】
上記インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
【0105】
上記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるポリマー等の公知のものを使用できる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
【0106】
上記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
【0107】
上記石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、C9/DCPD樹脂、これらの水素添加物などが挙げられる。なかでも、DCPD樹脂、水素添加DCPD樹脂、C9/DCPD樹脂、C9/水素添加DCPD樹脂が好ましい。
【0108】
上記テルペン系樹脂は、テルペンを構成単位として含むポリマーであり。例えば、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂、テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂も使用できる。なお、テルペン化合物としては、α-ピネン、β-ピネンなど、フェノール系化合物としては、フェノール、ビスフェノールAなど、芳香族化合物としては、スチレン系化合物(スチレン、α-メチルスチレンなど)が挙げられる。なかでも、芳香族変性テルペン樹脂が好ましい。
【0109】
上記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0110】
上記樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、RutgersChemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、エクソンモービル社、KRATON社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0111】
上記可塑剤として、サステナブルの観点からは、上記植物由来のオイル、ファルネセン系ポリマーなどの植物由来の可塑剤を用いることが望ましい。
【0112】
ファルネセン系ポリマーとは、ファルネセンを重合することで得られる重合体であり、ファルネセンに基づく構成単位を有する。ファルネセンには、α-ファルネセン((3E,7E)-3,7-11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン)やβ-ファルネセン(7-11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン)などの異性体が存在するが、以下の構造を有する(E)-β-ファルネセンが好ましい。
【化7】
【0113】
ファルネセン系ポリマーは、ファルネセンの単独重合体(ファルネセン単独重合体)でも、ファルネセンとビニルモノマーとの共重合体(ファルネセン-ビニルモノマー共重合体)でもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、ファルネセンとビニルモノマーとの共重合体が好ましい。
【0114】
ビニルモノマーとしては、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、tert-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルアミノメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-t-ブチルスチレン、3-t-ブチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ジフェニルエチレン、3級アミノ基含有ジフェニルエチレンなどの芳香族ビニル化合物や、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、ブタジエンが好ましい。すなわち、ファルネセン-ビニルモノマー共重合体としては、ファルネセンとブタジエンとの共重合体(ファルネセン-ブタジエン共重合体)が好ましい。
【0115】
ファルネセン-ビニルモノマー共重合体において、ファルネセンとビニルモノマーとの質量基準の共重合比(ファルネセン/ビニルモノマー)は、40/60~90/10が好ましい。
【0116】
ファルネセン系ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が3000以上30万以下のものを好適に使用できる。ファルネセン系ポリマーのMwは、好ましくは8000以上、より好ましくは10000以上であり、また、好ましくは10万以下、より好ましくは6万以下、更に好ましくは5万以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0117】
ファルネセン系ポリマーは、常温(25℃)で液体状態のもの、固体状態のもののいずれでもよい。なかでも、常温(25℃)で液体状態の液状ファルネセン系ポリマーが望ましい。
【0118】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物において、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。下限は特に限定されず、0質量部でもよく、また、例えば、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、可塑剤の含有量には、油展ゴム、樹脂伸展ゴムに含まれるオイルや樹脂の量も含まれる。
【0119】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物において、常温(25℃)で固体状態の固体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下であり、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、常温(25℃)で固体状態の上記樹脂の含有量、常温(25℃)で固体状態の上記芳香族ビニル重合体も同様の範囲が望ましい。
【0120】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物において、常温(25℃)で液体状態の液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下であり、0質量部でもよく、また、例えば、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、該液体可塑剤の含有量には、油展ゴムに含まれるオイルの量、液体樹脂で伸展された樹脂伸展ゴムの液体樹脂の量も含まれる。
常温(25℃)で液体状態のオイルの含有量も同様の範囲が望ましい。
【0121】
上記インナーライナー用ゴム組成物において、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。下限は特に限定されず、0質量部でもよく、また、例えば、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、可塑剤の含有量には、油展ゴム、樹脂伸展ゴムに含まれるオイルや樹脂の量も含まれる。
【0122】
上記インナーライナー用ゴム組成物において、常温(25℃)で固体状態の固体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。下限は特に限定されず、0質量部でもよく、また、例えば、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、常温(25℃)で固体状態の上記樹脂の含有量、常温(25℃)で固体状態の上記芳香族ビニル重合体も同様の範囲が望ましい。
【0123】
上記インナーライナー用ゴム組成物において、常温(25℃)で液体状態の液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。下限は特に限定されず、0質量部でもよく、また、例えば、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、該液体可塑剤の含有量には、油展ゴムに含まれるオイルの量、液体樹脂で伸展された樹脂伸展ゴムの液体樹脂の量も含まれる。
常温(25℃)で液体状態のオイルの含有量も同様の範囲が望ましい。
【0124】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物には、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を配合しても構わない。
【0125】
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0126】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上、より更に好ましくは2.5質量部以上である。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下、特に好ましくは3.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
また、上記インナーライナー用ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは1.5質量部以下であり、特に好ましくは0.5質量部以下で、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0127】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0128】
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0129】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。
上記スチールコード被覆用ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは6質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。
また、上記インナーライナー用ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である。
【0130】
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0131】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下であり、0質量部でもよい。
【0132】
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0133】
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0134】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物は、硫黄を含むことができる。
上記スチールコード被覆用ゴム組成物が硫黄を含む場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上、更に好ましくは6質量部以上、より更に好ましくは8質量部以上である。該含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記インナーライナー用ゴム組成物が硫黄を含む場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.2質量部以上である。該含有量は、好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下、更に好ましくは1.5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0135】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0136】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は特に制限はなく、要望する加硫速度や架橋密度に合わせて自由に決定すれば良いが、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上、より更に好ましくは0.6質量部以上、より更に好ましくは1.0質量部以上である。上限は、好ましくは8.0質量部以下、より好ましくは7.0質量部以下、更に好ましくは6.0質量部以下、より更に好ましくは4.0質量部以下、より更に好ましくは2.0質量部以下である。
【0137】
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のベンゾチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、ベンゾチアゾール系加硫促進剤が好ましい。
【0138】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物は、有機酸コバルト、熱硬化性樹脂などを含んでもよい。
ここで、熱硬化性樹脂は、熱により効果反応を起こす樹脂で、可塑剤に含まれる樹脂と異なり溶媒抽出されない成分であるため、両者は区別される。
【0139】
有機酸コバルトとしては、例えば、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ホウ素3ネオデカン酸コバルト、アビチエン酸コバルト等が挙げられる。市販品としては、大日本インキ化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、ステアリン酸コバルトが好ましい。
【0140】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物において、有機酸コバルトの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下であり、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0141】
熱硬化性樹脂としては、レゾルシン縮合物(レゾルシン樹脂)、フェノール樹脂を好適に使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0142】
レゾルシン縮合物としては、例えば、下記式で表される化合物(樹脂)を使用できる。
【化8】
(式中、nは1以上の整数である。)
【0143】
また、レゾルシン縮合物は、変性レゾルシン縮合物であってもよい。変性レゾルシン縮合物としては、例えば、下記式で表される化合物(樹脂)を使用できる。
【化9】
(式中、nは1以上の整数であり、Rはアルキル基である。)
【0144】
レゾルシン縮合物の市販品としては、田岡化学工業(株)、インドスペック社等の製品を使用できる。
【0145】
フェノール樹脂は、フェノールと、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類とを、酸又はアルカリ触媒下で反応させることで得られるものである。
【0146】
また、フェノール樹脂は、カシューオイル、トールオイル、ロジン等で変性された変性フェノール樹脂であってもよい。変性フェノール樹脂としては、カシューオイル変性フェノール樹脂が好ましい。また、カシューオイル変性フェノール樹脂としては、例えば、下記式で表される化合物(樹脂)を使用できる。
【化10】
(式中、pは、1~9の整数であり、5~6が好ましい。)
【0147】
フェノール樹脂の市販品としては、住友ベークライト(株)等の製品を使用できる。
【0148】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物において、熱硬化性樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0149】
上記スチールコード被覆用ゴム組成物、上記インナーライナー用ゴム組成物には、上記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、離型剤等の材料を適宜配合してもよい。
【0150】
混練条件としては、架橋剤(加硫剤)及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上であり、また、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、好ましくは80℃以上であり、また、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上であり、また、好ましくは190℃以下、より好ましくは185℃以下である。
【0151】
本発明のタイヤは、上記スチールコード被覆用ゴム組成物、インナーライナー用ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でカーカス、ベルト、インナーライナーなどの各種タイヤ部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0152】
上記タイヤとしては、特に限定されず、例えば、空気入りタイヤ、ソリッドタイヤ、エアレスタイヤ等が挙げられる。なかでも、空気入りタイヤが好ましい。
【0153】
上記タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤ)、オールシーズンタイヤ、ランフラットタイヤ、航空機用タイヤ、鉱山用タイヤ等として好適に用いられる。
【0154】
上記タイヤにおいて、上記タイヤ部材の厚みT(mm)は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.6mm以上、更に好ましくは0.7mm以上、より更に好ましくは0.8mm以上、より更に好ましくは1.0mm以上である。また、キャップトレッドの厚みTの上限は、好ましくは3.5mm以下、より好ましくは3.2mm以下、更に好ましくは3.0mm以下、より更に好ましくは2.5mm以下、より更に好ましくは2.0mm以下である。また、上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
【0155】
上記タイヤ部材の厚みTを上記範囲に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、タイヤ部材の厚みを所定以下とすることで、隣接した部材に力を伝えやすくすることができる一方で、所定以上とすることで、他部材とこすれる懸念を抑制することが可能となる。従って、湿熱劣化後における接着性能が向上すると推察される。
【0156】
なお、本明細書において、タイヤ部材の厚みTは、タイヤの回転軸を含む平面で切った断面におけるスチールコード及び該スチールコードを被覆するスチールコード被覆用ゴム組成物を含む各タイヤ部材の厚みであり、各タイヤ部材の表面上の各点における法線方向のタイヤ部材の厚みの平均値を指す。タイヤ部材が2層以上からなる場合、タイヤ部材の厚みTとは、各層の厚みを指す。
【0157】
上記タイヤにおいて、上記タイヤ部材の上記式(1)で定義されるコード表面積S[mm2]と、上記タイヤ部材の厚みT[mm]との比(S/T)は、好ましくは323以上、より好ましくは1000以上、更に好ましくは1050以上、より更に好ましくは1100以上、より更に好ましくは1131以上、より更に好ましくは1319以上、より更に好ましくは1508以上、より更に好ましくは2011以上、より更に好ましくは2262以上、より更に好ましくは6032以上である。また、S/Tの上限は、好ましくは10000以下、より好ましくは9000以下、更に好ましくは8000以下、より更に好ましくは7000以下、より更に好ましくは6500以下である。また、上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
なお、上記タイヤ部材の上記式(1)で定義されるコード表面積S[mm2]と、後述の各ベルトプライの厚みTb[mm]との比(S/Tb)も同様の範囲が望ましい。
【0158】
S/Tを上記範囲に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、タイヤ部材の厚みに対して所定のコード表面積を確保することで、良好な接着を確保できると考えられる。従って、湿熱劣化後における接着性能が向上すると推察される。
【0159】
上記タイヤにおいて、上記タイヤ部材の厚みT[mm]と、上記インナーライナー(インナーライナー用ゴム組成物)の空気透過係数K[cc・cm/cm2・sec・cmHg]との比(T/K)は、好ましくは0.03×10-11以上、より好ましくは0.04×10-11以上、更に好ましくは0.05×10-11以上、より更に好ましくは0.07×10-11以上、より更に好ましくは0.10×10-11以上である。また、T/Kの上限は、好ましくは0.30×10-11以下、より好ましくは0.28×10-11以下、更に好ましくは0.27×10-11以下、より更に好ましくは0.25×10-11以下、より更に好ましくは0.20×10-11以下である。また、上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
なお、後述の各ベルトプライの厚みTb[mm]と、上記インナーライナーの空気透過係数Kとの比(Tb/K)も同様の範囲が望ましい。
【0160】
T/Kを上記範囲に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、小さい空気透過係数K、所定のタイヤ部材厚みを確保することで、空気透過性を低く抑えることができると考えられる。従って、湿熱劣化後における接着性能が向上すると推察される。
【0161】
以下、図を用いて本発明のタイヤの一例を説明するが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。
【0162】
本明細書において、タイヤの各部の寸法は、タイヤのビード部を正規リム幅に合わせた状態で測定される。測定時には、タイヤをタイヤ半径方向に切り出し、該サンプルの両側のビード端部を正規リムの幅に合わせた状態で固定する。
【0163】
本明細書では、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
本明細書において、「正規状態」とは、タイヤが正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。
【0164】
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない場合、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面において、左右のビード間の距離を、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致させて、測定される。
【0165】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける“標準リム”、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association,Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0166】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値を指し、「正規リム」の場合と同様にJATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合、前記正規リムを標準リムとして記載されている別のタイヤサイズ(規格に定められているもの)の正規内圧(但し、250kPA以上)を指す。なお、250kPa以上の正規内圧が複数記載されている場合には、その中の最小値を指す。
【0167】
また、本明細書において、「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値を指し、前記した「正規リム」や「正規内圧」の場合と同様に、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合は以下の計算により、正規荷重WLを求める。
V={(Dt/2)2-(Dt/2-Ht)2}×π×Wt
WL=0.000011×V+175
WL:正規荷重(kg)
V:タイヤの仮想体積(mm3)
Dt:タイヤ外径(mm)
Ht:タイヤの断面高さ(mm)
Wt:タイヤの断面幅(mm)
【0168】
タイヤの「断面幅Wt(mm)」は正規状態において、タイヤ側面に模様または文字などがある場合にはそれらを除いたものとしてのサイドウォール外面間の最大幅である。
【0169】
タイヤの「外径Dt(mm)」は正規状態におけるタイヤの外径を指す。
【0170】
タイヤの「断面高さHt(mm)」はタイヤの半径方向断面における、タイヤ半径方向の高さを指し、タイヤのリム径をR(mm)としたとき、タイヤの外径Dtとリム径Rとの差の半分に相当する。言い換えると、断面高さHtは(Dt-R)/2により求めることが可能である。
【0171】
図1は、本実施形態のタイヤ2(空気入りタイヤ)の正規状態のタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。
【0172】
図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。トレッド部4は、キャップ層30及びベース層28を備えている。
【0173】
なお、
図1では、キャップ層30及びベース層28からなる2層構造トレッド部4の例が示されているが、トレッド部4が単層構造トレッド、3層以上の構造を有するトレッドで構成されるものでもよい。
【0174】
タイヤ2において、それぞれのサイドウォール6は、トレッド部4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側部分は、トレッド部4と接合されている。このサイドウォール6の半径方向内側部分は、クリンチ10と接合されている。このサイドウォール6は、カーカス14の損傷を防止できる。
【0175】
図1のそれぞれのウィング8は、トレッド部4とサイドウォール6との間に位置している。ウィング8は、トレッド部4及びサイドウォール6のそれぞれと接合している。
【0176】
それぞれのクリンチ10は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置し、少なくとも1か所以上、リムと接する部分を有している。
【0177】
カーカス14は、カーカスプライ36を備えている。このタイヤ2では、カーカス14は1枚のカーカスプライ36からなるが、2枚以上で構成されてもよい。
【0178】
このタイヤ2では、カーカスプライ36は、両側のビードコア32の間に架け渡されており、トレッド部4及びサイドウォール6に沿っている。カーカスプライ36は、それぞれのビードコア32の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ36には、主部36aと一対の折り返し部36bとが形成されている。すなわち、カーカスプライ36は、主部36aと一対の折り返し部36bとを備えている。
【0179】
それぞれのビードコア32は、このビードコア32から半径方向外向きに延びるビードエイペックス34を備えている。ビードコア32はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含むことが望ましい。ビードエイペックス34は、半径方向外向きに先細りである。
【0180】
図示されていないが、カーカスプライ36は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなることが望ましい。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°が好適である。換言すれば、このカーカス14はラジアル構造を有することが好ましい。
【0181】
図1のベルト層16は、トレッド部4の半径方向内側に位置している。ベルト層16は、カーカス14と積層されている。ベルト層16は、カーカス14を補強する。
図1のタイヤ2では、ベルト層16は、内側層38及び外側層40からなる。
【0182】
図1のタイヤ2では、内側層38及び外側層40は、層内のスチールコードが上記スチールコード被覆用ゴム組成物で被覆されている。内側層38及び外側層40内のスチールコードの上記式(1)で定義されるコード表面積S[mm
2]と、インナーライナー20の40℃における空気透過係数K[cc・cm/cm
2・sec・cmHg]との比(S/K)が、70×10
-11以上である。内側層38及び外側層40は、スチールコード被覆用ゴム組成物が上記式(2)で示される化合物及び上記式(3)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいる。
【0183】
図1から明らかなように、軸方向において、内側層38の幅は外側層40の幅よりも若干大きいことが望ましい。このタイヤ2では、ベルト層16の軸方向幅はタイヤ2の断面幅の0.6倍以上が好ましく、0.9倍以下が好ましい。
【0184】
図2は、ベルト層16(内側層38及び外側層40)及びバンド層18の拡大図である。
図2に示されるように、ベルトプライ17は、ベルトコード17Aと、ベルトコード17Aを被覆するトッピングゴム17B(上記スチールコード被覆用ゴム組成物)とを含んでいる。ベルトコード17Aは、上記スチールコードで構成される。本実施形態では、横断面が円形であるが、これに限定されるものではなく、横断面が楕円形、多角形状など、他の形状のものでも良い。また、耐久性能などの観点から、予めくせ付けを施したものを使用しても良い。
【0185】
図2に示されるように、ベルトプライ17は、例えば、第1ベルトプライ(内側層38)と、第1ベルトプライ(内側層38)とタイヤ半径方向に隣接する第2ベルトプライ(外側層40)とを含んでいる。第2ベルトプライ(外側層40)は、第1ベルトプライ(内側層38)のタイヤ半径方向の外側に位置している。
【0186】
ベルトコード17Aは、ベルトプライ17の走行中の変形を抑制する。第1ベルトプライ(内側層38)のベルトコード17A、及び、第2ベルトプライ(外側層40)のベルトコード17Aは、同じ形状であっても、異なる形状であってもよい。
【0187】
ベルトコード17Aは、例えば、タイヤ周方向に対して15~45度の角度で傾斜していることが望ましい。なお、ここでいうベルトコード17Aとタイヤ周方向のなす角は、タイヤ赤道面上における、ベルトコード17Aとタイヤ周方向のなす角である。前記ベルトコード17Aとタイヤ周方向のなす角は、当該タイヤのトレッド部等を剥がし、タイヤ表面上にベルトコード17Aが露出するようにすることで測定することが可能である。
【0188】
特に限定されるものではないが、第1ベルトプライ(内側層38)のベルトコード17Aと、第2ベルトプライ(外側層40)のベルトコード17Aとは、互いに交差するように、タイヤ周方向に対する傾斜が逆向きに配されていることが望ましい。
【0189】
ベルトコード17Aは、その周囲を被覆しているゴム組成物との接着性の観点から、表面に銅及び亜鉛を含むめっきが施されていることが好ましい。また、前記した銅、亜鉛に加えて、コバルト、ニッケル、ビスマス、アンチモンなどのイオン化傾向が銅及び亜鉛の間に属する金属元素を含むめっきが施されていることがより好ましい。
【0190】
また、ベルトコード17Aは、周囲のゴム組成物との接着性の観点から、表面にポリベンゾオキサジン化合物の層を有することが好ましい。
【0191】
ベルトコード17Aを被覆するトッピングゴム17B(上記スチールコード被覆用ゴム組成物)としては、周知のゴム材料に加えて、フェノール系の熱硬化樹脂やシリカ、前記したコバルト、ニッケル、ビスマス、アンチモンなどのイオン化傾向が銅及び亜鉛の間に属する金属と有機脂肪酸との塩、ポリベンゾオキサジン化合物などを含有していることが望ましい。
【0192】
図1のバンド層18は、ベルト層16の半径方向外側に位置している。
図1のタイヤ2では、軸方向において、バンド層18はベルト層16の幅と同等の幅を有している。このバンド層18が、このベルト層16の幅よりも大きな幅を有していてもよい。
【0193】
バンド層18は、コードとトッピングゴムとからなることが望ましい。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド層18は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下であることが好ましい。このコードによりベルト層16が拘束されるので、ベルト層16のリフティングが抑制される。
【0194】
タイヤ2において、バンド層18は、各ベルトプライ17の拘束性を高め、高速走行時の耐久性能を高めることでき、良好な乗り心地性能の付与も可能である。
【0195】
バンド層18の一形態として、有機繊維コード18Aと、有機繊維コード18Aを被覆する補強ゴム18Bとを含む形態などが挙げられる。なお、通常、有機繊維コードは、ゴムとの接着性を改善するためにディップ処理が行われている。
【0196】
有機繊維コード18Aを構成する有機繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、セルロースなどが挙げられる。これらは合成繊維でも良く、バイオマス由来の繊維であっても良い。また、ライフサイクルアセスメントの観点から、リサイクル、再生材料由来であることが望ましい。また、これらの繊維は合成繊維、バイオマス繊維、リサイクル/再生繊維の単一成分で形成されていても良く、これらを撚り合わせたハイブリッドコード、それぞれのフィラメントを合わせたマルチフィラメントを用いたコード、それぞれの成分が化学的に結合した化学構造を有するコードの何れであっても良い。
【0197】
ポリエステルコードとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)コード、ポリエチレンナフタレート(PEN)コード、ポリエチレンフラノエート(PEF)等が挙げられる。他のポリエステルコードと比較して、耐空気透過性に優れ、タイヤ内部の空気圧を保持しやすい観点から、PEFを用いても良い。また、ポリエステルコードの一部がポリアミド繊維等他の有機繊維からなるコードに代わった他の有機繊維からなるコードとのハイブリッドコードであっても良い。
【0198】
図3は、タイヤ2のトレッド部4の近辺が示された拡大断面図であり、Tbは、ベルト層16を構成する各ベルトプライのそれぞれの厚みを示している。
各ベルトプライの厚みTbは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.6mm以上、更に好ましくは0.7mm以上、より更に好ましくは0.8mm以上、より更に好ましくは1.0mm以上であり、また、好ましくは3.5mm以下、より好ましくは3.2mm以下、更に好ましくは3.0mm以下、より更に好ましくは2.5mm以下、より更に好ましくは2.0mm以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0199】
ベルト層を構成する各ベルトプライの厚みを上記範囲に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、各ベルトプライの厚みを所定以下とすることで、隣接した部材にベルト層の力を伝えやすくすることができる一方で、所定以上とすることで、ベルト層が他部材とこすれる懸念を抑制することが可能となる。従って、湿熱劣化後における接着性能が向上すると推察される。
【0200】
なお、本明細書において、「ベルトプライの厚み」、すなわち、ベルト層を構成する各補強層の厚みは、タイヤの回転軸を含む平面で切った断面におけるスチールコード及び該スチールコードを被覆するベルト層用ゴム組成物を含む各ベルトプライ層の厚みであり、各ベルトプライ層の表面上の各点における法線方向のベルトプライの厚みの平均値を指す。
図2の内側層38及び外側層40の2層からなるベルト層16の場合、内側層38の厚みは内側層表面上の各点における法線方向の厚みの平均値、外側層40の厚みは外側層表面上の各点における法線方向の厚みの平均値である。
【0201】
図1のタイヤ2において、インナーライナー20は、カーカス14の内側に位置している。インナーライナー20は、カーカス14の内面に接合されている。インナーライナー20は、上記インナーライナー用ゴム組成物で構成されている。
【0202】
それぞれのチェーファー22は、ビード12の近傍に位置している。この実施形態では、チェーファー22は布とこの布に含浸したゴムとからなることが望ましい。このチェーファー22が、クリンチ10と一体とされてもよい。
【0203】
このタイヤ2では、トレッド部4は溝26として主溝42を備えている。
図1に示されているように、このトレッド部4には、複数本、詳細には、3本の主溝42が刻まれている。これらの主溝42は、軸方向に間隔をあけて配置されている。このトレッド部4には、3本の主溝42が刻まれることにより、周方向に延在する4本のリブ44が形成されている。つまり、リブ44とリブ44との間が主溝42である。
【0204】
それぞれの主溝42は、周方向に延在している。主溝42は、周方向に途切れることなく連続している。主溝42は、例えば雨天時において、路面とタイヤ2との間に存在する水の排水を促す。このため、路面が濡れていても、タイヤ2は路面と十分に接触することができる。
【0205】
タイヤ2では、上記タイヤ部材の式(1)で定義されるコード表面積S、上記インナーライナーの40℃における空気透過係数K、上記タイヤ部材の厚みTについて、S/K、S、K、T、S/T、T/Kは、前述の範囲内であることが望ましい。
【実施例0206】
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本開示の範囲は実施例に限られない。
【0207】
以下、タイヤの製造に用いる各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行う。
【0208】
(ベルト層用ゴム組成物)
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のBR360L(シス1,4結合量98%)
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のダイアブラックLH(N2SA:84m2/g)
フェノール樹脂1:住友ベークライト(株)製のPR-12686(カシューオイル変性フェノール樹脂)
フェノール樹脂2:住友ベークライト(株)製のPR-19900(フェノール系樹脂)
熱硬化性樹脂:田岡化学工業(株)製のスミカノール620(変性レゾルシン縮合物、軟化点:100℃)
ビスマレイミド化合物1:大和化成工業社製のBMI-1000(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(BMI)、上記式(2)で示される化合物)
ビスマレイミド化合物2:大和化成工業社製のBMI-7000(m-フェニレンビスマレイミド(PBM)、上記式(2)で示される化合物)
ベンゾオキサジン化合物1:四国化成社製のベンゾオキサジンP-d(上記式(3)で示される化合物)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製(酸化亜鉛2種)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスNS
有機酸コバルト:アイレック社製のステアリン酸コバルト(コバルト含有量:9.55質量%)
重合剤:田岡化学工業(株)製のスミカノール507AP(ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル)
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤3:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDZ(N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫遅延剤:大内新興化学工業(株)製のN-シクロヘキシルチオ-フタルアミド(CTP)
【0209】
(インナーライナー用ゴム組成物)
NR:TSR20
ブチル系ゴム:ブロモブチル2255(エクソンモービル社製、ハロゲン含有率:2.0質量%)
カーボンブラック:Cabot社製のSTERLING V(STSA:36m2/g)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製(酸化亜鉛2種)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスNS
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM-P(ジベンゾチアジルジスルフィド)
【0210】
<ベルト層用ゴム組成物の作製>
表1、2に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄、加硫促進剤及び加硫遅延剤以外の材料を140℃の条件下で10分間混練りし、混練り物を得る。
該混練り物に硫黄、加硫促進剤及び加硫遅延剤を添加し、オープンロールを用いて、100℃の条件下で10分間練り込み、ベルト層用未加硫ゴム組成物を得る。
【0211】
<トッピング工程>
上記ベルト層用未加硫ゴム組成物をシート化し、表3に示す仕様に従ってスチールコードにトッピングを行い、スチールコード及びベルト層用未加硫ゴム組成物の複合体を得る。
【0212】
<インナーライナー用ゴム組成物の作製>
表4に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を140℃の条件下で10分間混練りし、混練り物を得る。
該混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、100℃の条件下で10分間練り込み、インナーライナー用未加硫ゴム組成物を得る。
【0213】
<試験用タイヤの作製>
表1、2に示す仕様に従い、上記スチールコード及びベルト層用未加硫ゴム組成物の複合体、上記インナーライナー用未加硫ゴム組成物を、ベルト層、インナーライナーの形状に成形し、タイヤ成型機上で、他のタイヤ部材と共に貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃で15分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ225/45R18、乗用車用タイヤ、
図1~2)を製造する。
【0214】
表1、2に従って配合、仕様を変化させた試験用タイヤを想定して、下記評価方法に基づいて測定した結果を表1、2に示す。
【0215】
<空気透過係数>
上記試験用タイヤのインナーライナーから試験片(縦15mmx横15mmx厚み0.4mm)を採取する。
JIS K 7126-1:2006に従い、ガス透過率測定装置(GTRテック(株)製のGTR-11A/31A)を用いて、40℃、30分の条件で空気透過係数K[cc・cm/cm2・sec・cmHg]を測定する。
【0216】
<剥離試験>
上記試験用タイヤを温度80℃、湿度80%RHで168時間湿熱劣化させる。湿熱劣化後のタイヤから、スチールベルトをトッピングゴムとともに幅25mmx長さ200mmに切り出す。作製されるサンプルを引張速度100mm/分でJIS K 6854に従って、90度剥離試験を行い、剥離抗力[N]を測定する。100N以上の場合、剥離抗力が良好である。
剥離試験片において、スチールコード由来の金属光沢が見えない場合を適合、見える場合を不適合として採点する。
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
本発明(1)は、スチールコードがスチールコード被覆用ゴム組成物で被覆されたタイヤ部材と、インナーライナーとを備えたタイヤであって、
前記タイヤ部材の下記式(1)で定義されるコード表面積S[mm
2]と、前記インナーライナーの40℃における空気透過係数K[cc・cm/cm
2・sec・cmHg]との比(S/K)が、70×10
-11以上であり、
式(1)
コード表面積S[mm
2]=単線コード直径[mm]×π×撚りコード本数×タイヤ部材のタイヤ幅方向1m当たりの撚りコード本数×1[mm]
前記スチールコード被覆用ゴム組成物が、下記式(2)で示される化合物及び下記式(3)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むタイヤである。
【化11】
(式中、Aは、炭素数2~4のアルキレン基、フェニレン基、又は芳香族環を1~4個有する炭素数6~29の2価の炭化水素基を表す。R
11~R
14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、-NH
2基又は-NO
2基を表す。)
【化12】
(式中、R
21は、飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はこれらの基を2個以上組み合わせた基を表す。R
22~R
23は、それぞれ独立に炭素原子数1~10の炭化水素基であり、前記炭化水素基は置換基を有してもよい。R
22~R
23は、同一であっても異なっていてもよい。nは、それぞれ独立に0~4の整数である。複数のR
22、複数のR
23は、同一であっても異なっていてもよい。)
【0222】
本発明(2)は、前記スチールコード被覆用ゴム組成物のゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が90質量%以上である本発明(1)に記載のタイヤである。
【0223】
本発明(3)は、前記スチールコード被覆用ゴム組成物の有機酸コバルトの含有量が、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以下である本発明(1)又は(2)に記載のタイヤである。
【0224】
本発明(4)は、前記タイヤ部材が、カーカス及びベルト層からなる群より選択される少なくとも1種である本発明(1)~(3)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0225】
本発明(5)は、前記S/Kが80×10-11以上である本発明(1)~(4)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0226】
本発明(6)は、前記コード表面積Sが1200mm2以上である本発明(1)~(5)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0227】
本発明(7)は、前記空気透過係数Kが15×10-11[cc・cm/cm2・sec・cmHg]以下である本発明(1)~(6)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0228】
本発明(8)は、前記タイヤ部材の厚みT(mm)が0.6~3.2mmである本発明(1)~(7)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0229】
本発明(9)は、前記タイヤ部材の前記式(1)で定義されるコード表面積S[mm2]と、前記タイヤ部材の厚みT[mm]との比(S/T)が、1000~10000である本発明(1)~(8)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0230】
本発明(10)は、前記タイヤ部材の厚みT[mm]と、前記インナーライナーの空気透過係数K[cc・cm/cm2・sec・cmHg]との比(T/K)が、0.03×10-11~0.30×10-11である本発明(1)~(9)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0231】
本発明(11)は前記スチールコード被覆用ゴム組成物において、前記式(2)で示される化合物の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、1.0~4.0質量部である本発明(1)~(10)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0232】
本発明(12)は前記スチールコード被覆用ゴム組成物において、前記式(3)で示される化合物の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、1.0~4.0質量部である本発明(1)~(11)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0233】
本発明(13)は前記スチールコード被覆用ゴム組成物において、充填剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、35~70質量部である本発明(1)~(12)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0234】
本発明(14)は前記スチールコード被覆用ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量が、ゴム成分100質量部に対して、35~70質量部である本発明(1)~(13)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0235】
本発明(15)は前記スチールコード被覆用ゴム組成物において、可塑剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以下である本発明(1)~(14)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0236】
本発明(16)は前記スチールコード被覆用ゴム組成物において、硫黄の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、6質量部以上である本発明(1)~(15)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。