(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128935
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】保湿装置およびインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240913BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219112
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2023037510
(32)【優先日】2023-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】小柴 翔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼寺 晴紀
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA17
2C056EB23
2C056EB36
2C056EC22
2C056EC28
2C056FA10
2C056JA10
2C056JA13
2C056JA18
2C056JA21
(57)【要約】
【課題】複数のインクジェットヘッドを有するヘッドユニットのノズル面を保湿するための保湿装置において、メイン容器に貯留される保湿用の保湿液を用いてノズル面を適切に保湿することが可能となるように、メイン容器に貯留される保湿液の液面の過度な低下を防止することが可能な保湿装置を提供する。
【解決手段】保湿装置10は、保湿液Mが貯留されるメイン容器13と、メイン容器13に繋がるサブ容器15と、サブ容器15の中の保湿液Mの液面の高さを検知するための液面検知機構18とを備えている。メイン容器13とサブ容器15との間では、保湿液Mの往来が可能となっており、サブ容器15の中の保湿液Mの液面の高さは、メイン容器13の中の保湿液Mの液面の高さと等しくなっている。メイン容器13に保湿液を供給するための保湿液供給部16は、液面検知機構18の検知結果に基づいてメイン容器13に保湿液Mを供給する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインクジェットヘッドを有するヘッドユニットのノズル面を保湿するための保湿装置であって、
上面が開口する箱状に形成されるとともに保湿用の保湿液が貯留されるメイン容器と、前記保湿液が貯留されるとともに前記メイン容器に繋がるサブ容器と、前記メイン容器に前記保湿液を供給するための保湿液供給部と、前記サブ容器の中の前記保湿液の液面の高さを検知するための液面検知機構とを備え、
前記メイン容器の中の前記保湿液の液面は、前記インクジェットヘッドがインクを吐出しない非印刷時に前記ノズル面の下側に配置され、
前記メイン容器と前記サブ容器との間では、前記保湿液の往来が可能となっており、
前記サブ容器の中の前記保湿液の液面の高さは、前記メイン容器の中の前記保湿液の液面の高さと等しくなっており、
前記保湿液供給部は、前記液面検知機構の検知結果に基づいて前記メイン容器に前記保湿液を供給することを特徴とする保湿装置。
【請求項2】
前記メイン容器から前記保湿液を排出するための保湿液排出部を備え、
前記保湿液排出部は、前記液面検知機構の検知結果に基づいて前記メイン容器から前記保湿液を排出することを特徴とする請求項1記載の保湿装置。
【請求項3】
前記液面検知機構は、前記サブ容器の中で前記保湿液に浮かぶフロートと、前記フロートに取り付けられる被検知物と、前記サブ容器の外側に配置されるとともに前記被検知物を検知するセンサとを備えることを特徴とする請求項1または2記載の保湿装置。
【請求項4】
前記ノズル面の外周端部分に下側から接触可能なシール部材を備え、
前記ノズル面の外形は、前記メイン容器の外形よりも大きくなっており、
前記シール部材は、前記メイン容器の外周側に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の保湿装置。
【請求項5】
前記ノズル面の外形は、長方形状となっており、
前記シール部材は、長方形状をなす前記ノズル面の少なくとも3辺において前記ノズル面の外周端部分に接触可能な位置に配置されていることを特徴とする請求項4記載の保湿装置。
【請求項6】
前記メイン容器の上端部には、前記シール部材を保持するシール保持部が形成されていることを特徴とする請求項4記載の保湿装置。
【請求項7】
前記メイン容器の上端部を囲むように配置されるカバー部材を備え、
前記シール部材は、前記カバー部材の上面に固定されていることを特徴とする請求項4記載の保湿装置。
【請求項8】
前記メイン容器の上端部と前記カバー部材との間に形成される隙間を塞ぐ第2シール部材を備えることを特徴とする請求項7記載の保湿装置。
【請求項9】
請求項1または2記載の保湿装置と、複数の前記インクジェットヘッドを有する前記ヘッドユニットと、前記ヘッドユニットが搭載されるキャリッジと、前記キャリッジを主走査方向に移動させるキャリッジ駆動機構とを備え、
前記メイン容器は、主走査方向において、前記インクジェットヘッドによる媒体への印刷が行われる領域である印刷領域から外れた位置に配置されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のインクジェットヘッドを有するヘッドユニットのノズル面を保湿するための保湿装置に関する。また、本発明は、かかる保湿装置を備えるインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のインクジェットヘッドを有するヘッドユニットのノズル面を保湿するための保湿装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の保湿装置は、非記録動作時に、ヘッドユニットのノズル面の下側に配置されるキャップと、キャップの中に保湿液としての水を供給する保湿液供給部とを備えている。非記録動作時には、キャリッジに搭載されるヘッドユニットがキャップの上側まで移動して、ヘッドユニットのノズル面の保湿が行われるとともに、インクジェットヘッドのノズルからキャップにインクを吐出させる加圧パージが行われる。
【0003】
特許文献1に記載の保湿装置では、キャップは、筐体と、筐体の中に配置される海綿状部材と、キャップの中のインクおよび水を排出するための第1排出管とを備えている。ノズル面の保湿が行われるときには、海綿状部材の上面は、ノズル面との間に一定の間隔を保った状態で下側からノズル面に対向している。保湿液供給部は、水タンクと、水タンクからキャップの中に水を送る送液ポンプとを備えている。送液ポンプは、制御部の制御下で駆動し、加圧パージされるインク量に対して水供給量が50質量%以上となるように、キャップの中に水を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の保湿装置では、加圧パージされるインク量に対して水供給量が50質量%以上となるようにキャップの中に水を供給しており、加圧パージされるインク量に対して水供給量が50質量%以上となっていれば、キャップの中のインクおよび水の量(すなわち、キャップの中の液体の量)が少なくなっても、キャップの中に水が供給されない。そのため、特許文献1に記載の保湿装置の場合、キャップの中の液体の液面が過度に低下して、ヘッドユニットのノズル面を適切に保湿することが困難になるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、複数のインクジェットヘッドを有するヘッドユニットのノズル面を保湿するための保湿装置において、メイン容器に貯留される保湿用の保湿液を用いてノズル面を適切に保湿することが可能となるように、メイン容器に貯留される保湿液の液面の過度な低下を防止することが可能な保湿装置を提供することにある。また、本発明の課題は、かかる保湿装置を備えるインクジェットプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の保湿装置は、複数のインクジェットヘッドを有するヘッドユニットのノズル面を保湿するための保湿装置であって、上面が開口する箱状に形成されるとともに保湿用の保湿液が貯留されるメイン容器と、保湿液が貯留されるとともにメイン容器に繋がるサブ容器と、メイン容器に保湿液を供給するための保湿液供給部と、サブ容器の中の保湿液の液面の高さを検知するための液面検知機構とを備え、メイン容器の中の保湿液の液面は、インクジェットヘッドがインクを吐出しない非印刷時にノズル面の下側に配置され、メイン容器とサブ容器との間では、保湿液の往来が可能となっており、サブ容器の中の保湿液の液面の高さは、メイン容器の中の保湿液の液面の高さと等しくなっており、保湿液供給部は、液面検知機構の検知結果に基づいてメイン容器に保湿液を供給することを特徴とする。
【0008】
本発明の保湿装置では、メイン容器とサブ容器との間で保湿液の往来が可能となっており、サブ容器の中の保湿液の液面の高さは、メイン容器の中の保湿液の液面の高さと等しくなっている。そのため、本発明では、サブ容器の中の保湿液の液面の高さを検知するための液面検知機構によって、メイン容器の中の保湿液の液面の高さを間接的に検知することが可能になる。また、本発明では、保湿液供給部は、液面検知機構の検知結果に基づいてメイン容器に保湿液を供給している。すなわち、本発明では、メイン容器の中の保湿液の液面の高さの間接的な検知結果に基づいて、保湿液供給部がメイン容器に保湿液を自動で供給している。したがって、本発明では、メイン容器に貯留される保湿液を用いてノズル面を適切に保湿することが可能となるように、メイン容器に貯留される保湿液の液面の過度な低下を防止することが可能になる。
【0009】
また、本発明では、液面検知機構がサブ容器の中の保湿液の液面の高さを検知している。したがって、本発明では、たとえば、液面検知機構が、保湿液に浮かぶフロートを備えていても、フロートは、サブ容器の中で保湿液に浮かんでいるため、フロートとノズル面とが干渉することはない。そのため、本発明では、フロートの影響でノズル面の保湿に支障が生じることはない。また、本発明では、フロートとノズル面とが干渉しないため、フロートの位置を考慮することなく、メイン容器を配置することが可能になり、その結果、メイン容器の配置の自由度を高めることが可能になる。また、本発明では、フロートとノズル面との干渉に起因するノズル面等の損傷が生じることはない。
【0010】
本発明において、保湿装置は、メイン容器から保湿液を排出するための保湿液排出部を備え、保湿液排出部は、液面検知機構の検知結果に基づいてメイン容器から保湿液を排出することが好ましい。このように構成すると、メイン容器の中の保湿液の液面の高さの間接的な検知結果に基づいて、保湿液排出部がメイン容器から保湿液を自動で排出するため、上面が開口する箱状のメイン容器から保湿液が溢れ出すのを防止することが可能になる。
【0011】
本発明において、たとえば、液面検知機構は、サブ容器の中で保湿液に浮かぶフロートと、フロートに取り付けられる被検知物と、サブ容器の外側に配置されるとともに被検知物を検知するセンサとを備えている。
【0012】
本発明において、保湿装置は、ノズル面の外周端部分に下側から接触可能なシール部材を備え、ノズル面の外形は、メイン容器の外形よりも大きくなっており、シール部材は、メイン容器の外周側に配置されていることが好ましい。このように構成すると、たとえば、風が流れる場所にメイン容器が設置されていても、シール部材によって、メイン容器の上端とノズル面との間の隙間からノズル面の下側に風が流れ込むのを抑制することが可能になり、その結果、ノズル面の下側の湿度の低下を抑制することが可能になる。したがって、風が流れる場所にメイン容器が設置されていても、メイン容器の周辺の風に起因するノズル面の乾燥を抑制することが可能になる。
【0013】
本発明において、たとえば、ノズル面の外形は、長方形状となっており、シール部材は、長方形状をなすノズル面の少なくとも3辺においてノズル面の外周端部分に接触可能な位置に配置されている。シール部材が、ノズル面の3辺においてノズル面の外周端部分に接触可能な位置に配置されている場合には、シール部材が配置されていないノズル面の1辺においてメイン容器の上端とノズル面との間の隙間からノズル面の下側に風が流れ込んだとしても、流れ込んだ風がノズル面の下側を吹き抜けるのを防止することが可能になる。したがって、風が流れる場所にメイン容器が設置されていても、メイン容器の周辺の風に起因するノズル面の下側の湿度の低下を効果的に抑制することが可能になり、その結果、メイン容器の周辺の風に起因するノズル面の乾燥を効果的に抑制することが可能になる。また、この場合には、シール部材が、ノズル面の4辺においてノズル面の外周端部分に接触可能な位置に配置されている場合と比較して、保湿装置の構成を簡素化することが可能になる。
【0014】
また、シール部材が、ノズル面の4辺においてノズル面の外周端部分に接触可能な位置に配置されている場合には、シール部材によって、メイン容器の上端とノズル面との間の隙間からノズル面の下側に風が流れ込むのを防止することが可能になる。したがって、風が流れる場所にメイン容器が設置されていても、メイン容器の周辺の風に起因するノズル面の下側の湿度の低下を防止することが可能になり、その結果、メイン容器の周辺の風に起因するノズル面の乾燥を防止することが可能になる。
【0015】
本発明において、メイン容器の上端部には、シール部材を保持するシール保持部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、比較的簡易な構成で、メイン容器の外周側にシール部材を配置することが可能になる。
【0016】
本発明において、保湿装置は、メイン容器の上端部を囲むように配置されるカバー部材を備え、シール部材は、カバー部材の上面に固定されていても良い。また、本発明において、保湿装置は、メイン容器の上端部とカバー部材との間に形成される隙間を塞ぐ第2シール部材を備えていても良い。この場合には、メイン容器の上端部とカバー部材との間に隙間が形成されていても、メイン容器とカバー部材との間の隙間からノズル面の下側に風が流れ込むのを防止することが可能になる。
【0017】
本発明の保湿装置は、複数のインクジェットヘッドを有するヘッドユニットと、ヘッドユニットが搭載されるキャリッジと、キャリッジを主走査方向に移動させるキャリッジ駆動機構とを備えるインクジェットプリンタに用いることができる。このインクジェットプリンタでは、メイン容器は、主走査方向において、インクジェットヘッドによる媒体への印刷が行われる領域である印刷領域から外れた位置に配置されている。このインクジェットプリンタでは、メイン容器に貯留される保湿液を用いてノズル面を適切に保湿することが可能となるように、メイン容器に貯留される保湿液の液面の過度な低下を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明では、複数のインクジェットヘッドを有するヘッドユニットのノズル面を保湿するための保湿装置において、メイン容器に貯留される保湿用の保湿液を用いてノズル面を適切に保湿することが可能となるように、メイン容器に貯留される保湿液の液面の過度な低下を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタの構成を説明するための概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかる保湿装置の構成を説明するための概略図である。
【
図4】
図3に示す保湿装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図5】(A)は、
図3に示すメイン容器の構成を説明するための平面図であり、(B)は、(A)のE-E断面の断面図である。
【
図6】(A)は、本発明の他の実施の形態にかかるメイン容器等の構成を説明するための平面図であり、(B)は、(A)のF-F断面の断面図であり、(C)は、(A)のG-G断面の断面図であり、(D)は、(A)のH-H断面の断面図である。
【
図7】(A)は、本発明の他の実施の形態にかかるメイン容器等の構成を説明するための平面図であり、(B)は、(A)のJ-J断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
(インクジェットプリンタの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタ1の構成を説明するための概略図である。
図2は、
図1に示すヘッドユニット4の底面図である。
【0022】
本形態のインクジェットプリンタ1(以下、「プリンタ1」とする。)は、たとえば、業務用のインクジェットプリンタであり、インクを吐出して紙等の媒体2に印刷を行う。プリンタ1は、媒体2に向かってインクを吐出する複数のインクジェットヘッド3(以下、「ヘッド3」とする。)を有するヘッドユニット4と、ヘッドユニット4が搭載されるキャリッジ5と、キャリッジ5を主走査方向へ移動させるキャリッジ駆動機構6と、キャリッジ5を主走査方向へ案内するためのガイドレール7とを備えている。以下の説明では、主走査方向(
図1等のY方向)を「左右方向」とし、上下方向と主走査方向とに直交する副走査方向(
図1等のX方向)を「前後方向」とする。
【0023】
ヘッド3は、下側に向かってインクを吐出する。ヘッド3の下側には、プラテン8が配置されている。プラテン8には、印刷時の媒体2が載置される。プラテン8に載置される媒体2は、図示を省略する媒体送り機構によって前後方向に搬送される。キャリッジ駆動機構6は、たとえば、2個のプーリと、2個のプーリに架け渡されるとともに一部がキャリッジ5に固定されるベルトと、プーリを回転させるモータとを備えている。媒体2に印刷を行うときには、キャリッジ5がガイドレール7に案内されて左右方向に往復移動しながら、プラテン8に載置される媒体2の上面に向かってヘッド3がインクを吐出する。
【0024】
ヘッドユニット4は、複数のヘッド3と、複数のヘッド3が固定されるヘッド固定部材とによって構成されている。
図2に示すように、ヘッドユニット4では、たとえば、一定の間隔をあけた状態で左右方向に配列される複数のヘッド3が前後方向の2箇所に配置されている。上下方向から見たときのヘッドユニット4の外形は、左右方向を長辺の方向とする長方形状となっている。
【0025】
ヘッド3の下面には、インクを吐出する複数のノズルが形成されている。ヘッド3の下面では、前後方向に配列される複数のノズルによってノズル列3aが構成されている。1個のヘッド3には、たとえば、4個のノズル列3aが形成されている。ヘッド3は、複数のノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の圧電素子を備えている。ヘッドユニット4の下面は、複数のノズルが形成されるノズル面4aとなっている。上述のように、上下方向から見たときのヘッドユニット4の外形は、左右方向を長辺の方向とする長方形状となっているため、ノズル面4aの外形は、左右方向を長辺の方向とする長方形状となっている。
【0026】
また、プリンタ1は、ヘッド3のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット9を備えている。左右方向(主走査方向)においてヘッド3による媒体2への印刷が行われる領域を印刷領域PAとすると、メンテナンスユニット9は、左右方向において印刷領域PAから外れた領域であるメンテナンス領域MAに設置されている。メンテナンスユニット9では、ヘッド3のノズルの目詰まりが発生しないように、ヘッド3のクリーニングが行われる。具体的には、メンテナンスユニット9では、ヘッド3のノズルからインクを強制的に吐出させるパージや、ワイパー(図示省略)によってノズル面4aを拭うワイピング等が行われる。
【0027】
メンテナンスユニット9でヘッド3のクリーニングが行われるときには、ヘッドユニット4は、メンテナンス領域MAまで移動する。メンテナンスユニット9は、媒体2の印刷が行われていない非印刷時(すなわち、ヘッド3がインクを吐出しない非印刷時)に、ヘッドユニット4のノズル面4aを保湿するための保湿装置10(
図3参照)を備えている。以下、保湿装置10の構成を説明する。
【0028】
(保湿装置の構成)
図3は、本発明の実施の形態にかかる保湿装置10の構成を説明するための概略図である。
図4は、
図3に示す保湿装置10の構成を説明するためのブロック図である。
図5(A)は、
図3に示すメイン容器13の構成を説明するための平面図であり、
図5(B)は、
図5(A)のE-E断面の断面図である。
【0029】
保湿装置10は、保湿用の保湿液Mが貯留されるメイン容器13と、メイン容器13の中に配置される複数の吸水部材14とを備えている。保湿液Mは、たとえば、イオン交換水である。また、保湿装置10は、保湿液Mが貯留されるとともにメイン容器13に繋がるサブ容器としてのサブタンク15と、メイン容器13に保湿液Mを供給するための保湿液供給部16と、メイン容器4から保湿液Mを排出するための保湿液排出部17と、サブタンク15の中の保湿液Mの液面の高さを検知するための液面検知機構18とを備えている。また、保湿装置10は、保湿装置10を制御するための制御部20を備えている。制御部20は、プリンタ1を制御するためのプリンタ制御部の一部を構成している。なお、
図3では、吸水部材14の図示を省略している。
【0030】
メイン容器13は、ノズル面4aを保湿するための保湿桶である。メイン容器13は、上面が開口する箱状に形成されている。また、メイン容器13は、上下方向の高さが低い扁平な直方体の箱状に形成されている。上下方向から見たときのメイン容器13の外形は、左右方向を長辺の方向とする長方形状となっている。メイン容器13の外形は、ヘッドユニット4の外形よりも大きくなっている。上述のように、メンテナンスユニット9は、メンテナンス領域MAに配置されており、メイン容器13は、左右方向において、印刷領域PAから外れた位置に配置されている。
【0031】
吸水部材14は、メイン容器13の中の保湿液Mに浸かっており、メイン容器13の中の保湿液Mを吸収して保持する。吸水部材14は、たとえば、スポンジで形成されている。吸水部材14は、前後方向に細長い直方体状に形成されている。
図5(B)に示すように、吸水部材14は、メイン容器13の底面に固定される保持部材22に取り付けられている。保持部材22は、上下方向を厚さ方向とする平板状の差込み部22aを備えている。吸水部材14には、差込み部22aが差し込まれるスリットが形成されている。吸水部材14のスリットに差込み部22aが差し込まれることで保持部材22に吸水部材14が固定されている。
【0032】
複数の吸水部材14は、一定の間隔をあけた状態で左右方向に配列されている。左右方向における複数の吸水部材14の配置ピッチは、左右方向における複数のヘッド3の配置ピッチと等しくなっている。吸水部材14の上面は、上下方向に直交する長方形状の平面となっている。吸水部材14の上面は、メイン容器13の中の保湿液Mの液面よりも上側に配置されている。また、吸水部材14の上面は、メイン容器13の上端よりも下側に配置されている。
【0033】
媒体2の印刷が行われていない非印刷時には、ノズル面4aの下側に、メイン容器13の中の保湿液Mの液面が配置されている(
図5(B)参照)。また、ノズル面4aの保湿を行うときには、ヘッド3の下側に、吸水部材14の上面が配置されている。ノズル列3aが形成されるヘッド3の下面と吸水部材14の上面とは、所定の隙間をあけた状態で対向している。ヘッド3の下面と吸水部材14の上面との間には、湿度の高い空気層が形成される。なお、キャリッジ5は、メイン容器13に対してヘッドユニット4を昇降させるための昇降機構45(
図1参照)を備えている。
【0034】
メイン容器13には、メイン容器13の中の保湿液Mの液面の高さが所定の高さを超えた場合に、メイン容器13から保湿液Mを排出するためのオーバーフロー管23が取り付けられている。オーバーフロー管23は、メイン容器13の中に配置されている。オーバーフロー管23は、上下方向を長手方向とする直管状に形成されている。オーバーフロー管23は、所定の配管24、および、保湿液排出部17の一部を構成する後述の配管33を介して、保湿液排出部17の一部を構成する後述の廃液タンク32に繋がっている。
【0035】
オーバーフロー管23の上端は、たとえば、吸水部材14の上面よりも下側に配置されている。オーバーフロー管23の下端は、たとえば、メイン容器13の底面において配管24の上端に繋がっている。廃液タンク32は、メイン容器13よりも下側に配置されている。オーバーフロー管23を介して排出される保湿液Mは、水頭差によってメイン容器13から排出される。なお、
図5では、オーバーフロー管23の図示を省略している。
【0036】
サブタンク15は、直方体状の箱状に形成されている。サブタンク15の上面は、蓋によって覆われている。この蓋には、上下方向で貫通する開口部が形成されており、開口部を介してサブタンク15の内部とサブタンク15の外部とが通じている。サブタンク15は、メイン容器13の近傍に配置されている。サブタンク15は、配管25を介してメイン容器13に繋がっている。サブタンク15の中とメイン容器13の中とは、配管25を介して通じており、メイン容器13とサブタンク15との間では、保湿液Mの往来が可能となっている。サブタンク15の中の保湿液Mの液面の高さとメイン容器13の中の保湿液Mの液面の高さとは等しくなっている。すなわち、サブタンク15の中の保湿液Mの液面の高さとメイン容器13の中の保湿液Mの液面の高さとが等しくなる位置にサブタンク15が設置されている。
【0037】
保湿液供給部16は、メイン容器13に供給される保湿液Mが貯留する給液タンク28と、給液タンク28とメイン容器13とを繋ぐ配管29と、給液タンク28の中の保湿液Mをメイン容器13に送るポンプ30と、配管29の途中に配置される電磁弁31とを備えている。ポンプ30は、配管29の途中に配置されている。ポンプ30および電磁弁31は、制御部20に電気的に接続されている。電磁弁31がオンの状態でポンプ30が駆動すると、給液タンク28からメイン容器13に保湿液Mが供給される。
【0038】
保湿液排出部17は、メイン容器13から排出される保湿液Mが貯留する廃液タンク32と、配管25に一端が繋がるとともに他端が廃液タンク32に繋がる配管33と、配管33の途中に配置される電磁弁34とを備えている。電磁弁34は、制御部20に電気的に接続されている。上述のように、廃液タンク32は、メイン容器13よりも下側に配置されている。電磁弁34がオンになると、水頭差によってメイン容器13から廃液タンク32に保湿液Mが排出される。
【0039】
液面検知機構18は、サブタンク15の中の保湿液Mの液面の高さを検知することで、サブタンク15の中の保湿液Mの量を検知する。上述のように、サブタンク15の中の保湿液Mの液面の高さとメイン容器13の中の保湿液Mの液面の高さとが等しくなる位置にサブタンク15が設置されているため、液面検知機構18は、メイン容器13の中の保湿液Mの液面の高さを間接的に検知する。また、液面検知機構18は、メイン容器13の中の保湿液Mの量を間接的に検知する。
【0040】
液面検知機構18は、サブタンク15の中で保湿液Mに浮かぶフロート37と、フロート37に取り付けられる被検知部としての永久磁石38と、サブタンク15の外側に配置されるとともに永久磁石38を検知するセンサ39~41とを備えている。本形態の液面検知機構18は、3個のセンサ39~41を備えている。永久磁石38は、フロート37に内蔵されている。センサ39~41は、ホールIC等の磁気センサである。センサ39~41は、たとえば、サブタンク15の外側面に固定されている。センサ39~41は、制御部20に電気的に接続されている。
【0041】
センサ39は、サブタンク15の上端側でサブタンク15の外側面に固定されている。センサ40は、センサ39の下側でサブタンク15の外側面に固定されている。センサ41は、サブタンク15の下端側でサブタンク15の外側面に固定されている。センサ39は、サブタンク15の中の保湿液Mの液面の高さが所定の上限位置よりも高くなっていることを検知するためのセンサである。センサ40は、サブタンク15の中の保湿液Mの液面の高さが適正な範囲内にあることを検知するためのセンサである。センサ41は、サブタンク15の中の保湿液Mの液面の高さが所定の下限位置よりも低くなっていることを検知するためのセンサである。本形態では、センサ39による永久磁石38の検知範囲の一部とセンサ40による永久磁石38の検知範囲の一部とが重複している。
【0042】
サブタンク15の中の保湿液Mの液面の高さが所定の上限位置よりも高くなると、フロート37に内蔵される永久磁石38がセンサ39によって検知される。このときには、センサ40によっても永久磁石38が検知されることがある。また、サブタンク15の中の保湿液Mの液面の高さが適正な範囲内にあると、永久磁石38がセンサ40によって検知されるとともに、永久磁石38がセンサ39によって検知されない。また、サブタンク15の中の保湿液Mの液面の高さが所定の下限位置よりも低くなると、永久磁石38がセンサ41によって検知される。サブタンク15の中の保湿液Mの液面の高さが適正な範囲内にあるときには、メイン容器13の中の保湿液Mの液面の高さが適正な範囲内にあり、メイン容器13の中の保湿液Mを用いてノズル面4aを適切に保湿することが可能となっている。
【0043】
なお、たとえば、センサ40による永久磁石38の検知範囲の上限位置にフロート37が配置されているときの、メイン容器13の中の保湿液Mの液面の高さは、オーバーフロー管23の上端の高さよりも高くなっている。また、センサ40による永久磁石38の検知範囲の下限位置にフロート37が配置されているときの、メイン容器13の中の保湿液Mの液面の高さは、オーバーフロー管23の上端の高さよりも低くなっている。本形態では、センサ40によって永久磁石38が検知されておらず、かつ、センサ39によって永久磁石38が検知されるときには、オーバーフロー管23に詰まり等が発生してオーバーフロー管23を介して保湿液Mを排出できない状況となっている。
【0044】
保湿液供給部16は、液面検知機構18の検知結果に基づいてメイン容器13に保湿液Mを供給し、保湿液排出部17は、液面検知機構18の検知結果に基づいてメイン容器13から保湿液Mを排出する。すなわち、保湿装置10では、液面検知機構18の検知結果に基づいて、メイン容器13への保湿液Mの供給とメイン容器13からの保湿液Mの排出とが自動で行われる。
【0045】
具体的には、センサ40による永久磁石38の検知範囲の下限位置とセンサ41による永久磁石38の検知範囲の上限位置との間にフロート37が配置されていて、センサ39~41のいずれにおいても永久磁石38が検知されていないときに、制御部20は、電磁弁31をオンにするとともにポンプ30を駆動して、センサ40によって永久磁石38が検知されるまで給液タンク28からメイン容器13に保湿液Mを供給する。また、センサ39によって永久磁石38が検知されているときに、制御部20は、電磁弁34をオンにして、センサ40によって永久磁石38が検知されるとともにセンサ39によって永久磁石38が検知されなくなるまでメイン容器13から廃液タンク32に保湿液Mを排出する。
【0046】
なお、本形態では、センサ41によって永久磁石38が検知されているときに、保湿液供給部16がメイン容器13への保湿液Mの供給を自動で行うと、保湿液Mの供給に時間がかかる。そのため、センサ41によって永久磁石38が検知されているときには、メイン容器13への保湿液Mの供給を手動で行って、センサ40によって永久磁石38が検知されるまでメイン容器13に保湿液Mを短時間で供給する。
【0047】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、液面検知機構18は、メイン容器13の中の保湿液Mの液面の高さを間接的に検知している。また、本形態では、保湿液供給部16は、液面検知機構18の検知結果に基づいてメイン容器13に保湿液Mを供給している。すなわち、本形態では、メイン容器13の中の保湿液Mの液面の高さの間接的な検知結果に基づいて、保湿液供給部16がメイン容器13に保湿液Mを供給している。具体的には、本形態では、サブタンク15の中の保湿液Mの液面の高さが適正な範囲内となって(すなわち、メイン容器13の中の保湿液Mの液面の高さが適正な範囲内となって)、メイン容器13の中の保湿液Mを用いてノズル面4aを適切に保湿することが可能となるように、保湿液供給部16がメイン容器13に保湿液Mを自動で供給している。
【0048】
そのため、本形態では、メイン容器13の中の保湿液Mを用いてノズル面4aを適切に保湿することが可能となるように、メイン容器13に貯留される保湿液Mの液面の過度な低下を防止することが可能になる。また、本形態では、保湿液排出部17が液面検知機構18の検知結果に基づいてメイン容器13から保湿液Mを排出しているため(すなわち、メイン容器13の中の保湿液Mの液面の高さの間接的な検知結果に基づいてメイン容器13から保湿液Mを排出しているため)、オーバーフロー管23を介して保湿液Mを排出できない状況になっても、上面が開口する箱状のメイン容器13から保湿液Mが溢れ出すのを防止することが可能になる。
【0049】
本形態では、液面検知機構18は、サブタンク15の中の保湿液Mの液面の高さを検知しており、フロート37は、メイン容器13の中ではなく、サブタンク15の中で保湿液Mに浮かんでいる。そのため、本形態では、フロート37とノズル面4aとが干渉することはない。したがって、本形態では、フロート37の影響でノズル面4aの保湿に支障が生じることはない。また、本形態では、フロート37とノズル面4aとが干渉しないため、フロート37の位置を考慮することなく、メイン容器13を配置することが可能になる。したがって、本形態では、メイン容器13の配置の自由度を高めることが可能になる。また、本形態では、フロート37とノズル面4aとの干渉に起因するノズル面4a等の損傷が生じることはない。
【0050】
(保湿装置の変更例1)
図6(A)は、本発明の他の実施の形態にかかるメイン容器13等の構成を説明するための平面図であり、
図6(B)は、
図6(A)のF-F断面の断面図であり、
図6(C)は、
図6(A)のG-G断面の断面図であり、
図6(D)は、
図6(A)のH-H断面の断面図である。
図6では、上述した形態と同様の構成には同一の符号を付している。なお、
図6(B)では、吸水部材14および保持部材22の図示を省略している。
【0051】
上述した形態において、保湿装置10は、ヘッドユニット4のノズル面4aの外周端部分に下側から接触可能なシール部材50を備えていても良い。この場合には、左右方向を長辺の方向とする長方形状に形成されるノズル面4aの外形は、左右方向を長辺の方向とする長方形状に形成されるメイン容器13の外形よりも大きくなっている。具体的には、ノズル面4aの左右方向の幅は、メイン容器13の左右方向の幅よりも広くなっており、ノズル面4aの前後方向の幅は、メイン容器13の前後方向の幅よりも広くなっている。以下の説明では、印刷領域PAに対してメンテナンス領域MAが配置されている側である左右方向の一方側(
図6(A)の右側)を「右」側とし、その反対側を「左」側とする。
【0052】
メイン容器13の上端部には、シール部材50を保持するシール保持部13a~13cが形成されている。シール保持部13a~13cは、メイン容器13の側壁の上側部分を外側に向かって折り曲げることで形成されており、上下方向を厚さ方向とする平板状に形成されている。この変更例では、3個のシール保持部13a~13cがメイン容器13に形成されている。シール保持部13aは、メイン容器13の右側壁の上端から右側に伸びている。シール保持部13aは、前後方向を長辺の方向とする細長い長方形状に形成されている。シール保持部13bは、メイン容器13の前側壁の上端から前側に伸びている。シール保持部13cは、メイン容器13の後側壁の上端から後ろ側に伸びている。シール保持部13b、13cは、左右方向を長辺の方向とする細長い長方形状に形成されている。
【0053】
シール部材50は、ゴムで形成されたゴムパッキンである。たとえば、シール部材50は、耐インク性に優れるエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)で形成されている。シール部材50は、細長い直線状に形成されている。シール部材50は、メイン容器13の外周側からシール保持部13a~13cのそれぞれに嵌め込まれている。すなわち、この変更例の保湿装置10は、3個のシール部材50を備えている。シール部材50には、シール保持部13a~13cに嵌るスリット状の係合凹部50a(
図6(D)参照)が形成されている。シール部材50の上側部分は、シール機能を有するシール部50bとなっている。シール部50bの断面形状は、中空状の半円形状となっている。
【0054】
上述のように、シール部材50は、メイン容器13の右側壁の上端から右側に伸びるシール保持部13aと、メイン容器13の前側壁の上端から前側に伸びるシール保持部13bと、メイン容器13の後側壁の上端から後ろ側に伸びるシール保持部13cとに取り付けられている。すなわち、シール部材50は、メイン容器13の外周側に配置されている。また、シール部材50は、長方形状をなすノズル面4aの3辺においてノズル面4aの外周端部分に接触可能な位置に配置されている。具体的には、1個のシール部材50は、ノズル面4aの右端側部分の全域に接触可能な位置に配置され、他の1個のシール部材50は、ノズル面4aの前端側部分のほぼ全域に接触可能な位置に配置され、残りの1個のシール部材50は、ノズル面4aの後端側部分のほぼ全域に接触可能な位置に配置されている。
【0055】
保湿装置10によってノズル面4aの保湿が行われるときには、ノズル面4aがメイン容器13の上側に配置される位置までキャリッジ5が右側に移動する。その状態で、昇降機構45によってヘッドユニット4を下降させる。ヘッドユニット4が下降すると、
図6(B)に示すように、ノズル面4aにシール部材50の上端部が密着する。すなわち、ヘッドユニット4が下降すると、シール部50bの上端部が所定の接触圧でノズル面4aに接触する。また、シール部材50の上端部は、ノズル面4aの、ヘッド3が配置されていない部分に密着する。
【0056】
なお、メイン容器13の左上端部には、左側に向かって伸びるインク受け部13dが形成されている。インク受け部13dの上面は、左側に向かうにしたがって上側に向かうように傾斜する傾斜面となっている(
図6(C)参照)。メイン容器13の左側には、ノズル面4aのワイピングを行うためのワイピング装置(図示省略)が配置されている。インク受け部13dは、メイン容器13の上側でパージを行った後のヘッドユニット4がワイピング装置に向かって左側に移動するときにヘッド3のノズルから垂れるインクを受ける機能を果たしている。
【0057】
この変更例では、保湿装置10が、ノズル面4aの外周端部分に下側から接触可能なシール部材50を備えており、シール部材50は、メイン容器13の外周側に配置されている。そのため、たとえば、エアコンが使用される室内にプリンタ1が設置されていて、風が流れる場所にメイン容器13が設置されていても、シール部材50によって、メイン容器13の上端とノズル面4aとの間の隙間からノズル面4aの下側に風が流れ込むのを抑制することが可能になり、その結果、ノズル面4aの下側の湿度の低下を抑制することが可能になる。したがって、風が流れる場所にメイン容器13が設置されていても、メイン容器13の周辺の風に起因するノズル面4aの乾燥を抑制することが可能になる。
【0058】
特にこの変更例では、シール部材50が、長方形状をなすノズル面4aの、前後方向の両側および右側の3辺においてノズル面4aの外周端部分に接触可能な位置に配置されているため、メイン容器13の左上端とノズル面4aとの間の隙間からノズル面4aの下側に風が流れ込んだとしても、流れ込んだ風が前後方向の両側および右側に吹き抜けるのを防止することが可能になる。したがって、風が流れる場所にメイン容器13が設置されていても、メイン容器13の周辺の風に起因するノズル面4aの下側の湿度の低下を効果的に抑制することが可能になり、その結果、メイン容器13の周辺の風に起因するノズル面4aの乾燥を効果的に抑制することが可能になる。
【0059】
(保湿装置の変更例2)
図7(A)は、本発明の他の実施の形態にかかるメイン容器13等の構成を説明するための平面図であり、
図7(B)は、
図7(A)のJ-J断面の断面図である。
図7では、上述した形態と同様の構成には同一の符号を付している。なお、
図7(B)では、吸水部材14および保持部材22の図示を省略している。
【0060】
図6に示す変更例において、メイン容器13の上端部にシール保持部13a~13cが形成されていなくても良い。この場合には、保湿装置10は、メイン容器13の上端部を囲むように配置されるカバー部材54を備えており、カバー部材54の上面に、シール部材50に相当するシール部材55が固定されている。具体的には、保湿装置10は、メイン容器13の上端部の右側に配置されるカバー部材54と、メイン容器13の上端部の前側に配置されるカバー部材54と、メイン容器13の上端部の後ろ側に配置されるカバー部材54とを備えている。シール部材55は、たとえば、両面テープによってカバー部材54の上面に固定されている。
【0061】
シール部材55は、シール部材50と同様のゴムパッキンであり、たとえば、EPDMで形成されている。シール部材55の断面形状は、シール部50bの断面形状と同様に、中空状の半円形状となっている。
図6に示す変更例と同様に、シール部材55は、メイン容器13の外周側に配置されている。また、シール部材55は、長方形状をなすノズル面4aの3辺においてノズル面4aの外周端部分に下側から接触可能な位置に配置されている。
【0062】
メイン容器13の上端部とカバー部材54との間には隙間が形成されている。すなわち、メイン容器13の外側面とカバー部材54の端面との間には隙間が形成されている。保湿装置10は、メイン容器13の上端部とカバー部材54との間に形成される隙間を塞ぐ第2シール部材56を備えている。第2シール部材56は、たとえば、エプトシーラーである。すなわち、第2シール部材56は、たとえば、EPDM製のシーリング材である。
図7(B)に示すように、第2シール部材56は、メイン容器13の外側面とカバー部材54の下面とに固定されており、メイン容器13の上端部とカバー部材54との間の隙間を下側から塞いでいる。
【0063】
保湿装置10によってノズル面4aの保湿が行われるときには、ノズル面4aがメイン容器13の上側に配置される位置までキャリッジ5が右側に移動した後、ヘッドユニット4が下降する。ヘッドユニット4が下降すると、
図7(B)に示すように、ノズル面4aにシール部材55の上端部が密着する。この変更例でも、
図6に示す変更例と同様の効果を得ることができる。また、この変更例では、メイン容器13の上端部とカバー部材54との間の隙間を第2シール部材56が塞いでいるため、メイン容器13とカバー部材54との間に隙間が形成されていても、メイン容器13とカバー部材54との間の隙間からノズル面4aの下側に風が流れ込むのを防止することが可能になる。
【0064】
(保湿装置の変更例3)
図6、
図7に示す変更例において、保湿装置10は、ノズル面4aの4辺においてノズル面4aの外周端部分に接触可能な位置に配置される4個のシール部材50、55を備えていても良い。すなわち、保湿装置10は、
図6、
図7に示す変更例の3個のシール部材50、55に加えて、ノズル面4aの左端側部分に接触可能な位置に配置されるシール部材50、55を備えていても良い。この場合には、メイン容器13の左側壁の上端から左側に伸びるシール保持部がメイン容器13に形成されている。あるいは、メイン容器13の上端部の左側にカバー部材54が配置されており、このカバー部材54の上面にシール部材55が固定されている。この場合には、メイン容器13にインク受け部13dが形成されていない。
【0065】
この変更例では、シール部材50、55が、ノズル面4aの4辺においてノズル面4aの外周端部分に接触可能な位置に配置されているため、4個のシール部材50、55によって、メイン容器13の上端とノズル面4aとの間の隙間からノズル面4aの下側に風が流れ込むのを防止することが可能になる。したがって、風が流れる場所にメイン容器13が設置されていても、メイン容器13の周辺の風に起因するノズル面4aの下側の湿度の低下を防止することが可能になり、その結果、メイン容器13の周辺の風に起因するノズル面4aの乾燥を防止することが可能になる。
【0066】
なお、
図6、
図7に示す変更例において、保湿装置10は、ノズル面4aの2辺においてノズル面4aの外周端部分に接触可能な位置に配置される2個のシール部材50、55を備えていても良いし、ノズル面4aの1辺においてノズル面4aの外周端部分に接触可能な位置に配置される1個のシール部材50、55を備えていても良い。また、
図6、
図7に示す変更例において、ノズル面4aの外形は、長方形状以外の四角形状となっていても良いし、四角形状以外の形状となっていても良い。この場合であっても、保湿装置10は、ノズル面4aの外周端部分に下側から接触可能なシール部材を備えており、シール部材は、メイン容器13の外周側に配置されている。
【0067】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0068】
上述した形態において、センサ39~41は、磁気センサ以外のセンサであっても良い。この場合には、磁気センサ以外のセンサ39~41によって検知される被検知物がフロート37に取り付けられている。また、上述した形態において、液面検知機構18は、センサ41を備えていなくても良い。
【0069】
上述した形態において、保湿液排出部17は、メイン容器13の中の保湿液Mを廃液タンク32に送るポンプを備えていても良い。また、上述した形態において、水頭差によって給液タンク28からメイン容器13に保湿液Mが供給されても良い。この場合には、給液タンク28は、メイン容器13よりも上側に配置されている。さらに、上述した形態において、メイン容器13の中に吸水部材14が配置されていなくても良い。また、上述した形態において、保湿装置10は、メイン容器13を昇降させる昇降機構を備えていても良い。この場合には、キャリッジ5は昇降機構45を備えていなくても良い。また、上述した形態において、プリンタ1は、三次元造形物を造形する3Dプリンタであっても良いし、一般消費者向けのインクジェットプリンタであっても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 プリンタ(インクジェットプリンタ)
2 媒体
3 ヘッド(インクジェットヘッド)
4 ヘッドユニット
4a ノズル面
5 キャリッジ
6 キャリッジ駆動機構
10 保湿装置
13 メイン容器
13a~13c シール保持部
15 サブタンク(サブ容器)
16 保湿液供給部
17 保湿液排出部
18 液面検知機構
37 フロート
38 永久磁石(被検知物)
39~41 センサ
50、55 シール部材
54 カバー部材
56 第2シール部材
M 保湿液
PA 印刷領域
Y 主走査方向